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特許7534529組成物、その製造方法及び使用、並びに油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法。
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  • 特許-組成物、その製造方法及び使用、並びに油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法。 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】組成物、その製造方法及び使用、並びに油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法。
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20240806BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20240806BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240806BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240806BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240806BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240806BHJP
   E21B 43/00 20060101ALI20240806BHJP
   E21B 33/13 20060101ALI20240806BHJP
   C09K 8/42 20060101ALI20240806BHJP
   C09K 8/487 20060101ALI20240806BHJP
   C09K 8/493 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L101/02
C08K3/013
C08L53/02
C04B28/02
C04B24/26 G
E21B43/00
E21B33/13
C09K8/42
C09K8/487
C09K8/493
【請求項の数】 31
(21)【出願番号】P 2023506115
(86)(22)【出願日】2021-07-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2021107562
(87)【国際公開番号】W WO2022022355
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】202010759397.8
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515078501
【氏名又は名称】チャイナ ペトロレウム アンド ケミカル コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】CHINA PETROLEUM & CHEMICAL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】No.22 Chaoyangmen North Street, Chaoyang District, Beijing, 100728 China
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【弁理士】
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【弁理士】
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンウェン
(72)【発明者】
【氏名】ペン,グェウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ハイリァン
(72)【発明者】
【氏名】モー,シャオジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,ジュンファ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,シュ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,チーチュン
(72)【発明者】
【氏名】ゼン,ミン
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-537209(JP,A)
【文献】特開2015-013802(JP,A)
【文献】特開2016-061127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0146286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C04B 2/00-32/02、40/00-40/06
E21B 1/00-49/10
C09K 8/42、8/487、8/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が1.2~2g/cm 、水接触角が90°以下、ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率が5~15倍であり、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと、親水性重合体と、無機充填材と、を含有し、前記親水性重合体は水素化スチレン系熱可塑性エラストマー及び無機充填材の表面に被覆され、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材との重量比が30:70~70:30であることを特徴とする組成物であって、
前記密度はタップ密度であり、GB/T 21354-2008方法によって測定され、
前記水接触角はGB/T 36086-2018方法によって測定され、
ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率は、組成物がディーゼル油及び/又は天然ガスと充分に接触して飽和吸着になったときの組成物の体積の接触前の体積に対する倍率であり、
前記親水性重合体は親水性官能基を含有し、前記親水性官能基はヒドロキシ基、アミノ、カルボキシル基のうちの1種又は複数種である組成物。
【請求項2】
密度が1.4~1.8g/cm 、水接触角が85°未満、ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率が8~12倍である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと親水性重合体との重量比が1:0.01~1:0.1である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
