(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】レーザースキャナーの操作性の検証
(51)【国際特許分類】
G01S 7/497 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01S7/497
(21)【出願番号】P 2023528150
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2021080908
(87)【国際公開番号】W WO2022101128
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-07-07
(31)【優先権主張番号】102020129662.2
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ、サーゲーブ
【審査官】東 治企
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-257325(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018110566(DE,A1)
【文献】特開2002-031685(JP,A)
【文献】特開2019-020149(JP,A)
【文献】特開2004-184333(JP,A)
【文献】特開2011-215005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48-7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00-3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザースキャナー(2b)の機能をチェックするための方法であって、当該レーザースキャナー(2b)は光透過性ウィンドウ(5)を有するハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に配置されるレーザー信号(9)を発するためのトランスミッターユニット(6)と、前記レーザー信号(9)を偏向するための可動偏向ユニット(10)と、前記ハウジング(4)内に配置される検出器ユニット(7)とを備え、前記方法によれば、
- 少なくとも1つのテスト信号(15)が、テスト段階の間、前記トランスミッターユニット(6)によって送信され、
- 前記偏向ユニット(10)は、前記少なくとも1つのテスト信号(15)が前記ウィンドウ(5)に向けられないように、前記テスト段階の間に前記トランスミッターユニット(6)と相対するように位置合わせされ、
- 前記少なくとも1つのテスト信号(15)の成分(15’)が、前記検出器ユニット(7)の少なくとも2つの光検出器(7a、7b、7c、7d)によって記録され、少なくとも2つの検出器信号が前記検出された成分(15’)に基づいて生成され、
- 前記少なくとも2つの検出器信号の各々についてパルス幅がコンピューティングユニット(2a)によって特定され、前記特定されたパルス幅の総和が計算され、
- 前記トランスミッターユニット(6)及び/又は検出器ユニット(7)の機能性が、前記総和に基づいてチェックされる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
- 前記総和は、前記コンピューティングユニット(2a)によって、与えられる基準値と比較され;
- 前記トランスミッターユニット(6)及び/又は検出器ユニット(7)の前記機能性は、前記比較の結果に基づいてチェックされる、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 前記少なくとも2つの光検出器(7a、7b、7c、7d)は、各々、
アバランシェフォトダイオードを含み、
- 前記
アバランシェフォトダイオードを作動させるための逆電圧は、前記検出器ユニット(7)の所定の検出器感度を設定するために、前記テスト段階の間に制御される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの光検出器(7a、7b、7c、7d)のすべての
アバランシェフォトダイオードは、前記テスト段階の間、それぞれ同じ制御された逆電圧で作動される、
ことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記逆電圧
の閉ループ制御のための設定値が、与えられるキャリブレーションデータに基づいて前記検出器感度に応じて決められる、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
コンピューティングユニット(2a)及びレーザースキャナー(2b)を有するレーザースキャナーデバイスであって、
