(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/03 20060101AFI20240807BHJP
B60C 11/12 20060101ALI20240807BHJP
B60C 5/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B60C11/03 100C
B60C11/12 A
B60C11/12 D
B60C5/00 H
(21)【出願番号】P 2020064583
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 洋人
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-006771(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042257(WO,A1)
【文献】特開平02-283504(JP,A)
【文献】特開平03-079406(JP,A)
【文献】特開2008-273301(JP,A)
【文献】特開2019-182341(JP,A)
【文献】特開2017-030564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え
、且つ、
前記細浅溝の幅方向長さW11が、前記陸部の最大接地幅Wb1に対して0.40≦W11/Wb1≦0.90の関係を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記細浅溝を有する前記陸部が、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブである請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記細浅溝の最大溝幅Wnが、0.1[mm]≦Wn≦5.0[mm]の範囲にあり、且つ、前記細浅溝の最大溝深さHnが、
前記複数の主溝のうちショルダー主溝の最大溝深さHg1に対して0.01≦Hn/Hg1≦0.30の関係を有する請求項1または2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記細浅溝の周方向長さL11が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.50≦L11/P11≦0.90の関係を有する請求項1~
3のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向における前記細浅溝の一対の終端点の距離D1が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.30≦D1/P11≦0.70の関係を有する請求項1~
4のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項6】
タイヤ幅方向における前記細浅溝の一対の終端点A1、A2の距離D2が、前記陸部の最大接地幅Wb1に対して0≦D2/Wb1≦0.70の関係を有する請求項1~
5のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記細浅溝の一対の終端点A1、A2およびタイヤ幅方向の最内点Bを定義し、終端点A1、A2の中点Mおよび最内点Bを通る仮想線L1を定義し、且つ、
仮想線L1とタイヤ周方向とのなす角度θ11が、45[deg]≦θ11≦135[deg]の範囲にある請求項1~
6のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記細浅溝の前記U字形状が、タイヤ周方向に対して75[deg]以上105[deg]以下の傾斜角をもつ少なくとも1つの幅方向延在部を有し、且つ、
前記幅方向延在部の幅方向長さの総和ΣLaが、前記細浅溝の幅方向長さW11に対して1.00≦ΣLa/W11の関係を有する請求項1~
7のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項9】
前記細浅溝の前記U字形状が、隣り合う一対の前記幅方向延在部と、前記一対の幅方向延在部を接続するクランク状あるいはS字状の屈曲部とを有する請求項
8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記細浅溝の前記U字形状が、タイヤ周方向に対して0[deg]以上15[deg]以下の傾斜角をもつ連続した周方向延在部を有し、且つ、
前記周方向延在部の周方向長さLbが、前記細浅溝の周方向長さL11に対して0.50≦Lb/L11の関係を有する請求項1~
8のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項11】
車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤである請求項1~
10のいずれか一つに記載のタイヤ。
【請求項12】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え
、且つ、
前記細浅溝の周方向長さL11が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.50≦L11/P11≦0.90の関係を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項13】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え
、且つ、
タイヤ周方向における前記細浅溝の一対の終端点の距離D1が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.30≦D1/P11≦0.70の関係を有することを特徴とするタイヤ。
【請求項14】
タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、
少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え
、
前記細浅溝の前記U字形状が、タイヤ周方向に対して75[deg]以上105[deg]以下の傾斜角をもつ少なくとも1つの幅方向延在部を有し、且つ、
前記幅方向延在部の幅方向長さの総和ΣLaが、前記細浅溝の幅方向長さW11に対して1.00≦ΣLa/W11の関係を有することを特徴とするタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤに関し、さらに詳しくは、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能を維持しつつタイヤの騒音性能を向上できるタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の重荷重用タイヤでは、タイヤの雪上加速性能を高めるために、サイプを有するショルダー陸部を備える構成が採用されている。かかる構成を採用する従来のタイヤとして、特許文献1に記載される技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤでは、車両走行時における雪上加速性能および騒音性能を向上すべき要請がある。
【0005】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能を維持しつつタイヤの騒音性能を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明にかかるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え、且つ、前記細浅溝の幅方向長さW11が、前記陸部の最大接地幅Wb1に対して0.40≦W11/Wb1≦0.90の関係を有することを特徴とする。
また、この発明にかかるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え、且つ、前記細浅溝の周方向長さL11が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.50≦L11/P11≦0.90の関係を有することを特徴とする。
