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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ラピッドヒートサイクル成形
(51)【国際特許分類】
   B29C 43/52 20060101AFI20240806BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240806BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20240806BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B29C43/52
B29C70/42
B29K101:12
B29K105:08
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2023501436
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021040804
(87)【国際公開番号】W WO2022011088
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】63/050,596
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/370,161
(32)【優先日】2021-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523008428
【氏名又は名称】アリス コンポジッツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100128428
【弁理士】
【氏名又は名称】田巻 文孝
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッドソン エリック
(72)【発明者】
【氏名】エスコウィッツ イーサン
(72)【発明者】
【氏名】ディエン アルノー
(72)【発明者】
【氏名】ベンダー クリストファー
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-239536(JP,A)
【文献】米国特許第04490321(US,A)
【文献】国際公開第2006/103868(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0083503(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101146671(CN,A)
【文献】特開平09-323200(JP,A)
【文献】国際公開第2015/052375(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/00-43/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合部品を形成するためのラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、前記方法は、
a)供給成分の集合物を収容した金型を第1の加熱ステーションに位置決めするステップを含み、前記第1の加熱ステーションは、2つの定盤を有する第1のホットプレスを含み、前記定盤は、前記供給成分中の樹脂の処理温度よりも高い温度を有し、
b)前記第1のホットプレスの前記定盤を前記金型に押し付けて圧力を前記金型に加えることによって前記金型を加熱するステップを含み、このステップは、
(i)前記圧力を第1の圧力に維持し、ついには、前記金型の温度が前記樹脂の処理温度の±約25℃の範囲に収まるようにするステップと、
(ii)前記金型の前記温度が前記処理温度の±約25℃の範囲に収まった後、前記金型を前記第1の加熱ステーションから第2の加熱ステーションに移送し、次に、圧力を第2の圧力まで高めるステップとを含み、
c)前記金型を第1の冷却ステーションに移送するステップを含み、前記第1の冷却ステーションは、2つの定盤を有する第1のコールドプレスを含み、前記定盤は、前記樹脂の前記処理温度よりも低い第1の温度を有し、
d)前記第1のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けて圧力を前記金型に加えることによって前記金型を冷却するステップを含み、前記加えられた圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに十分であり、それにより複合部品が作られ、
e)前記金型が突き出し温度に達すると前記複合部品を突き出すステップを含む、方法。
【請求項2】
前記第2の圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な圧力よりも低く、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な圧力の低くても約60%の圧力である、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記第2の圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な前記圧力である、請求項記載の方法。
【請求項4】
前記金型を冷却する前記ステップは、
前記金型を前記第1の冷却ステーションで第2の温度まで冷却するステップを含み、前記第2の温度は、前記樹脂の前記処理温度よりも低いが前記突き出し温度よりも高い温度であり、
前記金型を前記第2の温度まで冷却した後、前記金型を第2のコールドプレスに移送するステップを含み、前記第2のコールドプレスは、前記突き出し温度よりも低い温度に保たれている2つの定盤を有し、
