(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240806BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240806BHJP
F21V 7/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F21S2/00 431
F21S2/00 433
F21S2/00 435
F21V9/40 400
F21V7/00 510
(21)【出願番号】P 2023525786
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2022021725
(87)【国際公開番号】W WO2022255246
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2021091444
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 圭二
【審査官】竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-29301(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093136(WO,A1)
【文献】特開2010-230887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/40
F21V 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光モジュールと、
第1の液晶セルと第2の液晶セルとが積層され、前記発光モジュールから照射された光を透過する光学素子と、を含み、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々は、
第1の方向において、第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、
前記第1の方向と交差する第2の方向において、第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、を含み、
前記発光モジュールは、
光源と、
前記光源から照射された光が入射される端面および入射した前記光を出射する第1の面を含む導光板と、
前記第1の面に対向して配置されるプリズムシートと、を含み、
前記第1の液晶セルの前記第2の基板と前記第2の液晶セルの前記第1の基板とが隣接し、
前記第1の面は、前記第1の方向および前記第2の方向と交差する第3の方向に延在する複数の第1の溝を含む、照明装置。
【請求項2】
前記発光モジュールは、コリメート光を照射する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記導光板の前記第1の面と反対の第2の面は、前記第3の方向と交差する第4の方向に延在する複数の第2の溝を含む、請求項1または請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光学素子は、さらに、第3の液晶セルと第4の液晶セルとが積層され、
前記第3の液晶セルおよび前記第4の液晶セルの各々は、
前記第2の方向において、第5の透明電極と第6の透明電極とが交互に櫛歯状に配置された第3の基板と、
前記第1の方向において、第7の透明電極と第8の透明電極とが交互に櫛歯状に配置された第4の基板と、を含み、
前記第2の液晶セルの前記第2の基板と前記第3の液晶セルの前記第3の基板とが隣接し、
前記第3の液晶セルの前記第4の基板と前記第4の液晶セルの前記第3の基板とが隣接している、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1の方向は、前記第2の方向と90°±10°で交差し、
前記第3の方向は、前記第4の方向と90°±10°で交差している、請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の方向と前記第3の方向とのなす角は、45°±10°である、請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
さらに、前記第1の透明電極と第2の透明電極との間の電位差、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との間の電位差、前記第5の透明電極と前記第6の透明電極との間の電位差、および前記第7の透明電極と前記第8の透明電極との間の電位差がそれぞれ0Vであるときの配光の形状を補正する電位の値が格納されたルックアップテーブルを含む、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
発光モジュールと、
第1の液晶セルと第2の液晶セルとが積層され、前記発光モジュールから照射された光を透過する光学素子と、を含み、
前記第1の液晶セルおよび前記第2の液晶セルの各々は、
第1の方向において、第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、
前記第1の方向と交差する第2の方向において、第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、を含み、
前記発光モジュールは、
光源と、
前記光源の周囲に配置され、前記光源から照射された光を反射するリフレクタと、を含み、
前記第1の液晶セルの前記第2の基板と前記第2の液晶セルの前記第1の基板とが隣接している、照明装置。
【請求項9】
前記光学素子は、さらに、第3の液晶セルと第4の液晶セルとが積層され、
前記第3の液晶セルおよび前記第4の液晶セルの各々は、
前記第2の方向において、第5の透明電極と第6の透明電極とが交互に櫛歯状に配置された第3の基板と、
前記第1の方向において、第7の透明電極と第8の透明電極とが交互に櫛歯状に配置された第4の基板と、を含み、
前記第2の液晶セルの前記第2の基板と前記第3の液晶セルの前記第3の基板とが隣接し、
前記第3の液晶セルの前記第4の基板と前記第4の液晶セルの前記第3の基板とが隣接している、請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1の方向は、前記第2の方向と90°±10°で交差している、請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
さらに、前記第1の透明電極と第2の透明電極との間の電位差、前記第3の透明電極と前記第4の透明電極との間の電位差、前記第5の透明電極と前記第6の透明電極との間の電位差、および前記第7の透明電極と前記第8の透明電極との間の電位差がそれぞれ0Vであるときの配光の形状を補正する電位の値が格納されたルックアップテーブルを含む、請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
さらに、情報端末と通信接続される制御部を含み、
前記制御部の信号処理部は、前記情報端末からの要求信号に基づいて、前記発光モジュールの輝度を制御する、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項13】
さらに、情報端末と通信接続される制御部を含み、
前記制御部の信号処理部は、前記情報端末からの要求信号に基づいて、前記光学素子に供給する電位を制御する、請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施形態は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶に印加する電圧を調整し、液晶の屈折率が変化することを利用した光学素子、いわゆる液晶レンズが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、または特許文献3参照)。例えば、特許文献1および特許文献2に記載された照明装置は、液晶レンズを利用し、光源からの光を円形状に配光する。また、特許文献3に記載されたビーム成形デバイスでは、液晶に印加する電極のパターンを変えて光の配光の形状を変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-317879号公報
