(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】電磁弁及び電磁弁を用いた作動流体の制御装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
F16K31/06 305L
(21)【出願番号】P 2021137408
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(72)【発明者】
【氏名】兼子 史聖
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌弘
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110017400(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0006356(US,A1)
【文献】特開2020-034101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電時に励磁するコイルと、
このコイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のステータコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内にこのステータコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
このプランジャとともに移動する弁体と、
作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、前記流入通路とこの流出通路との間に形成され前記弁体が当接するノーマルクローズ弁座とを有するバルブボディと、
前記弁体を前記ノーマルクローズ弁座側に押圧するノーマルクローズ圧縮バネとを備え、
前記流出通路に接続されるノーマルクローズ配管と、このノーマルクローズ配管に配置され前記ノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が解放圧力以上のとき前記ノーマルクローズ配管を開き、前記ノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が前記解放圧力未満のとき前記ノーマルクローズ配管を閉じるストップ弁と共に用いられる電磁弁であって、
前記弁体は、内部に前記流出通路と前記流入通路とを結ぶ圧力逃がし通路を形成し、
前記流出通路内の作動流体の圧力が前記流入通路内の作動流体の圧力より低いとき、同等のとき、および所定の逃がし圧力未満の圧力差で高いとき前記圧力逃がし通路を閉じ、前記流出通路内の作動流体の圧力が前記流入通路内の作動流体の圧力より前記逃がし圧力以上の圧力差で高いとき前記圧力逃がし通路を開く圧力逃がし弁を、前記弁体内で前記圧力逃がし通路に配置
し、
前記ノーマルクローズ圧縮バネの付勢力は、前記ストップ弁の前記解放圧力より大きく、前記ノーマルクローズ配管内の圧力が前記解放圧力より高い状態でも前記弁体を前記ノーマルクローズ弁座側に押圧し、
前記圧力逃がし弁の前記逃がし圧力は、前記ストップ弁の前記解放圧力より小さく、前記ノーマルクローズ配管内の圧力が前記解放圧力より低い状態でも前記圧力逃がし弁を開き、前記流出通路側の圧力を前記流入通路側に逃がすことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記弁体は、内部に前記圧力逃がし通路を形成すると共に外部が前記ノーマルクローズ弁座に着座する弁本体と、内部に前記圧力逃がし通路を形成する筒状の弁ガイドとを備え、
前記圧力逃がし弁は、前記弁ガイドの内部に摺動可能に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記弁本体の内部で前記圧力逃がし通路の周囲に、前記圧力逃がし弁が着座する圧力逃がし弁座が形成される
ことを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記圧力逃がし弁を前記圧力逃がし弁座に付勢する圧力逃がしバネを備える
ことを特徴とする請求項3に記載の電磁弁。
【請求項5】
前記コイルの励磁時に前記弁体を前記ノーマルクローズ弁座より離脱する方向に付勢するノーマルオープン圧縮バネを更に有し、
このノーマルオープン圧縮バネは、前記弁ガイドの外周に配置され、
前記ノーマルオープン圧縮バネの一端が前記バルブボディに係止され、前記ノーマルオープン圧縮バネの他端が前記弁ガイドに係止される
ことを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項6】