第2のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けることによって圧力を前記金型に加え、ついには、前記金型の前記温度が前記突き出し温度まで下がるようにするステップとを含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第2の温度は、前記樹脂の結晶化温度である、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記金型は、前記第1のコールドプレスの場合よりも前記第2のコールドプレスの場合の方が迅速に冷える、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記金型は、第1の区分および第2の区分を有し、前記第1のホットプレスの前記定盤を前記金型に押し付けることによって圧力を前記金型に加える前記ステップは、前記第1の区分を第1の速度で加熱するステップおよび前記第2の区分を前記第1の速度とは異なる第2の速度で加熱するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記金型は、第1の区分および第2の区分を有し、前記第1のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けることによって圧力を前記金型に加える前記ステップは、前記第1の区分を第1の速度で冷却するステップおよび前記第2の区分を前記第1の速度とは異なる第2の速度で冷却するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記複合部品を突き出した後、供給成分の次の集合物を前記金型内に装填するステップおよびステップa)~ステップe)を繰り返すステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
複合部品を形成するためのラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、前記方法は、
(a)供給成分の集合物を収容した金型を2つの加熱状態の定盤を有する第1のホットプレス内で加熱するステップを含み、前記金型は、第1の圧力下に維持され、
(b)前記モールドを、2つの加熱状態の定盤を有する第2のホットプレスに移送するステップを含み、圧力を前記第1の圧力から前記第1の圧力よりも高い第2の圧力まで増大させ、
(c)前記金型の温度が処理温度を超えた後、前記金型を2つの冷却状態の定盤を有する第1のコールドプレスに移送するステップを含み、圧力を前記第1のコールドプレス内で前記第2の圧力と少なくとも同じほど高い第3の圧力に維持し、前記第3の圧力は、前記供給成分の前記集合物を圧密化するのに十分であり、
(d)前記冷却状態の定盤を前記金型に押し付けて圧力を前記金型に加えることによって前記金型を冷却するステップを含み、それにより前記複合部品が作られ、
(e)前記金型が突き出し温度に達すると前記複合部品を突き出すステップを含む、方法。
【請求項11】
前記金型を第2のホットプレスに移送する前記ステップは、前記金型の温度が前記供給成分中の樹脂の処理温度を超えたときに前記金型を移送するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第2の圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な圧力よりも低く、前記第3の圧力の低くても約60%の圧力である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記金型は、第1の時間の間、前記第1のホットプレスの中にあり、前記金型は、第2の時間の間、前記第2のホットプレスの中にあり、前記第1の時間と前記第2の時間は、等しい、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記金型は、前記第2の時間に等しい第3の時間の間、前記第1のコールドプレスの中にある、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記供給成分の前記集合物は、繊維および樹脂を含み、前記樹脂は、非晶質熱可塑性ポリマーである、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記供給成分の前記集合物は、繊維および樹脂を含み、前記樹脂は、半結晶質熱可塑性ポリマーであり、前記第1のコールドプレス内において、前記金型は、前記樹脂の結晶化温度まで冷却され、前記方法は、
前記金型が前記結晶化温度まで冷却された後、前記金型を第2のコールドプレスに移送するステップを含み、前記第2のコールドプレスは、前記突き出し温度よりも低い温度に維持されている2つの定盤を含み、
前記第2のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けることによって圧力を前記金型に加え、ついには、前記金型の前記温度が前記突き出し温度まで下がるようにするステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
前記金型を前記第1のコールドプレス内で第1の速度で冷却するステップおよび前記金型を前記第2のコールドプレス内で第2の速度で冷却するステップを含み、前記第2の速度は、前記第1の速度よりも速い、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記複合部品を突き出した後、供給成分の次の集合物を前記金型内に装填するステップと、ステップa)~ステップe)を繰り返すステップとを含む、請求項10記載の方法。
【請求項19】
複合部品を形成するためのラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、前記方法は、
a)供給成分の集合物を収容した金型をホットプレスのところに位置決めするステップを含み、前記ホットプレスは、2つの第1の定盤および2つの第2の定盤を含み、前記ホットプレスの前記2つの第1の定盤は、加熱されておらず、前記ホットプレスの前記2つの第2の定盤は、加熱されており、
b)前記金型を前記ホットプレス内で次のようにして加熱するとともに加圧するステップを含み、すなわち、
(i)前記ホットプレスの前記第1の定盤を前記金型の第1および第2の表面に押し付け、そして
(ii)前記ホットプレスの前記第2の定盤を前記金型の第3および第4の表面に押し付け、
c)2つの第1の定盤および2つの第2の定盤を有する第1のコールドプレスまで前記金型を移送するステップを含み、
d)前記金型を前記コールドプレス内で次のようにして冷却するとともに加圧して前記複合部品を形成するステップを含み、すなわち、
(i)前記コールドプレスの前記第1の定盤を前記金型の第1および第2の表面に押し付け、そして
(ii)前記コールドプレスの前記第2の定盤を前記金型の第3および第4の表面に押し付け、
