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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】遠心機
(51)【国際特許分類】
   B04B 15/02 20060101AFI20240806BHJP
   B04B 13/00 20060101ALI20240806BHJP
   B04B 5/02 20060101ALI20240806BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B04B15/02
B04B13/00
B04B5/02 Z
F25B49/02 520H
F25B49/02 570Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023502067
(86)(22)【出願日】2021-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2021041411
(87)【国際公開番号】W WO2022180941
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2021026944
(32)【優先日】2021-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520276604
【氏名又は名称】エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮本 一範
(72)【発明者】
【氏名】村山 諒
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-091060(JP,A)
【文献】特開平11-211292(JP,A)
【文献】特開2019-199981(JP,A)
【文献】特開2016-180582(JP,A)
【文献】特開2018-009729(JP,A)
【文献】特開2009-262104(JP,A)
【文献】特開2013-022473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B04B 15/02
B04B 13/00
B04B 5/02
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動装置と、
前記駆動装置によって回転するロータを収納するボウルと、
前記ボウル内の温度を検出するセンサと、
前記ボウル内を冷却するための冷却装置と、
遠心分離の運転条件を入力および運転状態を表示する表示部と、
前記表示部を制御する制御部を有する遠心機において、
前記冷却装置の異常を検知するための簡易点検モードを設け、
前記制御部は、
前記簡易点検モードが選択されると、
前記冷却装置に設けられている圧縮機を予め決められた速度で運転しながら前記温度が前記所定温度から前記規定温度まで低下する所要時間を測定し、
前記所要時間から前記冷却装置の異常の有無を判定し、
判定結果を前記表示部に表示することを特徴とする遠心機。
【請求項2】
前記所要時間、及び、前記所定時間内に到達した温度を、日付データと共に不揮発性の記憶部に格納することを特徴とする請求項に記載の遠心機。
【請求項3】
前記記憶部に格納された前記日付データを元に、次回の点検実行日を算出して前記表示部に表示することを特徴とする請求項に記載の遠心機。
【請求項4】
前記簡易点検モードの実行は、前記ロータを装着しない状態か、又は、装着された前記ロータを回転させない状態で行われることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の遠心機。
【請求項5】
前記遠心機の電源が投入されたら、前記制御部は現在日時と前記次回の点検実行日を比較し、
前記次回の点検実行日までの日にちが所定日未満になったら、前記表示部にアラートを表示することを特徴とする請求項に記載の遠心機。
【請求項6】
前記制御部は、前記記憶部に格納された点検モードの実行結果の一覧を前記表示部に表示することを特徴とする請求項に記載の遠心機。
【請求項7】
前記制御部は、前記簡易点検モードの実行結果により前記冷却装置に異常ありと判断した場合は、前記遠心機の運転を禁止するか、又は、制限することを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の遠心機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却システムの簡易点検機能を有する遠心機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心機(遠心分離機)は、分離する試料(例えば、培養液や血液など)をチューブやボトルを介してロータに挿入し、ロータを高速に回転させて試料に遠心力をかけることで、密度の異なる物質を分離する機器である。遠心機は、ロータを高速に回転させる空間たる回転室を画定するボウルを有し、ボウルの開口部は開閉式のドアによって閉鎖される。モータ等の駆動装置によって試料を保持したロータを遠心分離のために高速回転させることにより試料の分離、精製等を行う。ここでロータを空気中で高速回転させると、ロータの外側表面と回転室内の空気との間に発生する摩擦熱(風損)により温度が上昇してしまう。分離する試料によっては低温を保つ必要があるため、多くの遠心機には冷却システムが搭載されている。冷却システムとしてペルチェ素子を使ったものもあるが、蒸発器、圧縮機、凝縮器で構成される冷却システムを備えるコンプレッサ方式が広く用いられる。コンプレッサ方式の冷却システムでは、ボウルの外周壁の外側に銅パイプを巻回し、銅パイプ内に冷媒を流すことによって回転室内を冷却して、ロータを冷却する。
【0003】