前記弁本体と前記弁ガイドとは、前記弁本体に形成された係止爪部が前記弁ガイドに形成された係止窓部に係合することで結合される
ことを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載の電磁弁。
【請求項7】
前記電磁弁が、作動流体のタンクと、このタンクから作動流体を吸引して高圧の作動流体を吐出するポンプと、このポンプからの作動流体が
前記流入通路に流れる配管と、
前記ノーマルクローズ配管に配置され前記
ノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が
前記解放圧力以上のとき前記
ノーマルクローズ配管を開き、前記
ノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が前記解放圧力未満のとき前記
ノーマルクローズ配管を閉じる
前記ストップ弁と共に用いられる電磁弁を用いた作動流体の制御装置であって、
前記電磁弁は、前記配管の前記ポンプ
の下流であって前記ストップ弁の
上流に配置され、
かつ、前記ストップ弁の前記解放圧力より、前記圧力逃がし弁の前記逃がし圧力の方が小さい
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の電磁弁を用いた作動流体の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作動流体の流路を開閉する電磁弁及び電磁弁を用いた作動流体の制御装置に関し、例えば、ウォッシャー液の流路の制御に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電磁弁を用いてウォッシャー液の流路を切り替え、電磁弁に通電されない状態ではウィンドガラスに流れるようにし、通電時にはリアカメラに流れるようにする技術が開示されている。
【0003】
特許文献1には開示がないが、
図1に示すように、ウォッシャー液を噴出するノズル100の手前には、一定圧で開くストップ弁101を用いることがある。ストップ弁101により、ウォッシャー液は配管102内に閉じ込められ、次回作動時の応答性を向上させることができるからである。なお、
図1の110はウォッシャー液のタンクであり、120はウォッシャー液を高圧で吐出するポンプ、200は電磁弁である。
【0004】
特許文献1に示すような電磁弁を、
図1に示すようなストップ弁101を備える配管102で用いた場合には、電磁弁200に通電されない状態で閉じている配管(以下ノーマルクローズ配管102a)内のウォッシャー液は、電磁弁とストップ弁101との間に閉じ込められる。
【0005】
そのため、配管102の温度が上昇すると、ノーマルクローズ配管102a内の空気やウォッシャー液が膨張し、内圧が上昇する。そして、特許文献1の電磁弁はノーマルクローズ配管がリアカメラに接続されているので、内圧の上昇がストップ弁101の設定された解放圧力より高くなると、ストップ弁101が開いてウォッシャー液がリアカメラに垂れるという懸念がある。
【0006】
一方、特許文献2には、バルブボディ内に圧力逃がし通路を形成し、作動流体の圧力が所定差圧以上高いとき圧力逃がし弁が圧力逃がし通路を開く構成が記載されている。ただ、特許文献2は空調装置に用いられ冷媒を減圧膨張させる膨張弁であり、閉じられた冷凍サイクル内で使用されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-66309号公報
【文献】特開2006-10228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、本来開かれた流路に用いられるノーマルクローズ弁で、ストップ弁等と共に用いられる等により、配管内で作動流体の圧力が上昇しても、意図せぬ作動流体の流出を防ぐことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1は、通電時に励磁するコイルと、このコイルの磁気回路内に配置されるステータコアと、コイルの磁気回路内にこのステータコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、このプランジャとともに移動する弁体と、弁体をノーマルクローズ弁座側に押圧するノーマルクローズ圧縮バネとを備えている。また、作動流体の流入通路、作動流体の流出通路、流入通路と流出通路との間に形成され弁体が当接するノーマルクローズ弁座とを有するバルブボディも備えている。コイルの通電によるコイル励磁力で弁体の移動を行う電磁弁で、非通電時はノーマルクローズ弁座が弁体によって閉じられる。
【0010】
