(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/02 20060101AFI20240807BHJP
B29C 43/36 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B29C43/02
B29C43/36
(21)【出願番号】P 2021013155
(22)【出願日】2021-01-29
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 太一
(72)【発明者】
【氏名】村尾 健一
【審査官】浅野 弘一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-012386(JP,A)
【文献】特開2006-103136(JP,A)
【文献】特表昭58-501810(JP,A)
【文献】特開2011-031500(JP,A)
【文献】特開2018-140575(JP,A)
【文献】特開2018-202620(JP,A)
【文献】特開2013-028031(JP,A)
【文献】特開昭59-101322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 43/02
B29C 43/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2樹脂シート形成装置と、開閉可能な第1及び第2分割金型とを用いた成形体の製造方法であって、
前記第1分割金型は前記第1樹脂シート形成装置側に配置され、前記第2分割金型は前記第2樹脂シート形成装置側に配置されており、
前記第1樹脂シート形成装置から第1溶融樹脂シートを押し出して前記第1及び第2分割金型により型締めする工程と、前記第2樹脂シート形成装置から第2溶融樹脂シートを押し出して前記第1及び第2分割金型により型締めする工程とを交互に行
い、
前記第1及び第2樹脂シート形成装置はそれぞれ、溶融樹脂を貯留可能なアキュームレータと、前記溶融樹脂をシート状にして押し出すTダイとを備え、
一方の樹脂シート形成装置のTダイから押し出された溶融樹脂シートによって前記成形体を成形している間に、他方の樹脂シート形成装置のアキュームレータに前記溶融樹脂を貯留する、方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の成形体の製造方法であって、
前記第1分割金型の外周には第1型枠が設けられ、前記第2分割金型の外周には第2型枠が設けられており、
前記第1型枠は前記第1溶融樹脂シートを吸着可能に構成され、前記第2型枠は前記第2溶融樹脂シートを吸着可能に構成されており、
前記第1型枠又は前記第2型枠が対応する溶融樹脂シートを吸着した状態で前記第1及び第2分割金型を型締めする、方法。
【請求項3】
請求項
2に記載の成形体の製造方法であって、
前記第1型枠及び前記第2型枠は、それぞれ型締め方向及び型開き方向に進退可能に構成されており、
前記第1型枠及び前記第2型枠は、前記型締め方向に前進した状態で対応する溶融樹脂シートを吸着する、方法。
【請求項4】
請求項
2又は請求項
3に記載の成形体の製造方法であって、
前記第1分割金型は凸型であり、前記第2分割金型は凹型であって、
前記第1及び第2分割金型を型締めすることによって前記第1又は第2溶融樹脂シートを賦形する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂シートを一対の金型により型締めして成形する成形体の製造方法がある。例えば、特許文献1には、樹脂シート形成装置(押出装置)から押し出された溶融状態の樹脂シートを金型の間に垂下し、その樹脂シートをプレス成形する方法が開示されている。このような製造方法によれば、溶融状態の樹脂シートをそのまま金型で成形することで、効率的に樹脂製パネルを成形することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような製造方法において、樹脂シート形成装置が一度樹脂シートを押し出した後には、アキュームレータに次に押し出すための溶融樹脂を貯留するための時間が必要である。