e)前記金型が突き出し温度に達すると前記複合部品を突き出すステップを含む、方法。
【請求項20】
前記複合部品を突き出した後、供給成分の次の集合物を前記金型内に装填するステップと、ステップa)~ステップe)を繰り返すステップとを含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
複合部品を形成するためのラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、前記方法は、
a)供給成分の集合物を収容した金型を第1の加熱ステーションに位置決めするステップを含み、前記第1の加熱ステーションは、2つの定盤を有する第1のホットプレスを含み、前記定盤は、前記供給成分中の樹脂の処理温度よりも高い温度を有し、
b)前記第1のホットプレスの前記定盤を前記金型に押し付けて圧力を前記金型に加えることによって前記金型を加熱するステップを含み、このステップは、
(i)前記圧力を第1の圧力に維持し、ついには、前記金型の温度が前記樹脂の処理温度の±約25℃の範囲に収まるようにするステップと、
(ii)前記金型の前記温度が前記処理温度の±約25℃の範囲に収まった後、圧力を第2の圧力まで高めるステップとを含み、前記第2の圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な圧力よりも低く、前記供給成分を完全に圧密化するのに必要な圧力の低くても約60%の圧力であり、
c)前記金型を第1の冷却ステーションに移送するステップを含み、前記第1の冷却ステーションは、2つの定盤を有する第1のコールドプレスを含み、前記定盤は、前記樹脂の前記処理温度よりも低い第1の温度を有し、
d)前記第1のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けて圧力を前記金型に加えることによって前記金型を冷却するステップを含み、前記加えられた圧力は、前記供給成分を完全に圧密化するのに十分であり、それにより複合部品が作られ、
e)前記金型が突き出し温度に達すると前記複合部品を突き出すステップを含む、方法。
【請求項22】
前記金型の前記温度が前記処理温度の±25℃の範囲に収まった後、前記金型を前記第1の加熱ステーションから第2の加熱ステーションに移送するステップを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記金型を冷却する前記ステップは、
前記金型を前記第1の冷却ステーションで第2の温度まで冷却するステップを含み、前記第2の温度は、前記樹脂の前記処理温度よりも低いが前記突き出し温度よりも高い温度であり、
前記金型を前記第2の温度まで冷却した後、前記金型を第2のコールドプレスに移送するステップを含み、前記第2のコールドプレスは、前記突き出し温度よりも低い温度に保たれている2つの定盤を有し、
第2のコールドプレスの前記定盤を前記金型に押し付けることによって圧力を前記金型に加え、ついには、前記金型の前記温度が前記突き出し温度まで下がるようにするステップとを含む、請求項21記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維複合材、特に、繊維複合部品を製作するための圧縮成形法のサイクル時間を短縮する方法に関する。
【0002】
〔関連出願の参照〕
本件は、2020年7月10日に出願された米国特許出願第63/050,596号の優先権主張出願であり、この米国特許出願を参照により引用し、その記載内容を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
「ラピッドヒートサイクル成形」(Rapid heat cycle molding:RHCM)は、幾つかの成形プロセスのサイクル時間を短縮するプロセスである。RHCMは、典型的には、実施するのに費用が極めて高くつき、しかも相当大きな量の電力を必要とする。また、この解決策は、一様な加熱や冷却を達成し、しかも熱により引き起こされる亀裂発生を回避するには相当巧みな技術を必要とする。
【0004】
熱可塑性複合材料の圧縮成形のため、金型(温度)サイクル時間は、通常、圧縮成形法における速度制限ステップである。しかしながら、圧縮成形法のためのRHCM解決策は非常に少なかった。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、圧縮成形法に用いられる圧縮用金型を効率的かつ迅速に、しかも費用効果の良い仕方で加熱したり冷却したりする手法を提供する。コア(雄型)部分およびキャビティ(雌型)部分を有する圧縮用金型を使って作業して、本発明は、幾つかの実施形態では、
・供給成分の集合物を金型のキャビティ部分内に配置するステップ、
・金型をホットプレスの2つの高温定盤相互間に配置するステップ、
・2つの高温定盤を金型に押し付けることによって金型を加熱するステップ、
・コールドプレスの2つの金型を低温定盤相互間に配置するステップ、
・2つの低温定盤を金型に押し付けることによって金型を冷却するステップ、および
・部品を金型から突き出し、そして供給成分の次の集合物を金型のキャビティ部分内に配置してプロセスを繰り返すステップを含む。
【0006】
幾つかの実施形態では、加熱作業は、2つの段階を含み、かかる加熱作業は、1つ、2つ、または3つ以上の互いに異なる加熱ステーションで実施されるのが良い。幾つかの実施形態では、冷却作業は、2つの段階を含み、かかる冷却作業は、1つ、2つ、または3つ以上の互いに異なる冷却ステーションで行われるのが良い。幾つかの実施形態では、冷却作業は、加熱作業よりも幾分高い圧力で実施され、かかる実施形態に関し、これは、供給成分を完全に圧密化するのは、冷却作業の初期の一部の間である。
【0007】
幾つかの実施形態では、本発明は、ラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、
a)供給成分の集合物を収容した金型を第1の加熱ステーションに位置決めするステップを含み、第1の加熱ステーションは、2つの定盤を有する第1のホットプレスを含み、定盤は、供給成分中の樹脂の処理温度よりも高い温度を有し、
b)第1のホットプレスの定盤を金型に押し付けて圧力を金型に加えることによって金型を加熱するステップを含み、
c)金型を第1の冷却ステーションに移送するステップを含み、第1の冷却ステーションは、2つの定盤を有する第1のコールドプレスを含み、定盤は、樹脂の処理温度よりも低い第1の温度を有し、