また、この発明にかかるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え、且つ、タイヤ周方向における前記細浅溝の一対の終端点の距離D1が、前記細浅溝のピッチ長P11に対して0.30≦D1/P11≦0.70の関係を有することを特徴とする。
また、この発明にかかるタイヤは、タイヤ周方向に延在する複数の主溝と、前記主溝に区画されて成る複数の陸部とを備えるタイヤであって、少なくとも1列の前記陸部が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有すると共に前記陸部の接地面内で終端する複数の細浅溝を備え、前記細浅溝の前記U字形状が、タイヤ周方向に対して75[deg]以上105[deg]以下の傾斜角をもつ少なくとも1つの幅方向延在部を有し、且つ、前記幅方向延在部の幅方向長さの総和ΣLaが、前記細浅溝の幅方向長さW11に対して1.00≦ΣLa/W11の関係を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明にかかるタイヤでは、(1)細浅溝がU字形状を有するので、タイヤ周方向に配列された複数かつI字状の幅方向細溝を備える構成と比較して、細浅溝の周方向成分により、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能が向上する利点がある。また、(2)細浅溝が、タイヤ接地端側に開口部を向けたU字形状を有するので、例えば環状構造を有する細浅溝を備える構成と比較して、タイヤ接地端側の領域における細浅溝の周方向成分を省略できる。これにより、車両走行時におけるタイヤの騒音性能が向上する利点がある。また、(3)細浅溝が、陸部の接地面内で終端するクローズド構造を有するので、陸部の接地面をタイヤ幅方向あるいはタイヤ周方向に貫通する細浅溝を備える構成と比較して、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に記載したタイヤのトレッド面を示す平面図である。
【
図3】
図3は、
図2に記載したタイヤのショルダー陸部を示す拡大図である。
【
図4】
図4は、
図3に記載したショルダー陸部の細浅溝を示す拡大図である。
【
図5】
図5は、
図3に記載したショルダー陸部の断面図である。
【
図6】
図6は、
図2に記載したショルダー主溝の溝壁構造を示す拡大平面図である。
【
図7】
図7は、
図2に記載したショルダー主溝の溝壁構造を示す拡大平面図である。
【
図8】
図8は、
図2に記載したショルダー主溝の溝深さ方向の断面図である。
【
図9】
図9は、
図4に記載した細浅溝の変形例を示す説明図である。
【
図19】
図19は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
【
図20】
図20は、
図19に記載した従来例の試験タイヤのショルダー陸部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施の形態の構成要素には、発明の同一性を維持しつつ置換可能かつ置換自明なものが含まれる。また、この実施の形態に記載された複数の変形例は、当業者自明の範囲内にて任意に組み合わせが可能である。
【0010】
[タイヤ]
図1は、この発明の実施の形態にかかるタイヤを示すタイヤ子午線方向の断面図である。同図は、タイヤ径方向の片側領域の断面図を示している。この実施の形態では、タイヤの一例として、トラックおよびトラクターのステア軸に装着される重荷重用の空気入りラジアルタイヤについて説明する。
【0011】
同図において、タイヤ子午線方向の断面とは、タイヤ回転軸(図示省略)を含む平面でタイヤを切断したときの断面をいう。また、符号CLは、タイヤ赤道面であり、タイヤ回転軸方向にかかるタイヤの中心点を通りタイヤ回転軸に垂直な平面をいう。また、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向をいい、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向をいう。
【0012】
タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心とする環状構造を有し、一対のビードコア11、11と、一対のビードフィラー12、12と、カーカス層13と、ベルト層14と、トレッドゴム15と、一対のサイドウォールゴム16、16と、一対のリムクッションゴム17、17とを備える(
図1参照)。
【0013】
一対のビードコア11、11は、スチールから成る1本あるいは複数本のビードワイヤを環状かつ多重に巻き廻して成り、ビード部に埋設されて左右のビード部のコアを構成する。一対のビードフィラー12、12は、一対のビードコア11、11のタイヤ径方向外周にそれぞれ配置されてビード部を補強する。
【0014】
カーカス層13は、1枚のカーカスプライから成る単層構造あるいは複数枚のカーカスプライを積層して成る多層構造を有し、左右のビードコア11、11間にトロイダル状に架け渡されてタイヤの骨格を構成する。また、カーカス層13の両端部は、ビードコア11およびビードフィラー12を包み込むようにタイヤ幅方向外側に巻き返されて係止される。また、カーカス層13のカーカスプライは、スチールあるいは有機繊維材(例えば、アラミド、ナイロン、ポリエステル、レーヨンなど)から成る複数のカーカスコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で80[deg]以上100[deg]以下のカーカス角度(タイヤ周方向に対するカーカスコードの長手方向の傾斜角として定義される。)を有する。
【0015】
ベルト層14は、4層のベルトプライ141~144を積層して成り、カーカス層13の外周に掛け廻されて配置される。ベルトプライ141~144は、スチールあるいは有機繊維材から成る複数のベルトコードをコートゴムで被覆して圧延加工して構成され、絶対値で15[deg]以上55[deg]以下のベルト角度を有する。また、ベルトプライ141~144は、相互に異符号のベルト角度(タイヤ周方向に対するベルトコードの長手方向の傾斜角として定義される)を有し、ベルトコードの長手方向を相互に交差させて積層される(いわゆるクロスプライ構造)。
【0016】
トレッドゴム15は、カーカス層13およびベルト層14のタイヤ径方向外周に配置されてタイヤ1のトレッド部を構成する。一対のサイドウォールゴム16、16は、カーカス層13のタイヤ幅方向外側にそれぞれ配置されて左右のサイドウォール部を構成する。一対のリムクッションゴム17、17は、左右のビードコア11、11およびカーカス層13の巻き返し部のタイヤ径方向内側からタイヤ幅方向外側に延在して、ビード部のリム嵌合面を構成する。
【0017】
[トレッドパターン]
図2は、
図1に記載したタイヤ1のトレッド面を示す平面図である。同図は、マッド・アンド・スノーマーク「M+S」をもつオールシーズン用タイヤのトレッド面を示している。同図において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸周りの方向をいう。また、符号Tは、タイヤ接地端であり、寸法記号TWは、タイヤ接地幅である。
【0018】
図2に示すように、タイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の周方向主溝21、22と、これらの周方向主溝21、22に区画された複数の陸部31、32、33とをトレッド面に備える。
【0019】
主溝は、JATMAに規定されるウェアインジケータの表示義務を有する溝であり、7.0[mm]以上の最大溝幅および12[mm]以上の最大溝深さを有する。
【0020】
溝幅は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、溝開口部における左右の溝壁間の距離として測定される。陸部が切欠部や面取部をエッジ部に有する構成では、溝長さ方向を法線方向とする断面視にて、トレッド踏面と溝壁の延長線との交点を測定点として、溝幅が測定される。
【0021】
溝深さは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を充填した無負荷状態にて、トレッド踏面から溝底までの距離として測定される。また、溝が部分的な凹凸部やサイプを溝底に有する構成では、これらを除外して溝深さが測定される。
【0022】
