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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】移動体の制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/249 20240101AFI20240806BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240806BHJP
   G05D 1/648 20240101ALI20240806BHJP
   G05D 1/639 20240101ALI20240806BHJP
【FI】
G05D1/249
G05D1/43
G05D1/648
G05D1/639
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2024029116
(22)【出願日】2024-02-28
【審査請求日】2024-03-12
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和6年1月27日にAIビジネスコンテストである「Oita AI Challenge 2024」にて発明を発表することで公開した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523225601
【氏名又は名称】株式会社CAOS
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健
(72)【発明者】
【氏名】福原 佳孝
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-015634(JP,A)
【文献】特開2018-185633(JP,A)
【文献】特開2022-026106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00-1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律走行可能な移動体と、
前記移動体の現在地から目的地までの移動経路に設定された人物検知エリアを撮影可能に設けられた人物検知カメラ、および信号灯検知エリア内に信号灯の点灯パターンを撮影可能に設けられた信号灯検知カメラを含むエリア撮影手段と、
前記人物検知エリア内に人物を検知するための人物識別領域を設定するとともに、前記エリア撮影手段で撮影された撮影データから前記人物識別領域内の人物検知人数を算出し、前記人物識別領域に設定されたしきい値と比較して、前記人物検知人数が前記しきい値以上である場合に、前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行う、また前記信号灯検知エリア内に前記信号灯の点灯パターンを検知するための点灯識別領域を設定するとともに、前記信号灯検知カメラで撮影された撮影データから前記点灯識別領域内の前記信号灯の点灯パターンを検出し、前記点灯識別領域に設定された前記信号灯の点灯パターンが通常とは異なる点灯パターンで点灯していると判定した場合に、前記信号灯検知エリアを通過する前記移動経路に設定された前記通過コストを上昇させる処理を行うサーバ装置と、を含み、
前記サーバ装置は、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出することを特徴とする移動体の制御システム。
【請求項2】
前記サーバ装置は、
前記移動体が前記人物検知エリアに進入した時点において、前記人物識別領域で検知された人物検知人数に応じて、前記人物検知エリアを通過する前記移動体の動作を制御する、
または、
前記移動体が前記信号灯検知エリアに進入した時点において、前記点灯識別領域で検知された前記信号灯の点灯パターンに応じて、前記人物検知エリアを通過する前記移動体の動作を制御する
ことを特徴とする請求項に記載の移動体の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内を自由に移動可能とする移動体の制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、広大な工場エリア内を磁気テープなどの移動ガイドを用いることなく自由に移動可能に構成された移動体としての自律走行ロボット(以下、単にロボットとも称する。)がある。自律走行ロボットは、工場内で協働する作業員の作業を阻害することなく自由な経路で目的地まで物を搬送するものである。自律走行ロボットは、ロボット周囲の障害物を検出するためのセンシング機能を有し、このセンシング機能によって障害物に接触することなく目的地まで移動することができる。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の自律走行ロボットは、レーザセンサや、カメラなどの認識センサを有するセンサ装置を備えた構成が記載されている。このような構成により、特許文献1に記載の自律走行ロボットは、障害物に接触することなく目的地まで移動することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-156243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の自律走行ロボットは、ロボットに備えたセンシング機能で障害物を検知することにより、広大な工場内を立体物(人物や構造物)と接触することなく自由に移動することができる。しかしながら、自律走行ロボットに予め備えられたセンサ装置によるセンシング機能では、ロボット周囲の立体物しか確認することができず、ロボットが通行しようとする経路において、作業員が密集して通行が困難となる経路が存在する場合、その密集地点に到達して通行できないことが判明してから初めて別の経路を選定する、または、その地点の密集状態が解消されてから走行を再開することとなり、自律走行ロボットが最適に移動できない虞があった。