そして、特に大型のパネルを成形する場合には必要な溶融樹脂の貯留量が多いため、金型を型開きして樹脂製パネルを取り出した後も、次の樹脂シートが押し出し可能になるまでに待ち時間が生じることがあった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、金型を効率的に使用し、成形効率を向上させることが可能な成形体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、第1及び第2樹脂シート形成装置と、開閉可能な第1及び第2分割金型とを用いた成形体の製造方法であって、前記第1分割金型は前記第1樹脂シート形成装置側に配置され、前記第2分割金型は前記第2樹脂シート形成装置側に配置されており、前記第1樹脂シート形成装置から第1溶融樹脂シートを押し出して前記第1及び第2分割金型により型締めする工程と、前記第2樹脂シート形成装置から第2溶融樹脂シートを押し出して前記第1及び第2分割金型により型締めする工程とを交互に行う、方法が提供される。
【0007】
本発明によれば、一組の金型(第1及び第2分割金型)が第1及び第2樹脂シート形成装置から交互に押し出された溶融樹脂シートを順次型締めすることで、金型を効率的に使用し、成形効率を向上させることが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記第1及び第2樹脂シート形成装置はそれぞれ、溶融樹脂を貯留可能なアキュームレータと、前記溶融樹脂をシート状にして押し出すTダイとを備え、一方の樹脂シート形成装置のTダイから押し出された溶融樹脂シートによって前記成形体を成形している間に、他方の樹脂シート形成装置のアキュームレータに前記溶融樹脂を貯留する。
【0010】
好ましくは、前記第1分割金型の外周には第1型枠が設けられ、前記第2分割金型の外周には第2型枠が設けられており、前記第1型枠は前記第1溶融樹脂シートを吸着可能に構成され、前記第2型枠は前記第2溶融樹脂シートを吸着可能に構成されており、前記第1型枠又は前記第2型枠が対応する溶融樹脂シートを吸着した状態で前記第1及び第2分割金型を型締めする。
【0011】
好ましくは、前記第1型枠及び前記第2型枠は、それぞれ型締め方向及び型開き方向に進退可能に構成されており、前記第1型枠及び前記第2型枠は、前記型締め方向に前進した状態で対応する溶融樹脂シートを吸着する。
【0012】
好ましくは、前記第1分割金型は凸型であり、前記第2分割金型は凹型であって、前記第1及び第2分割金型を型締めすることによって前記第1又は第2溶融樹脂シートを賦形する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法に利用可能な成形機1の一例を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図2の成形機1において、第1樹脂シート形成装置2Aから第1溶融樹脂シート5Aを垂下させている状態を示す模式図である。
【
図4】
図3の状態の後、第1型枠4Aを前進させて第1溶融樹脂シート5Aに当接させた様子を示す模式図である。
【
図5】
図4の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bの型締めを開始し、第1溶融樹脂シート5Aを第2分割金型3Bの食切り部31に当接させた様子を示す模式図である。
【
図6】
図5の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bにより第1溶融樹脂シート5Aを食い切った様子を示す模式図である。
【
図7】
図6の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bを型締めした様子を示す模式図である。
【
図8】
図1の成形機1において、第2樹脂シート形成装置2Bから第2溶融樹脂シート5Bを垂下させている状態を示す模式図である。
【
図9】
図8の状態の後、第2型枠4Bを前進させて第2溶融樹脂シート5Bに当接させた様子を示す模式図である。
【
図10】
図9の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bの型締めを開始し、第2溶融樹脂シート5Bを第2分割金型3Bの食切り部31に当接させた様子を示す模式図である。
【
図11】
図10の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bにより第2溶融樹脂シート5Bを食い切った様子を示す模式図である。
【
図12】
