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特許7534554通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20240806BHJP
   H04W 84/06 20090101ALI20240806BHJP
   H04W 52/38 20090101ALI20240806BHJP
【FI】
H04W56/00 130
H04W84/06
H04W52/38
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023545007
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 JP2021041641
(87)【国際公開番号】W WO2023032234
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-18
(31)【優先権主張番号】P 2021141330
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】319010088
【氏名又は名称】楽天モバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド アウン
(72)【発明者】
【氏名】シェト パンケージ
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-83024(JP,A)
【文献】特開2017-11402(JP,A)
【文献】特開2016-201635(JP,A)
【文献】特開2014-64219(JP,A)
【文献】特開2011-193494(JP,A)
【文献】特開2000-224141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置される地上基地局によって構成され、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セル内の通信機と時間的に連続するTNデータによって通信可能な地上系ネットワーク、および、飛行する飛行基地局によって構成され、当該飛行基地局が地上に提供する飛行通信セル内の通信機と時間的に連続するNTNデータによって通信可能な非地上系ネットワークを制御する通信制御装置であって、
少なくとも前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域において、前記TNデータおよび前記NTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる信号強度低下部と、
前記飛行基地局および前記飛行通信セルの間の通信遅延を取得する通信遅延取得部と、
前記通信遅延取得部が取得した通信遅延に基づいて、前記TNデータおよび前記NTNデータを同期させる同期部と、
を備える通信制御装置。
【請求項2】
前記信号強度低下部は、少なくとも前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域において、前記TNデータおよび前記NTNデータの少なくともいずれかのデータの一部による信号の送信を禁止する、請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記信号強度低下部は、少なくとも前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域において、前記TNデータの一部の信号強度を低下させる、請求項1または2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記飛行基地局は、前記信号強度低下部が前記TNデータの信号強度を低下させている間の前記NTNデータによって、前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域内の通信機と通信する、請求項3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記信号強度低下部は、データ群に含まれる一部のデータを指定する所定パターンに従ってデータの信号強度を低下させる、請求項1から4のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記飛行基地局の軌道情報を取得する軌道情報取得部を更に備え、
前記通信遅延取得部は、自身の位置情報を測定可能な測位センサを備える通信機に設けられ、当該測位センサが測定した当該通信機の位置情報および前記軌道情報取得部が取得した前記飛行基地局の軌道情報に基づいて、前記飛行基地局および前記飛行通信セル内の当該通信機の間の通信遅延を演算し、
前記同期部は、前記地上基地局が送信する前記TNデータより前記通信遅延取得部が演算した通信遅延だけ早く、前記飛行基地局に前記NTNデータを送信させる、
請求項1から5のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項7】
前記飛行基地局の軌道情報を取得する軌道情報取得部と、
前記飛行通信セルの代表位置情報を取得する飛行通信セル位置取得部と、
を更に備え、
前記通信遅延取得部は、前記飛行通信セル位置取得部が取得した前記飛行通信セルの代表位置情報および前記軌道情報取得部が取得した前記飛行基地局の軌道情報に基づいて、前記飛行基地局および前記飛行通信セルの間の通信遅延を演算し、
前記同期部は、前記地上基地局が送信する前記TNデータより前記通信遅延取得部が演算した通信遅延だけ早く、前記飛行基地局に前記NTNデータを送信させる、
請求項1から6のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項8】
前記同期部は前記地上基地局に設けられ、前記飛行基地局が前記NTNデータの送信を開始した後、前記通信遅延取得部が取得した通信遅延だけ前記TNデータの送信の開始を遅延させる、請求項1から7のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項9】
前記飛行基地局および前記地上基地局の両方と通信可能なゲートウェイが地上に設置され、
前記通信遅延取得部は、前記ゲートウェイが前記飛行基地局を介して行う前記飛行通信セルとの通信の遅延を取得する、
請求項1から8のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項10】
前記通信遅延取得部は、前記ゲートウェイに接続されている前記地上基地局に設けられる、請求項9に記載の通信制御装置。
【請求項11】
前記飛行基地局の軌道情報を取得する軌道情報取得部を更に備え、
前記通信遅延取得部は、前記軌道情報取得部が取得した前記飛行基地局の軌道情報に基づいて、前記ゲートウェイおよび前記飛行基地局の間の通信遅延を演算する、
請求項10に記載の通信制御装置。
【請求項12】
