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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/90 20180101AFI20240807BHJP
   B60N 2/56 20060101ALI20240807BHJP
   A47C 7/62 20060101ALI20240807BHJP
   A47C 7/74 20060101ALI20240807BHJP
   H05B 3/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/56
A47C7/62 Z
A47C7/74 B
H05B3/20 346
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020051307
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146986
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】川田 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】田邉 佑磨
(72)【発明者】
【氏名】大野 創
(72)【発明者】
【氏名】園田 貴正
(72)【発明者】
【氏名】島崎 隼人
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-504082(JP,A)
【文献】特許第3707363(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60N 2/56
A47C 7/62
A47C 7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の臀部を支持するシートクッションと、
該シートクッションと連結され前記乗員の背凭れとなるシートバックと、
前記シートクッション又は前記シートバックの一部に設けられた荷重センサと、
該荷重センサより前記乗員側に配置されるヒータ線と、
該ヒータ線の位置決めをする中間部材と、を備え、
前記シートクッション又は前記シートバックは、パッドと、該パッドを覆う表皮材と、から構成されており、
前記荷重センサは付加される荷重によりオンオフ可能な接点部を有し、
前記中間部材は、前記荷重センサと前記ヒータ線との間に配置され、
前記ヒータ線は、前記表皮材の裏面に直接接触しており、
複数の前記ヒータ線が、前記乗員側から見て前記荷重センサの前記接点部に重なる位置に配置されることを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
前記ヒータ線が、前記荷重センサの前記接点部の中心からずれた位置で前記接点部に重なることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ヒータ線が、前記荷重センサの前記接点部の中心と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記中間部材は基布であり、
前記ヒータ線は前記基布上に固定されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記基布は、前記シートクッション又は前記シートバックを構成する前記パッドの表面に固定されることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記基布は、前記シートクッション又は前記シートバックを構成する前記表皮材の裏面に固定されることを特徴とする請求項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
前記中間部材は、可撓性を有する部材であることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【請求項8】
前記シートクッション及び前記シートバックは、
骨格を形成するフレームを備え
前記フレームは、前記パッドにより被覆されていることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに係り、特に、シートバック又はシートクッションに荷重センサが設けられた乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートには、乗員が着座したことを検知する荷重センサ―と、暖房用としてシートを暖める発熱体(ヒータ)との両方がシート内に配置されたものがある。
【0003】
乗物用シートに設けられる荷重センサは、乗物用シートに乗員が座っているか否か、乗員が大人か子供か、さらにどのような姿勢で着座しているか等を判別するために用いられる。荷重センサによる乗員の検知は、例えばシートベルトが非着用の場合に、乗員に対して着用を促すシートベルトリマインダ(SBR)システムに使用される。
荷重センサは、多接点からなるメンブレンスイッチにより構成され、例えば乗物用シートのシートクッションを構成するトリムカバー(表皮材)とクッションパッドとの間に配置される。
