(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】眼の手術のための手術用顕微鏡の非接触視覚化システム
(51)【国際特許分類】
A61B 3/13 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A61B3/13
(21)【出願番号】P 2024504581
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2022068719
(87)【国際公開番号】W WO2023006366
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】102021119297.8
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502303382
【氏名又は名称】カール ツアイス メディテック アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン エシッグ
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン べッダー
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195865(WO,A1)
【文献】特開2021-121821(JP,A)
【文献】特表2019-514507(JP,A)
【文献】特開2014-124277(JP,A)
【文献】特表2009-525817(JP,A)
【文献】米国特許第10765315(US,B2)
【文献】国際公開第99/20171(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/001200(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の手術のための手術用顕微鏡(2)の非接触視覚化システム(1)であって、
患者の眼(6)の前方に位置決め可能であり、前記患者の眼(6)の眼底(7)の実際の縦方向及び横方向に反転された画像を前記手術用顕微鏡(2)によって観察可能である中間像面(8)に供給する眼科用ルーペ(3)を備え、
前記眼科用ルーペ(3)が、第1のレンズ要素(27
1)と第2のレンズ要素(27
2)とを備え、
前記患者の眼(6)の前方に位置付けられた状態で、前記第1のレンズ要素(27
1)が、前記第2のレンズ要素(27
2)よりも前記患者の眼(6)に近く、
壁(30)が、前記第1のレンズ要素(27
1)から前記第2のレンズ要素(27
2)まで延在し、前記壁の自由端(31)が、前記第2のレンズ要素(27
2)が保持されるマウント(32)の形態である、
非接触視覚化システム(1)において、
前記マウント(32)が、前記第2のレンズ要素(27
2)の縁部が外科医に手術空間を与えるために露出される、少なくとも1つの切欠き(50、51)を備える
ことを特徴とする、
非接触視覚化システム(1)。
【請求項2】
前記壁(30)が周方向に全周にわたって形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項3】
前記眼科用ルーペ(3)がホルダコネクタ(55)を備え、前記ホルダコネクタ(55)によって、前記眼科用ルーペ(3)が前記手術用顕微鏡(2)に機械的に接続可能であることを特徴とし、
前記ホルダコネクタ(55)が接続部位において前記マウント(32)に接続され、
前記少なくとも1つの切欠き(50、51)の中心が、前記接続部位の中心から周方向に90°~150°、周方向に離間している、
請求項1又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの切欠き(50、51)が、前記マウント(32)に形成される2つの切欠き(50、51)を構成し、
前記2つの切欠き(50、51)の中心が、周方向に互いに60°~180°離間していることを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項5】
前記自由端(31)において、前記少なくとも1つの切欠き(50、51)が、周方向に20°~70°延在することを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの切欠き(50、51)が、前記少なくとも1つの切欠き(50、51)が前記第1のレンズ要素(27
1)の上方で終わるように、前記自由端から前記第1のレンズ要素(27
1)の方向に前記壁(30)内を延在し、したがって、前記壁(30)の所定の高さが、前記少なくとも1つの切欠き(50、51)の下で依然として存在することを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項7】