地上に設置される地上基地局によって構成され、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セル内の通信機と時間的に連続するTNデータによって通信可能な地上系ネットワーク、および、飛行する飛行基地局によって構成され、当該飛行基地局が地上に提供する飛行通信セル内の通信機と時間的に連続するNTNデータによって通信可能な非地上系ネットワークを制御する通信制御方法であって、
少なくとも前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域において、前記TNデータおよび前記NTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる信号強度低下ステップと、
前記飛行基地局および前記飛行通信セルの間の通信遅延を取得する通信遅延取得ステップと、
前記通信遅延取得ステップで取得した通信遅延に基づいて、前記TNデータおよび前記NTNデータを同期させる同期ステップと、
を備える通信制御方法。
【請求項13】
地上に設置される地上基地局によって構成され、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セル内の通信機と時間的に連続するTNデータによって通信可能な地上系ネットワーク、および、飛行する飛行基地局によって構成され、当該飛行基地局が地上に提供する飛行通信セル内の通信機と時間的に連続するNTNデータによって通信可能な非地上系ネットワークを制御する通信制御プログラムであって、
少なくとも前記地上通信セルおよび前記飛行通信セルの重複領域において、前記TNデータおよび前記NTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる信号強度低下ステップと、
前記飛行基地局および前記飛行通信セルの間の通信遅延を取得する通信遅延取得ステップと、
前記通信遅延取得ステップで取得した通信遅延に基づいて、前記TNデータおよび前記NTNデータを同期させる同期ステップと、
をコンピュータに実行させる通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやIoT(Internet of Things)デバイスに代表される無線通信デバイスの数、種類、用途は増加の一途を辿っており、無線通信規格の拡張や改善が続けられている。例えば「5G」として知られる第5世代移動通信システムの商用サービスは2018年に開始したが、現在も3GPP(Third Generation Partnership Project)で規格策定が進められている。また、5Gに続く次世代の無線通信規格としての「6G」または第6世代移動通信システムの規格策定に向けた取り組みも始まっている。
【0003】
スマートフォンや携帯電話等の移動体または携帯通信機器(以下では通信機と総称する)向けの移動通信(以下ではモバイル通信ともいう)ネットワークは、地上に設置される基地局(以下では地上基地局ともいう)が提供する通信セル(以下では地上通信セルともいう)によって構築されるのが一般的であった。しかし、地域によっては様々な理由で十分な数の地上基地局を設置することが難しい場合もあり、モバイル通信の品質が相対的に低くなってしまうという問題があった。
【0004】
このような地域によるモバイル通信の品質格差の問題や、地域によっては通信機がモバイル通信できないといういわゆる「圏外」の問題を解決するために、非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の検討が進められている。NTNでは、宇宙空間や成層圏等の大気圏を飛行する通信衛星や無人航空機が基地局(以下では飛行基地局ともいい、特に通信衛星を衛星基地局ともいう)となって、地上に通信セル(以下では飛行通信セルともいい、特に通信衛星が提供する通信セルを衛星通信セルともいう)を提供する。飛行通信セル内にいる通信機は直接的または他の通信機器を介して間接的に飛行基地局と通信する。地上通信セルが不足している地域に飛行通信セルを提供することで、当該地域におけるモバイル通信の品質を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-278886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地上基地局および飛行基地局が地上に提供する地上通信セルおよび飛行通信セルは互いに重複することがある。このような地上通信セルおよび飛行通信セルが重複または近接する周波数帯を使用する場合、これらの通信セルの重複領域において地上基地局からの地上通信電波および飛行基地局からの飛行通信電波が互いに干渉すると、当該重複領域内の通信機は地上基地局および飛行基地局の一方または両方と通信できなくなってしまう可能性がある。また、通信衛星や無人航空機等の飛行基地局は、地上に設置される地上基地局に比べて通信機との距離が大きいため、有意な通信遅延または伝搬遅延を伴う。このように、地上系ネットワーク(TN:Terrestrial Network)と非地上系ネットワークが併存する通信システムでは、TNおよびNTNの間の干渉および遅延を考慮する必要があることを本発明者は認識した。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、TNおよびNTNの間の干渉および遅延を考慮した通信制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信制御装置は、地上に設置される地上基地局によって構成され、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セル内の通信機と時間的に連続するTNデータによって通信可能な地上系ネットワーク、および、飛行する飛行基地局によって構成され、当該飛行基地局が地上に提供する飛行通信セル内の通信機と時間的に連続するNTNデータによって通信可能な非地上系ネットワークを制御する通信制御装置であって、少なくとも地上通信セルおよび飛行通信セルの重複領域において、TNデータおよびNTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる信号強度低下部と、飛行基地局および飛行通信セルの間の通信遅延を取得する通信遅延取得部と、通信遅延取得部が取得した通信遅延に基づいて、TNデータおよびNTNデータを同期させる同期部と、を備える。
【0009】
この態様によれば、信号強度低下部がTNまたはNTNのデータの一部の信号強度を低下させることで、地上通信セルおよび飛行通信セルの重複領域におけるTN通信電波およびNTN通信電波の干渉を低減できる。また、同期部が飛行基地局および飛行通信セルの間の通信遅延に基づいてTNデータとNTNデータを同期させることで、信号強度低下部が所望のタイミングでTN通信電波およびNTN通信電波の干渉を的確に低減できる。
【0010】