冷媒としてフロンを利用した冷却システム搭載の遠心機の場合、配管からの漏れや何らかの原因で冷媒が外部に漏れる(冷媒が抜ける)ことがある。冷媒が漏れる状態は、早期に発見することが重要であり、それ以上の冷媒漏れを防止することが重要である。また、冷媒が抜けた状態で遠心分離運転をすることは極力避ける必要がある。遠心分離運転の開始後に冷却システムの欠陥に気がつくような場合には、サンプルが損失してしまう虞すらある。そこで冷却システムの頻繁な点検が推奨されている。また、法律や規格団体等による制約により、冷却システムの一定期間ごとの点検が要請されている場合が多い。
【0004】
冷却システムの異常を検出する手段として、特許文献1では蒸発器の流入口側と吐出口側に温度センサを取り付け、それら温度センサの温度差が特定の温度以上で生じると、制御手段は冷媒が漏洩していると判断し、この冷媒の漏れを使用者に知らせるように構成した。また、特許文献2では、冷却システムに温度センサを取り付け、各部の温度を測ることで冷媒漏れを予測しており、これを冷却システムの点検として利用する。これら特許文献1や特許文献2は、冷却システム点検用の温度センサを2つ以上使用して、検出される温度から冷媒漏れを判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-90953号公報
【文献】特開平11-211292号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1や特許文献2の技術を用いて冷却システムの異常を検出するには、温度センサが複数必要であり、遠心機の製造コストの上昇に繋がり、採用が難しいという問題があった。また、いずれの技術にもユーザが使用する前に冷却システムの点検をする方法は示されていなかった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は製造コストの上昇を抑えつつ、ユーザにとって簡便な方法で冷却システムの異常を検出する機能を設けた遠心機を提供することである。
本発明の他の目的は、遠心分離運転の開始前にユーザによって容易に冷却システムの点検を実行できるようにした遠心機を提供することにある。
本発明の他の目的は、ユーザに対して定期的な点検の実施を促す通知機能を設けると共に、点検結果を容易に管理できるようにした遠心機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、駆動装置と、駆動装置によって回転するロータを収納するボウルと、ボウル内の温度を検出するセンサと、ボウル内を冷却するための冷却装置(冷却システム)と、遠心分離の運転条件を入力および運転状態を表示する表示部と、表示部を制御する制御部を有する遠心機において、冷却装置の異常を検知するための簡易点検モードを設けた。制御部は、簡易点検モードが選択されると冷却装置に設けられている圧縮機のモータを予め決められた速度で運転しながら、冷却装置の異常の有無を判定する。簡易点検モードの実行は、ロータを装着しない状態か、又は、装着されたロータを回転させない状態で行われる。冷却装置の異常の有無の判定は、圧縮機のモータの運転が開始してから所定時間内に、回転室内又はボウルが所定温度から規定温度まで低下するか否かで判定される。判定結果は表示部に表示される。制御部は、冷却装置(冷却システム)を起動した後の温度変化の正常範囲を予め記憶しておき、簡易点検の実行時の温度変化が正常範囲を逸脱した場合に“異常あり”と判断し、正常範囲内に収まる場合に“異常なし”と、簡易的に判断するようにした。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、簡易点検モードの実行後に制御部は、所要時間、及び、所定時間内に到達した温度を、点検日を示す日付データと共に不揮発性の記憶部に格納する。また、制御部は、遠心機の電源が投入されたら現在日時と次回の点検実行日を比較し、次回の点検実行日までの日にちが所定日未満になったら、表示部にアラートを表示する。また、制御部は記憶部に格納された簡易点検モードの実行結果の一覧を表示部に表示する。尚、制御部は、簡易点検モードの実行結果により冷却装置に“異常あり”と判断した場合は、遠心機の運転を禁止するか、又は、運転を制限するようにしても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、既存の温度センサを用いて、制御部のソフトウェアを変更(ソフトウェアの書換)するだけで安価かつ簡単な操作で冷却システムの簡易的な点検を実行できる。また、本発明の実施のために新たなハードウェア機器の追加をすることが無いので、製造コストの上昇を抑制できる。また、遠心分離運転の開始前に冷却システムの簡易点検が実行できるので、冷却システムの性能低下や故障を事前に検出できるようになる。また、遠心機の表示画面上に定期的な点検時期が使用者に明示されるので、定期的な点検忘れを予防でき、ユーザによる点検時期の管理の負担を低減できる。さらに、点検の実行後に点検結果が記憶装置に自動的に格納され、制御部によって管理されるので、ユーザは過去の点検結果を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係る遠心機1の全体構造を示す縦断面図である。
図2図1の遠心機の操作パネル10に表示される表示画面100の一例を示す図である。
図3】本実施例の冷却システム簡易点検の実行時の表示画面150を示す図である。
図4】本実施例の冷却システム簡易点検の処理順序を示すフローチャートの前半部分である。
図5図4に続くフローチャートであり、冷却システム簡易点検の処理順序を示すフローチャートの後半部分である。
図6】本実施例の冷却システム簡易点検の実行時の表示画面150Aを示す図である。
図7】本実施例の冷却システム簡易点検の実行時の表示画面150Bを示す図である。