前記壁(30)が、前記第1のレンズ要素(27
1)とともに一体化された部品として形成されることを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項8】
前記第1のレンズ要素(27
1)と前記第2のレンズ要素(27
2)との間の中間空間に存在する可能性がある液体を除去することを可能とするために、少なくとも1つの貫通開口部(47、48、49)が前記壁(30)に形成されることを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの貫通開口部(47、48、49)が、前記第2のレンズ要素(27
2)よりも前記第1のレンズ要素(27
1)の近くに形成されることを特徴とする、
請求項8に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項10】
複数の貫通開口部(47、48、49)が、周方向に互いに離間されて、前記壁(30)に形成されていることを特徴とする、
請求項
8に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項11】
前記第1のレンズ要素(27
1)が、前記第2のレンズ要素(27
2)に面し、湾曲形態を有する境界面(36)を備え、
前記少なくとも1つの貫通開口部(47、48、49)が、前記第1のレンズ要素(27
1)の前記境界面(36)に接する下縁(47
1、48
1、49
1)を備えることを特徴とする、
請求項
8に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの貫通開口部(47、48、49)が、周方向において、少なくとも1つの切欠き(50、51)に対してオフセットされて配置されることを特徴とする、
請求項
8に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項13】
前記マウント(32)が、弾性クランプホルダ(43、44、45)の形態であることを特徴とする、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項14】
眼科用ルーペ支持体(4)が設けられ、
前記眼科用ルーペ(3)が前記眼科用ルーペ支持体(4)に機械的に接続され、
前記眼科用ルーペ支持体が、前記患者の眼(6)の前方に眼科用ルーペ(3)を位置付けるように働くことを特徴とし、
好ましくは、前記眼科用ルーペ(3)が、前記眼科用ルーペ支持体(4)に取り外し可能に接続される、
請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)。
【請求項15】
前記手術用顕微鏡(2)が、請求項1
又は2に記載の非接触視覚化システム(1)を備える、
眼の手術のための手術用顕微鏡(2)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部の特徴を備える、眼の手術のための手術用顕微鏡の非接触視覚化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる非接触視覚化システムは、眼の後部セクションでの眼科手術のために容易に使用され、これらは、患者の眼に配置されるコンタクトレンズによる以前の視覚化に取って変わり始めている。これらのシステムは、患者の眼の直上に置かれ、眼底の(横方向及び縦方向に反転されているが)実際の画像を中間像面に供給する眼科用ルーペとして知られているもので作動し、次いで、その画像は、手術用顕微鏡を使用して観察することができる。
【0003】
患者の眼の近くへの眼科用ルーペの配置の結果として、外科医の手術空間は制限される。(たとえば、2つのレンズ要素を備える)複数のレンズ要素を有する眼科用ルーペの場合、これは特に問題であり、それは、複数のレンズ要素のためにここで必要とされるマウントが、外科医のための手術空間をさらに制限するためである。これは、外科的処置の不必要な障害につながる。
【0004】
米国特許第10765315B2号は、請求項1の前文の特徴を含む、眼科手術用の手術用顕微鏡の非接触視覚化システムを記載している。国際公開第99/20171A1号は、目に面するコンタクトレンズ要素と、そこから間隔を置いて配置されたさらなるレンズ要素とを備える間接的な視覚化システムを記載している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景の下、上述の問題をできるだけ完全に克服することができるように、最初に示された種類の非接触視覚化システムを発展させることが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、独立請求項1及び15に定義されている。有利な構成は、従属請求項に明記されている。