d)第1のコールドプレスの定盤を金型に押し付けて圧力を金型に加えることによって金型を冷却するステップを含み、加えられた圧力は、供給成分を完全に圧密化するのに十分であり、それにより複合部品が作られ、
e)金型が突き出し温度に達すると複合部品を突き出し、そして供給成分の次の集合物を金型内に装填するステップを含み、
f)ステップa)~ステップe)を繰り返すステップを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0008】
幾つかの実施形態では、本発明は、ラピッドヒートサイクル圧縮成形方法であって、
(a)供給成分の集合物を収容した金型を2つの加熱状態の定盤を有する第1のホットプレス内で加熱するステップを含み、金型は、第1の圧力下に維持され、
(b)モールドを、2つの加熱状態の定盤を有する第2のホットプレスに移送するステップを含み、圧力を第1の圧力から第1の圧力よりも高い第2の圧力まで増大させ、圧力を第1の圧力から第1の圧力よりも高い第2の圧力まで増大させ、
(c)金型の温度が処理温度を超えた後、金型を2つの冷却状態の定盤を有する第1のコールドプレスに移送するステップを含み、圧力を第1のコールドプレス内で第2の圧力と少なくとも同じほど高い第3の圧力に維持し、第3の圧力は、供給成分の集合物を圧密化するのに十分であり、
(d)冷却状態の定盤を金型に押し付けて圧力を金型に加えることによって金型を冷却するステップを含み、それにより複合部品が作られ、
(e)金型が突き出し温度に達すると複合部品を突き出し、そして供給成分の次の集合物を金型内に装填するステップを含み、
(f)ステップ(a)~ステップ(e)を繰り返すステップを含むことを特徴とする方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の例示の実施形態に係るRHCM法のブロック流れ図である。
図2A図1の方法を実施するための装置の第1の実施形態を示す図である。
図2B図1の方法を実施するための装置の第2の実施形態を示す図である。
図2C図1の方法を実施するための装置の第3の実施形態を示す図である。
図3】本教示に従ってRHCMの実施形態に関して温度および圧力との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
定義:以下の用語を本明細書および特許請求の範囲における使用のために定義する。
・「トウ」(Tow )は、繊維の束(すなわち、繊維束)を意味し、これらの用語は、本明細書においては、別段の指定がなければ互換的に用いられる。トウは、典型的には、千単位での繊維の番号付けに利用されており、すなわち、1kトウ、4kトウ、8kトウなどである。
・「プレプレグ」は、樹脂を含浸させた繊維を意味している。
・「トウプレグ」は、樹脂を含浸させた繊維束(すなわち、トウ)を意味している。
・「繊維束系プレフォーム」は、複数の一方向に整列した同一長さの樹脂湿潤繊維の束を意味している。各束中の複数の繊維は、典型的には、千の倍数で表される(例えば、1K、10K、24Kなど)。繊維は、これらのホストプレフォームの主要軸線と整列している。束は、多くの場合、長い1本のトウプレグから調達される(しかしながら、必ずしもそうではない)。すなわち、束は、所望のサイズに切断されたトウプラグのセグメントであり、多くの場合、成形中の特定の部品に合うように特定の形態に合わせて形作られる(例えば、曲げられ、撚られるなど)。変形例として、繊維の束は、当業者には知られているように、直接的に含浸プロセスから調達される場合がある。調達源が何であれ、繊維束、それ故にプレフォームは、任意適当な断面、例えば、円形、長円形、三葉形、および多角形(これらには限定されない)を有する場合がある。しかしながら、断面のアスペクト比(幅と厚さの比)は、約0.25~約6である。すなわち、「繊維束系プレフォーム」は、比較的フラットな形状因子から区別され、明示的に、(i)テープ(典型的には、約10~約30のアスペクト比―上述した断面―を有する)、(ii)繊維のシート、および(iii)積層板(ラミネート)の任意サイズの異形片を含まない。
・「圧密化」は、成形/二次成形技術において、繊維/樹脂のグルーピングにおいて、ボイドまたは空隙を可能な限りかつ完成品に対して許容可能な程度まで除くことを意味している。これは、通常、ガス加圧化(または真空)使用によるか機械的に力を加えること(ローラなど)によるかのいずれかにより著しく高い圧力を必要とするとともに高い温度(樹脂を軟化/溶融するため)を必要とする。
・「部分圧密化」は、成形/二次成形技術において、繊維/樹脂のグルーピングにおいて、ボイドまたは空隙を完成品にとって必要な程度までは除かないことを意味している。概算として、十倍から百倍の高い圧力が完全圧密化と部分圧密化との関係において必要とされる。さらに極めて大まかに一般化して言えば、繊維複合材料を完全圧密化の約80パーセントまで圧密化するためには、完全圧密状態を得るのに必要な圧力の20パーセントしか必要としない。
・「圧縮成形」は、ある期間にわたって供給成分に熱および圧力を加えるプロセスを含む成形法である。本出願人のプロセスに関し、加えられる圧力は、通常、約500psiから約3000psiまでの範囲内にありかつ用いられる特定の樹脂の関数である温度は、典型的には、約150℃から約400℃までの範囲内にある。熱を加えることにより樹脂の温度がその融点よりも高い温度までいったん上げられると、樹脂は、もはや固体ではなくなる。次に、樹脂は、加えられた圧力により金型の幾何学的形状と同じ形を取る。高い圧力および高い温度が典型的には数分間保たれる。しかる後、金型を圧力源から取り外して冷却する。いったん冷却すると、完成品を金型から突き出す。
・「約」または「実質的に」は、記載した数値または呼び値に対して±20%を意味する。
・他の定義が説明の前後関係において本明細書中のどこか他の場所に提供される。
【0011】