図8】本実施例の冷却システム簡易点検の実行時の表示画面150Cを示す図である。
図9】本実施例の冷却システム簡易点検の実行後の表示画面100Aを示す図である。
図10】記憶部に格納される簡易点検の来歴内容を示す表示画面160を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の機能を有する部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0013】
図1は本発明の実施例に係る遠心機1の全体構造を示す概略的な縦断面図である。遠心機1には、箱形の板金などで製作される筐体2の内部に金属製ボウル3が設けられる。ボウル3は回転軸の上側から見た際に円形またはほぼ円形の外形形状を有するカップ状であって、上側には開口形状が円形の開口部4aが形成される。開口部4aは任意の形状のドア7にて閉鎖される。ここでは、図示しない蝶番によって揺動するように開閉可能な片扉方式のドア7にて開口部aが閉鎖され、ボウル3とドア7によってロータ5が回転する空間となる回転室4が形成される。
【0014】
ロータ5はモータ等の駆動装置6の回転軸6aの上端に装着され、試料を分離するため高速回転する。ロータ5の上部には蓋5aが設けられる。駆動装置6は、商用交流電源を用いて駆動される交流モータ、または、インバータ制御のブラシレスモータが使用される。ボウル3の下側において、ボウル3の貫通穴4bを貫通するようにして回転軸6aが上下方向(鉛直方向)に配置される。ロータ5は、分離する試料を保持するサンプル容器を収容するもので、いわゆるアングルロータである。尚、本実施例においてロータ5の種類は任意であり、蓋5aを付けるか付けないかは任意であり、アングルロータで無くスイングロータやその他の形状のロータであっても良い。また、ロータ5の内部に収容されるサンプル容器の形状や数、容量は任意である。
【0015】
ドア7の側方には、使用者がロータの回転速度や分離時間等の設定条件を入力すると共に、各種情報を表示する操作パネル10が配置される。操作パネル10は、遠心機の状態をユーザに対して視覚的に示す表示部としての機能と、遠心機の運転に必要な制御情報をユーザが入力するための入力部としての機能を果たす。本実施例では、タッチパネル方式の液晶ディスプレイにて構成される。尚、本発明においては操作パネル10の形状は任意であり、液晶以外のドットマトリックス表示装置と、複数のスイッチ等の公知の入力装置にて構成しても良い。制御装置(制御部)8は遠心機1の全体を制御するもので、マイコン(Microcontroller Unit)81と、揮発性メモリによる記憶部82を含んで構成される。また、制御装置8は、操作パネル10から入力される遠心分離運転のための各種情報に従って駆動装置6の回転制御、冷却システム9の運転制御、回転室4内の温度管理、操作パネル10への表示制御、操作パネル10の操作の入力制御等、遠心機1の全体の制御を行う。
【0016】
回転室4は冷却システム9によって設定温度まで冷却される。ロータ5内のサンプル温度は、回転室4に設置される温度センサ12により測定される。本実施例では温度センサ12はボウル3の底部に設けられる。温度センサ12は、ボウル3の内側の温度又は表面温度を測定することによりロータ5の温度を間接的に想定する計測機器であり、温度センサ12の出力は図示しない信号線によって制御装置8に伝達される。制御装置8は、ドア開閉検出センサ11でドア7が閉じたと判断したら、ロータ5内のサンプル温度を使用者によって入力された設定温度に保つように冷却システム9を動作させる。制御装置8内では、温度センサ12の出力がマイコン81によって監視され、回転室4の温度が設定温度よりも高い場合は冷却システムを動作させ、回転室4の温度が設定温度よりも低い場合は冷却システム9の動作を弱めるか又は停止させるようにして、フィードバック制御を行う。
【0017】
ボウル3はステンレス等の金属合金製であり、その外周面には図示しない銅パイプが螺旋状に巻かれる。巻かれる銅パイプの外側には、図示しない公知の断熱材が設けられ、ボウル3の熱が外部に漏れにくいように構成される。銅パイプは冷却システム9の一部を構成するものであって、冷却システム9に含まれる圧縮機9aから銅パイプ9cを通って冷媒が凝縮器9bに送られ、凝縮器9b及び図示しないファンによって、冷却された冷媒は液化する。液化した冷媒は図示しないキャピラリを通った後に銅パイプ9dに供給され、ボウル3の外周の巻回部(エバポレーター部)の入口に到達し、ボウル3の外周の巻回部(図示せず)において、ボウル3の表面の熱を急激に奪うことによって回転室4の内部を冷却する。ボウル3の熱を奪って気化した冷媒は、銅パイプの巻回部の出口から銅パイプ9eを通って圧縮機9aに戻る。このようにして回転室4の内部は、制御装置8による冷却システム9に対する制御によって設定された所望の温度に一定に保たれる。冷却システム9に対する制御の一例は、圧縮機9aを駆動する圧縮機用のモータ(図示せず)の回転をオン又はオフにして温度制御を行うことであり、この温度制御は制御装置8により実行される。
【0018】
図2は、図1の遠心機の操作パネル10に表示される表示画面100の一例を示す図であり、本実施例では操作パネル10(図1参照)をタッチパネル式の液晶表示器で実施した例で説明する。表示画面100は遠心分離運転に関する制御情報や運転状態を表示するための基本画面であって、画面中の上段部分(上側部分)には、ロータ回転速度表示欄101、運転時間表示欄104、ロータ温度表示欄107の3つの表示欄が割り当てられる。ロータ回転速度表示欄101は、ロータ5の回転速度(回転/分)を表示するための領域であって、上側には、回転センサ(図示せず)で実測された現在のロータの回転数102が大きく表示され、下側にはユーザによって設定された設定回転数103が小さく表示される。運転時間表示欄104は遠心分離の運転時間を表示する領域であって、上側にはロータが整定状態になってから現在までの経過時間105が大きく表示され、下側にはユーザによって入力された設定(運転)時間106が小さく表示される。ロータ温度表示欄107は、ロータ5の温度(又は回転室4の内部温度)を表示する領域であって、温度センサ12により測定された現在のロータ温度108が大きく上段に表示され、ユーザによって入力された設定温度109が小さく下段に表示される。