本発明の別の態様は、通信制御方法である。この方法は、地上に設置される地上基地局によって構成され、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セル内の通信機と時間的に連続するTNデータによって通信可能な地上系ネットワーク、および、飛行する飛行基地局によって構成され、当該飛行基地局が地上に提供する飛行通信セル内の通信機と時間的に連続するNTNデータによって通信可能な非地上系ネットワークを制御する通信制御方法であって、少なくとも地上通信セルおよび飛行通信セルの重複領域において、TNデータおよびNTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる信号強度低下ステップと、飛行基地局および飛行通信セルの間の通信遅延を取得する通信遅延取得ステップと、通信遅延取得ステップで取得した通信遅延に基づいて、TNデータおよびNTNデータを同期させる同期ステップと、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、TNおよびNTNの間の干渉および遅延を考慮した通信制御装置等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】通信制御装置が適用される無線通信システムの概要を模式的に示す。
図2】無線通信システムを通信衛星を中心に模式化して示す。
図3】通信制御装置の概念を示す機能ブロック図である。
図4】TNフレームおよびNTNフレームを模式的に示す。
図5】TN側の5G基地局がNTN側の他の5G基地局に対してABS関連情報を送信する例を示す。
図6】TN側とNTN側で共有されるABS関連情報の例を示す。
図7】時間的に先にゲートウェイから送信されるNTNフレームと、時間的に後に5G基地局から送信されるTNフレームを示す。
図8】通信制御装置の第1の実施例を示す。
図9】通信制御装置の第1の実施例を示す。
図10】通信制御装置の第2の実施例を示す。
図11】通信制御装置の第2の実施例を示す。
図12】通信制御装置の第3の実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る通信制御装置が適用される無線通信システム1の概要を模式的に示す。無線通信システム1は、無線アクセス技術(RAT: Radio Access Technology)としてNR(New Radio)または5G NR(Fifth Generation New Radio)を使用し、コアネットワーク(CN:Core Network)として5GC(Fifth Generation Core)を使用する第5世代移動通信システム(5G)に準拠する5G無線通信システム11と、無線アクセス技術としてLTE(Long Term Evolution)やLTE-Advancedを使用し、コアネットワークとしてEPC(Evolved Packet Core)を使用する第4世代移動通信システム(4G)に準拠する4G無線通信システム12と、通信衛星131を介した衛星通信を担う衛星通信システム13を含む。図示は省略するが、無線通信システム1は、4Gより前の世代の無線通信システムを含んでもよいし、5Gより後の世代(6G等)の無線通信システムを含んでもよいし、Wi-Fi(登録商標)等の世代と関係づけられない任意の無線通信システムを含んでもよい。
【0015】
5G無線通信システム11は、地上に設置されてUE(User Equipment)とも呼ばれるスマートフォン等の通信機2A、2B、2C、2D(以下、通信機2と総称することがある)と5G NRによって通信可能な複数の5G基地局111A、111B、111C(以下、5G基地局111と総称することがある)を含む。5Gにおける基地局111はgNodeB(gNB)とも呼ばれる。各5G基地局111A、111B、111Cの通信可能範囲またはサポート範囲はセルと呼ばれ、それぞれ112A、112B、112C(以下、5Gセル112またはセル112と総称することがある)として図示される。
【0016】
各5G基地局111の5Gセル112の大きさは任意であるが、典型的には半径数メートルから数十キロメートルである。確立した定義はないものの、半径数メートルから十メートルのセルはフェムトセルと呼ばれ、半径十メートルから数十メートルのセルはピコセルと呼ばれ、半径数十メートルから数百メートルのセルはマイクロセルと呼ばれ、半径数100メートルを超えるセルはマクロセルと呼ばれることがある。5Gではミリ波等の高い周波数の電波が使用されることも多く、直進性の高さ故に電波が障害物に遮られて通信可能距離が短くなる。このため、5Gでは4G以前の世代に比べて小さいセルが多用される傾向がある。
【0017】
通信機2は、複数の5Gセル112A、112B、112Cの少なくとも一つの内部にあれば、5G通信を行える。図示の例では、5Gセル112Aおよび112B内にある通信機2Bは、5G基地局111Aおよび111Bのいずれとも5G NRによって通信可能である。また、5Gセル112C内にある通信機2Cは、5G基地局111Cと5G NRによって通信可能である。通信機2Aおよび2Dは、全ての5Gセル112A、112B、112Cの外にあるため、5G NRによる通信ができない状態にある。各通信機2と各5G基地局111の間の5G NRによる5G通信は、コアネットワークである5GCによって管理される。例えば、5GCは、各5G基地局111との間のデータの授受、EPC、衛星通信システム13、インターネット等の外部ネットワークとの間のデータの授受、通信機2の移動管理等を行う。
【0018】
4G無線通信システム12は、地上に設置されて通信機2とLTEやLTE-Advancedによって通信可能な複数の4G基地局121(図1では一つのみを示す)を含む。4Gにおける基地局121はeNodeB(eNB)とも呼ばれる。各5G基地局111と同様に、各4G基地局121の通信可能範囲またはサポート範囲もセルと呼ばれ122として図示される。
【0019】
通信機2は4Gセル122の内部にあれば4G通信を行える。図示の例では、4Gセル122内にある通信機2Aおよび2Bは、4G基地局121とLTEやLTE-Advancedによって通信可能である。通信機2Cおよび2Dは、4Gセル122の外にあるため、LTEやLTE-Advancedによる通信ができない状態にある。各通信機2と各4G基地局121の間のLTEやLTE-Advancedによる4G通信は、コアネットワークであるEPCによって管理される。例えば、EPCは、各4G基地局121との間のデータの授受、5GC、衛星通信システム13、インターネット等の外部ネットワークとの間のデータの授受、通信機2の移動管理等を行う。
【0020】
各通信機2A、2B、2C、2Dに着目すると、図示の例では、通信機2Aは4G基地局121との4G通信が可能な状態にあり、通信機2Bは5G基地局111A、111Bとの5G通信および4G基地局121との4G通信が可能な状態にあり、通信機2Cは5G基地局111Cとの5G通信が可能な状態にある。通信機2Bのように通信可能な基地局(111A、111B、121)が複数ある場合は、コアネットワークである5GCおよび/またはEPCによる管理の下、通信品質等の観点で最適と判断された一つの基地局が選択されて通信機2Bとの通信を行う。また、通信機2Dはいずれの5G基地局111および4G基地局121とも通信が可能な状態にないため、次に説明する衛星通信システム13による通信を行う。