【0004】
シート内に配置される発熱体はシート状に形成されたシートヒータであり、例えばクッションパッドに配置された荷重センサの上に配置される。シートヒータは熱伝導率の小さい材料、例えばポリエステル樹脂等の不織布により作製された基材に電気抵抗体からなるヒータ線を配設したものである。従来の乗物用シートでは、荷重センサの接点部(感圧部)の鉛直上又はその近傍にヒータ線が直接配置されており、荷重センサの接点部上に所定の荷重が付加された場合でも、シートヒータが撓まず乗員の着座状態を検知する感度が低下するおそれがあった。
そのため、例えば特許文献1に記載されるシートでは、ヒータ線が荷重センサ(特許文献1では着座センサと呼ばれる)に与える影響を考慮して、ヒータ線が荷重センサと重ならない位置に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-270338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヒータ線を荷重センサと重ならないよう配置すると、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が発生し難くなるものの、ヒータ線の配置箇所に制限が生じるため、温熱性能に影響が出る場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒータ線と荷重センサとを重ねて配置した場合でも荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される乗物用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題は、本発明の乗物用シートによれば、乗員の臀部を支持するシートクッションと、該シートクッションと連結され前記乗員の背凭れとなるシートバックと、前記シートクッション又は前記シートバックの一部に設けられた荷重センサと、該荷重センサより前記乗員側に配置されるヒータ線と、該ヒータ線の位置決めをする中間部材と、を備え、前記シートクッション又は前記シートバックは、パッドと、該パッドを覆う表皮材と、から構成されており、前記荷重センサは付加される荷重によりオンオフ可能な接点部を有し、前記中間部材は、前記荷重センサと前記ヒータ線との間に配置され、前記ヒータ線は、前記表皮材の裏面に直接接触しており、複数の前記ヒータ線が、前記乗員側から見て前記荷重センサの前記接点部に重なる位置に配置されることにより解決される。
【0009】
従来、シートヒータで用いられるヒータ線を位置決めする中間部材は、ヒータ線よりも乗員側に位置するよう配置されていた。そのため、乗員がシートに着座した場合、中間部材がヒータ線により支持され撓み難くなり、そのため、所定の荷重が荷重センサに付加されても着座状態を検知せず、感度が低下する場合があった。
本発明では、ヒータ線の位置決めをする中間部材が荷重センサとヒータ線との間に配置される。そのため、乗員が着座したとき、ヒータ線が中間部材を押し込み、中間部材が撓むことにより荷重センサのスイッチが入るようになる。ヒータ線が中間部材より乗員側にあることで中間部材が撓みやすくなるため荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。そのため、荷重センサに与える影響を考慮することなく、ヒータ線を配置することができる。
【0010】
また、上記の構成により、接点部にヒータ線が重なっても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0011】
また、上記の構成により、荷重センサの接点部に複数のヒータ線が重なっても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0012】
上記の構成において、前記ヒータ線が、前記荷重センサの前記接点部の中心からずれた位置で前記接点部に重なってもよい。
上記の構成により、ヒータ線が荷重センサの接点部の中心からずれた位置で接点部に重なる場合でも、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0013】
上記の構成において、前記ヒータ線が、前記荷重センサの前記接点部の中心と重なる位置に配置されていてもよい。
上記の構成により、ヒータ線が荷重センサの中心と重なる位置に配置されても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0014】
上記の構成において、前記中間部材は基布であり、前記ヒータ線は前記基布上に固定されているとよい。
中間部材を基布とすることにより撓みやすくなり、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0015】
上記の構成において、前記基布は、前記シートクッション又は前記シートバックを構成するパッドの表面に固定されているとよい。
基布がパッドの表面に固定されることで、基布が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0016】
