(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】共にスライドする異なる構造体のための接続
(51)【国際特許分類】
B29C 45/17 20060101AFI20240806BHJP
B29C 33/34 20060101ALI20240806BHJP
B29C 45/64 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C45/17
B29C33/34
B29C45/64
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023192321
(22)【出願日】2023-11-10
(62)【分割の表示】P 2022103814の分割
【原出願日】2019-07-10
【審査請求日】2023-12-08
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520449345
【氏名又は名称】キヤノンバージニア, インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Canon Virginia, Inc.
【住所又は居所原語表記】12000 Canon Blvd., Newport News, Virginia, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】柳原裕一
(72)【発明者】
【氏名】田島潤子
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001738(JP,A)
【文献】特表2006-507958(JP,A)
【文献】特開平08-039638(JP,A)
【文献】特開昭63-116829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/17
B29C 33/34
B29C 45/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形システムであって、
互いにクランプされた少なくとも2つの金型部品を含む金型を用いて射出成形を行うように構成された射出成形装置と、
前記射出成形装置内の第1の位置と、前記射出成形装置外の第2の位置との間で支持平面に沿って所定の方向に前記金型を移動させるアクチュエータと、
前記金型と前記アクチュエータとを連結するように構成された連結ユニットと、を備え、
前記連結ユニットは、前記金型が前記アクチュエータに対して第1の方向及び第2の方向に移動可能であるように前記金型と前記アクチュエータとの間を連結するように構成され、
前記第1の方向は、前記支持平面に平行であり、前記所定の方向と交差し、前記第2の方向は、前記支持平面と交差し、
前記連結ユニットは、(1)前記第1の方向に延在し、前記第1の方向に沿って前記金型の移動を案内するように構成された第1のシャフトと、(2)前記第2の方向に延在し、前記第2の方向に沿って前記金型の移動を案内するように構成された第2のシャフトとを含む、射出成形システム。
【請求項2】
前記射出成形装置において前記金型の前記少なくとも2つの金型部品をクランプするように構成されたクランプユニットをさらに備える、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項3】
前記第1の位置は、射出成形のための位置であり、前記第2の位置は、前記金型内の樹脂を冷却するための位置である、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項4】
前記連結ユニットは、
前記アクチュエータに固定され、前記第1のシャフトを保持するように構成された第1のホルダと、
前記金型に固定され、前記第2のシャフトを保持するように構成された第2のホルダと、
を含む、請求項1に記載の射出成形システム。
【請求項5】
前記連結ユニットは、前記第1及び第2のシャフトが固定されるブロック部材を含み、
前記第1の方向に前記金型に力が加わる場合、前記第1の方向に沿った前記金型の前記移動は、前記第1のシャフトを保持する前記第1のホルダによって案内され、
前記第2の方向に前記金型に力が加わる場合、前記第2の方向に沿った前記金型の前記移動は、前記第2のシャフトを保持する前記第2のホルダによって案内される、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項6】
前記第1のホルダは、前記第1のホルダ及び前記第1のシャフトが互いに対して移動可能であるように前記第1のシャフトを保持する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項7】
前記第2のホルダは、前記第2のホルダ及び前記第2のシャフトが互いに対して移動可能であるように前記第2のシャフトを保持する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項8】
前記金型に力が加わる場合、前記第1のシャフトを保持する前記第1のホルダは、前記第1のシャフトの軸の周りの前記金型の回転移動を案内する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項9】
前記金型に力が加わる場合、前記第2のシャフトを保持する前記第2のホルダは、前記第2のシャフトの軸の周りの前記金型の回転移動を案内する、請求項4に記載の射出成形システム。
【請求項10】
請求項1に記載の射出成形システムを使用して射出成形を実行することを含み、
射出成形を前記実行することは、前記アクチュエータを使用して前記金型を移動することを含む、射出成形の方法。
【請求項11】
請求項1に記載の射出成形システムを使用して射出成形を実行することを含み、
射出成形を前記実行することは、前記アクチュエータを使用して前記金型を移動することを含む、物品を製造する方法。
【請求項12】
金型と射出成形装置のアクチュエータとを連結するように構成された連結ユニットであって、前記アクチュエータは、前記射出成形装置内の第1の位置と、前記射出成形装置外の第2の位置との間で支持平面に沿って所定の方向に前記金型を移動させるように構成され、
前記連結ユニットは、前記金型が前記アクチュエータに対して第1の方向及び第2の方向に移動可能であるように前記金型と前記アクチュエータとの間を連結するように構成され、
前記第1の方向は、前記支持平面に平行であり、前記所定の方向と交差し、前記第2の方向は、前記支持平面と交差し、
前記連結ユニットは、
前記第1の方向に延在し、前記第1の方向に沿って前記金型の移動を案内するように構成された第1のシャフトと、
前記第2の方向に延在し、前記第2の方向に沿って前記金型の移動を案内するように構成された第2のシャフトと、
を備える、連結ユニット。
【請求項13】
前記アクチュエータに固定され、前記第1のシャフトを保持するように構成された第1のホルダと、
前記金型に固定され、前記第2のシャフトを保持するように構成された第2のホルダと、
をさらに備える、請求項12に記載の連結ユニット。
【請求項14】
前記第1及び第2のシャフトが固定されるブロック部材をさらに備え、
前記第1の方向に前記金型に力が加わる場合、前記第1の方向に沿った前記金型の前記移動は、前記第1のシャフトを保持する前記第1のホルダによって案内され、
前記第2の方向に前記金型に力が加わる場合、前記第2の方向に沿った前記金型の前記移動は、前記第2のシャフトを保持する前記第2のホルダによって案内される、請求項13に記載の連結ユニット。
【請求項15】
前記第1のホルダは、前記第1のホルダ及び前記第1のシャフトが互いに対して移動可能であるように前記第1のシャフトを保持する、請求項13に記載の連結ユニット。
【請求項16】
前記第2のホルダは、前記第2のホルダ及び前記第2のシャフトが互いに対して移動可能であるように前記第2のシャフトを保持する、請求項13に記載の連結ユニット。
【請求項17】
前記金型に力が加わる場合、前記第1のシャフトを保持する前記第1のホルダは、前記第1のシャフトの軸の周りの前記金型の回転移動を案内する、請求項13に記載の連結ユニット。
【請求項18】
前記金型に力が加わる場合、前記第2のシャフトを保持する前記第2のホルダは、前記第2のシャフトの軸の周りの前記金型の回転移動を案内する、請求項13に記載の連結ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、射出成形機の製造工程は射出、冷却、成形部品の取り出しであるが、射出成形機は冷却中に動かないため、生産性に制約がある。米国特許出願公開第2018/0009146号明細書によれば、1つの射出成形機に対して2つのダイ(鋳型、成形型(die))(金型(mold))を切り替えながら成形部品を製造する方法が提案されている。米国特許出願公開第2018/0009146号明細書では、2つのダイを移動させる方法として、第1のダイの移送は射出成形機の左右の一方の側によって行われ、第2のダイの移送は、射出成形機の左右の他方の側に配置され、第1の移送装置から独立した第2の移送装置上で実行される。
