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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/156 20220101AFI20240807BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20240807BHJP
   F24H 15/172 20220101ALI20240807BHJP
   F24H 15/375 20220101ALI20240807BHJP
   F24H 15/421 20220101ALI20240807BHJP
【FI】
F24H15/156
F24H1/18 G
F24H15/172
F24H15/375
F24H15/421
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021194394
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023080858
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】小川 耕平
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-223410(JP,A)
【文献】特開2020-109327(JP,A)
【文献】特開2019-113235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00-15/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンク(21)と、
前記タンクの水を加熱する沸上運転を制御する制御部(190)と、
を備え、
前記制御部は、
夜間の第1時間帯での前記沸上運転を行う第1運転と、前記夜間以外の第2時間帯での前記沸上運転を行う第2運転と、を実行し、
翌日に必要な湯量である第1要求量が所定量よりも多い場合、前記第1運転の実行時に加熱する第1水量を、前記所定量から前記第2運転の実行時に加熱する第2水量を差し引き、さらに、予測負荷に基づいて算出される第3水量を加えた水量とし
前記予測負荷は、前記第2時間帯の開始時刻より所定時間前の時刻から前記第2時間帯の開始時刻までに、前記タンク内の水に所定の熱量が蓄積されている状態を維持するために必要な熱量の予測値である、
給湯装置(100)。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1要求量が前記所定量以下である場合、前記第1水量を、前記第1要求量から前記第2水量を差し引いた水量とする、
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1要求量が前記所定量より少ない場合、前記第1水量を、前記第1要求量から前記第2水量を差し引いた水量とする、
請求項1に記載の給湯装置。
【請求項4】
前記所定量は、前記タンクの容量の0.9倍から1.2倍の間である、
請求項1から3のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項5】
前記制御部は、
過去の使用湯量を測定する測定部と、
前記測定部に測定される前記使用湯量を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記使用湯量から前記第1要求量を決定する決定部と、
を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項6】
前記制御部は、外部から入力される前記第2時間帯を取得する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1時間帯の後であって前記第2時間帯の前の時間帯に必要な湯量である第2要求量が前記第1水量よりも多い場合、前記第1水量を前記第2要求量以上とする、
請求項1から6のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項8】
前記制御部は、太陽光発電により発電された電力を用いて前記第2運転を実行する、
請求項1から7のいずれか1項に記載の給湯装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記夜間以外に供給された電力の一部である余剰電力を用いて前記第2運転を実行する、
請求項8に記載の給湯装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記第1要求量が前記所定量よりも多く、かつ、前記第1運転及び前記第2運転を実行しても前記第1要求量が賄えない場合、前記第2時間帯において商用電源を用いてさらに前記沸上運転を行う、
