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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20240807BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B60C11/03 300D
B60C5/00 H
B60C11/03 300E
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020064451
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021160572
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 秀樹
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131152(JP,A)
【文献】特開2019-081490(JP,A)
【文献】特開2018-020735(JP,A)
【文献】特開2017-071279(JP,A)
【文献】特開2002-114011(JP,A)
【文献】特開2012-101719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る4列以上の陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記陸部が、前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝を備え、
前記貫通ラグ溝のピッチ長が、タイヤ最大接地長の7[%]以上14[%]以下の範囲にあり、
前記貫通ラグ溝の最大溝深さが、前記主溝の最大溝深さの5[%]以上65[%]以下の範囲にあり、且つ、
車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤであることを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記貫通ラグ溝の最大溝幅が、1.5[mm]以上4.0[mm]以下の範囲にある請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記貫通ラグ溝が、ジグザグ形状を有し、
前記貫通ラグ溝の振幅が、前記貫通ラグ溝のピッチ長に対して2.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にあり、且つ、
前記貫通ラグ溝の波長が、前記陸部の最大接地幅に対して16[%]以上22[%]以下の範囲にある請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
タイヤ周方向に対する前記貫通ラグ溝の傾斜角が、60[deg]以上120[deg]の範囲にある請求項1~3のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記複数の貫通ラグ溝のうちの一部が、溝底サイプを有し、且つ、
前記溝底サイプを有する前記貫通ラグ溝と、前記溝底サイプを有さない少なくとも1本の前記貫通ラグ溝とが、タイヤ周方向に交互に配列される請求項1~4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記貫通ラグ溝の溝底から前記溝底サイプの最大深さ位置までの距離が、前記主溝の最大溝深さに対して6[%]以上の範囲にあり、且つ、
トレッド踏面から前記溝底サイプの最大深さ位置までの距離が、前記主溝の最大溝深さに対して100[%]以下の範囲にある請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
隣り合う前記陸部が、前記貫通ラグ溝をそれぞれ備え、且つ、
前記主溝を挟んで対向する一対の前記貫通ラグ溝の一方が溝底サイプを有すると共に、他方が溝底サイプを有さない請求項1~6のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記陸部の最大接地幅が、タイヤ接地幅に対して15[%]以上25[%]以下の範囲にある請求項1~7のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記陸部の第一および第二のエッジ部が、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状あるいは波状形状を有すると共にタイヤ周方向に位相をずらして配置され、且つ、
前記貫通ラグ溝が、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在して、前記第一および第二のエッジ部の最大振幅位置を接続する請求項1~8のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項10】
前記陸部の第一および第二のエッジ部が、タイヤ幅方向に振幅をもつ複数の円弧を接続して成る波状形状を有し、且つ、