供給成分:本発明の実施形態と関連して用いられる供給成分としては、繊維束系プレフォーム、プレプレグテープ、ロングチョップトプレプレグ、ショートチョップトプレプレグ、ニート(neat)樹脂ペレット、または上記の任意の組み合わせが挙げられる。使用にあたり、本プロセスと関連して、これらの成分は、金型キャビティ内に「レイアップ」として個別的に配置されるのが良い。変形例として、また好ましくは、成分の形状因子が許す程度まで、任意の上述の種類の成分のうちの1つ以上を金型キャビティ内への配置に先立って、互いにグルーピングするとともに互いに少なくともルーズに束ねるのが良く、それにより、互いに対するこれらの位置を維持するのが良い。かくして、複数の繊維束系プレフォームは、一緒に束ねられるのが良い。あるいは、複数の繊維束を利用したプレフォームおよびプレプレグテープを一緒に束ねても良いことなどが行われる。上述した種類の供給成分のうちの任意の1つ以上のかかる束ねグルーピングを本明細書では「プレフォームチャージ」と言う。プレフォームチャージの形状は、通常、意図した部品または少なくともその一部分の形状と鏡像関係をなしており、それ故、この部品を形成する金型キャビティ(または少なくともその一部分)の形状と鏡像関係をなす。これについては、米国特許出願公開第2020/0114596号明細書および米国特許出願第16/877,236号明細書を参照されたい。なお、これら特許文献を参照により引用し、これらの記載内容を本明細書の一部とする。注目できることとして、本明細書において提供されているプレフォームチャージの定義は、プレフォームチャージに含まれる場合のある成分の種類に関して、上述の特許文献に提供されている定義とは幾分異なっている場合がある。
【0012】
繊維/樹脂が完全に圧密化された完成品と比較して、プレフォームチャージでは、プレフォームは、部分的に圧密化されるに過ぎない(完全圧密化に十分な圧力および場合によっては十分な温度さえも欠いている)。一例を挙げると、本出願人の圧縮成形法は、数千psiの圧力で行われる場合が多いが、本教示に従ってプレフォームチャージを作るために成分に加えられる下向きの圧力は、代表的には、約10psiから約100psiまでの範囲にある。かくして、ボイドは、プレフォームチャージ内に残っており、したがって、プレフォームチャージは、完成品として使用できない。本明細書で用いられる「供給成分の集合物」という用語は、供給成分のレイアップかプレフォームチャージかのいずれかを意味している。
【0013】
幾つかの実施形態では、供給成分中の個々の繊維としては、ガラス繊維、天然繊維、炭素、アラミド、硼素、金属、セラミック、ポリマー(重合体)フィラメントなどが挙げられる。金属繊維の非限定的な例としては、スチール、チタン、タングステン、アルミニウム、金、銀、上記金属のうちの任意のものの合金、および形状記憶合金が挙げられる。「セラミック」は、全ての無機および非金属材料を意味している。セラミック繊維の非限定的な例としては、ガラス(例えば、Sガラス、Eガラス、ARガラスなど)、石英、金属酸化物(例えば、アルミナ)、アルミナシリケート、珪酸カルシウム、ロックウール、窒化硼素、炭化珪素、および上記物質の任意のものの組み合わせが挙げられる。さらに、炭素ナノチューブを用いることができる。撚られたまたは絡み合わされたストランドおよびポリマーフィラメントから成るハイブリッドヤーンもまた、プレフォームとして使用できる。
【0014】
本発明の実施形態と関連して用いるのに適した樹脂は、任意の熱可塑性樹脂を含む。本発明の実施形態と関連して有用な例示の熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ナイロン、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリカーボネート‐ABS(PC‐ABS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニルスルホン(PPSU)、ポリリン酸(PPA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスルホン(PSU)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)が上げられるが、これらには限定されない。
【0015】
図1は、本発明の例示の実施形態に係るRHCMのための方法100のブロック図である。図示のように、方法100は、連続方式であるが、幾つかの他の実施形態は、この方法は、バッチ方式で実施することができる。すなわち、幾つかの実施形態では、方法100に示された作業のシーケンスは、第2の部品を作るためのサイクル動作なしで一部品を作るために実施される。図示の実施形態では、用いられる圧縮成形用金型は、供給成分の集合物が追加される金型キャビティを含む雌型半部および雄型半部または「金型コア」を有する。
【0016】
作業S101では、供給成分の集合物を金型キャビティ内に配置する。図示の実施形態では、方法100は、連続法として実施される。かくして、プロセスのサイクルの終わりでも温度および圧力条件は、有利には、サイクルを開始するのに必要な温度および圧力と同一である。
【0017】
方法100のサイクルの終わりでの金型半部に加わる圧力は、単に大気圧であり、と言うのは、この時点では、金型は、コールドプレスを出たばかりであって完成品を突き出すために開かれているからである。同様に、作業S101での圧力は、大気圧であり、と言うのは、金型は、供給成分の物質が加えられているときに開いているからである。
【0018】
方法100のサイクルの終わりにおける温度は、完成品が金型から突き出されるときに完成品が変形することがないように十分低くなければならない。完成品は、突き出し機構体の機能として、突き出し中、相当大きな力を受ける場合がある。一般に、完成品に比較的大きな力を与えるには、変形を阻止するために突き出しが比較的低い温度で行われることが必要である。かくして、突き出し温度は、日常的な実験によって最終的に決定され、かかる突き出し温度は、潜在的には、各部品について固有であり、と言うのは、部品の形状は、単にその組成ではなく、加えられた圧力を受けて変形する部品の傾向に影響を及ぼすからである。突き出し温度は、かくして、装填温度を設定する。
【0019】
繊維複合材部品を圧縮成形により成形するためには、供給成分中の樹脂は、これが金型中の容積の全てを満たすまで流れることができ、しかも繊維と樹脂との間の全ての空隙がなくなる(すなわち、完全圧密化)ほど十分軟化されなければならない。これを達成するには、高い温度および高い圧力が必要である。
【0020】
この目的のため、作業S102では、金型は、図示の実施形態で2つの高温定盤を有する「ホットプレス」に移送される。定盤は、迅速な加熱を容易にするために金型に対して熱質量が大きい。金型をロボット、コンベヤ、シャトルなどによって移送するのが良い。幾つかの別の実施形態では、金型は、3つ以上の定盤を有する。