- 前記レーザースキャナー(2b)は、光透過性ウィンドウ(5)を有するハウジング(4)と、前記ハウジング(4)内に配置されるレーザー信号(9)を発するためのトランスミッターユニット(6)と、制御ユニット(8)と、前記レーザー信号(9)を偏向するための可動偏向ユニット(10)と、前記ハウジング(4)内に配置される検出器ユニット(7)とを有し、
- 前記制御ユニット(8)は、テスト段階の間に前記トランスミッターユニット(6)が少なくとも1つのテスト信号(15)を送信するように前記トランスミッターユニット(6)を駆動するように構成され、且つ、前記少なくとも1つのテスト信号(15)が前記ウィンドウ(5)に向けられないように前記テスト段階の間に前記偏向ユニット(10)が前記トランスミッターユニット(6)に相対するように位置合わせされるように前記偏向ユニット(10)を駆動するように構成され、
- 前記検出器ユニット(7)は、少なくとも2つの光学検出器(7a、7b、7c、7d)を有し、当該光学検出器(7a、7b、7c、7d)は、少なくとも1つのテスト信号(15)の成分(15’)を記録するように構成され、且つ、前記検出された成分(15’)に基づいて少なくとも2つの検出器信号を生成するように構成され、
- 前記コンピューティングユニット(2a)は、
- 前記少なくとも2つの検出器信号の各々についてパルス幅を特定するように且つ前記特定されたパルス幅の総和を算出するように構成され、且つ
- 前記総和に基づいて、前記トランスミッターユニット(6)及び/又は検出器ユニット(7)の機能性をチェックするように構成される、
ことを特徴とするレーザースキャナーデバイス。
【請求項7】
前記偏向ユニット(10)は、回転可能な又は旋回可能なミラー又は微小電気機械ミラーシステムを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載のレーザースキャナーデバイス。
【請求項8】
- 前記少なくとも2つの光検出器(7a、7b、7c、7d)は、各々、
アバランシェフォトダイオードを含み、
- 前記制御ユニット(8)は
、前記検出器ユニット(7)の所定の検出器感度を設定するために、前記テスト段階の間に前記
アバランシェフォトダイオードを作動させるための逆電圧を制御するように構成される、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載のレーザースキャナーデバイス。
【請求項9】
前記制御ユニット(8)は、前記テスト段階の間、各ケースにおいて同じ制御された逆電圧を用いて前記少なくとも2つの光検出器(7a、7b、7c、7d)のうちの全ての
アバランシェフォトダイオードを作動させるように構成される、
ことを特徴とする請求項8に記載のレーザースキャナーデバイス。
【請求項10】
前記制御ユニット(8)は、与えられるキャリブレーションデータに基づいて、前記検出器感度に応じた前記逆電圧
の閉ループ制御のための設定値を決めるように構成される、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のレーザースキャナーデバイス。
【請求項11】
請求項6~10のいずれか一項に記載のレーザースキャナーデバイス(2)を有する動力車両。
【請求項12】
請求項6~10のいずれか一項に記載のレーザースキャナーデバイス(2)に、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を有するコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザースキャナーの機能をチェックするための方法に関し、それは光透過性ウィンドウを有するハウジング、ハウジング内に配置されるレーザー信号を発するためのトランスミッターユニット、レーザー信号を偏向させるための可動偏向ユニット、及びハウジング内に配置される検出器ユニットであり、テスト段階中にトランスミッターユニットによって少なくとも一つのテスト信号が送信され、少なくとも一つのテスト信号がウィンドウに向かないように、テスト段階中に偏向ユニットがトランスミッターユニットと向かい合って配置される。また、発明は、コンピューティングユニット及びレーザースキャナーを有する対応するレーザースキャナーデバイス、レーザースキャナーデバイスを有する動力車両、及びコンピュータプログラム製品に関する。
【発明の概要】
【0002】
ライダーシステムは、電子車両誘導システムや運転支援システムの様々な機能を実現するために、動力車両に搭載されうる。これらの機能は、距離測定、距離制御アルゴリズム、レーンキープ支援、物体追跡機能などを含む。
【0003】