請求項9に記載の給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽光発電装置等により昼間に発電された電力、及び、夜間に発電された電力を用いて貯湯タンクの水を加熱する沸上運転を行い、熱エネルギーとして貯える給湯装置が知られている。
【0003】
特許文献1(特開2019-113235号公報)には、翌日の給湯負荷分を賄うための要求熱量から、翌日の昼間に供給される電力のうちの余剰電力を用いる沸上運転により生成されると予測される熱量を差し引いたものを、夜間の沸上運転により蓄える目標熱量とする給湯装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1(特開2019-113235号公報)に開示される方法で目標熱量を求める場合、翌日の要求熱量と、貯湯タンクの容量との関係によっては、翌日の昼間に供給される電力が活用できない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1観点の給湯装置は、タンクと、タンクの水を加熱する沸上運転を制御する制御部と、を備える。制御部は、夜間の第1時間帯での沸上運転を行う第1運転と、夜間以外の第2時間帯での沸上運転を行う第2運転と、を実行する。制御部は、翌日に必要な湯量である第1要求量が所定量よりも多い場合、第1運転の実行時に加熱する第1水量を、所定量から第2運転の実行時に加熱する第2水量を差し引いた水量とする。
【0006】
この給湯装置は、翌日に必要な湯量が所定量よりも多い場合に、夜間以外の時間帯での沸上運転により加熱できる水量を当該所定量から差し引いた水量を、夜間での沸上運転により加熱する水量とする。そのため、この給湯装置は、夜間以外の時間帯に供給される電力を活用できるように、夜間での沸上運転により加熱する水量を決定することができる。
【0007】
第2観点の給湯装置は、第1観点の給湯装置であって、制御部は、第1要求量が所定量以下である場合、第1水量を、第1要求量から第2水量を差し引いた水量とする。
【0008】
この給湯装置は、翌日に必要な湯量が所定量以下である場合に、夜間以外の時間帯での沸上運転により加熱できる水量を当該翌日に必要な湯量から差し引いた水量を、夜間での沸上運転により加熱する水量とする。そのため、この給湯装置は、夜間以外の時間帯に供給される電力を活用して夜間での沸上運転に必要な電力が抑えられるように、夜間での沸上運転により加熱する水量を決定することができる。
【0009】
第3観点の給湯装置は、第1観点の給湯装置であって、制御部は、第1要求量が所定量より少ない場合、第1水量を、第1要求量から第2水量を差し引いた水量とする。
【0010】
この給湯装置は、翌日に必要な湯量が所定量より少ない場合に、夜間以外の時間帯での沸上運転により加熱できる水量を当該翌日に必要な湯量から差し引いた水量を、夜間での沸上運転により加熱する水量とする。そのため、この給湯装置は、夜間以外の時間帯に供給される電力を活用して夜間での沸上運転に必要な電力が抑えられるように、夜間での沸上運転により加熱する水量を決定することができる。
【0011】
第4観点の給湯装置は、第1乃至第3観点のいずれか1つの給湯装置であって、所定量は、タンクの容量の0.9倍から1.2倍の間である。
【0012】
第5観点の給湯装置は、第1乃至第4観点のいずれか1つの給湯装置であって、制御部は、測定部と、記憶部と、決定部と、を有する。測定部は、過去の使用湯量を測定する。記憶部は、測定部に測定される使用湯量を記憶する。決定部は、記憶部に記憶される使用湯量から第1要求量を決定する。
【0013】
この給湯装置は、翌日に必要な湯量の予測値を精度よく決定できるので、夜間での沸上運転により加熱する水量を適切に決定することができる。
【0014】
第6観点の給湯装置は、第1乃至第5観点のいずれか1つの給湯装置であって、制御部は、外部から入力される第2時間帯を取得する。
【0015】
第7観点の給湯装置は、第1乃至第6観点のいずれか1つの給湯装置であって、制御部は、第1時間帯の後であって第2時間帯の前の時間帯に必要な湯量である第2要求量が第1水量よりも多い場合、第1水量を第2要求量以上とする。
【0016】
この給湯装置は、翌日の沸上運転開始前に必要な湯量を、夜間での沸上運転によって確保することで、湯切れの発生を抑制することができる。
【0017】
第8観点の給湯装置は、第1乃至第7観点のいずれか1つの給湯装置であって、制御部は、太陽光発電により発電された電力を用いて第2運転を実行する。
【0018】
第9観点の給湯装置は、第8観点の給湯装置であって、制御部は、夜間以外に供給された電力の一部である余剰電力を用いて第2運転を実行する。
【0019】
この給湯装置は、夜間以外の時間帯に供給される余剰電力を活用して夜間での沸上運転に必要な電力が抑えられるように、夜間での沸上運転により加熱する水量を決定することができる。
【0020】
第10観点の給湯装置は、第9観点の給湯装置であって、制御部は、第1要求量が所定量よりも多く、かつ、第1運転及び第2運転を実行しても第1要求量が賄えない場合、第2時間帯において商用電源を用いてさらに沸上運転を行う。