【0021】
衛星通信システム13は、地表から500km~700km程度の高さの低軌道の宇宙空間を飛行する低軌道衛星としての通信衛星131を飛行基地局として用いる無線通信システムである。5G基地局111および4G基地局121と同様に、通信衛星131の通信可能範囲またはサポート範囲もセルと呼ばれ132として図示される。このように、飛行基地局としての通信衛星131は、飛行通信セルとしての衛星通信セル132を地上に提供する。地上の通信機2は衛星通信セル132の内部にあれば衛星通信を行える。5G無線通信システム11における5G基地局111および4G無線通信システム12における4G基地局121と同様に、衛星通信システム13における基地局としての通信衛星131は、衛星通信セル132内の通信機2と直接的にまたは航空機等を介して間接的に無線通信可能である。通信衛星131が衛星通信セル132内の通信機2との無線通信に使用する無線アクセス技術は、5G基地局111と同じ5G NRでもよいし、4G基地局121と同じLTEやLTE-Advancedでもよいし、通信機2が使用可能な任意の他の無線アクセス技術でもよい。このため、通信機2には衛星通信のための特別な機能や部品を設ける必要はない。
【0022】
衛星通信システム13は、地上に設置されて通信衛星131と通信可能な地上局としてのゲートウェイ133を備える。ゲートウェイ133は、通信衛星131と通信するための衛星アンテナを備え、地上系ネットワーク(TN:Terrestrial Network)を構成する地上基地局としての5G基地局111および4G基地局121と接続されている。このように、ゲートウェイ133は、通信衛星131によって構成されるNTNと地上基地局111、121によって構成されるTNを相互通信可能に接続する。通信衛星131が5G NRによって衛星通信セル132内の通信機2と5G通信する場合は、ゲートウェイ133およびTNにおける5G基地局111(または5G無線アクセスネットワーク)を介して接続される5GCをコアネットワークとして利用し、通信衛星131がLTEやLTE-Advancedによって衛星通信セル132内の通信機2と4G通信する場合は、ゲートウェイ133およびTNにおける4G基地局121(または4G無線アクセスネットワーク)を介して接続されるEPCをコアネットワークとして利用する。このように、ゲートウェイ133を介して5G通信、4G通信、衛星通信等の異なる無線通信システムの間で適切な連携が取られる。
【0023】
通信衛星131による衛星通信は、主に、5G基地局111や4G基地局121等の地上基地局が設けられないまたは少ない地域をカバーするために利用される。図示の例では、全ての地上基地局の通信セル外にいる通信機2Dが通信衛星131と通信する。一方、いずれかの地上基地局と良好に通信できる状態にある通信機2A、2B、2Cも、衛星通信セル132内にいるため通信衛星131と通信可能ではあるが、原則として衛星基地局としての通信衛星131ではなく地上基地局と通信を行うことで、通信衛星131の限られた通信リソース(電力を含む)が通信機2D等のために節約される。通信衛星131は、ビームフォーミングによって通信電波を衛星通信セル132内の通信機2Dに向けることで、通信機2Dとの通信品質を向上させる。
【0024】
衛星基地局としての通信衛星131の衛星通信セル132の大きさは、通信衛星131が発するビームの本数に応じて任意に設定することができ、例えば、最大2,800本のビームを組み合わせることで直径約24kmの衛星通信セル132を形成できる。図示されるように、衛星通信セル132は、典型的には5Gセル112や4Gセル122等の地上通信セルより大きく、その内部に一または複数の5Gセル112および/または4Gセル122を含みうる。なお、以上では飛行する飛行基地局として、地表から500km~700km程度の高さの低軌道の宇宙空間を飛行する通信衛星131を例示したが、より高い静止軌道等の高軌道の宇宙空間を飛行する通信衛星や、より低い(例えば地表から20km程度)成層圏等の大気圏を飛行する無人または有人の航空機を飛行基地局として、通信衛星131に加えてまたは代えて使用してもよい。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る無線通信システム1は、地上に設置される地上基地局111、121が地上に提供する地上通信セル112、122内の通信機2と通信可能な地上系ネットワーク(TN)11、12、および、飛行する飛行基地局131が地上に提供する飛行通信セル132内の通信機2と通信可能な非地上系ネットワーク(NTN)13を含む。そして、本実施形態に係る通信制御装置は、TNおよびNTNを制御する。
【0026】
図2は、図1と同様の無線通信システム1を、通信衛星131を中心に模式化して示す。前述のように、通信衛星131は最大2,800本のビームを組み合わせることで、一または複数の衛星通信セル132を地上に形成できる。衛星通信セル132内にいる通信機2(2C、2D等)は、通信衛星131およびゲートウェイ133を介して、図示および/または不図示のTN内にいる通信機2(2B、2C等)と5G通信および/または4G通信を行い、および/または、コアネットワークとしての5GCおよび/またはEPCを介して任意の他の通信機と通信を行う。NTNとTNを相互通信可能に接続するゲートウェイ133は地上に設置され、飛行基地局としての通信衛星131、および、地上基地局としての5G基地局111および/または4G基地局121(不図示)の両方と通信可能に構成される。
【0027】
図2におけるゲートウェイ133と5G基地局111の間の接続「Xn」は、ゲートウェイ133が5G基地局111に直接的に接続されていることを示してもよいし、ゲートウェイ133がCNを介して他の無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)に含まれる5G基地局111に間接的に接続されていることを示してもよい。つまり、ゲートウェイ133は、CNを介さずに直接的に、または、CNを介して間接的に、5G無線通信システム11(および/または4G無線通信システム12)における任意の5G基地局111(および/または4G基地局121)と通信可能に構成される。
【0028】
図2の例では、通信衛星131が地上に形成する一または複数の衛星通信セル132のうち一つの衛星通信セル132のみが示されており、それに包含される一つの5Gセル112が一つの5G基地局111によって形成されている。この例では5Gセル112全体が、地上通信セルとしての5Gセル112および飛行通信セルとしての衛星通信セル132の重複領域になっている。この重複領域では、5G基地局111(図2では「Terrestrial gNB」または「TN gNB」と示される)からのTN通信電波と通信衛星131(図2では「Satellite gNB」または「NTN gNB」と示される)からのNTN通信電波が併存している。