20メッシュ~200メッシュの篩下物である請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン三元ブロック共重合体のうちの1種又は2種以上である請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの水素化率が95~100%である請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは線状構造又は星状構造であり、前記線状構造の数平均分子量が4万~15万であり、前記星状構造の数平均分子量が12万~32万である請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの重量を基準にして、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマー中、スチレン構造単位の含有量が20~50重量%、1,2-構造の含有量が25~40重量%である請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機充填材は密度が2.5~6g/cm粒子径が5~20μmであり、前記密度はタップ密度であり、GB/T 21354-2008方法によって測定される、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記無機充填材は重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、鉄鉱粉、セメント、石英砂、重晶石のうちの1種又は2種以上である請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記親水性重合体の親水性官能基の含有量が0.1~0.6g/g重合体である請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材とを均一に混合して、混合材料を得た後、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの溶融条件下で混合材料を押出造粒するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたペレットを親水性重合体で被覆し、粒子状材料を得るステップ(2)と、を含み、
前記親水性重合体は親水性官能基を含有し、前記親水性官能基はヒドロキシ基、アミノ、カルボキシル基のうちの1種又は複数種である、組成物の製造方法。
【請求項13】
無機充填材と水素化スチレン系熱可塑性エラストマーとの重量比が30:70~70:30であり、かつ水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと親水性重合体との重量比が1:0.01~1:0.1である請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン三元ブロック共重合体のうちの1種又は2種以上である請求項12又は13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの水素化率が95~100%である請求項12~14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは線状構造又は星状構造であり、前記線状構造の数平均分子量が4万~15万、前記星状構造の数平均分子量が12万~32万である請求項12~15のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの重量を基準にして、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマー中、スチレン構造単位の含有量が20~50重量%であり、1,2-構造の含有量が25~40重量%である請求項12~16のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記無機充填材は密度が2.5~6g/cm粒子径が5~20μmであり、前記密度はタップ密度であり、GB/T 21354-2008方法によって測定される、請求項1~1のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記無機充填材は重質炭酸カルシウム、硫酸バリウム、鉄鉱粉、セメント、石英砂、重晶石のうちの1種又は2種以上である請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記親水性重合体は親水性官能基を含有し、前記親水性官能基はヒドロキシ基、アミノ、カルボキシル基のうちの1種又は複数種である請求項1~19のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記親水性重合体の親水性官能基の含有量が0.1~0.6g/g重合体である請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記被覆方式はステップ(1)で得られたペレットを、親水性重合体を含む溶液に浸漬した後乾燥させることである請求項1~21のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項23】
押出造粒により得られた粒子を20メッシュ~200メッシュの篩に掛けることを含む請求項12~22のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項24】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物を含有する油ガス田の坑井セメンチング用グラウト。
【請求項25】
前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量が5~15重量%である請求項24に記載の油ガス田の坑井セメンチング用グラウト。
【請求項26】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物の、油ガス田の坑井セメンチングにおける使用。
【請求項27】
請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物の、油ガス田の坑井セメンチング自己修復剤としての使用。
【請求項28】
請求項24又は25に記載の油ガス田の坑井セメンチング用グラウトで形成される油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロック。
【請求項29】
密度が1.6~2g/cm、曲げ強度が6~8MPa、弾性係数が5~7GPa、圧縮強度が25~35MPaであり、
前記密度はタップ密度であり、GB/T21354-2008方法によって測定され、曲げ強度、弾性係数、圧縮強度はGB/T50080-2016方法によって測定される、請求項28に記載の油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロック。
【請求項30】
請求項24又は25に記載の油ガス田の坑井セメンチング用グラウト又は請求項28又は29に記載の油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロックで形成される油ガス田の坑井セメンチング。
【請求項31】
請求項24又は25に記載の油ガス田の坑井セメンチング用グラウト又は請求項28又は29に記載の油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロックを用いて油ガス田の坑井セメンチングを形成し、前記油ガス田の坑井セメンチングにおいてひび割れが現れた場合、前記油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させるステップを含む油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は2020年07月31日に提出された中国特許出願202010759397.8の利益を主張しており、この出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【0002】
技術分野
本発明は油ガス田の坑井セメンチング用グラウト材料の技術分野に属し、具体的には、表面極性化されたスチレン系熱可塑性エラストマーを含有する組成物、その製造方法、及び油ガス田の坑井セメンチング自己修復剤としての使用、並びに油ガス田の坑井セメンチング用グラウト及び油ガス田の坑井セメンチングに関する。