【文献】特開2010-230887号公報
【文献】特開2014-160277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液晶レンズを透過する光の配光の形状は、光源を含む発光モジュールの構成によっても変化する。そのため、あらゆる発光モジュールに対応した、光学素子を含む照明装置が要望されていた。
【0005】
本発明の一実施形態は、上記問題に鑑み、発光モジュールの構成に応じて配光の形状を補正することができる照明装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係る照明装置は、第1の液晶セルと第2の液晶セルとが積層され、発光モジュールから照射された光を透過する光学素子と、を含み、第1の液晶セルおよび第2の液晶セルの各々は、第1の方向において、第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、第1の方向と交差する第2の方向において、第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、を含み、発光モジュールは、光源と、光源から照射された光が入射される端面および入射した光を出射する第1の面を含む導光板と、第1の面に対向して配置されるプリズムシートと、を含み、第1の液晶セルの第2の基板と第2の液晶セルの第1の基板とが隣接し、第1の面は、第1の方向および第2の方向と交差する第3の方向に延在する複数の第1の溝を含む。
【0007】
また、本発明の一実施形態に係る照明装置は、発光モジュールと、第1の液晶セルと第2の液晶セルとが積層され、発光モジュールから照射された光を透過する光学素子と、を含み、第1の液晶セルおよび第2の液晶セルの各々は、第1の方向において、第1の透明電極と第2の透明電極とが交互に配置された第1の基板と、第1の方向と交差する第2の方向において、第3の透明電極と第4の透明電極とが交互に配置された第2の基板と、を含み、発光モジュールは、光源と、光源の周囲に配置され、光源から照射された光を反射するリフレクタと、を含み、第1の液晶セルの第2の基板と第2の液晶セルの第1の基板とが隣接している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】本発明の一実施形態に係る照明装置の模式的な分解斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施形態に係る照明装置の発光モジュールを説明する部分拡大図である。
【
図1C】本発明の一実施形態に係る照明装置を説明するブロック図である。
【
図2A】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子の模式的な斜視図である。
【
図2B】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子の模式的な断面図である。
【
図2C】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子の模式的な断面図である。
【
図3A】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子による配光の制御を説明する模式的な断面図である。
【
図3B】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子による配光の制御を説明する模式的な断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子と発光モジュールとの関係を説明する模式図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る照明装置において、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る照明装置の光学素子と発光モジュールとの関係を説明する模式図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係る照明装置において、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係る照明装置において、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
【
図7C】本発明の一実施形態に係る照明装置において、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る照明装置の模式的な分解斜視図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る照明装置10Bから照射された光の配光の形状を測定した測定結果である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る照明装置10Bから照射された光の配光の形状を測定した測定結果である。
【
図9C】本発明の一実施形態に係る照明装置10Bから照射された光の配光の形状を測定した測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の各実施形態において、図面等を参照しつつ説明する。但し、本発明は、その技術的思想の要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0010】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、図示の形状そのものが本発明の解釈を限定するものではない。また、図面において、明細書中で既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、別図であっても同一の符号を付して、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
ある一つの膜を加工して複数の構造体を形成した場合、各々の構造体は異なる機能、役割を有する場合があり、また各々の構造体はそれが形成される下地が異なる場合がある。しかしながらこれら複数の構造体は、同一の工程で同一層として形成された膜に由来するものであり、同一の材料を有する。従って、これら複数の膜は同一層に存在しているものと定義する。
【0012】
ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接して、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0013】
図1A~
図5を参照して、本発明の一実施形態に係る照明装置10について説明する。
【0014】
[1.照明装置10の構成]
図1Aは、本発明の一実施形態に係る照明装置10の模式的な分解斜視図である。
図1Aに示すように、照明装置10は、光学素子100、発光モジュール200、および制御部300を含む。発光モジュール200は、金属フレーム210、反射シート220、樹脂フレーム230、光源基板240、導光板250、プリズムシート260、スペーサ270、および遮光両面テープ280を含む。反射シート220、樹脂フレーム230、光源基板240、導光板250、およびプリズムシート260は、金属フレーム210とスペーサ270とで囲まれた空間内に配置される。スペーサ270には、光を透過する開口部が設けられている。また、スペーサ270上に遮光両面テープ280が設けられ、スペーサ270と光学素子100とが遮光両面テープ280を介して接着されている。制御部300は、発光モジュール200外に設けられていてもよく、発光モジュール200内に設けられていてもよい。