【0007】
壁は同時に第2のレンズ要素のためのマウントとして働くので、安定性のために、ある程度の機械的に最低限の大きさ及び厚さを有しなければならない。外科医にさらなる手術空間を与えるために、第2のレンズ要素の縁部が露出される、少なくとも1つの切欠きのみが設けられるので、必要な安定性は、本発明に従って保持される。
【0008】
切欠きは、自由端から第1のレンズ要素の方向に壁において延在してもよく、切欠きは好ましくは、第1のレンズ要素の上側まで延在しないが、その直前で終了する。結果的に、壁のある程度の高さは、切欠きの領域においてさえ、依然として提供される。これは、安定性上の理由で有利である。
【0009】
切欠きは、第1のレンズ要素の方向に先細りになってもよい。
【0010】
これは、第2のレンズ要素の縁部が露出される、厳密に1つの切欠きに関するものであってもよく、又は、第2のレンズ要素の縁部が露出される、複数の切欠きに関するものであってもよい。壁は、さらなる開口又は切欠きが設けられないように具現化することができる。しかしながら、代わりに、1つ又は複数のさらなる開口及び/又は切欠きが壁にさらに形成されることは当然可能である。
【0011】
壁は同時に第2のレンズ要素のためのマウントとして働くので、安定性のために、ある程度の機械的に最低限の大きさ及び厚さを有しなければならない。壁が周方向に全周にわたって形成されることが好ましい。すなわち、切欠き及び任意選択的にさらなる開口は好ましくは、壁が周方向において中断されない又は完全に中断されないように配置される。したがって、壁は好ましくは、周方向の各位置において、壁が第1のレンズ要素から第2のレンズ要素への方向に延在する少なくとも1つの部分を備えるように形成される。別の表現では、壁は、壁が周方向に完全に閉じられる、又は、少なくとも1つの仮想の閉じた曲線が壁上で周方向に続くように具現化することができる。
【0012】
特に、周方向において、好ましくは、80°~140°、特に、90°~130°、特に好ましくは、120°離間している、2つの切欠きが提供される。この間隔は好ましくは、周方向におけるそれぞれの切欠きの中心に関するものである。周方向において、自由端における切欠きの幅は、20°~70°、特に、30°~60°又は30°~50°、特に好ましくは、35°~45°とすることができる。よって、幅は、たとえば、40°とすることができる。
【0013】
眼科用ルーペはホルダコネクタを備えてもよく、ホルダコネクタによって、眼科用ルーペは、手術用顕微鏡に機械的に接続可能であり、ホルダコネクタは、接続部位においてマウントに接続され、少なくとも1つの切欠きは、(好ましくは、周方向の切欠きの中心及び周方向の接続部位の中心に対して)周方向に90°~150°接続部位から離間している。
【0014】
さらにまた、少なくとも1つの貫通開口部を壁に形成することができる。この少なくとも1つの貫通開口部は、2つのレンズ要素の間の中間空間に存在する可能性がある液体を除去することを可能とするように働く。これは、液体を除去するための厳密に1つの貫通開口部、又は、液体を除去するための複数の貫通開口部に関するものであってもよい。
【0015】
これは、第一に、必要な機械的安定性を保証し、第二に、液体の除去を確実なものとする。
【0016】
周方向において、少なくとも1つの貫通開口部は、20°~70°、特に、30°~60°又は30°~50°、特に好ましくは、35°~45°の幅を備えてもよい。たとえば、幅は40°とすることができる。
【0017】
特に、壁は、第1のレンズ要素とともに一体化された部品として形成することができる。これは、特に好ましくは、射出成形部品である。これは、使い捨て製品又は使い捨て物品として眼科用ルーペを具現化する選択肢を提供し、同時に、必要な光学品質を保証する。マウントで、第1のレンズ要素に対して光学的に特定された位置に第2のレンズ要素が位置付けられることを保証することが可能である。壁の第1のレンズ要素と一体化された実施形態は、好ましくは、凝集結合として理解される。しかしながら、咬合接続による実現も可能である。
【0018】
特に、第2のレンズ要素は、第1のレンズ要素と同心状に配置することができる。
【0019】
少なくとも1つの貫通開口部は、好ましくは、第2のレンズ要素よりも第1のレンズ要素の近くに形成される。特に、少なくとも1つの貫通開口部は、その下縁が第2のレンズ要素に面する第1のレンズ要素の境界面に直接接するように形成することができる。この場合に第1のレンズ要素の境界面に接する下縁は、好ましくは、結果として窪みが設けられない形態である。たとえば、下縁は、第1のレンズ要素の光軸に対して垂直に延在してもよい。
【0020】