【0006】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、移動体を効率的に移動可能とする移動体の制御システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、自律走行可能な移動体と、前記移動体の現在地から目的地までの移動経路に設定された人物検知エリアを撮影可能に設けられた人物検知カメラを含むエリア撮影手段と、前記人物検知エリア内に人物を検知するための人物識別領域を設定するとともに、前記エリア撮影手段で撮影された撮影データから前記人物識別領域内の人物検知人数を算出し、前記人物識別領域に設定されたしきい値と比較して、前記人物検知人数が前記しきい値以上である場合に、前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行うサーバ装置と、を含み、前記サーバ装置は、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出することを特徴とする、ものである。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、前記エリア撮影手段は、信号灯検知カメラを含み、前記信号灯検知カメラは、前記移動経路に設定した信号灯検知エリア内に設けた信号灯の点灯パターンを撮影可能に設けられ、前記サーバ装置は、前記信号灯検知エリア内に前記信号灯の点灯パターンを検知するための点灯識別領域を設定するとともに、前記信号灯検知カメラで撮影された撮影データから前記点灯識別領域内の前記信号灯の点灯パターンを検出し、前記点灯識別領域に設定された前記信号灯の点灯パターンが通常とは異なる点灯パターンで点灯していると判定した場合に、前記信号灯検知エリアを通過する前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行いつつ、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出することを特徴とする、ものである。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、前記サーバ装置は、前記自律走行ロボットが前記人物検知エリアに進入した時点において、前記人物識別領域で検知された人物検知人数に応じて、前記人物検知エリアを通過する前記自律走行ロボットの動作を制御する、または、前記自律走行ロボットが前記信号灯検知エリアに進入した時点において、前記点灯識別領域で検知された前記信号灯の点灯パターンに応じて、前記人物検知エリアを通過する前記自律走行ロボットの動作を制御することを特徴とする、ものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、自律走行可能な移動体と、前記移動体の現在地から目的地までの移動経路に設定された人物検知エリアを撮影可能に設けられた人物検知カメラを含むエリア撮影手段と、前記人物検知エリア内に人物を検知するための人物識別領域を設定するとともに、前記エリア撮影手段で撮影された撮影データから前記人物識別領域内の人物検知人数を算出し、前記人物識別領域に設定されたしきい値と比較して、前記人物検知人数が前記しきい値以上である場合に、前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行うサーバ装置と、を含み、前記サーバ装置は、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出する構成により、自律走行可能な移動体が効率的に目的地まで移動することができる。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、前記エリア撮影手段は、信号灯検知カメラを含み、前記信号灯検知カメラは、前記移動経路に設定した信号灯検知エリア内に設けた信号灯の点灯パターンを撮影可能に設けられ、前記サーバ装置は、前記信号灯検知エリア内に前記信号灯の点灯パターンを検知するための点灯識別領域を設定するとともに、前記信号灯検知カメラで撮影された撮影データから前記点灯識別領域内の前記信号灯の点灯パターンを検出し、前記点灯識別領域に設定された前記信号灯の点灯パターンが通常とは異なる点灯パターンで点灯していると判定した場合に、前記信号灯検知エリアを通過する前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行いつつ、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出することにより、自律走行可能な移動体の移動が阻害されることなく常に最適な移動経路を走行することができ、効率的に目的地まで移動することができる。
【0012】
本発明の第3の態様によれば、前記サーバ装置は、前記自律走行ロボットが前記人物検知エリアに進入した時点において、前記人物識別領域で検知された人物検知人数に応じて、前記人物検知エリアを通過する前記自律走行ロボットの動作を制御する、または、前記自律走行ロボットが前記信号灯検知エリアに進入した時点において、前記点灯識別領域で検知された前記信号灯の点灯パターンに応じて、前記人物検知エリアを通過する前記自律走行ロボットの動作を制御することにより、人物検知エリア内、または信号灯検知エリア内での移動体の移動を最適化して効率的に目的地まで移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる移動体の制御システムの概略構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる自律走行ロボットの内部構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態にかかる立体物検知手段の内部構成を示す図である。
図4】本発明の一実施形態にかかるサーバ装置の内部構成を示す図である。
図5】本発明の一実施形態にかかる移動体の移動経路を示す図である。
図6】本発明の一実施形態にかかる人物検知領域と識別領域を示す図である。
図7】本発明の一実施形態にかかる信号灯検知領域と識別領域を示す図である。
図8】本発明の一実施形態にかかる移動体の制御システムの制御フローを示す図である。
図9】本発明の一実施形態にかかる移動体の制御システムの通過コストの算出方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、現在地から目的地まで自律走行可能な移動体において、移動体に提供される情報を工夫することにより、移動体の目的地までの移動を効率的としつつ、移動経路上にいる人物と移動体とが接触する虞を可及的に低減した移動体の制御システムMに関するものである。なお、本実施形態において、移動体を自律走行ロボット1として説明する。
【0015】
図1は、移動体の制御システムMの概略構成を示す図である。図2は、自律走行ロボット1の内部構成を示す図である。図3は、エリア撮影手段2の内部構成を示す図である。図4は、サーバ装置3の内部構成を示す図である。図5は、エリア撮影手段2を構成する人物検知カメラ21および信号灯検知カメラ22による撮影領域(人物検知エリア40、信号灯検知エリア50)、および自律走行ロボット1の移動経路を示す図である。図6は、人物検知カメラ21の撮影領域Rと識別領域Dを示す図である。図7は、信号灯検知カメラ22の撮影領域Rと識別領域Dを示す図である。図8は、移動体の制御システムMの制御フローを示す図である。図9は、人物検知エリアを通過する移動経路の通過コストの算出方法を示す図である。
【0016】