【0015】
図1Bは、本発明の一実施形態に係る照明装置10の発光モジュール200を説明する部分拡大図である。導光板250の第1の面には、x軸方向に延在する複数の第1の溝252が設けられている。導光板250の第1の面の反対の第2の面には、y軸方向に延在する複数の第2の溝254が形成されている。第1の溝252および第2の溝の254の各々の断面形状は、二等辺三角形である。換言すると、導光板250の第1の面および第2の面の各々には、断面形状が二等辺三角形である凸部が設けられている。第1の面の凸部の頂角は、例えば、98°であり、第2の面の凸部の頂角は、例えば、177°である。但し、頂角の角度はこれに限られない。また、凸部の断面形状も二等辺三角形に限られず、半円形状であってもよい。
【0016】
導光板250の第1の面に対向して、プリズムシート260が配置されている。また、導光板250の第2の面に対向して、反射シート220が配置されている。さらに、導光板250の端面の位置に、光源基板240が配置されている。光源基板240には、光源として、LED(Light Emitting Diode)素子242が実装されている。LED素子242から出射された光は、導光板250の端面から入射し、反射シート220による反射および導光板250による屈折によって、導光板250の第1の面から出射する。
【0017】
プリズムシート260の導光板250の第1の面に対向する面には、y軸方向に延在する複数の溝262が設けられている。溝262の断面形状は、二等辺三角形である。換言すると、プリズムシート260の面には、y軸方向に延在する三角柱体(プリズム)が設けられている。三角柱体の断面形状の二等辺三角形の頂角は、例えば、68°である。導光板250の第1の面から出射された光は、プリズムシート260の三角柱体が形成された面から入射し、その反対の面からコリメート光として出射される。
【0018】
発光モジュール200は、いわゆるエッジライトである。すなわち、発光モジュール200は、LED素子242から出射された光をコリメート光に変換し、光学素子100にコリメート光を照射することができる。なお、当該コリメート光は、導光板およびプリズムシートの溝形状または組み合わせによって、その配光の態様を適宜調整することができる。具体的には、遮光両面テープ280によって区画される出光領域全体にわたり、面状に光を照射する態様も採用することができる。また、当該出光領域の中心部からのみ照射する態様も採用することができる。かかる発光モジュールにより、光源の薄型化が図られる。
【0019】
図1Cは、本発明の一実施形態に係る照明装置10を説明するブロック図である。
図1Cに示すように、照明装置10において、制御部300は、光学素子100および発光モジュール200と電気的に接続され、光学素子100および発光モジュール200を制御することができる。また、制御部300は、信号処理部310および記憶部320を含む。
【0020】
信号処理部310は、データまたは情報を用いて演算処理を行うことができるコンピュータである。信号処理部310は、例えば、中央演算処理装置(Central Processing Unit:CPU)、マイクロプロセッサ(Micro Processing Unit:MPU)、またはランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)などを含む。具体的には、信号処理部310は、プログラムを読み込みこむことにより、所定の機能を実行することができる。
【0021】
記憶部320は、データまたは情報を格納することができるストレージである。記憶部320として、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive:HDD)、ソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)、リードオンリーメモリ(Read Only Memory:ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、またはフラッシュメモリなどを用いることができる。また、記憶部320は、発光モジュール200から照射される光の配光の形状を補正するため、光学素子100に供給する電位の値が格納されたルックアップテーブル322を含む。なお、配光の形状の補正については、後述する。
【0022】
制御部300は、ネットワークNWを介してユーザの情報端末900と通信接続することができる。ネットワークNWは、有線であっても、無線であってもよい。例えば、ネットワークNWは、LAN(Local Area Network)またはインターネットなどであるが、これに限られない。また、情報端末900は、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット、またはパーソナルコンピュータであるが、これらに限られない。
【0023】
照明装置10は、情報端末900の操作によって制御することができる。すなわち、照明装置10が情報端末900から要求信号を受信すると、制御部300の信号処理部310は、受信した要求信号に基づいて光学素子100または発光モジュール200を制御する。要求信号は、例えば、照明装置10の輝度(発光モジュール200の輝度)の調整に関する信号または照明装置10から照射される光の配光の形状に関する信号などである。要求信号として照明装置10の輝度の調整に関する信号を受信した場合、信号処理部310は、LED素子242へ供給する電流を調整する。要求信号として照明装置から照射される光の配光の形状に関する信号を受信した場合、信号処理部310は、光学素子100へ供給する電位を制御する。
【0024】
照明装置10では、発光モジュール200から照射された光は、光学素子100を介して外部に出射される。そこで、以下では、光学素子100について説明する。
【0025】
[2.光学素子100の構成]
図2Aは、本発明の一実施形態に係る照明装置10の光学素子100の模式的な斜視図である。
図2Aに示すように、光学素子100は、第1の液晶セル110-1、第2の液晶セル110-2、第3の液晶セル110-3、および第4の液晶セル110-4を含む。第1の液晶セル110-1、第2の液晶セル110-2、第3の液晶セル110-3、および第4の液晶セル110-4は、z軸方向に積層されている。第2の液晶セル110-2は、第1の液晶セル110-1上に設けられている。第3の液晶セル110-3は、第2の液晶セル110-2上に設けられている。第4の液晶セル110-4は、第3の液晶セル110-3上に設けられている。発光モジュール200から出射された光は、第1の液晶セル110-1、第2の液晶セル110-2、第3の液晶セル110-3、および第4の液晶セル110-4を順に透過する。
【0026】
第1の光学弾性樹脂層170-1は、第1の液晶セル110-1と第2の液晶セル110-2とを接着し、固定する。第2の光学弾性樹脂層170-2は、第2の液晶セル110-2と第3の液晶セル110-3とを接着し、固定する。第3の光学弾性樹脂層170-3は、第3の液晶セル110-3と第4の液晶セル110-4とを接着し、固定する。第1の光学弾性樹脂層170-1、第2の光学弾性樹脂層170-2、および第3の光学弾性樹脂層170-3の各々として、透光性を有するアクリル樹脂またはエポキシ樹脂などを含む接着剤を用いることができる。
【0027】
図2Bおよび
図2Cは、本発明の一実施形態に係る照明装置10の光学素子100の模式的な断面図である。具体的には、
図2Bは、