ライダーシステムの既知のデザインは、いわゆるレーザースキャナーであり、当該レーザースキャナーにおいてレーザービームが偏向ユニットによって偏向され、その結果、レーザースキャナーの異なる偏向角度を実現することができる。発せられたレーザービームは、周囲で部分的に反射又は散乱されることができ、散乱又は反射された成分は、次いでレーザースキャナーに、特にレーザースキャナーの検出器ユニットに、部分的に作用し、当該レーザースキャナーは、検出される成分に基づいて対応する検出器信号を生成することができる。レーザースキャナーのトランスミッターユニットは、1つ以上のレーザー光源を含み、検出器ユニットは、例えばフォトダイオードのような、1つ以上の光検出器を含む。
【0004】
レーザースキャナーの最大範囲は、原則的にそして特に自動車関連において、非常に重要である。レーザースキャナーの機能性及び特に最大範囲は、例えば光源や光検出器の汚染によって、もたらされることができる。例えば、その汚染は、製造プロセスの間に発生する塵粒子に起因しうる。そのような塵粒子は、光源や光検出器を部分的に覆いうるものであり、それによってレーザースキャナーの範囲を低減しうる。原理的には、例えば、製造プロセスの最後におけるテストによって汚染が特定されることができる。しかし、汚染はテスト後にのみ生じたり、或いは、テスト前に既に存在していた汚染がテスト後にのみ光源又は光検出器を覆ったりという可能性がある。
【0005】
文献DE 10 2018 110 566 A1には、レーザースキャナーの機能性をチェックするための方法が記載されている。このケースにおいて、レーザースキャナーのトランスミッターによって光信号が送信されるが、トランスミッターからやってくる光信号がレーザースキャナーのハウジングとしてのウィンドウに向けられることができないように、回転可能又は揺動可能な偏向ミラーユニットが位置合わせされる。ハウジング内で散乱した光信号はレシーバーによって受信され、基準強度分布と比較される。その比較の結果に応じて、レーザースキャナーの機能性に関する通知が任意に生成される。
【0006】
この方法の欠点は、基準強度分布が概して温度依存であり、その結果、異なる温度に関して異なる基準強度分布が保存されていなければならないことである。
【0007】
このような背景に関し、本発明の目的は、温度変動に関してよりロバストな、レーザースキャナーの機能をチェックするための改良されたコンセプトを規定することである。
【0008】
この目的は、独立請求項のそれぞれの主題によって達成される。有利な発展及び好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0009】
その改良されたコンセプトは、検出器ユニットが少なくとも2つの光検出器を含むレーザースキャナーにおいて対応する検出器信号毎にパルス幅を特定し、機能性をチェックするためにパルス幅の総和を特定するというアイデアに基づいている。
【0010】
改良されたコンセプトによれば、レーザースキャナーの機能をチェックするための方法が規定される。レーザースキャナーは、光透過性ウィンドウを有するハウジングと、ハウジング内に配置されるレーザー信号を発するためのセンサーとを有する。また、レーザースキャナーは、レーザー信号を偏向させるための可動偏向ユニットと、ハウジング内に配置され且つ少なくとも2つの光検出器を有する検出器ユニットとを有する。その方法によれば、テスト段階の間に、トランスミッターユニットによって少なくとも1つのテスト信号が送信される。テスト段階において、少なくとも1つのテスト信号がウィンドウに向かわないように、偏向ユニットは、特にレーザースキャナーの制御ユニットによって、トランスミッターユニットと向かい合って位置合わせされる。少なくとも1つのテスト信号の成分は、特に反射成分及び/又は散乱成分は、少なくとも2つの光検出器によって記録され、少なくとも2つの検出器信号は、記録された成分に基づいて少なくとも2つの光検出器によって生成される。少なくとも2つの検出器信号の各々について、コンピューティングユニットによって、特にレーザースキャナーのコンピューティングユニットによって又はレーザースキャナーにつながれたコンピューティングユニットによって、パルス幅が特定され、特定されたパルス幅の総和が、特にすべての特定されたパルス幅の総和が、算出される。トランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの機能性は、特にコンピューティングユニットによって、総和に基づいてチェックされる。
【0011】
ここで及び以下において、「光」という用語は、可視範囲における、赤外線範囲における、及び/又は紫外線範囲における電磁波を含むものとして理解されうる。従って、「光学的」という用語は、この意味で光に関係するものとして理解されることもできる。レーザー信号とテスト信号は、好ましくは、赤外線範囲の光に対応する。
【0012】
ハウジングの光透過性ウィンドウは、特に、トランスミッターユニットによって、特にレーザー信号又はテスト信号の形で、発せられうる光に関して光透過性である。ウィンドウ以外、ハウジングは例えば不透明にすることができる。
【0013】