前記円弧の周方向長さが、前記波状形状の波長に対して80[%]以上の範囲にある請求項1~9のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記陸部の第一および第二のエッジ部の前記波状形状が、タイヤ赤道面側に凸となる前記複数の円弧を接続して成る請求項10に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、タイヤの雪上加速性能および低転がり抵抗性能を両立できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の重荷重用タイヤでは、タイヤの雪上加速性能を高めるために、ジグザグ形状の主溝が採用されている。かかる構成を採用する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-154708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤでは、タイヤの転がり抵抗を低減すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る4列以上の陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記陸部が、前記陸部をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝を備え、前記貫通ラグ溝のピッチ長が、タイヤ最大接地長の7[%]以上14[%]以下の範囲にあり、前記貫通ラグ溝の最大溝深さが、前記主溝の最大溝深さの5[%]以上65[%]以下の範囲にあり、且つ、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
この発明にかかるタイヤでは、貫通ラグ溝のピッチ長および最大溝深さの関係が適正化されて、タイヤの雪上加速性能と低転がり抵抗性能とが両立する利点がある。具体的には、貫通ラグ溝のピッチ長の範囲が上記下限を有すると共に貫通ラグ溝の最大溝深さの範囲が上記上限を有することにより、陸部の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。また、貫通ラグ溝のピッチ長の範囲が上記上限を有すると共に貫通ラグ溝の最大溝深さの範囲が上記下限を有することにより、陸部のエッジ成分が確保されて、スノー路面の走行時における貫通ラグ溝のトラクション作用が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
図2図2は、図1に記載したタイヤのトレッド面を示す平面図である。
図3図3は、図2に記載したタイヤのミドル陸部およびセンター陸部を示す拡大図である。
図4図4は、図3に記載したミドル陸部を示す拡大図である。
図5図5は、図3に記載したミドル陸部の断面図である。
図6図6は、図3に記載したミドル陸部の断面図である。
図7図7は、図3に記載したセンター陸部を示す拡大図である。
図8図8は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0009】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。この実施の形態では、タイヤの一例として、トラックおよびトラクターのステア軸に装着される重荷重用の空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0010】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0011】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(図1参照)。
【0012】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0013】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上100[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0014】
ベルト層14は、4層のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトプライ141~144は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。
【0015】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ1のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0016】
[トレッドパターン]
図2は、図1に記載したタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図は、マッド・アンド・スノーマーク「M+S」をもつオールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
【0017】
図2に示すように、タイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31、32、33とをトレッド面に備える。
【0018】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、7.0[mm]以上の最大溝幅および12[mm]以上の最大溝深さを有する。
【0019】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁間の距離として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0020】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0021】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0022】
例えば、図2の構成では、タイヤ1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ略点対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、タイヤ1が、例えば、タイヤ赤道面CLを中心とする左右線対称なトレッドパターンあるいは左右非対称なトレッドパターンを有しても良いし、タイヤ回転方向に方向性を有するトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
【0023】