本開示の第1の電磁弁は、流出通路に接続されるノーマルクローズ配管と、このノーマルクローズ配管に配置されノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が解放圧力以上のときノーマルクローズ配管を開き、ノーマルクローズ配管内の作動流体の圧力が解放圧力未満のときノーマルクローズ配管を閉じるストップ弁と共に用いられる。そして、本開示の第1の電磁弁では、弁体は内部に流出通路と流入通路とを結ぶ圧力逃がし通路を形成し、この圧力逃がし通路を開閉する圧力逃がし弁を弁体内で圧力逃がし通路に配置している。そして、圧力逃がし弁は、流出通路内の作動流体の圧力が流入通路内の作動流体の圧力より低いとき、同等のとき、および所定の逃がし圧力未満の圧力差で高いとき圧力逃がし通路を閉じ、流出通路内の作動流体の圧力が流入通路内の作動流体の圧力より逃がし圧力以上の圧力差で高いとき圧力逃がし通路を開くようにしている。そして、ノーマルクローズ圧縮バネの付勢力は、ストップ弁の解放圧力より大きく、ノーマルクローズ配管内の圧力が解放圧力より高い状態でも弁体をノーマルクローズ弁座側に押圧している。また、圧力逃がし弁の逃がし圧力は、ストップ弁の解放圧力より小さく、ノーマルクローズ配管内の圧力が解放圧力より低い状態でも圧力逃がし弁を開き、流出通路側の圧力を流入通路側に逃がすようにしている。
【0011】
本開示の第1では、圧力逃がし通路を設けているので、流出通路内の作動流体がノーマルクローズ弁座によって閉じ込められたとしても、逃がし圧力以上の圧力差となれば流入通路側に作動流体を逃がすことができる。特に、弁体の内部に圧力逃がし通路を形成して、かつ、この圧力逃がし通路を開閉する圧力逃がし弁も弁体内で圧力逃がし通路に配置しているので、電磁弁の小型化を進めることができている。即ち、圧力逃がし通路をバルブボディに特別に形成する必要がなく、バルブボディに特別に圧力逃がし通路を形成した場合に比べて、電磁弁の小型化が図れる。
【0012】
本開示の第2では、弁体が、内部に圧力逃がし通路を形成すると共に外部がノーマルクローズ弁座に着座する弁本体と、内部に圧力逃がし通路を形成する筒状の弁ガイドとを備えている。そして、圧力逃がし弁は、弁ガイドの内部に摺動可能に配置されている。弁ガイドの内部に圧力逃がし弁が摺動可能にガイドされるので、圧力逃がし弁の移動が安定する。
【0013】
本開示の第3では、弁本体の内部で圧力逃がし通路の周囲に圧力逃がし弁が着座する圧力逃がし弁座が形成されている。圧力逃がし弁は、圧力逃がし弁座に当接、離脱することで圧力逃がし通路を開閉することができる。
【0014】
本開示の第4は、圧力逃がし弁を圧力逃がし弁座に付勢する圧力逃がしバネを備えている。圧力逃がしバネを設けることで、圧力逃がし弁の挙動を安定させることができる。
【0015】
本開示の第5は、コイルの励磁時に弁体をノーマルクローズ弁座より離脱する方向に付勢するノーマルオープン圧縮バネを更に有し、このノーマルオープン圧縮バネは弁ガイドの外周に配置され、ノーマルオープン圧縮バネの一端がバルブボディに係止され他端が弁ガイドに係止されている。ノーマルオープン圧縮バネを設けることで、弁体がノーマルクローズ弁座から離れる際の挙動を安定させることができる。
【0016】
本開示の第6は、弁本体と弁ガイドとは、弁本体に形成された係止爪部が弁ガイドに形成された係止窓部に係合することで結合されるようにしている。弁本体と弁ガイドとをスナップフィットで結合することができて、弁本体と弁ガイドとの組付けが容易となる。
【0017】
本開示の第7は、電磁弁を用いた作動流体の制御装置である。即ち、電磁弁は、作動流体のタンクと、このタンクから作動流体を吸引して高圧の作動流体を吐出するポンプと、このポンプからの作動流体が流れる配管と、この配管に配置され配管内の作動流体の圧力が解放圧以上のとき配管を開き、解放圧力未満のとき配管を閉じるストップ弁と共に用いている。かつ、電磁弁は、配管のポンプとストップ弁との間に配置されている。
【0018】
そして、ストップ弁の解放圧力より、電磁弁の圧力逃がし弁の逃がし圧力の方が小さくなるように設定している。本開示の第7の制御装置では、配管内の作動流体の圧力を常に解放圧力未満とすることができ、意図しない状態で作動流体がストップ弁から漏れ出ることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】
図1の配管構成に用いられる電磁弁の断面図である。
【
図3】
図2図示電磁弁の弁本体と弁ガイド部分の部分拡大図である。
【
図4】弁本体と弁ガイドとの他の組付け例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の実施形態は、