【0003】
ダイを射出位置から冷却位置に、または冷却位置から射出位置に移動させる場合、ダイ自体の重量、射出樹脂重量、およびダイ間の連結ユニットの重量を移動できるアクチュエータを有する必要がある。一方、製造工程でのコストダウンが重要であり、ダイを動かせる2台のアクチュエータを搭載すれば、アクチュエータ自体のコストが増大し、2台のアクチュエータを搭載するスペースが必要となり、装置の大型化につながる可能性がある。
【0004】
一般的にダイは鉄鋼などの金属で製造され、重量が数キロから数トンの重量物である。また、各々のダイは正確に同じ寸法ではなく、重量物であるダイを移動させるときにダイの位置ずれから荷重(負荷)が発生する。複数のダイが単一の移送装置に連結されている場合、移送装置はすぐに故障する可能性があり、最悪の場合には、移送装置によってダイを移動させることができないなどの問題が生じる可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示の態様は、アクチュエータを使用してデバイスを移送することによって複数のダイを移動させる技術を提供し、製造デバイスのコスト増加またはサイズ増加を防止し、安定した製造技術を提供する。本開示の態様によれば、滑り部を伴う2つの部品(部分)およびベースプレートのスロットの構成がある。このようにすることにより、Z方向、Y方向のダイへのずれから負荷を分散させ、アクチュエータに過大な負荷を与えないようにするとともに、アクチュエータの破損を防ぐことができ、負荷を扱うアクチュエータを大型化することによるコストアップに起因する高コスト化を防ぐことができる。また、このような構成とすることにより、テーブル部の過剰な位置調整や、側面ガイドローラ、底面ガイドローラの射出成形機への過剰な位置精度を必要とせず、機械部品の精度を容易にすることによりコストを低減し、又は、組み立て時の工数を低減することができる。
【0006】
本開示は、射出成形システムであって、第1の金型および第2の金型で射出成形を行うように構成された射出成形装置と、前記第1の金型と前記第2の金型との間を連結するように構成された連結ユニットと、前記第1の金型と接続可能であり、支持平面に沿って前記第1の金型を前記射出成形装置内に移動させるように構成されたアクチュエータとを含む射出成形システムを対象とする。前記アクチュエータが前記第1の金型を移動させると、前記連結ユニットは、前記第1の金型から前記第2の金型に力を伝達するように構成され、前記第2の金型は前記第1の金型によって移動されdる。前記連結ユニットは、前記第1の金型が前記第2の金型に対して前記支持平面と交差する方向に移動可能であるように、または前記第2の金型が前記第1の金型に対して前記方向に移動可能であるように、前記第1の金型と前記第2の金型との間を連結するように構成される。
【0007】
本開示のさらなる特徴は、(添付図面を参照した)以下の例示的な実施形態の説明から明らかになるのであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【
図5】
図5は、射出成形機の動作工程のフローチャートである。
【0013】
【0014】
【
図7】
図7(
図7A、7B)は、ダイAとダイBと間の連結ユニットの側面図を示す図面ある。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
<システム概要>
図1A、
図1B、及び
図1Cは、例示的な実施形態に係る射出成形機を示す。射出成形機は、ダイ(鋳型、成形型、金型)に樹脂を射出(注入)することにより射出成形を行う。また、樹脂に限らず、ワックス又は金属等の材料にも適用可能である。
図1Aは、例示的な実施形態に係る全体の射出成形機600を示す。
図1Bは、射出成形機600と共に設置されるコンベア装置を示し、
図1Cは、駆動ユニット100AおよびダイAおよびダイBを示す。
【0023】
図1Bおよび
図1Cに示される射出成形システムは、駆動ユニット100Aと、テーブルユニット100B(ベースフレーム)と、テーブルユニット100C(ベースフレーム)とを含む。駆動ユニット100Aは、連結された2つのダイA及びダイBを移動させる。テーブルユニット100Bは、連結された2つのダイを案内し、テーブルユニット100Cもまた、連結された2つのダイを案内する。本実施形態では、テーブルユニット100Bは駆動ユニットを備えていない。テーブルユニット100B及びテーブルユニット100Cは、2つのダイを支持しており、この2つのダイは、テーブルユニット100B及びテーブルユニット100Cの上面パネルである支持平面に沿って移動される。
【0024】
駆動ユニット100Aをテーブルユニット100Bに組み合わせることにより、2つのダイのうちの1つが単一の射出位置への移動を交互に行うことができる。つまり、駆動ユニット100Aは、ダイAを射出成形機600内に移動させ、他方のダイBは、射出成形機600から出てテーブルユニット100Bに移動する。射出位置は、射出成形機600内部の位置である。すなわち、駆動ユニット100Aでダイを移動させることにより、射出成形機600内部の射出位置に位置決めされたダイを切り替えることができる。
【0025】
連結された2つのダイを移動させるための駆動ユニット100Aの詳細を、
図1Cを参照して説明する。駆動ユニット100Aに連結された2つのダイAおよびダイB、金型A及び金型Bは、アクチュエータ10の駆動により移動可能である。
【0026】
まず、アクチュエータ10用の移動可能なスライド32によって、スライド32に連結されたダイA、プレート31およびプレート20が移動可能となる。そして、アクチュエータ10自体とテーブルユニット100B、100Cとは、アクチュエータ10がテーブル100Bに固定されているため、ダイAおよびダイBの移動に応じて移動しない。ダイA及びダイBは、アクチュエータ10及びテーブルユニット100B及び100Cに対して移動可能である。以下、アクチュエータ10及びテーブルユニット100Bを総称して台車(カート)と呼び、テーブルユニット100Cを台車(カート)とも呼ぶ。
【0027】
また、ダイBは、連結ユニット40によってダイAに連結されており、ダイAの移動によってダイBもダイAの移動方向に沿って移動する。すなわち、
図1(c)において、ダイAがX軸正方向に移動すると、ダイBもX軸正方向に移動する。
【0028】
なお、連結ユニット20及び40の上記構成については、
図3を参照して詳細に後述する。
【0029】
次に、
図2は、ダイAおよびダイBの移動について説明する。
図2は射出成形機600、ダイA、ダイB、駆動ユニット100A、テーブルユニット100B、テーブルユニット100C、連結部20及び40の側面図である。
図2では、位置1、2及び3としてダイの可能な位置を説明する。位置2は、射出成形機600の射出位置であり、ダイが位置2にあるとき、射出成形機600は樹脂をダイに射出し、ダイの成形部分を除去することができる。位置1及び3は、ダイA及びBを冷却するための冷却位置である。一方のダイを冷却しながら、2つのダイを射出位置に交互に移動させ、樹脂の射出を可能にすることにより、一方のダイが位置2で射出された樹脂を有することができ、他方のダイが位置1又は3で冷却される。
【0030】
図3A及び3Bは、連結ユニット20(接続点、接続部、アクチュエータ-金型接続部又はジョイント)及び連結ユニット40(接続点、接続部、金型-金型接続部又はジョイント)の詳細な構造体を示す。
図3A及び
図3Bを参照して、連結ユニット20及び40の構成について説明する。
【0031】
<金型とアクチュエータとの間の連結ユニット>
図3Aは、ダイAとアクチュエータ10との間の連結ユニット20を示す。連結ユニット20は、ダイAに取り付けられるベースプレート24と、4つの連結ブラケット23と、連結ブラケット23で固定される2つのシャフト22とを含む。2つのシャフト22は、先端にカムフォロア(カム従動子)21を含む。上述したように、ベースプレート31はスロットを含み、アクチュエータ10上のスライダ32に固定されている。カムフォロア21はベースプレートのスロットに挿入され、これによりダイAとアクチュエータ10とが互いに連結される。
【0032】
なお、ダイ又はローラ(側面ガイドローラ91、底面ガイドローラ92)(ホイール、回転ユニット)の形状が類似している場合であっても、形状が完全に一致することを意味するものではない。また、成形において異なるダイが使用される場合もある。そのため、ダイA及びダイBのサイズ及び形状が異なることがあり、ダイの幅方向(Y軸方向)のローラ間の隙間や、金型下のローラの高さも異なることがある。さらに、テーブルユニット100B及び100Cと射出成形機600とを別々に製造して組み立てれば、テーブルユニット100B上のダイの経路及びテーブルユニット100C上のダイの経路を、射出成形機600内のダイの経路と一致させることが困難になる可能性がある。つまり、射出成形機の両側の台車(カート)の位置と射出成形機の位置とがずれることがある。