レーザー信号及び少なくとも1つのテスト信号は各々、トランスミッターユニットの1つ以上の光源、特に複数のレーザー光源、例えばレーザーダイオード、によって発せられうるレーザー信号に対応する。特に、少なくとも1つのテスト信号を、レーザー信号の特別なケースとして、具体的にはテスト段階中に発せられる種類のレーザー信号として、見ることができる。それにもかかわらず、テスト信号は、特別に適合されたスペクトルの組成又は構造或いはその他の任意の組成又は構造で生成され及び発せられることもでき、それらはテスト段階以外で生成され及び発せられる他のレーザー信号とは異なりうる。ただし、これは必須ではない。
【0014】
検出器ユニットは、特に少なくとも2つの光検出器は、レーザー信号の及び少なくとも1つのテスト信号の反射成分又は散乱成分を検出するように構成されている。レーザー信号が光透過性ウィンドウを通じてハウジングの周囲に発せられる場合、例えば、レーザースキャナー又はハウジングの外部で反射又は散乱されるレーザー信号の成分は、ハウジングに再び入ることができ、その後に検出されることができる。少なくとも1つのテスト信号の場合、少なくとも1つのテスト信号の成分は、特にハウジング内で、複数回反射される及び/又は散乱される可能性があり、少なくとも2つの光検出器によって検出される。特に、少なくとも1つのテスト信号は、ウィンドウに向けられない結果として、レーザースキャナーのハウジングから本質的に出て行くことはない。
【0015】
ウィンドウに向けられない少なくとも1つのテスト信号は、特に光線光学的理解又は幾何光学に沿った理解に基づいて、理解されることができる。
【0016】
少なくとも2つの光検出器のうちの各光検出器は、特に、それぞれの光検出器によって記録された成分に基づいて、少なくとも2つの検出器信号の関連検出器信号を生成する。レーザースキャナーの具体的な実施形態に応じて、少なくとも2つの光検出器は異なるように構成されることができる。少なくとも2つの光検出器は、好ましくは、各々、フォトダイオード、例えばアバランシェフォトダイオード、APD、を含む。したがって、検出器信号の1つの時間プロファイルは、それぞれの光検出器の対応する光学活性面に入射する光子の数の時間プロファイルを反映する。
【0017】
特に、検出器信号は信号パルスを有し、当該信号パルスはエコーとも呼ばれることできる。したがって、検出器信号のパルス幅は、特に対応する信号パルスのパルス幅に対応する。この場合、パルス幅は、対応する検出器信号の振幅が予め定められる限界値よりも大きな値をとる期間によって与えられる。このパルス幅は、エコーパルス幅、EPW、とも呼ばれる。
【0018】
トランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの機能性をチェックすることは、特に、トランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの通常動作又は制限のない動作又は制限のない機能と比較して制限があるかどうかをチェックするために使用されるパルス幅の総和との関連で理解できる。
【0019】
特に、光検出器の活性面に衝突する光子の数は、対応する信号パルスのパルス形状に影響を与え、それによってパルス幅に影響を与える。したがってテスト段階の間に与えられるように、再現可能な条件下でのパルス幅が、正規の又は制限のない動作に関して期待されるものと異なる場合、トランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットが制限された機能を有することを推測することが可能である。これは、特に、光検出器の1つの又はトランスミッターユニットの光源の、すなわち、特に、光検出器のうちの1つの活性面の、部分的又は完全な被覆によって、引き起こされうる。
【0020】
改良されたコンセプトは、個々の光検出器が互いから逸脱した温度特性を有していても、例えばある感度を得るために光検出器を動かさなければならない温度と電圧、特に逆電圧、との間の関係が、すべての光検出器に関して全く同じというわけではない場合、パルス幅の和が、特に検出器ユニット全体の所定の検出感度に関し、温度変動に対して少なくともほぼ不変である、という発見を利用する。例えば、そのような異なる温度特性は、光検出器のそれぞれの活性面のわずかに異なる大きさに起因しうる。そして、個々のパルス幅は、温度変動の場合にもちろん変化しうるものであるが、検出器のうちの1つの、場合によっては、より小さなパルス幅が、残りの検出器の対応するより大きなパルス幅によって補償されるため、すべてのパルス幅の総和は、少なくともほぼ一定のままである。このことは、少なくとも2つの光検出器のうち1つが、残りの光検出器からその温度特性が大きく外れている場合でも、そうであることが分かった。ここでパルス幅の計算された総和が、例えばキャリブレーションの範囲内で決められうる期待値から逸脱している場合、これは、例えば汚染が原因で、光検出器のうちの1つの又はトランスミッターユニットの光源の制限された機能を示す。更に、制限のない機能の場合に期待される値からの総和の値の偏差の大きさが、機能制限や汚染がどの程度深刻であるかについてのステートメントが成されることを可能にする。カバー率が大きいほど、対応する光検出器によって検出される光子がより少なくなり且つパルス幅がより小さくなり、それは、結果として総和についての対応するより大きな逸脱をもたらす。