また、図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域が2本の周方向主溝21、22をそれぞれ有している。また、これらの周方向主溝21、22が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21、22により、5列の陸部31~33が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0024】
しかし、これに限らず、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良いし、周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されることにより、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0025】
また、タイヤ赤道面CLを境界とする1つの領域に配置された周方向主溝21、22のうち、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝21をショルダー主溝として定義し、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22をセンター主溝として定義する。
【0026】
また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部32をミドル陸部として定義する。ミドル陸部32は、ショルダー主溝21を挟んでショルダー陸部31に隣り合う。また、ミドル陸部32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。センター陸部33は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0027】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0028】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0029】
なお、図2のような4本の周方向主溝21、22を備える構成では、一対のショルダー陸部31、31と、一対のミドル陸部32、32と、単一のセンター陸部33とが定義される。また、例えば、5本以上の周方向主溝を備える構成では、2列以上のセンター陸部が定義され(図示省略)、3本の周方向主溝を備える構成では、ミドル陸部がセンター陸部を兼ねる(図示省略)。
【0030】
また、図2の構成では、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb1/TW≦0.25の関係を有する。また、タイヤ赤道面CLに最も近いセンター陸部33の最大接地幅Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb3/TW≦0.25の関係を有することが好ましく、0.18≦Wb3/TW≦0.23の関係を有することがより好ましい。また、図2のような4本の周方向主溝21、22と5列の陸部31~33とを備える構成では、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2がショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して若干狭く、具体的には0.85≦Wb2/Wb1≦0.95の範囲にあることが好ましい。
【0031】
また、図2の構成では、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、タイヤ幅方向に振幅を有するジグザグ形状あるいは波状形状を有する。しかし、これに限らず、後述するように、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、溝開口部にてストレート形状を有しても良い(図示省略)。
【0032】
また、図2において、タイヤ全周にかかるタイヤ周方向に対するスノートラクションインデックスSTI(いわゆる0[deg]スノートラクションインデックス)が、130≦STIの範囲にある。
【0033】
スノートラクションインデックスSTIは、SAE(Society of Automotive Engineers)にて提案されたユニロイヤル社の実験式であり、以下の数式(1)により定義される。同式において、Pgは、溝密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝(サイプを除くすべての溝)の溝長さ[mm]と、タイヤ接地面積(タイヤ接地幅とタイヤ周長との積)[mm^2]との比として算出される。また、ρsは、サイプ密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべてのサイプのサイプ長さ[mm]と、タイヤ接地面積[mm^2]との比として算出される。また、Dgは、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝の溝深さ[mm]の平均値である。
【0034】
STI=-6.8+2202×Pg+672×ρs+7.6×Dg ・・・(1)
【0035】
[ミドル陸部]
図3は、図2に記載したタイヤ1のミドル陸部32およびセンター陸部33を示す拡大図である。図4は、図3に記載したミドル陸部32を示す拡大図である。図5および図6は、図3に記載したミドル陸部32の断面図である。これらの図において、図5は、溝底サイプ323を有する貫通ラグ溝321Aに沿ってミドル陸部32を切断した断面図を示し、図6は、溝底サイプを有さない貫通ラグ溝321Bに沿ってミドル陸部32を切断した断面図を示している。
【0036】