【0033】
ダイ形状の微妙な違いやローラ高さの違いが少なくても、ダイA及びダイBなどの重量物が同時に動くと、位置ずれにより連結ユニットに大きな負荷が発生する。具体的には、連結ユニットに関してはダイの移動方向がX軸方向であれば、Y軸方向、Z軸方向に荷重が発生する。ダイが動くたびに連結ユニットに負荷がかかり、連結ユニットが破損する可能性が高くなる。または、アクチュエータに予期せぬ荷重が加わり、破損の原因となる。
【0034】
この例示的な実施形態は、ローラの回転によって、または1つのダイとテーブルユニット100Bに固定されたアクチュエータとの間を移動する2つのダイの間の連結ユニットに関する。ローラサイズ又はダイサイズが異なる場合には、台車(カート)と射出成形機との間のローラサイズ又は高さに対する正確な精度がなくても、本実施形態の連結ユニットを使用することによって多少の負荷を減少させることができる。
【0035】
以下に、ダイA及びBをX軸方向に移動させ、アクチュエータ10のY軸方向の中心位置とダイAのY軸方向の中心位置がY軸方向にずれている場合の状況を説明する。すなわち、以下に、ダイAのY軸方向の中心位置がダイA又はダイBの移動に応じてアクチュエータ10のY軸方向の中心位置とずれている場合の状況を説明する。ダイAの移動時に、ダイAの位置とアクチュエータ10の位置とがY軸方向にずれている場合には、ベースプレート31の挿入されたスロットに沿って連結ブラケット23のずれを伴うカムフォロア21がY軸方向に移動することにより、このカムフォロア21のY軸方向のずれが、アクチュエータ10及びダイAのY軸方向の位置のずれによって生じる負荷を吸収することができる。すなわち、ダイAのY軸方向への移動に応じて、カムフォロア21が回転し、アクチュエータ10及び連結ユニットに加わる負荷を軽減することができる。一般に、Y軸方向のダイAとアクチュエータ10の位置のずれが大きいほど、連結ユニットおよびアクチュエータ10に加わる負荷は大きくなる。従って、Y軸方向へのシフトを小さくすることにより、負荷を軽減又は無くすことができる。
【0036】
連結ユニット20機構を有さず、かつ剛性のある接続部と単純に連結させた場合、軸方向のダイAの中心位置がY軸方向のアクチュエータ10の中心位置とずれ、ダイAの重量および移動部の量からY軸方向に向かう負荷が、アクチュエータ10および連結部分に加わる。従って、連結部分はY軸方向に向かって反り、さらに、Y軸方向にアクチュエータ10にも負荷がかかる。
図3Aに示すような連結ユニットを採用することにより、カムフォロア21がベースプレート31に対してY軸方向に移動可能となり、連結ユニット20及びアクチュエータに加えられるY軸方向にシフトするためのダイAからの負荷が軽減され又は無くなる。
【0037】
また、
図2では、アクチュエータ10のZ軸方向の中心位置をZ10として図示し、ダイAのZ軸方向の中心位置をZAとして図示する。このとき、
図2に示すように、Z軸の原点はテーブルユニット100Bの表面にある。アクチュエータ10はテーブル100Bに固定されているため、アクチュエータ10に対するZ軸方向の中心がZ10(基準位置)であり、ダイAのZ軸方向の中心がZA(基準位置)である場合、アクチュエータ10とダイAはZ軸方向にずれていない。
【0038】
ここでは、ダイA、BをX軸方向に移動させた場合と、Z軸方向のダイAの中心位置がZAからZ軸方向にずれた場合について説明する。ダイAが移動し、アクチュエータ10に対するZ軸方向の基準位置とダイAに対するZ軸方向の基準位置とが変化すると、換言すれば、ダイAに対するZ軸方向の中心位置がZ軸方向にずれると、ベースプレート31のスロットに挿入されている連結ブラケット23のカムフォロア21は、スロットに沿ってZ軸方向に移動する。
【0039】
このカムフォロア21のZ軸方向のシフトは、ダイA及びアクチュエータ10に加わるZ軸方向へのずれからの負荷を吸収することができる。カムフォロア21は滑り部を有しているので、スロットのZ軸方向に沿って移動可能である。これにより、Y軸方向のシフトと同様に、アクチュエータ10及び連結ユニット20にかかる負荷を軽減したり、無くしたりすることができる。
【0040】
連結ユニット20の機構を持たず、アクチュエータ10とダイAとが、Y及びZ方向の双方で互いにシフトすることが可能な一対の部品(
図3に示すように)を有しない剛性接続部と単純に連結されている場合、ダイAのZ軸方向の中心位置がZAからZ軸方向にずれ、ダイAの重量と、移動部分の量からZ軸方向に向かう負荷とが、アクチュエータ10及び連結ユニット20に加わる。したがって、連結ユニット20はZ軸方向に向かって反り、さらに、アクチュエータ10にZ軸方向の負荷が加わることがある。
図3Aに示すような連結ユニットを採用することにより、カムフォロア21がZ軸方向に移動可能であり、連結ユニット20及びアクチュエータ10に加えられるY軸方向にシフトするダイAからの負荷が軽減され又は無くなる。
【0041】
上述したように、連結ユニット20は、2つのカムフォロア21と、ベースプレート31上のスロットとを含む。これにより、ダイ及びアクチュエータに加わるZ方向およびY方向の両方におけるずれからの負荷軽減される。したがって、当該構成によって、アクチュエータ10に余分な負荷が加わることを防止し、連結ユニットの破損の可能性を低減し、さらには、アクチュエータ10への負荷を低減することができる。アクチュエータ10の破損を防止するとともに、製造者が比較的小さなアクチュエータを採用することを可能にすることによって射出成形システムのコストを低減することができ、システムは、その動作方向とは異なる方向の負荷に耐性のある、より大きなアクチュエータを有する必要がない。.また、この構成を採用することによって、射出成形システムの製造プロセスは、テーブルユニット100Bの過剰な位置調整手順や、側面ガイドローラ91、底面ガイドローラ92の射出成形機600への位置精度を高めるための過剰な手順を必要とせず、製造プロセスを簡略化することによってコストを低減する。
【0042】
このカムフォロア21は滑り部を伴って成形されており、例えば回転機構のない丸形状とすることができるし、正方形状とすることもできる。ここでいう滑り部とは、スロット孔(溝穴)の内側の表面に対して、小さな摩擦係数で移動可能であることを意味する。ここで、スロットは孔に限らず、ベースプレート31は孔の代わりに溝を有することができる。また、上記の例示的実施形態に係る連結ユニット20は4つの連結ブラケット23を有しているが、他の例示的実施形態に係る連結ユニットは他の形状を有する異なる数の連結ブラケットを含むことができる。また、1つまたは複数のシャフト22およびカムフォロア21を用いることができる。ここでも、カムフォロア21およびベースプレート31のスロットが係合されて、力をアクチュエータ10からダイAに伝達し、力の方向とは異なる方向に互いに対して移動可能である限り、カムフォロア21およびベースプレート31は、異なる構成を有することができる。例えば、ベースプレートは、連結ブラケットに固定された部品上に形成されたスロットに係合されるカムフォロアを含むことができる。また、上記連結ユニット20の構成については、
図9AのXZ面方向から見たビューを用いる。
【0043】
図9A-Bは、ダイA及びアクチュエータ10のための連結ユニット20を示す。アクチュエータ10には、直動型アクチュエータスライドタイプを用い、ダイA、Bの下にZ軸方向に配置し、ダイA、BのX軸方向における移動可能範囲をアクチュエータ10の全長範囲と重ねることにより、機械全体のコンパクト化を図ることができる。また、1つの駆動源を使用することで機械機構が簡素化され、機械の部品点数が少なくて済むので、機械コストが安くなる。また、アクチュエータ10は射出成形機600の外部に設置可能であり、アクチュエータ10のメンテナンスが容易に行える。
【0044】
図9A及び9Bは、いずれも連結アクチュエータ10と連結ユニット20を描いているが、連結ユニット20側とアクチュエータ10側の連結位置からアクチュエータ10までのZ軸方向の距離が異なる。
【0045】
図9Aでは、スライダ32をアクチュエータ10に取り付け、スロットを有するプレート31をスライダ32に取り付けている。反対側では、ダイAの固定部がベースプレート24を有し、連結プレート23とシャフト22とが組み立てられており、シャフト22の先端に回転体であるカムフォロアが取り付けられ、そして、カムフォロア21がプレート31のスロットに挿入されている。アクチュエータ10のスライダ32をX軸方向に移動させることによって、ダイAが移動する。