図1に示すように配管102を配置した作動流体の制御装置であり、電磁弁200として流路の開閉を行う二方弁を用いている。ノーマルクローズ配管102aのノズル100はカメラ131対向し、ウォッシャー液をカメラ131に噴出する。
【0021】
図1の例では、ノーマルクローズ配管102aが複数(4つ)ある作動流体の制御装置に用いられている。カメラ131は車両の周囲を監視すべく複数設けられている。そのため、ウォッシャー液で洗浄すべきカメラ131が複数存在する事例である。また、ノーマルオープン配管102bのノズルは、ウォッシャー液をリアウィンドガラス130に向けて噴出するようにしている。
【0022】
この
図1の例では、一つの配管102をノーマルオープン配管102bとして、ポンプ120の作動時にはウォッシャー液が常時リアウィンドガラス130に対向するノズル100に流れるようにしている。ただ、リアウィンドガラス130の洗浄を頻繁に行う必要がない場合には、このノーマルオープン配管102bを廃止して、ノーマルクローズ配管102aとしてもよい。
【0023】
逆に、複数のカメラ131を常時洗浄したい場合には、ノーマルオープン配管102bを複数として、カメラ131に向けるようにしてもよい。また、
図1ではノーマルクローズ配管102aを4本として、4つのカメラを洗浄しているが、この本数は洗浄が必要なカメラ131の数に応じて増減する。洗浄するカメラ131が1つの場合、1本とすることも可能である。
【0024】
図2に示すように、電磁弁200はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の樹脂製のコイルボビン204の周囲にエナメル被覆された銅線からなるコイル205が多数回巻装されている。コイルボビン204の内周にはステータコア211が配置される。なお、ステータコア211は磁性材で、例えばSUS430が用いられる。
【0025】
また、コイルボビン204の外周はPPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)等の樹脂製の外郭220によって覆われている。外郭220は、コネクタ202と一体に形成されている。コネクタ202内には一対の端子221が埋込成形されており、一対の端子221はコイル205のプラス側及びマイナス側にそれぞれ接続している。
【0026】
コイルボビン204の内側に配置されているステータコア211は上端が閉じた円筒形状をしており、中間部にテーパ形状部206を形成している。このステータコア211のテーパ形状部206と対向してプランジャ209が配置されている。プランジャ209は円柱形状で、上端はテーパ形状部206の形状に対応するテーパ形状となっている。プランジャ209はテーパ形状の端部に連続して肩部209aを有しており、この肩部209aにワッシャ208が係合している。ワッシャ208は、例えばSUS304等の非磁性材料で、磁性材製のステータコア211とプランジャ209が通電終了後の残留磁力によって吸引したままとなるのを防止する。なお、プランジャ209はステータコア211の円筒状部211aによってガイドされ、
図2の上下方向に移動する。
【0027】
ステータコア211内には、プランジャ209をステータコア211から引き離す方向に付勢するノーマルクローズ圧縮バネ207が配置される。コイルボビン204の外郭220の更に外周に、ヨーク201が配置される。ヨーク201は鉄材料製で、表面を錫亜鉛メッキして防錆効果を高めている。コイル205通電時に、このヨーク201と、プランジャ209及びステータコア211によって磁気回路が形成される。
【0028】
以上の構成によって、電磁部230が構成される。この電磁部230はOリング213を介して流路部240と結合する。流路部240は、バルブボディ240aにより形成されている。バルブボディ240aは樹脂材料製であり、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)が用いられる。
【0029】
バルブボディ240aには、ポンプ120からの高圧のウォッシャー液が流入する流入通路222が形成されている。流入通路222の端部の外周は、配管102の接続が容易になるようテーパ形状となっている。テーパ形状の端部には抜け止め肩部224が形成され、配管102の抜け止めを図っている。
【0030】
図3に拡大図示するように、バルブボディ240aには弁室225が形成されており、弁室225は流入通路222と連通している。バルブボディ240aの上部は、電磁部230と接合する接続部241となっている。接続部241は円管形状で、内部にプランジャ209の下端が配置される。また、接続部241は広がって、Oリング213を受ける上面242を形成すると共に、ヨーク201と係合する係止肩部243を形成する。