【0029】
重複領域としての5Gセル112のうち5G基地局111に近い中央領域A1では、5G基地局111からのTN通信電波の信号強度が通信衛星131からのNTN通信電波の信号強度より有意に大きいため、当該中央領域A1内の通信機2Bは5G基地局111と安定した5G通信を行える。一方、重複領域としての5Gセル112のうち5G基地局111から遠い周縁領域A2では、5G基地局111からのTN通信電波の信号強度と通信衛星131からのNTN通信電波の信号強度に有意な差がないため、TN通信電波およびNTN通信電波が互いに干渉してしまう。特にTN通信電波およびNTN通信電波が重複または近接する周波数帯を使用する場合に干渉は大きくなり、当該周縁領域A2内の通信機2Cは5G基地局111および通信衛星131のいずれとも安定した5G通信を行えない。なお、衛星通信セル132のうち5Gセル112と重複していない非重複領域A3では、通信衛星131からのNTN通信電波の信号強度が5G基地局111からのTN通信電波の信号強度より有意に大きいため、当該非重複領域A3内の通信機2Dは通信衛星131と安定した5G通信を行える。
【0030】
以上のように、TNおよびNTNが併存する無線通信システム1では、両ネットワークが干渉する周縁領域A2または干渉領域A2内の通信機2Cが安定して通信を行うための手段を講じる必要がある。図3は、干渉領域A2内の安定した通信を実現する通信制御装置3の概念を示す機能ブロック図である。通信制御装置3は、信号強度低下部31と、軌道情報取得部32と、通信遅延取得部33と、同期部34を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。特に本実施形態では、通信制御装置3の機能ブロックの一部または全部は、通信機2(2C等)、通信衛星131、ゲートウェイ133、ゲートウェイ133に直接的または間接的に接続されている地上基地局111、121に設けられるコンピュータやプロセッサで実現してもよい。
【0031】
信号強度低下部31は、少なくとも地上通信セル112および衛星通信セル132の重複領域または干渉領域A2において、TNを構成する地上基地局111が送信するTNデータおよびNTNを構成するゲートウェイ133および/または通信衛星131が送信するNTNデータの少なくともいずれかのデータの一部の信号強度を低下させる。図4は、5G基地局111が生成して送信するTNフレーム、および、ゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121が生成してゲートウェイ133が送信するNTNフレームを模式的に示す。TNフレーム(図4では「TN gNB Frame」と示される)は時間的に連続するTNデータまたはTNサブフレームによって構成され、NTNフレーム(図4では「NTN GW Frame」と示される)は時間的に連続するNTNデータまたはNTNサブフレームによって構成される。
【0032】
5Gでは、10msの各フレームが10個の1msのサブフレームによって構成され、各サブフレームが一または複数個の可変長(1ms, 0.5ms, 0.25ms等)のスロットによって構成され、各スロットが14個の可変長のOFDMシンボルによって構成される。本実施形態では、信号強度低下部31の処理単位としてのTNデータまたはNTNデータが1msのサブフレームに対応する例を説明するが、信号強度低下部31はフレーム(10ms)、スロット、シンボル等を単位としてTNデータまたはNTNデータを処理してもよい。また、5G以外の無線通信規格(6G等)において5Gと異なる信号構成が採用された場合、信号強度低下部31は当該信号構成の時間領域における任意の信号単位でTNデータまたはNTNデータを処理してもよい。
【0033】
図4の例では、信号強度低下部31は、TNフレームに含まれる10個のTNサブフレームのうち一部のTNサブフレームの信号強度を低下させる。具体的には、各TNフレームの3番目のTNサブフレームTN-3、各TNフレームの6番目のTNサブフレームTN-6、各TNフレームの9番目のTNサブフレームTN-9の信号強度が信号強度低下部31によって低下される。このように、信号強度低下部31は、TNデータ群としてのTNフレームに含まれる一部(3,6,9番目)のサブフレームを指定する所定パターンに従ってTNデータの信号強度を低下させる。
【0034】
信号強度低下部31は処理対象のTNサブフレームTN-3,6,9の信号強度を零に低下させてもよく、この場合は処理対象のTNサブフレームTN-3,6,9によるTN信号またはTNデータの送信が禁止される。具体的に5Gでは、信号強度低下部31の処理対象のTNサブフレームTN-3,6,9において、実データを伝送するPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)に加え、その制御データを伝送するPDCCH(Physical Downlink Control Channel)でもデータ伝送が行われない。なお、信号強度低下部31の処理対象のTNサブフレームTN-3,6,9においても、CSI-RS(チャネル状態情報基準信号)やSSB(同期信号ブロック)等のTNにおける通信制御に関する最低限の制御データは通常通り送信するのが好ましい。図2に関して前述したように、5G基地局111から送信されるTNフレームは中央領域A1内の通信機2Bとの通信に利用される。図4の例では、信号強度低下部31の処理対象のTNサブフレームTN-3,6,9には実データが含まれていないため、通信機2Bは信号強度低下部31の処理対象外の7個のTNサブフレームを利用して5G基地局111と通信する。
【0035】
以上のような信号強度低下部31の処理は、ABS(Almost Blank Subframe)と呼ばれることもある。以降の実施形態では信号強度低下部31がTNフレームを対象にABS処理を実行する例を説明するが、信号強度低下部31はNTNフレームを対象にABS処理を実行してもよく、NTNフレームに含まれる10個のNTNサブフレームのうち一部のNTNサブフレームの信号強度を低下させてもよい。
【0036】
ABS処理対象外のNTNフレームでは、全10個のNTNサブフレームが実データ(NTNデータ)の通信に利用可能である。図2に関して前述したように、ゲートウェイ133および/または通信衛星131から送信されるNTNフレームは非重複領域A3内の通信機2Dとの通信に利用される。図4の例では更に、NTNフレームが干渉領域A2内の通信機2Cとの通信にも利用される。具体的には、10個のNTNサブフレームのうち、信号強度低下部31によるABS処理対象の3個のTNサブフレームTN-3,6,9(図4では「TN ABS Subframes」と示される)と同じタイミングの3個のNTNサブフレームNTN-3,6,9(図4では「ABS Co-Timed NTN Subframes」と示される)が干渉領域A2内の通信機2Cとの通信に利用され、信号強度低下部31によるABS処理対象外の7個のTNサブフレーム(図4では「TN Data」と示される)と同じタイミングの7個のNTNサブフレーム(図4では「NTN Data」と示される)が非重複領域A3内の通信機2Dとの通信に利用される。