【0021】
この給湯装置は、夜間での沸上運転、及び、夜間以外の時間帯での余剰電力を用いる沸上運転の両方を行っても翌日に必要な湯量を賄えない場合に、湯切れの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の実施形態に係る貯湯式給湯装置100の構成図である。
図2】本開示の実施形態に係る貯湯式給湯装置100の制御ブロック図である。
図3】本開示の実施形態において第1水量を決定する処理を示すフローチャートである。
図4】変形例Bにおいて第1水量を決定する処理を示すフローチャートである。
図5】変形例Cにおいて昼間沸上補正運転の予定開始時刻を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示の一実施形態に係る貯湯式給湯装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(1)貯湯式給湯装置の構成
図1に示されるように、貯湯式給湯装置100は、主として、ヒートポンプユニット110と、貯湯ユニット120と、リモートコントローラ130と、太陽光発電装置170と、制御部190とを備える。貯湯ユニット120には、給湯部140、浴槽150、及び、止水栓160が接続されている。
【0025】
ヒートポンプユニット110は、貯湯ユニット120から供給される湯水を加熱して、加熱された湯水を貯湯ユニット120に供給する。貯湯ユニット120は、ヒートポンプユニット110から供給される加熱された湯水を貯留し、貯留されている湯水と、止水栓160から供給される水とを混合して、給湯部140及び浴槽150に供給する。給湯部140は、例えば、蛇口及びシャワーである。止水栓160は、水道等の外部の給水源に接続されている。止水栓160は、貯湯ユニット120に水を供給するために操作される。
【0026】
ここで、「湯水」とは、湯及び水の少なくとも一方を意味する。そのため、ヒートポンプユニット110によって加熱される前の水も、ヒートポンプユニット110によって加熱された後の水も、湯水と言う。
【0027】
(1-1)ヒートポンプユニット
ヒートポンプユニット110は、主として、圧縮機11と、水熱交換器12と、膨張弁13と、空気熱交換器14とを備える。圧縮機11、水熱交換器12、膨張弁13、及び、空気熱交換器14は、冷媒配管によって環状に接続されてヒートポンプサイクルを構成する。圧縮機11の吐出側は、水熱交換器12に接続され、圧縮機11の吸入側は、空気熱交換器14に接続される。膨張弁13の一端は、水熱交換器12に接続され、膨張弁13の他端は、空気熱交換器14に接続される。また、ヒートポンプユニット110は、第1制御装置10を有する。
【0028】
ヒートポンプサイクルを循環する冷媒は、ヒートポンプユニット110から貯湯ユニット120に供給される加熱された湯水の温度よりも高い臨界温度を有する。冷媒の臨界温度は、加熱された湯水の温度よりも10℃以上高いことが好ましい。冷媒は、例えば、R32(臨界温度78.1℃)、HFO-1234yf(臨界温度95.0℃)、及び、R410(臨界温度71.4℃)である。
【0029】
圧縮機11は、モータ11aを駆動することで冷媒を圧縮する圧縮機構を有する。圧縮機11によって圧縮された冷媒は、水熱交換器12に送られる。ヒートポンプユニット110の能力は、モータ11aの運転周波数の制御により調整可能である。
【0030】
水熱交換器12は、圧縮機11によって圧縮された高温の冷媒と、貯湯ユニット120から供給される湯水との間で熱交換を行い、湯水を加熱する。水熱交換器12は、例えば、外管と、外管内部に挿入される内管と、からなる二重管熱交換器である。水熱交換器12は、プレート式の熱交換器等であってもよい。ヒートポンプユニット110の能力は、例えば、単位時間当たりに、水熱交換器12が、貯湯ユニット120から供給される湯水に与える熱量である。
【0031】
膨張弁13は、水熱交換器12を通過して熱交換された冷媒を減圧する。膨張弁13は、例えば、電動膨張弁である。膨張弁13は、キャピラリーチューブ等であってもよい。
【0032】
空気熱交換器14は、膨張弁13を通過して減圧された冷媒と、外気との間の熱交換を行い、冷媒を加熱する。空気熱交換器14には、例えば、外気ファンによって外気が供給される。空気熱交換器14を通過して熱交換された冷媒は、圧縮機11に送られる。
【0033】
(1-2)貯湯ユニット
貯湯ユニット120は、主として、貯湯タンク21と、第1排水弁22と、入水弁23と、沸上ポンプ24と、バイパス弁25と、沸上弁26と、第1混合弁27と、第2混合弁28と、減圧弁29と、第1流量センサ30と、湯はり電磁弁31と、第2排水弁32と、第2流量センサ33と、追焚ポンプ34と、追焚熱交換器35とを備える。これらの要素は、湯水が流れる配管L1-L19によって接続されている。貯湯タンク21、及び、配管L10,L13,L14,L16には、温度センサT1-T10が設けられている。また、貯湯ユニット120は、第2制御装置20を有する。