【0021】
作業S103では、金型および金型内に入っている供給成分の集合物は、最終的には、2つの高温定盤を金型に押し付けることによって「処理温度」まで加熱される。処理温度は、樹脂が約500psiから約3000psiまでの範囲にある加えられた圧力下において、上述したよう、流れて圧密化するのに十分に軟化される温度である。したがって、これらの定盤は、処理温度を超える温度に維持されなければならない。
【0022】
半結晶質熱可塑性ポリマー樹脂の場合、処理温度は、代表的には、その融点を幾分超える温度である。非晶質熱可塑性ポリマー樹脂は、融点を持っていないので、処理温度は、ポリマーが加えられた圧力で軟化する温度よりも幾分高い温度、すなわち、加えられた圧力下で加熱撓み温度を超える温度である。
【0023】
作業S103は、本明細書において開示したRHCMプロセスの速度制限ステップである場合が多い。これは、相当多くの量の供給成分の圧密化が必要とされる状況において特に当てはまり、と言うのは、(a)代表的には熱伝導率の低い供給成分を介する熱伝導は、金型それ自体を通る熱伝導よりも時間がかかるからであり、しかも(b)加えられた圧力を比較的低く保って供給成分の集合物の樹脂が軟化するまで供給成分の集合物中の繊維の破断を阻止するようにするのが有利な場合があるからである。
【0024】
幾つかの実施形態では、作業S103は、単一のステーションで、すなわち、単一のホットプレスで実施される。しかしながら、加熱が代表的には上述したように速度制限ステップであることに鑑みて、図示の実施形態では、作業S103は、2つのステーション、すなわち2基のホットプレスで2つの部分作業により実施され、2つの部分作業は、次の通りである。
(i)比較的低い一定の圧力を定盤経由で加えることによって加熱する作業であり、と言うのは、幾分かの大きさの圧力が高温定盤と金型との間における良好な熱伝導を保証する上で必要だからであり、次に、
(ii)金型および供給成分の集合物の温度が処理温度に近づいたときに圧力をほぼ完全圧密化圧力まで迅速に増大させる作業である。
【0025】
2つのステーションで作業S103を実施する上での動機付けは、ラインバランシング方式である。すなわち、各ステーションでの処理がほぼ同じ時間の長さを必要とすることが有利なので、しかも加熱が速度制限ステップであるので、加熱を2つのステーションで行うことにより、方法100の任意他の作業として加熱のために2倍の量の時間が必要になる。
【0026】
図示の実施形態では、初期加圧は、部品の投影領域(すなわち、圧密軸線に垂直な平面上に投影されたときに圧力を受ける部品の部分)に基づいて、約100psiから約500psiまでの範囲にある圧力で実施されるべきである。金型の温度およびその内容物が処理温度に近づくと、加えられる圧力は、迅速に大きくなる。
【0027】
作業S103中における最終圧力は、好ましくは、200psiから3000psiまでの範囲にある。金型は、このステップで完全に閉じることは必要ではない。幾つかの実施形態では、作業S103で加えられる最大圧力は、完全圧密化圧力よりも低い。事実、加熱中における最大圧力は、完全圧密化圧力よりも40%ほど低くすることができる。この点に関し、以下にさらに説明するように、完全圧密化圧力は、方法100の冷却段階中に達成されることがより重要である場合が多い。
【0028】
上述したように、これら2つの加圧作業は、2つの処理ステーションで実施されるのが良く、1つのステーションは、比較的低い圧力を加えることができるステーションであり、もう1つのステーションは、著しく高い圧力を加えることができるステーションである。幾つかの他の実施形態では、単一のステーションが用いられ、この場合、圧力が上述したように加えられる。幾つかの追加の実施形態では、3つ以上の加熱ステーション(ホットプレス)を使用することができる。本開示に照らして、1つ、2つ、または3つ以上の加熱ステーションを用いるということと作業S103について動作圧力を選択するということのどちらかを決定することは、当業者の能力の範囲内にある。
【0029】
幾つかの実施形態では、圧力は、金型およびその内容物が処理温度に達する前に着実にかつ迅速に増大する。幾つかの実施形態では、圧力は、すぐに勾配が付けられる(すなわち、金型が突き出し温度にあるとき)。幾つかの他の実施形態では、温度は、金型温度が処理温度の±約25℃の範囲内にある場合に勾配が付けられる。
【0030】
作業S104では、金型を冷却および幾つかの実施形態では完全圧密化のためにホットプレスからコールドプレスに移送する。図示の実施形態では、コールドプレスは、2つの低温定盤を有する。金型をこれら2つの定盤相互間に配置する。2つの低温定盤は、所望通りに迅速な冷却を容易にするために金型に対して熱質量が大きい。金型をロボット、コンベヤ、シャトルまたはこれと類似した手段によって移送するのが良い。幾つかの他の実施形態では、コールドプレスは、3つ以上の定盤を含む。
【0031】
作業S105では、供給成分をコールドプレスの2つの低温定盤によって十分な圧力の印加状態で冷却する。幾つかの実施形態では、この作業の早期の部分の間に供給成分の圧密化を完了させる(完全圧密化が作業S103の間に得られていなかった程度まで)。この理由で、金型は、金型内の温度が樹脂の処理温度を下回る前にコールドプレスに移送しなければならない。しかしながら、幾つかの実施形態では、供給成分をコールドプレスへの移送に先立って完全に圧密化する。
【0032】
圧力が2つの定盤によって加えられる結果として、低温定盤と金型との間の良好な熱動率が得られ、それにより金型は、迅速に冷える。金型を突き出し温度まで冷却し、この突き出し温度は、連続法の次のサイクルを準備するために上述したように定められる。突き出し温度は、樹脂のガラス転移温度Tgを下回るのが良い(しかしながら、必ずしもそうではない)ことが注目できる。
【0033】
幾つかの実施形態では、作業S105は、2つの部分作業、すなわち、(i)第1の冷却作業、および(ii)第2の冷却作業を含む。幾つかの実施形態では、これは、2つの別々の冷却ステーション(2基の別々のコールドプレス)のところで起こり、このことは、代表的には圧力のサイクル動作を必要とする。すなわち、第1の冷却作業については第1の冷却ステーションでの完全圧密化圧力までの増大、第2の冷却ステーションへの移送のためには圧力の減少(すなわち、圧力を圧力が加えられていない状態まで減少させる)、および次に、第2の冷却作業に関して最大圧密化までの増大が行われる。