図11の状態の後、第1分割金型3A及び第2分割金型3Bを型締めした様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0015】
1.成形機1の構成
まず、
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法の実施に利用可能な成形機1について説明する。成形機1は、第1及び第2樹脂シート形成装置2A,2Bと、開閉可能な第1及び第2分割金型3A,3Bと、第1及び第2型枠4A,4Bとを備える。なお、本実施形態の成形機1によって製造される成形体としては、例えば、樹脂製パネルが挙げられる。また、本実施形態の成形機1は、特に、仮設トイレの壁材等の大型パネルを製造するのに好適に利用される。以下、各構成について詳細に説明する。
【0016】
<第1及び第2樹脂シート形成装置2A,2B>
第1及び第2樹脂シート形成装置2A,2Bは、同一の構成であり、それぞれホッパー21と、押出機22と、油圧モータ23と、アキュームレータ24と、プランジャ25と、Tダイ26と、ローラ27とを備える。押出機22とアキュームレータ24は、連結管28を介して連結される。アキュームレータ24とTダイ26は、連結管29を介して連結される。
【0017】
ホッパー21は、原料樹脂を押出機22内に投入するために用いられる。原料樹脂の形態は、特に限定されないが、通常は、ペレット状である。原料樹脂は、例えばポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂であり、ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。
【0018】
押出機22は、原料樹脂を加熱して溶融樹脂とするとともに、油圧モータ23により内部に配置されたスクリュー(図示せず)を回転駆動させ、原料樹脂を混練しながら先端に向けて搬送する。搬送された溶融樹脂は、樹脂押出口から押し出され、連結管28を通じてアキュームレータ24内に注入される。
【0019】
アキュームレータ24は、所定量の溶融樹脂を貯留・冷却する。プランジャ25は、アキュームレータ24内の溶融樹脂を高圧にして、連結管29を通じてTダイ26に押し出す。また、Tダイ26は、スリットを備えており、適宜のタイミングでスリットを開くことで、溶融状態の溶融樹脂シート5A,5Bをシート状にして押し出す。押し出された溶融樹脂シート5A,5Bは、ローラ27によって送り出され、分割金型3A,3B間に垂下される。
【0020】
<第1及び第2分割金型3A,3B>
第1及び第2分割金型3A,3Bは、対向して配置され、開閉可能に構成される。第1及び第2分割金型3A,3Bは、第1樹脂シート形成装置2Aから垂下された第1溶融樹脂シート5A及び第2樹脂シート形成装置2Bから垂下された第2溶融樹脂シート5Bをそれぞれ型締め可能に配置される。本実施形態において、第1分割金型3Aは第1樹脂シート形成装置2A側に配置され、第2分割金型3Bは第2樹脂シート形成装置2B側に配置される。また、第1分割金型3Aは凸型であり、第2分割金型3Bは凹型である。そして、第2分割金型3Bには、食切り部31が形成される。
【0021】
<第1及び第2型枠4A,4B>
第1型枠4Aは、第1分割金型3Aの全周に亘って設けられ、第2型枠4Bは、第2分割金型3Bの外周に亘って設けられる。第1及び第2型枠4A,4Bには、減圧吸引のための溝状の減圧吸引孔41が設けられている。減圧吸引孔41は、減圧装置(図示せず)に接続されており、第1型枠4Aの減圧吸引孔41は第1溶融樹脂シート5Aを吸着可能に構成され、第2型枠4Bの減圧吸引孔41は第2溶融樹脂シート5Bを吸着可能に構成されている。また、第1及び第2型枠4A,4Bは、それぞれ型締め方向及び型開き方向に進退可能(前進及び後退可能)に構成されている。
【0022】
2.成形体の製造方法
次に、
図1~
図12を用いて、本発明の一実施形態の成形体の製造方法について説明する。本実施形態の方法は、第1樹脂シート形成装置2Aから第1溶融樹脂シート5A(
図3参照)を押し出して第1及び第2分割金型3A,3Bにより型締めする第1成形工程と、第2樹脂シート形成装置2Bから第2溶融樹脂シート5B(
図4参照)を押し出して第1及び第2分割金型3A,3Bにより型締めする第2成形工程とを交互に行う。以下、各工程を詳細に説明する。
【0023】
2.1 第1成形工程
第1成形工程では、第1垂下工程S1と、第1吸着工程S2と、第1型締め工程S3と、第1型開き工程S4を順次実行する。