【0019】
ユーザが画面上におけるロータ回転速度表示欄101、運転時間表示欄104、ロータ温度表示欄107の欄のいずれかをタッチすると、図示しないテンキー入力画面を示すポップアップ画面が表示され、そこからユーザは設定数値を入力して図示しないエンターキーを押すことにより、設定された数値が表示欄(101、104、107の何れか)に入力された状態で表示画面100に戻る。
【0020】
ロータ名表示領域110には、使用するロータ5の種類に対応する識別記号が表示され、ここではロータ5の形名である“T18A41”が表示されている。ユーザがロータ名表示領域110を触れることによって、ポップアップ画面によって選択可能なロータ5の識別記号の一覧が表示され、ユーザがこの中から一つを選択することでロータ5の識別番号がロータ名表示領域110のロータ名111に表示される。又は、ロータに設けられている識別子を制御装置8によって判別して、自動的にロータ名111を表示するようにしても良い。
【0021】
加速・減速モード表示領域112には、運転開始時にロータ5が停止状態から設定回転数に達するまでの回転の加速勾配(ACCEL)113と、運転停止時にロータ5が設定回転数から停止状態になるまでの回転の減速勾配(DECEL)114が、それぞれ数値レベルに対応づけて表示される。この設定は、ユーザが加速・減速モード表示領域112を触れることによって、ポップアップ画面によって選択可能な加速勾配113、減速勾配114がそれぞれ表示され、ユーザによって選択される。
【0022】
表示画面100の右下には、スタートボタン121とオープンボタン122が表示される。スタートボタン121は、表示画面100にて設定された運転条件にて遠心分離運転を開始するためのアイコンである。オープンボタン122はドア7を開くためにドアロックの解除を指示するためのアイコンである。ユーザがドア7を閉めると、ドアがロックされ、ユーザがスタートボタン121をタッチすると遠心分離運転が開始される。遠心分離運転が開始されると、制御装置8は、オープンボタン122に替えてストップボタン(図示せず)を表示する。
【0023】
上下方向に見て、スタートボタン121とロータ温度表示欄107の間には、本実施例の特徴である冷却システム簡易点検モード領域130が設けられる。冷却システム簡易点検モード領域130には、ユーザに対して特定操作を指示させるアイコンである操作ボタン131と、ユーザに対して“冷却システム簡易点検”の実行に関する関連情報132を表示する。ここでは、冷却システム簡易点検モード領域130とその他の部分の境界が明白になるように、角部を丸めた丸め長方形の枠線にて囲っている。図3では白黒表示をしているが、操作パネル10はモノクロディスプレイ又はカラーディスプレイのいずれを用いることが可能であり、カラーディスプレイを用いる場合は冷却システム簡易点検モード領域130内の背景を、着色して他の表示領域(101、104、107等)と容易に識別できるようにしたり、関連情報132の内容の重要性に応じて、背景色の色分け表示したりして識別性を高めると良い。
【0024】
ユーザによって操作ボタン131がタッチされると、制御装置8は次の特定の操作(図3に示す冷却システムの簡易点検)の画面に移行させる。操作ボタン131の下側には、ユーザに対するメッセージとして、“次回点検日:10 Mar 2021”との関連情報132が表示される。関連情報132は主にテキストにて表示されるが、画像形式にて表示しても良い。関連情報132をどのように表示するか、表示形態や表示色、文字の大きさ等は任意に設定すれば良い。例えば、次回点検日が3~2ヶ月前の期間では文字を図2よりも小さく表示し、2~1ヶ月前の期間では文字を図2のように表示し、1ヶ月未満の場合は関連情報132の文字を強調表示又は赤色等で目立つように表示しても良い。尚、関連情報132の表示の重要性が低い場合は、重要性が高まるまで関連情報132として何も表示しないようにしても良い。
【0025】
本実施例では、関連情報132として次回の点検を実施する予定日を表示する。例えば、特定の法律や規則によって定期的な点検(例えば3ヶ月に1回)が義務づけられている場合は、次回の点検を実施する予定日として前回簡易点検を実行した日から3ヶ月後の日付を表示する。尚、冷却システム簡易点検モード領域130の表示欄の大きさや、表示画面100上の位置は、操作パネル10の大きさや、各表示領域の配置に応じて任意に設定できる。例えば、関連情報132の表示欄を2~3行に増やして、表示できる情報量を増やしても良い。また、冷却システム簡易点検モード領域130の外枠上線と、操作ボタン131の上辺との間の空間を確保して、そこに第2の関連情報の表示欄を設けるようにしても良い。第2の関連情報の表示欄を設ける場合には、前回の点検実施日として“前回点検日:20 Sep 2020”のように表示することが可能であり、この表示によりユーザは前回の点検実行日を容易に認識できる。
【0026】