図2の構成では、図3に示すように、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の溝開口部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有している。このため、ミドル陸部32の左右のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有している。
【0037】
また、図4において、ミドル陸部32のエッジ部の波状形状の波長λ2L、λ2Rが、タイヤ最大接地長Lt(図示省略)の14[%]以上28[%]以下の範囲にある。また、左右のエッジ部の波状形状の波長λ2L、λ2Rが、相互に等しく設定される。
【0038】
タイヤ最大接地長Ltは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ周方向の最大直線距離として測定される。
【0039】
また、図4に示すように、円弧の周方向長さ(図中の寸法記号省略)が、波状形状の波長λ2L、λ2Rに対して80[%]以上であり、85[%]以上であることが好ましい。また、隣り合う円弧が、短尺な直線あるいは円弧を介して接続される。したがって、ミドル陸部32のエッジ部が、同一方向に凸となる長尺な円弧を接続して成る波状形状を有する。かかる構成では、エッジ部がジグザグ形状あるいは正弦波形状を有する構成と比較して、エッジ部の最大突出位置における偏摩耗が抑制される。
【0040】
また、エッジ部の波状形状の振幅A2L、A2Rが、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して3.0[%]以上10[%]以下の範囲にあり、4.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にあることが好ましい。また、振幅A2L、A2Rが、1.0[mm]以上15.0[mm]以下の範囲にあり、1.2[mm]以上10.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。また、左右のエッジ部の波状形状の振幅A2L、A2Rの比が、90[%]以上110[%]以下の範囲に設定される。
【0041】
また、左右のエッジ部の波状形状の位相φ2が、波長λ2Lに対して10[%]以上40[%]以下の範囲にある。
【0042】
陸部のエッジ部の波状形状の波長、振幅および位相は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて測定される。
【0043】
また、図3に示すように、ミドル陸部32が、複数の貫通ラグ溝321と、複数のブロック322とを備える。
【0044】
貫通ラグ溝321は、ミドル陸部32をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有する。また、複数の貫通ラグ溝321が、タイヤ周方向に所定のピッチ長P21で配列される。また、貫通ラグ溝321のピッチ長P21が、タイヤ最大接地長Lt(図示省略)の7[%]以上14[%]以下の範囲にある。例えば、図3の構成では、貫通ラグ溝321が、ミドル陸部32の左右のエッジ部の波状形状の最大振幅位置にそれぞれ開口している。また、貫通ラグ溝321のピッチ数が、エッジ部の波状形状のピッチ数の2倍に設定されている。また、タイヤ全周における貫通ラグ溝321のピッチ数が、100以上200以下の範囲にある。
【0045】
また、図4において、ミドル陸部32の貫通ラグ溝321が、細浅溝であり、1.5[mm]以上4.0[mm]以下(好ましくは3.0[mm以下])の最大溝幅W21および1.5[mm]以上4.0[mm]以下(好ましくは3.0[mm以下])の最大溝深さH21(図5参照)を有する。また、図5において、貫通ラグ溝321の最大溝深さH21が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対して0.05≦H21/Hg1≦0.65の関係を有し、0.10≦H21/Hg1≦0.30の関係を有することが好ましい。
【0046】
上記の構成では、貫通ラグ溝321のピッチ長P21および最大溝深さH21の関係が適正化されて、タイヤの雪上加速性能と低転がり抵抗性能とが両立する。具体的には、貫通ラグ溝321のピッチ長P21の範囲が上記下限を有すると共に貫通ラグ溝321の最大溝深さH21の範囲が上記上限を有することにより、ミドル陸部32の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。また、貫通ラグ溝321のピッチ長P21の範囲が上記上限を有すると共に貫通ラグ溝321の最大溝深さH21の範囲が上記下限を有することにより、ミドル陸部32のエッジ成分が確保されて、スノー路面の走行時における貫通ラグ溝321のトラクション作用が確保される。
【0047】
また、図4において、貫通ラグ溝321のタイヤ周方向に対する傾斜角θ21が、60[deg]≦θ21≦120[deg]の範囲にある。図4の構成では、ミドル陸部32の左右のエッジ部の波状形状が相互に位相をずらして配置され、貫通ラグ溝321が左右のエッジ部の波状形状の最大振幅位置にそれぞれ開口することにより、貫通ラグ溝321の全体がタイヤ周方向に対して傾斜している。
【0048】
貫通ラグ溝321の傾斜角θ21は、貫通ラグ溝321の両端部を接続した仮想直線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
【0049】
また、図4に示すように、貫通ラグ溝321が、ジグザグ形状を有する。また、貫通ラグ溝321のジグザグ形状の振幅が、貫通ラグ溝321のピッチ長P21に対して2.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にある。また、貫通ラグ溝321のジグザグ形状の波長が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して16[%]以上22[%]以下の範囲にある。