移動体の制御システムMは、図1に示すように、自律走行可能な移動体としての自律走行ロボット1と、自律走行ロボット1の移動経路に設定した人物検知エリア40内の人物の撮影、および自律走行ロボット1の移動経路に設定した信号灯検知エリア50内の信号灯51の点灯パターンを撮影するエリア撮影手段2と、エリア撮影手段2で撮影した人物検知エリア40内の人数に応じて自律走行ロボット1の移動を制御するサーバ装置3と、を有する。自律走行ロボット1とサーバ装置3、およびエリア撮影手段2とサーバ装置3は、それぞれネットワーク環境Wを介して相互に接続されている。ネットワーク環境Wは、インターネット、無線LAN(Local Area Network)、および近距離無線通信の内、全部又は一部を含むように構成されている。無線LANは、例えばWi-Fi(登録商標)に準拠したものであっても良い。また、近距離無線通信回線は、例えばBluetooth(登録商標)に準拠したものであっても良い。
【0017】
自律走行ロボット1は、ロボット本体1aを備え、ロボット本体1aに収容、またはロボット本体1aに固定されたロボット制御部11により、動作が制御されている。ロボット本体1aは、移動に適していれば、任意の形態に形成されていてよい。自律走行ロボット1は、例えば、清掃用、警備用、案内用、荷物運搬用、または人物輸送用のロボットであり、本実施形態においては、荷物運搬用のロボットを例示して説明する。
【0018】
自律走行ロボット1は、図2に示すように、ロボット制御部11、メモリ12、通信処理部13、周辺情報検出部14、アクチュエータ部15、位置処理部16、及びインターフェース部17を備える。
【0019】
ロボット制御部11は、CPU(Cetral Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)等を含む演算処理部11aを有する。メモリ12は、ROM(Read only memory)又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及びRAM(Rondom access memory)等の揮発性メモリを含むものである。また、メモリ12は、ロボット制御部11に内蔵されたメモリであっても良い。メモリ12は、建物の平面図データや目印データ等を保存している。ロボット制御部11は、メモリ12に格納されたプログラムを演算処理部11aにて実行することにより、ロボット制御部11に備わる各機能が実施される。通信処理部13は、ネットワーク環境Wを介してサーバ装置3との双方向通信を実施するための通信手段として機能する。
【0020】
周辺情報検出部14は、自律走行ロボット1の自己位置推定と建物内の環境地図作成を同時に実施するものであり、自律走行ロボット1の周囲情報を取得するセンサカメラ14aと、自律走行ロボット1と周囲の対象物との距離を計測する測距センサ14bと、を備える。自律走行ロボット1は、センサカメラ14aと測距センサ14bにより所定の周期で周囲情報を取得しており、取得された周囲情報は、ロボット制御部11に伝達される。
【0021】
センサカメラ14aは、ロボット本体1aを基準とした撮影領域を有する。センサカメラ14aは、撮影領域を撮影した撮影データに基づき周辺環境を把握するとともに、物体の特徴点を抽出する。センサカメラ14aは、撮影データにおける特徴点の変化を検出することで自己位置推定と環境地図を作成するように構成されている。センサカメラ14aの撮影領域は、ロボット本体1aの前方の領域を少なくとも含む。また、センサカメラ14aの撮影領域は、ロボット本体1aの左右領域や後方領域を含むように構成されていてもよい。なお、自律走行ロボット1における前後方向、および左右方向はロボット本体1aの構造との関係で定められており、自律走行ロボット1の移動方向を前方とみなし、その進行方向に対する両側を左右方向としている。なお、本実施形態におけるセンサカメラ14aは、ロボット本体1aの前面に設けられている。
【0022】
測距センサ14bは、ロボット本体1aに搭載され、ロボット本体1aと周囲の立体物との距離情報を計測するためのものである。測距センサ14bは、計測した周囲の立体物にかかる距離情報をロボット制御部11に伝達する。測距センサ14bは、レーザ光を利用して測距するLiDAR(Light Detectionand Ranging)や、電波を利用して測距するレーダにより構成されている。測距センサ14bは、LiDAR及びレーダを組み合わせて構成されていてもよい。なお、本実施形態における測距センサ14bは、ロボット本体1aの前面下端部近傍に設けられている。
【0023】
アクチュエータ部15は、ロボット本体1aを駆動させるための各種アクチュエータを備える。各種アクチュエータは、ロボット制御部11で制御されている。ロボット本体1aの駆動とは、ロボット本体1aの移動や旋回動作を含むものである。また、ロボット本体1aの一部が動くこともロボット本体1aの駆動に該当する。本実施形態において、自律走行ロボット1は、ロボット本体1aの左右下端部に走行用の車輪を有し、左右の車輪の回転数をそれぞれ独立して制御できるように構成されている。これにより、自律走行ロボット1は、ロボット本体1aの向きを自由に変えることができ、前後方向のみならず左右方向にも移動することができる。
【0024】
位置処理部16は、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)等の自己位置推定と環境地図作成を同時に行う技術を利用して自律走行ロボット1の位置情報を取得する部分である。位置処理部16は、周辺情報検出部14のセンサカメラ14aや測距センサ14bで取得した自律走行ロボット1の周囲情報と、予めメモリ12に保存されている建物の平面図データや目印データ等とを照合して自律走行ロボット1の自己位置を推定する。ここで、「自己位置推定」とは、自分の現在の所在地はどこか、移動している方向はどの向きかを認識することを指し、「環境地図作成」とは、自律走行ロボット1の周辺環境を把握して地図を作成することを指す。位置処理部16で取得した自律走行ロボット1の位置情報は、通信処理部13を介してサーバ装置3に伝達される。
【0025】
インターフェース部17は、自律走行ロボット1を使用する人物と自律走行ロボット1との間のマンマシンインターフェースである。インターフェース部17は、マイクロホン、スピーカ及び表示画面等を含み、インターフェース部17を介して自律走行ロボット1の各種動作を設定することができる。
【0026】
エリア撮影手段2は、自律走行ロボット1の移動経路Pにおいて、人物等の立体物の検知、および信号灯51の点灯パターンを検知することにより、自律走行ロボット1の移動を制御するものである。エリア撮影手段2は、図3に示すように、移動経路P上に設定した人物検知エリア40における人数を検知する人物検知カメラ21と、信号灯検知エリア50に設けた信号灯51の点灯パターンを撮影する信号灯検知カメラ22と、を有する。