図2Aに示すA1-A2線に沿って切断された光学素子100の模式的な断面図であり、
図2Cは、
図2Aに示すB1-B2線に沿って切断された光学素子100の模式的な断面図である。なお、以下では、便宜上、A1-A2線と平行な方向を第1の方向とし、B1-B2線と平行な方向を第2の方向とする。第1の方向および第2の方向は、互いに90°で交差し、それぞれがx軸方向およびy軸方向と45°または135°で交差している。なお、以下では、便宜上、x軸方向およびy軸方向を第3の方向および第4の方向とする。すなわち、第3の方向および第4の方向は、互いに90°で交差している。
【0028】
第1の方向と第2の方向とのなす角は、90°に限られず、略90°であってもよい。略90°とは、例えば、90°±10°である。また、第1の方向と第3の方向または第4の方向とのなす角および第2の方向と第3の方向または第4の方向とのなす角の各々は、45°または135°に限られず、略45°または略135°であってもよい。略45°とは、例えば、45°±10°であり、略135°とは、例えば、135°±10°である。
【0029】
第1の液晶セル110-1は、第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2が形成された第1の基板120-1と、第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4が形成された第2の基板120-2と、を含む。第1の基板120-1上には、第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2を覆う第1の配向膜140-1が形成されている。また、第2の基板120-2上には、第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4を覆う第2の配向膜140-2が形成されている。第1の基板120-1と第2の基板120-2とは、第1の基板120-1上の第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2と、第2の基板120-2上の第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4とが対向するように配置されている。また、第1の基板120-1および第2の基板120-2の各々の周辺部には、第1のシール材150-1が形成されている。すなわち、第1の基板120-1と第2の基板120-2とは、第1のシール材150-1を介して接着されている。また、第1の基板120-1(より具体的には、第1の配向膜140-1)、第2の基板120-2(より具体的には、第2の配向膜140-2)、および第1のシール材150-1で囲まれた空間には液晶が封入され、第1の液晶層160-1が形成されている。
【0030】
第2の液晶セル110-2は、第5の透明電極130-5および第6の透明電極130-6が形成された第3の基板120-3と、第7の透明電極130-7および第8の透明電極130-8が形成された第4の基板120-4と、を含む。第3の基板120-3上には、第5の透明電極130-5および第6の透明電極130-6を覆う第3の配向膜140-3が形成されている。また、第4の基板120-4上には、第7の透明電極130-7および第8の透明電極130-8を覆う第4の配向膜140-4が形成されている。第3の基板120-3と第4の基板120-4とは、第3の基板120-3上の第5の透明電極130-5および第6の透明電極130-6と、第4の基板120-4上の第7の透明電極130-7および第8の透明電極130-8とが対向するように配置されている。また、第3の基板120-3および第4の基板120-4の各々の周辺部には、第2のシール材150-2が形成されている。すなわち、第3の基板120-3と第4の基板120-4とは、第2のシール材150-2を介して接着されている。また、第3の基板120-3(より具体的には、第3の配向膜140-3)、第4の基板120-4(より具体的には、第4の配向膜140-4)、および第2のシール材150-2で囲まれた空間には液晶が封入され、第2の液晶層160-2が形成されている。
【0031】
第3の液晶セル110-3は、第9の透明電極130-9および第10の透明電極130-10が形成された第5の基板120-5と、第11の透明電極130-11および第12の透明電極130-12が形成された第6の基板120-6と、を含む。第5の基板120-5上には、第9の透明電極130-9および第10の透明電極130-10を覆う第5の配向膜140-5が形成されている。また、第6の基板120-6上には、第11の透明電極130-11および第12の透明電極130-12を覆う第6の配向膜140-6が形成されている。第5の基板120-5と第6の基板120-6とは、第5の基板120-5上の第9の透明電極130-9および第10の透明電極130-10と、第6の基板120-6上の第11の透明電極130-11および第12の透明電極130-12とが対向するように配置されている。また、第5の基板120-5および第6の基板120-6の各々の周辺部には、第3のシール材150-3が形成されている。すなわち、第5の基板120-5と第6の基板120-6とは、第3のシール材150-3を介して接着されている。また、第5の基板120-5(より具体的には、第5の配向膜140-5)、第6の基板120-6(より具体的には、第6の配向膜140-6)、および第3のシール材150-3で囲まれた空間には液晶が封入され、第3の液晶層160-3が形成されている。
【0032】
第4の液晶セル110-4は、第13の透明電極130-13および第14の透明電極130-14が形成された第7の基板120-7と、第15の透明電極130-15および第16の透明電極130-16が形成された第8の基板120-8と、を含む。第7の基板120-7上には、第13の透明電極130-13および第14の透明電極130-14を覆う第7の配向膜140-7が形成されている。また、第8の基板120-8上には、第15の透明電極130-15および第16の透明電極130-16を覆う第8の配向膜140-8が形成されている。第7の基板120-7と第8の基板120-8とは、第7の基板120-7上の第13の透明電極130-13および第14の透明電極130-14と、第8の基板120-8上の第15の透明電極130-15および第16の透明電極130-16とが対向するように配置されている。また、第7の基板120-7および第8の基板120-8の各々の周辺部には、第4のシール材150-4が形成されている。すなわち、第7の基板120-7と第8の基板120-8とは、第4のシール材150-4を介して接着されている。また、第7の基板120-7(より具体的には、第7の配向膜140-7)、第8の基板120-8(より具体的には、第8の配向膜140-8)、および第4のシール材150-4で囲まれた空間には液晶が封入され、第4の液晶層160-4が形成されている。
【0033】
第1の液晶セル110-1、第2の液晶セル110-2、第3の液晶セル110-3、および第4の液晶セル110-4は、基本的な構成は同じである。但し、透明電極130の配置が異なる。
【0034】
第1の液晶セル110-1では、第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2は第2の方向に延在し、第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4は第1の方向に延在している。また、第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2とは、第1の方向において交互に櫛歯状に配置され、第3の透明電極130-3と第4の透明電極130-4とは、第2の方向において交互に櫛歯状に配置されている。平面視において、第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2の延在方向(第2の方向)は、第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4の延在方向(第1の方向)と直交しているが、僅かにずれて交差(略90°)していてもよい。