【0034】
幾つかの実施形態では、2つの部分作業は、2つの互いに異なる冷却速度、すなわち、(i)例えば、達成される最大温度から中間温度まで冷える第1の遅い冷却速度、次に、(ii)冷却プロセスの残部に関して速い冷却速度を必要とする。この技術は、例えば、ある特定の樹脂、例えば高性能半結晶質熱可塑性樹脂を処理する際に有用である。初期の遅い冷却速度は、結晶化度および機械的性質を高めることができる。
【0035】
さらに幾つかの他の実施形態では、2つの部分作業は、2つの迅速冷却作業、すなわち、(i)所与の温度(例えば、半結晶質熱可塑性ポリマー樹脂の結晶化温度)までの第1の迅速な冷却、次に、この温度での一時停止という作業、次に、(ii)突き出し温度までの第2の迅速な冷却という作業を必要とする。「一時停止」は、例えば、2つの冷却ステーション相互間におけるツール移送を遅延することによりまたは第1のステーションの定盤を一時停止温度に設定することによって実施できる。幾つかの追加の実施形態では、4つ以上の冷却ステーション(コールドプレス)を用いることができる。本開示に照らして、1つ、2つ、または3つ以上の冷却ステーションを用いるということと作業S105について動作圧力および動作温度を選択するということのどちらかを決定することは、当業者の能力の範囲内にある。
【0036】
非晶質熱可塑性ポリマー樹脂に関し、単一の冷却ステーションが用いられるのが通例であり、と言うのは、「結晶化」に関する懸念がないからである。
【0037】
作業S106では、金型半部を開いて部品を突き出す。これは、金型が金型半部の各々をプレスの2つの側部の各々に固定することによってコールドプレスのところにある間に行われるのが良い。この目的のため、突き出しシステムを低温定盤に組み込むのが良い。幾つかの他の実施形態では、金型を突き出しステーションに移送し、そして部品を突き出す。金型を合せピン、案内レールなどによって突き出しステーションに位置合わせするのが良い(部品の突き出しのため)。突き出しステーションは、例えば部品を突き出すために突き出しピンと組み合わせて、作動型突き出しプレートを使用するのが良い。
【0038】
図2A図2Cは、方法100を実施するための装置200の幾つかの実施形態を示している。
【0039】
図2Aは、装填/突き出しステーション202、レールシステム204A、ホットプレス206、コールドプレス208、およびコントローラ/プロセッサ210を含む装置200Aを示している。装置200のこの実施形態は、1つの加熱ステーション(ホットプレス206)および1つの冷却ステーション(コールドプレス208)を有する。
【0040】
図示の実施形態では、ホットプレス206とコールドプレス208の両方は、各々、2つの定盤(図示せず)を有する。定盤は、熱伝導性金属、例えばアルミニウム、スチールなどで作られている。ホットプレス206中の定盤は、抵抗加熱器、オイルヒータなど(電気/流体ラインなど、図示せず)により加熱されるのが良い。コールドプレス208中の定盤は、空気、水、油、または他の手段(流体ラインなど、図示せず)により冷却されるのが良い。
【0041】
幾つかの他の実施形態では、ホットプレス206とコールドプレス208のうちの一方または両方は、3つ以上の定盤を有する。係る実施形態のうちの幾つかに関し、定盤のうちの幾つかは、加熱されずまたは冷却されないが、これとは異なり、圧密化圧力を金型に加えるためだけに用いられる。他の定盤は、適時、加熱されまたは冷却されるが、最小限の(熱交換のための良好な接触状態を生じさせるのに足るほどの)圧力しか加えない。かかる構成は、代表的には、金型が加えられた圧力の方向に高くかつ直交方向に薄い場合に用いられる。かかる状況では、加熱または冷却定盤は、加えられる圧力の方向に対して横方向に金型に当接される。これにより、熱を金型の「頂部」および「底部」に加えられた場合よりも金型中により迅速に伝導させることができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、互いに異なる加熱および冷却速度を金型の互いに異なる区分に適用することができる。これは、例えば、ポケット(例えば、ボイド領域など)を少ない加熱または冷却作用が望まれる領域における金型表面と定盤の表面との間に導入することによって達成できる。ポケットは、かかる領域における定盤と金型との物理的接触を阻止し、その結果、他方の領域と比較して熱伝達が減少する。変形例として、少ない加熱および冷却作用が望まれる領域に切欠きを設けた状態で定盤と金型との間に薄いスペーサを用いても良い。
【0043】
幾つかの実施形態では、加えられる加熱または冷却の量は、互いに対して動くことができるゾーンに分割される加熱用および冷却用定盤を用いることによって調節される。この運動領域は、成形サイクル全体を通じて良好な熱伝導率を維持するためにばね押しされるのが良い。この方法はまた、より複雑な金型、例えば互いに動く多数の区分を有する金型に関して良好な熱伝導率を保証するために使用されるのが良い。
【0044】
コントローラ/プロセッサ210は、ライン212経由で装置200Aの全ての要素に電気的に接続されている。コントローラ/プロセッサは、レールシステム204Aを制御して金型を装置200Aの種々のステーションにシャトリングさせる。図示の実施形態では、レールシステム204Aは、回転段上に位置し、この回転段は、金型を一ステーションから次のステーションに割り送りする手段である。幾つかの他の実施形態では、回転段は用いられない。
【0045】
加うるに、コントローラ/プロセッサ210は、全てのステーションの動作を制御し、例えば、定盤の温度および定盤により加えられる圧力を制御する。
【0046】
装置200Aの使用の際、供給成分の集合物をステーション202のところで金型(図示せず)中に装填し、そしてレールシステム204Aによりホットプレス206に運搬し、ホットプレスの温度および圧力は、上述したように勾配が付けられる(作業S103)。次に、金型をレールシステム204Aによりコールドプレス208に移送し、ここで、最大圧力が達成されるとともに温度が突き出し温度まで減少する。次に、金型をレールシステム204Aにより装填/突き出しステーション202に戻す。幾つかの実施形態では、コールドプレス208を出る前に金型を開き、幾つかの他の実施形態では、金型を装填/突き出しステーション202で開く。完成品を金型から突き出した後、供給成分の別の集合物を金型に追加し、そして方法100の別のサイクルを実施する。