【0021】
更に、上述のやり方でテスト信号を使用することの結果として、周囲光の考えられる影響が低減又は実質的に排除される。
【0022】
改良されたコンセプトによる方法の少なくとも1つの実施形態によれば、コンピューティングユニットによって総和が所与の基準値と比較され、その比較の結果に基づいてトランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの機能性がチェックされる。
【0023】
この場合、基準値は、特に、より早い時間で、例えばキャリブレーションの間に、パルス幅の総和とすることができる。基準値からの総和の逸脱は、特に予め定められる許容値を超えるそれらの逸脱は、少なくとも2つの光検出器の制限された機能性又は光源の制限された機能性を示す。
【0024】
様々な実施形態において、基準値は、例えばレーザースキャナーが作動開始される場合又は作動停止される場合に、更新され又は定期的に更新されることもできる。特に、トランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの機能性の大きな障害がないと判断される場合、パルス幅の算出される総和が新たな基準値として定められて保存されることができる。これにより、部品の、特に光検出器の、正規の経年変化によってもたらされる影響が補償されることが可能になる。
【0025】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つの光検出器は各々、特にレーザースキャナーの制御ユニットによって、逆向きに操作されるフォトダイオードを、例えばアバランシェフォトダイオード、APDを、含む。フォトダイオードを動作させるための逆電圧は、検出器ユニットの所定の検出感度を設定するために、特に一定に保つために、特に制御ユニットによって、テスト段階において制御される。
【0026】
検出器感度は、特に、少なくとも2つの光検出器のうちのすべての光検出器の共同感度である。例として、前記感度は、少なくとも2つの光検出器の全体的な暗電流及び/又は、特にAPDの場合の、少なくとも2つの光検出器の共同乗算係数(a joint multiplication factor)によって、特定可能としうる。この関連で、その乗算係数は、特に、少なくとも2つの光検出器によって、検出された光子毎に生成される電荷キャリアの数を、例えば平均で、規定する。
【0027】
この場合、少なくとも2つの光検出器は、特に同じ逆電圧ですべて動作させられる。
【0028】
少なくとも1つの実施形態によれば、逆電圧の閉ループ制御のための設定値は、特に制御ユニットによって、所与のキャリブレーションデータに基づいて検出器感度に応じて決められる。
【0029】
例として、キャリブレーションデータは、温度、例えば少なくとも2つの光検出器の周囲温度又は少なくとも2つの光検出器のヒートシンク温度等、と、検出器感度を得るために必要な逆電圧と、の間の関係を表しうる。特に、この関係は、少なくともほぼ直線的であってもよい。その関係は、制御ユニット又はコンピューティングユニットの記憶要素に記憶されてもよく、例えば変換テーブル又はルックアップテーブルの形態で格納されてもよい。
【0030】
キャリブレーションのために、例えば、検出器感度又は対応する暗電流又は対応する乗算係数が定められてもよい。そして、検出器感度又は暗電流又は乗算係数を得るために必要な対応の逆電圧を、2つ以上の温度に関して特定することができる。そして、線形補間及び/又は線形外挿により、更に高い温度に関する逆電圧を特定することができる。
【0031】
改良されたコンセプトによれば、コンピューティングユニット及びレーザースキャナーを有するレーザースキャナーデバイスも規定される。レーザースキャナーは、光透過性ウィンドウを有するハウジングと、ハウジング内に配置されるレーザー信号を発するためのトランスミッターユニットと、を具備する。レーザースキャナーは、レーザー信号を偏向させるための可動偏向ユニット及び制御ユニットと、ハウジング内に配置されて2つ以上の光検出器を有する検出器ユニットと、を有する。制御ユニットは、テスト段階中に少なくとも1つのテスト信号を送信するようにトランスミッターユニットを駆動するように構成される。また、制御ユニットは、少なくとも1つのテスト信号がウィンドウに向けられないように、テスト段階の間、トランスミッターユニットに対して偏向ユニットが整列されるように、偏向ユニットを駆動するように構成される。少なくとも2つの光検出器は、少なくとも1つのテスト信号の反射された成分及び/又は散乱された成分を記録するように、且つ、検出された成分に基づいて少なくとも2つの検出器信号を生成するように、構成される。コンピューティングユニットは、少なくとも2つの検出器信号の各々に関してパルス幅を特定するように、且つ、パルス幅の総和を算出するように、構成される。コンピューティングユニットは、その総和に基づきトランスミッターユニット及び/又は検出器ユニットの機能性をチェックするように、構成される。