【0037】
干渉領域A2では5G基地局111からのTN通信電波および通信衛星131からのNTN通信電波が干渉するが、ABS処理対象期間では信号強度低下部31によって5G基地局111からのTN通信電波が弱められているため、干渉領域A2内の通信機2Cは通信衛星131からのNTN通信電波を正常に受信できる。このように、ゲートウェイ133および/または通信衛星131は、信号強度低下部31がTNデータの信号強度を低下させている間のNTNデータによって、地上通信セル112および衛星通信セル132の干渉領域A2内の通信機2Cと通信する。一方、非重複領域A3では通信衛星131からのNTN通信電波の信号強度が5G基地局111からのTN通信電波の信号強度より有意に大きいため、ABS処理対象期間外であっても非重複領域A3内の通信機2Dは通信衛星131からのNTN通信電波を正常に受信できる。このように、10個のNTNサブフレームのうち、ABS処理対象期間のNTNサブフレームNTN-3,6,9は干渉領域A2内の通信機2Cに優先的に割り当てられ、残余のNTNサブフレームが非重複領域A3内の通信機2Dに割り当てられる。
【0038】
図4のABS処理は、後述する軌道情報取得部32が取得する通信衛星131の軌道情報に応じて実行される。例えば、軌道情報取得部32が取得する通信衛星131の軌道情報に基づいて、図3に示されるように、通信衛星131が地上に提供する衛星通信セル132と地上基地局111が地上に提供する地上通信セル112に重複領域(A1+A2)が存在し、特にNTN通信電波とTN通信電波の干渉が大きい干渉領域A2が存在することを通信制御装置3が認識し、信号強度低下部31によるABS処理を開始する。TN側に設けられる信号強度低下部31によってABS処理が開始される旨は、図2に関して説明した地上基地局111およびゲートウェイ133の間(すなわちTNおよびNTNの間)の地上通信経路「Xn」を通じてNTN側に通知される。なお、軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報はABS処理の実行主体である5G基地局111(信号強度低下部31)にも共有される。ABS処理の開始指令を受けた信号強度低下部31は、図4に示したような所定のABSパターン(TNフレームの3,6,9番目のサブフレームTN-3,6,9をABSとして指定するもの)を、地上通信経路「Xn」を通じてゲートウェイ133および/またはゲートウェイ133に接続されている他の地上基地局111、121に共有する。
【0039】
図5は、信号強度低下部31が設けられるTN側の5G基地局111「NG-RAN node2」が、ゲートウェイ133に接続されているNTN側の他の5G基地局111′「NG-RAN node1」に対して、地上通信経路「Xn」を通じて送信する「RESOURCE STATUS UPDATE」に、ABS関連情報(ABS IE)を含めて送信する例を示す。図6は、このように地上通信経路「Xn」を通じてTN側とNTN側で共有されるABS関連情報の例を示す。「ABS Pattern Info」はABSパターンを示す。図示の例の「ABS Pattern Info」は40ビットのデータであり、各ビットが時間的に連続する40個の各TNサブフレームに対応する。10個のTNサブフレームによって1個のTNフレームが構成される図4の例では、時間的に連続する4個のTNフレームに含まれる40個の各TNサブフレームを個別にABS(信号強度低下部31によって信号強度が低下されるTNサブフレーム)として指定できる。具体的には、ビットが「1」のTNサブフレームがABSとなり、ビットが「0」のTNサブフレームが非ABS(通常のTNデータが伝送されるTNサブフレーム)となる。「ABS Inactive」はABS処理が行われていないことを示す。例えば、信号強度低下部31がABS処理を開始する前は「ABS Inactive」が有効となっており、信号強度低下部31がABS処理を開始した後は「ABS Inactive」が無効となっている。
【0040】
図4のABS処理を正常に実行するためには、5G基地局111が送信するTNフレームとゲートウェイ133および/または通信衛星131が送信するNTNフレームが互いに同期している必要がある。ここで、ゲートウェイ133で生成されるNTNフレームは、通信衛星131を経由して衛星通信セル132内の通信機2C、2Dに伝送されるため、大きな通信遅延、伝送遅延、伝搬遅延等を伴う。そこで、本実施形態に係る通信制御装置3では、以下で説明する軌道情報取得部32、通信遅延取得部33、同期部34等によって、NTNフレームの通信遅延を認識してTNフレームおよびNTNフレームを同期させる。
【0041】
軌道情報取得部32は、飛行基地局としての通信衛星131の軌道情報または位置情報を取得する。通信遅延取得部33は、軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報、NTNフレームの送信元のゲートウェイ133の位置情報、NTNフレームの送信先の衛星通信セル132の位置情報および/または当該衛星通信セル132内の通信機2の位置情報に基づいて、ゲートウェイ133が通信衛星131を介して行う衛星通信セル132とのNTNフレームの通信遅延を取得または演算する。ここで、NTNを構成する通信衛星131およびゲートウェイ133は、それぞれ再送信型(transparent)と再生成型(regenerative)に大別される。
【0042】
再送信型のゲートウェイ133はRANやCNから受信した信号を通信衛星131に対して再送信する中継機能のみを担い、再送信型の通信衛星131はゲートウェイ133から受信した信号を衛星通信セル132に対して再送信する中継機能のみを担う(逆の通信経路でも同様)。このため、再送信型の通信衛星131およびゲートウェイ133は、軌道情報取得部32や通信遅延取得部33のような情報処理機能を設けるには適していない。そこで、NTNフレームの送信側に情報処理機能を設ける場合は、ゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121に軌道情報取得部32や通信遅延取得部33を設けるのが好ましい。また、NTNフレームの受信側に情報処理機能を設ける場合は、衛星通信セル132内の通信機2C、2Dに軌道情報取得部32や通信遅延取得部33を設けるのが好ましい。
【0043】
一方、再生成型の通信衛星131およびゲートウェイ133には、情報処理機能を設けることができるため、軌道情報取得部32や通信遅延取得部33を設けてもよい。なお、通信衛星131が再生成型の場合、衛星通信セル132にダウンリンク通信されるNTNフレームは実質的に通信衛星131で生成されるため、TNフレームおよびNTNフレームの同期において考慮すべきNTNの通信遅延は、通信衛星131および衛星通信セル132の間の通信遅延のみとなる(ゲートウェイ133および通信衛星131の間の通信遅延は考慮しなくてよい)。この場合の通信遅延取得部33は、通信衛星131および衛星通信セル132の間の通信遅延を取得する。
