(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリセロールエステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/08 20060101AFI20240806BHJP
C07C 69/67 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/67
(21)【出願番号】P 2023501810
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 EP2020074896
(87)【国際公開番号】W WO2022012768
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/069766
(32)【優先日】2020-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】323005511
【氏名又は名称】ケトリピックス セラポーティクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ロッホマン、ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ライアー、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテーア、ミヒャエル
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508449(JP,A)
【文献】特許第7373572(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/
C07C 69/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法であって、
下記する反応物(i)、(ii)及び(iii)がお互いに反応すること;
(i)ラジカルR
1が、水素、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3及びC
1-C
4-アルキルから選択される一般式(I)
CH
3-CH(OH)-CH
2-C(O)OR
1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物;
(ii)変数pが1~6の整数を示す一般式(IIa)
HO-CH
2-CH(OH)-CH
2-[O-CH
2-CH(OH)-CH
2]
p-OH (IIa)
の少なくとも1つのポリグリセロールエステル(II);
(iii)少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸(III)であって、該ポリカルボン酸(III)が、遊離カルボン酸、ポリカルボン酸の塩、ポリカルボン酸エステル及びポリカルボン酸無水物の1つの形態において使用されるもの;
前記方法が、溶媒の非存在下において実施されること;
これによって、反応生成物(
IV)として、3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが得ら
れ、そのポリグリセロールエステル
は、ポリカルボン酸で架橋され
たものであって、且つ、そのポリグリセロールエステル
は、一般式(IVa)
【化1】
によって示される
ものであり、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X'-C(O)-を示すものであること、ここでX'が、ポリカルボン酸に由来し且つ1~10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の有機ラジカルを示すこと、そのラジカルが、少なくとも1つのヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つによって一置換又は多置換されること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカルを示すこと、及び、変数pが1~6の整数を示す一般式(IIc)
【化2】
によって示されるもの;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-
CH
3
を示すものであること、及び、お互いの独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数を示すものであること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、及び、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義されるようなX,Y,Z、Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化3】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、及び、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する1~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZであることを特徴とするポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法。
【請求項2】
前記方法が、数段階において実行されること;
前記方法が、下記する合成経路(A)及び合成経路(B)の1つによって実施されること、
合成経路(A)によれば、最初に、一般式(I)の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸が少なくとも1つのポリグリセロールエステル(II)と反応すること、これによって、3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも1つのポリグリセロールエステルが、反応中間生成物(IVA')として、得られること、これに続いて、結果として生じる反応中間生成物(IVA')と少なくとも1つのポリカルボン酸(III)との反応が実施されること、及び、
合成経路(B)によれば、少なくとも1つのポリグリセロール(II)が、最初に少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と反応すること、これによって、ポリカルボン酸(III)の少なくとも1つのポリグリセロールエステルが、反応中間生成物(IVB')として、得られること、これに続いて、結果として生じる反応中間生成物(IVB')と一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物との反応が実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリグリセロール(II)が、一般式(IIb)
HO-CH
2-CH(OH)-CH
2-O-CH
2-CH(OH)-CH
2-OH (IIb)
のジグリセロールであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記ポリカルボン酸(III)が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの無水物及びそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記反応に続いて、反応後にまだ存在するヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも部分的な官能化が実施されること、この官能化
としてエステル化
が実施されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化4】
と対応すること、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X'-C(O)-を示すものであって、X'が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和または不飽和の、任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカルを示すこと及び一般式(IIc)
【化5】
のラジカルを示すものであること、ここで、変数pが、1~6の整数を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数を示すものであること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y,Z,Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化6】
を示すものであること、ここで、お互いの独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであることを特徴とするポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項7】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化7】
に対応すること;
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X'-C(O)-を示すものであって、X'が、ポリカルボン酸に由来し、1~10個の炭素原子を有する飽和または不飽和の有機ラジカルを示すこと、そのラジカルが、ヒドロキシ基及びカルボキシ基で一置換又は多置換されること;
・Yが、一般式(IId)
【化8】
ポリグリセロールに由来するラジカルを示すこと;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)
-CH
3
を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化9】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項8】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化10】
に対応すること;
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X'-C(O)-を示すものであって、X'が、ポリカルボン酸に由来し、2~6個の炭素原子を有する飽和または不飽和の有機ラジカルを示すこと、そのラジカルが、ヒドロキシ基及びカルボキシ基で一置換又は多置換されること;
・Yが、一般式(IId)
【化11】
ポリグリセロールに由来するラジカルを示すこと;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)
-CH
3
を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化12】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項9】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化13】
に対応すること;
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物から選択されること;
ボン酸に由来するものであること;
・Yが、一般式(IId)
【化14】
のポリグリセロールに由来するラジカルを示すこと;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)
-CH
3
を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化15】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項10】
3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化16】
に対応すること、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化17】
の1つを示すものであること、ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素、任意に置換されたポリグリセロールラジカル、及び、R
1が、水素、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3及びC
1-C
4-アルキルから選択されるものであるラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1から選択されること;
・Yが、変数pが1~6の整数を示すものである一般式(IIc)
【化18】
のポリグリセロールに由来するラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)
-CH
3
を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX、Y、Z、Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化19】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項11】
3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化20】
に対応すること、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化21】
の1つを示すものであること、ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素、任意に置換されたポリグリセロールラジカル、及び、R
1が、水素、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3及びC
1-C
4-アルキルから選択されるものであるラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1から選択されること;
・Yが、一般式(IId)
【化22】
のポリグリセロールに由来するラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)
-CH
3
を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数を示すpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z'が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z'及びqを有する1つ以上のブロック
【化23】
を示すものであること、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項12】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、一般式(IVb)
【化24】
に対応すること;
・Xが、ラジカル-C(O)-X'-C(O)-を示すものであること、ここで、X'がポリカルボン酸に由来し、1~10個の炭素原子を有する飽和又は不飽和有機ラジカルを示すものであり、該ラジカルが、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つによって一置換又は多置換されること;
・Yが、一般式(IIc)
【化25】
のポリグリセロールに由来するラジカルを示すものであること、ここで、変数pが、1~6の整数を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いの独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化26】
を示すものであること、ここで、変数sが、0~30の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する1~(p+1)の整数であること、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル。
【請求項13】
ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、一般式(IVb)
【化27】
に対応すること;
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、下記するラジカル
【化28】
の1つを示すものであること、
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素、任意に置換されたポリグリセロールラジカル、及び、水素、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3及びC1-C4-アルキルから選択されるR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1から選択されるものであること;
・Yが、一般式(IIc)
【化29】
のポリグリセロールに由来するラジカルを示すものであること、
ここで、変数pが1~6の整数を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3が示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、1~6の整数であるpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Wが、お互いに独立して、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化30】
を示すものであること、ここで、変数sが、0~30の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、1~6の整数であるpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端は、水素、-X-OH又はZによって形成されることを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項14】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが:
・下記する式の少なくとも1つのユニットX":
【化31】
ここで、上記ラジカルにおいて、R
3ラジカルが、水素、任意に置換されたポリグリセロールラジカル、及び、R
1が、水素、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3及びC
1-C
4-アルキルから選択されるラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1から選択されること;
・一般式(IIc)
【化32】
のポリグリセロールに由来する少なくとも1つのユニット、ここで、変数pが、1~6の整数を示すこと;
・少なくとも2つのユニット-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3;
のユニットを有することを特徴とする請求項6又は7のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項15】
3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、DIN EN ISO 16014-5:2019によるサイズ排除クロマトグラフィーに従って決定される500~50,000g/molの範囲内の分子重量を有することを特徴とする請求項6又は7記載の3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル。
【請求項16】
請求項6~15のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つの異なるポリグリセロールエステルを有することを特徴とする混合物。
【請求項17】
請求項6~15のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも1つのポリグリセロールエステルを有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が、薬物又は医薬品であることを特徴とする請求項17記載の医薬組成物。
【請求項19】
ヒト又は動物の身体の疾患、ヒト又は動物のエネルギー代謝の障害に関連する疾患の中から選択される疾患の治療のための請求項17記載の医薬組成物。
【請求項20】
請求項6~15のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも1つのポリグリセロールエステルを有することを特徴とする化粧品組成物。
【請求項21】
請求項6~15のいずれか1つに記載の3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも1つのポリグリセロールエステルを有することを特徴とする食品生成物。
【請求項22】
食品、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤および筋力スポーツ補助食品および持久力スポーツ補助食品からなる群より選ばれることを特徴とする請求項21記載の食品生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケト体及び関連する代謝の分野及び関連する疾患の治療に関する。
【0002】
特に、本発明は、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルの製造方法並びにこのようにして得られた又はこのようにして調製された反応生成物(すなわち、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)及びそれらの使用、特に薬剤又は医薬品などの医薬組成物に又は化粧品若しくは化粧品組成物に又は食品及び/又は食品生成物に並びにそれらのさらなる適用又は使用に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明方法に従って得られる又は製造される反応生成物(すなわち、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)を含む医薬組成物、特に薬剤又は医薬品、及びそれらの用途又は使用に関する。
