(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】材料表面の空隙率計測方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/08 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
G01N15/08 H
(21)【出願番号】P 2021095523
(22)【出願日】2021-06-08
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】713013777
【氏名又は名称】新村 稔
(73)【特許権者】
【識別番号】511285440
【氏名又は名称】株式会社セイコーウェーブ
(72)【発明者】
【氏名】新村 稔
【審査官】中村 圭伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-071125(JP,A)
【文献】国際公開第2020/255963(WO,A1)
【文献】特開2016-024052(JP,A)
【文献】特開2019-086294(JP,A)
【文献】特開2020-098108(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0187274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00 - 21/10
G01B 11/00 - 11/30
G01M 99/00
G01N 15/08
G01N 17/00 - 19/10
G01N 21/84 - 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
免震基礎コンクリート表面の空隙率を算出するにあたり、
(1)
分解能0.5mm以下の性能を持った、光による3次元形状計測技術を用いて該表面を計測し、3次元座標データを取得する工程と、
(2)
該3次元座標データを解析し、空隙に伴う凹み部の深さ数値を得る工程と、
(3)
該深さ数値を縦横2.5mm格子で区切り、その代表値をCSV書式のデータファイルとして出力する工程と、
(4)
出力されたCSVデータファイルをエクセル等のスプレッドシートソフトウェアに読み込み、VBA機能を使って、深さ0.5mm以上かつ横に2つ以上のセルが続いた場合のみ着色し、そのセル数をカウントする工程と、
(5)
CSVデータ全体のセル数(格子数)で前記着色セル数を割ることで、空隙率を算出する工程、
を備えることを特徴とする、免震基礎コンクリート表面の空隙率を算出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料表面の空隙率計測方法及び装置に関し、中でも免振基礎コンクリート表面の空隙率計測方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,建物と基礎との間に積層ゴムなどの免震装置を取り付けることで、地震による揺れが直接建物に伝わらないようにした免震構造のニーズが高まっている。免震装置1は、
図1に示すように、ベースプレート2と呼ばれる上下に設置した鋼板を介して上部構造体3および免震基礎4と接合している。
施工においては,ベースプレート26と構造体を一体化させるため、
図2のようにベースプレート2を設置した状態でコンクリート512を打ち込む必要がある。このとき、下部側の免震基礎コンクリート4については、ベースプレート下部の免震基礎コンクリート表面4aに空隙ができないよう施工する必要があるが、個々の免震基礎についてベースプレートを取り除いて充填状況を確認することはできない。
そのため,実際の工事に先立って実物大の施工試験を実施し、設計者が定めた充填率目標を満足しているかを確認することで、予定している施工計画に不備がないことを確認している。この施工試験では、試験体からベースプレートを取り除き、下部のコンクリート表層部の空隙率を算出する。ここで空隙率が所定の値未満であれば施工計画の妥当性が確認され、実施工の着手が認められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】大林組技術研究所報 No.83 2019 株式会社大林組
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
免振基礎コンクリート4の上に免振装置1を取り付ける場合、該装置を取り付けるためのベースプレート2を免振基礎コンクリート4の上に打ち込む必要がある。実際の工事では、
図2ベースプレート下部へのコンクリート打設方法の断面図に示すように 配筋を型枠6で囲み、配筋の上に置いたべースプレート2の中央部に設けた開口部からコンクリート5を流し込む作業を行うが、コンクリート表面4a2の充填率が低いと、鉛直荷重を免振基礎コンクリート4に効率よく伝達できない可能性がある。一般的には90~95%の充填率が必要とされている。充填率を測定するためには、一旦、ベースプレート2を外して、充填漏れ、いわゆる空隙8の全面積を計測しなければならない。