ユーザが冷却システム簡易点検の操作ボタン131をタッチすると、図3の冷却システム簡易点検開始画面150に切り替わる。図3に示す冷却システム簡易点検開始画面150は、上端位置に、“冷却システムの簡易点検開始画面”と画面の名称が文字にて示されると共に、その右側に現在の日時が表示される。冷却システム簡易点検開始画面150では主に2つの情報表示欄(151、153)と、2つの操作指示用のアイコン(156、157)が表示される。ここで本実施例における冷却システム9の“簡易点検”とは、遠心機1のハードウェア構成を変えること無く、特定の条件下で冷却システム9を運転し、その時の各種センサから得られる情報を元に御装置8によって冷却システム9の異常の有無を判定することである。よって、冷媒の漏れの有無を検出するリークテスター等の専用機材等を使用することなく(準備することなく)、遠心機単体で冷却システム9の異常の有無を判定することができる。
【0027】
現在温度表示欄151には、温度センサ12によって測定される回転室4の現在温度152が表示される。点検時間表示欄153には、簡易点検モードが実行されてからの経過時間154が分:秒の単位にて表示される。図3では簡易点検モードの開始前の状態を示しており、経過時間154は“00:00”と表示されている。
【0028】
2つの情報表示欄(151、153)の下側には、ユーザに対するメッセージ155が表示され、そのメッセージ155に対するユーザの指示を入力するための実行ボタン156と、キャンセルボタン157がアイコン形式で表示される。ここで、ユーザが実行ボタン156をタッチすると、制御装置8のマイコン81は、遠心機1の“冷却システム簡易点検モード”の実行を開始する。この際、回転軸6a(図1参照)にロータ5(図1参照)がセットされていることを要しない。また、ロータ5が回転軸6aに装着されている場合であっても冷却システムの簡易点検モードは実行できるが、ロータ5を回転させる必要は無いので、簡易点検の実施時にはロータ5用の駆動装置6を停止状態にしたままで良い(但し、ロータ5を回転させながら簡易点検を行うことも可能である)。図3において、ユーザがキャンセルボタン157をタッチすると、“冷却システム簡易点検モード”の運転を開始することなく、初期画面である図2の表示画面100の状態に戻る。
【0029】
図4及び図5は、本実施例の遠心機1の“冷却システムの簡易点検モード”における制御部の処理順序を示すフローチャートである。図4及び図5に示す一連の手順は、制御装置8の記憶部82にあらかじめ格納されたプログラムをマイコン81によって実行することで行われる。また、そのプログラムは、遠心分離運転等を行うメインプログラムと並列にバックグランドで実施される。
【0030】
最初に、マイコン81は遠心機1のロータ5の回転が停止中であるか否かを判定する(ステップ41)。ロータ5が回転している状態、即ち、遠心分離運転を実行しているときは、本実施例に係る冷却システム簡易点検を実行できないからである。ステップ41で遠心機1のロータ5の回転が停止していないときは、マイコン81は停止するまで待機する。遠心機1が停止中には、次にマイコン81は、ドア開閉検出センサ11の出力からドア7が閉じているか否かを検出する(ステップ42)。ドア7が開いているときは冷却システム簡易点検の実行ができないので、マイコン81はドア7が閉じられるまで待機する。
【0031】
ステップ42においてドア7が閉じられている場合は、マイコン81は表示画面100に、冷却システム簡易点検モードの操作ボタン131を表示する(ステップ43)。操作ボタン131は、図2に示すように、冷却システム簡易点検モード領域130内にアイコン形式で表示され、同時に関連情報132も表示される。マイコン81は、遠心機1の電源が投入されたら、現在日時と次回の点検実行日を比較して、冷却システム簡易点検モード領域130内に次回の点検実行日を表示する。尚、次回の点検実行日を必ず表示するのでは無く、次回の点検実行日までの日にちが所定日未満になったら、表示部にアラートを表示しても良い。
【0032】
次にマイコン81は、冷却システム簡易点検のスタートを指示するための操作ボタン131が押下(タッチ)されたか否かを判定し(ステップ44)、押下されたら操作パネル10の表示を図3に示した表示画面150に切り替える(ステップ45)。ステップ44にて、操作ボタン131が押下(タッチ)されない場合、マイコン81はいずれかのボタンが押下されるまで待機する。
【0033】
次にマイコン81は、ステップ45で表示した表示画面150において、実行ボタン156が押下(タッチ)されたか否かを判定する(ステップ46)。ステップ46において、マイコン81はユーザによって実行ボタン156(図3参照)が押下されたら、冷却システム簡易点検を開始すると共に、ユーザに対して冷却システム簡易点検が“実行中”であることを操作パネル10に表示する(ステップ47)。ステップ46においてマイコン81は、実行ボタン156が押下されていない場合は、キャンセルボタン157が押下されたか否かを判定し(ステップ60)、押下されていなければ待機し、キャンセルボタン157(図3参照)が押下されたら、ステップ43に戻る。
【0034】
次に、図4のステップ47にて表示される表示画面150Aを図6にて説明する。図6図3から遷移した画面であるが、ここでは図3の実行ボタン156から、“実行中”である旨のステータス情報158aに表示が切り替わっている。また、図3のキャンセルボタン157が、実行中の冷却システム簡易点検を中断させるためのストップボタン159aに変更されている。ユーザは、メッセージ155とそれに続くステータス情報158aを読むことで、冷却システム簡易点検が実行中であることを識別できる。この際、時間の経過と共に経過時間154の時間表示がカウントアップされる。経過時間154の起点は、冷却システム簡易点検が開始された時間であって、ここでは点検対象の冷却システムの運転が開始されたとき、具体的には、圧縮機9aの運転が開始したときである。
【0035】