【0004】
さらに、本発明は、本発明の製造方法に従って得られる又は製造された反応生成物(すなわち、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル)を含む化粧品又は化粧品組成物、及びその用途又は使用に関する。
【0005】
最後に、本発明は、食品及び/又は食品生成物、特に食品サプリメント、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤並びに筋力及び/又は持久力スポーツサプリメントに関するものであり、本発明方法に従って得られる又は製造される反応物(すなわちポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシブチル酸ポリグリセロールエステル)及びその用途又は使用に関するものである。
【背景技術】
【0006】
人間のエネルギー代謝において、グルコースは短期的に利用可能なエネルギーキャリアであり、ミトコンドリア内で水と二酸化炭素を放出することでエネルギーに代謝される。肝臓のグリコーゲン貯蔵量は、夜間の睡眠時間中にすでに空っぽになっている。しかし、特に人間の中枢神経系(CNS)と心臓は永続的なエネルギー供給を必要とする。
【0007】
ブドウ糖に代わる生理的な物質で、主に中枢神経系で利用されるのが、いわゆるケト体(同義語でケトン体とも呼ばれる)である。
【0008】
特にケト体という言葉は、主に異化代謝状態(空腹時、減量食、低炭水化物食など)で形成され、ケトーシスに至る可能性がある3つの化合物の総称である。
ケト体とは、特にアセト酢酸(以下、同義語でアセト酢酸ともいう)、アセトンのほか、3-ヒドロキシ酪酸(以下、同義語でβ-ヒドロキシブタン酸又はBHB又は3-BHBともいう)又はその塩(すなわち3-ヒドロキシ酪酸又はβ-ヒドロキシブタン酸)、後者が3つの前記化合物中、最も重要な化合物をいう。3-ヒドロキシ酪酸又はその塩は、生理的には(R)-エナンチオマー、即ち(R)-3-ヒドロキシ酪酸(同義語的に3位のキラリティー中心を強調するために(3R)-3-ヒドロキシ酪酸とも呼ばれる)又はその塩として存在する。
【0009】
これらのケト体は、生理的にも、空腹時や飢餓時に脂肪分解によって体内に蓄積された脂質から大量に供給され、エネルギー源のグルコースにほぼ完全に置き換わる。
【0010】
ケト体は、肝臓でβ-酸化に由来するアセチルコエンザイムA(=アセチルCoA)から形成され、ヒトの体内でアセチルコエンザイムAの輸送可能な形態となるものである。しかし、ケト体を利用するためには、まず脳と筋肉がケト体をアセチルコエンザイムAに戻すために必要な酵素を発現して適応する必要がある。特に空腹時には、ケト体はエネルギー生産に相当貢献する。たとえば、しばらくした後、脳は1日の3分の1のブドウ糖ですむようになる。
【0011】
生理的には、脂肪酸分解の通常の中間産物であるアセチルコエンザイムAの形で2分子の活性化酢酸からケト体が合成され、さらにアセチルコエンザイムAユニットと酵素HMG-CoA-シンターゼを使って中間産物3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル-CoA(HMG-CoA)に拡張し、最後にHMG-CoAリラーゼがアセト酢酸を切り離すというものである。これら3つの段階は、肝臓のミトコンドリアでのみ行われ(リネンサイクル)、3-ヒドロキシ酪酸は、最終的に細胞質でD-β-ヒドロキシブタン酸脱水素酵素によって形成される。また、HMG-CoAはアミノ酸のロイシンの分解の最終産物であり、アセト酢酸はアミノ酸のフェニルアラニンやチロシンの分解の際に形成される。
【0012】
自然脱炭酸は、アセト酢酸をアセトンに変化させ、糖尿病患者やダイエット中の人の呼気から感知されることがある。これは体内でそれ以上利用されることはない。しかし、ケト体に含まれるアセトンの割合は少ない。
【0013】
アセト酢酸は、このように還元的に3-ヒドロキシ酪酸又は3-ヒドロキシ酪酸の生理学的に関連する形態に変換されるが、二酸化炭素の放出とともに生理学的に使用できないアセトンに分解することもでき、これは、重度のケトーシス、ケトアシドーシス(例えば、インスリンが補充されていない1型糖尿病の患者)において、尿及び呼気中において検出可能でありかつ嗅ぎ分けることが可能である。
【0014】
3-ヒドロキシ酪酸は、現在、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩としてウェイトトレーニング分野で使用・販売されている。
【0015】
しかしながら、植物が、3-ヒドロキシ酪酸を生成しないこと及び動物生体内の3-ヒドロキシ酪酸はケトーシスで痩せた動物の死体にしか発生しないことから、3-ヒドロキシ酪酸は、進化的にいうと、ヒトには知られていないかごく少数においてのみ知られているものであり、経口投与した時に、吐き気を催すものである。遊離酸とその塩の形の3-ヒドロキシ酪酸も非常に苦い味がして、激しい嘔吐と吐き気を催すことがある。
【0016】
さらに、患者、特に新生児だけでなく、成人でさえも、3-ヒドロキシ酪酸の塩を大量に摂取すると、これらの化合物は腎臓を損傷する作用があるため、永久に耐えることができない。
【0017】
また、3-ヒドロキシ酪酸及びその塩の血漿中半減期は非常に短く、数グラム摂取してもケトーシスは3~4時間程度しか持続しないため、3-ヒドロキシ酪酸及びその塩による治療が、特に夜間は継続して有効であるとは言えない。代謝性疾患の場合、これは生命を脅かす事態につながる可能性がある。
【0018】
したがって、このような代謝性疾患の治療の場合、現在、いわゆる中鎖トリグリセリド、いわゆるMCTは、ケトジェニック療法、すなわち対応するトリグリセリドからのカプロン酸、カプリル酸及びカプリン酸(すなわち飽和線形C6-、C8-及びC10-脂肪酸の)の代謝的変換が意図されて使用されている。
【0019】
しかし、基本的には、薬学的・臨床的観点から、3-ヒドロキシ酪酸はより有効な医薬・薬学的標的分子であり、先行技術によれば、原理的には多数の疾患の治療に使用可能であるが、生理的適合性がないために使用することができないものである(例えば、エネルギー代謝、特にケト体代謝の不調に関連する疾患、又は、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病等の神経変性疾患、脂質代謝疾患等において)。
【0020】
以下の表は、純粋に例示であり、決して限定するものではないが、有効成分である3-ヒドロキシ酪酸の潜在的な治療オプション又は可能な適応症を示している。
【0021】
【0022】
したがって、特に人体又は動物の生理的代謝において、生理的に3-ヒドロキシ酪酸又はその塩に直接又は間接的にアクセスできる有効な前駆体又は代謝物を見出すことができることは、医薬及び臨床の観点から望ましい。
【0023】
その結果、先行技術では、3-ヒドロキシ酪酸又はその塩の生理学的に適した前駆体又は代謝物を見出す試みが欠落していない。しかしながら、これまでのところ、先行技術において効率的な化合物は見つかっていない。また、このような化合物へのアクセスは、従来技術によれば不可能であり、容易に可能なものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、本発明の根底にある課題は、3-ヒドロキシ酪酸(すなわち、β-ヒドロキシ酪酸又はBHB又は3-BHB)又はその塩の生理学的に好適又は生理学的に適合する前駆体及び/又は代謝物を製造するための効率的方法の提供である。
【0025】
このような方法は、特に、それぞれのBHB前駆体及び/又はBHB代謝物を効率的に、特に大量に、かつ有毒な副産物を大量に発生させることなく利用できるようにすることが望ましい。
【0026】
全く驚くべき方法で、本出願人は今、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルが、ケト体3-ヒドロキシ酪酸又はその塩の効率的かつ生理的に有効な又は生理的に適合する前駆体及び/又は代謝物を表すことを見出し、これに関して、これらの化合物に直接的かつ効果的に、特に経済的に、また工業的に実現可能なアクセスを可能とする、これらの化合物を製造する効率的な方法を発見又は開発することができたのである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
したがって、上記の問題を解決するために、本発明は、本発明の第1の態様によれば、請求項1記載のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルの製造方法を提案する;さらに、本発明方法の特に特別及び/又は有利な実施態様は、関連した従属請求項の主題とされる。
【0028】
さらに、本発明は、本発明の第2の態様によれば、それぞれの請求項(請求項49~64)による本発明方法によって得られる反応生成物又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、あるいはそれぞれの請求項(請求項65)によるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つのポリグリセロールエステルのそれぞれの混合物に関連するものである。さらに、本発明のこの態様の特に特別な及び/又は有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題である。
【0029】
同様に、本発明は、本発明の第3の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項66)による医薬組成物、特に薬剤又は医薬品に関するものであり、さらに、本発明のこの態様の特に特別な及び/又は有利な実施形態は、関連する従属請求項の主題となるものである。
【0030】
さらに 本発明は、本発明の第4の態様によれば、それぞれの独立請求項(請求項68)に記載のヒト又は動物の身体の疾患の予防的及び/又は治療的処置又はそれに用いるためのポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸の本発明の反応生成物又は本発明のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋した少なくとも2つの3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルの本発明の混合物に関連するものである。
【0031】
さらに、本発明は、本発明の第5の態様によれば、予防的及び/又は治療的処置のための又は関連した独立請求項(請求項69)に記載のヒト又は動物の身体の疾患の予防的及び/又は治療的処置のための薬品を製造するための本発明の反応生成物又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つのポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関するものである。
【0032】
さらに、本発明は、本発明の第6の態様によれば、関連した独立請求項(請求項70及び72)に記載の本発明の反応生成物又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つのポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関する。
【0033】
さらに、本発明は、本発明の第7の態様によれば、関連する独立請求項(請求項73)による化粧品又は化粧品組成物に関するものである。
【0034】
さらに、本発明は、本発明の第8の態様によれば、関連する独立請求項(請求項74)による食品及び/又は食品生成物に関し、さらに、本発明による食品及び/又は食品生成物の特別な及び/又は有利な実施形態は、関連する従属宇請求項の主題とされる。
【0035】
最後に、本発明は、本発明の第9の態様によれば、関連する独立請求項(請求項76)による食品及び/又は食品生成物における、本発明の反応生成物又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つのポリグリセロールエステルの本発明の混合物の使用に関するものである;さらに、本発明による使用の特に特別な及び/又は有利な実施形態は、関連する使用に関する従属請求項の主題となる。
【0036】
以下、繰り返しを避ける目的で本発明の一態様に関してのみ記載する以下の特徴、実施形態、利点等は、当然、本発明の他の態様にも適宜適用され、これには別途言及する必要がないことは言うまでもない。
【0037】
さらに、本発明の個々の態様及び実施形態は、本発明の他の態様及び実施形態との任意の組み合わせにおいても開示されているとみなされ、特に、すべての特許請求の範囲の後方参照から生じる特徴及び実施形態の任意の組み合わせも、結果として生じるすべての組み合わせ可能性に関して広範に開示されているとみなされることは言うまでもない。
【0038】
以下に提供される全ての相対的又は百分率の重量ベースのデータ、特に相対的な量又は重量データに関して、本発明の範囲内で、これらは、特に以下に定義するように、全ての成分又は成分を含む、それぞれ100重量%又は100重量%に常に加算するように当業者によって選択されるべきであることに更に留意すべきである;しかしながら、これは当業者にとって自明なことである。
【0039】
また、当業者は、必要に応じて、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の範囲の仕様を設定することができる。
【0040】
さらに、以下に規定するすべての値又はパラメータ等は、原則として、標準化された又は明示的に特定された測定方法、あるいは、当業者に周知の決定又は測定方法により決定又は特定できることが適用される。
【0041】
このように述べた上で、以下、本発明をより詳細に説明する。
【0042】
したがって、本発明の主題は、本発明の第1の態様によれば、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造するための方法であり、
ここで、
(i) ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物、
(ii) 少なくとも1つのポリグリセロール(II)及び
(iii) 少なくとも1つのポリカルボン酸(III)、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸、
が反応する及び/又はお互いに反応させるものであり、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0043】
したがって、本発明によれば、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセリンエステルの製造方法が提供される。
【0044】
本発明の方法では、このように一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物がエステル化酸として作用し、これと特にポリグリセリン(II)のヒドロキシ基と反応するものである。
【0045】
本発明に関して、使用されるポリカルボン酸(III)は、有機ポリカルボン酸である;即ち、ポリカルボン酸(III)は、複数のカルボキシ基(-COOH)を有する有機化合物で、結果として酸性の性質を有するものである。
【0046】
本発明に従って得られるポリグリセロールエステルは、ポリグリセロール(ジグリセロールなど)のエステルであり、正確にはポリエステル化グリセロールではない(即ち、特にモノ-、ジ-、トリグリセリド、即ちグリセロール又は1,2,3-プロパントリオールのそれぞれ1価、2価及び3価のエステルではない)。
【0047】
したがって、本発明において、1価及び多価とは、ポリグリセリンのエステル化基(即ち、3-ヒドロキシ酪酸でエステル化された基)の数を意味する。
【0048】
驚くべきことに、本出願人は、感覚刺激的に及び生理的に適合可能な形態において、3-ヒドロキシ酪酸又はその誘導体を提供することに効率的かつ効果的な方法を見出した。ここで、3-ヒドロキシ酪酸は、特にヒト又は動物の体によって、より長い期間にわたって連続的に放出されるものである。
【0049】
さらに、本出願人は、遅延効果が存在するように、3-ヒドロキシ酪酸の感覚刺激的に及び生理的に適合可能な形態を提供することに成功した;即ち、3-ヒドリキシブタン酸が、長期間にわたって、特にヒト又は動物の身体によって連続的に放出されるものである。
【0050】
また、その他の分解・開裂生成物(即ち、3-ヒドロキシ酪酸に加えて放出される開裂生成物)は、体内で利用することができ、少なくとも体内で処理することができる。特に、クエン酸サイクルの反応物、生成物、中間体、又はクエン酸サイクルの反応物、生成物、中間体の酸化によって形成される誘導体や塩である開裂生成物が放出される。したがって、3-ヒドロキシ酪酸の遊離の際に形成される更なる分解物又は開裂生成物は、動物又は人体によってエネルギー源として使用することも可能である。これらの開裂生成物は、典型的には、ポリカルボン酸(III)である。また、ポリグリセリン(II)は、無毒で生理的に適合した担体であり、体内から容易に排泄される。
【0051】
多数のヒドロキシ基を有するポリグリセロールを使用することにより、活性成分、特に3-ヒドロキシ酪酸又は3-BHB又は対応する誘導体の高密度を有する分子を提供することが可能である。さらに、これに関して、ポリカルボン酸の高密度も提供することができ、これは、先に述べたように、動物及び/又は人体によってさらなるエネルギー源として使用することができる。さらに、高い架橋密度も得ることができる。一般にゲル状の生成物が得られ、生理的条件下で制御された又は遅延された形態で、3-BHBとポリカルボン酸をさらなるエネルギー源として放出する。
【0052】
上述したように、出願人は、このようにして製造されたポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、3-ヒドロキシ酪酸又はその塩の生理学的に適合し、かつ有機的に適合する前駆体及び/又は代謝物であり、医薬又は臨床用途に大量に使用することができることから、効率的であることを発見した。
【0053】
本発明による製造方法によって初めて効率的に入手可能となった、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の上記ポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、したがって、遊離3-ヒドロキシ酪酸又はその塩に代わる生理学的及び薬学的に適切な代替物を示し、さらに有機適合性も有するものである。
【0054】
ポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルを従来の有機合成によって製造することは、3-ヒドロキシ酪酸並びにその塩及びエステルが、重合及び他の望ましくない副反応(脱水、分解など)を生じる傾向が増大することから、複雑かつ高価である。本発明の範囲内で、3-ヒドロキシ酪酸をポリカルボン酸で架橋したポリグリセリンエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸をポリカルボン酸で架橋した1価又は多価のポリグリセリンエステルを、副産物の生成を抑えて効率的に製造できる方法を初めて提供することが可能となった。
【0055】
したがって、本発明の方法は、既知の、市販の、とりわけ生理学的に無害な成分又はエダクト(出発化合物)から、ポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸の無毒なポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルを提供することを初めて可能にするものである。得られたポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、生理的に、特に胃及び/又は腸で分解されて、有効成分又は活性成分として目的分子「3-ヒドロキシ酪酸」又はその塩若しくはエステルを放出又は生成し得るものである。
【0056】
また、前述のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、長期間にわたって大量に経口投与(例えば、50g日量以上の投与)しても相容れるような味を含んでいることも特徴である。
【0057】
同様に、本発明による製造方法により、有毒な不純物を含まない、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルを提供することが可能になる。
【0058】
また、適切な出発物質を用いれば、この方法をエナンチオ選択的に実施することも可能である。例えば、本発明によれば、製造方法によって、経口投与した場合に、患者の腎臓系に負担をかけないように、例えば酵素触媒作用や出発物質(反応物)の標的選択によって、生物学的に関連する形態、すなわちBHBの(R)-エナンチオマーを濃縮することができる(すなわち腎臓を介して排泄される)。しかし、原理的には、BHBの(S)-エナンチオマーを濃縮することも可能であり、特定の条件下では有用であると考えられる。
【0059】
さらに、任意のさらなる処理又は精製工程を含む本発明の製造方法は、経済的に運用することができ、大規模に実施することも可能である。
【0060】
特に、本発明の製造方法は、市販の出発化合物や、大規模に実施可能な簡便な方法で合成できる出発化合物を使用し、さらに大規模に実施する場合でも、比較的簡便なプロセス管理が可能である。
【0061】
従来の先行技術の製造方法とは対照的に、本発明による製造方法は、複雑な出発物質を使用せず、保護基も使用しない。それにもかかわらず、本発明に従って優れた収率が達成され、そこで副生成物の形成が最小限に抑えられるか、又は回避される。
【0062】
さらに、本発明方法は、簡便で経済的である。特に、本発明による方法は、通常、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で行われる(即ち、質量での反応又は物質での反応、いわゆるバルク反応として行われる)。その結果、得られた反応生成物は溶媒で汚染されておらず、方法又は反応の実施後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄又はリサイクルする必要がない。さらに、有害な副産物は発生しない。