複数の貫通開口部は、本発明による視覚化システムの場合、壁に形成されてもよく、周方向に互いに離間されてもよい。よって、少なくとも1つの貫通開口部は、複数の貫通開口部を備えてもよい。この場合、これは、2つ、3つ、4つ、5つ、又はより多くの貫通開口部に関するものであってもよい。
【0021】
一例として、3つの貫通開口部が設けられてもよい、それらはそれぞれ、周方向に互いに120°離間している。この間隔は好ましくは、周方向におけるそれぞれの貫通開口部の中心に関するものである。
【0022】
第1のレンズ要素や及び/又は壁は、プラスチックから作られてもよい。第1のレンズ要素に加えて、第2のレンズ要素も、プラスチックから作られてもよい。第2のレンズ要素は、ホルダコネクタを備えてもよく、ホルダコネクタは、第2のレンズ要素と一体的に形成することができる。特に、ホルダコネクタは、二成分射出成形法で、第2のレンズ要素とともに製造されてもよい。ホルダコネクタとの第2のレンズ要素の一体型形態は、好ましくは、咬合接続として理解される。しかしながら、咬合接続による実現も可能である。
【0023】
マウントは、スナップインクロージャ、クランプ接続、又は弾性クランプホルダの形態とすることができる。このために、マウントは、複数の弾性クランプフィンガ(たとえば、周方向においてそれぞれのクランプフィンガの中心に対して120°周方向に互いに離間されたそのような3つのクランプフィンガ)を備えてもよく、それは、たとえば、それぞれがクランプ溝を備える。第2のレンズ要素は、クランプ溝に突出する対応するマウント領域を有してもよい。さらに、マウントは、対応するマウント領域を備えてもよく、そのマウント領域は、第2のレンズ要素のための、又は、第2のレンズ要素のマウント領域のための止め面を備える。
【0024】
しかしながら、たとえば、ねじ込み接続、バイオネット接続などの、マウントによる任意の他の種類の保持も可能である。
【0025】
少なくとも1つの切欠き及び少なくとも1つの貫通開口部は、周方向に互いにオフセットされて配置されることが好ましい。特に、少なくとも1つの切欠き及び少なくとも1つの貫通開口部は、いずれの場合にも、周方向に互いに離間しているように配置することができる。たとえば、距離は、(周方向におけるそれぞれの切欠きの中心及び周方向におけるそれぞれの貫通開口部の中心に対して)60°とすることができる。
【0026】
さらに、第1のレンズ要素及び壁は、n個の貫通開口部及び/又はn個の切欠きが設けられる場合、n回の回転対称性を一緒に備えてもよく、ここで、nは≧1及び≦6の整数である。特に好ましくは、n=3である。
【0027】
非接触視覚化システムはさらに、眼科用ルーペが機械的に接続される、眼科用ルーペ支持体を備えてもよい。眼科用ルーペ支持体によって、眼科用ルーペは、手術用顕微鏡の結像ビーム経路に位置付けることができ、結像ビーム経路から移動させることができる。このために、眼科用ルーペ支持体はさらに、手術用顕微鏡に機械的に接続されてもよい。さらに、眼科用ルーペ支持体は、手術用顕微鏡の光軸を中心とする眼科用ルーペの回転移動が可能であるように具現化されてもよい。よって、ユーザは、たとえば、眼科用ルーペを使用するときに、所望し、有利と考える回転位置に、眼科用ルーペを持ってくることができる。
【0028】
さらに、眼科用ルーペと眼科用ルーペ支持体との間の機械的接続は、分離可能な接続とすることができ、その結果、眼科用ルーペは交換可能である。眼科用ルーペが使い捨て物品の形態である場合、これは特に有利である。
【0029】
眼の手術のための本発明による手術用顕微鏡は、特に、三次元手術用顕微鏡の形態とすることができる。
【0030】
上記の特徴及び以下にさらに説明される特徴が、本発明の範囲を逸脱しない範囲で、特定の組合せだけでなく、他の組合せで又は別々に使用することができることは言うまでもない。
【0031】
本発明は、同様に本発明に欠かせない特徴を開示する添付図面を参照し、例示的な実施形態に基づいて、さらにいっそう詳細に下記に記載される。これらの例示的な実施形態は、単に例示のために提供され、限定するものと解釈されるべきではない。たとえば、多数の要素又は構成要素を有する例示的な実施形態の説明は、これらの要素又は構成要素のすべてが実施態様のために必要であることを意味するとして解釈されるべきではない。むしろ、他の例示的な実施形態は、代替的な要素及び構成要素、より少ない要素若しくは構成要素、又は追加の要素若しくは構成要素も含んでもよい。特に明記しない限り、異なる例示的な実施形態の要素又は構成要素は、互いに組み合わせることができる。例示的な実施形態のうちの1つについて記載される修正及び変更は、他の例示的な実施形態にも適用可能である可能性がある。繰り返しを避けるために、異なる図において同じ又は互いに対応する要素は、同じ参照符号によって示され、繰り返し説明されない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】手術用顕微鏡2とともに、非接触視覚化システム1の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図4】