規定リムとは、JATMAに規定される「標準リム」、TRAに規定される「Design Rim」、あるいはETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。また、規定荷重とは、JATMAに規定される「最大負荷能力」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、あるいはETRTOに規定される「LOAD CAPACITY」をいう。ただし、JATMAにおいて、乗用車用タイヤの場合には、規定内圧が空気圧180[kPa]であり、規定荷重が規定内圧での最大負荷能力の88[%]である。
【0023】
例えば、
図2の構成では、タイヤ1が、タイヤ赤道面CL上に中心点をもつ略点対称なトレッドパターンを有している。しかし、これに限らず、タイヤ1が、例えば、タイヤ赤道面CLを中心とする左右線対称なトレッドパターンあるいは左右非対称なトレッドパターンを有しても良いし、タイヤ回転方向に方向性を有するトレッドパターンを有しても良い(図示省略)。
【0024】
また、
図2の構成では、タイヤ赤道面CLを境界とする左右の領域が2本の周方向主溝21、22をそれぞれ有している。また、これらの周方向主溝21、22が、タイヤ赤道面CLを中心として、左右対称に配置されている。また、これらの周方向主溝21、22により、5列の陸部31~33が区画されている。また、1つの陸部33が、タイヤ赤道面CL上に配置されている。
【0025】
しかし、これに限らず、3本あるいは5本以上の周方向主溝が配置されても良いし、周方向主溝がタイヤ赤道面CLを中心として左右非対称に配置されても良い(図示省略)。また、1つの周方向主溝がタイヤ赤道面CL上に配置されることにより、陸部がタイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0026】
また、タイヤ赤道面CLを境界とする1つの領域に配置された周方向主溝21、22のうち、タイヤ幅方向の最も外側にある周方向主溝21をショルダー主溝として定義し、タイヤ赤道面CL側にある周方向主溝22をセンター主溝として定義する。
【0027】
また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向外側の陸部31をショルダー陸部として定義する。ショルダー陸部31は、タイヤ幅方向の最も外側の陸部であり、タイヤ接地端T上に位置する。また、ショルダー主溝21に区画されたタイヤ幅方向内側の陸部32をミドル陸部として定義する。ミドル陸部32は、ショルダー主溝21を挟んでショルダー陸部31に隣り合う。また、ミドル陸部32よりもタイヤ赤道面CL側にある陸部33をセンター陸部として定義する。センター陸部33は、タイヤ赤道面CL上に配置されても良いし(
図2参照)、タイヤ赤道面CLから外れた位置に配置されても良い(図示省略)。
【0028】
タイヤ接地幅TWは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を付与したときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大直線距離として測定される。
【0029】
タイヤ接地端Tは、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に静止状態にて平板に対して垂直に置いて規定荷重に対応する負荷を加えたときのタイヤと平板との接触面におけるタイヤ軸方向の最大幅位置として定義される。
【0030】
なお、
図2のような4本の周方向主溝21、22を備える構成では、一対のショルダー陸部31、31と、一対のミドル陸部32、32と、単一のセンター陸部33とが定義される。また、例えば、5本以上の周方向主溝を備える構成では、2列以上のセンター陸部が定義され(図示省略)、3本の周方向主溝を備える構成では、ミドル陸部がセンター陸部を兼ねる(図示省略)。
【0031】
また、
図2の構成では、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb1/TW≦0.25の関係を有する。また、タイヤ赤道面CLに最も近いセンター陸部33の最大接地幅Wb3が、タイヤ接地幅TWに対して0.15≦Wb3/TW≦0.25の関係を有することが好ましく、0.18≦Wb3/TW≦0.23の関係を有することがより好ましい。また、
図2のような4本の周方向主溝21、22と5列の陸部31~33とを備える構成では、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2がショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して若干狭く、具体的には0.85≦Wb2/Wb1≦0.95の範囲にあることが好ましい。
【0032】
また、
図2の構成では、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、タイヤ幅方向に振幅を有するジグザグ形状あるいは波状形状を有する。しかし、これに限らず、後述するように、ショルダー主溝21およびセンター主溝22が、溝開口部にてストレート形状を有しても良い(図示省略)。
【0033】
また、ショルダー陸部31が、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブであり、ラグ溝を備えていない。また、ミドル陸部32およびセンター陸部33が複数の貫通ラグ溝321、331をそれぞれ備えている。また、これらの貫通ラグ溝321、331が、陸部32、33を貫通するオープン構造を有すると共にタイヤ周方向に所定間隔で配列されている。これにより、ミドル陸部32およびセンター陸部33が貫通ラグ溝321、331によりタイヤ周方向に分断されて、ブロック列となっている。
【0034】
[ショルダー陸部]
図3は、
図2に記載したタイヤ1のショルダー陸部31を示す拡大図である。
図4は、
図3に記載したショルダー陸部31の細浅溝311を示す拡大図である。同図は、単体の細浅溝311を抽出して示している。
図5は、
図3に記載したショルダー陸部31の断面図である。同図は、細浅溝311に沿って切断したショルダー陸部31の断面図を示している。
【0035】
図2の構成では、上記のように、ショルダー陸部31が、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブであり、ラグ溝あるいはサイプによりタイヤ周方向に分断されていない。また、ショルダー陸部31のショルダー主溝21側のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。
【0036】
また、
図2に示すように、ショルダー陸部31は、複数の細浅溝311を備える。
【0037】
細浅溝311は、タイヤ接地端T側に開口部を向けたU字形状(あるいはV字形状ないしはC字形状)を有する。言い換えると、細浅溝311が、タイヤ赤道面CL側に閉塞部を有し、タイヤ接地端T側に開口部をもつ連続した片側開口形状を有する。また、細浅溝311が、ショルダー陸部31の接地面内で終端するクローズド構造を有する。このため、細浅溝311が、タイヤ接地端Tおよびショルダー主溝21に接続しておらず、ショルダー陸部31の踏面のエッジ部から離間して配置される。また、複数の細浅溝311が、タイヤ周方向に所定間隔で配列される。また、隣り合う細浅溝311が、相互に離間して配置される。
【0038】
また、細浅溝311の最大溝幅Wn(
図4参照)が、0.1[mm]≦Wn≦5.0[mm]の範囲にあり、0.3[mm]≦Wn≦2.0[mm]の範囲にあることが好ましい。また、細浅溝311の最大溝深さHn(
図5参照)が、ショルダー主溝21の最大溝深さHgに対して0.01≦Hn/Hg≦0.30の関係を有し、0.03≦Hn/Hg≦0.25の関係を有することが好ましい。細浅溝311は、上記した最大溝幅Wnおよび最大溝深さHnを有することにより、タイヤ接地時に閉塞することなく開口して、溝として機能する。
【0039】
上記の構成では、(1)細浅溝311がU字形状を有するので、タイヤ周方向に配列された複数かつI字状の幅方向細溝を備える構成(図示省略)と比較して、細浅溝311の周方向成分により、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能が向上する。また、(2)細浅溝311が、タイヤ接地端T側に開口部を向けたU字形状を有するので、例えば環状構造を有する細浅溝を備える構成(図示省略)と比較して、タイヤ接地端T側の領域における細浅溝の周方向成分を省略できる。これにより、車両走行時におけるタイヤの騒音性能が向上し、また、細浅溝311を起点とする偏摩耗が抑制される。また、(3)細浅溝311が、陸部31の接地面内で終端するクローズド構造を有するので、陸部の接地面をタイヤ幅方向あるいはタイヤ周方向に貫通する細浅溝を備える構成(図示省略)と比較して、タイヤの騒音性能が向上する。