【0063】
本発明による製造方法は、通常、結果として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の異なるポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルの混合物、いわゆるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つの異なるポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルの混合物を生じる。得られた生の反応生成物又は生の混合物は、既知の方法、特に残存する出発化合物及び/又は存在する副生成物を除去することによって精製することができ、さらに、所望により、既知の方法によって、特に蒸留及び/又はクロマトグラフィーによって分離される(例えば、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の個々のポリグリセロールエステルへの分別、即ち例えばそれぞれのモノエステル、ジエステル等の分離、さもなければ個体等の濃縮部分と枯渇部分を有する画分への分別)。
【0064】
したがって、前述のように、第1の態様によれば、本発明は、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法に関するものである。
ここで、
(i)ラジカルR1が水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物、
(ii)少なくとも1つのポリグリセロール、及び
(iii)少なくとも1つのポリカルボン酸(III)、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸、
が反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものである。
【0065】
特に、本発明による方法は、複数段階、特に2段階で実施することができる。本発明による方法を複数段階で実施する場合、例えば反応中間体を精製することにより、副生成物の数を減らすことができる。
【0066】
以下により詳細に説明するように、多段階、特に2段階の手順は、特に、最初に少なくとも1つの一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物が、少なくとも1つのポリグリセロール(II)と反応し及び/又は反応させるように進めることが可能であり、次いで、得られた反応中間生成物(IV’A)と少なくとも1つのポリカルボン酸(III)をさらに反応させる(合成経路(A))、又は、最初に少なくとも1つのポリグリセリン(II)が、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と反応し、次いで得られた反応中間生成物(IV’B)が、少なくとも1つの一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物とさらに反応する(合成経路(B))というような手順で進めることが可能である。
【0067】
特定の実施形態によれば、本発明はまた、本発明のこの態様によれば、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法、特に上記に記載されたような方法に言及する。
【0068】
(第1の)合成経路(A)によれば;
(a) 第1の方法段階(a)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が、少なくとも1つのポリグリセロールと、エステル化反応において及び/又はエステル化条件下において、反応し及び/又は反応させられ、
特にこれによって、反応中間生成物(IVA’)として、3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである;及び
(b) それに続いて、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(a)において得られた反応中間生成物(IVA’)が、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-広戸キシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものである。
【0069】
以下では、示された第1の方法段階(a)において行われる3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル、ジグリセロール及び無水コハク酸の反応に基づく(第1の)合成経路(A)の可能な経過について例示的かつ非限定的に説明する。第1の方法段階(a)において、3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルとジグリセロールが反応し、特に3-ヒドロキシ酪酸のモノ-、ジ-及びトリジグリセロールエステルが形成される。続く(第2の)方法段階(b)では、次に、これらの3-ヒドロキシ酪酸のモノ-、ジ-及びトリジグリセロールエステルが、無水コハク酸と反応する。以下の図には、製品及び副産物の非限定的な選択が示されている。
【0070】
【0071】
代替の特定の実施形態によれば、本発明はまた、本発明のこの態様によれば、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法、特に上記に定義されるような方法に言及するものである。
(第2の)合計経路(B)において:
(a) 第1の方法段階(a)において、少なくとも1つのポリグリセロール(II)が、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
特にこれによって、第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVB’)として、ポリカルボン酸(III)の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸(III)の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものであり;及び
(b)それに続いて、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(a)で得られた反応中間生成物(IVB’)が、一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物と反応し及び/又は反応させられ、
ここで、一般式(I)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示し、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0072】
以下では、示された3-ヒドロキシ酪酸エチル、ジグリセロール及び無水コハク酸の反応に基づく(第2の)合成経路(B)の可能な経過について、例示的かつ非限定的に記述する。第1の方法段階(a)において、ジグリセロールとコハク酸無水物が反応し、コハク酸のポリグリセロールエステルが形成されるが、以下のスキームに示す非限定的な選択のみである。続く(第2の)方法段階(b)において、コハク酸のポリグリセロールエステルは、3-ヒドロキシ酪酸エチルと反応する。以下のスキームにおいて、生成物及び副生成物の非限定的な選択が示され、ここでRは、水素又はC(O)-CH2-CH(OH)-CH3を示す:
【0073】
【0074】
全体として、本発明のこの態様によれば、本発明はさらに、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法、特に本明細書に記載されたような方法に関する。
ここで、(第1の)合成経路(A)によれば:
(a)第1の方法段階(a)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が、少なくとも1つのポリグリセロール(II)と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
特にこれによって、第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVA’)として、3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものであり;及び
(b)それに続いて、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(b)において得られた反応中間生成物(IVA’)が、少なくとも1つのポリカルボン酸と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものである;
又は、
((A)に代わる第2の)合成経路(B)によれば:
(a)第1の方法段階(a)において、少なくとも1つのポリグリセロールが、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
特にこれによって、第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVB’)として、ポリカルボン酸(III)の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸(III)の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものであり;及び
(b)それに続いて、第2の方法段階(IV)において、第1の方法段階(a)において得られた反応中間生成物(IVB’)が、一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物と反応し及び/又は反応させられ、
ここで、一般式(I)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示し、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0075】
本発明の特定の実施形態によれば、一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物は、ラセミ体又は(R)-エナンチオマーの形態で使用することができる。ここで、(R)配置とは、一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物の3位にある不斉炭素原子のことを指す。
【0076】
本発明によれば、一般式(I)において、ラジカルR1がエチルを表す場合が好ましい。
【0077】
すなわち、本発明によれば、一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸として、式CH3-CH(OH)-CH2-COC2H5の3-ヒドロキシ酪酸エチル(同義語として、3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル、4-エトキシ-4-オキソ-2-ブタノールとして参照される)が、使用されることが好ましい。
【0078】
これは、特に効率的なプロセス制御と、副生成物の生成を抑えた高収率化を可能にする。さらに、3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル又は4-エトキシ-4-オキソ-2-ブタノールも大量に市販されており、特に大規模に(例えば、酢酸エチルのクライゼン縮合により)容易に得ることができる。
【0079】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、前記ポリグリセロール(II)が、一般式(IIa)
HO-CH2-H(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IIa)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IIa)において、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2の整数、より好ましくは1を示すものである。
【0080】
本発明の方法の更なる特定の実施形態によれば、前記ポリグリセロール(II)が、一般式(IIb)
HO-CH2-H(OH)-CH2-O-CH2-CH(OH)-CH2-OH (IIa)
のジグリセロールであることが好ましい。
【0081】
特に、前記ポリグリセロール(II)は、プロパン-1,2,3-トリオール(グリセロール)ではない。
【0082】
本発明の特定の実施形態によれば、ポリカルボン酸(III)は、遊離ポリカルボン酸の形態で、ポリカルボン酸の塩の形態で、ポリカルボン酸エステルの形態で又はポリカルボン酸無水物の形態で、特に遊離ポリカルボン酸の形態で又はポリカルボン酸無水物の形態で、好ましくはポリカルボン酸無水物の形態で、より好ましくは環状ポリカルボン酸無水物の形態で使用することが好ましい。
【0083】
ポリカルボン酸の無水物は特に反応性が高く、エステル化反応に特に適している。環状無水物を使用した場合、エステル化反応の過程で開裂生成物が発生しないため、エネルギー集約的な除去が必要となる場合がある。
【0084】
本発明の別の特定の実施形態によれば、ポリカルボン酸(III)は、一般式(IIIa)
HOOC-X’-COOH (IIIa)
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IIIa)において、X’は、飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換の、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものである;
特に、少なくとも1つのカルボキシ基(COOH-基)、好ましくは両方のカルボキシ基(COOH-基)が、末端である及び/又は第1級カルボキシ基(COOH-基)である。
【0085】
これに関して、一般式(IIIa)において、X’が、飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換の、特に1以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、2~6の炭素原子を含む有機ラジカルを表す場合が特に好ましい;
特に、少なくとも1つのカルボキシ基(COOH-基)、好ましくは両方のカルボキシ基(COOH-基)が、末端であり及び/又は第1級カルボキシ基(COOH-基)である。
【0086】
特に、少なくとも1つ、好ましくは2つの末端又は第1級カルボキシ基を有する先に定義したポリカルボン酸を用いることにより、極端な反応条件(例えば、非常に高い温度、非常に低い圧力など)を必要とせずに、副生成物の生成を最小限に抑えつつ、エステル化反応を特に効果的に進行させることが可能である。また、架橋の度合い(分岐の度合い)は、存在するカルボキシ基の数によって影響を受けるものである。
【0087】
本発明による方法において、前記ポリカルボン酸(III)は、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸及びそれらの無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びそれらの無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくは、コハク酸及びアジピン酸及びそれらの無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される。
【0088】
前記カルボン酸は、市販されており、また、エステル化反応において容易に反応可能である。
【0089】
特に、ポリカルボン酸(III)が、ヒト及び/又は動物の代謝で生じる天然由来のカルボン酸又はその無水物若しくは誘導体、特に反応生成物である場合が、本発明による方法において好ましい。
【0090】
特に、これに関して、クエン酸サイクルにおいて生じる、結果としてクエン酸サイクルから生じる又はクエン酸サイクルに関係するカルボン酸又はその無水物又は誘導体が使用される場合、有利である。これに関して、誘導体は、例えば、(例えば、クエン酸サイクルからの)代謝生成物の酸化によって得られる塩又はエステルを示すものである。ヒト及び/又は動物の代謝の一部又はヒト及び/又は動物の代謝の反応物又は生成物又は中間体を示すカルボン酸又はその無水物又は誘導体を用いることにより、本発明による反応生成物を用いる場合、ヒト及び/又は動物の体におけるさらなるエネルギー源(ケト体3-ヒドロキシ酪酸又は3-ヒドロキシ酪酸塩に加えて)が提供されるものである。本発明の反応生成物は、特に、医薬品、薬剤又は食品及び食品生成物として又はそれらにおける使用に適したものである。
【0091】
さらに、ポリカルボン酸(III)が、食品法の下で認可された成分、特に添加物である場合も、本発明による方法に関して好ましいものである。
【0092】
食品法で認可された成分や添加物は、一定量の食品への使用が許可されており、健康へのリスクはない。食品添加物のリストはEU全域で管理されており、各食品添加物には独自のラベル(いわゆるE番号)が付与されている。例えば、以下のカルボン酸が食品添加物リストに含まれている:コハク酸(E363)、酒石酸(E334)、クエン酸(E330)、リンゴ酸(E296)、アジピン酸(E355)及びフマル酸(E297)である。これらの酸は、クエン酸サイクルの全部分であり又はクエン酸サイクルの代謝生成物の酸化によって得られるものである。クエン酸サイクルとは、生物の好気性細胞の代謝に重要な役割を果たす生化学反応のサイクルで、主にエネルギー生産と生合成の中間体の提供を目的とした有機物の酸化分解に利用される。したがって、本発明の方法から得られる反応生成物(IV)を使用する場合、分解により生成する酸は、別の代替エネルギー源として生体内で利用することができる。
【0093】
特定の実施形態によれば、本発明は、本発明のこの態様によれば、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法、特に上記に定義するような方法について言及する。
ここで、(第1の)合成経路(A)によれば:
(a)第1の方法段階(a)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が、変数pが1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示す一般式(IIa)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IIa)
の少なくとも1つのポリグリセロール(II)と反応し及び/又は反応させられるものであり、
特に、エステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられるものであり、
特にこれによって、第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVA’)として、3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものである:及び
(b)それに続く、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(a)において得られた反応中間生成物(IVA’)が、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
それによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである;
又は、
((A)に代わる第2の)合計経路(B)によれば;
(a)第1の方法段階(a)において、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示す一般式(IIa)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IIa)
の少なくとも1つのポリグリセロール(II)が、少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と、特に少なくとも2つのカルボキシ基を有する少なくとも1つのポリカルボン酸と反応し及び/又は反応させられ、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させられ、
特に第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVB’)として、ポリカルボン酸(III)の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸(III)の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである;及び
(b)それに続く、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(a)において得られた反応中間生成物(IVB’)が、ラジカルR1が水素、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つのポリカルボン酸化合物と反応し及び/又は反応させられ、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上ポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものである。
【0094】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明のこの態様に係る発明は、また、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルを製造する方法、特に上記に定義されるような方法を示すものであり、
ここで、(第1の)合成経路(A)によれば:
(a) 第1の方法段階(a)において、ラジカルR1が水素、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が、