再び図4に戻り、ステップ48にてマイコン81は冷却システム(ここでは、圧縮機9aと凝縮器9bを含む)をオンにできる状況であるか否かを判定する(ステップ48)。これは、運転停止直後の圧縮機9aの冷媒の吸込側と吐出側では、圧力差が生じていて、吸込側に対して吐出側が高圧になっており、吐出側が高圧状態のままで圧縮機9aが停止している状態から運転を開始すると、圧縮機9aの圧縮機部を駆動するモータに通常より大きな負荷がかかってしまい、起動不良を起こす恐れがあるからである。このように冷却システムは、吐出側の圧力がある程度下がらないと再起動できないので、事前に運転をしていた場合は、圧縮機9aの運転停止後、所定時間(例えば2分)待ってから運転を再開させるようにした。ステップ48において圧縮機9aをONにできる状態にある場合、マイコン81は、圧縮機9aをONにし、圧縮機9aのモータを予め決められた速度で運転すると共に、温度センサ12が検出した現在の温度を読み取って、経過時間をカウントする。そして、マイコン81は、検出温度と経過時間によって判定温度および、判定時間を算出する(ステップ49)。
【0036】
ステップ48において、圧縮機9aをすぐにONにできない場合は、マイコン81は圧縮機9aの起動禁止時間が経過するまで待機し(ステップ50)、起動禁止時間が経過してから圧縮機9aをONにして、ステップ49に進む(ステップ51)。なお、判定温度および、判定時間の算出は、実行ボタン156が押下された時の温度センサ12による検出温度が、20℃であった場合は、判定温度を17℃とし、判定時間を10分と算出する。温度センサ12による検出温度が、4℃であった場合は、判定温度を1℃、判定時間を5分と算出する。この算出方法としては、所定の計算式を用いても良いし、あらかじめ記憶されているテーブルを参照して算出するようにしても良い。
【0037】
本実施例の簡易点検では、冷却システム9を稼働させて、起点温度T(℃)から基準時間M(分)以内に、基準低下温度t(℃)分だけ低下したか否かで、冷却システム9の冷媒漏れや、その他の要因によって不具合が起きていないかを判定する。また、圧縮機9aをオンにした時の温度センサ12で検出された回転室4又はボウル3のいずれかの温度を起点温度Tとし、基準低下温度t=3(℃)として、低下温度(T-3)(℃)に到達する所要時間mを測定する。そして、m<Mならば冷却システム9に問題がないと簡易的に判定し、m≧Mならば冷却システム9に問題が生じており詳細な点検が必要であると簡易的に判定する。判定の閾値となる基準時間M(分)をどの程度に設定するかは、使用する圧縮機9aの種類や特性に合わせて適宜設定すれば良い。本実施例ではM=10(分)とする。
【0038】
図5のフローチャートにおいて、冷却システムの簡易点検の実行中に、マイコン81はストップボタン159a(図6参照)が押下(タッチ)されたか否かを監視し(ステップ52)、押下された場合は、操作パネル10に、点検停止の確認を促す情報として「“簡易点検を停止してもよろしいですか? Yes No”」と表示する。“Yes”と“No”の部分は独立したアイコン形式で表示すると良い。ここで、ユーザにより“Yes”が選択されて簡易点検の停止が確認されたら、冷却システム9の冷却運転の設定温度を、図2でセットされた設定温度109となるような温度制御運転を維持して(ステップ53)、図4のステップ46に戻る。その時の操作パネル10の表示は図2の内容に戻る。
【0039】
ステップ52において、ストップボタン159a(図6参照)が押下されていないか、又は、一旦ストップボタン159a(図6参照)が押下されたあとのメッセージによる確認で、実行NOが選択された場合には、マイコン81はステップ54にてカウントアップされている時間が、所定の基準時間M(ここでは10分)に到達したか否かを判定する。基準時間Mが経過していない時、マイコン81は、温度センサ12によって測定された現在温度が、冷却システムの稼働により判定温度(=T-t)まで低下しているか否かを判定する(ステップ55)。つまり、本実施例による冷却システム簡易点検においては、基準時間M=10分以内に、回転室4の温度tが3℃低下するか否かで冷却システムの異常の有無が判定される。ステップ55において温度低下が達成されていない場合は、ステップ52に戻る(ステップ55)。
【0040】
ステップ55において10分以内に、温度センサ12(図1参照)によって検出される回転室4又はボウル3の温度が3℃低下したことを確認できたら、マイコン81は操作パネル10に簡易点検の結果を表示する(ステップ56)。この表示内容を示すのが図7の表示画面150Bである。
【0041】
図7の表示画面150Bは、簡易点検が完了して点検にパスしたこと、つまり冷却システムが正常であることを示す画面であり、図6の表示画面150Aから遷移する画面である。表示画面150Bの上半分の領域は図6と同じ表示内容であり、温度センサ12によって測定される現在温度152は、図3で示した起点温度T=20℃から基準低下温度t=3℃だけ低下した規定温度(=17.0℃)に到達していることを示している。また、冷却システム9により基準低下温度t=3℃だけ低下させるのに要した時間(経過時間154)が5分00秒であることが表示される。基準低下温度tの3℃低減が達成されたため、経過時間154のカウントアップは停止され、その後も経過時間154は5分00秒のままである。ユーザに対するメッセージ155aには、簡易点検が終了して結果を示す旨の情報、即ち、“冷却システム簡易点検結果”と表示され、その下側には、メッセージ155aに対応する内容、ここでは簡易点検結果158aとして“Pass”が表示される。メッセージ155aの右側には、図2の表示画面100に戻るためのアイコンであるRUN SCREENボタン159bが表示される。
【0042】
再び図5に戻る。ステップ56において、マイコン81は、簡易点検の実行日と、点検終了時間と、簡易点検時の起点温度T(実施例では20.0℃)と、基準低下温度t=3℃だけ低下させるのに要した時間(所要時間m)を制御装置8の記憶部82に格納する。そして、マイコン81は回転室4の温度制御を、設定温度109(図2参照)を目標とした制御に切り替え(ステップ56)。その後、図7の画面にてユーザがRUN SCREENボタン159b(図7参照)を押下すると(ステップ57)、図2の表示画面100に戻り、冷却システム簡易点検モードの運転を終了する。