上記の構成において、前記基布は、前記シートクッション又は前記シートバックを構成する表皮材の裏面に固定されているとよい。
基布が表皮材の裏面に固定されることで、基布が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0017】
上記の構成により、前記中間部材は、可撓性を有する部材であるとよい。
中間部材が可撓性を有することにより、中間部材が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【0018】
また、上記の構成により、前記シートクッション及び前記シートバックは、骨格を形成するフレームを備え、前記フレームは、前記パッドにより被覆されているとよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、ヒータ線の位置決めをする中間部材が荷重センサとヒータ線との間に配置される。そのため、乗員が着座したとき、ヒータ線が中間部材を押し込み、中間部材が撓むことにより荷重センサのスイッチが入るようになる。ヒータ線が中間部材より乗員側にあることで中間部材が撓みやすくなるため荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。そのため、荷重センサに与える影響を考慮することなく、ヒータ線を配置することができる。
また、上記の構成により、接点部にヒータ線が重なっても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、上記の構成により、荷重センサの接点部に複数のヒータ線が重なっても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、上記の構成により、ヒータ線が荷重センサの接点部の中心からずれた位置で接点部に重なる場合でも、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、上記の構成により、ヒータ線が荷重センサの中心と重なる位置に配置されていても、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、中間部材を基布とすることにより撓みやすくなり、荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、基布がパッドの表面に固定されることで、基布が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、基布が表皮材の裏面に固定されることで、基布が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
また、中間部材が可撓性を有することにより、中間部材が撓みやすくなり荷重センサの入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートを斜め前方から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両用シートのフレームを示す斜視図である。
図3】荷重センサとシートヒータとが取り付けられたシートクッションを示す図である。
図4A】荷重センサの接点部とシートヒータとの位置関係を示す図であり、接点部にヒータ線が4本重なった状態を示す図である。
図4B】接点部とシートヒータとの位置関係を示す図であり、接点部にヒータ線が3本重なった状態を示す図である。
図4C】接点部とシートヒータとの位置関係を示す図であり、接点部の中心からずれた位置で接点部にヒータ線が重なって配置された状態を示す図である。
図4D】接点部とシートヒータとの位置関係を示す図であり、接点部の中心と重なる位置にヒータ線が配置された状態を示す図である。
図5A図3のV-V線に沿った断面図であり、荷重センサの接点部とシートヒータの位置関係を示す図である。
図5B】荷重センサの接点部に荷重が付加され、接点部がオン状態となった状態を示す断面図である。
図6】従来のシートヒータと荷重センサとの位置関係を示す断面図である。
図7】荷重センサのON荷重を比較したグラフである。
図8】荷重センサとシートヒータとがシートバックに取り付けられた例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係る乗物用シートの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例であり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0022】
なお、以下では、乗物用シートの一例として車両用シートを挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、車両用シート以外の乗物用シート、例えば、船舶や航空機に搭載されるシートにも適用され得る。
【0023】