【背景技術】
【0003】
坑井セメンチング工事は掘削作業と油ガス資源の採掘を繋げる重要な工程であり、そのプロセスには坑井内に一定の仕様のケーシングを入れた後、ケーシングと坑井壁の間のリングポンプにグラウトを注入することを含む。注入された水硬性ゲル化材であるグラウトは、一定時間内に凝結硬化してセメントシースとなり、油ガス田の坑井セメンチングを形成する。セメントシースの作用はケーシングを支持し、地層流体によるケーシングの腐食を防止し、シーフゾーンや崩壊層などの複雑な地層を封止し、油・ガス・水層を封止して資源を層別に開発するために基礎を打ち立てることを含む。高品質のセメントシースは、長期的な封止完全性を維持する必要があり、これは油ガス井の生産寿命に不可欠であり、後期の油ガス採掘に直接影響を与える。しかし、衝撃荷重あるいは複雑な地層運動、腐食媒体の長期的な化学腐食などの作用により、油井セメントシースのひび割れを引き起こし、油ガスの漏洩を引き起こすことは世界的な難題であり、巨大な経済損失をもたらした。そのため、セメントシースに生じたひび割れを修復することが必要である。
【0004】
現在、国内外の坑井セメンチング用セメントシース修復技術には主にセメント押出作業とセメント系材料の微細ひび割れの自己修復技術がある。前者は作業リスクが高く、成功率が低く、コストが高いため、坑井セメンチング作業のさらなる発展に適さず、後者はセメント系材料の自己修復に広く応用されており、セメントによる坑井セメンチングにおいて研究の焦点の一つであり、主に液体コア又は中空繊維、マイクロカプセル、熱可逆架橋反応、刺激応答型重合体技術がある。液体コアや中空繊維技術、マイクロカプセル技術は、セメントマトリックス中に修復剤を予めセットし、修復剤を被覆材の中に入れることであり、圧力や温度などの影響を受けると、被覆材が割れて修復剤を放出してひび割れを修復するが、この技術では、被覆材に対する要求が高い。熱可逆架橋反応技術は、熱可逆反応特性を有する架橋重合体をセメントマトリックス内に予めセットするもので、環境温度の変化に応じて複数回の修復が可能であるが、このような技術は研究コストが高く、その実用化が制限されている。刺激応答型重合体技術は、油ガスに接触すると吸収して膨張し、隙間を塞いで自己修復する応答性のある重合体材料を油ガスに予めセットすることである。
【0005】
刺激応答型重合体技術で使用される重合体は、通常、吸油性樹脂やエラストマーラテックスであり、優れた自己修復効果を有しているが、これらの重合体は耐熱性や耐久性に優れておらず、工程での使用が制限されている。CN105952413Aは、スチレン-ブタジエン-スチレン又はスチレン-イソプレン-スチレンの重合体粒子を含む自己修復性セメントを報告しているが、この自己修復性セメントは自己修復効果と寿命においてさらに改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は従来技術に存在する上記課題を解決し、優れた自己修復効果及び長い寿命を有する新しい自己修復剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1態様は、密度が1.2~2g/cm、水接触角が90°未満、好ましくは85°未満、ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率が5~15倍、好ましくは8~12倍であることを特徴とする組成物を提供する。
【0008】
本発明の第2態様は、
水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材とを均一に混合して、混合材料を得た後、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの溶融条件下で混合材料を押出造粒するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたペレットを親水性重合体で被覆し、粒子状材料を得るステップ(2)と、を含む組成物の製造方法を提供する。
【0009】
本発明の第3態様は、上記組成物又は上記製造方法によって製造される組成物を含有する油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを提供する。
【0010】
本発明の第4態様は、上記組成物又は上記製造方法によって製造される組成物の油ガス田の坑井セメンチングにおける使用、好ましくは油ガス田の坑井セメンチング自己修復剤としての使用をさらに提供する。
【0011】
本発明の第5態様は、上記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトで形成されるセメントブロック及び油ガス田の坑井セメンチングを提供する。
【0012】
本発明の第6態様は、上記油ガス田の坑井セメンチング用グラウト又は上記油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロックを用いて油ガス田の坑井セメンチングを行い、前記油ガス田の坑井セメンチングにひび割れが現れた場合、前記油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させるステップを含む油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による組成物は、無機充填材で重量を増加し、親水性(表面極性化)重合体で水素化スチレン系熱可塑性エラストマー/無機充填材複合体を被覆することで、コアシェル構造のような粒子状材料を形成し、組成物の密度、水接触角及び油ガスに対する吸収膨張係数を確保し、これによって、該組成物は、油ガス田の坑井セメンチングに用いられる場合、セメントモルタルと適合する密度及び適合性を有するとともに、均一で安定的な油ガス田の坑井セメンチング用グラウト材を形成し、しかも、優れた油ガスに対する吸収膨張性能を有し、これによって、油ガスを吸収すると膨張し、自己修復を行うことができる。
【0014】
本発明の組成物は、親水性を提供する親水性重合体とセメントと適合する密度を提供する無機充填材に加えて、水素化熱可塑性エラストマーを使用し、無機充填材と親水性重合体との間の結合力を高める一方、組成物の抗老化性能を向上させ、これによって、自己修復剤として使用する場合、自己修復効果を大幅に高め、寿命を延ばす。具体的には、本発明は以下のような有益な効果を有する。
【0015】
1、本発明の自己修復剤は、油ガスに接触すると吸収する膨張剤として、油ガスに対する吸収速度が速く、倍率が高く、耐熱性、耐久性に優れ、膨張体の力学的特性が優れているなどの特徴を有する。
【0016】
2、本発明の自己修復剤は、密度がグラウトに近く、かつ優れた親和性を有し、グラウトに均一かつ安定的に分散し、工程での使用に有利である。
【0017】
3、本発明の自己修復剤はグラウト弾性係数を低下させる効果が好適であり、マイクロアニュラスや微細ひび割れの発生を効果的に減少させ、油ガス井のセメントシースに対する長期間の密封性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】粒子径が80メッシュである自己修復剤組成物のセメント硬化体における分散を示す写真であり、白色の部分は自己修復剤組成物であり、黒灰色の部分はセメント硬化体である。図から分かるように、自己修復剤はセメント硬化体において均一に分布している。
図2】本発明の実施例1で製造された自己修復組成物の自己修復効果を示す図である。
図3】本発明の実施例1で製造された自己修復組成物のDSC曲線である。
図4】本発明の実施例1で製造された自己修復組成物の各温度での糸引きを示す図である。