【0040】
また、
図3において、細浅溝311の幅方向長さW11が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.40≦W11/Wb1≦0.90の関係を有し、0.50≦W11/Wb1≦0.80の関係を有することが好ましい。
【0041】
細浅溝311の幅方向長さW11は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、細浅溝311のタイヤ幅方向への最大延在長さとして測定される。
【0042】
また、
図3において、細浅溝311の周方向長さL11が、細浅溝311のピッチ長P11に対して0.50≦L11/P11≦0.90の関係を有し、0.60≦L11/P11≦0.80の関係を有することが好ましい。
【0043】
細浅溝311の周方向長さL11は、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態としたときの、細浅溝311のタイヤ周方向への最大延在長さとして測定される。
【0044】
また、細浅溝311のピッチ数Pnが、ショルダー陸部31のエッジ部の波状形状のピッチ数と同じであり、50以上100以下の範囲にある。また、隣り合う細浅溝311、311の距離(図示省略)が、10[mm]以上の範囲で確保されることが好ましい。
【0045】
また、
図3において、タイヤ周方向における細浅溝311の終端点A1、A2の距離D1が、細浅溝311のピッチ長P11に対して0.30≦D1/P11≦0.70の関係を有し、0.40≦D1/P11≦0.60の関係を有することが好ましい。
【0046】
また、
図3において、タイヤ幅方向における細浅溝311の終端点A1、A2の距離D2(
図4参照)が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0≦D2/Wb1≦0.70の関係を有し、0≦D2/Wb1≦0.50の関係を有することが好ましい。
【0047】
また、
図3において、細浅溝311とタイヤ接地端Tとの距離D3が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.05≦D3/Wb1の関係を有し、0.10≦D3/Wb1の関係を有することが好ましい。同様に、細浅溝311とショルダー陸部31のエッジ部との距離D4が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.10≦D4/Wb1の関係を有し、0.15≦D4/Wb1の関係を有することが好ましい。これにより、ショルダー陸部31のエッジ部の剛性が確保される。なお、距離D3、D4の上限は特に限定がないが、上記した細浅溝311の幅方向長さW11の比W11/Wb1との関係で制約を受ける。また、
図3の構成では、距離D3の測定点が終端点A1であるが、細浅溝311の形状により、他方の終端点A2が距離D3の測定点となり得る。
【0048】
また、
図3において、細浅溝311の幅方向長さW11と周方向長さL11とが、0.60≦W11/L11≦1.40の関係を有し、0.80≦W11/L11≦1.20の関係を有することが好ましい。
【0049】
また、
図3において、上記のように、ショルダー陸部31がタイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状あるいは波状形状のエッジ部を有する構成では、細浅溝311のタイヤ幅方向の最内点Bとショルダー陸部31のエッジ部のタイヤ幅方向外側への最大振幅位置P1ooとのタイヤ周方向の距離D5が、エッジ部の波長λ1o_shに対して0.30≦D5/λ1o_sh≦0.70の範囲にあり、0.45≦D5/λ1o_sh≦0.65の範囲にあることが好ましい。したがって、細浅溝311の最内点Bが、ショルダー陸部31のエッジ部のタイヤ幅方向外側への最大振幅位置P1ooに対して離間して配置される。これにより、ショルダー陸部31のエッジ部の剛性が確保される。
【0050】
また、
図4に示すように、細浅溝311の一対の終端点A1、A2およびタイヤ幅方向の最内点Bを定義する。また、終端点A1、A2の中点Mおよび最内点Bを通る仮想線L1を定義する。このとき、仮想線L1とタイヤ周方向とのなす角度θ11が、45[deg]≦θ11≦135[deg]の範囲にあり、50[deg]≦θ11≦70[deg]の範囲にあることが好ましい。これにより、細浅溝311のU字形状の開口方向が適正化される。
【0051】
また、
図4の構成では、細浅溝311のU字形状が、タイヤ周方向に対して75[deg]以上105[deg]以下の傾斜角をもつ連続した幅方向延在部Ra1、Ra2を有する。そして、幅方向延在部Ra1、Ra2の幅方向長さLa1~La4(図中の寸法記号省略)の総和ΣLaが、細浅溝311の幅方向長さW11に対して1.00≦ΣLa/W11の関係を有し、1.30≦ΣLa/W11の関係を有することが好ましい。また、幅方向延在部Ra1、Ra2の幅方向長さLa1~La4のそれぞれが、細浅溝311の幅方向長さW11に対して25[%]以上の範囲にあることが好ましい。これにより、幅方向延在部Ra1、Ra2の幅方向長さLa1~La4が確保される。なお、上記比の上限は、特に限定がないが、他の条件により制約を受ける。
【0052】
細浅溝311のU字形状の傾斜角は、細浅溝の溝中心線の接線とタイヤ周方向とのなす角として測定される。
【0053】
また、
図4の構成では、細浅溝311のU字形状が、タイヤ周方向に対して0[deg]以上15[deg]以下の傾斜角をもつ連続した周方向延在部Rbを備える。そして、周方向延在部Rbの周方向長さLb1(図中の寸法記号省略)が、細浅溝311の周方向長さL11に対して0.50≦Lb/L11の関係を有し、0.70≦Lb/L11の関係を有することが好ましい。これにより、周方向延在部Rbの周方向長さLb1が確保される。なお、上記比の上限は、特に限定がないが、他の条件により制約を受ける。
【0054】
また、
図4に示すように、細浅溝311のU字形状が、点A1、Bの間および点A2、Bの間の領域の少なくとも一方に配置されて隣り合う幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を接続する屈曲部(図中の符号省略)を有することが好ましい。この屈曲部は、クランク状あるいはS字状を有する。また、タイヤ接地端Tから屈曲部の中心点Cまでの距離D6が、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.30≦D6/Wb1≦0.70の関係を有することが好ましく、0.40≦D6/Wb1≦0.60の関係を有することがより好ましい。したがって、細浅溝311の屈曲部が、ショルダー陸部31の幅方向中央部に配置される。
【0055】
例えば、
図4の構成では、細浅溝311の一対の終端点A1、A2が、タイヤ幅方向の略同位置に配置されている。また、細浅溝311が単一の最内点Bを有している。また、細浅溝311が、点A1、Bの間および点A2、B’の間のそれぞれに、タイヤ幅方向に対して略平行に延在する一対の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を有している。また、2組の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2のそれぞれが、S字状の屈曲部を介して相互に接続されている。これにより、タイヤ幅方向にステップ状に延在する溝部が形成されている。また、屈曲部が、タイヤ周方向に対して同一方向に傾斜あるいは屈曲している。また、細浅溝311が、最内点Bからタイヤ周方向に対して略平行に延在する単一の周方向延在部Rbを有している。また、周方向延在部Rbが、直線ないしはタイヤ赤道面CL側に凸となる緩やかな円弧形状を有し、最内点Bおよび他方の端点B’にて幅方向延在部Ra1、Ra2に対して略L字状に接続している。また、一対の終端点A1、A2および周方向延在部Rbの両端点B、B’が、タイヤ周方向に相互にオフセットして配置されている。
【0056】