図1の眼科用ルーペ3の第1のレンズ要素27
1の下からの図を示す。
【
図5】
図1の眼科用ルーペ3の壁30とともに第1のレンズ要素27
1の斜視図を示す。
【
図6】
図1の眼科用ルーペ3のさらなる例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図7】
図1の眼科用ルーペ3のさらなる例示的な実施形態の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示される非接触視覚化システム1の例示的な実施形態の場合、非接触視覚化システム1は、眼の手術のために手術用顕微鏡2と一緒に示されている。非接触視覚化システム1は、眼科用ルーペ3と眼科用ルーペ支持体4とを備え、それらによって、眼科用ルーペ3を、
図1の両矢印5によって概略的に示されるように、手術用顕微鏡2の結像ビーム経路内に押し込む(若しくは、位置付ける)ことができ、且つ、結像ビーム経路から押し出す(若しくは、取り除く)ことができる。結像ビーム経路外の眼科用ルーペ3の位置は、
図1において破線を使用して示されている。
【0034】
図1からさらに推測されるように、眼科用ルーペ3は、眼科用ルーペ支持体4によって患者の眼6の直上に配置することができ、その結果、患者の眼6の眼底7の実際の縦方向及び横方向に反転された画像が、中間像面8において画像化される。次いで、眼底7のこの実際の縦方向及び横方向に反転された画像は、手術用顕微鏡2を使用して観察される。
【0035】
手術用顕微鏡2は、患者の眼6(たとえば、この場合には眼底7)を照らすための照明ユニット9と、照らされた患者の眼6の拡大撮像のための、この場合には、さらに中間像面8の画像の拡大撮像のための撮像光学ユニット10とを備えてもよい。眼の瞳孔28及び水晶体29を有する患者の眼6は、ここでは概略的にのみ示されている。
【0036】
図1において概略的に示される撮像光学ユニット10は、レンズ11と、画像センサ13上の患者の眼6の照明領域を画像化するための第1のチューブ型光学ユニット12とを備える。さらに、撮像光学ユニット10は、レンズ11と第1のチューブ型光学ユニット12との間に配置された第1のビームスプリッタ14と、第1のビームスプリッタ14の下流に配設された第2のチューブ型光学ユニット15と、ユーザの概略的に示された眼18によって示される、光学接眼部17が設けられるように第2のチューブ型光学ユニット15の下流に配設された接眼光学ユニット16とを備える。
【0037】
照明ユニット9は、光源19と、光源19の下流に配設されたコレクタ光学ユニット20と、レンズ11と第1のチューブ型光学ユニット12との間に配置された第2のビームスプリッタ21と、レンズ11とを備える。光源19からの光は、中間像面8まで概略ビームプロファイルで
図1に示されるように、コレクタ光学ユニット20によって集束され、入力は、照らされる患者の眼6の領域ができるだけ均一に照らされるように、第2のビームスプリッタ21によって第2のビームスプリッタ21とレンズ11との間のビーム経路に結合される。一例として、光源19は、ハロゲンランプ、キセノン放電ランプ、LED、又はレーザの形態とすることができる。
【0038】
ここまでに記載された手術用顕微鏡2の要素は、
図1において概略的に示されるように、ハウジング22内に配置される。眼科用ルーペ支持体4は、ハウジング22に機械的に接続され、
図1に概略的に示される眼科用ルーペ3の出し入れの摺動に加えて、タレット機構も、眼科用ルーペ支持体4上に形成されてもよく、その結果、z軸を中心とした、この場合には、手術用顕微鏡2の結像ビーム経路の光軸OAを中心とした眼科用ルーペ3の回転も可能である。
【0039】
さらに、手術用顕微鏡2は制御装置23を備え、制御装置23は、プロセッサP及びメモリMを備えて、たとえば、光源19、画像センサ13、及びz駆動装置24に接続され、z駆動装置24によって、レンズ11を合焦のためにz方向に移動させることができる。
【0040】
さらに、電子表示装置25及び入力装置26が、
図1に概略的に示されるように、制御装置23に接続されてもよい。この場合、入力装置26は、キーボードとして単に概略的に示されている。他の種類の入力装置、たとえば、フットスイッチなども可能である。
【0041】
この場合、眼科用ルーペ3は、第1の境界面35及び第2の境界面36を有する厳密に1つの第1のプラスチックレンズ要素27
1と、第1の境界面37及び第2の境界面38を有する第2のプラスチックレンズ要素27
2とを備え、第2のレンズ要素27