【0044】
同期部34は、通信遅延取得部33が取得したNTNの通信遅延に基づいて、5G基地局111が送信するTNフレームまたはTNデータ、および、ゲートウェイ133および/または通信衛星131が送信するNTNフレームまたはNTNデータを同期させる。具体例については後述するが、NTN側(通信衛星131、ゲートウェイ133、ゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121等)に同期部34を設ける場合、同期部34は、5G基地局111が送信するTNフレームより通信遅延取得部33が演算した通信遅延だけ早く、ゲートウェイ133および/または通信衛星131にNTNフレームを送信させる。また、TN側(地上基地局111、121、通信機2等)に同期部34を設ける場合、同期部34は、ゲートウェイ133および/または通信衛星131がNTNフレームの送信を開始した後、通信遅延取得部33が取得した通信遅延だけTNフレームの送信の開始を遅延させる。図7に模式的に示すように、いずれの場合でも、時間的に先にゲートウェイ133から送信されるNTNフレーム「NTN GW Frame」と、時間的に後に5G基地局111から送信されるTNフレーム「TN gNB Frame」の間には、通信遅延取得部33が取得した通信遅延に相当するラウンドトリップタイム(RTT)遅延TAが設定される。
【0045】
以上のように、通信制御装置3の各機能ブロック31~34は、NTN側(通信衛星131、ゲートウェイ133、ゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121等)とTN側(地上基地局111、121、通信機2等)に分散して実現されうる。このような場合、図2に関して説明したゲートウェイ133および地上基地局111、121の間(すなわちNTNおよびTNの間)の地上通信経路「Xn」を通じて、各機能ブロック31~34間で必要な情報が適時に共有されるため、通信制御装置3の各部の協調動作が実現される。なお、軌道情報取得部32および通信遅延取得部33は関連性が高い処理を担うため、NTN側およびTN側のいずれかの側にまとめて設けられるのが好ましい。
【0046】
続いて、通信制御装置3による通信制御の複数の実施例を具体的に示す。
【0047】
図8および図9に示される通信制御装置3の第1の実施例では、干渉領域A2内の通信機2Cが自身の位置情報を測定可能なGPSやGNSS等の衛星測位システム等に基づく測位センサを備える。この場合、軌道情報取得部32および通信遅延取得部33は通信機2Cで実現される。通信遅延取得部33として機能する通信機2Cは、自身の測位センサが測定した自身の位置情報および軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報に基づいて、自身(通信機2C)および通信衛星131の間の通信遅延を演算する。なお、通信機2Cは、地上通信経路「Xn」および5G基地局111を介して、ゲートウェイ133の位置情報を取得してもよく、軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報と併せて、ゲートウェイ133および通信衛星131の間の通信遅延を演算してもよい。ゲートウェイ133および通信衛星131の間の通信遅延は、5G基地局111、通信衛星131、ゲートウェイ133、ゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121等で演算されてもよい。
【0048】
図8に示されるように、通信遅延取得部33として機能する通信機2C「UE」は、ゲートウェイ133に接続されているNTN側の地上基地局「gNB」との間で、公知のRACHプロセスまたはRACH手続に従うメッセージ(Msg 1-4)の交換を行うことで、通信衛星131を介したゲートウェイ133および通信機2Cの間の正確な通信遅延を取得できる。なお、本図では通信遅延が「TA」(Timing Advance)と表記されている。第1ステップでは、通信機2Cが第1メッセージ「Msg 1」を送信する際に、自身の測位センサが測定した自身の位置情報および軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報に基づいて通信遅延「TA」を推定して第1メッセージ「Msg 1」に適用する。第2ステップでは、地上基地局「gNB」から第2メッセージ「Msg 2」を受信した通信機2Cが、当該第2メッセージ「Msg 2」に基づいて通信遅延「TA」の補正を適用する。第3ステップでは、通信機2Cが第3メッセージ「Msg 3」をスケジューリングする。第4ステップでは、地上基地局「gNB」が設けられるNTN側で通信機2Cに特有の通信遅延「TA」が得られる。
【0049】
図9は、図8のRACHプロセスを通じて通信遅延取得部33が取得したNTNの通信遅延TAに基づく同期部34の同期処理を模式的に示す。同期部34は、5G基地局111が送信するTNフレーム「TN gNB Frame」より、通信遅延取得部33が取得した通信遅延TAだけ早く、ゲートウェイ133にNTNフレーム「NTN GW Frame」を送信させる。この結果、干渉領域A2内の通信機2Cが受信するTNフレームおよびNTNフレームが互いに同期する。従って、図4に関して前述したように、通信機2Cに割り当てられたABS処理対象期間のNTNサブフレーム(NTN-3等)を通信機2Cが受信している間、対応するTNサブフレーム(TN-3等)がABSとなっているため、通信機2Cは自身に割り当てられたNTNサブフレームを正常に受信できる。
【0050】
図10および図11に示される通信制御装置3の第2の実施例は、衛星通信セル132内の通信機2が測位センサを備えない場合に好適である。通信機2が測位センサを備える第1の実施例では、軌道情報取得部32および通信遅延取得部33の全部または一部が通信機2で実現されたが、通信機2が測位センサを備えない第2の実施例では、軌道情報取得部32および通信遅延取得部33の全部または一部がNTN側、具体的にはゲートウェイ133に接続されている地上基地局111、121で実現される。また、通信機2が測位センサを備える第1の実施例では、NTNの通信遅延を演算する際に通信機2の位置情報が利用されたが、通信機2が測位センサを備えない第2の実施例では、飛行通信セル位置取得部としての衛星通信セル位置取得部35が取得する衛星通信セル132の代表位置情報を利用してNTNの通信遅延を演算する。衛星通信セル132の代表位置情報は、典型的には図10に示されるように衛星通信セル132の中心Oの位置情報である。衛星通信セル位置取得部35は、軌道情報取得部32(図示省略)が取得した通信衛星131の軌道情報や、地上の地形情報または高低差情報に基づいて、衛星通信セル132の代表位置情報を演算できる。