【0050】
また、図3図6に示すように、複数の貫通ラグ溝321が、溝底サイプ323を有する第一貫通ラグ溝321A(図5参照)と、溝底サイプを有さない第二貫通ラグ溝321B(図6参照)とから構成される。第二貫通ラグ溝321Bは、図6に示すように、図5における第一貫通ラグ溝321Aから溝底サイプ323を省略した構造を有する。また、図3の構成では、第一貫通ラグ溝321Aと第二貫通ラグ溝321Bとが、タイヤ周方向に交互に配列されている。しかし、これに限らず、隣り合う第一貫通ラグ溝321A、321Aの間に、2つあるいは3つの第二貫通ラグ溝321Bが配置されても良い(図示省略)。
【0051】
溝底サイプは、ラグ溝の溝底に形成された切り込みであり、1.0[mm]未満の最大サイプ幅および後述する深さを有することにより、タイヤ接地時に閉塞する。
【0052】
また、貫通ラグ溝321の溝底から溝底サイプ323の最大深さ位置までの距離H23’が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対して0.06≦H23’/Hg1の範囲にあり、0.10≦H23’/Hg1の範囲にあることが好ましい。また、トレッド踏面から溝底サイプ323の最大深さ位置までの距離H23が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対してH23/Hg1≦1.00の範囲にあり、H23/Hg1≦0.50の範囲にあることが好ましい。
【0053】
ブロック322は、複数の貫通ラグ溝321に区画されて成る。また、ブロック322が、タイヤ幅方向に長尺な形状を有する。具体的には、図4において、ブロック322のピッチ長(貫通ラグ溝321のピッチ長P21に等しい。)が、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2に対して45[%]以上80[%]以下の範囲にあり、50[%]以上75[%]以下の範囲にあることが好ましい。
【0054】
[センター陸部]
図7は、図3に記載したセンター陸部33を示す拡大図である。同図において、図3に記載した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0055】
図2の構成では、図3に示すように、左右のセンター主溝22、22の溝開口部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有している。このため、センター陸部33の左右のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側、同図ではセンター陸部33の幅方向内側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有している。
【0056】
また、図7において、センター陸部33のエッジ部の波状形状の波長λ3L、λ3Rが、タイヤ最大接地長Lt(図示省略)の14[%]以上28[%]以下の範囲にある。また、左右のエッジ部の波状形状の波長λ3L、λ3Rが、相互に等しく設定される。また、センター主溝22に区画されたセンター陸部33のエッジ部の波長λ3Lが、ミドル陸部32のエッジ部の波長λ2R(図4参照)に対して90[%]以上110[%]以下の範囲に設定されている。
【0057】
また、図7に示すように、円弧の周方向長さ(図中の寸法記号省略)が、波状形状の波長λ3L、λ3Rに対して80[%]以上であり、85[%]以上であることが好ましい。また、隣り合う円弧が、短尺な直線あるいは円弧を介して接続される。したがって、センター陸部33のエッジ部が、同一方向に凸となる長尺な円弧を接続して成る波状形状を有する。かかる構成では、エッジ部がジグザグ形状あるいは正弦波形状を有する構成と比較して、エッジ部の最大突出位置における偏摩耗が抑制される。
【0058】
また、エッジ部の波状形状の振幅A3L、A3Rが、センター陸部33の最大接地幅Wb3に対して3.0[%]以上10[%]以下の範囲にあり、4.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にあることが好ましい。また、振幅A3L、A3Rが、1.0[mm]以上15.0[mm]以下の範囲にあり、1.2[mm]以上10.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。また、左右のエッジ部の波状形状の振幅A3L、A3Rの比が、90[%]以上110[%]以下の範囲に設定される。また、センター主溝22に区画されたセンター陸部33のエッジ部の振幅A3Lが、ミドル陸部32のエッジ部の振幅A2R(図4参照)に対して90[%]以上110[%]以下の範囲に設定されている。
【0059】
また、左右のエッジ部の波状形状の位相φ3が、波長λ3Lに対して10[%]以上40[%]以下の範囲にある。
【0060】
また、図3に示すように、センター陸部33が、複数の貫通ラグ溝331と、複数のブロック332とを備える。
【0061】
貫通ラグ溝331は、センター陸部33をタイヤ幅方向に貫通するオープン構造を有する。また、複数の貫通ラグ溝331が、タイヤ周方向に所定のピッチ長P31で配列される。また、貫通ラグ溝331のピッチ長P31が、タイヤ最大接地長Lt(図示省略)の7[%]以上14[%]以下の範囲にある。例えば、図3の構成では、貫通ラグ溝331が、センター陸部33の左右のエッジ部の波状形状の最大振幅位置にそれぞれ開口している。また、貫通ラグ溝331のピッチ数が、エッジ部の波状形状のピッチ数の2倍に設定されている。また、タイヤ全周における貫通ラグ溝331のピッチ数が、100以上200以下の範囲にある。また、センター陸部33の貫通ラグ溝331のピッチ数が、ミドル陸部32の貫通ラグ溝321のピッチ数に等しい。
【0062】