【0024】
<第1垂下工程S1>
まず、第1垂下工程S1では、
図3に示すように、第1樹脂シート形成装置2Aから第1分割金型3Aの前面側に第1溶融樹脂シート5Aを垂下させる。
図3に示すように、第1溶融樹脂シート5Aが垂下される間、第1型枠4Aは、第1溶融樹脂シート5Aから離れた位置に後退している。
【0025】
<第1吸着工程S2>
次に、第1吸着工程S2では、
図4に示すように、第1型枠4Aを型締め方向に前進させ、第1溶融樹脂シート5Aを吸着する。具体的には、第1型枠4Aを第1溶融樹脂シート5Aに当接させた状態で第1型枠4Aの減圧吸引孔41に接続された減圧装置を作動させることによって、第1溶融樹脂シート5Aを第1型枠4Aに吸着させる。これによって、第1溶融樹脂シート5Aは第1型枠4Aに把持されることになり、型締めの際の第1溶融樹脂シート5Aのドローダウンによるカーテン現象(たるみやシワの発生)が抑制される。
【0026】
<第1型締め工程S3>
次に、第1型締め工程S3では、
図4~
図7に示すように、第1及び第2分割金型3A,3Bの型締めを行う。この際には、まず、第1分割金型3Aと第1型枠4A、第2分割金型3Bと第2型枠4Bがそれぞれ一体的に型締め方向に移動し、第1溶融樹脂シート5Aが第2分割金型3Bの食切り部31に当接する(
図5参照)。そして、さらに第1型枠4Aに対して第1分割金型3Aが相対的に型締め方向に移動することで、第1溶融樹脂シート5Aが凸型である第1分割金型3Aに当接する(
図6参照)。その後は、第1及び第2分割金型3A,3Bが型締め方向に移動することで型締めがなされる。なお、
図6~
図7に示すように、第1溶融樹脂シート5Aが第1分割金型3Aに当接した後、型締めされるまでは、第1分割金型3Aはさらに前進する一方、第1型枠4Aは後退する。これは、第1型枠4Aと第2分割金型3Bが接近してこれらの間で第1溶融樹脂シート5Aを噛んでしまうことを防止するためである。
【0027】
第1及び第2分割金型3A,3Bを型締めすることによって、第1溶融樹脂シート5Aは賦形される。このように、本実施形態の第1溶融樹脂シート5Aは、型締めによって賦形されるようになっており、型締め前に第1分割金型3Aが減圧吸引(キャビティ真空吸引)を行って賦形することはない。ただし、賦形を行わなくても、第1分割金型3Aのキャビティ、第1型枠4A及び第1溶融樹脂シート5Aで囲まれる空間の空気を逃がすために、型締め前に補助的に減圧吸引することは有効である。この場合、減圧吸引は型締めの直前に行うことが好ましい。
【0028】
なお、このような工程であるため、本実施形態の第1溶融樹脂シート5Aは、型締めされる直前まで第1及び第2分割金型3A,3Bと非接触となり、これら第1及び第2分割金型3A,3Bによって冷却されないようになっている。また、第1型締め工程S3において、第2型枠4Bは常に食切り部31よりも後退した位置にあり、第1型枠4Aと干渉しないようになっている。
【0029】
<第1型開き工程S4>
第1型締め工程S3の後は、第1及び第2分割金型3A,3Bを開いて成形体を取り出し、バリを除去する。これにより、所望の成形体を得ることができる。
【0030】
2.2 第2成形工程
第1成形工程が終了した後、成形体の成形を継続する場合は、第2成形工程を行う。第2成形工程では、第2垂下工程S6と、第2吸着工程S7と、第2型締め工程S8と、第2型開き工程S9を順次実行する。
【0031】
<第2垂下工程S6>
まず、第2垂下工程S6では、
図8に示すように、第2樹脂シート形成装置2Bから第2分割金型3Bの前面側に第2溶融樹脂シート5Bを垂下させる。
図8に示すように、第2溶融樹脂シート5Bが垂下される間、第2型枠4Bは、第2溶融樹脂シート5Bから離れた位置に後退している。
【0032】
<第2吸着工程S7>
次に、第2吸着工程S7では、
図9に示すように、第2型枠4Bを型締め方向に前進させ、第2溶融樹脂シート5Bを吸着する。具体的には、第2型枠4Bを第2溶融樹脂シート5Bに当接させた状態で第2型枠4Bの減圧吸引孔41に接続された減圧装置を作動させることによって、第2溶融樹脂シート5Bを第2型枠4Bに吸着させる。これによって、第2溶融樹脂シート5Bは第2型枠4Bに把持されることになり、型締めの際の第2溶融樹脂シート5Bのドローダウンによるカーテン現象(たるみやシワの発生)が抑制される。
【0033】
<第2型締め工程S8>
次に、第2型締め工程S8では、
図9~