図5】本発明による各メッシュ数の自己修復組成物を用いて製造されたセメントブロックを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で開示された範囲の端点及び任意の値は全てこの正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値はこれらの範囲又は値に近い値を含むものとして理解すべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個別の点値との間、及び個別の点値の間を互いに組み合わせて1つ又は複数の新しい数値範囲を構成してもよく、これらの数値の範囲は本明細書で具体的に開示されるものとしてみなすべきである。
【0020】
本発明の第1態様による組成物は、密度が1.2~2g/cm、好ましくは1.3~1.8g/cm、より好ましくは1.4~1.8g/cm、水接触角が90°未満、好ましくは85°未満、ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率が5~15倍、好ましくは8~12倍である。
【0021】
上記組成物は、例えば粒子状又は粉末状などの様々な形状であってもよい。好ましくは、該組成物は、20メッシュ~200メッシュの篩下物、好ましくは20~100メッシュの篩下物である。
【0022】
本発明の組成物の密度はタップ密度であり、GB/T 21354-2008方法によって測定される。
【0023】
本発明では、水接触角はGB/T 36086-2018方法によって測定される。水接触角は本発明の組成物が油ガス田の坑井セメンチング用グラウト自己修復剤として使用される場合のセメントとの適合性(親和性)を表すものであり、水接触角が大きいほど、セメントとの適合性が小さい。本発明の組成物は、水接触角が90°未満、好ましくは85°未満である場合、適切なセメント適合性を有する。該組成物の水接触角は例えば70°、71°、72°、73°、74°、75°、76°、77°、78°、79°、80°、81°、82°、83°、84°、85°、85.5°、86°、87°、88°、89°であってもよい。
【0024】
本発明では、ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率は、組成物がディーゼル油及び/又は天然ガスと充分に接触して飽和吸着になったときの組成物の体積と接触前の体積との比である。ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率が大きいほど、自己修復能力が強いことを示し、逆もまた同様である。
【0025】
本発明は、組成物を過量のディーゼル油及び/又は天然ガスに十分に浸漬/含浸し、組成物の体積が膨張しないと、組成物とディーゼル油及び/又は天然ガスとの接触が飽和吸着になったとみなす。
【0026】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、該組成物は水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと、無機充填材と、親水性物質(例えば親水性重合体)と、を含有し、親水性物質は水素化スチレン系熱可塑性エラストマー及び無機充填材の表面に被覆されている。
【0027】
組成物に良好なセメント配合能力及び自己修復能力を付与するために、本発明では、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材との重量比が30:70~70:30、好ましくは40:60~60:40である。
【0028】
本発明では、親水性重合体は組成物に十分な親水性を付与し、適切な水接触角を確保するものである。前記親水性重合体は一般的に親水性官能基を含有し、前記親水性官能基は好ましくはヒドロキシ基、アミノ、カルボキシル基、スルホン酸基のうちの1種又は複数種である。上記親水性官能基の数量はそれぞれ1つ又は複数であってもよい。前記アミノは第一級アミノ、第二級アミノ、第三級アミノ、第四級アンモニウム塩のうちの1種又は複数種であってもよい。前記カルボキシル基は-COOMで表されてもよく、スルホン酸基は-SOMで表されてもよく、ここで、MはH又はアルカリ金属元素例えばK、Naなどのうちの任意の1種又は複数種であってもよい。
【0029】
好ましくは、前記親水性重合体はポリビニルアルコール類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその(アルカリ)金属塩類、キトサン、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(ナトリウム)等のうちの1種又は2種以上である。
【0030】
好ましくは、前記親水性重合体の数平均分子量が100~300000であってもよい。
【0031】
好ましくは、前記親水性重合体の極性基(親水性官能基)の含有量が0.1~0.6g/g重合体である。
【0032】
本発明では、極性基の含有量はHNMRによって測定されてもよい。原料中の極性基の含有量は原料サプライヤーによる情報から取得されてもよい。
【0033】
本発明では、前記水溶性重合体は無機充填材又は無機充填材と水素化スチレン系熱可塑性エラストマーで形成される粒子の表面に被覆されている。
【0034】
自己修復剤としてセメントとよりよく配合できるように、好ましくは、前記無機充填材の密度は2.5~6.0g/cmである。
【0035】
好ましくは、前記無機充填材の粒子径が10~15μmである。
【0036】
前記無機充填材は、粒子が小さくかつセメントとよく配合できる各種の無機ペレットであってもよいが、好ましくは、前記無機充填材は重質炭酸カルシウム、重晶石、硫酸バリウム、鉄鉱粉、セメント、石英砂のうちの1種又は2種以上である。
【0037】
無機充填材の添加により、組成物の密度が向上し、組成物はセメントと均一で安定的なスラリーを形成し、自己修復剤として使用されるときの坑井セメンチンググラウトの安定性を高める。
【0038】
好ましくは、前記組成物の密度が1.2~1.8g/cm、例えば1.2、1.25、1.30、1.34、1.36、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.70、1.75g/cmである。
【0039】
本発明の1つの好ましい実施形態では、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材は水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの溶融条件下で押出造粒して得られ、これによって、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは無機充填材の表面に被覆され、親水性重合体はさらに前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマー及び無機充填材の表面に被覆されている。
【0040】
好ましくは、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと親水性重合体との重量比が1:0.01~1:0.1である。
【0041】
好ましくは、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの水素化率が95~100%、好ましくは97~100%である。
【0042】
水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの製造方法及び水素化度のテスト方法はWO 2020/088454の記載を参照すればよく、これらは参照としてここに組み込まれている。
【0043】
前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは線状構造又は星状構造であってもよく、好ましくは、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの数平均分子量が4万~15万であり、前記星状構造の数平均分子量が12万~32万である。上記サイズの水素化スチレン系熱可塑性エラストマーを選択することにより、優れた自己修復能力を確保しつつ、より良好な経済性を得ることができる。