また、図3に示すように、センター主溝22に対するセンター陸部33の貫通ラグ溝331の開口部とミドル陸部32の貫通ラグ溝321の開口部とが、相互に対向して配置される。具体的には、対向する貫通ラグ溝321、331の開口部のタイヤ周方向のオフセット量Daが、ミドル陸部32のエッジ部の波長λ2に対して0≦Da/λ2≦0.10の範囲にあることが好ましく、0≦Da/λ2≦0.05の範囲にあることがより好ましい。
【0063】
また、図7において、センター陸部33の貫通ラグ溝331が、細浅溝であり、1.5[mm]以上4.0[mm]以下(好ましくは3.0[mm以下])の最大溝幅W31および1.5[mm]以上4.0[mm]以下(好ましくは3.0[mm以下])の最大溝深さH31(図示省略)を有する。また、貫通ラグ溝331の最大溝深さH31が、センター主溝22の最大溝深さHg2(図示省略)に対して0.05≦H31/Hg2≦0.65の関係を有し、0.10≦H31/Hg2≦0.30の関係を有することが好ましい。
【0064】
上記の構成では、貫通ラグ溝331のピッチ長P31および最大溝深さH31の関係が適正化されて、タイヤの雪上加速性能と低転がり抵抗性能とが両立する利点がある。具体的には、貫通ラグ溝331のピッチ長P31の範囲が上記下限を有すると共に貫通ラグ溝331の最大溝深さH31の範囲が上記上限を有することにより、センター陸部33の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。また、貫通ラグ溝331のピッチ長P31の範囲が上記上限を有すると共に貫通ラグ溝331の最大溝深さH31の範囲が上記下限を有することにより、ことにより、センター陸部33のエッジ成分が確保されて、スノー路面の走行時における貫通ラグ溝331のトラクション作用が確保される。
【0065】
また、図7において、貫通ラグ溝331のタイヤ周方向に対する傾斜角θ31が、60[deg]≦θ31≦120[deg]の範囲にある。図7の構成では、センター陸部33の左右のエッジ部の波状形状が相互に位相をずらして配置され、貫通ラグ溝331が左右のエッジ部の波状形状の最大振幅位置にそれぞれ開口することにより、貫通ラグ溝331の全体がタイヤ周方向に対して傾斜している。また、図3に示すように、センター陸部33の貫通ラグ溝331の傾斜方向が、ミドル陸部32の貫通ラグ溝321の傾斜方向に対して逆方向である。
【0066】
また、図7に示すように、貫通ラグ溝331が、ジグザグ形状を有する。また、貫通ラグ溝331のジグザグ形状の振幅が、貫通ラグ溝331のピッチ長P31に対して2.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にある。また、貫通ラグ溝331のジグザグ形状の波長が、センター陸部33の最大接地幅Wb3に対して16[%]以上22[%]以下の範囲にある。
【0067】
また、図3および図7に示すように、複数の貫通ラグ溝331が、溝底サイプ333を有する第一貫通ラグ溝331Aと、溝底サイプを有さない第二貫通ラグ溝331Bとから構成される。例えば、図7の構成では、第一貫通ラグ溝331Aと第二貫通ラグ溝331Bとが、タイヤ周方向に交互に配列されている。しかし、これに限らず、隣り合う第一貫通ラグ溝331A、331Aの間に、2つあるいは3つの第二貫通ラグ溝331Bが配置されても良い(図示省略)。また、図3に示すように、溝底サイプ333を有するセンター陸部33の第一貫通ラグ溝331Aと、溝底サイプ323を有するミドル陸部32の第一貫通ラグ溝321Aとが、タイヤ周方向に千鳥状に配列される。言い換えると、溝底サイプ333を有するセンター陸部33の第一貫通ラグ溝331Aと溝底サイプ323を有するミドル陸部32の第一貫通ラグ溝321Aとがセンター主溝22を挟んで相互に対向しないように、各陸部32、33の貫通ラグ溝321A、321B、331A、331Bが配列される。
【0068】
また、貫通ラグ溝331の溝底から溝底サイプ333の最大深さ位置までの距離H33’(図示省略)が、センター主溝22の最大溝深さHg2(図示省略)に対して0.06≦H33’/Hg2の範囲にあり、0.10≦H33’/Hg2の範囲にあることが好ましい。また、トレッド踏面から溝底サイプ333の最大深さ位置までの距離H33(図示省略)が、センター主溝22の最大溝深さHg2に対してH33/Hg2≦1.00の範囲にあり、H33/Hg2≦0.50の範囲にあることが好ましい。
【0069】
ブロック332は、複数の貫通ラグ溝331に区画されて成る。また、ブロック332が、タイヤ幅方向に長尺な形状を有する。具体的には、図7において、ブロック332のピッチ長(貫通ラグ溝331のピッチ長P31に等しい。)が、センター陸部33の最大接地幅Wb3に対して45[%]以上80[%]以下の範囲にあり、50[%]以上75[%]以下の範囲にあることが好ましい。
【0070】
[ショルダー陸部]
図2の構成では、上記のように、ショルダー陸部31が、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブであり、ラグ溝あるいはサイプによりタイヤ周方向に分断されていない。また、ショルダー陸部31のショルダー主溝21側のエッジ部が、上記のように、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。
【0071】
また、図2に示すように、ショルダー陸部31は、複数の細浅溝311を備える。
【0072】
細浅溝311は、タイヤ接地端T側に開口部を向けたU字形状を有する。すなわち、細浅溝311のU字形状が、その頂部からタイヤ幅方向外側に二股で延在して終端する。また、細浅溝311が、ショルダー陸部31の接地面内で終端するクローズド構造を有する。このため、細浅溝311が、タイヤ接地端Tおよびショルダー主溝21に接続しておらず、ショルダー陸部31の踏面のエッジ部から離間して配置される。また、複数の細浅溝311が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。