【0032】
この場合、コンピューティングユニットはレーザースキャナーの一部とすることも可能であり、それとは別に設けられることも可能である。レーザースキャナーデバイスが動力車両内又は動力車両上での使用のために設けられる場合、コンピューティングユニットは、例えば、動力車両の電子コントローラとして実装されることができる。制御ユニットは、オプションとして、コンピューティングユニットの一部ともしうる。特に、コンピューティングユニットの記述された機能又はタスクは、様々な実施形態において、制御ユニットによって実行可能であり、又はその逆もまた同様である。
【0033】
レーザースキャナーデバイスの少なくとも1つの実施形態によれば、偏向ユニットは、回転可能又は旋回可能なミラー又は微小電気機械ミラーシステム、すなわち微小電気機械システム、MEMS、として設計されるミラー、を含む。
【0034】
特に、制御ユニットは、トランスミッターユニットによって対応するように発せられるテスト信号が、偏向ユニットの、特にミラーの、反射面に衝突しないように、及び、反射面によってウィンドウに対応しないハウジング内の領域内に偏向されるように、テスト段階の間に偏向ユニットを駆動することができる。
【0035】
様々な実施形態において、旋回可能な又は回転可能なミラーはミラー本体を含み、当該ミラー本体は、特に、実質的に直方体の形態を有することができ、直方体の1つの側面に位置付けられる反射面を有することができる。様々な構成において、その反射面とは反対側の直方体の側面に、更なる反射面を配置することができる。ミラー本体は、回転軸を中心に回転可能であるように又は旋回可能であるように取り付けられ、当該回転軸は、特に直方体の2つの更なる対向する側面を通過する。したがって反射面にも回転軸が通る側面にも対応しない直方体の残りの2つの側面は、例えば端面と呼ぶことができる。
【0036】
様々な実施形態において、制御ユニットは、発せられたテスト信号が端面のうちの1つに衝突するように、テスト段階中に偏向ユニットを駆動するように構成される。
【0037】
少なくとも1つの実施形態によれば、少なくとも2つの光検出器は、各々、フォトダイオードを、特にAPDを、含む。制御ユニットは、検出器ユニットの所定の検出器感度を設定するために、フォトダイオードを逆方向に動作させるように、且つ、テスト段階においてフォトダイオードを動作させるための逆電圧を制御するように、構成される。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、制御ユニットは、テスト段階の間、各ケースにおいて、同じ制御された逆電圧を用いて少なくとも2つの光検出器のすべてのフォトダイオードを動作させるように、構成される。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、制御ユニットは、与えられたキャリブレーションデータに基づく検出器感度に応じた逆電圧の閉ループ制御のための設定値を決めるように構成される。
【0040】
レーザースキャナーデバイスの更なる実施形態は、改良されたコンセプトに従った方法の様々な構成から直接的に得られ、その逆もまた同様である。特に、改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスは、改良されたコンセプトによる方法を実行するように構成され又はプログラムされてもよく、或いはレーザースキャナーデバイスはそのような方法を実行する。
【0041】
改良されたコンセプトによれば、改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの実施形態を含む動力車両も規定される。
【0042】
また、改良されたコンセプトに従って、命令を有するコンピュータプログラムも規定される。改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスによって命令又はコンピュータプログラムが実行される場合、その命令は、レーザースキャナーデバイスに、改良されたコンセプトによる方法を実行させる。
【0043】
改良されたコンセプトによれば、改良されたコンセプトによるコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も規定される。
【0044】
改良されたコンセプトによるコンピュータプログラム及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、命令を伴うそれぞれのコンピュータプログラムプロダクトと呼ぶことができる。