変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示す一般式(IIa)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IIa)
の少なくとも1つのポリグリセロールと反応し及び/又は反応させるものであり、
特に、エステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応されるものであり、
特に、第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVA’)として、3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものであり;且つ、
(b)それに続く、第2の方法段階(b)において、前記第1の方法段階(a)において得られる前記反応中間生成物(IVA’)として、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの無水物及び組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特に、コハク酸、酒石酸クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸及びそれらの無水物、並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくは、コハク酸及びアジピン酸及びそれらの無水物、並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と反応し及び/又は反応させるものであり、特に、エステル化反応において及び/又はエステル化条件下において、反応し及び/又は反応させるものであり、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである;
又は、
((A)に代えて、第2の)合成経路(B)によれば:
(a)第1の方法段階(a)において、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示す一般式(IIa)
HO-CH2-CH(OH)-CH2-[O-CH2-CH(OH)-CH2]p-OH (IIa)
の少なくとも1つのポリグリセロール(II)が、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの無水物及び組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特に、コハク酸、酒石酸クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸及びそれらの無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくは、コハク酸及びアジピン酸及びそれらの無水物、並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択される少なくとも1つのポリカルボン酸(III)と反応し及び/又は反応させるものであり、特に、エステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させるものであり、
特に第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IVB’)として、ポリカルボン酸(III)の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸(III)の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである;及び
(b)それに続いて、第2の方法段階(b)において、第1の方法段階(1)において得られた反応中間生成物(IVB’)が、
ラジカルR1が、水素、ラジカルR1が水素、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す一般式(I)
CH3-CH(OH)-CH2-C(O)OR1 (I)
の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物と反応し及び/又は反応させるものであり、特にエステル化反応において及び/又はエステル化条件下において反応し及び/又は反応させるものであり、
これによって、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られるものである。
【0095】
本発明の特定の実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、溶媒の非存在下及び/又は無溶媒で実施されることが好ましい。
【0096】
すなわち、方法又は第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)又は第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、このようにバルクでの反応として又は物質中での反応として又はいわゆるバルク反応として実施される/実施される。このため、得られた反応生成物が溶媒で汚染されることがなく、方法又は反応を実施した後に、コストとエネルギーを要する方法で溶媒を除去して廃棄又は再利用する必要がないという利点がある。驚くべきことに、この方法又は反応は、それにもかかわらず、高い変換率及び収率で、少なくとも本質的に有意な副生成物の生成なしに進行する。
【0097】
特定の実施形態によれば、本発明方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、触媒の非存在下及び/又は触媒なしで実施されてもよく、又は、触媒、特に酵素及び/又は金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性の触媒(特に触媒が反応の後にリサイクルされる)の存在下で実施されることが好ましい。
【0098】
前述のように、本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、優先的には第1の方法ステップ(a)及び第2の方法ステップ(b)は、触媒の不在下で実施されてもよいし、触媒を用いずに実施されてもよい。
【0099】
方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、触媒の非存在下及び/又は触媒なしで実施される場合、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で実施される。
【0100】
方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)を触媒の非存在において実施する場合において、適用される圧力範囲は、広い範囲で変化させることができる。方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実施される。
【0101】
触媒の非存在下で、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第2の方法段階(a)第2の方法ステップ(b)を実施する場合、不活性ガスの存在下で、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下で実施されることが好ましい。これによって、特に、望ましくない副反応、特に酸化又は加水分解に起因する副反応が防止される。
【0102】
しかしながら、この特定の実施形態に代えて、触媒としての酵素の存在下で、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、実施されることもまた可能である。
【0103】
特に、酵素は、シンテターゼ(リガーゼ)、カタラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ及びそれらの組み合わせから選択される。本発明によれば、シンテターゼ(同義語的にリガーゼ)は、特にリガーゼのクラスの酵素であり、リガーゼは、共有結合によって2つ以上の分子を連結することを触媒する酵素である。本発明の意味でのカタラーゼは、特に過酸化水素を酸素と水に変換する能力を有する酵素をいう。エステラーゼという用語は、特にエステルをアルコールと酸に加水分解する(鹸化)能力のある酵素を指し、したがってこれらは特にヒドロラーゼであり、脂肪分解エステラーゼはまたリパーゼとも呼ばれる。本発明の意味でのリパーゼは、特にグリセリドなどの脂質から遊離脂肪酸を分解する(脂肪分解)能力を有する酵素をいう。
【0104】
これに関して、触媒として使用される酵素は、カンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)、テルモミセス・ラヌギノーサ、カンジダ・ルゴサ、アスペルギルス・オリゼ(ニホンコウジカビ)、シュードモナス・セパシア、シュードモナス・フルオレッセンス、リゾパス・デレマール及びシュードモナス種及びそれらの組み合わせ、好ましくはカンディダ・アンタークティカ、ムコル・ミエヘイ(リゾムコル・ミエヘイ)及びテルモミセス・ラヌギノーサに由来する。
【0105】
特定の実施形態によれば、酵素は、固定化形態において使用され、特に担体、好ましくは高分子担体、より好ましくは疎水性を有する高分子有機担体、さらに好ましくはポリ(メタ)アクリル樹脂系担体に固定化されるものである。
【0106】
本発明においては、酵素を触媒として用いる場合、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)の後に酵素をリサイクルすることが好ましい。
【0107】
本発明による製造方法において、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、触媒としての酵素の存在下で本発明の製造方法において実施される限りにおいて、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、10℃~80℃の範囲内、特に20℃~80℃の範囲内、好ましくは25℃~75℃の範囲内、より好ましくは45℃~75℃の範囲内、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲内の温度で実施される場合がより好ましい。
【0108】
触媒としての酵素を使用する場合において、使用する酵素の量は、広い範囲で変化させることができる。特に、酵素は、出発化合物(I)及び/又は(II)及び/又は(III)及び/又は(IV’A)及び/又は(IV’B)の総量に基づいて、0.001重量%~20重量%の範囲内、特に0.01重量%~15重量%の範囲内、好ましくは0.1重量%~15重量%の範囲内、より好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲内の量で使用される。それにもかかわらず、それぞれの場合又は特定の用途のために、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが必要である場合がある。
【0109】
本発明による方法が合成経路(A)に従って実施される場合、第1の方法段階(a)において、少なくとも1つの一般式(I)の3-ヒドロキシ酪酸化合物と少なくとも1つのポリグリセリン(II)が出発化合物として使用され、且つ、第2の方法段階(b)において反応中間体(IV’A)及び少なくとも1つのポリカルボン酸(III)が出発化合物として使用される。本発明による方法が、合成経路(B)によって実施される場合、第1の方法段階(a)において、少なくとも1つのポリグリセロール(II)及び少なくとも1つのポリカルボン酸(III)が出発化合物として使用され、第2の方法段階(b)において、反応中間生成物(IV’B)及び一般式(I)の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が出発化合物として使用される。
【0110】
本発明の特定の実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は
第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、触媒としての酵素の存在下で実施される場合、適用する圧力も広い範囲内で変化することが可能である。典型的には、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、触媒としての酵素の存在下、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内、さらに好ましくは約0.5バールで実施されることが可能である。
【0111】
本発明の特定の実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、触媒としての酵素の存在下で実施されることによれば、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、不活性ガスの存在下で、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下で実施される場合が好ましい。触媒非存在下での反応に関連して既に述べたように、望ましくない副反応、特に酸化又は加水分解による反応は、不活性ガスの存在下での反応により防止することができる。
【0112】
本発明の別の代替的な実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性触媒又は塩基性触媒の存在下で実施されることが可能である。
【0113】
本発明の別の代替的な実施形態によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第2の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性触媒又は塩基性触媒の存在下で実施されることによれば、前記触媒が、特に、(i)塩基性触媒、特にアルカリ又はアルカリ土類水酸化物及びアルカリ又はアルカリ土類アルコール塩、たとえばNaOH、KOH、LiOH、Ca(OH)2、NaOMe、KOMe及びNa(OBu-tert.)、(ii)酸性触媒、特に鉱酸、及び有機酸、例えば硫酸エステル酸、リン酸、硝酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸及びカルボン酸、(iii)ルイス酸、特にチタン、錫、亜鉛及びアルミニウム化合物をベースとするルイス酸、たとえば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、アルミニウムトリイソプロピル、及び(iv)不均一系触媒、特に鉱物ケイ酸エステル、ゲルマン酸エステル、炭酸エステル及びアルミニウム酸化物に基づくもの、例えばゼオライト、モンモリロナイト、モルデナイト、ヒドロタルサイト及びアルミナ及びそれらの組み合わせ、から選択されることが好ましい。
【0114】
本実施形態では、チタン、スズ、亜鉛、アルミニウム化合物に基づくルイス酸、例えば、チタンテトラブチレート、スズ酸、酢酸亜鉛、三塩化アルミニウム、トリイソプロピルアルミニウムが、触媒として使用されることが好ましい。
【0115】
特に、この実施形態によれば、また、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒が、反応後にリサイクルされる場合が好ましい。
【0116】
本発明の特定の実施態様によれば、方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第2の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施される場合、温度を広い範囲内で変化させることが可能である。方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第2の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、金属含有及び/又は金属系、酸性又は塩基性触媒の存在下において、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で行われるものである。
【0117】
さらに、この実施形態においても、触媒(即ち、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒)は、広い量範囲内で変化させることが可能である。したがって、金属含有及び/又は金属系、酸性又は塩基性触媒の存在下において、20℃~160℃の範囲内、特に50℃~150℃の範囲内、好ましくは70℃~140℃の範囲内、より好ましくは80℃~135℃の範囲内、さらに好ましくは100℃~130℃の範囲内の温度で行われるが可能である。それにもかかわらず、それぞれの場合又は特定の用途のために、本発明の範囲を離れることなく、上記の量から逸脱することが可能である。
【0118】
本発明による方法を合成経路(A)にしたがって実施される場合、第1方法段階(a)においては、一般式(I)の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物及び少なくとも1つのポリグセロール(II)が、出発化合物として用いられ、第2の方法段階(b)においては、第2の方法段階(b)においては、反応中間体(IV’A)及び少なくとも1つのポリカルボン酸(III)が、出発化合物として使用される。本発明による方法が、合成経路(B)にしたがって実施される場合、第1の方法段階(a)において、少なくとも1つのポリグリセロール(II)及び少なくとも1つのポリカルボン酸(III)が、出発化合物として用いられ、第2の方法段階(b)において、反応中間体(IV’B)及び一般式(I)の少なくとも1つの3-ヒドロキシ酪酸化合物が、出発化合物として使用される。
【0119】
さらに、本発明のこの特定の実施形態によれば、前記方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で実施され、圧力範囲は広い範囲で等しく変化し得る。特に、前記方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)は、金属含有及び/又は金属ベースの、酸性又は塩基性触媒の存在下で、0.0001バール~10バールの範囲内、特に0.001バール~5バールの範囲内、好ましくは0.01バール~2バールの範囲内、より好ましくは0.05バール~1バールの範囲内の圧力で、さらに好ましくは約1バールの圧力で実施されることが可能である。
【0120】
さらに、本発明のこの特定の実施形態によれば、前記方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、金属含有及び/又は金属ベースの酸性又は塩基性の触媒の存在下で実施され、好ましくは、前記方法、特に第1の方法段階(a)及び/又は第2の方法段階(b)、好ましくは第1の方法段階(a)及び第2の方法段階(b)が、不活性ガスの存在下で、特にヘリウム、アルゴン又は窒素の存在下で、好ましくは窒素の存在下で実施される場合が好ましい。前述のように、不活性ガスの存在下で反応させることで、特に酸化や加水分解による好ましくない副反応を防ぐことができる。
【0121】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、第1の方法段階(a)で得られた反応中間体(IV’A)又は(IV’B)が、反応が行われた後及び/又は第2の方法段階(b)の前に、精製、特に分別され、好ましくは蒸留によって精製及び/又は分別されることが好ましい。精製及び/又は分別は、反応副生成物を除去することができ、さらにそれぞれの反応中間体の濃縮部分を有する画分は、第2の方法段階(b)のための標的化された方法で提供されることができる。そのため、副生成物の形成が最小限に抑えられ、生成混合物の組成が、目標とされる方法において制御されるものである。
【0122】
反応物や出発化合物全体の量としては、広い範囲で変化させることが可能である。
【0123】
プロセスの経済性及びプロセス順序の最適化、特に副生成物の最小化に関して考慮すると、出発化合物(I)、(II)及び(III)が、結果として生じる反応生成物(IV)において、架橋の予め決定された度合い(分岐の度合い)が設定され及び/又は制御されるようなモル比において、且つ/又は、結果として生じる反応生成物(IV)において、出発化合物(I)、(II)及び(III)に基づくユニットのそれぞれ予め決定された比率が設定され及び/又は制御されるようなモル比において使用されることが有利である。
【0124】
特に、合成経路(A)による第1の方法段階(a)において、出発化合物(I)及び(II)は、分子毎の少なくとも1つの遊離ヒドロキシ基が結果として生じる反応中間生成物(IV’A)に残るようなモル比において使用される。反応中間生成物(IV’A)分子毎の少なくとも1つのヒドロキシ基が、それに続く第2の方法段階(b)において本発明によって、特にエステル化反応において反応するものである。
【0125】
さらに、本発明によれば、合成経路(A)による第2の方法段階(b)において、反応中間生成物(IV’A)及びポリカルボン酸(III)が、結果として生じる反応生成物(IV)において、架橋の予め決定された度合い(分枝の度合い)が設定され及び/又は制御されるようなモル比において、及び/又は、結果として生じる反応生成物(IV)において、出発化合物(I),(II)及び(III)に基づくユニットのそれぞれの予め決定された比率が設定され及び/又は制御されるようなモル比において、使用される場合が有利である。架橋の度合い(分岐の度合い)は、例えば、反応生成物の溶解性を調整するために用いることができる。
【0126】
さらに本発明によれば、合成経路(B)による第1の方法段階(a)において、出発化合物(II)及び(III)が、得られる反応中間体(IV’B)において1分子当たり少なくとも1つの遊離ヒドロキシ基が残存するようなモル比で使用され及び/又は得られる反応中間体(IV’B)と反応物(IV)において所定の架橋度(分岐度)が設定され及び/又は制御される場合が有利である。
【0127】
同様に、合成経路(B)による第2の方法段階(b)において、反応中間生成物(IVB’)及び3-ヒドロキシ酪酸化合物(I)が、結果として生じる反応生成物(IV)において、出発化合物(I)、(II)及び(III)に基づくそれぞれの所定の割合のユニットが、設定され及び/又は制御されるようなモル比で使用される場合が有利である。それに続く本発明のこの実施形態による第2の方法段階(b)においても、遊離ヒドロキシ基は、3-ヒドロキシ酪酸化合物と、特にエステル化反応において反応することが可能である。