図4の構成では、細浅溝311のU字形状が、分岐部を有さない単一線から構成されている。しかし、これに限らず、細浅溝311のU字形状が、その中途から分岐する枝部を有しても良い(図示省略)。
【0057】
なお、ショルダー陸部31のショルダー主溝21側のエッジ部が、複数の微細なマルチサイプ(図中の符号省略)を有しても良い。これらのマルチサイプは、1.0[mm]未満の幅および5.0[mm]未満の延在長さを有する。これらのマルチサイプにより、ショルダー陸部31のエッジ部の偏摩耗が抑制される。
【0058】
[ミドル陸部およびセンター陸部]
図2の構成では、ミドル陸部32およびセンター陸部33が、複数の貫通ラグ溝321;331と、複数のブロック322;332とをそれぞれ備える。
【0059】
また、ミドル陸部32およびセンター陸部33のエッジ部が、複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。また、ミドル陸部32の左右のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。一方で、センター陸部33がタイヤ赤道面CLに配置され、また、センター陸部33の左右のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側、すなわちセンター陸部33の幅方向内側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。このため、トレッド全体の陸部31~33のエッジ部が、タイヤ赤道面CL側に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。
【0060】
また、
図2に示すように、ミドル陸部32およびセンター陸部33の貫通ラグ溝321、331が、陸部32、33のエッジ部の最大振幅位置に開口する。また、貫通ラグ溝321、331のピッチ数が、陸部32、33のエッジ部の波状形状のピッチ数の2倍に設定される。また、タイヤ全周における貫通ラグ溝321、331のピッチ数が、110以上200以下の範囲にある。また、ミドル陸部32およびセンター陸部33の左右のエッジ部の波状形状がタイヤ周方向に位相をずらして配置されることにより、貫通ラグ溝321、331が、タイヤ幅方向に対して傾斜して延在する。
【0061】
また、ミドル陸部32(およびセンター陸部33)の貫通ラグ溝321(331)が、細浅溝であり、1.5[mm]以上4.0[mm]以下の最大溝幅W21および1.0[mm]以上6.0[mm]以下の最大溝深さH21を有する(図示省略)。また、貫通ラグ溝321(331)の最大溝深さH21が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対して0.05≦H21/Hg1≦0.65の関係を有し、0.10≦H21/Hg1≦0.30の関係を有することがより好ましい(図示省略)。
【0062】
ブロック322;332は、複数の貫通ラグ溝321;331に区画されて成る。また、ブロック322、332が、タイヤ幅方向に長尺な形状を有する。具体的には、ブロック322;332のピッチ長が、陸部32;33の最大接地幅Wb2;Wb3に対して40[%]以上70[%]以下の範囲にあり、50[%]以上60[%]以下の範囲にあることが好ましい。
【0063】
また、タイヤ全周にかかるタイヤ周方向に対するスノートラクションインデックスSTI(いわゆる0[deg]スノートラクションインデックス)が、130≦STIの範囲にある。
【0064】
スノートラクションインデックスSTIは、SAE(Society of Automotive Engineers)にて提案されたユニロイヤル社の実験式であり、以下の数式(1)により定義される。同式において、Pgは、溝密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝(サイプを除くすべての溝)の溝長さ[mm]と、タイヤ接地面積(タイヤ接地幅とタイヤ周長との積)[mm^2]との比として算出される。また、ρsは、サイプ密度[1/mm]であり、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべてのサイプのサイプ長さ[mm]と、タイヤ接地面積[mm^2]との比として算出される。また、Dgは、タイヤ接地面におけるタイヤ周方向に投影したすべての溝の溝深さ[mm]の平均値である。
【0065】
STI=-6.8+2202×Pg+672×ρs+7.6×Dg ・・・(1)
【0066】
[ショルダー主溝の溝壁構造]
図6~
図8は、
図2に記載したショルダー主溝21の溝壁構造を示す拡大平面図(
図6および
図7)ならびに溝深さ方向の断面図(
図8)である。これらの図において、
図6は、ショルダー主溝21におけるタイヤ幅方向外側の溝壁構造を特に示し、
図7は、タイヤ幅方向内側の溝壁構造を特に示している。また、
図8は、タイヤ幅方向外側へのショルダー主溝21の最大振幅位置における断面図を示している。
【0067】
図2の構成では、
図6に示すように、ショルダー主溝21の溝開口部211および溝底部212の双方が、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状あるいは波状形状を有する。しかし、これに限らず、ショルダー主溝21の溝開口部211が、ストレート形状を有しても良い(図示省略)。
【0068】
ここで、主溝の溝開口部および溝底部のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向の外側エッジ部および内側エッジ部を定義する。また、外側エッジ部および内側エッジ部のそれぞれにおいて、タイヤ幅方向外側に凸となる外側最大振幅位置およびタイヤ幅方向内側に凸となる内側最大振幅位置を定義する。
【0069】
溝開口部のエッジ部は、溝深さ方向の断面視における溝壁とトレッドプロファイルとの交点(例えば
図8参照)をタイヤ周方向の全域に渡って接続した仮想線により定義される。エッジ部が面取部を有する構成では、溝開口部のエッジ部が溝壁の延長線とトレッドプロファイルとの交点(図示省略)が接続されて仮想線が作図される。
【0070】
溝底部のエッジ部は、溝深さ方向の断面視における最大溝深さ位置の端点をタイヤ周方向の全域に渡って接続した仮想線として定義される。主溝の溝底部が最大溝深さ位置でフラットな直線となる場合(例えば
図8参照)には、溝底部の外側エッジ部および内側エッジ部が上記フラットな直線の両端点にてそれぞれ定義される。一方、主溝の溝底部が円弧形状あるいは漏斗形状を有する場合(図示省略)には、最大溝深さ位置が一点となり、溝底部のエッジ部が一点で定義される。このため、上記した溝底部の外側エッジ部および内側エッジ部が、同位置にある。また、主溝の最大溝深さ位置は、主溝の溝底部に形成された部分的な底上部を除外して定義される。
【0071】
図6および
図7の構成では、ショルダー主溝21の溝開口部211が、ショルダー陸部31側の外側エッジ部211oおよびミドル陸部32側の内側エッジ部211iのそれぞれにて、タイヤ幅方向に振幅をもつ波状形状を有している。さらに、ショルダー主溝21の溝底部212が、ショルダー陸部31側の外側エッジ部212oおよびミドル陸部32側の内側エッジ部212iのそれぞれにて、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状を有している。
【0072】
また、
図6に示すように、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの外側最大振幅位置P1ooが、溝底部212の外側エッジ部212oの外側最大振幅位置P2ooに対してタイヤ周方向の同位置にある。具体的には、
図6において、ショルダー主溝21の溝開口部211および溝底部212の外側エッジ部211o、212oにおける外側最大振幅位置P1oo、P2ooのオフセット量φoo_shが、溝開口部211の外側エッジ部211oの波長λ1o_shに対して0≦φoo_sh/λ1o_sh≦0.10の関係を有し、0≦φoo_sh/λ1o_sh≦0.05の関係を有することがより好ましい。
【0073】
最大振幅位置のオフセット量は、トレッド平面視における最大振幅位置のタイヤ周方向の距離であり、タイヤを規定リムに装着して規定内圧を付与すると共に無負荷状態として測定される。
【0074】
同様に、