【0027】
人物検知カメラ21は、自律走行ロボット1の移動経路Pに設定された人物検知エリア40の一部を撮影領域Rとして撮影する撮影部21aと、撮影部21aの撮影データを一時的に保存するメモリ21bと、メモリ21bに保存された撮影データをサーバ装置3に伝達する通信部21cとを有する。人物検知カメラ21による撮影データは、ネットワーク環境Wを介してサーバ装置3に伝達される。人物検知カメラ21は、人物検知エリア40内の一部が撮影領域Rとなるように設置されていれば、移動経路Pの天井面、壁面等、任意の位置に設けることができる。人物検知カメラ21は、同一の人物検知エリア40に対して複数台設置されており、本実施形態において、人物検知カメラ21は、同一の人物検知エリア40に対して3台設置されている。
【0028】
信号灯検知カメラ22は、人物検知カメラ21と同等に構成されており、自律走行ロボット1の移動経路Pに設定された信号灯検知エリア50の一部を撮影領域Rとして撮影する撮影部22aと、撮影部22aの撮影データを一時的に保存するメモリ22bと、メモリ22bに保存された撮影データをサーバ装置3に伝達する通信部22cとを有する。信号灯検知カメラ22は、自律走行ロボット1の移動経路Pに設定された信号灯検知エリア50内の一部を撮影領域Rとするように設置されており、移動経路Pの天井面、壁面等、信号灯検知エリア50内に設けた信号灯51が検出できる位置に設置されていれば任意の位置に設けることができる。信号灯検知カメラ22は、同一の信号灯検知エリア50に対して複数台設置されており、本実施形態において、信号灯検知カメラ22は、同一の信号灯検知エリア50に対して3台設置されている。
【0029】
サーバ装置3は、図4に示すように、サーバ制御部31、メモリ32、通信処理部33、障害判定部34、および経路算出部39を有する。サーバ装置3は、周辺情報検出部14と共に自律走行ロボット1の駆動を制御するためのロボット管理装置として機能する。サーバ装置3はネットワーク環境Wに接続された1つ以上のコンピュータ装置で構成されている。なお、サーバ装置3は、クラウドコンピューティングを利用して形成されていてもよく、また、自律走行ロボット1内に内蔵されていてもよい。自律走行ロボット1内にサーバ装置3が内蔵される場合は、自律走行ロボット1とエリア撮影手段2とがネットワーク環境Wを介して接続される。
【0030】
サーバ制御部31は、CPU及びGPU等を含む演算処理部31aを有する。メモリ32は、ROM又はフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、及び、RAM等の揮発性メモリを含むものである。また、メモリ32は、サーバ制御部31に内蔵されたメモリであっても良い。サーバ制御部31は、メモリ32に格納されたプログラムを演算処理部31aにて実行することにより、サーバ制御部31に備わる各機能が実施される。通信処理部33は、ネットワーク環境Wを介して相手側装置との双方向通信を実現している。サーバ装置3に対する相手側装置(通信処理部33を介して接続される相手側装置)は、自律走行ロボット1およびエリア撮影手段2を含むものである。
【0031】
障害判定部34は、通信処理部33を介してエリア撮影手段2から取得した映像データを基に人物検知エリア40内の人物検知人数、および信号灯検知エリア50内に設置した信号灯51の点灯パターンを判定し、各判定結果から自律走行ロボット1の移動経路Pに予め設定した通過コストを変動させる部分である。障害判定部34は、画像認識部35、画像データ収集部36、モデル学習部37、通過コスト処理部38を有する。
【0032】
画像認識部35は、通信処理部33を介してエリア撮影手段2の人物検知カメラ21が撮影した撮影データ内で検出された人物検知人数、および信号灯検知カメラ22から取得した撮影データ内の信号灯51の点灯パターンがどのようなパターンであったかを判別する部分である。
【0033】
画像認識部35による人物検知カメラ21の撮影データ内の人物検知人数の判定について、図6を参照して説明する。画像認識部35による人物検知人数の判定は、少なくとも2台以上の人物検知カメラ21で撮影した撮影データに基づいてなされる。本実施形態においては、3台の人物検知カメラ21を用いて判定される。図6に示すように、各人物検知カメラ21は、人物検知エリア40内の一部を撮影する撮影領域R1,R2,R3をそれぞれ有する。各撮影領域R1,R2,R3は、人物検知カメラ21で検出される人物検知人数を判定するための人物識別領域D1,D2,D3を有する。人物識別領域D1,D2,D3は、撮影領域R1,R2,R3に任意に設定される。この人物識別領域D1,D2,D3は、自律走行ロボット1の移動経路P上の任意の位置に設定される。例えば、自律走行ロボット1の移動経路の十字路に人物検知エリア40を設定し、その人物検知エリア40内に人物検知カメラ21の撮影領域R1,R2,R3を設定する場合、十字路の全体を検知できるように撮影領域R1,R2,R3が設定され、その中でも特に人物が通過するであろうと推定される十字路の中心部を含むように人物識別領域D(D1,D2,D3)が設定される。人物識別領域D(D1,D2,D3)は、各人物検知カメラ21で任意に設定することができる。例えば、図6において、人物検知カメラ21Aでは、十字路の中心が撮影領域R1の中心に位置するため人物識別領域D1を撮影領域R1の中心に設定し、また、人物検知カメラ21Bでは、十字路の中心が撮影領域R2の左端部近傍に位置するため人物識別領域D2を撮影領域R2の左端部近傍に設定し、また、人物検知カメラ21Cでは、十字路の中心が撮影領域R3の右端部近傍に位置するため人物識別領域D3を撮影領域R3の右端部近傍に設定する。このように、設定した撮影領域R1,R2,R3において、最も人物が通過しやすい部分を人物識別領域D(D1,D2,D3)とすることで、撮影領域R内の人物検知人数の誤検知を防止することができる。さらには、異なるアングルで設置された人物検知カメラ21A,21B,21Cにそれぞれ人物識別領域D1,D2,D3を設定することにより、人物識別領域D(D1,D2,D3)における人数の誤検知を防止することができる。画像認識部35で判定された人物識別領域D(D1,D2,D3)内の人物検知人数データは、画像データ収集部36に伝達される。
【0034】
また、画像認識部35による信号灯検知カメラ22の撮影データ内の信号灯51の点灯パターンの判定について、図7を参照して説明する。画像認識部35による信号灯51の点灯パターンの判定は、少なくとも2台以上の信号灯検知カメラ22で撮影したデータに基づいてなされる。本実施形態においては、3台の信号灯検知カメラ22を用いて判定される。図7に示すように、各信号灯検知カメラ22は、信号灯検知エリア50内の一部を撮影する撮影領域R4,R5,R6をそれぞれ有する。各撮影領域R4,R5,R6は、信号灯検知カメラ22で検出される信号灯51の点灯パターンを検出するための点灯識別領域H(H1,H2,H3)を有する。点灯識別領域H(H1,H2,H3)は、撮影領域R4,R5,R6内の信号灯51が確認可能な位置に設置されている。このように信号灯検知エリア50に設置された信号灯51の点灯パターンを異なるアングルで撮影するように信号灯検知カメラ22を設置することで、信号灯51の点灯パターンを誤って検出することを防止できる。