【0035】
第2の液晶セル110-2では、第5の透明電極130-5および第6の透明電極130-6は第2の方向に延在し、第7の透明電極130-7および第8の透明電極130-8は第1の方向に延在している。また、第5の透明電極130-5と第6の透明電極130-6とは、第1の方向において交互に櫛歯状に配置され、第7の透明電極130-7と第8の透明電極130-8とは、第2の方向において交互に櫛歯状に配置されている。平面視において、第5の透明電極130-5および第6の透明電極130-6の延在方向(第2の方向)は、第7の透明電極130-7および第8の透明電極130-8の延在方向(第1の方向)と直交しているが、僅かにずれて交差(略90°)していてもよい。
【0036】
第3の液晶セル110-3では、第9の透明電極130-9および第10の透明電極130-10は第1の方向に延在し、第11の透明電極130-11および第12の透明電極130-12は第2の方向に延在している。また、第9の透明電極130-9と第10の透明電極130-10とは、第2の方向において交互に櫛歯状に配置され、第11の透明電極130-11と第12の透明電極130-12とは、第1の方向において交互に櫛歯状に配置されている。平面視において、第9の透明電極130-9および第10の透明電極130-10の延在方向(第1の方向)は、第11の透明電極130-11および第12の透明電極130-12の延在方向(第2の方向)と直交しているが、僅かにずれて交差(略90°)していてもよい。
【0037】
第4の液晶セル110-4では、第13の透明電極130-13および第14の透明電極130-14は第1の方向に延在し、第15の透明電極130-15および第16の透明電極130-16は第2の方向に延在している。また、第13の透明電極130-13と第14の透明電極130-14とは、第2方向において交互に櫛歯状に配置され、第15の透明電極130-15と第16の透明電極130-16とは、第1の方向において交互に櫛歯状に配置されている。平面視において、第13の透明電極130-13および第14の透明電極130-14の延在方向(第1の方向)は、第15の透明電極130-15および第16の透明電極130-16の延在方向(第2の方向)と直交しているが、僅かにずれて交差(略90°)していてもよい。
【0038】
平面視において、第1の透明電極130-1、第5の透明電極130-5、第11の透明電極130-11、および第15の透明電極130-15は、互いに延在方向(第2の方向)が略一致するように重畳している。他の透明電極130も同様である。但し、第1の透明電極130-1、第5の透明電極130-5、第11の透明電極130-11、および第15の透明電極130-15が僅かにずれて重畳するように、第1の液晶セル110-1~第4の液晶セル110-4が配置されていてもよい。
【0039】
第1の基板120-1~第8の基板120-8の各々として、例えば、ガラス基板、石英基板、またはサファイア基板などの透光性を有する剛性基板が用いられる。また、第1の基板120-1~第8の基板120-8の各々として、例えば、ポリイミド樹脂基板、アクリル樹脂基板、シロキサン樹脂基板、またはフッ素樹脂基板などの透光性を有する可撓性基板を用いることもできる。
【0040】
第1の透明電極130-1~第16の透明電極130-16の各々は、液晶層160に電界を形成するための電極として機能する。第1の透明電極130-1~第16の透明電極130-16の各々として、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)またはインジウム・亜鉛酸化物(IZO)などの透明導電材料が用いられる。
【0041】
第1の液晶層160-1~第4の液晶層160-4の各々は、液晶分子の配向状態に応じて、透過する光を屈折し、または透過する光の偏光状態を変化させることができる。第1の液晶層160-1~第4の液晶層160-4の各々の液晶として、ネマティック液晶などが用いられる。本実施形態で説明する液晶はポジ型であるが、液晶分子の初期の配向方向などを変更することによりネガ型を適用する構成も可能である。また、液晶には、液晶分子にねじれを付与するカイラル剤が含まれていることが好ましい。
【0042】
第1の配向膜140-1~第8の配向膜140-8の各々は、液晶層160内の液晶分子を所定の方向に配列する。第1の配向膜140-1~第8の配向膜140-8の各々として、ポリイミド樹脂などが用いられる。なお、第1の配向膜140-1~第8の配向膜140-8の各々は、ラビング法または光配向法などの配向処理によって配向特性が付与されてもよい。ラビング法は、配向膜の表面を一方向に擦る方法である。また、光配向法は、配向膜に直線偏光の紫外線を照射する方法である。
【0043】
第1のシール材150-1~第4のシール材150-4の各々として、エポキシ樹脂またはアクリル樹脂を含む接着材などが用いられる。なお、接着材は、紫外線硬化型であってもよく、熱硬化型であってもよい。
【0044】
光学素子100は、少なくとも2つの液晶セル(例えば、第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2)を含むことにより、無偏光の光の配光を制御することができる。そのため、第1の液晶セル110-1の第1の基板120-1および第4の液晶セル110-4の第8の基板120-8の各表面には、例えば、液晶表示素子の表裏面に設けられるような一対の偏光板を設ける必要はない。
【0045】
[3.光学素子100による配光の制御]
図3Aおよび
図3Bは、本発明の一実施形態に係る照明装置10の光学素子100による配光の制御を説明する模式的な断面図である。
図3Aおよび
図3Bには、
図2Bに示す第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2の断面図の一部が示されている。
図3Aには、透明電極130に電位が供給されていない状態の光学素子100が示され、
図3Bには、透明電極130に電位が供給されている状態の光学素子100が示されている。
【0046】
第1の配向膜140-1は第1の方向に配向処理が行われている。そのため、
図3Aに示すように、第1の液晶層160-1の第1の基板120-1側の液晶分子は、長軸が第1の方向に沿って配向する。すなわち、第1の基板120-1側の液晶分子の配向方向は、第1の透明電極130-1および第2の透明電極130-2の延在方向(第2の方向)と交差している。また、第2の配向膜140-2は第2の方向に配向処理が行われている。そのため、
図3Aに示すように、第1の液晶層160-1の第2の基板120-2側の液晶分子は、長軸が第2の方向に沿って配向する。すなわち、第2の基板120-2側の液晶分子の配向方向は、第3の透明電極130-3および第4の透明電極130-4の延在方向(第1の方向)と交差している。したがって、第1の液晶層160-1の液晶分子は、第1の基板120-1から第2の基板120-2に向かうにつれて徐々に長軸の向きを第1の方向から第2方向に変化し、90度ねじれた状態で配向している。
【0047】
第2の液晶層160-2の液晶分子も、第1の液晶層160-1の液晶分子と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0048】
透明電極130に電位が供給されると、
図3Bに示すように、液晶分子の配向が変化する。ここでは、第1の透明電極130-1、第3の透明電極130-3、第5の透明電極130-5、および第7の透明電極130-7にLow電位が供給され、第2の透明電極130-2、第4の透明電極130-4、第6の透明電極130-6、および第8の透明電極130-8にHigh電位が供給されているものとして説明する。なお、