【0046】
ベースプレート24をダイAの中心からZ軸方向の負側に取り付けると押しやすくなる。また、ベースプレートをダイAのY軸方向の中心にできるだけ近づけて取り付けると押しやすくなる。しかし、ダイがY軸方向の可動部と固定部とに分離しているため、可動部と固定部とが金ダイの中心で分割されていると、ベースプレート24をダイAのY軸方向の中心に取り付けることができない。ベースプレート24を固定部に取り付ける場合、Y軸方向に移動可能なダイにできるだけ近づけて取り付ける方がよいだろう。
【0047】
ダイAを移動させることにより、ダイAの移動力と停止力がX軸の正負方向に必要となり、カムフォロア21とプレート31の作用点からの運動量がアクチュエータ10への負荷となる。アクチュエータ10の破壊を防止するためには、運動量からの負荷を低減することが重要である。
【0048】
運動量の長さは、カムフォロアのボトムエッジがプレート31上のスロットに接触してからアクチュエータの上面までの距離であり、この距離Zaを減少させることが重要である。
図9Aに示す構成では、スロット付きプレート31をアクチュエータ10側に締結し、カムフォロアをダイA側に締結して距離Zaを極力小さくすることにより、運動量を減少させ、アクチュエータ10への負荷を減少させる。
【0049】
次に、
図9Bでは、カムフォロア21がアクチュエータ10側に取り付けられ、スロット付きプレート25がダイA側にある場合について説明する。カムフォロア21をアクチュエータ10側に取り付けるには、カムフォロア21用のスライダ32にプレート39を取り付け、そして、プレート39にカムフォロア21を取り付ける必要がある。また、スロット付きプレート25は、シャフト22の底部先端に取り付けられ、カムフォロア21が挿入され、アクチュエータ10がX軸方向に移動することによって、ダイAが移動できる。
図9Aの構成と
図9Bの構成のいずれの構成でも、本実施形態の連結ユニットとして適用可能である。
【0050】
図9Bの場合、アクチュエータ10に対する運動量の距離は距離Zbとなり、この距離Zbは運動量を増加させるプレート39の部分について、
図9Aからの距離Zaと比較してより長くなり、アクチュエータ10への負荷は、
図9Aの構成よりも大きい。
【0051】
<金型間の連結ユニット>
本実施形態では、ダイA及びBはダイAとアクチュエータとの間に採用されたものと同様の一対の部分に連結され、互いに係合し、Y及びZ方向(ダイA、Bの移動方向とは異なる方向)に互いに対して移動可能である。カムフォロアはダイに取り付けられる連結ブラケットに取り付けることができ、スロットは係合と可動性の両方を可能にするために、他方のダイに固定される連結ブラケット上に形成することができる。
【0052】
ダイA及びダイBのための連結ユニット40が
図3Bに示されている。連結ユニット40は、ダイAに取り付けられるスロットを有する連結ブラケット41と、ダイBに取り付けられる連結ブラケット43とを含む。2つのカムフォロア42が連結ブラケット43の先端に接続され、ダイAとダイBとが、カムフォロア42を連結ブラケット41のスロットに挿入することによって連結される。連結ユニット40は、2つの部分を含んでいる。
【0053】
ダイAとダイBとの間の連結ユニット40は、連結ユニット20と同様であり、他方の部分に向かって移動可能である。また、連結ユニット40は、ダイがX方向に移動する際に、ダイ間でY軸方向又はZ軸方向のいずれかにずれが発生することにより生じる、連結ユニット40の反りを防止する構造を有する。また、ダイAがY軸方向またはZ軸方向にシフトすることにより、ダイAの位置とダイBの位置とのずれにより、連結ブラケット41が連結ブラケット43に対してシフトする。
【0054】
連結ブラケットの一方のシフトは他方の連結ブラケットのシフトを引き起こすこともあるが、他方の連結ブラケットのシフトの量は、2つのダイ間の剛性接続の構成と比較して、少なくとも減少させることができる。
【0055】
ダイAおよびダイBが移動しているとき、およびダイAおよびダイBの位置のうちの1つがY軸方向にシフトする場合、連結ブラケット41のスロットに挿入される連結ブラケット43のカムフォロア42はY軸方向にスロットに沿って移動し、これにより、ダイAおよびダイBにY軸方向に加えられるダイAおよびBのずれから発生する負荷を吸収することができる(
図6A、
図6B、
図6C)。また、ダイAおよびダイBが移動し、ダイAおよびダイBの位置がZ軸方向に互いにずれている場合、連結ブラケット41のスロットに挿入された連結ブラケット43のカムフォロア42はZ軸方向にスロットに沿って移動し、これにより、ダイAおよびダイBにZ軸方向に加えられるダイAおよびBのずれから発生する負荷を吸収することができる(
図7A、
図7B)。
【0056】
さらに、ダイBに連結されたダイAもアクチュエータ10に連結されており、ダイBのY軸方向又はZ軸方向へのシフトから発生するアクチュエータ10及び連結ユニット20にかかる負荷も低減することができる。
【0057】
カムフォロア42が滑り部を有することは良好であるが、上述の例についてはカムフォロア42はY軸又はZ軸に沿って回転可能な機構を有することができる。また、
図3Bには2つのカムフォロアが示されているが、カムフォロアの数は2つに限定されず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、連結ブラケット41と連結ブラケット43とを互いにZ方向にシフトすることができる場合には、カムフォロア42がスロットに係合している限り、Z方向にずらすことができる。さらに、連結ブラケット41と連結ブラケット43とがZ軸方向にシフトする場合には、連結ブラケット41の下面と連結ブラケット43の上面との間に隙間(空間距離、ギャップ)(
図3Cに示す長さ「X」)があることが良好であり、連結ブラケット41及び43同士がぶつからない程度に隙間が大きいと良い。
【0058】
<ブロック図と動作プロセスのフローチャート>
図4は、例示的な実施形態による、2つのダイを有する射出成形システムのブロック図を示す。射出成形システムは、システム全体を制御するシステムコントローラ200と、ダイAおよびダイBを移動させるアクチュエータ201と、射出成形機202とを含む。アクチュエータ201は上述し、
図3に示されるアクチュエータ10に対応し、射出成形機202は、
図1に示すような、射出成形機600に対応している。
【0059】
図5は、例示的な実施形態による、射出成形システムの動作プロセスのフロー図である。
図5を参照して、動作プロセスについて説明する。
図5のフロー図は、射出成形機202のために電源が投入され、ダイAが位置1にあり、ダイBが位置2にあるときに動作プロセスが開始することを示しているが、その条件にに限定されるものではない。位置1と位置2を
図2に示す。
【0060】
ステップS1において、システムコントローラ200は、オペレータが入力することができる初期設定情報を読み出す。初期設定では、例えば、ダイのための冷却時間またはダイの各々で生成されるべき成形部品の数を含む。冷却時間はユーザが入力してもよいし、ダイや樹脂の特性に応じて、射出成形機202又はシステムコントローラ200が、予め入力された情報に基づいて必要な冷却時間を算出してもよい。
【0061】
ステップS2において、システムコントローラ200は、ダイAが射出位置(位置2)に移動し、ダイBが冷却位置(位置3)に移動するように、アクチュエータ10を制御する。アクチュエータ10は、ダイAを位置1から位置2に移動させ、ダイBを位置2から位置3に移動させる。例えば、アクチュエータ10はまずダイAを射出位置に移動させ、次いで、射出成形機202は、樹脂をダイに射出し、次いで、樹脂を射出させた後、アクチュエータ10は、ダイAを射出位置から移動させ、同時にダイBを射出位置に移動させる。これにより、位置1でダイAと樹脂を冷却しながら、位置2でダイBに樹脂を射出することができる。このとき、ダイA及びアクチュエータ10のための連結ユニット20と、ダイA及びダイBのための連結ユニット40とは、滑り付きカムフォロア42及び21と、スロット付きプレート(ベースプレート31及び連結ブラケット41)とを含むので、上述したようにアクチュエータ10、連結ユニットおよびダイに加わる位置ずれからの荷重を軽減することができる。
【0062】
ステップS3において、システムコントローラ200は、射出位置にあるダイへの射出がそのダイについて初めてであるか否かを判定する。射出位置でのダイへの射出が初めてであると判定された場合は、処理はS6に進み、そうではない場合は、処理はS4に進む。
【0063】