図7に示すように、ショルダー主溝21の溝開口部211の内側エッジ部211iの外側最大振幅位置P1ioが、溝底部212の内側エッジ部212iの外側最大振幅位置P2ioに対してタイヤ周方向の同位置にある。具体的には、
図7において、ショルダー主溝21の溝開口部211および溝底部212の内側エッジ部211i、212iにおける外側最大振幅位置P1io、P2ioのオフセット量φio_shが、溝開口部211の内側エッジ部211iの波長λ1i_shに対して0≦φio_sh/λ1i_sh≦0.10の関係を有し、0≦φio_sh/λ1i_sh≦0.05の関係を有することがより好ましい。
【0075】
また、
図6に示すように、ショルダー主溝21の溝開口部211における外側エッジ部211oの外側最大振幅位置P1ooと内側エッジ部211iの外側最大振幅位置P1ioとが、タイヤ周方向の同位置にある。具体的には、ショルダー主溝21の溝開口部211における外側エッジ部211oの外側最大振幅位置P1ooと内側エッジ部211iの外側最大振幅位置P1ioとのオフセット量δ_shが、溝開口部211の外側エッジ部211oの波長λ1o_shに対して0≦δ_sh/λ1o_sh≦0.10の関係を有し、0≦δ_sh/λ1o_sh≦0.05の関係を有することがより好ましい。
【0076】
また、
図6において、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの波長λ1o_shが、溝底部212の外側エッジ部212oの波長λ2o_shに対して略同一に設定される。具体的には、溝開口部211および溝底部212の波長λ1o_sh、λ2o_shが0.90≦λ2o_sh/λ1o_sh≦1.10の範囲にある。
【0077】
同様に、
図7において、ショルダー主溝21の溝開口部211の内側エッジ部211iの波長λ1i_shが、溝底部212の内側エッジ部212iの波長λ2i_shに対して略同一に設定される。具体的には、溝開口部211および溝底部212の波長λ1i_sh、λ2i_shが0.90≦λ2i_sh/λ1i_sh≦1.10の範囲にある。
【0078】
また、ショルダー主溝21の溝底部212の波長λ2_sh(λ2o_sh、λ2i_sh)が、タイヤ接地幅TWに対して0.10≦λ2_sh/TW≦0.35の関係を有する。
【0079】
また、
図6において、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oにおける外側最大振幅位置P1ooと内側最大振幅位置P1oiとのタイヤ周方向の最大距離L1o_shが、外側エッジ部211oの波長λ1o_shに対して0.50≦L1o_sh/λ1o_sh≦0.60の関係を有し、0.50≦L1o_sh/λ1o_sh≦0.55の関係を有することが好ましい。これにより、タイヤ新品時におけるトレッド踏面の剛性がタイヤ周方向で均一化される。
【0080】
外側最大振幅位置と内側最大振幅位置とのタイヤ周方向の最大距離は、隣り合う外側最大振幅位置と、これらの外側最大振幅位置の間にある内側最大振幅位置とのタイヤ周方向の距離のうち大きい方の距離として測定される。
【0081】
ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの波長λ1o_shは、ショルダー主溝21がジグザグ形状あるいは波状形状を有する場合にのみ定義され、ストレート形状を有する場合には定義されない。
【0082】
同様に、
図7において、ショルダー主溝21の溝開口部211の内側エッジ部211iにおける外側最大振幅位置P1ioと内側最大振幅位置P1iiとのタイヤ周方向の最大距離L1i_shが、内側エッジ部211iの波長λ1i_shに対して0.50≦L1i_sh/λ1i_sh≦0.60の関係を有し、0.50≦L1i_sh/λ1i_sh≦0.55の関係を有することが好ましい。
【0083】
また、
図6において、ショルダー主溝21の溝底部212の外側エッジ部212oにおける外側最大振幅位置P2ooと内側最大振幅位置P2oiとのタイヤ周方向の最大距離L2o_shが、外側エッジ部212oの波長λ2o_shに対して0.50≦L2o_sh/λ2o_sh≦0.60の関係を有し、0.50≦L2o_sh/λ2o_sh≦0.55の関係を有することが好ましい。したがって、ショルダー主溝21の溝底部212の外側最大振幅位置P2ooと内側最大振幅位置P2oiとが、タイヤ周方向に略等間隔で配置される。
【0084】
同様に、
図7において、ショルダー主溝21の溝底部212の内側エッジ部212iにおける外側最大振幅位置P2ioと内側最大振幅位置P2iiとのタイヤ周方向の最大距離L2i_shが、内側エッジ部212iの波長λ2i_shに対して0.50≦L2i_sh/λ2i_sh≦0.60の関係を有し、0.50≦L2i_sh/λ2i_sh≦0.55の関係を有することが好ましい。
【0085】
また、
図6において、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの振幅A1o_shが、溝底部212の外側エッジ部212oの振幅A2o_shに対して1.20≦A2o_sh/A1o_sh≦2.00の関係を有し、1.30≦A2o_sh/A1o_sh≦1.80の関係を有することがより好ましい。したがって、溝底部212のジグザグ形状の振幅A2o_shが溝開口部211の波状形状の振幅A1o_shよりも大きく設定される。
【0086】
同様に、
図7において、ショルダー主溝21の溝開口部211の内側エッジ部211iの振幅A1i_shが、溝底部212の内側エッジ部212iの振幅A2i_shに対して1.20≦A2i_sh/A1i_sh≦2.00の関係を有し、1.30≦A2i_sh/A1i_sh≦1.80の関係を有することがより好ましい。
【0087】
上記の構成では、(1)ショルダー主溝21の溝開口部211の振幅A1o_sh、A1i_shが小さく設定されるので、陸部31、32のエッジ部のレール偏摩耗、ショルダー主溝21側への最大振幅位置P1io、P1oiで発生し易い、が抑制される。また、(2)ショルダー主溝21の溝底部212の振幅A2o_sh、A2i_shが大きく設定されるので、陸部31、32の剛性が確保されて、タイヤの耐ティア性能が確保される。これにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐ティア性能が両立する。さらに、(3)ショルダー主溝21の溝開口部211が、タイヤ幅方向に振幅をもつジグザグ形状あるいは波状形状を有することにより、陸部31、32のエッジ成分が増加して、タイヤの雪上加速性能が向上する。
【0088】
また、
図7において、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの振幅A1o_shが、内側エッジ部211iの振幅A1i_shに対して略同一に設定される。具体的には、外側エッジ部211oの振幅A1o_shが、内側エッジ部211iの振幅A1i_shに対して0.90≦A1o_sh/A1i_sh≦1.10の関係を有し、0.95≦A1o_sh/A1i_sh≦1.05の関係を有することがより好ましい。
【0089】
また、ショルダー主溝21の溝開口部211の振幅A1o_sh、A1i_shが、0[mm]以上15.0[mm]以下の範囲にあり、2.0[mm]以上10.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。振幅A1o_sh、A1i_shが0[mm]の場合には、ショルダー主溝21の溝開口部211がストレート形状を有する。
【0090】
また、ショルダー主溝21の溝底部212の振幅A2o_sh、A2i_shが、2.5[mm]以上15.0[mm]以下の範囲にあり、4.0[mm]以上12.0[mm]以下の範囲にあることが好ましい。
【0091】
また、
図8に示すように、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oの外側最大振幅位置P1ooにおける溝壁角度α1ooが、外側エッジ部211oの内側最大振幅位置P1oiにおける溝壁角度α1oiに対してα1oo<α1oiの関係を有する。同様に、ショルダー主溝21の溝開口部211の内側エッジ部211iの外側最大振幅位置P1ioにおける溝壁角度α1ioが、内側エッジ部211iの内側最大振幅位置P1iiにおける溝壁角度α1iiに対してα1ii<α1ioの関係を有する。したがって、ショルダー主溝21の溝開口部のエッジ部がショルダー主溝21側に凸となる位置(外側エッジ部211oの内側最大振幅位置P1oiおよび内側エッジ部211iの外側最大振幅位置P1io。