【0051】
NTN側に設けられる通信遅延取得部33(図示省略)は、衛星通信セル位置取得部35が取得した衛星通信セル132の代表位置情報および軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報に基づいて、通信衛星131および衛星通信セル132の間の通信遅延を演算できる。この通信遅延は、図10で通信衛星131と衛星通信セル132の中心Oの間の距離dに亘るものである。また、NTN側に設けられる通信遅延取得部33は、ゲートウェイ133の既知の位置情報および軌道情報取得部32が取得した通信衛星131の軌道情報に基づいて、ゲートウェイ133および通信衛星131の間の通信遅延を演算できる。この通信遅延は、図10でゲートウェイ133と通信衛星131の間の距離dに亘るものである。このように、NTN側に設けられる通信遅延取得部33は、衛星通信セル132(の中心O)とゲートウェイ133の間の総距離d+dに亘るNTNの通信遅延を演算できる。なお、前述したように、通信衛星131が再生成型の場合の通信遅延取得部33は、衛星通信セル132(の中心O)と通信衛星131の間の距離dに亘るNTNの通信遅延を取得すればよい。
【0052】
図11は、図10の処理を通じて通信遅延取得部33が取得したNTNの通信遅延TAに基づく同期部34の同期処理を模式的に示す。同期部34は、ゲートウェイ133がABS処理に対応するNTNフレーム「NTN GW Frame」の送信を開始した後、通信遅延取得部33が取得した通信遅延TA「RTT Delay」だけABS処理に対応するTNフレーム「TN gNB Frame」の送信の開始を遅延させる。例えば、ABS処理対象期間の最初のTNサブフレームTN-3の送信開始時刻を「TTN gNB」とすれば、ABS処理対象期間の最初のNTNサブフレームNTN-3の送信開始時刻は「TTN gNB-RTT Delay」と表される。この結果、干渉領域A2内の通信機2Cが受信するTNフレームおよびNTNフレームが互いに同期すると共に、TNフレームおよびNTNフレームにおいてABS処理が同時に開始する。従って、干渉領域A2内の通信機2Cが、ABS処理開始前のTNフレームを受信している間にABS処理開始後のNTNフレームを受信してしまうことや、ABS処理開始前のNTNフレームを受信している間にABS処理開始後のTNフレームを受信してしまうことを効果的に防止できる。
【0053】
図12に示される通信制御装置3の第3の実施例も、衛星通信セル132内の通信機2が測位センサを備えない場合に好適である。図12は、図10と同様の処理を通じて通信遅延取得部33が取得したNTNの通信遅延TAに基づく同期部34の同期処理を模式的に示す。同期部34は、5G基地局111が送信するTNフレーム「TN gNB Frame」より、通信遅延取得部33が取得した通信遅延TAだけ早く、ゲートウェイ133にNTNフレーム「NTN GW Frame」を送信させる。この結果、干渉領域A2内の通信機2Cが受信するTNフレームおよびNTNフレームが互いに同期する。従って、図4に関して前述したように、通信機2Cに割り当てられたABS処理対象期間のNTNサブフレーム(NTN-3等)を通信機2Cが受信している間、対応するTNサブフレーム(TN-3等)がABSとなっているため、通信機2Cは自身に割り当てられたNTNサブフレームを正常に受信できる。
【0054】
一般的に通信機2は、通信中の通信セルであるサービングセルと、サービングセルに隣接する隣接セルの信号強度等を常時測定している。また、通信機2は、通信中のチャネルのチャネル状態情報(CSI:Channel State Information)も常時測定している。このような通信機2が図3に示したような干渉領域A2内にある場合、サービングセルまたは隣接セルとしての衛星通信セル132の測定やCSIの測定を行う際には、図4に示したようなABSパターンを考慮する必要がある。
【0055】
具体的には、図3の通信機2Cは、5Gセル112からの干渉がないABS処理対象期間(図4の例では3,6,9番目のサブフレーム期間)に、サービングセルとしての衛星通信セル132のRLM(Radio Link Monitoring)やRRM(Radio Resource Management)のための測定を行う。仮に通信機2CがABS処理対象期間外にサービングセルとしての衛星通信セル132の測定を行ってしまうと、5Gセル112からの干渉によってRLF(Radio Link Failure)を引き起こしてしまう。
【0056】
同様に、図3の通信機2Cは、5Gセル112からの干渉がないABS処理対象期間に、隣接セルとしての衛星通信セル132のRRMのための測定を行う。この場合の通信機2Cは衛星通信セル132と通信中ではないが、サービングセルとしての5Gセル112等の5G基地局111等を介して、図4図6に示したようなABSパターンを入手した上で隣接セルとしての衛星通信セル132の測定を行う。例えば、ゲートウェイ133に接続されているNTN基地局111、121が、衛星通信セル132のABSパターンに基づくSMTC(SSB based Measurement Timing Configuration)ウィンドウのパラメータや構成情報を、地上通信経路「Xn」等を通じて通信機2Cに伝えることで、通信機2CはABS処理対象期間の衛星通信セル132のNTNサブフレームを正確に測定できる。
【0057】
干渉領域A2内の通信機2CがCSIの測定を行う場合、衛星通信セル132と5Gセル112の干渉がないABS処理対象期間に亘る第1のCSIの測定と、衛星通信セル132と5Gセル112の干渉があるABS処理対象期間外に亘る第2のCSIの測定を別個に行うのが好ましい。ABS処理対象期間とABS処理対象期間外では干渉の有無によってチャネル状態が大きく異なるため、期間を区別せずに測定してしまうと平均的に悪いCSIが得られてしまうためである。このような二種類のCSI測定データによって、衛星通信セル132および5Gセル112のそれぞれのチャネル状態や、両セルの干渉がチャネル状態に及ぼす影響を把握できるため、チャネル状態に応じて通信機2Cの通信を効率化できる。
【0058】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0059】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、通信システムにおける通信制御技術に関する。
【符号の説明】
【0061】
1 無線通信システム、2 通信機、3 通信制御装置、11 5G無線通信システム、12 4G無線通信システム、13 衛星通信システム、31 信号強度低下部、32 軌道情報取得部、33 通信遅延取得部、34 同期部、35 衛星通信セル位置取得部、111 5G基地局、112 5Gセル、121 4G基地局、122 4Gセル、131 通信衛星、132 衛星通信セル、133 ゲートウェイ、A2 干渉領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12