ステップS4において、システムコントローラ200がステップS3においてステップS2の射出位置に位置するダイへの射出が初めてでないと判定した場合(言い換えれば、処理が後述するS15からS3に進む)、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御してダイを開放する(オープンにする)。ダイは、射出成形機202の静止側および可動側のプラテンに関する且つそれらのプラテンをダイで固定するクランプによって開放することができ、可動側のプラテンを後方(+Y方向)に移動させることによって、ダイが開放される。また、ダイを開放することにより、次のS5処理において射出成形機202はダイから成形部品を取り出す。
【0064】
ステップS5において、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御して、成形された部品を開いたダイから取り出す。成形部品については、射出成形機に取り付けられたオートハンドが、固定側ダイ(固定された金型、固定部、固定金型)と、ダイを開いて作成された可動側ダイ(可動金型、移動部、移動金型)との間の隙間(空間距離)に入り、オートハンドが、成形部品を真空吸着または把持して保持し、取り出し、特定のテーブルまたはベルトコンベア上に載置する。具体的には、位置1でダイAと射出された樹脂の冷却工程が終了し、ダイAを射出位置(位置2)に移動させ、ダイを開放して成形部品を取り出した後に、射出成形機202は、再びダイAに樹脂を射出することができる。また、ダイBと射出樹脂の冷却工程が終了した後、ダイBを射出位置に移動させ、射出成形機202が成形部品を取り出す。このように、ダイおよび当該ダイに射出された樹脂の1つが冷却されている間に、射出成形機202は、他方に樹脂を射出する。つまり、一方のダイに樹脂を射出して後から成形部品を取り出すまで、ダイと樹脂を冷却する射出位置にダイを残さずに、射出成形機202は、他方のダイに樹脂を射出できるので、射出成形システムは、ダイに樹脂を射出し、冷却し、成形部品を取り出すというサイクルを効率的に完了することができる。
【0065】
ステップS6において、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御してダイをクランプし、ステップS3においてステップS2の射出位置に位置するダイへの射出が初めてであると判定された場合(換言すれば、処理がS2から直接S3に進む)、処理はS5からS6に進む。ダイをクランプするために、射出成形機202は、射出成形機202の可動側のプラテンを閉じ、次いで、可動側のダイと固定側のダイとが互いに接触した後に、射出成形機202のクランプ機構がダイをクランプする。
【0066】
ステップS7において、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御して射出ノズルをダイに接触させ、樹脂射出の準備を行う。射出ノズルをダイに前進させる前に、システムコントローラ200は、静止側プラテンと静止側ダイとが一緒にクランプされていることを確認する。射出ノズルを前進させた後、システムコントローラ200は、射出ノズルと固定側ダイとの間の接触を確認して、射出成形機202がダイに樹脂を射出することができるかどうかをチェックする。
【0067】
ステップS8において、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御して、樹脂をダイに射出し、ダイ内部の圧力を保つ。具体的には、射出成形機上で予めセーブされているダイAの成形条件に従うことにより、射出成形機202は、射出ノズルから樹脂を射出させる射出処理を行い、射出ノズルから樹脂に加えられた圧力を保持するにする圧力保持処理を行う。
【0068】
ステップS9において、システムコントローラ200は、冷却時間のカウントを開始する。冷却時間はタイマ回路によってカウントされ、システムコントローラ200は、射出成形機上に予めセーブされているダイAのための成形条件に基づいて、所定の冷却時間が経過したかどうかをチェックする。冷却時間は例えば、樹脂がABS、成形部品の厚さが約2.0mm、成形部品がプリンタ外装部品のサイズ程度であれば約10秒であり、樹脂がPS、成形部品の厚さが約1.0mm、成形部品がプリンタのトナーカートリッジのサイズ程度であれば約5秒である。しかし、冷却時間は樹脂の品質、温度、及び形状によって変化する。
【0069】
ステップS10において、システムコントローラ200は、射出成形機における動作が完了しているか否かを判定する。この動作は例えば、成形部品の個数がユーザが設定した所定の個数に達した場合、又は射出成形システム100の電源が切断された場合に終了する。所定の動作が完了していれば処理を終了し、そうでなければ、処理はS11に進む。
【0070】
ステップS11において、システムコントローラ200は、ダイAおよびダイBを移動させるべきかどうかを判定する。ダイAおよびBの移動は、ダイBが射出位置で冷却される間のダイBの以前にセーブされた冷却時間(以下、Tb_in)が、ダイAが射出位置で冷却される間のダイAの以前にセーブされた冷却時間(以下、Ta_in)の2倍未満である場合に発生するが、Tb_inがTa_inの2倍以上である場合には移動は発生しない。Tb_inがTa_inの2倍以上である場合は、樹脂射出後のダイの切り替えは発生しない。一方、そうではない場合には、アクチュエータ10は、ダイAを位置1に移動させ、ダイBを位置2に移動させる。S11においてダイA及びBの位置を移動すると判定された場合は、処理はS12に進む。そうではない場合、処理はS16に進む。
【0071】
ステップS12において、システムコントローラ200は、射出成形機202を制御してダイを移動可能にするために少し開く。この工程において、射出成形機202は、静止側及び可動側のプラテン上に到達されたクランプをダイから解放し、例えば、可動側のプラテン上に5mm程度の小さな開口部を設けることによりダイを移動可能とする。小さな開口部の量はダイが移動可能である限り、任意の条件に変更可能である。
【0072】
ステップS13において、システムコントローラ200は射出成形機202を制御して、例えば、射出ノズルを約10mm後方に移動させて、ダイを可動にする。金型交換中の金型と射出ノズルの干渉による金型や射出ノズルの破損を防止するための工程である。射出ノズルの移動戻し量はダイと射出ノズルの干渉が避けられる範囲であれば、任意の範囲に設定できる。
【0073】
ステップS14において、システムコントローラ200は、ダイBが前のステップS3から射出位置にあった場合、ダイAが射出位置(位置2)に移動し、ダイBが冷却位置(位置3)に移動するように、アクチュエータ10を制御する。一方、ダイAが射出位置にあった場合、アクチュエータ10は、ダイAを位置2から位置1に移動させ、ダイBを位置3から位置2に移動させる。ダイの交換時には、ダイA及びアクチュエータ10のための連結ユニット20、及び、ダイA及びダイBのための連結ユニット40に滑り部を有する部分(部品)やスロットを有するプレートが含まれているため、上述したようにアクチュエータ10、連結ユニットおよびダイへの位置ずれからの負荷を軽減することができる。
【0074】
ステップS15において、システムコントローラ200は、位置2のダイに対して設定された条件に設定を変更する。ダイBに対して設定された条件、例えば、ダイBに適用する条件は、システムコントローラ200又は射出成形機202のメモリからロードされる。ステップS14において、位置2のダイがダイAからダイBに変更される場合、システムコントローラ200は、ダイAの設定からダイBの設定に変更する。システムコントローラ200は、射出条件、保持圧力、冷却条件などの設定を変更する。
【0075】
ステップS16において、システムコントローラ200は、冷却時間が経過したか否かを判定し、冷却処理が完了したか否かをチェックする。冷却が完了したと判定された場合、処理はS4に進み、完了していない場合、システムコントローラ200は、冷却時間が経過するまで待機する。
【0076】
このようにして、上記の例示的実施形態に係る射出成形システムは、単一のアクチュエータで2つのダイを安定して移動させることを可能にする。詳細には前述したように、アクチュエータ10とダイAとの間の連結ユニット20、及びダイAとダイBとの間の連結ユニット40は、滑り部を有する部分(部品)やスロットを有するプレートを有しているので、ダイA及びダイBの移動からY軸方向及びZ軸方向に負荷が生じても、それらの連結機構は、連結ユニット20、連結ユニット40及びアクチュエータ10の間のずれによる負荷を軽減することができる。
【0077】
本実施形態における連結ユニットは、2つのダイ間の連結ユニット、又はダイと駆動ユニットとの間の連結ユニットを含み、一方の側の構成要素(コンポーネント)及び他方の側の構成要素(コンポーネント)を接続している。2つの側面の間にずれが発生する可能性がある場合、一方の側面の構成要素は、他方の側面の構成要素に対してずれ方向に移動する。このとき、連結ユニットが単なる剛性のある金属部分であれば、位置ずれにより金属部分が反り、両方の構成要素に負荷がかかる。しかし、互いに対して移動可能な一対の部分(部品)を含む連結ユニットを導入することにより、連結ユニットが反ることを防止し、また、連結ユニットが、構成要素の位置ずれから発生する負荷を伝達することを防止する。その結果、連結ユニットの曲げ/曲がりの可能性や、曲がりによるアクチュエータの破損の可能性が減少したり、発生しなかったりする。