充填率を算出する手法として、従来は、目視による空隙の発見とフェルトペンによる着色、着色した領域を物差しで測る、などの手作業が中心で、例えば1メートル四方の免振基礎コンクリートの計測に数日を要するなど、作業工程上の課題となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明では以下に示す様な、光による3次元表面形状計測手段を用いる。
まず、計測対象である免振基礎コンクリート表面を光3次元計測装置で計測し、該表面形状をデジタルデータ化する、次に、当該データを専用の解析ソフトで処理し必要とされる空隙率を算出する。その際用いる3次元計測装置は、構造化光法と称される計測原理を採用し、必要十分な計測精度を保証するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の空隙率計測方法及び装置によれば、免振基礎コンクリート表面の空隙率を数秒から数十分で計測結果が出力できるので、作業効率の大幅な向上に繋がり、その結果、計測作業工程の短縮と経費の削減に寄与する。さらに、空隙率算定基礎データの信頼性の向上により空隙率算定精度も向上し、また、デジタルデータとして可視化や記録性が向上するという効果がある。さらに、本発明の方法及び装置は、計測対象に対して非接触・非侵襲という特徴があるので、被計測面を汚したり傷付けたりすることがないという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ベースプレート下部へのコンクリート打設方法の断面図
【
図3】免振基礎コンクリートの表面を3次元形状計測装置でスキャンする説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付して説明を省略している。
【実施例】
【0010】
図3は本発明による計測方法及び装置3を、
図2で示す免振基礎コンクリート表面4aの空隙率の計測に適用した一つの実施例の説明図である。計測作業員9が当該計測装置10を持ち、被計測対象であるコンクリート表面4aをスキャンしていく。該計測装置10の一度のスキャンで計測できる範囲4はA4サイズ程度のため、一般的には、複数回のスキャンデータをPC上で自動的に繋ぎ合わせ、計測を必要とされるコンクリート表面4a全体のデータとして完成させる。
図4に本実施例による計測作業の流れ図を示す。
【0011】
次に、計測範囲が横400mm、縦150mmのコンクリート表面4aの具体的な計測例について解説する。本例では、深さ0.5mm未満の凹みは無視する設定とした。これは、この種の工事の場合、コンクリート表面4aの平滑度は、通常0.5mm以下に抑えられているからである。また、たとえコンクリート表面4aの平滑度が0.5mm以上であっても、当該空隙を取り囲む局所表面から算出した基準面と比較して、相対的に深さが0.5mm未満の場合は無視することができることにした。
【0012】
空隙を有するコンクリート表面4aを本実施例の計測装置10でスキャン計測すると、
図5で示す3次元表面形状データが得られる。次に、該データをPC搭載のソフトで3次元データ数値処理し、空隙に伴う凹み部の深さをカラーマップ表示したものを
図6に示す。本図の右側のカラーバーは、0.5mm以上、3.92mmまでの深さを示している。さらに、本図の空隙深さデータを、縦横2.5mmの格子で区切り、CSVデータとして出力したものに対し、エクセルのVBA機能を使って、深さ0.5mm以上、横方向長さ5mm以上の凹み部を赤で着色した解析結果のマップ表示を
図7に示す。有効空隙の具体的な選別方法としては、各行において、左から右へ、深さ0.5mm以上のデータをも持つセルを探し、その右隣りセルが0.5mm以上である場合にのみ該当するセルを赤く染め、該当空隙であるとしてカウントする。一つの行に於いてその作業が完了すると下の行に移り、同じ作業を繰り返す。その結果として、0.5mm以上の深さがあり、かつ長さが5mm以上である空隙のセルの数量、つまり面積を求めることができる。
図8は
図7の検出結果から空隙率を数値化したものである。
【0013】
なお、上記実施例では、計測対象としてコンクリートの表面の計測について説明しているが、本発明が適用可能な材料表面はコンクリート面に限定されないことは指摘するまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の材料表面の空隙率計測方法及び装置によれば、被計測表面の凹み具合と数量を素早く、定量的・客観的に計測できるので、コンクリートを取り扱う場面が多い土木建築分野で有効に利用できる。さらに、本発明の方法及び装置が適用可能な材料表面はコンクリート面に限定されないので、アスファルト道路面の凹み数量計測や、構造体壁面等のレンガの歪みやタイルの剥がれ計測に利用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1 免振装置
2 ベースプレート
3 上部構造体
4 免振基礎コンクリート
4a 免振基礎コンクリート表面
5 打ち込みコンクリート
5a コンクリートの打ち込み方向
6 型枠
7 ホッパー
8 空隙
9 計測作業員
10 3次元形状計測装置
11 単発スキャンエリア
12 計測用投射光
13 全計測エリア
14 上部構造体