【0031】
バルブボディ240aには、カメラ131に向かうノーマルクローズ配管102aと接続されるノーマルクローズ流出通路228が形成されている。端部がテーパ形状となり、抜け止め肩部224が形成されるのは、上述の流入通路222と同様である。このノーマルクローズ流出通路228と流入通路222は共に内径が3ミリメートル程度の大きさである。
【0032】
バルブボディ240aには、流入通路222とノーマルクローズ流出通路228との間に弁室225が形成されている。そしてこの弁室225に対向して、ノーマルクローズ流出通路228と連通するリング状のノーマルクローズ弁座229が形成されている。ノーマルクローズ弁座229と対向する弁室225に弁体214が配置される。なお、ノーマルクローズ弁座229の着座面はテーパ形状であり、内径は5ミリメートル弱である。
【0033】
弁体214は、内部に圧力逃がし通路232を形成する円筒状の弁本体2141と、同じく内部に圧力逃がし通路232を形成する円管状の弁ガイド2142とからなる。弁本体2141はOリング213と同様の耐水性ゴムにより一体成形され、表面にコーティングがされている。コーティング材料は、フッ素やモリブデンといったゴムの表面融解防止や弁体と相手弁座の着座性を向上させる物質である。弁ガイド2142は、バルブボディ240aと同じ樹脂材料製である。
【0034】
弁本体2141は、弁ガイド2142の下端に挿入されている。本例では、弁本体2141が弁ガイド2142に圧入されて固定されている。ただ、弁本体2141と弁ガイド2142とは接着剤を用いて固定しても良い。
【0035】
弁ガイド2142の圧力逃がし通路232内には、圧力逃がし弁233が配置されている。圧力逃がし弁233は、樹脂製で、円柱形状をしており、その外径は弁ガイド2142に形成された圧力逃がし通路232の内径よりやや小さくなっている。従って、圧力逃がし弁233は弁ガイド2142にガイドされて、圧力逃がし通路232内を摺動する。そして、圧力逃がし弁233の外周には、弁ガイド2142の圧力逃がし通路232内を作動流体が流れやすくするための圧力逃がし溝233aが複数か所形成されている。
【0036】
弁ガイド2142の上部には、円盤状の蓋部2143が形成されている。蓋部2143には、プランジャ209が当接するプランジャ受け部2147が形成されている。また、蓋部2143には、弁ガイド2142内部の圧力逃がし通路232と弁室225とを連通する圧力逃がし穴2144が形成されている。
【0037】
なお、弁本体2141の上面は、圧力逃がし弁233が当接する圧力逃がし弁座218となっている。圧力逃がし弁233は、圧力逃がし弁座218とのシール性を高めるため、シール面2331は円環状に突出形成されている。
【0038】
弁室225内で、弁ガイド2142の外周には、ノーマルオープン圧縮バネ231が配置される。ノーマルオープン圧縮バネ231の下端は弁室225内でバルブボディ240aに係合し、上端は弁ガイド2142の蓋部2143の周囲に係合している。ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力はノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力より小さく設定されている。
【0039】
弁ガイド2142内には、圧力逃がし弁233を圧力逃がし弁座218側に付勢する圧力逃がしバネ216が配置されている。圧力逃がしバネ216の上端は蓋部2143により係止され、圧力逃がしバネ216の下端は圧力逃がし弁233に係止されている。圧力逃がし弁233には、この圧力逃がしバネ216を保持するための凹部2332が形成されている。圧力逃がしバネ216の設定圧力(逃がし圧力)は、5キロパスカル程度で、ストップ弁101の設定圧力(解放圧力)の半分程度である。
【0040】
次に、上記構造の電磁弁200の組み立て方法を説明する。まず、電磁部230の組み立てを説明する。コイルボビン204の外周にコイル205を多数回巻装し、一対の端子221をコイル205の両端に接続し、その状態で、外郭220とコネクタ202とを樹脂でモールド成形する。樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイドを用いる。次いで、コイルボビン204の内周にステータコア211を配設する。その後、外郭220の外周にヨーク201を配置する。
【0041】
電磁部230では、ステータコア211のテーパ形状部206の内部にノーマルクローズ圧縮バネ207を配置する。また、プランジャ209の肩部209aにワッシャ208を配置し、その状態で、ステータコア211の内部にプランジャ209を配置する。