【0035】
画像データ収集部36は、画像認識部35で使用された人物検知人数データおよび信号灯51の点灯パターンを判定したデータを一時的に保存する部分である。つまり、画像データ収集部36は、画像認識部35において、エリア撮影手段2の人物検知カメラ21で撮影した撮影データの人物識別領域Dに人がいると判定された撮影データ、および信号灯検知カメラ22で撮影した撮影データの点灯識別領域Hで通常以外の点灯パターンで点灯してると判定された撮影データを教師データとして保存している。画像データ収集部36に保存された撮影データは、モデル学習部37に伝達される。
【0036】
モデル学習部37は、画像データ収集部36に保存された教師データを人物検出モデルデータ37a、信号灯認識モデルデータ37bの2つのモデルデータに振り分けて保存しつつ、保存した各モデルデータから特徴量を抽出する部分である。モデル学習部37は、取得したモデルデータから人物として識別するための特徴量を抽出し、抽出された特徴量を画像認識部35にフィードバックしている。また、モデル学習部37は、信号灯の点灯パターンについても同様に、点灯パターンを識別するための教師データから点灯パターンを認識するための特徴量を抽出し、抽出された特徴量を画像認識部35にフィードバックしている。このようにモデル学習部37は、人物として識別するための教師データから人物と判定するための特徴量の抽出、および信号灯51の点灯パターンを識別するための教師データから特徴量のデータを抽出し、蓄積された特徴量のデータを画像認識部35にフィードバックすることで、画像認識部35における人物の判定精度、および信号灯51の点灯パターンの識別精度を向上している。換言すると、モデル学習部37で抽出された各特徴量を画像認識部35に伝達することで画像認識部35における誤検知を低減し、サーバ装置3から自律走行ロボット1に送信される制御信号を適切なものとすることができる。画像認識部35で判定された人物検知人数に係る情報は、通過コスト処理部38に伝達される。
【0037】
通過コスト処理部38は、画像認識部35で判定された人物検知エリア40における人物識別領域D内の人物検知人数、および画像認識部35で検知した信号灯検知エリア50の信号灯51の点灯パターンに応じて自律走行ロボット1の移動経路Pに設定された通過コストを算出する部分である。通過コスト処理部38は、画像認識部35で判定された人物検知人数が、人物検知エリア40ごとに設定されたしきい値以上に人物検知エリア40の人物識別領域D内に人がいると判定された場合に設定された通過コストを増大させる処理を行う。または、信号灯検知エリア50の信号灯51が通常とは異なる点灯パターンで点灯していると障害判定部34の画像認識部35で検知された場合に、移動経路Pに設定された通過コストを増大させる処理を行う。このように、通過コスト処理部38で増大した通過コスト情報は、サーバ装置3の経路算出部39に伝達される。なお、通過コスト処理部38における通過コストの処理の詳細については、後述する。
【0038】
経路算出部39は、サーバ装置3に設けたインターフェースを用いて、現在地から目的地までの移動経路Pを複数設定するとともに、設定された移動経路Pの内、現在地から目的地まで最短で移動できる経路を決定する部分である。経路算出部39は、例えば、ダイクストラ法によって目的地までの最短経路を決定している。
【0039】
経路算出部39は、サーバ装置3のインターフェースを用いて想定し得るゴールまでの移動経路Pを複数設定し、各経路に任意の間隔でノードN(経由地点)を設定するとともに、各ノードN間を直線で繋いだエッジEに各ノードN間の直線距離を通過コスト(移動のし易さ)として設定する。経路算出部39は、現在地から目的地までを繋ぐ経路に複数設定した移動経路Pのうち、現在地から目的地までの各エッジEに設定された各通過コストを足し合わせた数字が最も小さくなる経路を初期の移動経路Pに設定する。つまり、自律走行ロボット1が走行を開始する前に経路算出部39にて設定される初期の移動経路Pは、現在地から目的地までの最短経路が選択される。本実施形態において、移動経路Pには、人物検知エリア40が設定され、人物検知エリア40内で検知される人物検知人数に応じて人物検知エリア40を通過するように設定されたエッジEの通過コストが変動するように設定されている。このように、移動経路Pに設けた各エッジEに変動可能な通過コストを設定することで、人物検知エリア40で検知した人物検知人数を参照して、最も通過し易い移動経路Pを設定でき、自律走行ロボット1を目的地まで効率的に移動させることができる。
【0040】
障害判定部34は、画像認識部35において、モデル学習部37で抽出した人物の特徴量に係る情報、および信号灯51の点灯パターンの特徴量に係る情報がフィードバックされる構成により、エリア撮影手段2から受信した人物検知カメラ21の人物識別領域Dで人物であると判定する精度を向上させることができる。すなわち、画像認識部35による人物であるとの判定において、人物ではないのに人物と判定したり、人物であるのに人物ではないと判定したりする誤検知を低減できる。また、画像認識部35による信号灯51の点灯パターンの判定において、信号灯51の一部が何らかの立体物で隠れている場合にも、どの点灯パターンで点灯しているかを判定でき、点灯パターンの判定精度を向上することができる。
【0041】
また、障害判定部34は、画像認識部35において、複数台の人物検知カメラ21(カメラA~C)に設定された人物識別領域D内で検出された立体物(人物、物体)の検出物体数(本実施形態においては、人物検知人数)の平均値(または、中央値)を算出する。算出された平均値(または、中央値)が予め各人物検知エリア40に設定されたしきい値以上の場合、立体物(人物、物体)が自律走行ロボット1の移動を阻害するとして、設定された移動経路Pの当該人物検知エリア40を通過するエッジEに設定された通過コストを増大させる処理を実施するように画像認識部35から通過コスト処理部38に情報が伝達される。障害判定部34は、移動経路Pの各エッジEに設定した通過コストを通過コスト処理部38から経路算出部39に伝達する。経路算出部39は、移動経路Pの各エッジEに設定した通過コストが変化した情報を受信すると、予め設定した移動経路Pの内、現在地から目的地までの通過コストが最小となる経路を移動経路Pに設定する。設定された移動経路Pは、自律走行ロボット1に送信される。自律走行ロボット1は、受信した移動経路Pに沿って目的地まで移動する。