図3Bでは、便宜上、Low電位およびHigh電位を、それぞれ、「-」および「+」の記号を用いて図示している。なお、以下では、隣接する透明電極間に生じる電界を横電界と言う場合がある。
【0049】
図3Bに示すように、第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2との間の横電界の影響によって、第1の基板120-1側の液晶分子は、全体として、第1の基板120-1に対して第1の方向に凸の円弧状に配向する。同様に、第3の透明電極130-3と第4の透明電極130-4との間の横電界の影響によって、第2の基板120-2側の液晶分子は、全体として、第2の基板120-2に対して第2の方向に凸の円弧状に配向する。第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2との間のほぼ中央に位置する液晶分子は、いずれの横電界によっても配向がほとんど変化しない。したがって、第1の液晶層160-1に入射した光は、第1の基板120-1側の第1の方向に凸の円弧状に配向された液晶分子の屈折率分布にしたがって第1の方向に拡散され、第2の基板120-2側の第2の方向に凸の円弧状に配向された液晶分子の屈折率分布にしたがって第2の方向に拡散される。
【0050】
なお、第1の基板120-1と第2の基板120-2とは、十分に離れた基板間距離を有しているため、第1の基板120-1の第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2との間の横電界は、第2の基板120-2側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさないか、または、無視できるほどに小さい。同様に、第2の基板120-2の第3の透明電極130-3と第4の透明電極130-4との間の横電界は、第1の基板120-1側の液晶分子の配向に対して影響を及ぼさないか、または、無視できるほどに小さい。
【0051】
第5の透明電極130-5~第8の透明電極130-8に電位が供給された場合における第2の液晶層160-2の液晶分子も、第1の液晶層160-1の液晶分子と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0052】
続いて、光学素子100を透過する光の配光について説明する。光源から出射された光は、第1の方向の偏光成分(P偏光成分)および第2の方向の偏光成分(S偏光成分)を有するが、以下では、便宜上、光をP偏光成分とS偏光成分とに分けて説明する。すなわち、光源から出射された光(
図3Aおよび
図3B中の(1)参照)は、P偏光成分を有する第1の偏光510およびS偏光成分を有する第2の偏光520を含む。なお、
図3Aおよび
図3B中の矢印の記号および丸印にバツを付した記号は、それぞれ、P偏光成分およびS偏光成分を表している。
【0053】
第1の偏光510は、第1の基板120-1に入射した後、第2の基板120-2に向かうにつれて、液晶分子の配向のねじれにしたがってP偏光成分からS偏光成分に変化する(
図3Aおよび
図3B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第1の偏光510は、第1の基板120-1側ではx軸方向に偏光軸を有しているが、第1の液晶層160-1の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板120-2側ではy軸方向に偏光軸を有し、その後、第2の基板120-2側から出射される(
図3Aおよび
図3B中の(5)参照)。
【0054】
ここで、第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で第1の基板120-1側の液晶分子が第1の方向に凸の円弧状に配向し、屈折率分布が変化する。そのため、第1の偏光510は、当該液晶分子の屈折率分布にしたがって、第1の方向に拡散する。また、第3の透明電極130-3と第4の透明電極130-4との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で第2の基板120-2側の液晶分子が第2の方向に凸の円弧状に配向し、屈折率分布が変化する。そのため、第1の偏光510は、当該液晶分子の屈折率分布の変化にしたがって、第2の方向に拡散する。
【0055】
したがって、横電界が発生していない場合(
図3A参照)、第1の液晶セル110-1を透過する第1の偏光510は、偏光成分がP偏光成分からS偏光成分に変化する。一方、横電界が発生している場合(
図3B参照)、第1の液晶セルを透過する第1の偏光510は、偏光成分がP偏光成分からS偏光成分に変化するとともに、第1の方向および第2の方向に拡散する。
【0056】
第2の偏光520は、第1の基板120-1に入射した後、第2の基板120-2に向かうにつれて、液晶分子の配向のねじれにしたがってS偏光成分からP偏光成分に変化する(
図3Aおよび
図3B中の(2)~(4)参照)。より具体的には、第2の偏光520は、第1の基板120-1側では第2の方向に偏光軸を有しているが、第1の液晶層160-1の厚さ方向に通過する過程でその偏光軸を徐々に変化させ、第2の基板120-2側では第1の方向に偏光軸を有し、その後、第2の基板120-2側から出射される(
図3Aおよび
図3B中の(5)参照)。
【0057】
ここで、第1の透明電極130-1と第2の透明電極130-2との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で第1の基板120-1側の液晶分子が第1の方向に凸の円弧状に配向し、屈折率分布が変化する。しかしながら、第2の偏光520の偏光軸は、第1の基板120-1側の液晶分子の配向と直交しているため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、拡散せずにそのまま通過する。また、第3の透明電極130-3と第4の透明電極130-4との間に横電界が発生すると、当該横電界の影響で第2の基板120-2側の液晶分子が第2の方向に凸の円弧状に配向し、屈折率分布が変化する。しかしながら、第2の偏光520の偏光軸は、第2の基板120-2側の液晶分子の配向と直交しているため、当該液晶分子の屈折率分布の影響を受けず、拡散せずにそのまま通過する。
【0058】
したがって、横電界が発生していない場合(
図3A参照)だけでなく、横電界が発生している場合(
図3B参照)も、第1の液晶セル110-1を透過する第2の偏光520は、偏光成分がS偏光成分からP偏光成分に変化するが、拡散しない。
【0059】
第2の液晶セル110-2の第2の液晶層160-2の液晶分子も、第1の液晶セル110-1の第1の液晶層160-1の液晶分子と同様の屈折率分布を有する。但し、第1の偏光510および第2の偏光520は、第1の液晶セル110-1を透過することで、偏光軸が変化しているため、第2の液晶層160-2の液晶分子の屈折率分布の影響を受ける偏光は逆となる。すなわち、横電界が発生していない場合(
図3A参照)だけでなく、横電界が発生している場合(
図3B参照)も、第2の液晶セル110-2を透過する第1の偏光510は、偏光成分がS偏光成分からP偏光成分に変化するが、拡散しない(
図3Aおよび
図3B中の(6)~(8)参照)。一方、横電界が発生していない場合(
図3A参照)、第2の液晶セル110-2を透過する第2の偏光520は、偏光成分がP偏光成分からS偏光成分に変化するのみであるが、横電界が発生している場合(
図3B参照)、第2の液晶セル110-2を透過する第2の偏光520は、偏光成分がP偏光成分からS偏光成分に変化するとともに、第1の方向および第2の方向に拡散する。
【0060】