また、以下の説明において、「前後方向」とは、車両用シートの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「シート幅方向」とは、車両用シートの幅方向であり、車両用シートに着座した乗員から見た左右方向と一致する方向である。また、「上下方向」とは、車両用シートの上下方向であり、車両が水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下の説明において、「シート幅方向」、「シート高さ方向」のように各種方向に「シート」を付して記載する場合には、車両用シートに対する方向を示し、「車両内側」、「車両外側」のように「車両」を付して記載する場合には、車両に対する方向を示すものとする。
また、「乗員側」とは、車両用シートが着座可能な状態で乗員が着座した場合に乗員が居る側を示していて、車両用シートのシートバックではシートバックの前側、シートクッションではシートクッションの上側を意味する。
また、以下に説明する車両用シート各部の形状、位置及び姿勢等については、特に断る場合を除き、車両用シートが着座可能な状態にあるケースを想定して説明することとする。
【0024】
<<本実施形態に係る車両用シートの基本構成>>
本実施形態に係る車両用シート(以下、車両用シートS)の構成について、図1図3を参照しながら説明する。図1は、車両用シートSを斜め前方から見た斜視図であり、図2は、車両用シートSのシートフレームFを示す斜視図であり、図3は荷重センサ3及びシートヒータ4が取り付けられた車両用シートSのシートクッションS1を示す平面図である。図1中、車両用シートSの一部については図示の都合上、表皮部材であるトリムカバー14、24を外した構成で図示している。また、図3はトリムカバー14を取り外した状態のシートクッションS1を示している。
【0025】
車両用シートSは、車体フロア上に載置され、車両の乗員が着座するシートである。本実施形態において、車両用シートSは、車両の前部座席に相当するフロントシートとして利用される。ただし、これに限定されるものではなく、車両用シートSは、車両のリアシートであってもよく、また、前後方向に三列のシートを備える車両において二列目のミドルシートや三列目のリアシートとしても利用可能である。
【0026】
車両用シートSは、図1に示すように、乗員の臀部を支える着座部分となるシートクッションS1、乗員の背部を支える背凭れとなるシートバックS2及び乗員の頭部を支えるヘッドレストS3を主な構成要素とする。シートクッションS1とシートバックS2とはリクライニング機構10(図2参照)を挟んで連結されている。また、シートクッションS1の下部にはスライドレールRが設置されており、このスライドレールRにより、車両用シートSは、前後方向にスライド移動可能な状態で車体フロアに載置される(図2参照)。
【0027】
車両用シートSの中には、図2に示すシートフレームFが設けられており、シートフレームFは、主にクッションフレーム1とバックフレーム2とにより構成される。クッションフレーム1は、シートフレームFにおけるシートクッションS1の骨格をなし、バックフレーム2は、シートフレームFにおけるシートバックS2の骨格をなす。クッションフレーム1の後端部は、リクライニング機構10を介してバックフレーム2の下端部と連結されている。
【0028】
シートクッションS1は、クッションフレーム1に、クッション材であるクッションパッド13を載置し、さらにクッションパッド13をトリムカバー14により覆うことで構成される。シートバックS2は、バックフレーム2に、クッション材であるバックパッド23を配し、さらにバックパッド23をトリムカバー24により覆うことで構成される。
【0029】
クッションパッド13及びバックパッド23は、例えばウレタン発泡剤を用いて、発泡成型により成型されたウレタン基材である。また、トリムカバー14、24は、布、フィルム、クロス、革やシート等により構成され、所定のテンションが掛かるように張られた状態でクッションパッド13、バックパッド23を覆うよう取り付けられている。
【0030】
本実施形態において、クッションフレーム1は、図2に示すように、略方形枠状の外形形状をなす。そして、クッションフレーム1は、シート幅方向左右の端部をそれぞれ構成する一対のクッションサイドフレーム12と、クッションフレーム1の前端部を構成するパンフレーム11と、左右のクッションサイドフレーム12を後端部において連結する連結パイプ15と、スプリング16とを主たる構成要素としている。
【0031】
バックフレーム2は、主に、方形枠状に加工されたパイプからなり、図2に示すように、バックフレーム2は、逆さU字形のアッパーフレーム21と、シート幅方向左右の端部をなす一対のバックサイドフレーム22と、一対のバックサイドフレーム22の下端部を連結するロアフレーム26とを備える。また、アッパーフレーム21の上下に延びる部分を連結して支持する連結フレーム28が設けられている。アッパーフレーム21の上端中央には二つのヘッドレストガイド29が設けられていて、ヘッドレストS3から延びるヘッドレストピラー27を挿入して保持することができる。
【0032】
クッションフレーム1及びバックフレーム2を構成する各部材の構成材料としては、荷重を受けたときに大きく変形しないよう十分な剛性をもつ材料、例えば、鋼材やアルミニウム合金等の金属材料が挙げられる。クッションフレーム1及びバックフレーム2を構成する各部材同士の接合手段は溶接であるが、接合手段としては、ボルト、接着剤による接合を併用してもよい。
