(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】タンタル粉末を製造する方法およびその方法によって得られるタンタル粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 9/20 20060101AFI20240806BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240806BHJP
B22F 1/142 20220101ALI20240806BHJP
B22F 1/145 20220101ALI20240806BHJP
C22C 27/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B22F9/20 G
B22F1/00 R
B22F1/142
B22F1/145
C22C27/02 103
(21)【出願番号】P 2023565185
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2022114375
(87)【国際公開番号】W WO2023109172
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-10-23
(31)【優先権主張番号】202111533324.8
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507313113
【氏名又は名称】ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンユアン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】マー,ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ズオ,ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,トン
(72)【発明者】
【氏名】キン,ホンジー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F
C22B 1/02,34/24
C22C 23/00,24/00,27/02
H01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンタル粉末を製造する方法であって、
(1)タンタル粉末原材料、金属マグネシウム、ならびに少なくとも1種のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を均一に混合し、混合物を容器中に入れ、前記容器を加熱炉内に置く、工程;
(2)不活性ガスの存在下で、前記加熱炉の温度を
850~980℃に上げ、均熱処理する、工程;
(3)均熱処理工程の終わりに、前記加熱炉の温度を
680~720℃に下げ、前記加熱炉の内部を10Pa以下に真空化し、過剰な金属を分離するように、負圧下で均熱処理する工程;
(4)その後、不活性ガスの存在下で、前記加熱炉の温度を
900~950℃に上げ、酸素還元後、前記タンタル粉末が、溶融塩において焼結されるように、均熱処理する工程;
(5)次いで、室温に冷却し、不動態化して、ハロゲン化物およびタンタル粉末を含有する混合材料を得る工程;
(6)得られた混合物からタンタル粉末を分離する工程
を含む、方法。
【請求項2】
工程(3)の均熱の最後に、加熱炉の内部を0.5Pa以下まで真空化することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(4)において、1~10時間均熱することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
工程(6)において、タンタル粉末は、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥によって、前記得られた混合物から分離されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(1)において、アルカリ金属のハロゲン化物に対するタンタル粉末の質量比は1:0.5~3.0であることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)において、前記金属マグネシウムが、前記タンタル粉末の1~5重量%の量で添加されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の前記ハロゲン化物が、NaClおよびKClの混合物であることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1に記載の方法。
【請求項8】
B元素、P元素、および/またはN元素を含有する1以上の化合物が、工程(1)において、前記タンタル粉末をドープするための1以上の添加剤として添加されることを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1に記載の方法。
【請求項9】
有効な元素の量に基づいて、前記B元素が1~100ppmの量で添加され;および/または前記P元素が10~200ppmの量で添加され;および/または前記N元素が300~2500ppmの量で添加されることを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
工程(6)の後、高温高真空熱処理する工程;および分離する工程をさらに含む、請求項1~
4のいずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記分離は、酸洗浄、ろ過、および乾燥によって行われることをさらに含む請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レアメタル機能性材料を製錬する分野に属し、特に、高信頼性コンデンサを製作するためのタンタル粉末、およびその製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
タンタル電解コンデンサ(以下、タンタルコンデンサと称する)は、高い容量、小さい体積、強力な自己回復機能、高い信頼性などの利点を有し、通信、コンピュータ、自動車エレクトロニクス、医療機器、レーダー、航空宇宙産業、自動制御装置などのハイテク分野に広く用いられる。タンタル粉末は、タンタルコンデンサを製作するための重要な材料であり、優れた耐電圧を有するコンデンサ用タンタル粉末を使用することによってのみ、良好な信頼性のタンタルコンデンサを製造することができ、電子装置および電子回路の、高信頼性の要求を継続して満たすことができる。
【0003】