図12に示すように、第1及び第2分割金型3A,3Bの型締めを行う。この際には、まず、第1分割金型3Aと第1型枠4Aが一体的に型締め方向に移動し、第2分割金型3Bと第2型枠4Bも型締め方向に移動する。ただし、第1分割金型3Aが第2分割金型3Bに近づいた後は、第2型枠4Bのみが後退するか、又は、第2型枠4Bよりも第2分割金型3Bのほうが相対的に早く型締め方向に移動することで、型締め前に、第2溶融樹脂シート5Bが第2分割金型3Bの食切り部31に当接する(
図10参照)。そして、第2分割金型3Bの食切り部31と第2型枠4Bがともに第2溶融樹脂シート5Bに当接した後は、第2分割金型3Bと第2型枠4Bは一体的に型締め方向に移動する。そして、第2溶融樹脂シート5Bが凸型である第1分割金型3Aに当接し(
図11参照)、さらに第1及び第2分割金型3A,3Bが型締め方向に移動することで型締めがなされる(
図12参照)。第1及び第2分割金型3A,3Bを型締めすることによって、第2溶融樹脂シート5Bは賦形される。このように、本実施形態では、第2溶融樹脂シート5Bも型締めによって賦形されるようになっており、型締め前に第2分割金型3Bが減圧吸引(キャビティ真空吸引)を行って賦形することはない。ただし、賦形を行わなくても、第2分割金型3Bのキャビティ、第2型枠4B及び第2溶融樹脂シート5Bで囲まれる空間の空気を逃がすために、型締め前に補助的に減圧吸引することは有効である。この場合、減圧吸引は型締めの直前に行うことが好ましい。
【0034】
なお、このような工程であるため、本実施形態の第2溶融樹脂シート5Bは、型締めされる直前まで第1及び第2分割金型3A,3Bと非接触となり、これら第1及び第2分割金型3A,3Bによって冷却されないようになっている。なお、第1型締め工程S3において、第1型枠4Aは常に後退した位置にあり、第2型枠4Bと干渉しないようになっている。
【0035】
<第2型開き工程S9>
第2型締め工程S8の後は、第1及び第2分割金型3A,3Bを開いて成形体を取り出し、バリを除去する。これにより、所望の成形体を得ることができる。
【0036】
2.3 第1成形工程と第2成形工程の繰り返し
本実施形態の成形体の製造方法は、上述した第1成形工程と第2成形工程とを繰り返し行うことで、成形体を連続的に成形する方法である。具体的には、
図2のフローチャートに示すように、第1成形工程の第1型開き工程S4が終了した後と、第2成形工程の第2型開き工程S9が終了した後には、それぞれ所定数の成形体が成形されたかどうかの判定を行い(ステップS5及びステップS10)、所定数の成形体が成形されるまで、第1成形工程と第2成形工程とを繰り返し行う。この間、第1樹脂シート形成装置2Aと第2樹脂シート形成装置2Bは交互に第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bを形成・垂下する。一方の樹脂シート形成装置2A,2Bが溶融樹脂シート5A,5Bを形成している間、他方の樹脂シート形成装置2B,2Aのアキュームレータ24においては、溶融樹脂の貯留・冷却が行われる。
【0037】
なお、本実施形態の成形体の製造方法では、樹脂シート形成装置2A,2Bごとに型締め位置Lは変えておらず、第1及び第2分割金型3A,3Bによる型締め位置L(
図7及び
図12参照)は、第1成形工程と第2成形工程で一致するようになっている。つまり、溶融樹脂シート5A,5Bを垂下する位置が異なっても、第1及び第2分割金型3A,3Bを同じ位置で開閉して型締めを行うようになっている。型締め位置Lは、具体的には、第1樹脂シート形成装置2Aによる第1溶融樹脂シート5Aの垂下位置と第2樹脂シート形成装置2Bによる第2溶融樹脂シート5Bの垂下位置の間であり、溶融樹脂シート5A,5Bの2つの垂下位置の略中間地点であることが好ましい。本実施形態の成形機1は、このような構成とすることで、装置が大掛かりになることを抑制することが可能となっている。
【0038】
3.作用効果