【0043】
ステップ54において、基準時間M(10分)以内に、回転室4の温度が起点温度T=20℃から基準低下温度t=3℃だけ低下した規定温度(=17.0℃)に到達しなかった場合、マイコン81は何らかの理由で冷却システム9の性能が劣化していると判定し、操作パネル10に簡易点検結果として、“NG(=No Good)”と表示する(ステップ58)この表示内容を示すのが図8の表示画面150Cである。
【0044】
図8の表示画面150Cは、簡易点検が完了して点検にパスしなかったことを示す画面であり、図7の代わりに図6の表示画面150Aから遷移する画面である。表示画面150Cの上半分の領域は図6と同じ表示内容であり、温度センサ12によって測定される回転室4の現在温度152は、図3で示した起点温度T=20℃から1.0℃だけ低下した19.0℃であることを示している。また、点検時間表示欄153には経過時間154として“10:00”であることが表示されている。この結果、冷却システムを稼働させて10分経過したが、その間に基準低下温度t=3℃分の温度低下を達成できなかったことを示している。経過時間154は、基準時間M(=10分)経過した時点でカウントアップが停止され、“10:00”の表示が維持される。
【0045】
ユーザに対するメッセージ155には、簡易点検が終了して結果を示す旨の情報、即ち、“冷却システム簡易点検結果”と表示され、その下側には、メッセージ155に対応する内容、ここでは簡易点検結果158cとして“NG”と表示される。尚、この際に“NG”だけの表示だけで無く、NGとして考えられる要因に関する情報(例えば、「冷媒不足の可能性あり」)等を併せて表示するようにしても良い。図8の表示画面150Cは、ユーザがその内容を確認して、図2の表示画面100に戻るためのRUN SCREENボタン159bを押下するまで表示続けられる。尚、簡易点検結果158cが“NG”の場合は、以降の遠心分離運転の制限を行うようにしても良い。この制限は、例えば、回転室4の温度設定の下限値を設定することや、異常ありの判断後に許可される運転回数(例えば3回まで)や、運転時間(例えば1時間まで)を制限することが考えられる。また、簡易点検結果158cが“NG”の場合は、遠心分離運転を完全に禁止するように構成しても良い。遠心分離運転が完全に禁止される場合は、表示画面150Cに、運転が禁止される旨のアラート表示と、ユーザに対して“メーカーのサポートセンターに電話して下さい”という旨のメッセージ(図示せず)を表示するようにすれば良い。
【0046】
再び図5に戻る。ステップ58において、“冷却システムに異常あり”を示す表示画面150Cを表示すると共に、マイコン81は、簡易点検の実行日と、点検終了時間と、簡易点検時の起点温度T(実施例では20.0℃)と、所要時間mとして“10分00秒”との情報を制御装置8の記憶部82に格納する。そして、マイコン81は回転室4の温度制御を、設定温度109(図2参照)を目標とした制御に切り替える(ステップ58)。冷却システムに異常(特に劣化)が有るのに設定温度109(図2参照)を目標とした制御に切り替えるのは、劣化状態下であっても遠心分離運転を実行するか否かをユーザによって判断させるためである。図7の画面にてユーザがRUN SCREENボタン159b(図8参照)を押下すると(ステップ59)、マイコン81は簡易点検を終了させて、図9の表示画面100Aに戻る。
【0047】
図9は本発明の冷却システム簡易点検の実行後の表示画面100Aを示す図である。図9は、図2で示した冷却システム簡易点検の実行前の表示画面100と基本的に同じであるが、冷却システム簡易点検を実行して、図8に示す画面から遷移した後なので、ロータ温度108が19.0℃となっている。また、冷却システム簡易点検モード領域130の関連情報132の表示内容が変わっている。これは、図8で示した簡易点検結果158cが“NG”だったため、それをユーザに知らせるべく関連情報132に「注意 冷却システムに異常あり」と表示している。この際、冷却システム簡易点検モード領域130を着色、強調、反転、点滅等の通常表示とは異なる表示形態によってユーザに対して、冷却システムに異常がある旨を表示する。本実施例では、冷却システムの異常が軽微であれば、図9にてスタートボタン121を表示してその直後の遠心分離運転を数回程度可能としても良いが、冷却システムの異常が重大であれば、マイコン81は、スタートボタン121をグレー表示とし、ユーザがタッチしても反応しないようにして、遠心分離運転の開始を阻止するようにしても良い。
【0048】
図10は、図5のステップ56、58で記憶部82に格納される簡易点検の来歴内容の表示画面160である。本実施例では、冷却システム簡易点検が実行されると、その点検日161と、点検開始時の温度(起点温度T)163と、所要時間164、その他のデータ等が記憶部82に格納される。記憶部82は不揮発性のメモリ装置を用いることにより、マイコン81は、遠心機1の電源がオンの時(又は、簡易点検が実行可能な時)にその記録データを呼び出して操作パネル10に表示することができる。表示画面160では、上部に画面のタイトルである“点検来歴”と、その右側に現在日時が表示される。
【0049】
表示されるテーブルには、記憶部82に格納される情報のうちの一部又は全部が表形式にて表示される。ここでは、点検日161と、開始時の温度(起点温度T)163と、基準低下温度t(℃)分だけ低下するのに要した時間(所要時間164)と、点検結果165が表示される。本実施例では、さらに、追加情報としてロータ5(図1参照)の識別情報(ロータ162)も含めている。簡易点検が実行された際に回転室4の内部にロータ5(図1参照)が装着されている場合は、ロータ5の型番も記憶部82に格納しておき、図10の表示画面160にて、ロータ162の欄に表示する。ロータ162の欄が、“-”であるのは、ロータ5(図1参照)を装着しない状態にて簡易点検モードが実行されたことを示している。