現在、コンデンサ等級のタンタル粉末の産業的な調製方法には、主に、ナトリウム還元フッ化タンタル酸カリウム法、マグネシウム還元酸化タンタル法、タンタルインゴット水素化法などが挙げられる。どの方法がタンタル粉末を調製するために使用されようと、タンタル粉末の電気特性を改善するために、調製されたタンタル原料粉末は、例えば、高温高真空熱処理、金属マグネシウムを用いた還元による酸素還元などの後処理に供される必要がある。高温高真空熱処理工程は、ガス不純物、および湿潤不純物除去工程において吸着された低融点金属不純物の一部を取り除くことができ、金属マグネシウムを用いた還元により、タンタル粉末の酸素含有量を減らすことができ、タンタル粉末における酸素の分布を改善することができる;また、その後の処理により、タンタル金属粒子を凝集させ、焼結させることができ、それによってタンタル金属粒子の構造を改善し、タンタル粉末の電気特性を改善する。タンタル粉末の耐電圧を改善するために、一般的な方法は、焼結温度を上げること、焼結時間を延ばすことなどを含むが、焼結温度の上昇および焼結時間の延長は、比容量の損失を引き起こし得る。
【0004】
CN102120258Bは、タンタル粉末を熱処理する方法であって、初めに、元のタンタル粉末に高温真空熱処理を施して、凝集タンタル粉末を得る工程、次いで、熱処理後の凝集されたタンタル粉末を還元剤と混合して脱酸素熱処理する工程、最後に、不純物除去のために酸洗浄を実施して、電解コンデンサに好適なタンタル粉末を得る工程を含む、方法を開示する。その方法によって調製されたタンタル粉末は、低い酸素含有量および良好な電気特性を有するが、その方法によって調製されたタンタル粉末粒子は、大きな損失、不十分な耐電圧などの問題を有する。CN101189089Bは、マイクロ波エネルギーによって金属粉末を高温真空熱処理する方法を開示するが、その方法で調製されたタンタル粉末は、大きな漏れ電流および低い破壊電圧の問題も有し、使用される装置は、高いメンテナンス費用および低い処理能力の欠点を有する。
【0005】
先行技術において、さらに、タンタル粉末を製造するための自己伝播高温合成法(SHS)がある。しかし、この方法は、少なくとも2000℃以上の温度を要求し、反応が速すぎ、それにより、制御が難しいだけでなく、加工処理装置に対する要求も高い。加えて、得られたタンタル粉末は、均一ではなく、高い信頼性のコンデンサを製作するための要求を満たさない。
【0006】
要するに、上記の方法によって調製されたタンタル粉末は、低い破壊電圧などの欠陥を有し、高信頼性のコンデンサを製作するのに適さない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い破壊電圧を有し、高信頼性コンデンサを製作する要件に合うことが可能な、コンデンサ用タンタル粉末を提供することである。別の目的は、タンタル粉末に、金属マグネシウムを使用することによる、溶融塩における酸素還元および活性化処理を施した後、過剰な金属マグネシウムが分離され、次いでタンタル粉末を溶融塩において焼結することを特徴とする、タンタル粉末を調製する方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、コンデンサ用タンタル粉末を製造する方法を提供することである。他の方法によって製造された、同じ等級のコンデンサ用タンタル粉末と比較すると、本方法によって製造されたコンデンサ用タンタル粉末は、高電圧通電条件下で、高い比容量、および高い破壊電圧を有し、コンデンサ用タンタル粉末の耐電圧は、著しく改善される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タンタル粉末を製造する方法であって、
(1)タンタル粉末原材料、金属マグネシウム、ならびに少なくとも1種のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を均一に混合し、混合物を容器中に入れ、容器を加熱炉内に置く工程;
(2)不活性ガスの存在下で、加熱炉の温度を600~1200℃に上げ、タンタル粉末およびマグネシウム中の酸素が、溶融塩において還元反応を受けるように、例えば、1~4時間均熱処理する(または維持する)工程;
(3)均熱処理工程の終わりに、加熱炉の温度を600~800℃に下げ、加熱炉の内部を10Pa以下に真空化し(または排気し)、過剰なマグネシウムおよびタンタル粉末の混合物を分離するように、例えば、負圧下で1~10時間均熱処理する工程;
(4)その後、不活性ガスの存在下で、加熱炉の温度を750~1200℃に上げ、タンタル粉末が、酸素還元後、溶融塩において焼結されるように、例えば、1~10時間均熱処理する工程;
(5)次いで、室温に冷却し、不動態化して、ハロゲン化物およびタンタル粉末を含有する混合材料を得る工程;
(6)例えば、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥によって、得られた混合物からタンタル粉末を分離する工程
を含む、方法に関連する。
【0010】
以下の図は、本発明をより良く理解するために提供される。図は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定しようというものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って得られたタンタル粉末の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図は、得られたタンタル粉末が、より均一な分布、滑らかな粒子、厚い焼結ネックを有し、超微細粒子は少ないことを説明する。
好ましくは、工程(1)における、タンタル粉末の、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物に対する質量比は、1:0.5~10.0、より好ましくは1:0.5~3.0、さらにより好ましくは1:1.5~2.5である。金属マグネシウムは、タンタル粉末の1~5重量%、好ましくは1.5~3重量%の量で添加される。添加される金属マグネシウムの量は、酸素還元に対して過剰であり、ゆえに、マグネシウムのオーバーフローが、マグネシウムの分離中に生じることもあると理解される。
【0013】
好ましくは、工程(1)におけるマグネシウムは、マグネシウム粒子である。マグネシウム粒子の粒径は限定されない。しかし、十分な研究の後、本発明者らは、粒径150~4000μmを有するマグネシウム粒子が、この技術により好適であることを見出した。その粒径範囲を有するマグネシウム粒子は、金属マグネシウムの保管および輸送の間の安全性に対して有益であるだけでなく、均一な混合に対しても有益である。マグネシウム粒子が細かすぎる場合、活性が強すぎ、自発的な燃焼および発火が生じ易く、マグネシウム粒子が粗すぎる場合、均一な混合がそう容易ではなく、タンタル粉末の性能最適化が容易ではない。
【0014】