【0042】
人物検知エリア40の人物識別領域Dに設定したしきい値以上の人物検知人数が検知された場合における当該人物検知エリア40を通過するエッジEに設定される通過コストを増大させる処理について図9を参照して説明する。図9において、符号Dは、自律走行ロボット1の移動経路Pに設定した人物検知エリア40に内接する楕円Dを示している。また、符号Lは、人物検知エリア40を通過するエッジEと楕円Dの中心Cとの最短距離を示しており、この距離を「重みW1」とする。重みW1は、中心CをエッジEが通過する場合に最大となり、中心Cから離れるに従い影響が小さくなるように設定されている。重みW1は、最短距離Lに反比例するように設定されている。
【0043】
また、符号rは、人物検知エリア40を通過する移動経路Pの前後位置に設定されたノードNAとノードNBを直線状に繋ぐエッジEと、移動経路Pの上手側に位置するノードNAと楕円Dの中心Cとを結ぶ直線と、でなす相対角度を示しており、この値を「重みW2」とする。重みW2は、相対角度rが0度に近づくほど大きくなり、180度となった時点で通過コストが0になる。つまり、相対角度rが0度の場合とは、エッジEが中心Cを通過する場合であり、また、相対角度rが180度の場合とは、エッジEの延長線上に中心Cが位置し、エッジEが中心Cから離れる方向に移動する経路であることを指す。なお、重みW1,W2は、いずれも百分率で設定される。人物検知エリア40を通過するエッジEの通過コストは、重みW1,W2を用いて以下の計算式で算出される。
通過コスト=ノードNA,NB間の直線距離+a*(重み1)+b*(重み2)+c*人物検知人数+d*(経過時間t) ・・・(式1)

なお、式1における符号a,b,c,dは、任意に設定される係数を示している。また、式1における経過時間tは、人物識別領域Dでしきい値以上の人物検知人数がいると検知されてから現在までの経過時間を表している。
【0044】
このように、人物検知エリア40を通過するノードNA,NB間を結ぶエッジEに設定される通過コストは、楕円Dの中心Cとエッジ間を繋ぐ最短距離L(重み1)と、人物検知エリア40の進入側に位置するノードNAと楕円中心Cを結んだ直線とノードNA,NB間を繋ぐ直線とがなす相対角度r(重み2)と、人物検知エリア40の人物識別領域Dで検知される人物検知人数と、人物検知エリア40の人物識別領域Dに設定したしきい値以上の人物検知人数が人物識別領域Dにいると検知した時刻(検知時刻)から現在時刻までの経過時間により増大処理される。
【0045】
このように複数台の人物検知カメラ21に設定された人物識別領域D内で検出した人物検知人数の平均値(または、中央値)に応じて自律走行ロボット1の移動経路を経路算出部39で再度算出可能に構成することで、自律走行ロボット1を効率的に目的地まで移動させることができる。
【0046】
信号灯51の点灯パターンは、図7に示すように、信号灯検知エリア50に設置した3つの信号灯検知カメラ22(22A,22B,22C)の各撮影領域R(R4,R5,R6)内に設定された点灯識別領域H(H1,H2,H3)の撮影データから障害判定部34にて判定される。障害判定部34は、受信した撮影データごとに点灯識別領域H(H1,H2,H3)内の信号灯51の点灯パターンを判定する。障害判定部34は、撮影データの内、最も多い点灯パターンを信号灯51の点灯パターンとして判定する。例えば、3つの信号灯検知カメラ22の点灯識別領域H(H1,H2,H3)のうち、点灯識別領域H1,H2では自律走行ロボット1を停止させる点灯パターンで信号灯51が点灯していると判定され、点灯識別領域H3では、移動経路に載置された立体物(荷物や人物等)で信号灯51の全体像を確認することができず、その点灯パターンが確認できない場合、信号灯51の点灯パターンは自律走行ロボット1を停止させる点灯パターンで点灯していると判定する。すなわち、信号灯検知エリア50における、信号灯51の点灯パターンの判定は、信号灯検知エリア50に設定された信号灯検知カメラ22で検出される信号灯51の点灯パターンの内、判定された点灯パターンの数が多いものを、その信号灯51の点灯パターンであると判定する。
【0047】
ここで、信号灯51は、複数色のLEDを積層するように設けた積層型信号灯である。本実施形態において、信号灯51は、下から順に緑色、黄色、赤色のLEDを積層した信号灯である。信号灯51が複数の色を有する構成により、各色を点灯パターンに組み合わせることで自律走行ロボット1を種々様々なパターンで制御できる。
【0048】
図5を用いて経路算出部39による自律走行ロボット1の移動経路Pを再設定(リルート)する方法について説明する。図5において、符号P1およびP2は、現在地から目的地までに移動可能な移動経路を示している。また、符号50A、50Bは、信号灯検知エリアを示している。また、符号40A、40B、40Cは、人物検知エリアを示している。また、符号Sは、自律走行ロボット1の移動開始地点(現在地)を示し、符号Gは、自律走行ロボット1の移動する先(目的地)を示す。また、符号P1およびP2の各移動経路に示す小さい白丸は、ダイクストラ法における経由地点であるノードNを示している。また、符号Eは、近設した各ノード間を連結するエッジを示している。各エッジEには、直線距離に応じた通過コストを設定している。
【0049】
図5において、サーバ装置3は、障害判定部34の画像認識部35で人物検知エリア40Aの人物識別領域Dにて、しきい値以上の人物検知人数が検知されると、人物検知エリア40Aを通過する移動経路P1において、人物検知エリア40Aを通過するエッジE1の通過コストを通過コスト処理部38にて算出する。再度算出されたエッジE1の通過コスト情報は、サーバ装置3の経路算出部39に伝達され、経路算出部39にて現在地から目的地までの移動経路が再度算出される。自律走行ロボット1は、経路算出部39で再度算出された移動経路のうち、通過コストが最小となる移動経路を選定し、その移動経路に沿って移動する。つまり、自律走行ロボット1は、人物検知エリア40に設定した人物識別領域D内の人物検知人数が人物識別領域Dに設定したしきい値以上と判定された時点で移動経路PのエッジEに設定した通過コストを変更して、変更後の各移動経路の通過コストを算出し、通過コストが最小となる移動経路に沿って移動する。このように、人物識別領域Dにしきい値を設け、しきい値以上の人数が検知された時点で最適経路を算出することにより、常に最適な経路で自律走行ロボット1を移動させることができる。
【0050】
このように、本実施形態に記載の自律走行ロボット1の制御システムMでは、現在地から目的地までの自律走行ロボット1の移動を移動経路Pに設定した人物検知エリア40の人物識別領域D内の人物検知人数に応じて移動経路の通過コストを変動させる構成により、自律走行ロボット1の目的地までの効率的な移動を実現できる。
【0051】