【0045】
発明の更なる特徴は、特許請求の範囲、図面及び図面の説明から、明らかである。明細書において上述された特徴及び特徴の組み合わせ、及び、図の説明において後述される及び/又は図面のみに示される特徴及び特徴の組み合わせは、各ケースにおいて規定される組み合わせにおいてだけではなく、他の組み合わせにおいても、改良コンセプトに含められることが可能である。したがって、図面において明示的には示されておらず及び/又は説明されていないが、特徴の別々の組み合わせによって説明される実施形態から出現し及び生成することができる改良されたコンセプトのそれらの実施形態も、含まれて開示される。したがって、特に、当初に記載されている請求項のすべての特徴を持つというわけではない実施形態及び特徴の組み合わせも、含まれて開示される。更に、特許請求の範囲の後方参照において記載される特徴の組み合わせを超える又は当該組み合わせとは異なる実施形態及び特徴の組み合わせが、含まれて開示される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図面において:
【
図1】
図1は、改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの例示的な実施形態による動力車両の模式図を示す。
【
図2】
図2は、改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの更なる例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図3】
図3は、改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの更なる例示的な実施形態のトランスミッターユニットの模式図を示す。
【
図4】
図4は、スキャニング段階における改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの更なる例示的な実施形態の一部を模式的に示す。
【
図5】
図5は、テスト段階における改良されたコンセプトによるレーザースキャナーデバイスの更なる例示的な実施形態の模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、改良されたコンセプトによる動力車両1の例示的な実施形態を模式的に示す。動力車両1は、改良されたコンセプトによる例示的な実施形態によるレーザースキャナーデバイス2を含む。レーザースキャナーデバイス2は、動力車両1の周囲にレーザー信号9を発することができ、周囲における物体3によって反射されたレーザー信号の成分9’を検出することができる。レーザースキャナーデバイス2は、検知された反射成分9’に基づいて、レーザースキャナーデバイス2からの物体3の位置及び/又は距離を検出することができる。これは、例えば飛行時間(TOF)測定のコンセプトに基づいて、実施可能である。
【0048】
図2は、レーザースキャナーデバイス2の、例えば
図1からの動力車両1のレーザースキャナーデバイス2の、例示的な実施形態のブロック図を模式的に示す。レーザースキャナーデバイス2は、レーザースキャナー2bと、レーザースキャナー2bに接続され且つ例えば動力車両1の電子制御装置の形態とすることができるコンピューティングユニット2aと、を有する。レーザースキャナー2bは、光透過性ウィンドウ5を有するハウジング4と、ハウジング4内に配置されるレーザー信号9を発するためのトランスミッターユニット6とを有し、前記レーザー信号は光透過性ウィンドウ5を通って発せられる。レーザースキャナー2bは制御ユニット8を含み、当該制御ユニット8はコンピューティングユニット2a及びトランスミッターユニット6に接続され、これはレーザー信号9を発するために後者を駆動するためである。レーザースキャナー2bはまた、特にフォトダイオードとして、例えばAPDsとして、設計される少なくとも2つの光検出器を有する検出器ユニット7を含む。トランスミッターユニット6は、少なくとも1つの光源、特にレーザー光源、例えば少なくとも1つの赤外線レーザーダイオード、を含む。
【0049】
検出器ユニット7は、レーザー信号9の反射成分9’を検知することができ、それに基づいて、少なくとも2つの光検出器の各々が対応する検出器信号を生成することができ、後者を制御ユニット8及び/又はコンピューティングユニット2aに送信することができる。
【0050】
レーザースキャナー2bはまた偏向ユニットを含み、当該偏向ユニットは、例えば、回転軸11を中心に回転可能に取り付けられたミラー10を有することができる。