【0073】
なお、ショルダー陸部31のショルダー主溝21側のエッジ部が、複数の微細なマルチサイプ(図中の符号省略)を有しても良い。これらのマルチサイプは、1.0[mm]未満の幅および5.0[mm]未満の延在長さを有する。これらのマルチサイプにより、ショルダー陸部31のエッジ部の偏摩耗が抑制される。
【0074】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の主溝21、22と、主溝21、22に区画されて成る4列以上の陸部31~33とを備える(図2参照)。また、少なくとも1列の陸部(図2では、ミドル陸部32およびセンター陸部33)が、陸部32;33をタイヤ幅方向に貫通する複数の貫通ラグ溝321;331を備える(図3参照)。貫通ラグ溝321;331のピッチ長P21;P31が、タイヤ最大接地長Lt(図示省略)の7[%]以上14[%]以下の範囲にある。また、貫通ラグ溝321;331の最大溝深さH21(図5参照);H31(図示省略)が、主溝21;22の最大溝深さHg1;Hg2の5[%]以上65[%]以下の範囲にある。
【0075】
かかる構成では、貫通ラグ溝321;331のピッチ長λ2;λ3および最大溝深さH21;H31の関係が適正化されて、タイヤの雪上加速性能と低転がり抵抗性能とが両立する利点がある。具体的には、貫通ラグ溝321;331のピッチ長P21;P31の範囲が上記下限を有すると共に貫通ラグ溝321;331の最大溝深さH21;H31の範囲が上記上限を有することにより、陸部32;33の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗の悪化が抑制される。また、貫通ラグ溝321;331のピッチ長P21;P31の範囲が上記上限を有すると共に貫通ラグ溝321;331の最大溝深さH21;H31の範囲が上記下限を有することにより、陸部32;33のエッジ成分が確保されて、スノー路面の走行時における貫通ラグ溝321;331のトラクション作用が確保される。
【0076】
また、このタイヤ1では、貫通ラグ溝321;331の最大溝幅W21;W31が、1.5[mm]以上4.0[mm]以下の範囲にある。これにより、貫通ラグ溝321;331の最大溝幅W21;W31が適正化される利点がある。
【0077】
また、このタイヤ1では、貫通ラグ溝321;331が、ジグザグ形状を有する(図3)。また、貫通ラグ溝321;331の振幅(図示省略)が、貫通ラグ溝321;331のピッチ長(図示省略)に対して2.0[%]以上7.0[%]以下の範囲にある。また、貫通ラグ溝321;331の波長が、陸部32;33の最大接地幅Wb2;Wb3に対して16[%]以上22[%]以下の範囲にある。これにより、貫通ラグ溝321;331のジグザグ形状が適正化されて、貫通ラグ溝321;331によるタイヤのトラクション性能の向上作用が確保される利点がある。
【0078】
また、このタイヤ1では、タイヤ周方向に対する貫通ラグ溝321;331の傾斜角θ21;θ31が、60[deg]以上120[deg]の範囲にある(図4および図7参照)。上記下限により、貫通ラグ溝321;331によるトラクション性能の向上作用が確保され、上記上限により、陸部32;33の剛性が適正に確保される利点がある。
【0079】
また、このタイヤ1では、複数の貫通ラグ溝321;331のうちの一部321A;331Aが、溝底サイプ323;333を有する(図4および図7参照)。また、溝底サイプ323;333を有する貫通ラグ溝321A;331Aと、溝底サイプを有さない少なくとも1本の貫通ラグ溝321B;331Bとが、タイヤ周方向に交互に配列される。かかる構成では、貫通ラグ溝321A;331Aが溝底サイプ323;333を有することにより、タイヤの雪上加速性能性が向上する利点がある。また、溝底サイプ323;333を有する貫通ラグ溝321A;331Aと溝底サイプを有さない貫通ラグ溝321B;331Bとがタイヤ周方向に交互に配列されるので、陸部32;33の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点がある。
【0080】
また、このタイヤ1では、貫通ラグ溝321;331の溝底から溝底サイプ323;333の最大深さ位置までの距離H23’(図5参照);H33’が、主溝21;22の最大溝深さHg1;Hg2に対して6[%]以上の範囲にある。また、トレッド踏面から溝底サイプ323;333の最大深さ位置までの距離H23;H33’が、主溝21;22の最大溝深さHg1;Hg2に対して100[%]以下の範囲にある。これにより、溝底サイプ323;333の深さが適正化される利点がある。具体的に、上記下限により、溝底サイプ323;333による雪上加速性能性の向上作用が確保され、上記上限により、陸部32;33の剛性が確保されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点がある。
【0081】
また、このタイヤ1では、隣り合う陸部32、33が、貫通ラグ溝321、331をそれぞれ備える(図3参照)。また、主溝22を挟んで対向する一対の貫通ラグ溝321、331の一方321A;331Aが溝底サイプ323;333を有すると共に、他方331B;323Bが溝底サイプを有さない。これにより、隣り合う陸部32、33間の剛性が均一化されて、タイヤの転がり抵抗が低減される利点がある。
【0082】
また、このタイヤ1では、陸部32;33の最大接地幅Wb2;Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して15[%]以上25[%]以下の範囲にある(図2参照)。これにより、陸部32;33が適正化される利点がある。
【0083】