【0042】
流路部240の組み立ては、まず弁体214を組付ける。弁体214の組付けは、圧力逃がしバネ216と圧力逃がし弁233とを弁ガイド2142の圧力逃がし通路232内に配置する。その際、弁ガイド2142の蓋部2143に圧力逃がしバネ216の一端が係止され、圧力逃がしバネ216の他端が圧力逃がし弁233の凹部2332に係止されるようにする。その状態で、弁本体2141を弁ガイド2142に挿入する。挿入により、圧力逃がし弁233の円環状のシール面2331が弁本体2141の圧力逃がし弁座218に着座する。
【0043】
弁本体2141と弁ガイド2142とは、上述のように、圧入若しくは接着剤により固定される。以上の工程で組付けられた弁体214とノーマルオープン圧縮バネ231とを弁室225に配置する。配置された状態で、ノーマルオープン圧縮バネ231の上端は弁ガイド2142の蓋部2143で係止され、下端はバルブボディ240aに係止される。
【0044】
ついで、流路部240と電磁部230とを組み立てる。組み立ては、バルブボディ240aの上面242にOリング213を配置する。また、プランジャ209の下端を弁ガイド2142の蓋部2143に形成されたプランジャ受け部2147と当接させる。その状態で、ヨーク201の下端をバルブボディ240aの係止肩部243に向けてカシメる。カシメは、コネクタ202が位置する部分を除いてヨーク201の全周で行う。
【0045】
このヨーク201のカシメによって、バルブボディ240aの上端がステータコア211の下端と当接し、Oリング213はステータコア211の下端とバルブボディ240aの上面242によって圧縮されて変形する。これにより、流入通路222より流入した作動流体が電磁弁200より漏れ出ることが防止される。
【0046】
本開示によれば、電磁部230を組み立てと流路部240を組み立てとを別にしているので、流路部240の部品形状を選択でき、電磁部230の共通化を図ることができる。流路部240は、流入通路222やノーマルオープン流出通路、ノーマルクローズ流出通路228の方向を変更する場合がある。このように流路部240が変更されても、電磁部230は同一のものを共通使用することが可能である。
【0047】
次に、本開示の電磁弁200の作動を説明する。ノズル100からカメラ131に向けてウォッシャー液を噴出しない状態では、電磁弁200には通電しない。そのため、弁体214にはノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力がプランジャ209を介してかかり、ノーマルクローズ弁座229を閉じている。
【0048】
図1に於いて、リアウィンドガラス130に向けられたノーマルオープン配管102bには電磁弁200が配置されていない。そのため、ポンプ120の運転を開始すると、配管102を介して高圧のウォッシャー液がノーマルオープン配管102bに送られる。送られたウォッシャー液はストップ弁101を介して、ノズル100より噴射される。ウォッシャー液の圧力は400キロパスカル程度まで上がるので、ストップ弁101の解放圧力(10キロパスカル程度)はほとんど問題とならない。
【0049】
リアウィンドガラス130の洗浄が終了すると、ポンプ120を停止させる。ポンプ停止に伴い配管102内の圧力は大気圧となるので、配管102はストップ弁101によって閉じられる。ストップ弁101が閉じることで、噴射終了の液切れを良くすることができる。
【0050】
カメラ131にウォッシャー液を噴射する際には、電磁弁200に通電する。通電によりコイル205が励磁し、ヨーク201、プランジャ209、ステータコア211に磁気回路が形成される。ステータコア211のテーパ形状部206の下端部分には磁気絞り部206aが形成されている。そのため、テーパ形状部206とプランジャ209のテーパ形状部との間の磁気間隙が磁力によって狭まり、プランジャ209はノーマルクローズ圧縮バネ207の圧縮力に反してステータコア211のテーパ形状部206側に移動する。
【0051】
プランジャ209の移動に伴い、弁体214はノーマルオープン圧縮バネ231によって押し上げられて、ノーマルクローズ弁座229を開く。なお、電磁弁200の以上の動作は、ポンプ120の運転開始前に行われる。そのため、弁体214にはポンプ120からの高圧ウォッシャー液圧力は加わっておらず、弁体214の移動が妨げられることはない。
【0052】
電磁弁200に通電して流路を開いた後に、ポンプ120の運転を開始する。ポンプ120からの高圧のウォッシャー液は流入通路222に流入し、次いで、弁室225、ノーマルクローズ弁座229を介してノーマルクローズ流出通路228より流出する。流出したウォッシャー液は、ノーマルクローズ配管102aからストップ弁101を介してノズル100よりカメラ131に噴射される。