【0044】
本発明では、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される。
【0045】
本発明では、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは水素化スチレン/共役ジオレフィン共重合体であってもよく、該共重合体は式1で示されるスチレン類構造単位、式2で示される水素化共役ジオレフィン類構造単位及び/又は式3で示される水素化共役ジオレフィン類構造単位を含有する。
【化1】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R、RはそれぞれH、C1~C3のアルキル基であり、R10はH又はC1~C4のアルキル基である。)
【0046】
好ましくは、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体、スチレン-イソブチレン-スチレン三元ブロック共重合体のうちの1種又は2種以上である。
【0047】
好ましくは、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの重量を基準にして、前記水素化スチレン系熱可塑性エラストマー中、スチレン構造単位の含有量が20~50重量%、好ましくは25~50重量%であり、1,2-構造の含有量が25~50重量%、好ましくは25~40重量%、より好ましくは25~35重量%である。スチレン構造単位と1,2-構造の含有量を上記範囲に制御することによって、組成物及びセメントブロックが優れた自己修復能力を有することを確保しつつ、組成物及びセメントブロックの自己修復能力を長時間維持し、組成物及びセメントブロックが過量の天然ガスを吸収して修復能力が低下、さらに喪失することを防止する。
【0048】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーは該自己修復剤の極性を確保しつつ、その油ガス膨張性能を調整し、かつ製造コストを節約することができる。
【0049】
上記組成物は、まず、水素化スチレン類エラストマー重合体と無機充填材とを均一に混合して、重合体の溶融条件下で溶融し、押出造粒することでペレットを製造し、次に、前記親水性重合体で被覆されてもよい。
【0050】
本発明の第2態様は、
水素化スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材とを均一に混合して、混合材料を得た後、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーの溶融条件下で混合材料を押出造粒するステップ(1)と、
ステップ(1)で得られたペレットを親水性重合体で被覆し、粒子状の自己修復粒子を得るステップ(2)と、を含む上記組成物の製造方法を提供する。
【0051】
水素化スチレン系熱可塑性エラストマー、親水性重合体及び無機充填材の種類及び使用量等に関する要件は既に上文で説明しており、ここでは詳しく説明しない。
【0052】
本発明では、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーを溶融して無機充填材とともに造粒し、次に、高い水溶性の親水性重合体を粒子の表面に被覆することにより、コア-シェル構造と類似した自己修復剤を形成する。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態では、水素化スチレン系熱可塑性エラストマーを溶融して無機充填材とともに溶融してブレンドし、造粒し、次に、造粒により得られた材料を凍結粉砕して篩にかけ、所望の粒度のペレットを得た後、親水性重合体で被覆する。
【0054】
親水性重合体は高い水溶性を有するので、ステップ(1)で得られたペレットを、親水性重合体を含む溶液で浸漬/含浸してから乾燥することによって、親水性重合体で無機充填材を被覆し、本発明の自己修復剤組成物を得ることができる。
【0055】
前記親水性重合体を水及び/又は有機溶媒に溶解/膨潤して、親水性重合体溶液を得ることができる。水及び/又は有機溶媒の使用量について特に限定はなく、前記親水性重合体を水及び/又は有機溶媒に十分に溶解/膨潤して浸漬/含浸することにより被覆の要求を満たせばよい。
【0056】
好ましくは、該方法は、押出造粒して凍結粉砕して得た粒子を20メッシュ~200メッシュ、好ましくは20~100メッシュの篩にかけ、篩下物を得るステップをさらに含む。
【0057】
溶融条件及び押出造粒、凍結粉砕及び篩掛けの操作は従来技術を参照すればよく、ここでは詳しく説明しない。
【0058】
本発明に係る要件を満たす水素化スチレン系熱可塑性エラストマーは従来技術の方法を参照して製造してもよく、例えば、重合してから、選択的に水素化し、具体的には、水素化方法は、例えばWO 2020/088454の記載を参照すればよい。また、市販品として、例えば中石化巴陵石化社の市販品を直接購入してもよい。
【0059】
本発明の組成物を自己修復剤として5~15重量%の割合となるように油ガス田の坑井セメンチング用グラウトに加えることで、性能が安定的な坑井セメンチンググラウトを調製することができ、グラウトが硬化した後、油ガスに接触すると自己修復性能を有する。
【0060】
前記油ガスは油ガス井に貯蔵される各種の油、ガス又はこれらの混合物、例えばメタン、石油原油などであってもよい。
【0061】
本発明の第3態様は、上記組成物及び上記製造方法によって製造される組成物の油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを提供する。
【0062】
好ましくは、前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量が5~15重量%である。
【0063】
上記組成物に加えて、前記グラウトは一般的に水及びセメントをさらに含有する。
【0064】
本発明の第4態様は、上記組成物の油ガス田の坑井セメンチングにおける使用、好ましくは、油ガス田の坑井セメンチング自己修復剤としての使用を提供する。
【0065】
本発明の第5態様は、上記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトで形成される油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロック及び油ガス田の坑井セメンチングを提供する。
【0066】
本発明による油ガス田の坑井セメンチング用セメントブロックは、密度が1.6~2g/cm 好ましくは1.7~2g/cmである。
【0067】
好ましくは、該油坑井セメンチング用セメントブロックは、曲げ強度が6~8MPa、弾性係数が5~7GPa、圧縮強度が25~35MPaである。
【0068】
本発明の第6態様は、上記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトで油ガス田の坑井セメンチングを形成するか、又は、まず、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトでセメントブロック(シース)を製造してから、セメントブロック(シース)で油ガス田の坑井セメンチングを形成し、前記油ガス田の坑井セメンチングにおいてひび割れが現れた場合、前記油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させるステップを含む油ガス田の坑井セメンチング自己修復方法を提供する。
【0069】
予め上記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトをセメントシースに製造し、次に、1つ又は複数のセメントシースを積層して使用することによって、油ガス田の坑井セメンチングを製造する。