【0078】
また、冷却時間がダイAとダイBとの間で大きく異なる場合には、ダイAのサイクルとダイBのサイクルとが異なるので、ダイBがテーブル100C上で冷却されている間に、ダイAに対して射出処理を2回以上行うことができる。例えば、ダイAの1回の射出、冷却中にダイBを3回射出、冷却、取り出すことができるこのようにして、1つのダイが冷却されているときに、他のダイを射出し、冷却し、成形部品を取り出し、他のダイを再び射出することができる。そのため、冷却時間が異なる場合でも、射出成形機を利用する際の効率が高くなる。
【0079】
なお、上述の実施形態では、2つのダイが連結されているとして説明したが、これに限定されるものではない。アクチュエータ10とダイA自体との間の連結ユニット20は、ダイAとダイBとを連結する連結ユニット40なしでも有効である。
【0080】
また、連結ユニット20の構成は、2つのダイA、Bのみならず、アクチュエータ10によって3つ以上のダイが動かされる場合にも有効である。すなわち、いずれのダイにおいてもアクチュエータ10にY軸方向、Z軸方向に負荷を与えるような位置ずれがあったとしても、アクチュエータ10とダイAとの間を連結する連結ユニット連結ユニットが連結ユニット20の上述した構成と同様であれば、ダイ又はアクチュエータ10に加わる負荷が軽減される。このとき、ダイ間の連結ユニットが、連結ユニット40の上述した構成と似ておらず、2つのダイを互いに剛性的に固定するだけであっても、アクチュエータ10にかかる負荷を軽減することができる。
【0081】
また、ダイ間の連結ユニットについても、上記実施形態に限らず、3つ以上の金型が存在する場合には、上記連結ユニット40が2つのダイ間を連結することができる。
【0082】
また、複数のダイがアクチュエータ上のスライダ上及びテーブルユニット上にある場合には、1つのアクチュエータが複数のダイを移動させることになり、射出成形機は、効率的かつ低コストで射出成形することができる。射出成形システムは、射出成形機にスライダを挿入することにより、射出成形機の左右にダイを動かすことができる。
【0083】
さらに、成形部品を取り出すためにダイを開く状況では、ダイの可動部分が可動プラテン側に移動し、一方、ダイの固定部分は静止プラテン側にとどまる。したがって、射出成形機は、ダイの固定部の下にスライダを作ることにより、成形部品を取り出すことができる。
【0084】
しかしながら、ダイがその中心付近で分離される場合、ダイ間のずれを考慮する必要はないが、スライダ機構はダイを左右に移動させる機構以外の他の機構を必要とする。そのため、上記実施形態よりも、機械構成が複雑化したり、部品点数やコストが増大したりする場合がある。
【0085】
さらに、上記実施の形態では、X軸方向にライニングされたローラ上を移動するダイの例を説明したが、ローラを金型自体に取り付けても、テーブルの平面の間を移動する場合には上記の連結ユニットも有効である。
【0086】
また、別の実施形態によれば、連結ユニットの2つのベースプレートの間にもう1つのプレートを追加し、それをベースプレートに対してXY平面、XZ平面内で回転可能にすることができる。これにより、一方のダイがY軸方向にシフトする場合、他方ののダイ及びベースプレートの接触点を軸として、中間プレートがXY平面内を移動する。そのため、他のダイはY軸方向に移動する必要はない。連結ユニットの詳細な構造は、
図10~
図14を参照して後述する。
【0087】
また、上記実施の形態に係る連結ユニットを用いることにより、ダイ間の位置精度や転写ローラに対する位置精度が高くなくても、移動時に連結ユニットやアクチュエータにかかる負荷を軽減できるので、部品コストの低減や、組立処理における調整処理を省略して高精度化を図ることができる。
【0088】
また、上記実施形態では、滑り部を有する部品とスロットを有するプレートとの構成によって、ダイの位置ずれから発生する負荷を分散させる方法について説明したが、これに限定されるものではない。複数のダイの方向がアクチュエータによってX方向に移動する場合、Y軸方向とZ軸方向にそれぞれのダイに位置ずれから発生する負荷を分散させる構成である必要があるだけである。例えば、リニアガイドやシャフト、ブッシュ(bushing)の構成など、Y軸方向、Z軸方向に負荷を分散させるリニアガイドマシンの複数の機構を配置する。それとは別に、Y軸方向、Z軸方向に負荷を分散できるフローティングジョイントとすることができる。また、これは、
図8のようなブラケット構成で確立することができる。
【0089】
図8は、他の実施形態に係る連結ユニット40の構成を示す。
図8に示す連結ユニット40は、シャフト22、連結ブラケット41、連結ブラケット43、連結ブラケット44を含む。
【0090】
図8Aの場合、連結ブラケット43はアクチュエータ10と接続され、シャフト(突出部)22は連結ブラケット43と接続されている。連結ブラケット41には孔が形成され、この孔にシャフト22が挿入される。連結ブラケット44の一端は連結ブラケット41に接続され、連結ブラケット44の他端は金型Aに接続されている。この構成により、連結ユニット40(連結ブラケット44)は、
図3B、
図3Cに示す構成と比較して、Z方向の低い位置で金型Aに接続される。したがって、連結ユニット40は、アクチュエータ10から金型Aに効率よく力を伝達することができる。
【0091】
図8Bの場合、連結ブラケット43と連結ブラケット44はそれぞれアクチュエータ10と接続され、シャフト22は連結ブラケット43と連結ブラケット44の両方と接続される。連結ブラケット41には孔が形成され、この孔にシャフト22が挿入される。連結ブラケット41は金型Aと接続されている。連結ブラケット41は、連結ブラケット43と連結ブラケット44との間に位置している。この構成により、金型Aと連結ブラケット41とがZ方向に大きく移動すれば、連結ブラケット41がシャフト22から外れて滑るのを防止できる。
【0092】
なお、連結ユニット40だけでなく、連結ユニット20についても、
図8に示す構成を採用することができることに留意されたい。
【0093】
以上説明したように、上記実施形態によれば、上記構成を適応させることにより、連結ユニットの部分の一側面が、ずれ方向の他の部分に対して、反りを制限することにより移動可能となるので、ずれによる負荷を制限することができる。なお、ここでいう反りを制限することは、もちろん、反りを0にすることを意味するものではなく、上記構成を用いない場合に比べて反りを低減することができることを意味するものである。
【0094】
本開示の態様を、例示的な実施形態を参照して説明したが、本開示の態様は開示された例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0095】
(第2実施形態)
<連結ユニットの構成>
図10Aは、連結ユニット20、連結ユニット40および金型AおよびBの上面図であり、ならびに、
図10Bは、連結ユニット20、連結ユニット40および金型AおよびBの側面図である。
図10Cは、
図10Bに示す矢印の方向から断面Aを見た図であり、
図10Dは、
図10Bに示す矢印の方向から断面Bを見た図であり、、そして
図10Eは、それぞれ
図10Bに示す矢印の方向から断面Cの図を示す図である。これらの図において、フローティングジョイント300aは金型Aの固定型302aに固定され、連結ブラケット344は金型Aの固定型302aに固定され、フローティングジョイント300bは金型Bの固定型302bに固定される。ここでの固定型302がY軸方向に移動しない金型であり、可動型303は成形部品を取り出す際に、射出成形機600内部でY軸方向に移動する金型である。
【0096】
ここで、金型とローラの形状が個体差により完全に一致しているとは限らない。相互に異なる形状の2つの金型を用いて成形を行う場合がある。また、テーブルユニット100B又はテーブルユニット100Cの位置を射出成形機600に対して位置合わせすることが困難であるため、各機器に含まれるローラの位置合わせも困難である。
【0097】
金型のこの種の無視できる形状差は、ローラ位置又は高さの違いにより金型A又は金型Bを移動させる際にずれを発生させる。具体的には、Y軸方向、Z軸方向、θY方向、及びθZ方向に生じる負荷を連結ユニット20又は連結ユニット40に発生させる。特に、射出成形機600で型締め動作を行うと、θZ方向に大きな負荷が発生する。ここで、型締めとは、可動型303を固定型302に押し当てる動作と、樹脂を射出(注入)する準備を行う動作である。この例示的な実施形態では、フローティングジョイント300a及び300bが、このタイプの負荷を考慮して、連結ユニット20及び連結ユニット40にそれぞれ設置される。