以上からわかるように、光学素子100では、同一の構造を有する2つの液晶セル110を積層させることにより、光学素子100に入射する光の偏光成分を2度にわたって変化させ、その結果、入射前と入射後での偏光成分を変わらなくすることができる(
図3Aおよび
図3B中の(1)および(9)参照)。他方、光学素子100は、透明電極130に電位を供給し、液晶セル110の液晶層160の液晶分子が有する屈折率分布を変化させ、液晶セル110を透過する光を屈折させることができる。より具体的には、第1の液晶セル110-1が第1の偏光510(P偏光成分)の光を第1の方向、第2の方向、または第1の方向および第2の方向に拡散させ、第2の液晶セル110-2が第2の偏光520(S偏光成分)の光を第1の方向、第2の方向、または第1の方向および第2の方向に拡散させることができる。
【0061】
図3Aおよび
図3Bでは第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2のみを図示し、第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2を透過する光の配光について説明したが、第3の液晶セル110-3および第4の液晶セル110-4を透過する光の配光も同様である。但し、第3の液晶セル110-3および第4の液晶セル110-4は、第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2に対して90°回転させた状態で配置されているため、作用を及ぼす偏光成分は、第1の液晶セル110-1および第2の液晶セル110-2の場合と入れ替わることになる。すなわち、第3の液晶セル110-3が第2の偏光520(S偏光成分)の光を第1の方向、第2の方向、または第1の方向および第2の方向に拡散させ、第4の液晶セル110-4が第1の偏光510(P偏光成分)の光を第1の方向、第2の方向、または第1の方向および第2の方向に拡散させることができる。
【0062】
上述したように、光学素子100では、所定の透明電極130に電位を供給することにより、透過する光を所定の方向に拡散することができる。一方、照明装置10では、発光モジュール200から照射される光はコリメート光であり、透明電極130に電位が供給されていないときに、光学素子100を透過する光の配光の形状が異方的となる場合がある。そのような場合であっても、光学素子100を用いて補正することができる。以下、光学素子100による配光の形状の補正について説明する。
【0063】
[4.光学素子100による配光の形状の補正]
図4は、本発明の一実施形態に係る照明装置10の光学素子100と発光モジュール200との関係を説明する模式図である。なお、
図4には、光学素子100の液晶セル110の透明電極130、ならびに発光モジュール200の導光板250およびプリズムシート260が模式的に示されている。
【0064】
光学素子100では、第1の透明電極130-1、第2の透明電極130-2、第5の透明電極130-5、第6の透明電極130-6、第11の透明電極130-11、第12の透明電極130-12、第15の透明電極130-15、および第16の透明電極130-16は、第2の方向に延在している。また、第3の透明電極130-3、第4の透明電極130-4、第7の透明電極130-7、第8の透明電極130-8、第9の透明電極130-9、第10の透明電極130-10、第13の透明電極130-13、および第14の透明電極130-14は、第1の方向に延在している。一方、発光モジュール200では、導光板250の第1の溝252が、第3の方向に延在している。また、導光板250の第2の溝254およびプリズムシート260の溝262は、第4の方向に延在している。すなわち、透明電極130の延在方向と、導光板250の第1の溝252もしくは第2の溝254またはプリズムシート260の溝262の延在方向とは、45°または135°で交差している。
【0065】
図5は、本発明の一実施形態に係る照明装置10において、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
図5中の破線は、透明電極130に電位が供給されていない場合の配光の形状である。本実施形態においては、発光モジュール200は、その出向領域の中央部から光を出射する。照明装置10では、発光モジュール200の導光板250の第1の溝252および第2の溝254ならびにプリズムシート260の溝262が第3の方向または第4の方向に延在している。そのため、発光モジュール200から照射され、光学素子100を透過する光の配光の形状は、第3の方向と第4の方向とで長さが異なる場合がある。例えば、
図5中の破線で示すように、第4の方向の長さが第3の方向の長さよりも小さい十字形状を示す場合がある。換言すると、
図5中の破線が示す十字形状は、第1の方向および第2の方向に窪みを有する。この場合、第1の方向または第2の方向に延在する透明電極130に供給する電位を調整することにより、光学素子100によって第1の方向または第2の方向に光を拡散させ、
図5中の実線で示す配光の形状に補正することができる。例えば、基板120上の隣接する透明電極130間の電位差が2Vとなるように、透明電極130に電位を供給することができる。このような補正に必要とされる電位の値は、予めルックアップテーブル322に格納しておくことができる。すなわち、照明装置10では、制御部300が、記憶部320のルックアップテーブル322を読み出し、配光の形状を容易に補正することができる。
【0066】
なお、上記では、透明電極130の延在方向と、導光板250の第1の溝252もしくは第2の溝254またはプリズムシート260の溝262の延在方向とは、45°または135°で交差している照明装置10を例に説明したが、当該なす角はこれに限られない。なす角は、略45°または略135°の範囲内であればよい。
【0067】
以上、本発明の一実施形態に係る照明装置10によれば、発光モジュール200から照射される光の配光の形状を、光学素子100によって補正することができる。すなわち、照明装置10では、透明電極130の延在方向と、導光板250の第1の溝252もしくは第2の溝254またはプリズムシート260の溝262の延在方向とが異なっているため、光学素子100を透過し、制御前の光の配光の形状を補正することができる。
【0068】
<第2実施形態>
図6~
図7Cを参照して、照明装置10Aについて説明する。なお、以下では、照明装置10Aの構成が照明装置10の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0069】
図6は、本発明の一実施形態に係る照明装置10Aの光学素子100Aと発光モジュール200Aとの関係を説明する模式図である。なお、
図6には、光学素子100Aの液晶セル110Aの透明電極130A、ならびに発光モジュール200Aの導光板250Aおよびプリズムシート260Aが模式的に示されている。
【0070】
光学素子100Aでは、第1の透明電極130A-1、第2の透明電極130A-2、第5の透明電極130A-5、第6の透明電極130A-6、第11の透明電極130A-11、第12の透明電極130A-12、第15の透明電極130A-15、および第16の透明電極130A-16は、第4の方向に延在している。また、第3の透明電極130A-3、第4の透明電極130A-4、第7の透明電極130A-7、第8の透明電極130A-8、第9の透明電極130A-9、第10の透明電極130A-10、第13の透明電極130A-13、および第14の透明電極130A-14は、第3の方向に延在している。一方、発光モジュール200Aでは、導光板250Aの第1の溝252Aが、第1の方向に延在している。また、導光板250Aの第2の溝254Aおよびプリズムシート260Aの溝262Aは、第2の方向に延在している。すなわち、透明電極130Aの延在方向と、導光板250Aの第1の溝252Aもしくは第2の溝254Aまたはプリズムシート260Aの溝262Aの延在方向とは、45°または135°で交差している。