【0070】
油ガス田の坑井セメンチング材料中に上記の油ガスを吸収することができ、かつ油ガスを吸収すると体積が膨張し得る自己修復組成物が含まれているので、油ガス田の坑井セメンチングにおいてひび割れが存在する場合に、坑井セメンチングを油ガスと接触させることで、油ガス田の坑井セメンチング中の自己修復組成物が油ガスを吸収して、体積が膨張し、ひび割れを埋めて修復することができる。
【0071】
本発明では、前記油ガス田の坑井セメンチングにおいてひび割れが現れた場合、前記油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させるとは、ひび割れが現れた場合、油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させる状態を維持することを意味し、ひび割れが現れる前に、油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させることにより、修復性能が早めに機能し、ひび割れの発生を防止してもよく、ひび割れが現れた後に、油ガス田の坑井セメンチングを油ガスと接触させることで、ひび割れを修復してもよい。実際には、油田では、油ガス田の坑井セメンチングは常に油ガスと接触しているので、本発明の組成物を使用することによって、ひび割れの発生を防止したり、ひび割れが発生した後にひび割れをタイムリーで修復したりすることができる。
【0072】
前記油ガスはディーゼル油、天然ガス、石油原油のうちの1種又は複数種であってもよい。
【0073】
接触条件は油ガス圧力1~10MPa、好ましくは3~8MPaであることを含む。接触時間はひび割れが満たされるか又はガス漏れがないことを基準にし、一般的には、10時間以下、好ましくは5時間以下である。
【0074】
本発明では、特に断らない限り、前記圧力はゲージ圧を指す。
【0075】
本発明による組成物は優れた老化防止性能及びセメントとの優れた適合性を有するので、製造されたセメントシース及び油ガス田の坑井セメンチングは優れた老化防止性能及び自己修復性能を有し、油ガス田の坑井セメンチング自己修復を効率よくかつ効果的に実現し、ブロッキング効果を長期間保持することができる。
【0076】
以下の実施例から分かるように、本発明の油ガス田の坑井セメンチングは、100℃、1600ml/minの天然ガスの初期流速で天然ガスが持続的に流入し、圧力を5MPaに維持する場合、5時間内で天然ガスの流速が0(即ち修復率100%)に低下し、一方、一部の従来技術では、100時間以上の長い時間がかかる。
【0077】
以下、実施例によって本発明について詳細に説明する。下記の実施例は説明的なものであり、限定的なものではなく、下記の実施例は本発明の特許範囲を限定するものではない。以下の実施例では、水溶性重合体は全て市販品であり、スチレン系熱可塑性エラストマーは全て中石化巴陵石化の支社の市販品である。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1は嘉華ブランドの銘柄LHEC 42.5のセメントと水とを1:1の重量比で混合したものであり、密度が1.85g/cmである。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト2は嘉華ブランドの銘柄LHEC 32.5のセメントと水とを1:1の重量比で混合したものであり、密度が1.87g/cmである。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト3は海螺ブランドのP-C42.5セメントと水とを1:1の重量比で混合したものであり、密度が1.87g/cmである。
【0078】
タップ密度のテスト方法:GB T 21354-2008方法
水接触角のテスト方法:GB/T 36086-2018方法
セメント物性(曲げ強度、弾性係数、圧縮強度)のテスト方法:GB/T50080-2016方法
ディーゼル油及び/又は天然ガスに対する吸収膨張倍率のテスト方法:重合体粒子(初期体積をVとする)をディーゼル油と天然ガス(1:1体積比)との混合油ガスに完全に含浸し、重合体粒子と混合油ガスとの体積比を1:100とし、1時間おきに重合体粒子の体積を1回測定し、3回連続測定した体積が変わらないときの体積を膨張後の重合体粒子の体積とし、Vとし、下記式:膨張倍率=V/Vにより膨張倍率を計算する。
【0079】
以下の実施例及び比較例では、特に断らない限り、含有量、濃度を表す「%」は全て「重量%」である。
【0080】
実施例1
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30重量%、1,2-構造の含有量37.7重量%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-凍結粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材との複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のポリビニルアルコール(PEG4000、水酸基価0.38g/g重合体)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、40メッシュの篩に掛けて、ポリビニルアルコールで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。該自己修復剤粒子は、タップ密度が1.45g/cmであり、DSC曲線が図3に示される。DSC曲線から分かるように、該自己修復粒子は水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体SEBSを含有する。該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は5重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。結果を図1に示す。
【0081】
実施例2
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30重量%、1,2-構造の含有量37.7重量%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のポリビニルアルコール(数平均分子量4000、水酸基価0.38g/g重合体)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、ホウ砂架橋ポリビニルアルコールで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.45g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト2と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は10重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0082】
実施例3
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量37.7%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のグアーガム(広饒六合化工社、数平均分子量200000、水酸基価0.6g/gグアーガム)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、ホウ砂架橋グアーガムで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.46g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト3と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は15重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0083】