図6参照)では、ショルダー主溝21の溝壁角度α1oi、α1ioが大きく設定される。これにより、最大振幅位置P1oi、P1ioにおける陸部31、32の剛性が確保される。
【0092】
さらに、
図6が示すように、ショルダー主溝21の溝底部212の全体が、溝開口部211の全体に対してタイヤ幅方向内側に偏って配置される。このため、ショルダー主溝21の内側エッジ部211iにおける溝壁角度の平均値が、外側エッジ部211oにおける溝壁角度の平均値よりも大きく設定される。これにより、幅狭なミドル陸部32(
図2参照)の剛性が、確保される。
【0093】
また、
図8において、ショルダー主溝21の溝底部212の最大幅Wg2_shが、溝開口部211の最大幅Wg1_sh(すなわちショルダー主溝21の最大溝幅)に対して0<Wg2_sh/Wg1_sh≦0.60の関係を有し、0.35≦Wg2_sh/Wg1_sh≦0.45の関係を有することがより好ましい。主溝の溝底部が円弧形状あるいは漏斗形状を有する場合(図示省略)には、溝底部212の最大幅Wg2_shが略0となる。
【0094】
また、
図6の構成では、ショルダー主溝21の溝開口部211の外側エッジ部211oおよび内側エッジ部211iの双方が、タイヤ幅方向内側(すなわち、タイヤ赤道面CL側。
図2参照)に凸となる複数の円弧を接続して成る波状形状を有する。また、円弧の周方向長さ(図中の寸法記号省略)が、外側エッジ部211oの波長λ1o_shに対して80[%]以上であり、85[%]以上であることがより好ましい。また、隣り合う円弧が、短尺な直線あるいは円弧を介して接続される。かかる構成では、エッジ部がジグザグ形状あるいは正弦波形状を有する構成と比較して、エッジ部の最大突出位置における偏摩耗が抑制される点で好ましい。
【0095】
しかし、これに限らず、ショルダー主溝21の溝開口部211が、上記のように直線形状あるいはジグザグ形状を有しても良いし、正弦波状の波状形状を有しても良い(図示省略)。
【0096】
また、
図6の構成では、ショルダー主溝21の溝底部212の外側エッジ部212oおよび内側エッジ部212iの双方が、略同一長さの直線部をタイヤ周方向に接続して成るジグザグ形状を有する。また、溝底部212の周方向長さ(
図6では、外側エッジ部212oの最大振幅位置P2oo、P2oiのタイヤ周方向の最大距離L2o_shに略等しい。)が、外側エッジ部212oの波長λ2o_shに対して40[%]以上60[%]以下の範囲にあることが好ましい。
【0097】
しかし、これに限らず、ショルダー主溝21の溝底部212が、上記のように波状形状を有しても良い(図示省略)。
【0098】
[変形例]
図9~
図18は、
図4に記載した細浅溝311の変形例を示す説明図である。これらの図において、
図4に記載した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0099】
図4の構成では、周方向延在部Rbが、タイヤ周方向に対して傾斜した直線ないしは緩やかな円弧形状を有することにより、細浅溝311が単一の最内点B’を有する。また、最内点B’が、細浅溝311の幅方向延在部Ra1と周方向延在部Rbとの接続部に位置する。
【0100】
これに対して、
図9の構成では、周方向延在部Rbがタイヤ周方向に平行な直線から成る。この場合には、細浅溝311の溝部のうちタイヤ幅方向の最内側にある領域(
図9では、周方向延在部Rbの全体)の中心点が、細浅溝311の最内点B’として定義される。また、
図10の構成では、左右の幅方向延在部Ra1、Ra2がタイヤ赤道面CL側に凸となる円弧形状の溝部を介して接続されている。また、この円弧形状の凸部が、細浅溝311の最内点B’および周方向延在部Rbを有している。
【0101】
また、
図4の構成では、細浅溝311が、点A1、Bの間および点A2、Bの間のそれぞれに、タイヤ幅方向に対して略平行に延在する一対の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を有する。
【0102】
これに対して、
図11の構成では、細浅溝311が、点A1、Bの間に一対の幅方向延在部Ra1、Ra1を有し、点A2、Bの間に単一の幅方向延在部Ra2を有している。また、点A2側の幅方向延在部Ra2と最内点Bとが、短尺かつS字状の屈曲部および周方向延在部Rbを含む長尺な円弧を介して接続されている。
【0103】
また、
図4の構成では、細浅溝311の一対の終端点A1、A2が、タイヤ幅方向の略同位置に配置される。このため、タイヤ幅方向における終端点A1、A2の距離D2が略ゼロである。
【0104】
これに対して、
図12の構成では、細浅溝311の一対の終端点A1、A2が、タイヤ幅方向に相互にオフセットして配置されている。かかる構成としても、細浅溝311の角度θ11が上記した範囲にあることにより、細浅溝311がタイヤ接地端T側に開口部を向けているといえる。
【0105】
また、
図4の構成では、細浅溝311のU字形状の開口部が、直線ないしは緩やかな円弧形状を有する幅方向延在部Ra1、Ra2により構成され、これらの幅方向延在部Ra1、Ra2が、細浅溝311の終端点A1、A2を有する。
【0106】
これに対して、
図13の構成では、細浅溝311のU字形状の開口部が、終端点A1、A2に向かって開口幅を狭める方向に湾曲している。また、
図14の構成では、隣り合う幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を接続するS字形状の屈曲部が、U字形状の開口幅を狭める方向に湾曲している。このように、細浅溝311のU字形状が開口幅を狭めた形状を有しても良い。
【0107】
また、
図4の構成では、細浅溝311が、点A1、Bの間および点A2、Bの間のそれぞれに、タイヤ幅方向に対して略平行に延在する一対の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を有し、また、2組の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2のそれぞれが、S字状の屈曲部を介して相互に接続される。
【0108】
これに対して、
図15の構成では、細浅溝311が、点A1、Bの間に単一の幅方向延在部Ra1を有し、点A2、Bの間に一対の幅方向延在部Ra2、Ra2を有している。また、点A1、Bが、長尺かつ直線状の幅方向延在部Ra1で接続されている。また、
図16の構成では、点A1、Bの間に一対の幅方向延在部Ra1、Ra1を有し、点A2、Bの間に幅方向延在部を有していない。また、点A2、Bが、長尺かつ円弧状の溝部で接続されている。
【0109】
また、
図17および
図18の構成では、細浅溝311が、点A1、Bの間および点A2、Bの間のそれぞれに、単一かつ長尺な幅方向延在部Ra1;Ra2を有している。特に
図18の構成では、点A1、Bおよび点A2、Bが幅方向延在部Ra1;Ra2により接続されている。
【0110】
[効果]
以上説明したように、このタイヤ1は、タイヤ周方向に延在する複数の主溝21、22と、主溝21、22に区画されて成る複数の陸部31~33とを備える(
図2参照)。また、少なくとも1列の陸部(
図2では、左右のショルダー陸部31、31)が、タイヤ接地端T側に開口部を向けたU字形状を有すると共に陸部31の接地面内で終端する複数の細浅溝311を備える(
図3参照)。
【0111】
かかる構成では、(1)細浅溝311がU字形状を有するので、タイヤ周方向に配列された複数かつI字状の幅方向細溝を備える構成(図示省略)と比較して、細浅溝311の周方向成分により、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能が向上する利点がある。また、(2)細浅溝311が、タイヤ接地端T側に開口部を向けたU字形状を有するので、例えば環状構造を有する細浅溝を備える構成(図示省略)と比較して、タイヤ接地端T側の領域における細浅溝の周方向成分を省略できる。これにより、車両走行時におけるタイヤの騒音性能が向上する利点があり、また、細浅溝311を起点とする偏摩耗が抑制される利点がある。また、(3)細浅溝311が、陸部31の接地面内で終端するクローズド構造を有するので、陸部の接地面をタイヤ幅方向あるいはタイヤ周方向に貫通する細浅溝を備える構成(図示省略)と比較して、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【0112】