【0053】
カメラ131の洗浄が終了すると、ポンプ120の運転を停止し、ノーマルクローズ配管102aの圧力がストップ弁101の解放圧力以下に下がるとストップ弁101も閉じる。かつ、電磁弁200への通電も終了する。ストップ弁101が閉じることで、噴射終了の液切れを良くすることができるのは、リアウィンドガラス130の洗浄と同様である。加えて、ノーマルクローズ配管102a内にウォッシャー液を貯めることができ、次回作動時の応答性を良くすることができる。
【0054】
ステータコア211とプランジャ209との間に非磁性材製のワッシャ208が介在しているので、通電終了と共に、磁気回路は遮断される。その結果、ノーマルクローズ圧縮バネ207によりプランジャ209は押し下げられる。
【0055】
ノーマルクローズ圧縮バネ207の付勢力の方がノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力より大きいので、弁体214はノーマルクローズ弁座229に押し付けられる。上述の通り、ノーマルクローズ弁座229も弁体214(弁本体2141)の形状に対応したテーパ形状であるので、確実にシールすることができる。
【0056】
このように、本開示によれば、弁体214(弁本体2141)がノーマルクローズ弁座229のテーパ形状内に収まるように配置しているので、ノーマルクローズ弁座229を確実に閉じることができる。特に、本例では、弁体214(弁本体2141及び弁ガイド2142)が弁室225内でガイドされるので、弁体214の移動がスムーズになされる。
【0057】
ポンプ120の運転が終了した状態で周囲温度が上昇すると、配管102内のウォッシャー液や空気が膨張する。ノーマルオープン配管102bはストップ弁101によって閉じられていても、タンク110側が開いているため、圧力はポンプ120側に解放されて高くなることはない。しかし、ノーマルクローズ配管102aは、ノーマルクローズ弁座229とストップ弁101の双方が閉じているため、ノーマルクローズ配管102a内にウォッシャー液が閉じ込められることとなる。そのため、ウォッシャー液や空気の膨張によりノーマルクローズ配管102a内の圧力が上昇する恐れがある。
【0058】
圧力がストップ弁101の解放圧力以上となれば、ノーマルクローズ配管102a内のウォッシャー液がノズル100からカメラ131に垂れ出る恐れもある。しかしながら、本開示では、圧力逃がし弁233が開いて圧力を解放するので、ウォッシャー液の漏洩は確実に阻止できる。
【0059】
ノーマルクローズ配管102a内の圧力が逃がし圧力より高くなれば、圧力逃がしバネ216の付勢力に打ち勝って圧力逃がし弁233を持ち上げる。その結果、圧力逃がし弁座218が開き、弁本体2141と弁ガイド2142の圧力逃がし通路232が開かれる。ノーマルクローズ流出通路228は、圧力逃がし弁233外周の圧力逃がし溝233a、弁ガイド2142の蓋部2143に形成された圧力逃がし穴2144を介して、流入通路222と連通する。
【0060】
そして、圧力逃がし弁233の逃がし圧力は、ストップ弁101の解放圧力の半分程度であるので、ストップ弁101が開く前に、圧力逃がし弁233が開いて、ノーマルクローズ配管102a内の圧力上昇を抑えることができる。
【0061】
ここで、圧力逃がし通路232は、閉じ込められたウォッシャー液の圧力を解放するものであるので、圧力逃がし通路232内をウォッシャー液が多量に流れるものではない。従って、圧力逃がし弁233の圧力逃がし溝233aや圧力逃がし穴2144のように流路断面積が小さい部分があっても、作動に不良は生じない。圧力逃がし弁233の圧力逃がし溝233aを複数か所形成すれば、軸芯周りに対称形状としてバランスを図ることができる。ただ、流路断面積が確保されれば圧力逃がし溝の数は1つでよい。
【0062】
また、圧力逃がし弁233は弁ガイド2142によって保持されているので、圧力逃がしバネ216の設定圧が小さくても、圧力逃がし弁座218との間のシールは確実になされる。
【0063】
本開示では、圧力逃がし通路232がバルブボディ240a内に配置されているので、圧力逃がし通路232の取り回しがコンパクトとなっている。特に、弁体214(弁本体2141及び弁ガイド2142)の内部に、圧力逃がし通路232を形成しているので、全体の構造を小型化することが可能である。圧力逃がし通路232をバルブボディ240a内であっても、弁体214以外に形成する場合には、バルブボディ240aに圧力逃がし通路232を設けるためのスペースが必要となる。また、圧力逃がし通路232を形成することでバルブボディ240aの形状が複雑となる。