2の方向に延在する壁30は、第1のプラスチックレンズ要素27
1と一体的に形成されている。壁30の自由端31は、特に
図2~5とともに識別可能であるように、マウント32として働く。境界面35~38は好ましくは湾曲形態を有し、境界面35~38のうちの少なくとも1つは非球面的に湾曲している。残りの境界面(単数又は複数)は好ましくは球状に湾曲している。
【0042】
マウント32は、第1のマウント部40と、第2のマウント部41と、第3のマウント部42とを備え、それらは、いずれの場合にも、周方向に互いに120°離間している。各マウント部40~42は、第1の止め領域401及び第2の止め領域402、第1の止め領域411及び第2の止め領域412、さらに、第1の止め領域421及び第2の止め領域422を備え、いずれの場合にも、それぞれの間に、クランプ溝431、441、451を有する弾性クランプフィンガ43、44、45が配置されている。
【0043】
第2のレンズ要素27
2は、(特に、
図2及び3で識別可能な)3つのマウント領域49
1~49
3を備え、その3つのマウント領域49
1~49
3は、弾性クランプフィンガ43~45のクランピング溝43
1、44
1、及び45
1にクランプされ、第2のレンズ要素27
2が第1のレンズ要素27
1と同心状に保持されるように、止め領域40
1~40
3と接触している。マウント32と第2のレンズ要素27
2との間のこの種類のクランプ接続は、スナップイン接続と呼ぶこともできる。
【0044】
第2のレンズ要素272は、ホルダコネクタ55をさらに備え、ホルダコネクタ55によって、眼科用ルーペ支持体4への分離可能な接続が可能である。
【0045】
壁30は同時に第2のレンズ要素272のためのマウント32として働くので、安定性のために、ある程度の機械的に最低限の大きさ及び厚さを有しなければならない。これは、実質的に閉じられた実施形態を有する壁30をもたらし、その結果、液体は2つのレンズ要素271と272との間に収集できるが、再び流れ出ることはできない。これは、光学画像品質を大きく損ない、それによって、特定の状況下で、部分的にのみ合焦された撮像又はさらには合焦されない撮像となる可能性がある。
【0046】
したがって、そのより低い領域(よって、第1のレンズ要素271に近い領域)において、ここでの壁30は、3つの貫通開口部46、47、及び48を備え、その3つの貫通開口部46、47、及び48は、周方向に互いに離間し、ここでは、周方向に互いに120°オフセットされて配置される。周方向の各貫通開口部46~48の幅は、たとえば、40°とすることができる。これらの貫通開口部46~48によって、不必要な液体自体が流れ出る、及び/又は、ユーザ(たとえば、外科医)が必要に応じて液体を除去することが可能である。このために、たとえば、適切な液体吸収ツール(たとえば、スワブ)を、貫通開口部46~48に対して、又は、貫通開口部46~48内に保持することができる。
【0047】
よって、不必要な液体は、2つのレンズ要素271と272との間の中間空間から簡単に除去することができ、所望の光学画像品質をいつまでも保証することが可能である。
【0048】
特に
図3で明らかであるように、貫通開口部46~48は、好ましくは、それらの下縁46
1、47
1、48
1が第1のレンズ要素27
1の上部境界面36に接する形態である。上部境界面36は、第2のレンズ要素27
2に面する第1のレンズ要素27
1の境界面である。好ましくは、貫通開口部46~48の下縁46
1、47
1、48
1は、貫通開口部46~48の下縁46
1、47
1、48
1と上部境界面36との間に窪みが生成されない形態である。たとえば、ここで存在する事例では、下縁46
1、47
1、48
1は、第1のレンズ要素27
1の光軸に略垂直に延在する形態である。
【0049】
単一のレンズ要素のみ有する以前の実質的に縁部のない眼科用ルーペと比較すると、マウント32のために、第2のレンズ要素272の横方向に隣接してより多くの空間がとられるというさらなる問題がある。これは、外科医の作業空間を制限する。マウント32による第2のレンズ要素271の所望の保持を提供可能とするために、壁30のある程度の機械的に最小限の大きさ及び厚さが安定性のために必須である。しかしながら、このために、マウント32が第2のレンズ要素272の縁部全体を保持する必要はないことが確認された。したがって、壁30は、ここでは、第2のレンズ要素272の縁部が露出される2つの切欠き50及び51が設けられるように具現化される。2つの切欠き50及び51は、周方向に互いに、たとえば、120°離間している。さらに、マウント32の領域においてホルダコネクタ55のための十分な空間を提供するために、第3の切欠き52も設けられる。
【0050】