【0071】
図7A~
図7Cは、本発明の一実施形態に係る照明装置10Aにおいて、補正前後の配光の形状を説明する模式図である。
図7A~
図7C中の破線は、透明電極130Aに電位が供給されていない場合の配光の形状である。照明装置10Aでは、発光モジュール200Aの導光板250Aの第1の溝252Aおよび第2の溝254Aならびにプリズムシート260Aの溝262Aが第1の方向または第2の方向に延在している。そのため、発光モジュール200Aから照射され、光学素子100Aを透過する光の配光の形状は、第1の方向と第2の方向とで長さが異なる場合がある。例えば、
図7A~
図7C中の破線で示すように、第2の方向の長さが第1の方向の長さよりも小さい十字形状を示す場合がある。換言すると、
図7A~
図7C中の破線が示す十字形状は、第3の方向および第4の方向に窪みを有する。この場合、第3の方向または第4の方向に延在する透明電極130Aに供給する電位を調整することにより、光学素子100Aによって第3の方向または第4の方向に光を拡散させ、
図7A~
図7C中の実線で示す配光の形状に補正することができる。例えば、隣接する透明電極130の電位差が表1に示すように、各透明電極130に電位を供給する。
【0072】
【0073】
図7A~
図7C中の実線で示す配光の形状は、それぞれ、表1の電位差(1)、電位差(2)、および電位差(3)となるように、各透明電極130に電位を供給された場合である。表1および
図7A~
図7Cからわかるように、透明電極130に供給する電位を調整することにより、配光の形状を円形だけでなく、楕円形に補正することもできる。また、第1の方向の長さと第2の方向の長さとの差が大きい場合には、隣接する透明電極130間の電位差を大きくすることにより配光の形状を補正することができる。
【0074】
以上、本発明の一実施形態に係る照明装置10Aによれば、発光モジュール200Aから照射される光の配光の形状を、光学素子100Aによって補正することができる。すなわち、照明装置10Aでは、透明電極130Aの延在方向と、導光板250Aの第1の溝252Aもしくは第2の溝254Aまたはプリズムシート260の溝262Aの延在方向とが異なっているため、光学素子100Aを透過し、制御前の光の配光の形状を補正することができる。
【0075】
<第3実施形態>
図8~
図9Cを参照して、照明装置10Bについて説明する。なお、以下では、照明装置10Bの構成が照明装置10の構成と同様であるとき、その説明を省略する場合がある。
【0076】
図8は、本発明の一実施形態に係る照明装置10Bの模式的な分解斜視図である。
図8に示すように、照明装置10Bは、光学素子100Aおよび発光モジュール200Bを含む。発光モジュール200Bは、LED素子242およびリフレクタ290Bを含む。
【0077】
リフレクタ290Bの形状は、内部に空洞を有する略円錐台形である。リフレクタ290B内には、LED素子242が設けられている。すなわち、LED素子242は、リフレクタ290Bの底面に配置され、リフレクタ290Bの側面によって取り囲まれている。LED素子242から出射された光は、リフレクタ290Bの底面または側面によって反射され、光学素子100に入射される。なお、リフレクタ290Bの形状は、略円錐台形に限られない。リフレクタ290Bの形状は、例えば、多角柱形であってもよく、リフレクタ290Bの底面または側面は、平面であっても曲面であってもよい。
【0078】
リフレクタ290Bの形状またはLED素子242の実装のばらつきによっては、発光モジュール200Bから照射される光の配光の形状が異方的となる場合がある。この場合、各透明電極130Aに電位が印加されていない光学素子100Aから出射される光の配光の形状も異方的となる。例えば、光学素子100Aから出射された光の配光の形状が、y軸方向の長さがx軸方向の長さよりも小さい楕円形であるとき、透明電極130Aがx軸方向およびy軸方向に延在する透明電極130Aが含まれる光学素子100Aを用いてy軸方向に光を拡散させ、配光の形状を等方的になるように補正することができる。また、透明電極130Aに供給する電位の値をルックアップテーブル322に格納しておくことにより、常に配光の形状を補正することができる電位を供給することができる。
【0079】
なお、補正前の配光の形状の長軸方向または短軸方向と光学素子100Aの透明電極130Aの延在方向とが一致していないときは、透明電極130Aの延在方向が補正前の長軸方向または短軸方向に一致するように、発光モジュール200Bに対する光学素子100Aの配置を調整すればよい。また、光学素子100Aの代わりに、光学素子100を用いることもできる。
【0080】
また、照明装置10Bでは、光学素子100Aを用いて、配光の形状の補正を行うだけでなく、配光の形状を制御することができる。
【0081】
図9A~
図9Cは、本発明の一実施形態に係る照明装置10Bから照射された光の配光の形状を測定した測定結果である。具体的には、
図9A~
図9Cは、それぞれ、作製された照明装置10Bに表2に示す電位差(4)~電位差(6)を供給したときに、照明装置10Bから照射された光の方位角を測定した測定結果である。
【0082】
【0083】
電位差(4)のように、隣接する透明電極130間の電位差が30Vとなるように各透明電極130に電位が供給されると、
図9に示すようなx軸方向およびy軸方向に光が拡散された配光の形状が得られた。また、電位差(5)のように、各液晶セル110がy軸方向に光を拡散させるように透明電極130に電位が供給されると、y軸方向に光が拡がる配光の形状が得られた。また、電位差(6)のように、各液晶セル110がx軸方向に光を拡散させるように透明電極130に電位が供給されると、x軸方向に光が拡がる配光の形状が得られた。
【0084】
以上、本発明の一実施形態に係る照明装置10Bによれば、発光モジュール200Bから照射される光の配光の形状を、光学素子100または光学素子100Aによって補正することができるため、照明装置10Bにおける発光モジュール200B、特に、リフレクタ290Bの設計の自由度が拡がる。換言すると、照明装置10Bとして、さまざまな発光モジュール200Bを用いることができる。
【0085】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例および修正例に相当し得るものであり、それら変更例および修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。例えば、上述の各実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0086】
また、本実施形態において態様によりもたらされる他の作用効果について本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0087】
10、10A、10B:照明装置、 100、100A:光学素子、 110、110A:液晶セル、 120:基板、 130、130A:透明電極、 140:配向膜、 150:シール材、 160:液晶層、 170:光学弾性樹脂層、 200、200A、200B:発光モジュール、 210:金属フレーム、 220:反射シート、 230:樹脂フレーム、 240:光源基板、 242:LED素子、 250、250A:導光板、 252、252A:第1の溝、 254、254A:第2の溝、 260、260A:プリズムシート、 262、262A:溝、 270:スペーサ、 280:遮光両面テープ、 290B:リフレクタ、 300:制御部、 310:信号処理部、 320:記憶部、 322:ルックアップテーブル、 510:第1の偏光、 520:第2の偏光、 900:情報端末