【0128】
特に、合成経路(B)による第2の方法段階(b)において、反応中間生成物(IVB’)の水酸基に基づく3-ヒドロキシ酪酸化合物(I)が少なくとも等モル量で、好ましくは等モル量~200モル%過剰の範囲内で、特に等モル量~150モル%モル過剰の範囲内で、好ましくは等モル量~100モル%超過までの範囲内で用いられることを提供することができる。3-ヒドロキシ酪酸化合物(I)を反応中間体(IV’B)のヒドロキシ基に対して等モル量又は過剰に用いることにより、好ましくは残りの全てのヒドロキシ基を3-ヒドロキシ酪酸化合物によってエステル化することができるので、反応物(IV)中に最大限の活性成分濃度(すなわち3-ヒドロキシ酪酸)を得ることができる。
【0129】
典型的には、(第1の)合成経路(A)による第1の方法段階(a)において、ラジカルR1が水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)-CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す化合物R1-OHが、同時に形成される。特に、化合物R1-OHが、反応から、特に連続的に、優先的に蒸留的又は吸着的に回収されることが好ましい。これに関して、化合物R1-OHは、特に水又は対応するアルコールである(すなわち、使用される3-ヒドロキシ酪酸化合物に依存する)。
【0130】
通常、本発明による方法では、(第1の)合成経路(A)による第2の方法段階(b)において、ポリカルボン酸(III)が遊離酸の形態で使用される場合、反応中に同時に水が形成される。特に、水が、反応から回収され、特に連続的に、特に好ましくは連続した、特に蒸留又は吸着除去の手段によって回収されることが好ましい。
【0131】
好ましくは、(第1の)合成経路(A)による第2の方法段階(b)において、ポリカルボン酸(III)が無水物の形態で使用される場合、対応する遊離ポリカルボン酸(III)が形成される。特に、結果として生じる遊離ポリカルボン酸(III)が、さらに反応させられるか、又は反応が行われた後に、特に使用された出発化合物(I)、(II)及び(III)の量及び/又は割合によって回収され、任意にリサイクルされる場合が好ましい。
【0132】
しかし,内部無水物や環状無水物(無水コハク酸や無水マレイン酸など)を使用する時、環が開かれ且つ開裂生成物が形成されないので、反応生成物は末端の遊離酸を有するものである。この方法は、マレイン酸無水物とエステル化アルコールとして3-ヒドロキシ酪酸エチル無水物との反応の例を使用して以下に説明される:
【0133】
【0134】
あるいは、エステルの形態のポリカルボン酸(III)が、(第1の)合成経路(A)による第2の方法段階(b)において使用されることが可能である。通常、(第1の)合成経路(A)による第2の方法段階(b)において、ポリカルボン酸がエステルの形態で使用される場合、対応するエステルアルコールと水が、本発明の方法において形成される。特に、形成されたエステルアルコール及び水が、前記反応から回収され、特に好ましくは連続した特に蒸留又は吸着除去によって連続的に回収されることが好ましい。
【0135】
本発明によれば、エステルアルコールは、特に、エステルの形態のポリカルボン酸(III)が、反応中間生成物(IV’A)の遊離ヒドロキシ基と反応した際に生成するアルコールである。即ち、例えば、ポリカルボン酸(III)のエチルエステルの場合において、エタノールが形成される。
【0136】
好ましくは、(第2の)合成経路(B)による第1の方法段階(a)において、ポリカルボン酸(III)が、遊離酸の形態において使用される場合、水が反応中に同時に形成されること、特に、水が反応から回収され、特に連続的に回収され、特に連続した特に蒸留又は吸着除去によって回収される場合が好ましい。
【0137】
通常、(第2の)合成経路(B)による第1の方法段階(a)において、ポリカルボン酸(III)が、無水物の形態で使用される場合、対応する遊離ポリカルボン酸(III)が形成される。特に、結果として生じる遊離ポリカルボン酸(III)がさらに反応させられるか、又は、反応が行われた後、特に使用される出発化合物(I)、(II)及び(III)の量及び/又は割合に応じて、回収され、特に任意にリサイクルされることが好ましい。
【0138】
先に(第1の)合成経路(A)に関連して述べたように、内部又は環状カルボン酸無水物の場合には、副生成物は形成されない。
【0139】
好ましくは、本発明による方法では、(第2の)合成経路(B)による第1の方法段階(a)において、ポリカルボン酸(III)が、エステルの形態で使用される場合、対応するエステルアルコールと水が形成される。特に、生成したエステルアルコール及び水が、反応から回収され、特に連続的に回収され、特に連続的な蒸留又は吸着除去により回収されることが好ましい。
【0140】
通常、本発明による方法では、(第2の)合成経路(B)による第2の方法段階(b)において、ラジカルR1が、水素、ラジカル-(O)C-CH2-CH(OH)CH3又はC1-C4-アルキル、特にC1-C4-アルキル、好ましくはメチル又はエチル、より好ましくはエチルを示す化合物R1-OHが同時に形成される。特に、化合物R1-OHが、反応から、特に連続的に、好ましくは蒸留又は吸着除去によって回収されることが好ましい。
【0141】
(第1の)合成経路(A)に関連して先に述べたように、化合物R1-OHは、特に水又は対応するアルコールである(すなわち、使用する3-ヒドロキシ酪酸化合物に依存する)。
【0142】
形成された副生成物の連続的な回収は、化学的平衡、収率又は生成物の形成の増加及び副生成物の形成の最小化に転ずる。
【0143】
本発明による製造方法において、反応生成物の組成、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の異なるポリグリセロールエステルの存在及び混合物の場合のそれらの割合及び/又は架橋の程度(分岐の程度)及び/又は分子量は、反応条件によって、特に反応温度(変換温度)の選択すること及び/又は反応圧力(変換圧力)を選択すること及び/又は触媒の非存在又は触媒を提供すること及び種類及び/又は量に関して触媒を選択すること及び/又は出発化合物(反応物)の量を選択すること及び/又は任意に形成される副産物の除去を提供することによって、制御され及び/又は調節されることが可能である。
【0144】
したがって、用途に応じて生成物又は生成混合物の組成を調整することが可能であり、特に、例えば、1分子当たりのケト体(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸又はその誘導体)の密度を目標通りに調整することが可能である。
【0145】
反応に続いて、得られた反応生成物は、さらに従来又は既知の精製又はワークアップ工程に付すことができる。
【0146】
これに関して、得られた反応生成物は、例えば、分別され、特に蒸留により分別されることが好ましい。
【0147】
また、未反応の出発化合物、特に未反応の出発化合物(I)及び/又は(II)及び/又は(III)は、反応中間生成物(IV’A)又は(IV’B)から及び/又は反応生成物(IV)から分離され、その後リサイクルされることができる。
【0148】
本発明による製造方法の特定の実施形態によれば、反応が行われた後に反応生成物(IV)中にまだ存在するヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、官能化され、特にエステル化されるような方法において、特に進行させることが可能である。
【0149】
すなわち、反応の後に、まだ存在するヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基が、部分的に、特に完全に官能化され、特にエステル化されることができる。
【0150】
本発明による方法のこの特定の実施形態では、特に依然として存在するヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基の官能化、特にエステル化は、例えばC2-C30-カルボン酸と又はC2-C30-脂肪酸と又はC2-C30-脂肪アルコールとの反応によって実施されることが可能である。これらは、直鎖状又は分岐状の、飽和又はモノ-又はポリ不飽和のC2-C30-カルボン酸無水物又はC2-C30-脂肪酸又はC2-C30-脂肪アルコールであることができる。これに関して、まだ存在するヒドロキシ基は、特にカルボン酸無水物と又は脂肪酸と反応させることができ、まだ存在するカルボキシ基は、特に脂肪アルコールと反応させることができる。
【0151】
本発明による方法が、合成経路(A)による特定の実施形態に従って実施される場合、合成経路(A)による第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IV’A)として、ラジカルR
2が、お互いに独立した、水素又はラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであるが、ただし、条件として、少なくとも1つのラジカルR
2が、ラジカル-(O)C-CH
2-CH(OH)-CH
3を示す一般式(IV’Aa)
【化4】
の3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特に3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られることが好ましい。
【0152】
本発明による方法を合成経路(B)による代替の特定の実施形態に従って実施する場合、合成経路(B)による第1の方法段階(a)の反応中間生成物(IV’B)として、一般式(IV’Ba)
【化5】
のポリカルボン酸(III)の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸(III)の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得されることが好ましい。
ここで、ラジカルR
4が、お互いに独立した、水素又はラジカル-C(O)-X-COOHを示すこと、ここで、Xは、飽和又は不飽和、任意に一置換又は多置換の、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものであり、特に、遊離カルボキシ基が、さらなるポリグリセロール(II)で及び/又はポリカルボン酸(III)のポリグリセロールエステルでエステル化され、特に架橋されるものであるが、ただし、条件として、少なくとも1つのラジカルR
4が、ラジカル-C(O)-X-COOHを示すものであること。
【0153】
さらなるポリグリセロール(II)及び/又はポリカルボン酸(III)のさらなるポリグリセロールエステルによるポリカルボン酸(III)の遊離カルボキシ基ポリグリセロールエステルのエステル化の間に、ネットワークが形成される;すなわち、複数のポリグリセロール(II)及び/又はポリカルボン酸(III)のポリグリセロールエステルが、ポリカルボン酸(III)によって連結されることである。
【0154】
本発明の方法において、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化6】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得されること及び/又は取得可能であることが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示し、ここで、X’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和、任意に一置換又は多置換、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロール、特に変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示す一般式(IIc)
【化7】
のラジカルを示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示し、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されたようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互い独立したWが、水素又は上記に定義されたXを有する-X-OH又はそれぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化8】
を示すものであり、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rは、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0155】
本発明によれば、鎖状末端は、繰り返しユニット(すなわち、繰り返しブロック)を終端するユニットであり、したがって、鎖状末端は、反応生成物(IV)において終端ユニットである。
【0156】
全体として、本発明による反応生成物は、特に、多数の分岐が可能であるネットワークである。これは、繰り返しユニットが繰り返しユニット内に存在することもでき、又は繰り返しユニットからさらなる繰り返しユニットへの分岐が形成されることもできることを意味する。
【0157】
特に、本発明による製造方法において、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化9】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られること及び/又は取得可能であることが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここで、X’が、ポリカルボン酸に由来するラジカルを示すものであり、特に飽和又は不飽和、任意に一置換又は多置換、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化10】
のラジカルを示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示し、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化11】
を示すものであり、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、ここで、前記ブロックの鎖状端末がそれぞれの場合において水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0158】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化12】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここでX’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及びカルボキシ基で置換された2~6個の炭素を有する有機ラジカルを示し;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化13】
のラジカルを示すものであり、
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)を示し、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化14】
を示すものであり、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0159】
本発明による方法のさらに特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化15】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにこれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物から選択され、好ましくはコハク酸及びアジピン酸並びにそれらの無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されるポリカルボン酸に由来するものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化16】
のラジカルを示すものであり、
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)を示し、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化17】
を示すものであり、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0160】
これに関して、「由来する」とは、Xが言及されたカルボン酸から形成されることを意味する;特に、カルボキシルの水素のエステル化によってエステル化される;即ち、それぞれの場合において、対応する酸のジカルボン酸残基がXとして存在することを意味する。
【0161】
本発明による方法のさらに特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化18】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化19】
の1つを示すものであり、
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化20】
のラジカルを示すものであり、
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)を示し、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、上記に定義されるようなX、Y、Z、Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化21】
を示すものであり、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0162】
さらに、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVa)
【化22】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化23】
の1つを示すものであり、
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化24】
のラジカルを示すものであり、
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)を示し、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示し、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、上記に定義されるようなX,Y、Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化25】
を示すものであり、ここで、お互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、それぞれ場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0163】
さらに、本発明による方法のさらに特別な実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化26】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここで、X’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化27】
のラジカルを示すものであり、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化28】
を示すものであり、ここで、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0164】
本発明によれば、鎖状末端は、繰り返しユニット(すなわち、繰り返しブロック)を終端するユニットであり、したがって、鎖状末端は、反応生成物(IV)における終端ユニットである。
【0165】
特に、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化29】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここで、X’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化30】
のラジカルを示すものであり、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化31】
を示すものであり、ここで、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0166】
特に、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化32】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここで、X’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであり;
・Yは、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化33】
のラジカルを示すものであり、
ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1であり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化34】
を示すものであり、変数sが0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5であり、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であり、ここで前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0167】