図2において、回転軸11は、図面の平面に対して垂直である。偏向ユニットも同様に制御ユニット8に接続されており、制御ユニット8は、ミラー10が回転軸11を中心に回転されるように、偏向ユニットを適宜駆動することができる。そのため、ミラー10の回転によって、レーザー信号9の放射角度を変化させることができる。物体3によって反射されたレーザー信号9の反射成分9’の受信経路は、例えば、ミラー10を経由して検出器ユニット7に、特に光検出器のうちの1つの活性面に通じている。そして、その反射成分9’は対応する光検出器によって記録され、それによって、回転軸11を中心にミラー10を回転させることで、各光検出器が、様々な方向から入射するレーザー信号9の反射成分9’を検知できる。ミラー10の瞬間的な位置は、例えば、回転軸11又は対応するシャフトにつながったロータリエンコーダ(図示せず)を介して検出することができる。
【0051】
ミラー10の瞬間的な位置は、例えば全ての時点で知られているので、検知された反射成分9’の時間的な順序によって、点群とも呼ばれる走査点のセットを生成することができる。この場合、各光検出器によって、走査点又は点群のサブセットが生成される。光検出器のうちの1つによって生成される走査点のサブセットは、走査点の位置と呼ぶこともできる。
【0052】
図3は、
図2からのレーザースキャナー2bのトランスミッターユニット6と、レーザー信号9と、対象物3とを模式的に示す。
図3の上側の図は、例えば、側面図、すなわちミラー10の回転軸に垂直な方向に見た図に相当する。
図3の下側の図は、例えば、トランスミッターユニット6の平面図、すなわちミラー10の回転軸と平行な方向に見た図に相当する。
図3のそれらの図から明らかなように、レーザー信号9のそれぞれのビーム拡張は、異なる平面において異なりうる。
【0053】
図4は、再び、
図2のレーザースキャナー2bの検出器ユニット7及びミラー10を模式的に示し、反射成分9’の受信経路が示されている。オプションとして、レーザースキャナー2bは、反射部品9’のための受信経路に配置されたビーム誘導用のレンズ構造体14を有することができる。
【0054】
図4の例は、検出器ユニット7の4つの光検出器7a,7b,7c,7dを描き、当該4つの光検出器7a,7b,7c,7dは、例えば、互いに隣り合って直線的に配置される。例として、トランスミッターユニット6は、2つ以上の光源を有することができ、各光源には、2つ以上の光検出器7a、7b、7c、7dが割り当てられることができる。
【0055】
図4において、ミラー10は、ほぼ又は実質的に直方体のミラー本体を有する。ただし、ミラー本体の側面は必ずしも平面である必要はなく、例えば湾曲することもできる。ミラー10は、例えば、回転軸11と平行に配置された2つの対向する反射面12a,12bを有する。ミラー本体の2つの非反射端面13a、13bは、反射側面12a、12bに対して垂直に、且つ、同様に回転軸11に対して平行に、配置されている。
【0056】
図4では、レーザースキャナー2bが、例えば走査段階中において描かれている。トランスミッターユニット6はレーザー信号9を発し、当該レーザー信号9は、反射面12a、12bのうちの1つに入射し、
図2にも模式的に描かれているように、当該レーザー信号がハウジング4から出て行くことができるように偏向ユニットによってウィンドウ5へと導かれる。反射成分9’は、同様に、反射面12a,12bに入射し、それに応じて検出器ユニット7に向けて偏向される。
【0057】
図5では、テスト段階中のレーザースキャナー2bが描かれている。テスト段階の間、テスト段階中に発せられたテスト信号15が端面13a、13bのうちの1つに入射し、それに応じてウィンドウ5の方向に導かれずに、代わりにハウジング4内で複数回反射又は散乱されるように、ミラー10はトランスミッターユニット6と相対するように位置調整される。それに応じて複数回反射され散乱されるテスト信号15の成分15’は、その後光検出器7a、7b、7c、7dの活性面に入射し、当該光検出器7a、7b、7c、7dは、それに基づいて対応する検出器信号を生成して、当該検出器信号をコンピューティングユニットに送信する。そして、コンピューティングユニット2aは、検出器信号の各々について、エコーパルス幅EPWとも称される対応するパルス幅を特定する。
【0058】
コンピューティングユニット2aは更に、特定された全てのパルス幅の総和を特定し、その総和を指定された基準値と比較し、当該基準値は、例えばレーザースキャナー2bのキャリブレーションの範囲内で決められる。総和が基準値から所定の許容値よりも大きく乖離する場合、光検出器7a、7b、7c、7dのうちの1つの機能性又は光源のうちの1つの機能性が、例えば対応する粒子汚染によって、制限されていることを推測することが可能である。この場合、コンピューティングユニット2aは、例えば、警告やエラーメッセージを出力することができる。
【0059】
特に図に関して、説明したように、改善されたコンセプトは、特にレーザースキャナーの光源又は光検出器の汚染に起因する、レーザースキャナーの機能制限を、温度変動に関してより高い信頼性及び/又はロバスト性で、見つけ出すことを可能にする。この目的のために、パルス幅の特徴総和の不変性が利用される。