【0050】
図10では5件分の点検来歴が表示されているが、画面上でスクロール可能に表示することによりさらに多くの件数を表示できるように構成しても良い。また、図10では、点検結果165を表示画面160の表示項目の一つに含めて、“Pass”か“NG”か、をそれぞれ表示するようにしたが、点検結果165の欄を設けずに、所要時間164において、Passした欄は通常表示、NGとなった欄の点検結果を、例えば、赤背景、白抜き文字で表示するようにして、ユーザが点検結果(“Pass”か“NG”か)を、点検結果165の数字の表示形態によって間接的に識別できるように構成しても良い。
【0051】
表示画面160の右下には、次の画面へ遷移するための2つのアイコン形式のボタンが表示される。一つは、図2に示す表示画面100に戻るためのRUN SCREENボタン166であり、もう一つは、各種設定等を行うメニュー画面に遷移するためのMENUボタン167である。
【0052】
本実施例は、上述の例だけで無く種々の変形が可能である。例えば、図4のステップ42~44では、ドア7が閉じられて初めて操作ボタン(スタートボタン)131が表示され、操作ボタン131が押下(タッチ)されてから冷却システム簡易点検の実行が開始される様に構成したが、別の実施例としてドア7が開いている状態でも、表示画面100に、冷却システム簡易点検モード領域130と操作ボタン131を表示しておいて、ユーザがドア7を閉じる前に操作ボタン131をタッチできるように構成しても良い。その場合は、図4の実行ボタン156が押された後であってドア7が閉じられた時点で冷却システム簡易点検の実行を開始するように構成すれば良い。
【0053】
簡易点検で用いる起点温度T、基準低下温度t、基準時間Mは、要求する検査項目に合わせて種々設定できる。例えば起点温度Tは、上述の実施例のように圧縮機9aを稼働させた直後の温度センサ12で検出された回転室4又はボウル3の温度とするのではなく、固定温度(例えばT=8℃)として、回転室4又はボウル3がTに到達してから、温度tだけさらに低下するのに要する時間、即ち温度Tから温度T-tまで低下するのに要する時間を測定するように構成しても良い。更には、マイコン81が外気温度(室温)を測定して、室温との相対的な関係を考慮した上で、起点温度Tや、基準低下温度(規定温度)t、基準時間Mを設定するように構成しても良い。基準低下温度tの設定範囲は任意であり、5℃のように大きくしても2℃のように小さくしても良い。
【0054】
本実施例によれば、冷却システムの簡易点検について、定期的に実施できるようにユーザに対して通知する機能を設けた上で、簡易点検を容易に行うことができる機能を設けたので、従来の遠心機と比較して冷却システムの信頼性を向上させることができ、法律や規格等による点検基準を満たすことが容易な遠心機が提供される。
【0055】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、遠心機として冷却システムに加えて真空ポンプを用いた備えた遠心機においても同様に適用できる。その場合は、冷却システムの簡易点検の実行時には真空ポンプを停止したままとすれば、上述の実施例と同じ手順で簡易点検モードを実行できる。
【0056】
また、本実施例では、マイコン81が所定温度低下するまでの時間を測定して、冷却システムの異常の有無を判断しているが、他の方法として、測定値から算出された温度変化の傾き(勾配)と、予め記憶させておいた基準の温度変化の傾きとを比較することで、マイコン81が冷却システムの異常の有無を判断するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0057】
1…遠心機、2…筐体、3…ボウル、4…回転室、4a…開口部、4b…貫通穴、5…ロータ,5a…(ロータの)蓋、6…駆動装置(モータ)、6a…(駆動装置の)回転軸、7…ドア、8…制御装置、9…冷却システム、9a…圧縮機、9b…凝縮器、9c~9e…銅パイプ、10…操作パネル、11…ドア開閉検出センサ、12…温度センサ、81…マイコン、82…記憶部、100,100A…表示画面、101…ロータ回転速度表示欄、102…回転数、103…設定回転数、104…運転時間表示欄、105…経過時間、106…設定時間、107…ロータ温度表示欄、108…ロータ温度、109…設定温度、110…ロータ名表示領域、111…ロータ名、112…減速モード表示領域、113…加速勾配、114…減速勾配、121…スタートボタン、122…オープンボタン、130…冷却システム簡易点検モード領域、131…操作ボタン、132…関連情報、150,150A,150B,150C…表示画面、151…現在温度表示欄、152…現在温度、153…点検時間表示欄、154…経過時間、155…メッセージ、156…実行ボタン、157…キャンセルボタン、158a…ステータス情報、159a…ストップボタン、159b…RUN SCREENボタン、160…表示画面、161…点検日、162…ロータ、163…点検開始時の温度、164…所要時間、165…点検結果、166…RUN SCREENボタン、167…MENUボタン、M…基準時間、m…所要時間、T…起点温度、t…基準低下温度

図1
図2
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図4
図5
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図7
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図9
図10