実施例4
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量37.7%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のキトサン(南京松冠生物科技有限公司、数平均分子量50000、水酸基価0.4g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、キトサンで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.44g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は8重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0084】
実施例5
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量37.7%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度2重量%のキトサン(南京松冠生物科技有限公司、数平均分子量50000、水酸基価0.4g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、キトサンで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.47g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は6重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0085】
実施例6
質量百分率で水素化スチレン-イソプレン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量64179、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量31.6%、水素化率97.7%)40%とケイ酸塩セメント(粒子サイズ10μm、密度3.70g/cm)60%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のポリメタクリル酸(数平均分子量6000、カルボキシル基含有量0.37g/g重合体)水溶液400mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、20メッシュの篩に掛けて、ポリメタクリル酸で被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.36g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は6重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0086】
実施例7
質量百分率で水素化スチレン-イソブチレン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65009、スチレン構造単位の含有量25%、1,2-構造の含有量37.6%、水素化率98.1%)60%と重質炭酸カルシウム(粒子サイズ15μm、密度2.8g/cm)40%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-200メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度6重量%のポリメタクリル酸(数平均分子量6000、カルボキシル基含有量0.37g/g重合体)水溶液400mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、80メッシュの篩に掛けて、ポリメタクリル酸で被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.28g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は5.5重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0087】
実施例8
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量677031、スチレン構造単位の含有量40%、1,2-構造の含有量38.2%、水素化率98.5%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のアルギン酸ナトリウム(四川華堂聚瑞社、数平均分子量20000、カルボキシル基-COOHの含有量0.3g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、アルギン酸ナトリウムで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.46g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は13重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0088】
実施例9
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量95300、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量37.6%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のアルギン酸ナトリウム(四川華堂聚瑞社、数平均分子量20000、カルボキシル-COOHの含有量0.3g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、アルギン酸ナトリウムで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.47g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は13重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0089】
実施例10
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量136901、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量38.1%、水素化率98.0%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のアルギン酸ナトリウム(四川華堂聚瑞社、数平均分子量20000、カルボキシル基-COOHの含有量0.3g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、アルギン酸ナトリウムで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.48g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は13重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0090】
実施例11