【0033】
シートクッションS1のクッションパッド13とトリムカバー14との間には、発熱体であるシートヒータ4が設けられている。また、シートヒータ4の下側(乗員側の反対側)に荷重センサ3が配置されている。以下、本実施形態の車両用シートSに設けられた荷重センサ3及びシートヒータ4について図3図5Bを用いて説明する。
【0034】
<<荷重センサ>>
荷重センサ3は、車両用シートSのシートクッションS1への乗員の着座を検出するセンサである。荷重センサ3はメンブレンスイッチであり、図3に示すように複数の接点部31、接点部31を連通する連通部32、回路部33、ハーネス34、吸排気口35を備える。接点部31のそれぞれは、図5Aに示されるように一対のフィルムからなる表面材31A、31B内に、一対の電極31C、31Dを互いに対向するよう所定の間隔をあけて配置したものである。すなわち、一対の電極31C、31Dの間には空気層31Eが形成される。電極が31C、31Dがない部分には、樹脂スペーサを持つ粘着材31Fが配置されている。接点部31に荷重が付加されていない状態では、粘着材31Fのスペーサにより電極31C、31Dの間隔が保たれるようになっている。そして、接点部31に上からの荷重が付加されると、上下に配置された電極31C、31Dが接するよう構成される(図5B参照)。言い換えれば、接点部31は付加された荷重によりON/OFF(オンオフ)が可能で、付加された荷重の大きさにより接点部31のスイッチが入ったり切れたりする。
それぞれの接点部31は、空気の通路である連通部32を介して、吸排気口35と繋がっており、接点部31の上下にある電極31C、31D間の空気は、連通部32及び吸排気口35を通じて出入りする。
【0035】
回路部33は、接点部31と接続されていて、それぞれの接点部31において上下の電極31C、31Dが接触したことを示すON信号を検出し、検出したON信号をハーネス34及びハーネス34の端部が接続された回路部33を介して、車両に取り付けられたECU(Electronic Control Unit)に出力する。ECUがON信号を受信した場合、例えば、シートベルトが締められていないことを別のセンサにより検知するとシートベルトを締めるよう乗員に促す。
【0036】
<<シートヒータ>>
図3図5A図5Bに示されるように、荷重センサ3の接点部31の上にシートヒータ4が配置される。シートヒータ4は、シート状の基布41(中間部材の一例)、ヒータ線42、回路部43及びハーネス44から構成される。基布41は熱伝導率の小さい材料、例えばポリエステル樹脂等の不織布により作製される。また、基布41は可撓性を有し上から押すことで撓むよう構成される(図5B参照)。本実施形態では、ヒータ線42の位置決めをする中間部材として基布41が用いられているが、中間部材は基布41に限定されず、例えば弾力性を有するゴム製のシートであってもよい。
【0037】
ヒータ線42は、図3に示されるように基布41の全域をカバーするように蛇行形状に配置され、基布41上に接着剤等により固定されることでヒータ線42の位置が決められる。シートヒータ4は、基布41とヒータ線42とにより輻射式ヒータとして構成される。ヒータ線42は、例えば銅又は銅合金等からなる電気抵抗体により構成される。回路部43によりハーネス44を介してヒータ線42に電流を流すことによりヒータ線42に熱が発生する。
【0038】
本実施形態の車両用シートSでは、図5Aに示されるように、シートクッションS1のクッションパッド13上に荷重センサ3が配置される。そして、荷重センサ3の上にシートヒータ4の基布41が配置され、基布41上にヒータ線42が配置される。シートヒータ4の上に表皮材としてのトリムカバー14が取り付けられる。言い換えれば、シートヒータ4のヒータ線42は、荷重センサ3より乗員が位置する側(乗員側)に配置されており、基布41が、ヒータ線42と荷重センサ3との間に配置される。
【0039】
基布41はクッションパッド13に接着剤又は縫製により固定される。基布41は、表皮材であるトリムカバー14に固定されてもよい。
【0040】
荷重センサ3の上にシートヒータ4が配置されるため、図3に示すように荷重センサ3の接点部31にはヒータ線42が重なるように配置される。ヒータ線42は蛇行していて隣り合うヒータ線42の間隔Lは場所によって様々である。そのため、ヒータ線42の間隔が接点部31の大きさ(直径D)よりも小さい場合、例えば図4Aに示すように、4本のヒータ線42が接点部31に重なって配置、すなわち、4本のヒータ線が跨いで配置される場合がある。図4Bに示すように3本のヒータ線が接点部31に跨ぐ場合がある。図4Cに示すように1本のヒータ線42が接点部31の中心Cからずれた位置で接点部31に跨って配置される場合がある。図4Dに示すように、接点部31の中心Cと重なる位置にヒータ線42が配置される重合がある。
【0041】
本実施形態の車両用シートSでは、荷重センサ3の接点部31の上にシートヒータ4が配置されると、図5Aに示すように接点部31の空気層31Eを挟む電極31C、31Dの上に基布41が配置されその上にヒータ線42が配置されるようになる。