特に、本発明による方法の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化35】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特に、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくはコハク酸及びアジピン酸及びそれらの無水物、並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択されるポリカルボン酸に由来するものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化36】
のラジカルを示すものであり、
ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化37】
を示すものであり、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であり、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0168】
これに関して、「由来する」とは、Xが言及されたカルボン酸から形成されることを意味する;特に、カルボキシルの水素のエステル化によってエステル化される;即ち、それぞれの場合において、対応する酸のジカルボン酸ラジカルがXとして存在することを意味する。
【0169】
さらに、本発明による方法の特別な実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化38】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、下記するラジカル
【化39】
の1つを示すものであり、
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義するようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化40】
のラジカルを示すものであり、
ここで、変数pが1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3が示すものであり、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義するようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義されるようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化41】
を示すものであり、ここで、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であり、ここで、前記ブロックの鎖状末端は、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0170】
さらに、本発明による方法の特別な実施形態によれば、反応生成物(IV)として、一般式(IVb)
【化42】
のポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、取得され及び/又は取得可能であり、
・Xが、下記するラジカルの一つを示ものであり:
【化43】
ここで、上記のラジカルにおいて、R
3は、水素又は上記に定義するようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであり;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化44】
のラジカルを示すものであり、ここで、変数pは、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであり;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つお互いに独立した変数qが、上記に定義するようなpを有する1~(p+2)の整数であり;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであり、又は、それぞれ上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化45】
を示すものであり、ここで、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であり、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものである。
【0171】
さらに、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋される3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋される3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、得られるものであり及び/又は取得可能であることが、本発明により提供可能であり、
ここで、反応生成物(IV)及び/又はポリカルボン酸で架橋した3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが;
・少なくとも1つのユニット-C(O)-X’-C(O)-であって、ここでX’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和、任意に一置換または多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカル;
・ポリグリセロールに由来する少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニット、一般式(IIc)
【化46】
の特に少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニット、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであること;
・少なくとも2つのユニット、特に少なくとも3つのユニット、好ましくは少なくとも4つのユニット-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3;
・任意に少なくとも1つのユニット-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-;
・任意に、上記に定義するようなX’を有する少なくとも1つのユニット-X‘-COOH、のユニット、特に分子ビルディングブロックを有するものである。
【0172】
これに関して、上記のユニットは、その全体が反応生成物(IV)を形成する分子ビルディングブロックである。本発明の場合、個々のユニットはそれぞれエステル化反応により、又はエステル基により互いに連結されているため、無差別な配置は不可能であることに留意すべきである。しかし、個々のユニットをどのように配置するかは、当業者にはよく知られている。
【0173】
さらに、本発明によれば、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1つ以上の1価又は多価のポリグリセロールエステルが得られること及び/又は取得可能であり、
ここで、反応生成物(IV)及び/又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが:
・下記する式:
【化47】
の少なくとも1つのユニットX”であって、
ここで、上記ラジカルにおいて、R
3ラジカルが、水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルであるもの;
・一般式(IIc)
【化48】
のポリグリセロール、特に少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニットに由来する少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニットであって、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであるもの;
・少なくとも2つのユニット、特に少なくとも3つのユニット、好ましくは少なくとも4つのユニット-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3;
・任意に少なくとも1つのユニット-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-;
・任意に上記に定義されるようなX”を有する少なくとも1つのユニット-X”-OH、のユニット、特に分子ビルディングブロックを有するものである。
【0174】
本発明によれば、反応生成物(IV)が、特に基準としてポリスチレン(PS)を有するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、より好ましくはDIN EN ISO 16014-5:2019に従って決定される500~50,000g/molの範囲内、特に500~30,000g/molの範囲内、好ましくは500~25,000g/molの範囲内の分子量、特に平均分子量、好ましくは重量平均分子量を有することが特に好ましい。
【0175】
特に低分子化合物の場合は、本発明に従って絶対分子量を決定することも可能であり、高分子化合物の場合は平均分子量を決定する。
【0176】
本発明による方法の別の特定の実施形態によれば、反応生成物(IV)として、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つの異なるポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルの混合物が得られること及び/又は取得可能であることが好ましい。
【0177】
さらなる主題は、本発明の第2の態様によれば、反応生成物(IV)又はポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、上述の方法によって得られることが可能である。
【0178】
特別な実施形態によれば、本発明による又は本発明による取得可能である、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリ黒セロールエステルが、一般式(IVa)
【化49】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであって、X’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和または不飽和の、任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を含む有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化50】
のラジカルを示すものであること、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数を示すものであること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義されるようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義されるようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化51】
を示すものであること、ここで、お互いの独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であり、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、関ブロックの鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0179】
全体として、本発明による反応生成物または本発明によるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステルは、特に、多数の分岐が可能なネットワークである。その結果、繰り返しユニットは、繰り返しユニット内にも存在することができ、または、繰り返しユニットから出発して、さらなる繰り返しユニットへの分岐が形成されることができる。
【0180】
別の特別な実施形態によれば、本発明による又は本発明による取得可能である、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリ黒セロールエステルが、一般式(IVa)
【化52】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここでX’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換され、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化53】
のラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義するようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、
それぞれが上記に定義されるようなX,Y,Z,Z’及びqを有するブロック
【化54】
を示すものであること、ここで、それぞれがお互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0181】
本発明のさらに特別な実施形態によれば、本発明による、または本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価または多価のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化55】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであること、ここでX’が、ポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化56】
のラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素、又は、上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化57】
を示すものであること、ここで、それぞれがお互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0182】
本発明のさらに特別な実施形態によれば、本発明による、または本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価または多価のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化58】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくはコハク酸及びアジピン酸及びその無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるポリカルボン酸に由来するものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化59】
のラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素、又は、上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化60】
を示すものであること、ここで、それぞれがお互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0183】
これに関して、「由来する」とは、Xが言及されたカルボン酸から形成されることを意味する;特に、カルボキシルの水素のエステル化によってエステル化される;即ち、それぞれの場合において、対応する酸のジカルボン酸残基がXとして存在することを意味する。
【0184】
本発明のさらに特別な実施形態によれば、本発明による、または本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価または多価のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化61】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化62】
の1つを示すものであること、ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化63】
のラジカルを示すものであること、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素、又は、上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化64】
を示すものであること、ここで、それぞれがお互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0185】
本発明のさらに特別な実施形態によれば、本発明による、または本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価または多価のポリグリセロールエステルが、一般式(IVa)
【化65】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVa)において、
・Xが、下記するラジカル
【化66】
の1つを示すものであること、ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化67】
のラジカルを示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・Z’が、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-を示すものであり、且つ、お互いの独立した変数aが、0又は1であること;
・お互いに独立したWが、水素、又は、上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z,Z’及びqを有する1つ以上のブロック
【化68】
を示すものであること、ここで、それぞれがお互いに独立した変数s及びtが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、鎖状末端が、それぞれの場合において、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0186】
さらに、本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化69】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここでX’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化70】
のラジカルを示すものであり、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1をしめすものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化71】
を示すものであること、ここで、変数sが0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、それぞれお互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0187】
さらに、本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化72】
に対応することが好ましい。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここでX’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化73】
のラジカルを示すものであり、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1をしめすものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化74】
を示すものであること、ここで、変数sが0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、それぞれお互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0188】
さらに、本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化75】
に対応することを提供することができるものである。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、ラジカル-C(O)-X’-C(O)-を示すものであり、ここでX’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化76】
のラジカルを示すものであり、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1をしめすものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれが上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化77】
を示すものであること、ここで、変数sが0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、それぞれお互いに独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0189】
さらに、本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化78】