また、このタイヤ1では、細浅溝311を有する陸部31が、タイヤ周方向に連続した踏面を有するリブである(
図3参照)。これにより、陸部31の剛性が確保されてタイヤの雪上加速性能が向上する利点があり、また、陸部の接地面をタイヤ幅方向に貫通する細浅溝を備える構成(図示省略)と比較して、タイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【0113】
また、このタイヤ1では、細浅溝311の最大溝幅Wn(
図4参照)が、0.1[mm]≦Wn≦5.0[mm]の範囲にあり、且つ、細浅溝311の最大溝深さHn(
図5参照)が、ショルダー主溝21の最大溝深さHg1に対して0.01≦Hn/Hg1≦0.30の関係を有する。これにより、細浅溝311の最大溝幅Wnおよび最大溝深さHg1が適正化される利点がある。
【0114】
また、このタイヤ1では、細浅溝311の幅方向長さW11が、陸部31の最大接地幅Wb1に対して0.40≦W11/Wb1≦0.90の関係を有する(
図3参照)。上記下限により、細浅溝311のタイヤ周方向へのエッジ成分が確保されて、タイヤの雪上加速性能の向上作用が確保される利点がある。上記上限により、細浅溝311と陸部31のエッジ部との距離D3、D4(
図3参照)が確保されて、陸部31の剛性が確保される利点がある。
【0115】
また、このタイヤ1では、細浅溝311の周方向長さL11が、細浅溝311のピッチ長P11に対して0.50≦L11/P11≦0.90の関係を有する(
図3参照)。上記下限により、細浅溝311のU字形状の周方向成分が確保されて、車両走行時におけるタイヤの雪上加速性能が確保される利点がある。上記上限により、細浅溝311の周方向成分が過大となることに起因するタイヤの騒音性能の悪化が抑制される利点がある。
【0116】
また、このタイヤ1では、タイヤ周方向における細浅溝311の一対の終端点A1、A2の距離D1が、細浅溝311のピッチ長P11に対して0.30≦D1/P11≦0.90の関係を有する(
図3参照)。上記下限により、細浅溝311のU字形状の開口幅が確保されて、タイヤの騒音性能の悪化が抑制される利点がある。上記上限により、隣り合う細浅溝311、311の終端点A1、A2の間隔が確保される利点がある。
【0117】
また、このタイヤ1では、タイヤ幅方向における細浅溝311の一対の終端点A1、A2の距離D2(
図4参照)が、陸部31の最大接地幅Wb1(
図3参照)に対して0≦D2/Wb1≦0.70の関係を有する。かかる構成では、細浅溝311の一対の終端点A1、A2がタイヤ幅方向の同位置にあることにより、ショルダー陸部31の剛性が均一化されて、ショルダー陸部31の耐偏摩耗が抑制される利点がある。
【0118】
また、このタイヤ1では、細浅溝311の一対の終端点A1、A2およびタイヤ幅方向の最内点Bを定義し、終端点A1、A2の中点Mおよび最内点Bを通る仮想線L1を定義するときに、仮想線L1とタイヤ周方向とのなす角度θ11が、45[deg]≦θ11≦135[deg]の範囲にある(
図4参照)。これにより、細浅溝311のU字形状の開口方向が適正化されて、車両走行時におけるタイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【0119】
また、このタイヤ1では、細浅溝311のU字形状が、タイヤ周方向に対して75[deg]以上105[deg]以下の傾斜角をもつ少なくとも1つの幅方向延在部Ra1、Ra2を有する(
図4参照)。また、幅方向延在部Ra1、Ra2の幅方向長さLa1~La4の総和ΣLaが、細浅溝311の幅方向長さW11に対して1.00≦ΣLa/W11の関係を有する。かかる構成では、タイヤ周方向に対して略垂直に延在する幅方向延在部Ra1、Ra2の総長さΣLaが確保されるので、細浅溝311による車両直進時の雪上加速性能の向上作用が効率的に確保される利点がある。
【0120】
また、このタイヤ1では、細浅溝311のU字形状が、隣り合う一対の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2と、一対の幅方向延在部Ra1、Ra1;Ra2、Ra2を接続するクランク状あるいはS字状の屈曲部(図中の符号省略)とを有する(
図4参照)。これにより、細浅溝311の周方向成分が増加して、車両走行時におけるタイヤの騒音性能が向上する利点がある。
【0121】
また、このタイヤ1では、細浅溝311のU字形状が、タイヤ周方向に対して0[deg]以上15[deg]以下の傾斜角をもつ連続した周方向延在部Rbを有する(
図4参照)。また、周方向延在部Rbの周方向長さLbが、細浅溝311の周方向長さL11に対して0.50≦Lb/L11の関係を有する。かかる構成では、タイヤ周方向に対して略平行に延在する周方向延在部Rbの長さLbが確保されるので、細浅溝311による車両走行時の雪上加速性能の向上作用が効率的に確保される利点がある。
【0122】
[適用対象]
また、このタイヤ1は、車両のステア軸に装着される重荷重用タイヤである。かかるタイヤを適用対象とすることにより、タイヤの耐偏摩耗性能および耐ティア性能の向上作用が効果的に得られる利点があり、また、オールシーズンタイヤにおける雪上加速性能に対する要求が満たされる利点がある。
【0123】
この実施の形態では、上記のように、タイヤの一例として空気入りタイヤについて説明した。しかし、これに限らず、この実施の形態に記載された構成は、他のタイヤに対しても、当業者自明の範囲内にて任意に適用できる。他のタイヤとしては、例えば、エアレスタイヤ、ソリッドタイヤなどが挙げられる。
【実施例】
【0124】
図19は、この発明の実施の形態にかかるタイヤの性能試験の結果を示す図表である。
図20は、
図19に記載した従来例の試験タイヤのショルダー陸部を示す説明図である。
【0125】
この性能試験では、複数種類の試験タイヤについて、(1)雪上加速性能および(2)通過騒音性能に関する評価が行われた。また、タイヤサイズ315/70R22.5の試験タイヤがリムサイズ22.5×9.00“のリムに組み付けられ、この試験タイヤに900[kPa]の内圧およびJATMAの規定荷重が付与される。また、試験タイヤが、4×2トラクターのステア軸に装着される。
【0126】
(1)雪上加速性能に関する評価は、ECE(Economic Commission for Europe )のR117-2(Regulation No.117 Revision 2)に準拠した試験条件下にて、規定の初速度から終端速度までの加速に要する距離が測定されて、評価が行われる。この評価は、数値が大きいほど好ましい。また、数値が96以上であれば、性能が適正に確保されているといえる。
【0127】
(2)通過騒音性能に関する評価は、ECEのR117-2に準拠した試験条件下にて、車両の通過騒音が測定される。そして、この測定結果に基づいて、従来例を基準(0)としたデシベル差が算出される。この数値は、小さいほど好ましい。
【0128】
実施例の試験タイヤは、
図1~
図3の構成を備える。また、ショルダー主溝21およびセンター主溝22の溝深さが14.6[mm]であり、溝幅が15.3[mm]である。また、貫通ラグ溝321、331が2.1[mm]の最大溝幅W21および2.5[mm]の最大溝深さH21を有する。また、タイヤ接地幅TWが268[mm]であり、ショルダー陸部31の最大接地幅Wb1が49.5[mm]であり、ミドル陸部32の最大接地幅Wb2が36.0[mm]であり、センター陸部33の最大接地幅Wb3が36.0[mm]である。また、主溝21、22の溝開口部211、221のジグザグ形状のピッチ数が、50以上100以下である。
【0129】
比較例の試験タイヤは、実施例1の試験タイヤにおいて、細浅溝がストレート形状を有し、ショルダー陸部を貫通している(
図20参照)。
【0130】
試験結果が示すように、実施例の試験タイヤでは、タイヤの雪上加速性能を維持しつつ、車両走行時の通過騒音性能を向上できることが分かる。
【符号の説明】
【0131】
1 タイヤ;11 ビードコア;12 ビードフィラー;13 カーカス層;14 ベルト層;141、142 交差ベルト;15 トレッドゴム;16 サイドウォールゴム;17 リムクッションゴム;21 ショルダー主溝;211 溝開口部;212 溝底部;22 センター主溝;31 ショルダー陸部;311 細浅溝;32 ミドル陸部;321 貫通ラグ溝;322 ブロック;33 センター陸部