なお、本実施形態において、自律走行ロボット1とは別にサーバ装置3を設ける構成を記載しているが、本発明はこれに限定されることなく、自律走行ロボット1内にサーバ装置3を備えるように構成されていてもよい。このように、サーバ装置3を自律走行ロボット1に設ける構成により、サーバ装置3を工場内に新たに設置することなく、自律走行ロボット1を制御することができる。
【0052】
≪自律走行ロボット1の制御システムMの制御フローについて≫
上述したように自律走行ロボット1の制御システムMは構成されており、自律走行ロボット1が現在地から目的地まで自動で移動するための制御フローについて、図8を参照して説明する。自律走行ロボット1の移動は、大別すると搬送準備工程T1と搬送工程T2の2つの工程で制御されている。
【0053】
≪搬送準備工程T1≫
自律走行ロボット1が、物品を搬送するための搬送準備工程T1について説明する。搬送準備工程T1は、ステップS1~ステップS10の10個のステップで構成されている。
【0054】
作業者は、ロボット本体1aに搬送物を収容する(ステップS1)。
【0055】
搬送物を収容した自律走行ロボット1は、周辺情報検出部14のセンサカメラ14aと測距センサ14bで取得した情報と、予めメモリ12に保存された建物の平面図データを照合して、自己位置推定を実施し、現在位置を決定する(ステップS2)。
【0056】
自己位置推定された自律走行ロボット1の現在位置情報を建物の平面図データとともにネットワーク環境Wを介してサーバ装置3に送信する(ステップS3)。
【0057】
自律走行ロボット1の現在位置情報と、自律走行ロボット1の移動先である目的地情報をサーバ装置3の経路算出部39に入力し、サーバ装置3のインターフェースを用いて現在地から目的地までの移動経路Pを複数設定する(ステップS4)。なお、ステップS4にて設定される移動経路Pは、任意の経路を手動で設定できる。
【0058】
経路算出部39で設定した複数の移動経路Pにそれぞれ経由地点であるノードNを設定する(ステップS5)。各移動経路にノードNが設定されると、各ノード間のエッジおよびエッジの通過コストが自動的に設定される。なお、通過コストは、隣設するノードN間の距離のため、予めメモリ12に保存された平面図データを参照して決定される。
【0059】
サーバ装置3の経路算出部39で設定された移動経路情報を自律走行ロボット1に送信する(ステップS6)。サーバ装置3にて、設定した移動経路上に人物検知エリア40を設定する(ステップS7)。なお、人物検知エリア40の設定は、サーバ装置3のインターフェースにて作業者が適切な位置に設定する。人物検知エリア40の設定場所は、例えば、十字路、T字路、Y字路の近傍など、自律走行ロボット1が移動する際に死角が生じやすい部分の近傍に設定される。人物検知エリア40は、十字路、T字路、Y字路に設定されていても良い。
【0060】
設定された人物検知エリア40に近設した人物検知カメラ21を3つ選定し、各人物検知カメラ21の撮影領域Rに人物識別領域Dを設定する(ステップS8)。なお、人物識別領域Dの設定は、サーバ装置3のインターフェースを用いて作業者が適切な位置に設定する。各人物検知カメラ21に設定された人物識別領域Dは、サーバ装置3のメモリ32に保存される。
【0061】
また、サーバ装置3にて設定された各人物検知エリア40(40A、40B、40C)とは別に、信号灯検知エリア50(50A,50B)がそれぞれ設定される(ステップS9)。なお、人物検知エリア40と信号灯検知エリア50が移動経路P上の同一箇所に設定することもできる。
【0062】
設定された信号灯検知エリア50に近設した信号灯検知カメラ22を3つ選定し、各信号灯検知カメラ22の撮影領域Rに点灯識別領域Hを設定する(ステップS10)。なお、信号灯検知カメラ22における点灯識別領域Hの設定は、各信号灯検知カメラ22の撮影領域Rから予めサーバ装置3のモデル学習部37で学習した信号灯モデルデータに保存された信号灯51と認識するための特徴量を保存したデータと、信号灯検知カメラ22で撮影した信号灯51の撮影データを画像認識部35で照合することにより設定される。ただし、信号灯検知カメラ22における点灯識別領域Hは、サーバ装置3のインターフェースを用いて手動で設定することもできる。各信号灯検知カメラ22に設定された点灯識別領域Dは、サーバ装置3のメモリ32に保存される。
【0063】
このように自律走行ロボット1の搬送準備工程T1は構成されており、ステップS10までの処理が終了した後、自律走行ロボット1の目的地までの移動が開始される。
【0064】
≪搬送工程≫
搬送工程T2は、図8に示すように、ステップS11~ステップS18の8個のステップで構成されている。自律走行ロボット1は、搬送工程T2における目的地までの移動処理が終了すると制御情報が再び入力されるまで現在地から最も近い待機場所にて待機する。
【0065】
ステップS10の信号灯検知エリア50に設置した信号灯検知カメラ22に点灯識別領域Hの設定を事前に行った後、アクチュエータ部15を駆動してステップS4で設定した移動経路のうち、通過コストが最小となる移動経路に沿って自律走行ロボット1を移動させる(ステップS11)。
【0066】
自律走行ロボット1の移動が開始されると、サーバ装置3は、エリア撮影手段2を構成する複数の人物検知カメラ21のうち、移動経路上に設けた複数の人物検知エリア40に設定した人物識別領域D内の人物検知人数が予め設定されたしきい値以上か否か、または、信号灯検知エリア50に設定した点灯識別領域H内の信号灯51の点灯パターンが通常の点灯パターン以外か否か、を所定の周期で判定する(ステップS12)。サーバ装置3による人物の判定については、上述したように、設定した人物検知エリア40を撮影するように設置された3つの人物検知カメラ21の人物識別領域Dでそれぞれ検出された人物検知人数の平均値(または、中央値(以下、判定値とも称する。))に応じて判定される。また、サーバ装置3による信号灯51の点灯パターンの判定については、上述したように、設定した信号灯検知エリア50を撮影するように設置された3つの信号灯検知カメラ22の点灯識別領域Hでそれぞれ検出された点灯パターンのうち、最も多い点灯パターンを信号灯51の点灯パターンとして判定する。
【0067】
人物検知エリア40の判定値が、各人物検知エリア40に予め設定されたしきい値以上の場合、または、信号灯検知エリア50が通常の点灯パターンではないと判定された場合、障害判定部34の通過コスト処理部38にてステップS5で設定した移動経路の通過コストを式1の計算式に従い算出して再設定する(ステップS13)。なお、人物検知エリア40における人物検知人数の判定と、信号灯検知エリア50における点灯パターンの判定は、所定の周期で判定されており、ステップS12において、2つの判定が同時に生起された場合も処理をステップS13に移行させる。
【0068】