【0098】
次に、フローティングジョイント300a及び300bの詳細について説明する。フローティングジョイント300a及び300bの構成は同じであるので、ここではフローティングジョイント300aを実施形態として説明する。
図11Aはフローティングジョイント300aの上面図であり、
図11Bは側面図であり、
図11Cは
図11Bに示す断面Dを矢印方向から見た図を示す。
【0099】
まず、
図11A及び
図11Bに示すように、フローティングジョイント300aは、Z軸方向に延びるパイプシャフト322bと、Y軸方向に延びるパイプシャフト322aとを備えている。パイプシャフト322bは、2本のボルト336bによってY軸方向にクランプされ、ブロック323に対して固定されている。パイプシャフト322aは、2本のボルト336aによってZ軸方向にクランプ固定され、ブロック323に対して固定されている。
【0100】
プレート329は金型Aに締結され、プレート327は連結ブラケット343に締結される。ここで
図11Cに示すように、位置決めピン330及び位置決めピン331は金型Aに設置されている。プレート329の中心に位置決めピン331用の精密孔を開け、この位置決めピン331が嵌まるように金型Aとプレート329を組み付け、
図11Cに示すように反時計回り方向にプレート329を回転させる。プレート329は、プレート329が位置決めピン330と接触する位置で、4つのボルト332~335で金型Aに締結される。
【0101】
パイプシャフト322bは、オイルフリーのブッシュ321bが挿入された2個のホルダ325bによって両端が保持されており、Z軸方向に沿ってスライド(摺動)することで移動することができる。パイプシャフト322aはオイルフリーのブッシュ321aが挿入された2個のホルダ325aによって両端を保持されており、Y軸方向に沿ってスライドすることで移動することができる。2つのホルダ325bはプレート329上に固定され、2つのホルダ325aはプレート327上に固定される。さらに、パイプシャフト322bの摺動性(スライダビリティ)を向上させるため、ホルダ325bに蓋326bを組み付けてこれを封止し、蓋326bの内面にグリース328bを塗布している。同様にホルダ325aに蓋326aを組み付けて封止し、蓋326aの内面にグリース328aを塗布する。
【0102】
さらに、パイプシャフト322bがホルダ325bに対して固定されていないため、プレート329上に固定された各部がパイプシャフト322bを軸として回転することができる。すなわち、Z軸を中心として回転させることができる。同様に、パイプシャフト322aがホルダ325aに対して固定されていないため、プレート327上に固定された各部がパイプシャフト322aを軸として回転することができる。すなわち、Y軸を中心として回転させることができる。
【0103】
図12(
図12A及び
図12B)は、
図11Aのエリア500の拡大図である。プレート329上にはY軸方向に沿って組み付けられた2本のストップピン324bがある。ストップピン324bとブロック323との間には隙間(空間距離)が設けられている。パイプシャフト322bを中心とする回転(θZ)がこの隙間において行われ、ストップピン324bとブロック323との接触により回転量が制御される。さらに、Y軸方向の平行運動の量は、ブロック323及びホルダ325aの各側面パネルの接触によって制御される。ブロック323がY軸方向に平行に移動したとしても、動作の量の範囲内であれば、ブロック323がストップピン324bと接触することができる。
【0104】
図12Bは、
図11Bのエリア510の拡大図である。プレート327にはZ軸方向に沿って組み付けられた2本のストップピン324aがある。ストップピン324aとブロック323との間には隙間(空間距離)が設けられている。パイプシャフト322aを中心とする回転(θY)がこの隙間において行われ、ストップピン324aとブロック323との接触により回転量が制御される。さらに、Z軸方向の平行運動の量は、ブロック323及びホルダ325bの各側面パネルの接触によって制御される。ブロック323がZ軸方向に平行移動したとしても、動作の量の範囲内であれば、ブロック323がストップピン324aと接触することができる。
【0105】
<フローティングジョイント移動>
次に、フローティングジョイント300aの移動について詳細に説明する。
図13A~Fは、金型A側の部分がZ軸を中心として回転し、金型A側の部分がY軸方向に平行に移動した状態を示している。
図14A~Fは、金型A側の部分がY軸を中心として回転し、金型A側の部分がZ軸方向に平行に移動した状態を示している。
【0106】
図13A~Fを用いて、アクチュエータ10のY軸方向の中心位置に対して金型AのY軸方向の中心位置が+Y軸方向にシフトしている場合について説明する。アクチュエータ10は、連結ブラケット343の側面(側部)に位置している。金型Aの移動中に金型A及びアクチュエータ10の位置がY軸方向にずれてしまった場合、パイプシャフト322a及びブロック323を含む金型A側の部分(プレート329に固定されている部分)は、オイルフリーのブッシュ321aが挿入されたホルダ325aの内部をパイプシャフト322aがスライドすることにより、+Y軸方向に移動する。これにより、アクチュエータ10及び金型AのY軸方向に生じるずれの負荷を吸収できるようになる。
【0107】
図13Bを用いて、アクチュエータ10のY軸方向の中心位置に対して金型AのY軸方向の中心位置が-Y軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、パイプシャフト322aおよびブロック323を含む金型A側の部分は、オイルフリーのブッシュ321aが挿入されているホルダ325aの内部をパイプシャフト322aがスライドすることによって、-Y軸方向に移動する。これにより、アクチュエータ10及び金型AのY軸方向のずれの負荷を吸収できるようになる。
【0108】
金型AがY軸方向に移動した場合、金型A側の部分が、パイプシャフト322aを介してアクチュエータ10側の部分に対してY軸方向に移動できることが保証される。その結果、アクチュエータ10及び連結ユニット20への負荷を軽減することができる。金型A及びアクチュエータ10のY軸方向に生じる位置ずれが大きいほど、連結ユニット20及びアクチュエータ10に加わる負荷が大きくなるが、本実施形態の構成によれば、加わる負荷を低減または完全にな無くすことができる。
【0109】
連結ユニット20の機構が存在せず、単にロッド形状の構成要素で連結されているだけであれば、アクチュエータ10のY軸方向の中心に対して金型AのY軸方向の中心がY軸方向にずれていることに応じて、金型Aの重量及びY軸方向の移動部の負荷がアクチュエータ10及び連結構成要素に加わることになる。したがって、連結構成要素はY軸方向に対して屈曲してしまい、さらに、Y軸方向の負荷もアクチュエータ10に加わってしまうことになる。この例示的な実施形態の連結ユニット20の機構によれば、金型Aがアクチュエータ10に対してY軸方向に移動することが可能となるので、連結ユニット20及びアクチュエータ10への負荷が軽減される。
【0110】
図13Cを用いて、アクチュエータ10のθZ軸方向の中心位置に対して金型AのθZ軸方向の中心位置が+θZ軸方向にシフトしている場合について説明する。金型Aの型締め時に金型A及びアクチュエータ10の位置がθZ軸方向にずれると、金型A側の部分(プレート329に固定されている部分)がパイプシャフト322bを介して+θZ軸方向に回転する。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθZ軸方向のずれの負荷を吸収できるようになる。
【0111】
図13Dを用いて、アクチュエータ10のθZ軸方向の中心位置に対して金型AのθZ軸方向の中心位置が-θZ軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、金型A側の部分は、パイプシャフト322bを介して-θZ軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθZ軸方向のずれの負荷を吸収できるようになる。
【0112】
金型AがθZ軸方向に移動した場合、金型A側の部分がパイプシャフト322bを介してアクチュエータ10側の部分に対してθZ軸方向に移動できることが保証される。その結果、アクチュエータ10及び連結ユニット20への負荷を軽減することができる。金型A及びアクチュエータ10のθZ軸方向に生じるずれが大きいほど、連結ユニット20及びアクチュエータ10に加わる負荷が大きくなるが、この例示的な実施形態の構成によれば、加わる負荷を低減又は完全になくすことができる。