に対応することが提供される。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸及びマレイン酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物からなる群から選択され、特にコハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸及びフマル酸並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択され、好ましくは、コハク酸及びアジピン酸及びその無水物並びにそれらの組み合わせ又は混合物の群から選択されるポリカルボン酸に由来するものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化79】
のラジカルを示すものであること、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義するようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれ上記に定義するようなX、Y,Z及びqを有するブロック
【化80】
を示すものであること、ここで変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、且つ、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0190】
これに関して、「由来する」とは、Xが言及されたカルボン酸から形成されることを意味する;特に、カルボキシルの水素のエステル化によってエステル化される;即ち、それぞれの場合において、対応する酸のジカルボン酸残基がXとして存在することを意味する。
【0191】
さらに、本発明のこの態様の特定の実施形態によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化81】
に対応することが提供される。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、下記するラジカル
【化82】
の1つを示すものであること、
ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が、水素又は上記に定義するようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すものであること;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IIc)
【化83】
のラジカルを示すものであること、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであること;
・Zが、ラジカル-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いの独立した変数qが、上記に定義するようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いに独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化84】
を示すものであること、ここで、変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数であること、お互いに独立した変数rが、上記に定義するようなpを有する0~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されるものであること。
【0192】
さらに、本発明によれば、本発明による又は本発明方法によって得られる、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルは、一般式(IVb)
【化85】
に対応することが提供される。
ここで、一般式(IVb)において、
・Xが、下記するラジカル
【化86】
の1つを示すものであること、ここで、上記ラジカルにおいて、ラジカルR
3が水素又は上記に定義されるようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカルを示すこと;
・Yが、ポリグリセロールに由来するラジカル、特に一般式(IId)
【化87】
のラジカルをしめすものであること、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1を示すものであること;
・Zが、-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3を示すものであること、且つ、お互いに独立した変数qが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+2)の整数であること;
・お互いの独立したWが、水素又は上記に定義するようなXを有する-X-OHを示すものであること、又は、それぞれ上記に定義するようなX,Y,Z及びqを有するブロック
【化88】
を示すものであること、ここで変数sが、0~30の整数、特に0~25の整数、好ましくは0~20の整数、より好ましくは0~10の整数、さらに好ましくは0~5の整数を示すものであること、且つ、お互いの独立した変数rが、上記に定義されるようなpを有する1~(p+1)の整数であること、ここで、前記ブロックの鎖状末端が、水素、-X-OH又はZによって形成されること。
【0193】
さらに、本発明のこの態様の特別な実施形態によれば、本発明のさらなる目的は、特に上記に定義されるような、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルであり、
ここで、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが;
・少なくとも1つのユニット-C(O)-X’-C(O)-、ここで、X’がポリカルボン酸に由来するラジカル、特に飽和又は不飽和及び任意に一置換又は多置換された、特に1つ以上のヒドロキシ基及び/又はカルボキシ基で置換された、1~10個、好ましくは2~6個の炭素原子を有する有機ラジカルを示すもの;
・ポリグリセロールに由来する少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニット、一般式(IIc)
【化89】
の少なくとも1つのユニット、好ましくは少なくとも2つのユニット、ここで、変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2,より好ましくは1を示すもの;
・少なくとも2つのユニット、特に少なくとも3つのユニット、好ましくは少なくとも4つのユニット-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3;
・任意に少なくとも1つのユニット-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-;
・任意に上記に定義するようなX’を有する少なくとも1つのユニット-X’-COOH、のユニット、特に分子ユニットを具備すること;
【0194】
これに関して、上記のユニットは、その全体が反応生成物(IV)を形成する分子ビルディングブロック又はセグメントである。本発明の場合、それぞれのユニットは、それぞれエステル化反応によって、またはエステル基によって互いに連結されているので、無差別な配置は不可能であることに留意すべきである。しかし、個々のユニットをどのように配置するかは、当業者にはよく知られている。
【0195】
さらに、上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルを提供することが、本発明のこの態様による特別な実施形態にしたがった本発明の目的であり、
ここで、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが:
・下記する式の少なくとも1つのユニットX”:
【化90】
ここで、上記ラジカルにおいて、R
3ラジカルは、水素又は上記に定義するようなR
1を有するラジカル-CH(CH
3)-CH
2-C(O)OR
1又は任意に置換されたポリグリセロールラジカル;
・ポリグリセロールに由来する少なくとも1つのユニット、特に少なくとも2つのユニット、特に一般式(IIc)
【化91】
の少なくとも1つのユニット、少なくとも2つのユニットであって、
変数pが、1~6の整数、特に1~4の整数、好ましくは1又は2、より好ましくは1であるもの;
・少なくとも2つのユニット、特に少なくとも3つのユニット、好ましくは4つのユニット-C(O)-CH
2-CH(OH)-CH
3;
・任意に少なくとも1つのユニット-C(O)-CH
2-CH(CH
3)-O-;
・任意に上記に定義するようなX”を有する少なくとも1つのユニット-X”-OH、のユニット、特に分子ビルディングブロックを有するものである。
【0196】
また、本発明のこの態様の特別な実施形態によれば、本発明の目的は、上記に定義されるような、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルであり、
ここで、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、特にサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、好ましくはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)、より好ましくはDIN EN ISO 16014-5:2019にしたがって、特に基準としてのポリスチレン(PS)で測定された500~50,000g/molの範囲内、特に500~30,000g/molの範囲内、好ましくは500~25,000g/molの範囲内の分子重量、特に平均分子重量、好ましくは重量平均分子重量を有するものである。
【0197】
低分子化合物の場合には、特に絶対分子量も本発明にしたがって決定することができると共に、平均分子量は高分子化合物についても決定される。
【0198】
さらに、本発明のこの態様の特別な実施形態によれば、本発明のさらなる目的は、上記に定義されるような、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の少なくとも2つ、特に少なくとも3つ、好ましくは少なくとも4つのポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルを有する混合物である。
【0199】
本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物が、先行技術と比較して多数の利点及び特別な特徴を有するものである。
【0200】
本出願人が、驚くべきことに見出したように、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物が、一方では、生理的に、特に胃腸管内で3-ヒドロキシ酪酸又はその塩に変換され、他方では、特に非毒性及び許容できる有機食品特性に関して、良好な生理的適合性または許容性を同時に構成するものであるから、3-ヒドロキシ酪酸又はその塩の前駆体又は代謝物として好適である。
【0201】
本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物は、それぞれ、合成ベースで、商業規模であっても、容易に入手可能であり、且つ、必要な医薬又は薬理学的品質を有する。
【0202】
さらに、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物は、必要に応じて、エナンチオマー的に純粋な又はエナンチオマー的に濃縮された形態で提供されることができる。
【0203】
本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物は、このように、ヒトや動物の体のケト体治療において、効率的な薬理学的ターゲットとなる。
【0204】
本発明の方法によって取得可能な反応生成物又は上記に定義されるような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、又は、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステルが、今、図面についての下記の説明と図面そのものに基づいて、さらに特徴付けられる。これに関連して、説明及び/又は図示されたすべての特徴は、特許請求の範囲およびそれらの背景説明におけるそれらの要約に関係なく、個々に又は任意の組み合わせにおいて本発明の主題を構成する。
【0205】
以下において、本発明の残りの態様をより詳細に説明する。
【0206】
本発明の第3の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物を有する医薬組成物、特に薬物又は医薬品である。
【0207】
特に、本発明のこの態様によれば、本発明は、予防的及び/又は治療的処置のための医薬組成物、又は、ヒト又は動物の身体の疾患の予防的及び/又は治療的処置に用いるための医薬組成物に関する。これは、エネルギー代謝の障害に関連する疾患、特にケト体代謝の障害に伴う疾患、特に脳梗塞、脳卒中、低酸素症、心筋梗塞などの循環器疾患、リフィーディング症候群、食欲不振、癲癇、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)、VL-FAODなどの脂質代謝疾患、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病など、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、膠芽腫などの癌、HIV、関節リウマチ、尿路性器炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患(特に潰瘍性大腸炎、クローン病)などの消化器系疾患、スフィンゴ糖脂質症などのレオゾーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の影響または副作用、皮膚病および皮膚損傷、特に創傷治癒の促進、創傷の治療または瘢痕の軽減に関連する。
【0208】
また、本発明の第4の態様によれば、本発明のさらなる主題は、ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などの疾患、心筋梗塞などの循環器疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂肪代謝性疾患など、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患など、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の効果や副作用、皮膚疾患や皮膚損傷、特に創傷治癒の促進、創傷治療、瘢痕の軽減の予防的及び/又は治療的処置に用いるための又は予防的および/または治療的処置のための、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物である。
【0209】
同様に、本発明の第5の態様によれば、本発明のさらなる主題は、ヒトまたは動物の身体の疾患、特にエネルギー代謝、特にケト体代謝の障害に関連する疾患、例えば特に頭蓋脳外傷、脳卒中、低酸素症などの疾患、心筋梗塞などの循環器疾患、再食症、食欲不振、てんかん、認知症、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、グルコーストランスポーター欠損(GLUT1欠損)などの脂肪代謝性疾患など、VL-FAOD、ミトコンドリアチオラーゼ欠損などのミトコンドリア病、ハンチントン病、T細胞リンパ腫、星細胞腫、グリオブラストーマなどの癌、HIV、関節リウマチ、尿道炎などのリウマチ性疾患、慢性炎症性腸疾患などの消化器系疾患など、特に潰瘍性大腸炎やクローン病などの消化管疾患、スフィンゴ糖脂質症などのリオソーム貯蔵病、特にニーマン・ピック病、糖尿病、化学療法の効果や副作用、皮膚疾患や皮膚損傷、特に創傷治癒の促進、創傷治療、瘢痕の軽減の予防的及び/又は治療的処置に用いるための又は予防的および/または治療的処置のための、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0210】
同様に、本発明の第6の態様によれば、本発明のさらになる主題は、それぞれ、空腹時、ダイエット、低炭水化物栄養などの異化代謝状態に対する予防的及び/又は治療的治療、又は、そのための医薬品の製造に適用するための、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0211】
また、本発明のこの態様によれば、本発明の目的は、化粧品の分野及び/又は化粧品、特に化粧品製剤、好ましくは老化防止(アンチエイジング)のため、または組織工学、特に血管新生のための、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0212】
本発明による用途または使用(例えば、医薬組成物など)に関して、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物は、任意の適用形態及び/又は任意の用途において、特に経口、非経口又は局所的に使用又は投与されることができる。
【0213】
同様に、本発明の第7の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物を有する化粧品又は化粧品組成物である。
【0214】
本発明の第8の態様によれば、本発明のさらなる主題は、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物を有する食品及び/又は食品生成物である。
【0215】
特定の実施形態によれば、食品及び/又は食品生成物は、本質的に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は、筋力及び/又は耐久スポーツサプリメントであることが好ましい。
【0216】
最後に、本発明の第9の態様によれば、本発明の別主題は、食品及び/又は食品生成物における、本発明の方法によって取得される反応生成物又は上記に定義するような本発明の反応生成物、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能なポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル又は上記に定義されるようなポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールエステル、特にポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の1価又は多価のポリグリセロールエステル、及び/又は、本発明の製造方法によって取得可能な混合物又は上記に定義されるような本発明の混合物の使用である。
【0217】
本発明のこの態様によれば、食品及び/又は食品生成物は、特に、栄養補助食品、機能性食品、新規食品、食品添加物、食品サプリメント、ダイエット食品、パワースナック、食欲抑制剤、又は筋力及び/又は耐久スポーツ補助食品であることが好ましい。
【0218】
本発明のさらなる実施形態、修正および変形は、本発明の範囲を離れることなく、本明細書を読んだ当業者によって容易に認識または実現可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【
図1】
図1は、特定の純粋に例示的な実施形態による、コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のトリジグリセロールエステルを可視化したものである。
図1は、コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のトリジグリセロールエステルを示すものであり、異なるユニット又は分子ビルディングブロックは、それぞれ異なる印が付けられている。3-ヒドロキシ酪酸に基づくユニット又は分子ビルディングブロックは、(空白)ボックスで示されている。ジグリセロールに基づくユニット又は分子ビルディングブロックは、ハッチングされたボックスで示され、コハク酸に基づくユニットまたは分子構築ブロックは、点線のボックスで示される。
【
図2】
図2は、さらなる特定の、また純粋に例示的な実施形態による、本発明による反応生成物を模式的に視覚化したものである。
図2において、ネットワークの形態である可能性のある反応生成物(IV)が模式的に示されている。これに関して、ユニット又は分子ビルディングブロックは、
図1に示したまたは定義したボックス(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸に基づくユニットまたは分子ビルディングブロックについては(空の)ボックス、ジグリセロールに基づくユニット又は分子ビルディングブロックについてはハッチングしたボックス及びコハク酸に基づくユニット又は分子ビルディングブロックについては点線のボックス)により示されている。
【発明を実施するための形態】
【0220】
本発明は、以下の実施例によって説明されるが、これらは本発明を何ら限定するものではなく、本発明の例示的かつ非限定的な実施および構成を説明するためのものに過ぎない。
【実施例】
【0221】
I.合成経路(A)にしたがった本発明による方法の特定の実施形態の製造例
I.1.無水コハク酸を用いた3-ヒドロキシ酪酸架橋ジグリセロールエステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、40gのジグリセロール及び1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)が、提供される。反応混合物は、70℃で、真空下(500mbar未満)で、10時間撹拌されながら反応し、得られたエタノールは蒸留により連続的に回収される。その後、酵素を濾過し、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下での蒸留によって除去される。その後、対応する反応中間混合物が残渣として得られる。必要であれば、得られた残渣を真空中で2~4時間、ストリーム処理される。
【0222】