各移動経路Pに設定したノードNに紐づく通過コストを再設定した後、再設定された通過コストを用いて経路算出部39にて通過コストが最小となる移動経路Pが算出される(ステップS14)。自律走行ロボット1は、設定された移動経路Pに沿って移動する(ステップS15)。
【0069】
その後、サーバ装置3は、自律走行ロボット1の自己位置推定と建物の平面図データを照合して目的地に到着したか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、自律走行ロボット1が目的地に到着した段階で搬送工程T2における自律走行ロボット1の制御を終了する。自律走行ロボット1が目的地に到着していない場合は、自律走行ロボット1が人物検知エリア40、または信号灯検知エリア50に進入したかどうかの判定がサーバ装置3にてなされる(ステップS17)。
【0070】
ステップS17において、人物検知エリア40に自律走行ロボット1がいると判定された場合、人物検知エリア40の人物識別領域D内の人物検知人数がサーバ装置3の障害判定部34で判定される(ステップS18)。ステップS18にて判定された人物識別領域D内の人数に応じて、人物検知エリア40内の自律走行ロボット1の動きを制御する(ステップS19)。ステップS19における、自律走行ロボット1の動きの制御とは、人物検知エリア40の人物識別領域D内の人物検知人数が0人の場合、移動速度を変更することなく人物検知エリア40を走行し、人物検知人数が1人以上の場合、人物検知エリア40内を、移動速度を低下して通行する、または人物検知エリア40に進入した時点で一時停止、または発報してこれから自律走行ロボット1が通過することを報知することを指す。自律走行ロボット1は、人物検知エリア40を通過するまでステップS17からステップS19の処理を繰り返す。なお、ステップS19における自律走行ロボット1の一時停止、および発報制御は、自律走行ロボット1が人物検知エリア40に最初に進入した時にのみ実施され、人物検知エリア40内を進行中は、自律走行ロボット1の速度制御のみ実施される。
【0071】
また、ステップS17において、信号灯検知エリア50に自律走行ロボット1が進入した場合、点灯識別領域Hの信号灯51の点灯パターンがサーバ装置3の障害判定部34で判定される(ステップS18)。ステップS18にて判定された点灯識別領域H内の信号灯51の点灯パターンに応じて、自律走行ロボット1の動きを制御する(ステップS19)。ステップS19における、自律走行ロボット1の動きの制御とは、信号灯検知エリア50の信号灯51の点灯パターンが通常の点灯パターンである場合、移動速度を変更することなく信号灯検知エリア50を走行し、信号灯51の点灯パターンが、通常の点灯パターン以外である場合、信号灯検知エリア50内を、移動速度を低下して通行する、または信号灯検知エリア50に進入した時点で一時停止、または発報してこれから自律走行ロボット1が通過することを指す。なお、ステップS19における、自律走行ロボット1の一時停止、および発報制御は、自律走行ロボット1が信号灯検知エリア50に最初に進入した時にのみ実施され、信号灯検知エリア50内を進行中は、自律走行ロボット1の速度制御のみ実施される。
【0072】
ステップS12における人物検知エリア40内の人物検知人数の判定と、信号灯検知エリア50内の信号灯51の点灯パターンの判定は、それぞれ独立して判定されている。例えば、人物検知人数の判定がなされている最中に信号灯51の点灯パターンが変更された場合、通過コストの変更処理が障害判定部34でなされ、経路算出部39は、通過コストの変更情報を加味して現在地から目的地までの移動経路を算出する。また、反対に、信号灯51の点灯パターンが変更されたことを検知した最中に人物検知エリア40内の人物検知人数がしきい値を超過した場合、通過コストの変更処理が障害判定部34でなされ、経路算出部39は、通過コストの変更情報を加味して現在地から目的地までの移動経路を算出する。このように、ステップS12からステップS19までの処理は、自律走行ロボット1が現在地から目的地まで到着する間、所定の周期で実行されており、人物検知エリア40に設定したしきい値以上の人物検知人数を検知した場合、または、信号灯51が正常でないパターンで点灯した場合、に移動経路の通過コストの計算がなされ、目的地までの移動経路を変更すべきかどうかの判定がなされる。
【0073】
自律走行ロボット1は、ステップS12からステップS19までの処理を目的地に到着するまで繰り返し処理する。自律走行ロボット1は、自己位置推定により、目的地に到着したと推定されると搬送工程T2による移動処理を終了する。自律走行ロボット1は、目的地にいる作業者が搬送物を受け取ったことを確認すると、制御情報が再び入力されるまで現在地から最も近い待機場所にて待機する。
【0074】
本発明は、以上のように構成されているために、人物検知エリア40に設定した人物識別領域D内の人物検知人数、または/および、信号灯検知エリア50に設定した点灯識別領域H内の信号灯51の点灯パターンに応じて移動経路Pの通過コストを変更して、変更された通過コストに基づき移動経路を変更可能に構成しつつ、人物識別領域D内の人物検知人数、または/および、点灯識別領域H内の信号灯51の点灯パターンに応じて、人物検知エリア40内、信号灯検知エリア50内の自律走行ロボット1の動きを制御することにより、自律走行ロボット1が効率的に目的地まで移動することができる。
【0075】
なお、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したりした構成、等も含まれる。また、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【符号の説明】
【0076】
1 自律走行ロボット
2 エリア撮影手段
3 サーバ装置
21 人物検知カメラ
22 信号灯検知カメラ
34 障害判定部
35 画像認識部
36 画像データ収集部
37 モデル学習部
38 通過コスト処理部
39 経路算出部
D 人物識別領域
H 点灯識別領域
M 制御システム
R 撮影領域
【要約】
【課題】移動体を効率的に移動可能とする移動体の制御システムを提供する。
【解決手段】自律走行可能な移動体と、前記移動体の現在地から目的地までの移動経路に設定された人物検知エリアを撮影可能に設けられた人物検知カメラを含むエリア撮影手段と、前記人物検知エリア内に人物を検知するための人物識別領域を設定するとともに、前記エリア撮影手段で撮影された撮影データから前記人物識別領域内の人物検知人数を算出し、前記人物識別領域に設定されたしきい値と比較して、前記人物検知人数が前記しきい値以上である場合に、前記移動経路に設定された通過コストを上昇させる処理を行うサーバ装置と、を含み、前記サーバ装置は、前記通過コストが最小値となるように前記移動体の前記移動経路を算出する、ものである。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9