質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体(数平均分子量65270、スチレン構造単位の含有量30%、1,2-構造の含有量37.7%、水素化率97.9%)50%と沈殿硫酸バリウム(粒子サイズ15μm、密度4.4g/cm)50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得た。さらに、製造した複合体粒子200gを濃度3重量%のアルギン酸ナトリウム(四川華堂聚瑞社、数平均分子量20000、カルボキシル基-COOHの含有量0.3g/g)水溶液200mlに加えて、均一に撹拌して乾燥し、粉砕し、40メッシュの篩に掛けて、アルギン酸ナトリウムで被覆されたスチレン系熱可塑性エラストマー複合体自己修復剤を得た。タップ密度が1.45g/cmの該自己修復剤粒子を油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合し、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトを得た。前記油ガス田の坑井セメンチング用グラウトの全量を基準にして、前記組成物の含有量は13重量%である。12時間静置したところ、油ガス田の坑井セメンチング用グラウトには明らかな層間分離が認められなかった。
【0091】
実施例12
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体の1,2-構造の含有量が20.5%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合した結果を表1に示す。
【0092】
実施例13
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体の1,2-構造の含有量が48.5%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0093】
実施例14
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体と沈殿硫酸バリウムとの重量比が25:75であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子はタップ密度が1.65g/cmであり、油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合した結果を表1に示す。
【0094】
実施例15
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体の水素化率が90.0%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0095】
実施例16
重合体は星状水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体であり、シングルアームの数平均分子量は80295であり、総数平均分子量は250679であり、スチレン構造単位の含有量は32重量%であり、1,2-構造の含有量は37.7重量%であり、水素化率は98.1%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0096】
実施例17
重合体は星状水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体であり、シングルアームの数平均分子量は90548であり、総数平均分子量は291533であり、スチレン構造単位の含有量は32重量%であり、1,2-構造の含有量は37.9重量%であり、水素化率は98.0%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0097】
実施例18
重合体は星状水素化スチレン-ブタジエンブロック共重合体であり、シングルアームの数平均分子量は99270であり、総数平均分子量は310590であり、スチレン構造単位の含有量は32重量%であり、1,2-構造の含有量は38.5重量%であり、水素化率は97.5%であること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0098】
比較例1
キトサン水溶液と混合するステップ、即ち、質量百分率で水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体50%と沈殿硫酸バリウム50%とを均一に混合し、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、スチレン系熱可塑性エラストマーと無機充填材の複合体粒子を得るステップを含まないこと以外、実施例4の方法によって自己修復剤を製造した。該複合体粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0099】
比較例2
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体を、キトサン及び沈殿硫酸バリウムとともに均一に混合した後、溶融ブレンド-造粒-粉砕-40メッシュの篩に掛けて、自己修復剤粒子を得ること以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造した。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合した結果を表1に示す。
【0100】
比較例3
水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体を同じ重量の非水素化スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体に変更したこと以外、実施例4の方法によって自己修復剤組成物を製造し、スチレン-ブタジエン-スチレン三元ブロック共重合体の数平均分子量、スチレン構造単位の含有量、1,2-構造の含有量は実施例4の水素化重合体とほぼ同じである。得られた自己修復剤粒子と油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1とを均一に混合した結果を表1に示す。
【0101】
比較例4
CN105952413Aの実施例の表1におけるSBS#3を自己修復剤とした。油ガス田の坑井セメンチング用グラウト1と均一に混合した結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
性能テスト
上記実施例及び比較例のグラウトを用いて、4×4×15cmのセメントブロックをそれぞれ製造し、実施例1の外観の写真を図5に示す。各実施例及び比較例のセメントブロックは80℃で48時間養生後の力学的性能を以下の表2に示す。
【0104】
上記セメントブロックを積み重ねて直径1m、高さ1mの模擬円筒井を構成し、ブロックごとに500μm×350μmのひび割れを形成し、100℃で天然ガスを初期流速1600ml/minで井内に持続的に注入し、井内の圧力が5MPaに維持されると、天然ガスの流速が0(即ち修復率100%)に低下する時間を記録し、結果を図2及び以下の表2に示す。実施例1の糸引きを図4に示す。
【0105】
【表2】
【0106】
上記の表の結果から分かるように、本発明の組成物を使用すると、明らかに優れた自己修復性能が得られる。
【0107】
以上は本発明の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明の技術的構想を逸脱することなく、各技術的特徴を任意の他の方式で組み合わせることを含め、本発明の技術案について多くの簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形や組み合わせも本発明の開示内容とみなすべきであり、全て本発明の特許範囲に属するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5