反応中間生成物として、3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステル、ジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル(すなわち3-ヒドロキシ酪酸の1価、二価及び三価のジグリセロールエステル)の混合物を得ることができる。
【0223】
その後、得られた混合物は、120℃で24時間攪拌されながらコハク酸無水物10gと反応させられ、形成された水は、蒸留により連続的に回収される。コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステルからなるゲル状の反応生成物が得られる。これらの構造は、一般的な説明の上記反応スキームにおける及び図における例示によって純粋に与えられる。
【0224】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0225】
I.2.遊離コハク酸を使用するコハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸ジグリセリンエステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、40gのジグリセロール及び1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)が、提供される。反応混合物は、70℃で、真空下(500mbar未満)において、10時間撹拌されながら反応し、得られたエタノールは蒸留により連続的に回収される。その後、酵素は、濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。その後、対応する反応中間混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、必要であれば真空中で2~4時間、ストリーム処理される。
【0226】
反応中間生成物として、3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステル、ジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル(即ち、3-ヒドロキシ酪酸の1価、2価及び3価のジグリセロールエステル)の混合物を得ることができる。
【0227】
その後、得られた混合物は、120℃で24時間攪拌されながら11.8gのコハク酸と反応し、形成された水は、蒸留により連続的に回収される。コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルからなるゲル状の反応生成物が得られる。
【0228】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0229】
I.3.コハク酸ジエチルエステルを用いた3-ヒドロキシ酪酸架橋ジグリセロールエステルの製造
デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに、132gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシ酪酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)、40gのジグリセロールおよび1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)が、提供される。反応混合物は、70℃で、真空下(500mbar未満)において、10時間撹拌されながら反応し、得られたエタノールが、蒸留により連続的に回収される。その後、酵素は濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。その後、対応する反応中間混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて真空中で2~4時間、ストリーム処理される。
【0230】
反応中間生成物として、3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステル、ジグリセロールエステル、トリジグリセロールエステル(すなわち3-ヒドロキシ酪酸の1価、2価及び3価のジグリセロールエステル)の混合物が得られるものである。
【0231】
その後、得られた混合物は、120℃で24時間攪拌されながら、17.4gの
コハク酸ジエチルエステルと反応し、得られたエタノールが、蒸留により連続的に回収される。3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステルがコハク酸で架橋されたゲル状の反応生成物が得られる。
【0232】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0233】
I.4.コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のさらなるジグリセロールエステルの製造
しかしながら、I.1.、I.2.及びI.3.による先に実施した合成例は、下記するポリカルボン酸(それぞれの場合に遊離酸としての第1の方法の代替)及びそれらのそれぞれの無水物(第2の方法の代替)並びにそれらのそれぞれのエチルエステル(第3の方法の代替);酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸、およびマレイン酸を使用して実施される。それぞれの場合において、同等の結果が得られる。
【0234】
II.合成経路(B)による本発明にしたがった方法の特定の実施形態の製造例
II.1.無水コハク酸を用いたコハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの製造
40gのジグリセロールと10gの無水コハク酸が、デフレグメレーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに供給される。反応混合物は、120℃で24時間攪拌されながら反応し、生成した水は蒸留により連続的に回収される。その後、対応する反応中間混合物は、残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて真空中で2~4時間、ストリーム処理されることが可能である。
【0235】
反応中間生成物として、コハク酸のポリグリセロールエステルとコハク酸で架橋されたコハク酸のポリグリセロールエステルの混合物が得られる。
【0236】
その後、得られた混合物は、264gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)と、70℃で、真空下(500mbar未満)において、10時間撹拌されながら反応させられ、得られたエタノールは、蒸留により連続的に回収される。その後、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。その後、所望の反応生成混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて、真空中で2~4時間ストリーム処理されることができる。
【0237】
コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステルを有するゲル状の反応生成物が得られる。
【0238】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0239】
II.2.遊離コハク酸を用いたコハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸ジグリセリンエステルの製造
40gのジグリセロールと11.8gのコハク酸が、デフレグメーター(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに供給される。反応混合物は、120℃で24時間攪拌されながら反応し、形成した水は蒸留により連続的に回収される。その後、対応する反応中間混合物が、残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて真空中で2~4時間、ストリーム処理されることができる。
【0240】
得られる反応中間生成物は、コハク酸のポリグリセロールエステルとコハク酸で架橋されたコハク酸のポリグリセロールエステルの混合物である。
【0241】
その後、得られた混合物は、264gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシブタン酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)と、70℃で、真空下(500mbar未満)において、10時間撹拌されながら反応させられ、得られたエタノールは、蒸留により連続的に回収される。その後、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。その後、所望の反応生成混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて、真空中で2~4時間ストリーム処理されることができる。
【0242】
コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステルのゲル状の反応生成物が得られる。
【0243】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0244】
II.3. コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のさらなるジグリセロールエステルの製造
40gのジグリセロールと17.4gのコハク酸ジエチルエステルは、デフレグメータ(部分凝縮器)と蒸留ブリッジを備えた500mL-マルチネックフラスコに供給される。反応混合物は、120℃で24時間攪拌されながら反応し、形成された水は、蒸留により連続的に回収される。その後、対応する反応中間体混合物が、残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて、真空中で2~4時間、ストリーム処理されることができる。
【0245】
得られる反応中間生成物は、コハク酸のポリグリセロールエステルとコハク酸で架橋されたコハク酸のポリグリセロールエステルの混合物である。
【0246】
その後、得られた混合物は、264gの(R)/(S)-3-ヒドロキシ酪酸エチルエステル(#-BHB-EE=3-ヒドロキシ酪酸エチル又は4-エトキシ-4-オキソブタン-2-オール)(ラセミ)及び1.7gの固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)と、70℃で、真空下(500mbar未満)で、10時間撹拌させながら反応し、得られたエタノールは、蒸留により連続的に回収される。その後、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。その後、所望の反応生成物混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、必要に応じて、真空中で2~4時間、ストリーム処理されることができる。
【0247】
コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステルのゲル状の反応生成物が得られる。
【0248】
特性評価は、質量分析(MS)、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPS)、プロトン共鳴分光法(1H-NMR)で行われる。
【0249】
II.4.コハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のさらなるジグリセロールエステルの製造
II.1.、II.2.及びII.3による先に実施された合成例が、以下のポリカルボン酸及びそれらそれぞれの無水物並びにエチルエステル;酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、フマル酸およびマレイン酸を使用して実施される。同等の結果が得られる。
【0250】
III.金属触媒を使用する本発明による方法の代替的な特定の実施形態の製造例
I.項目及びII.項目において先に説明されたすべての化学合成例が、それぞれの方法段階(a)及び/又は(b)において、触媒(チタン(IV)-触媒)としてチタンテトラブチレートを加えて再び実施される。チタン(IV)-触媒は、他の反応物とともにフラスコに入れられ、反応は、120℃で実施される。同等の結果が得られる。反応終了後、触媒は分離され、リサイクルされる。
【0251】
IV.酵素触媒を使用する本発明による方法の更なる代替的な特定の実施形態の製造例
I.項目及びII.項目において先に説明されたすべての化学合成例が、方法段階(a)及び(b)において、触媒として固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)を加えて再び実施される。酵素は、他の反応物とともにフラスコに入れられ、真空下、70℃で反応させられる。同等の結果が得られる。酵素は反応終了後、分離してリサイクルされる。
【0252】
V.触媒を使用しない本発明による方法の更なる代替的な特定の実施形態の製造例
I.項目及びII.項目においてすでに説明されたすべての化学合成例が、触媒を加えずに再び実施された。反応は120℃で実施され、同等の結果が得られた。
【0253】
VI.構造解析
構造解析のために、合成経路(A)にしたがってコハク酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステルが製造され、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)と酸価測定によって特徴づけられた。
【0254】
第1の方法段階(a)において、264gの(R)/(S)-3-+ヒドロキシ酪酸エチルエステル(3-BHB-EE=3-ヒドロキシ酪酸エチル又は4-エトキシ-4-オキイソブタン-2-オール)(ラセミ)、80gのジグリセロール及び固定化酵素(カンジダ・アンタルクティカ由来のポリマー支持体上のCALBリパーゼ、例えばシグマ-アルドリッヒ又はメルク製のNovozym(登録商標)435又はシュトレム化学社製のLipozym(登録商標)435)を、デフレグメーター(部分凝縮器)及び蒸留ブリッジを備えた1000mL-マルチネックフラスコに供給される。反応混合物は、70℃で真空下(500mbar未満)において、10時間撹拌されながら反応し、得られたエタノールを蒸留により連続的に除去する。その後、酵素が濾過され、過剰の3-ヒドロキシ酪酸エチルエステルが、真空下で蒸留により除去される。
【0255】
その後、対応する反応中間混合物が残渣として得られる。得られた残渣は、真空中で2~4時間ストリーム処理される。その後、得られた3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステル、ジジグリセロールエステル及びトリジグリセロールエステル(即ち、3-ヒドロキシ酪酸の1価、2価及び3価のジグリセロールエステル)の混合物が、蒸留により分別され、個々のエステル(すなわち、3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステル、ジジグリセロールエステル及びトリジグリセロールエステル)を分離させる。
【0256】
次に、第2の方法段階(b)において、100gの3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステルを、第1のバッチにしたがって、10gの無水コハク酸と、80℃で撹拌させながら反応させ、生成した水が、蒸留により連続的に回収される。さらに分析のために試料(試料A)が採取され、その後さらに7gの無水コハク酸が加えられて、120℃でさらに6時間反応させられる。その後、別の試料が、分析のために採取される(試料C)。
【0257】
さらに、第2のアプローチによれば、第2の方法段階(b)において、100gの3-ヒドロキシ酪酸のモノジグリセロールエステルが、100マイクロリットルのテトラブチル酸チタン(触媒)を添加して、10gの無水コハク酸と、80℃で20時間撹拌されながら反応し、生成した水が蒸留により連続的に回収される。さらに分析用の試料(試料B)を採取し、さらに7gのコハク酸無水物を加えて、80℃で、さらに6時間反応させられ、生成した水が、連続的に蒸留された回収される。その後、別の試料(試料D)が採取され、分析される。
【0258】
採取した試料を分析し、その結果を表2にまとめた。
【0259】
【0260】
また、酸価を用いて試料の架橋度を算出した。その計算結果を表3にまとめた。SZist/SZtheoの比が小さいほど、架橋度は高い。
【0261】
【0262】
VII.生理学的応用試験:管内消化試験
VII.1.ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の本発明のポリグリセロールの消化実験(割裂実験または開裂実験)
開裂実験により、本発明にしたがって調製されたポリカルボン酸又はその混合物で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルは、反応副産物を含めて、ヒト胃腸管で開裂できることが示されている(参照:I,II、III,IV.及びVによる既述の実験)。
【0263】
いずれの場合も、本発明による方法によって得られた精製された反応生成物が、出発混合物として使用される。
・酒石酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル、
・クエン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル、
・リンゴ酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル、
・アジピン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステル、
・フマル酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステル、及び
・マレイン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセリンエステル。
【0264】
ニアボディ条件下での切断実験では、2つの媒体が検討された。
-胃を模擬したFaSSGF
-腸管を模擬したFASSIF。
【0265】
どちらの培地もイギリスのバイオレリヴァント(登録商標)社製のものである。また、実験によってはブタの膵臓が追加される(Panzytrat(登録商標)40,000、Fa.アレルガン社製)。
【0266】
Panzytrat(登録商標)の有無のFaSSGF又はFaSSIF培地での切断実験(いずれも35℃、24時間)の結果は、Panzytrat(登録商標)の有無でのFaSSGF条件下で加水分解することを示している;これは主に培地の低いpH値(pH=1.6)によるものである。FaSSIF条件下では、Panzytrat(登録商標)を使用するより低い変換が実施される。
【0267】
すべての開裂実験において、開裂はカスケード状に進行することがわかる(即ち、テトラジグリセロールエステルはトリジグリセロールエステルになり、トリジグリセロールエステルはジジグリセロールエステルになる、など)。さらに、ポリカルボン酸が開裂される。このようにして、体内で利用可能なポリカルボン酸と遊離酪酸が放出され、さらに、無毒で生理的に適合したキャリアであるジグリセロールが放出され、体外に排泄されるものである。
【0268】
したがって、全体として遅延効果(3-ヒドロキシ酪酸とポリカルボン酸の放出がそれぞれ遅延して、あるいは連続的に、より長い期間にわたって行われること)がある。
【0269】
VII.2.本発明による3-ヒドロキシ酪酸のカルボン酸のさらなる消化実験(開裂実験)。
パンクレアチンを用いた開裂実験
2gの上記のようにして製造された3-ヒドロキシ酪酸のポリカルボン酸架橋ジグリセロールエステルまたはその混合物(ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸の対応するモノジグリセロール、ジジグリセロール、トリジグリセロール及び/又はテトラジグリセロールエステルの混合物)が、50gの水に溶解され、これに0.5g(1重量%)のパンクレアチンが加えられる。パンクレアチンは、アレルガン社製のPanzytrat(登録商標)40,000の形で使用されている。混合物全体は、50℃のホットプレート上で撹拌される。反応の経過は、酸価を経時的に連続記録することで判断され、追跡される。観察期間中、酸価は増加する(ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの開裂)。本発明によるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルのパンクレアチンによる水中切断の変換時間経過は、時間経過による酸価の増加を含み、反応物混合物の遊離ポリカルボン酸と遊離3-ヒドロキシ酪酸への望ましい分解を証明するものである。これは、対応する分析によって確認される。この実験は、本発明による出発混合物が、対応するケト体療法のための3-ヒドロキシ酪酸又はそのエステル(3-ヒドロキシ酪酸塩)の適切な生理学的前駆体であることを証明する。
【0270】
VII.3. 結論
上記の開裂実験は、ポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルが、特にその意図する効果に関して、生理的に許容できる又は生理的に適合する形態で存在する遊離ヒドロキシ酪酸又はそのエステル(ここではエチルエステル)の効率的な前駆体又は代謝産物であることを示している。
【0271】
VIII.さらなる試験(感覚刺激性及び毒性)
本発明によるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルの感覚刺激性及び毒性に関して、さらなる実験及び試験シリーズが実施される。これらは、本発明によるポリカルボン酸で架橋された3-ヒドロキシ酪酸のジグリセロールエステルは、有機的に許容され、適合性があり、特に純粋な3-ヒドロキシ酪酸並びにその塩及びエステルと比較して、著しく改善した感覚刺激性特性を示すものであり、さらに、本願に反する毒性を示さないことが示されている。