また、このタイヤ1では、陸部32;33の第一および第二のエッジ部が、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状あるいは波状形状を有すると共にタイヤ周方向に位相をずらして配置される(図3参照)。また、貫通ラグ溝321;331が、タイヤ周方向に対して傾斜しつつ延在して、第一および第二のエッジ部の最大振幅位置を接続する。かかる構成では、陸部32;33のエッジ部がジグザグ形状あるいは波状形状を有するので、陸部のエッジ部がストレート形状を有する構成(図示省略)と比較して、タイヤの雪上加速性能性能が向上する利点がある。また、貫通ラグ溝321;331が陸部のエッジ部の最大振幅位置に開口するので、他の位置に開口する構成と比較して、陸部32;33の偏摩耗が低減される利点がある。
【0084】
また、このタイヤ1では、陸部32;33の第一および第二のエッジ部が、タイヤ幅方向に振幅をもつ複数の円弧を接続して成る波状形状を有する(図3参照)。また、円弧の周方向長さ(図示省略)が、波状形状の波長λ2;λ3に対して80[%]以上の範囲にある。かかる構成では、ジグザグ形状あるいは正弦波状のエッジ部を有する陸部を備える構成と比較して、陸部32;33の偏摩耗が抑制される利点がある。
【0085】
また、このタイヤ1では、陸部32:33の第一および第二のエッジ部の波状形状が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る(図3参照)。これにより、陸部32;33の偏摩耗が効果的に抑制される利点がある。
【0086】
[適用対象]
また、このタイヤ1は、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤである。かかるタイヤを適用対象とすることにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐ティア性能の向上作用が効果的に得られる利点があり、また、オールシーズンタイヤにおける雪上加速性能に対する要求が満たされる利点がある。
【0087】
また、この実施の形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、この実施の形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例
【0088】
図8は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【0089】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)雪上加速性能および(2)低転がり抵抗性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ315/70R22.5の試験タイヤがリムサイズ22.5×9.00“のリムに組み付けられ、この試験タイヤに900[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、4×2トラクターのステア軸に装着される。
【0090】
(1)雪上加速性能に関する評価は、ECE(Economic Commission for Europe )のR117-2(Regulation No.117 Revision 2)に準拠した試験条件下にて、規定の初速度から終端速度までの加速に要する距離が測定されて、評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。
【0091】
(2)低転がり抵抗性能に関する評価では、ドラム径1707[mm]のドラム試験機が用いられ、ISO28580に準拠して荷重33.3[kN]、空気圧900[kPa]、速度80[km/h]の条件にて試験タイヤの転がり抵抗係数が算出された。この評価は、従来例を基準(100)とした指数評価により行われ、その数値が大きいほど好ましい。
【0092】
実施例1の試験タイヤは、図1および図2の構成において、ショルダー主溝21およびセンター主溝22のエッジ部がジグザグ形状を有する。また、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の溝深さが14.6[mm]であり、溝幅が15.3[mm]である。また、貫通ラグ溝321、331のそれぞれが、ジグザグ形状を有し、また、タイヤ周方向に対して75[deg]の傾斜角θ21、θ31を有する。また、タイヤ接地幅TWが268[mm]であり、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が49.5[mm]であり、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が36.0[mm]であり、センター陸部33の最大接地幅Wb3が36.0[mm]である。他の実施例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤの変形例である。
【0093】
比較例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、ミドル陸部32およびセンター陸部33の貫通ラグ溝321、331のピッチ長P21、P31が大きく設定されている。
【0094】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの雪上加速性能および低転がり抵抗性能が両立することが分かる。
【符号の説明】
【0095】
1 タイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;311 細浅溝;32 センター陸部;32 ミドル陸部;321、321A、321B 貫通ラグ溝;322 ブロック;323 溝底サイプ;33 センター陸部;331、331A、331B 貫通ラグ溝;332 ブロック;333 溝底サイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8