不活性ガスは、一般に、ヘリウム、ネオン、およびアルゴンなどの希ガスを指す。窒素は、その安定な特性のために、時として不活性ガスとして使用されるものの、工程(2)の温度が相対的に高く、この高い温度での窒素の活性が極めて強いゆえに、本発明において不活性保護ガスとして適さない。しかし、十分な研究の後、本発明者らは、意外なことに、不活性保護雰囲気を損なうことなく、少量の窒素が不活性ガスに含有される場合には、タンタル粉末の窒素ドーピングが実現され得ることを見出した。タンタル粉末のより良好な窒素ドーピング効果を実現する観点から、工程(2)の不活性ガスは、好ましくは、窒素0.5~10%を含有してもよい。
【0015】
好ましくは、工程(1)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物は、NaCl、KCl、KF、KI、および/またはMgCl2のうちの1種または複数である。アルカリ金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウム、好ましくは、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの混合物、より好ましくは、1:1~10、最も好ましくは約1:1の比の、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの混合物であってもよい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物は、好ましくは粒子形態である。その粒径は限定されないが、本発明者らは、70~4000μmの粒子が、この技術により好適であり、還元によって得られたタンタル粉末は、より良好な耐電圧を有することを見出した。
【0016】
好ましくは、B元素、P元素、および/またはN元素を含有する、1種または複数のコンパウンドは、工程(1)において、タンタル粉末をドープするための添加剤(複数可)として添加され得る。有効な元素の量に基づいて、B元素は、好ましくは、1~100ppm、より好ましくは20~60ppmの量で添加され;P元素は、好ましくは、10~200ppm、より好ましくは30~90ppmの量で添加され;N元素は、好ましくは、300~2500ppm、より好ましくは500~1200ppmの量で添加される。コンパウンド(複数可)が本明細書で添加されるものの、有効な元素は、B、P、および/またはNであり、本明細書で参照される量は、B、P、および/またはNとして計算されることを理解されたい。
【0017】
工程(2)の主な目的は、タンタル粉末の酸化還元および/または活性化を行うことである。
好ましくは、工程(2)において、加熱炉は、750~1000℃に加熱される。より好ましくは、加熱炉は、850~1000℃に加熱される。
【0018】
好ましくは、工程(3)において、加熱炉の温度は650~800℃である。より好ましくは、温度は650~720℃である。好ましくは、この工程において、加熱炉の内部は、5Pa以下まで、好ましくは0.5Pa以下まで真空化される。
【0019】
好ましくは、工程(4)において、加熱炉は900~1050℃に加熱される。
工程(2)の不活性ガスは、工程(4)の不活性ガスと同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、工程(2)および/または工程(4)において、炉の正電圧が維持される。
【0020】
好ましくは、本発明の方法は、高信頼性タンタルコンデンサを製作するのに好適なタンタル粉末を得るために、工程(6)の後、高温高真空熱処理、酸素還元、酸洗浄などの後処理をさらに含む。これらの処理は、全て、当分野で公知の方法である。言い換えれば、これらの処理には、当分野で公知の任意の方法を用いてもよい。例えば、高温高真空熱処理および不動態化を、CN201110039272.9、CN201120077798.1、CN201120077680.9、CN201120077305.4などの特許で示された方法を使用することによって実施してもよく、酸素還元を、CN201420777210.7およびCN201420777210.7の特許で示された方法を使用することによって実施してもよく、酸洗浄を、CN201210548101.3、CN201280077499.5、CN201210548008.2などの特許で示された方法を使用することによって実施してもよい。
【0021】
工程(1)において、N元素、P元素、および/またはB元素をドープする代わりに、これらの元素を別々にドープする工程もまた、例えば、工程(6)の後に、本発明に含まれてもよい。勿論、これらの元素を含有する原材料がそのまま使用されてもよい。これらの元素は、前述された高温高真空熱処理する工程において添加されてもよい。P元素を添加することが特に好ましい。P元素の添加により、比容量を改善することができ、比容量を改善する効果は、ドープされたPの全量が十分に制御される限り、P元素を添加する場合はどれでも同じである。
【0022】
本発明はまた、高信頼性タンタルコンデンサを製作するのに好適なタンタル粉末であって、そのタンタル粉末を使用することによって製作されたアノードブロックが、高電圧条件下で通電され、通電ブロックが電気性能について試験されることを特徴とする、タンタル粉末にも関連する。通電ブロックは、より高い比容量を有し、破壊電圧試験においてより高い破壊電圧を示すことが分かる。
【0023】
本明細書で取り扱われるタンタル粉末原材料は限定されない。
さらに、本発明の方法は、単純であり、制御し易い。例えば、本発明の工程のいずれも、マイクロ波の使用、または1300℃を超える高すぎる温度の使用を含まない。したがって、使用される装置は、より単純であり、タンタル粉末焼結処理の安全性もより良好である。
【0024】
一般的な理論に束縛されることなく、粉末液体相焼結の理論を組み合わせることによる原理の分析によって、本発明者らは、本発明が優れた効果を実現する理由が、工程(2)において、温度の上昇と共に、金属マグネシウムおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が溶融し、液体相として存在し、液体マグネシウムが、より高い還元可能性を有するために、タンタル粉末の酸素を還元し、タンタル粉末粒子の表面活性を増大させ、次いで、溶融塩の液体相中の焼結で、タンタル粉末における大きな粒子の角、突起、および超微細タンタル粉末粒子が、液体相において溶解することにあると考える。処理が継続されると、タンタルは、飽和濃度を超える液体相中濃度を有し、次いで、優先的には、タンタルの大きな粒子のある特定の部位に付着し、大きな粒子の一部として合体する。したがって、タンタル粉末は、滑らかな粒子、厚い焼結ネック、および少量の超微細な粒子を有する。その後、得られたタンタル粉末に、先行技術に従って、高温高真空焼結、酸素還元、および酸洗浄処理を施し、それによって、高電圧高信頼性コンデンサを製作するのに好適なタンタル粉末を得る。