以上のような本発明の一実施形態に係る成形体の製造方法によれば、第1及び第2分割金型3A,3Bが第1及び第2樹脂シート形成装置2A,2Bから交互に押し出された第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bを順次型締めすることで、金型を効率的に使用し、成形効率を向上させることが可能となっている。具体的には、一方の樹脂シート形成装置2A,2Bでの溶融樹脂シート5A,5Bの形成及びこれの型締めの間に、他方の樹脂シート形成装置2B,2Aのアキュームレータ24において溶融樹脂の貯留・冷却時間が取れることから、複雑な構成にすることなく、1組の金型のみで成形効率を向上させることができるようになっている。この点、例えば仮設トイレの壁材等の大型成形品を成形する場合には、アキュームレータ24における冷却に特に時間がかかるが、このような場合であっても、第1及び第2分割金型3A,3Bに待ち時間を生じさせず、成形効率を向上させることが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の第1型締め工程S3及び第2型締め工程S8においては、キャビティ真空吸引による賦形を行わず、型締めによって第1溶融樹脂シート5A又は第2溶融樹脂シート5Bを賦形する。そしてこの際、第1型締め工程S3と第2型締め工程S8のいずれにおいても、第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bは、まず凹型である第2分割金型3Bの食切り部31と当接し、続いて凸型の第1分割金型3Aに当接した直後に型締めがなされる。このように、第1型締め工程S3及び第2型締め工程S8のいずれにおいても、第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bに対し同様の順番で第1及び第2分割金型3A,3Bが当接することになるため、第1成形工程及び第2成形工程での第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bの両面の冷却時間が均等になり、成形品の品質を均一にすることができる。さらに、本実施形態の第1型締め工程S3及び第2型締め工程S8では第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bの両面が第1及び第2分割金型3A,3Bによりほぼ同時に冷却されるため、成形品の反りを抑制することも可能となっている。
【0040】
4.変形例
なお、本発明は、以下の態様でも実施可能である。
・上述した実施形態において、第1及び第2型枠4A,4Bは、第1及び第2分割金型3A,3Bの全周に亘って設けられていた。しかしながら、本発明の成形体の製造方法であれば、キャビティ真空吸引による賦形を行わないため、第1及び第2型枠4A,4Bを第1及び第2分割金型3A,3Bの外周のうち一部だけに設ける構成とすることも可能である。このような構成であっても、第1及び第2型枠4A,4Bが第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bを把持し、型締めの際の第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bのドローダウンによるカーテン現象を抑制することが可能である。また、第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bの性質によっては、第1及び第2型枠4A,4Bを設けない構成とすることも可能である。
・上述した実施形態では、型締めの際の第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bのドローダウンによるカーテン現象を抑制するために第1及び第2型枠4A,4Bを用いていた。しかしながら、第1及び第2型枠4A,4Bの代わりに、第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bを各垂下位置において把持して引っ張る把持機構(エキスパンダー)を設けることも可能である。この場合、把持機構によって第1及び第2溶融樹脂シート5A,5B引っ張り、シワを伸ばした状態で第1及び第2溶融樹脂シート5A,5Bを型締め位置に移動させ、型締めを行うことで、ドローダウンを抑制することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 :成形機
2A :第1樹脂シート形成装置
2B :第2樹脂シート形成装置
3A :第1分割金型
3B :第2分割金型
4A :第1型枠
4B :第2型枠
5A :第1溶融樹脂シート
5B :第2溶融樹脂シート
21 :ホッパー
22 :押出機
23 :油圧モータ
24 :アキュームレータ
25 :プランジャ
26 :Tダイ
27 :ローラ
28 :連結管
29 :連結管
31 :食切り部
41 :減圧吸引孔