【0113】
連結ユニット20の機構が存在せず、単にロッド形状の構成要素で連結されているだけであれば、アクチュエータのθZ軸方向の中心に対して金型AのθZ軸方向の中心がθZ軸方向にずれたことに応じて、型締めによる金型AのθZ軸方向の移動部の負荷がアクチュエータ10及び連結構成要素にかかることになる。したがって、連結構成要素はθZ軸方向に屈曲し、さらに、θZ軸方向の負荷もアクチュエータ10に加わることになる。この例示的な実施形態の連結ユニット20によれば、金型Aがアクチュエータ10に対してθZ軸方向に移動することが可能となるので、連結ユニット20及びアクチュエータ10への負荷が軽減されることになる。
【0114】
図13Eを用いて、金型AのY軸方向の中心位置がアクチュエータ10のY軸方向の中心位置に対して+Y軸方向にシフトしている場合、および、金型AのθZ軸方向の中心位置がアクチュエータ10のθZ軸方向の中心位置に対して金型Aの+θZ軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、パイプシャフト322a及びブロック323を含む金型A側の部分は、オイルフリーのブッシュ321aが挿入されたホルダ325aの内部をパイプシャフト322aがスライドすることによって、+Y軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのY軸方向に生じるずれの負荷を吸収することが可能となる。さらに、金型A側の部分がパイプシャフト322bを介して+θZ軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθZ軸方向に生じるずれの負荷を吸収することができるようになる。
【0115】
図13Fを使用して、金型AのY軸方向の中心位置がアクチュエータ10のY軸方向の中心位置に対して-Y軸方向にシフトしている場合、および、金型AのθZ軸方向の中心位置がアクチュエータ10のθZ軸方向の中心位置に対して-θZ軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、パイプシャフト322aおよびブロック323を含む金型A側の部分は、オイルフリーのブッシュ321aが挿入されたホルダ325aの内部をパイプシャフト322aがスライドすることによって-Y軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのY軸方向に生じるずれの負荷を吸収することが可能となる。さらに、金型A側の部分がパイプシャフト322bを介して-θZ軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθZ軸方向に生じるずれの負荷を吸収することができるようになる。
【0116】
図14Aを用いて、アクチュエータ10のZ軸方向の中心位置に対して金型AのZ軸方向の中心位置が-Z軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、金型A側の部分(プレート329に固定された部分)は、オイルフリーのブッシュ321bが挿入されたホルダ325bの内部をパイプ軸322bがスライドすることにより-Z軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのZ軸方向に生じるずれの負荷を吸収することができるようになる。
【0117】
図14Bを用いて、アクチュエータ10のZ軸方向の中心位置に対して金型AのZ軸方向の中心位置が+Z軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、オイルフリーブッシュ321bが挿入されたホルダ325bの内部をパイプシャフト322bがスライドすることにより、金型A側の部分が-Z軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのZ軸方向に生じるずれの負荷を吸収することが可能となる。
【0118】
図14Cを用いて、アクチュエータ10のθY軸方向の中心位置に対して金型AのθY軸方向の中心位置が+θY軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、パイプシャフト322b及びブロック323を含む金型A側の部分(プレート329に固定された部分)は、パイプシャフト322aを介して+θY軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθY軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。
【0119】
図14Dを用いて、アクチュエータ10の-θY軸方向の中心位置に対して金型AのθY軸方向の中心位置が-θY軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、パイプシャフト322bおよびブロック323を含む金型A側の部分は、パイプシャフト322aを介して-θY軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10のθY軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。
【0120】
図14Eを用いて、金型AのZ軸方向の中心位置がアクチュエータ10のZ軸方向の中心位置に対して、-Z軸方向にシフトしている場合、および、金型AのθY軸方向の中心位置がアクチュエータ10のθY軸方向の中心位置に対して、+θY軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、オイルフリーのブッシュ321bが挿入されたホルダ325bの内部をパイプシャフト322bがスライドすることにより、金型A側の部分が-Z軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのZ軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。さらに、パイプシャフト322b及びブロック323を含む金型A側の部分がパイプシャフト322aを介して+θY軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθY軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。
【0121】
図14Fを用いて、金型AのZ軸方向の中心位置がアクチュエータ10のZ軸方向の中心位置に対して-Z軸方向にシフトしている場合、および、金型AのθY軸方向の中心位置がアクチュエータ10のθY軸方向の中心位置に対して-θZ軸方向にシフトしている場合について説明する。この場合、オイルフリーのブッシュ321bが挿入されたホルダ325bの内部をパイプシャフト322bがスライドすることにより、金型A側の部分が-Z軸方向に移動することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのZ軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。さらに、パイプシャフト322b及びブロック323を含む金型A側の部分がパイプシャフト322aを介して-θY軸方向に回転することになる。その結果、アクチュエータ10及び金型AのθY軸方向のずれの負荷を吸収することが可能となる。
【0122】
以上説明したように、ブロック323と共にパイプシャフト322a、322bを締結する部分(部品)が、オイルフリーのブッシュ321a、321bを挿入したホルダ325a、325bの内側で、Y軸、Z軸、θY軸、θZ軸の各方向にスライド可能な構成となっている。その結果、金型A及びアクチュエータ10のY軸、Z軸、θY軸、θZ軸方向それぞれのずれの負荷を軽減することができる。
【0123】
つまり、これにより、連結ユニット20、連結ユニット40、最終的にはアクチュエータ10に余分な負荷が掛からないようにし、連結ユニット20及び連結ユニット40の破損の可能性を低減するとともに、アクチュエータ10の破損を低減することもできる。さらに、アクチュエータ10に加わる負荷が大きい場合には、その負荷を考慮してより大型のアクチュエータを選定する必要があるが、それが不要なため、コストダウンにも繋がる。また、この構成を選択することにより、射出成形機600に対するテーブルユニット100Bの過剰な位置調整や、サイドガイドローラやボトムガイドローラの過剰な位置調整が不要となり、装置部品の精密緩みによるコストダウンや組立時の組立工数の低減が図れる。
【0124】
本出願は、2018年7月24日に出願された米国特許出願第62/702701号の利点および優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。