【実施例】
【0025】
本発明をさらに説明するために、本発明の好ましい実施形態が、添付の例と組み合わせて記載され、それから、本発明の目的、特徴、および利点を明らかにすることができる。記載は、本発明の特徴および利点をさらに説明するものとしてのみ意図され、本発明を限定するものではない。例は、特定の条件が明記されない限り、従来の条件下で実行された。使用された試薬および装置は、製造者が明記されない限り、市販の従来品である。
【0026】
本明細書の目的のために、明細書および特許請求の範囲における、成分の量、反応条件などを表す、全ての数は、別段の指示がない限り、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。したがって、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において与えられる数値パラメータは、別段の指示がない限り、本発明によって得られようとする所望の特性に応じて変わることがある近似値である。最低でも、特許請求の範囲に記載の範囲の均等物の原理の適用を限定しようと意図するものではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告される有意桁の数、および通常の丸め手法(rounding technique)に従って解釈されるべきである。
【0027】
タンタル粉末における不純物の含有量は、中華人民共和国国家標準GB/T15076.1-15076.15に従って分析され、物理的特性は、業界標準YS/T573-2015に従って試験される。タンタル粉末の電気性能は、中華人民共和国国家標準GB/T3137に従って試験される。
【0028】
実施例1
フッ化タンタル酸カリウム(potassium fluotantalate)をナトリウムで還元することによって得られたタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.0重量%の金属マグネシム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)3.75kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器に入れ、反応容器中の空気を排気した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度900℃に加熱し、続いて、4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて、3時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を950℃に加熱し、続いて、5時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで、酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。
【0029】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0030】
実施例2
フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元することによって得られたタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.0重量%の金属マグネシム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.0kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)2.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した(すなわち、排気した)。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉に入れて、温度980℃に加熱し、続いて、4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を900℃に加熱し、続いて3時間均熱させた。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、改善された粒子構造を有するタンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで、酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。
【0031】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0032】
実施例3
フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元することによって得られ、リン50ppmを含むコンパウンドを含むタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.0重量%の金属マグネシム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.0kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)2.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度850℃に加熱し、続いて4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて3時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を920℃に加熱し、続いて5時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、改善された粒子構造を有するタンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1420℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いでマグネシウムで還元することによる酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。
【0033】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0034】
実施例4
フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元することによって得られ、窒素800ppmを含むコンパウンドを含むタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.0重量%の金属マグネシム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.0kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)2.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度920℃に加熱し、続いて4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を950℃に加熱し、続いて5時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、改善された粒子構造を有するタンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。
【0035】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0036】
実施例5
フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元することによって得られ、ホウ素50ppmを含むコンパウンドを含むタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.0重量%の金属マグネシム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.0kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)2.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度920℃に加熱し、続いて4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるために真空化し、続いて6時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を950℃に加熱し、続いて5時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、改善された粒子構造を有するタンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで、酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。
【0037】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0038】
比較例1
フッ化タンタル酸カリウムをナトリウムで還元することによって得られ、リン50ppmを含むコンパウンドを含むタンタル粉末5.0kgに、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間直接施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施してタンタル粉末を得た。
【0039】
タンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、150Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0040】
【0041】
実施例6
酸化タンタルをマグネシウムで還元することによって得られたタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.3重量%の金属マグネシウム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)5.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度950℃に加熱し、続いて4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて2時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を900℃に加熱し、続いて6時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を得た。
【0042】
得られたタンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1420℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで、酸素還元および酸洗いを施されて、タンタル粉末を得た。タンタル粉末は、表2に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表2に列挙する。
【0043】
実施例7
窒素1500ppmを含むコンパウンドおよびホウ素50ppmを含むコンパウンドを含む、フレークタンタル粉末5.0kgを、タンタル粉末の2.8重量%の金属マグネシウム粒子と混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)5kgおよびフッ化カリウム(KF)2.5kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度950℃に加熱し、続いて4.0時間均熱処理した。次いで、反応容器を温度700℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間均熱処理し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を950℃に加熱し、続いて、5時間均熱処理した。均熱処理が終わった後、反応容器を室温に冷却して、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を得た。
【0044】
得られたタンタル粉末に、5.0×10-3Pa未満の圧力の下、1500℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、タンタル粉末を得た。タンタル粉末は、表2に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、270Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表2に列挙する。
【0045】
【0046】
表1および表2から分かるように、本発明は、先行技術と比較して以下の利点を有する:本発明に従って製造されたタンタル粉末は、高い電圧条件の下、通電され、通電ブロックは、電気性能について試験され、それにより、通電ブロックが、より高い比容量を有し、破壊電圧試験においてより高い破壊電圧を示すことが明示される。
【0047】
それゆえに、本発明に従って製造されたタンタル粉末は、高信頼性タンタルコンデンサを製作するのにより好適である。