【0047】
図2Bは、装填/突き出しステーション202、レールシステム204B、ホットプレス206A、ホットプレス206Bまたはコールドプレス208A、コールドプレス208B、およびコントローラ/プロセッサ210を含む装置200Bを示している。装置200のこの実施形態は、2つの加熱ステーション(ホットプレス206A,206B)および1つの冷却ステーション(コールドプレス208B)を有するか、1つの加熱ステーション(ホットプレス206A)および2つの冷却ステーション(コールドプレス208A,208B)を有するかのいずれかである。
【0048】
装置200Bは、方法100の実施形態に対応しており、この方法では、上述したように、作業S103は、2つの加熱部分作業または上述したように、作業S105が2つの冷却部分作業を含む方法100の実施形態から成る。余剰のプレスに対応するため、レールシステム204Bは、レールシステム204Aとは異なるレイアウトを有する。
【0049】
図2Cは、装填/突き出しステーション202、レールシステム204C、ホットプレス206A、ホットプレス206B、コールドプレス208A、コールドプレス208B、およびコントローラ/プロセッサ210を含む装置200Cを示している。
【0050】
装置200Cは、方法100の実施形態に対応しており、この方法では、上述したように、作業S103は、2つの加熱部分作業または上述したように作業S105が2つの冷却部分作業を含む方法100の実施形態から成る。4基のプレスに対応するため、レールシステム204Cは、レールシステム204Aまたは204Bとは異なるレイアウトを有する。
【0051】
幾つかの他の実施形態では、装置200は、3基以上のホットプレスおよび/または3基以上のコールドプレスを含むことができ、例えば、2基は、処理能力を高める。加うるに、幾つかの実施形態では、装填/突き出しステーションは、2つの別々のステーションに分離されるのが良い。
【0052】
図3は、例えば半結晶質熱可塑性ポリマー樹脂の処理に関し、1つの加熱ステーションおよび2つの冷却ステーションを用いるRHCMプロセスの一実施形態についての温度(左縦軸の読み)および圧力(右縦軸の読み)と時間との関係を表すグラフ図である。ゆっくりとした冷却が第1のステーションで実施され、迅速な冷却が第2のステーションで実施される。プロセス最適化のため、各ステーションは、ほぼ同じ時間を必要とすることが望ましい。
【0053】
本方法の実施中における金型/成分材料の温度サイクル(破線、左側の読み)は、次の通りである。サイクルは、金型の金型キャビティ中への成分の集合物の装填で始まる。本方法の少なくとも1つのサイクルが完了し、その結果、サイクルが始まるにつれて、金型が突き出し温度にまたはそれに近い温度状態にあると仮定する。
【0054】
温度を加熱ステーションのところで各樹脂に固有の処理温度まで増大させる。上述したように、処理温度は、加えられた圧力下で樹脂が流れて圧密化するのに十分に樹脂を軟化させることができる温度である。ある量の温度の大きさは、温度保持または僅かなオーバーシュートが所望通りに起こって冷却ステーションへの移送前に所要の量の完全圧密化または所要程度の圧密化に達することができる。金型およびその内容物の温度は、冷却ステーションのところで減少し、図示の実施形態では、冷却は、2つの互いに異なる冷却ステーションのところで2つの互いに異なる速度で実施される。上述したように、2つの互いに異なる冷却速度は、最適母材特性を得るために幾分かの半結晶質高性能ポリマーに必要な場合がある。温度が突き出し温度までいったん下がると、金型は、コールドプレスを出て部品を突き出すことができる。
【0055】
圧力サイクル(実線、右側の読み)は次の通りである。装填プロセス中、金型には圧力が加えられない。加熱ステーションでは、低い圧力を当初供給成分の集合物に加えてその一体性が損なわれるのを阻止する。樹脂が処理温度に近づくにつれて、圧力を迅速に増大させる。上述したように、幾つかの実施形態では、加熱作業は、2つの別々のホットプレスで実施される。係る実施形態では、第1のホットプレスは、第2のホットプレスよりも小形のプレス(すなわち、小さい圧力を加えることができる)である。
【0056】
例えば図3に示されている幾つかの実施形態では、加熱中の最終圧力は、冷却中に加えられた最大圧力よりも低いのが良い(約40%という大きな割合分)。これには幾つかの理由がある。外観上の理由および性能上の理由で、部品が冷えるときに完全圧密化が得られるよう全圧状態で動作していることが重要である。圧力が高ければ高いほど、それだけいっそうプレスが大形になることに考慮されたい。全圧が冷却作業中に必要なので、資本コストの節減を実現するには、加熱作業中、全圧よりも低い圧力で作動させる(すなわち、小形プレスを用いる)のが良い。さらに、加熱作業を完全圧密化よりも少ない圧密化で実施すると、サイクル時間が短縮される。
【0057】
金型を第1の冷却ステーションに移送し、ここで、この金型に関する最大圧力を加えて完全圧密化を達成する。所望の結晶度を達成するためのゆっくりとした冷却後、金型を第2の冷却ステーションに移送し、ここで、この金型に関する最大圧力を再び加え、ついには、金型が突き出し温度まで冷えるようにする。幾つかの実施形態では、金型を次に突き出しステーションに移送し、この時点で、金型に高い圧力を加える必要がない。
【0058】
本発明のRHCMプロセスの実施形態を単一金型サイクルに利用することができるが、本プロセスは、有利には、連続方式として動作することが意図されている。図示の実施形態に従って、突き出しおよび装填サイクルを同一ステーションで実施し、各サイクルは、代表的には、そのステーションに割り当てられた全サイクル時間の半分を費やす(しかしながら、必ずしもそうではない)。開始温度および開始圧力は、終了温度および終了圧力に一致し、と言うのは、このプロセスは、有利には、連続方式で実施されるからである。
【0059】
理解されるべきこととして、本開示は、二、三の実施形態を説明しており、本発明の多くの変形例は本開示を読んだ後に当業者によって容易に案出でき、また、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって定められる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3