そのため、乗員が着座し下方(矢印Aの方向)に荷重が付加された場合、ヒータ線42に荷重が集中し、それにより図5Bに示すように基布41を下方に押し込み、それにより荷重センサ3の接点部31の電極31C、31Dが接触してスイッチが入るようになる。
【0042】
従来の車両用シートでは、図6に示すように、荷重センサ103の上にヒータ線142が配置されていて、ヒータ線142の上、すなわち乗員側に基布141が配置される構成となっていた。そのため、乗員が着座し下方(図6の矢印Bの方向)に荷重が付加された場合、基布141によって荷重が分散されるため、ヒータ線42は基布141が撓まないように支持する梁の役割を果たすようになる。そのため、基布141がヒータ線42より上にある場合は、荷重センサ103の接点部131において、所定の荷重がかかった場合でも基布141が撓まず、表面材131A、131Bに挟まれた電極131C、131Dが接触しないため、接点部131のスイッチが入り難い場合があった。
【0043】
そのため、図5Aに示すように基布41を荷重センサ3とヒータ線42との間に配置することにより、ヒータ線42を介して基布41を押し込む構成とすることで、基布41を撓むようにして荷重センサ3の接点部31のスイッチが入り易くなるようにした。
【0044】
図7に、従来のヒータ線142上に基布141を配置した場合に荷重センサ103をONにする荷重(以下、ON荷重と称する)と、本実施形態の車両用シートSで用いた基布41上にヒータ線42を配置した場合のON荷重とを比較したグラフを示す。従来のヒータ線142の上に基布141を配置した場合を点線で示し、本実施形態のヒータ線42の下に基布41を配置した場合を実線で示す。
図7に示されるように、接点部31の上に4本のヒータ線42が配置された場合、接点部31の上に3本のヒータ線42が配置された場合において、大きくON荷重が減少しており、ヒータ線42の下に基布41を配置したことにより荷重センサ3の入力荷重に対する感度が良くなることが確認できる。したがって、ヒータ線42を荷重センサ3と重ねて配置された場合でも荷重センサ3の入力荷重に対する感度の悪化が抑制される。そのため、ヒータ線42を、荷重センサ3を避けて配置する必要がなくなり、荷重センサ3に与える影響を考慮することなく、ヒータ線42を配置することができる。
【0045】
また、接点部31に1本のヒータ線42が跨いだ場合でも、減少幅は小さいものの、4本又は3本のヒータ線42が跨いだ場合と同様、ON荷重が減少しており、ヒータ線42の下に基布41を配置したことにより荷重センサ3の入力荷重に対する感度が良くなることが確認できる。ヒータ線42を基布41の上に配置することによって、ON荷重が減少し、入力荷重に対する感度が良くなることによって、荷重センサ3の検知性能が向上し、スイッチがONし易くなる。
【0046】
図8に車両用シートSの別例を示す。図1に示す車両用シートSでは、シートクッションS1に、荷重センサ3及びシートヒータ4を配置していたが、図8に示すように、荷重センサ3及びシートヒータ4は、シートバックS2に配置されてもよい。このとき、荷重センサ3は、例えば乗員の心拍数又は呼吸数を計測するシステムのセンサとして利用される。
【0047】
荷重センサ3及びシートヒータ4は、シートバックS2の前面側、すなわち乗員側に配置される。荷重センサ3は、シートバックS2のバックパッド23の前面側に配置され、シートヒータ4のヒータ線42は、荷重センサ3より乗員側に配置される。基布41は荷重センサ3とヒータ線42との間に配置される。ヒータ線42を基布41よりも乗員側に配置することにより、ヒータ線42を基布41より後ろ側に配置する場合と比較して荷重センサ3のON荷重が減少し、荷重センサ3の入力荷重に対する感度が良くなる。そのため、荷重センサ3の検知性能が向上し、乗員が着座した際に荷重センサ3がONし易くなる。
また、基布41は、シートバックS2のバックパッド23に接着剤等を用いて固定される。基布41は、バックパッド23を覆うよう取り付けられるトリムカバー24(表皮材)に固定されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
S 車両用シート(乗物用シート)
S1 シートクッション
S2 シートバック
S3 ヘッドレスト
F シートフレーム
1 クッションフレーム
10 リクライニング機構
11 パンフレーム
12 クッションサイドフレーム
13 クッションパッド
14 トリムカバー(表皮材)
15 連結パイプ
16 スプリング
2 バックフレーム
21 アッパーフレーム
22 バックサイドフレーム
23 バックパッド
24 トリムカバー(表皮材)
27 ヘッドレストピラー
28 連結フレーム
29 ヘッドレストガイド
3、103 荷重センサ
31、131 接点部
31A、131A 表面材
31B、131B 表面材
31C、131C 電極
31D、131D 電極
31E 空気層
31F 粘着材
C 接点部の中心
32 連通部
33 回路部
34 ハーネス
35 吸排気口
4 シートヒータ
41、141 基布(中間部材)
42、142 ヒータ線
43 回路部
44 ハーネス
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8