しかしながら、切欠き50及び51は、ユーザ又は外科医のために設けられる。ホルダコネクタ55の位置が12時を示す場合、第1の切欠き50及び第2の切欠き51は好ましくは、4時及び8時の位置に設けられるが、それは、外科医の手が静止するのがその位置であるためである。
【0051】
特に
図2~4で明らかであるように、第1の切欠き50及び第2の切欠き51は、第1のレンズ要素27
1の方向に、自由及び31から延在する。本明細書に記載される例示的な実施形態において、安定性のために切欠き50及び51の領域において壁30のある程度の高さをさらに提供するために、切欠き50~51は、第1のレンズ要素27
1の上側36まで延在しないが、その直前で終了する。したがって、切欠き50及び51の下縁50
1、50
2は、貫通開口部46~48の下縁46
1、47
1、48
1より上に配置される。切欠き52の下縁521も同様である。壁30の自由端31において、たとえば、2つの切欠き50及び51のそれぞれは、40°の周方向の範囲を備える。周方向の切欠き50と51との間の距離、この場合、たとえば、120°は、壁30の自由端31における切欠き50、51の中心に関するものである。円周方向において、切欠き52は、2つの切欠き50及び51から120°離間している。
【0052】
特に
図2、3及び、5から推測されるように、周方向における切欠き50、51の範囲(又は、幅)は、第2のレンズ要素27
2から第1のレンズ要素27
1への方向に先細りしている。切欠き50、51の幅が下縁50
1、50
2の方向に減少する、又は、切欠き50、51が先細りになると言うこともできる。
【0053】
図2~5から推測されるように、貫通開口部46~48及び切欠き50~52は、円周方向において、切欠き50~52及び貫通開口部46~48がいずれの場合にも交互に設けられるように配置される。たとえば、円周方向において、これらは、いずれの場合にも、互いに60°オフセットされている。このように、所望の最小高さ、よって、ある程度の最小限の安定性は、壁30の各位置において提供することができる。
【0054】
よって、特に、壁30は、周方向に全周にわたって形成される。したがって、壁30は、周方向において中断されない。よって、第1のレンズ要素271から第2のレンズ要素272への方向において、壁の一部が少なくともいくつかの部分の上に延在しない位置は周方向にない。別の表現では、壁を周方向に進む閉じられた曲線を想像することができる。よって、常に周方向に閉じられた経路がある。
【0055】
この場合、(壁30を有する)第1のレンズ要素271は、非常に対称的な形態を有するので、(壁30を有する)第1のレンズ要素271の光軸を中心とした(壁30を有する)第1のレンズ要素271の120°の回転は、それ自体にマッピングする。よって、3回の回転対称性が存在する。
【0056】
眼科用ルーペ3は、特に、眼科用ルーペ支持体4に取り外し可能に接続されるように具現化することができる。この場合、たとえば、眼科用ルーペ3が使い捨ての物品として具現化され、そのため、厳密に1回使用可能であることは好ましい。その使用後に、眼科用ルーペ3は処分され、その結果、特に、眼科用ルーペ3の別の必要な洗浄及び消毒に関する問題がない。この場合、眼科用ルーペ3は好ましくは、プラスチックから作られる。特に、眼科用ルーペ3は、プラスチック成形品とすることができる。
【0057】
図6は、
図1による手術用顕微鏡2と一緒に使用することができる、非接触視覚化システム1のさらなる例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、切欠き50、51、及び52のみ設けられる。しかしながら、壁30は、
図2~5の例示的な実施形態に存在するような任意の貫通開口部を含まない。
【0058】
図6による例示的な実施形態によって得られる利点は、切欠き50及び51が設けられるので、第2のレンズ要素27
2の領域でさえ、十分な手術空間がユーザ又は外科医のために設けられるということである。結果的に、
図6による例示的な実施形態は、
図2~5による例示的な実施形態と、貫通開口部が設けられないという点のみ異なる。しかしながら、
図2~5の実施形態のすべての他の特徴及び構成は存在する。
【0059】
図7は、
図1による手術用顕微鏡2と一緒に使用することができる、非接触視覚化システム1のさらなる例示的な実施形態を示す。この例示的な実施形態では、眼科用ルーペ3は、貫通開口部46~48のみ備える。しかしながら、切欠き50~52は設けられていない。その他の点では、
図2~5による例示的な実施形態のすべての特徴が同様に実装される。結果的に、
図7による例示的な実施形態の利点は、2つのレンズ要素27
1と27
2との間の空間で収集することができる液体が、液体自体が流れ出る、及び/又は、必要に応じてユーザが除去することができることである。