【0064】
特に、圧力逃がし通路232をバルブボディ240a内の弁体214以外に形成する場合には、ノーマルクローズ流出通路228に圧力逃がし通路232との分岐点を設ける必要が生じる。そのため、ノーマルクローズ流出通路228の向きを自由に設定することができなくなる。
【0065】
それに対し、本開示では弁体214は弁室225に配置されており、弁室225はノーマルクローズ弁座229より流入通路222側である。即ち、弁体214が配置される圧力環境は流入通路222の圧力と同様である。そのため、弁体214の内部に圧力逃がし通路232を設け、この圧力逃がし通路232を圧力逃がし弁233で開放すれば、ノーマルクローズ流出通路228の圧力を流入通路222内の圧力迄下げることが可能である。
【0066】
また、ノーマルクローズ流出通路228は弁本体2141の圧力逃がし通路232を介して弁ガイド2142の圧力逃がし通路232と連通している。そのため、ノーマルクローズ流出通路228と圧力逃がし通路232とを結ぶ特別な分岐点を設ける必要もない。その結果、ノーマルクローズ流出通路228の位置も自由に設定できる。
図2の例では、ノーマルクローズ流出通路228を流入通路222と180度対向する位置にしているが、ノーマルクローズ流出通路228を流入通路222と同じ向きに配置することも可能である。また、
図2の例では、ノーマルクローズ流出通路228を水平に配置しているが、ノーマルクローズ流出通路228は垂直方向に配置することも可能である。
【0067】
ノーマルクローズ流出通路228は上下方向の角度や、周方向の角度を共に自由に設定することができる。そして、上述の通り、本開示では電磁部230と流路部240とを別々に成形して組付けるので、ノーマルクローズ流出通路228のレイアウトに制約がないことは、電磁弁200と配管との取り回しの自由度を高めることとなる。
【0068】
特に、本開示では弁体214を弁本体2141と弁ガイド2142に分割して、内部の圧力逃がし通路232に圧力逃がし弁233を配置する構成としているので、圧力逃がし弁233及び圧力逃がしバネ216の配置が容易となる。併せて、弁本体2141の上端を圧力逃がし弁座218として利用することも可能となる。かつ、弁ガイド2142の圧力逃がし通路232を圧力逃がし弁233の摺動ガイドとして利用することも可能である。
【0069】
(他の実施形態)
上述の開示では、弁本体2141と弁ガイド2142とを圧入固定若しくは接着剤固定したが、
図4に示すように、スナップフィットで固定しても良い、この場合には、弁ガイド2142の円筒状部に係止窓部2145を複数か所形成する。また、弁本体2141にも、係止窓部2145と対応する位置に係止爪部2146を形成する。弁本体2141を弁ガイド2142に挿入する際に、係止爪部2146が弾性変形して、係止爪部2146が係止窓部2145に入り込むようにする。
【0070】
また、上述の開示では、バルブボディ240aを単体で構成したが、アッパボディとロアボディとに分けても良い。その場合2部材は、溶着、ボルト固定や、クリップ止め等の固定方法を用いて固定する。また、バルブボディ240aを3部材以上で構成してもよい。
【0071】
また、上述の例では、ノーマルクローズ弁座229をテーパ形状、弁本体2141とを円弧形状としたが、この形状は必ずしもこれらの形状には限定されない。ノーマルクローズ弁座229を円弧形状としたり、弁本体2141を平面形状としてもよい。同様に、圧力逃がし弁233もシール面2331を円環状とすることは、シール性能上望ましいが、平面形状としてもよい。
【0072】
また、上述の例では圧力逃がし弁233に凹部2332を形成して圧力逃がしバネ216を保持していたが、保持の形状は凹部2332に限らない。圧力逃がし弁233に凸部を形成して、この凸部を圧力逃がしバネ216内に配置するようにしても良い。
【0073】
また、作動流体としてウォッシャー液を用いたが、水やオイル等他の液体を作動流体としてもよい。更に、
図1の例では、洗浄の対象をリアウィンドガラス130とカメラ131にしているが、他のものの洗浄に用いても良いことはもちろんである。
【0074】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。
【符号の説明】
【0075】
102a ノーマルクローズ配管
205 コイル
207 ノーマルクローズ圧縮バネ
209 プランジャ
214 弁体
2141 弁本体
2142 弁ガイド
222 流入通路
229 ノーマルクローズ弁座
231 ノーマルオープン圧縮バネ
232 圧力逃がし通路
233 圧力逃がし弁