【0034】
貯湯タンク21は、湯水を貯留する。貯湯タンク21には、6つの温度センサT1-T6が設けられている。6つの温度センサT1-T6は、第1湯量温度センサT1、第2湯量温度センサT2、第3湯量温度センサT3、第4湯量温度センサT4、第5湯量温度センサT5、及び、上部温度センサT6から構成される。上部温度センサT6は、貯湯タンク21の上端面近傍に設けられている。第1-第5湯量温度センサT1-T5は、上側から下側に向かって間隔を空けて、貯湯タンク21の側面に設けられている。
【0035】
水の密度が温度に応じて変化することにより、貯湯タンク21内に貯留される湯水は、上側が高温となり下側が低温となる層を形成する。そのため、温度センサT1-T6の出力信号に基づいて、上下方向における貯湯タンク21内の湯水の温度分布を検出することにより、貯湯タンク21内の湯水の量(貯湯量)を取得することができる。貯湯タンク21の貯湯量を取得するために貯湯タンク21に設けられる温度センサの数は、6以外の任意の数であってもよい。
【0036】
入水配管L1の一端は、貯湯タンク21の下端面に接続され、入水配管L1の他端は、ヒートポンプユニット110の水熱交換器12の入口側に接続されている。貯湯タンク21から水熱交換器12に向かって、入水配管L1には、入水弁23、沸上ポンプ24、及び、バイパス弁25が設けられている。入水弁23及びバイパス弁25は、電動三方弁である。
【0037】
第1排水配管L2は、貯湯タンク21と入水弁23との間において、入水配管L1から分岐している。第1排水配管L2には、第1排水弁22が設けられている。第1排水配管L2は、貯湯ユニット120の外部において排水用の配管に接続されている。第1排水弁22は、例えば、貯湯タンク21内の湯水を外部に排出するために操作される。
【0038】
出湯配管L3の一端は、ヒートポンプユニット110の水熱交換器12の出口側に接続され、出湯配管L3の他端は、沸上弁26に接続されている。沸上弁26は、電動三方弁である。
【0039】
第1戻し配管L4の一端は、沸上弁26に接続され、第1戻し配管L4の他端は、貯湯タンク21の上端面に接続されている。
【0040】
第2戻し配管L5の一端は、沸上弁26に接続され、第2戻し配管L5の他端は、貯湯タンク21の下端面に接続されている。
【0041】
バイパス配管L6の一端は、バイパス弁25に接続され、バイパス配管L6の他端は、出湯配管L3に接続されている。
【0042】
第1沸上配管L7の一端は、貯湯タンク21の上端面に接続され、第1沸上配管L7の他端は、第1混合弁27に接続されている。第1混合弁27は、電動三方弁である。
【0043】
第2沸上配管L8の一端は、貯湯タンク21の上端面に接続され、第2沸上配管L8の他端は、第2混合弁28に接続されている。第2混合弁28は、電動三方弁である。
【0044】
タンク給水配管L9の一端は、貯湯ユニット120の外部において止水栓160に接続され、タンク給水配管L9の他端は、貯湯タンク21の下端面に接続される。タンク給水配管L9には、減圧弁29が設けられている。減圧弁29は、止水栓160を介して貯湯ユニット120に供給される水の圧力(給水圧)を調整するために操作される。
【0045】
分岐給水配管L10は、減圧弁29と貯湯タンク21との間において、タンク給水配管L9から分岐している。分岐給水配管L10は、第1混合水配管L11と第2混合水配管L12とに分岐している。第1混合水配管L11は、第1混合弁27に接続される。第2混合水配管L12は、第2混合弁28に接続される。分岐給水配管L10には、混合水温度センサT7が設けられている。混合水温度センサT7は、分岐給水配管L10内を流れる湯水の温度を検出する。
【0046】
第1給湯配管L13の一端は、第1混合弁27に接続され、第1給湯配管L13の他端は、給湯部140に接続されている。第1給湯配管L13には、第1流量センサ30が設けられている。第1流量センサ30は、第1給湯配管L13内の湯水の流量を検出する。第1流量センサ30と給湯部140との間において、第1給湯配管L13には、第1給湯温度センサT8が設けられている。第1給湯温度センサT8は、第1給湯配管L13内を流れる湯水の温度を検出する。
【0047】
第2給湯配管L14の一端は、第2混合弁28に接続され、第2給湯配管L14の他端は、浴槽150に接続されている。第2給湯配管L14には、第2混合弁28から浴槽150に向かって、湯はり電磁弁31及び第2流量センサ33が設けられている。第2流量センサ33は、第2給湯配管L14内の湯水の流量を検出する。
【0048】
第2排水配管L15は、湯はり電磁弁31と第2流量センサ33との間において、第2給湯配管L14から分岐している。第2排水配管L15には、第2排水弁32が設けられている。第2排水配管L15は、貯湯ユニット120の外部において排水用の配管に接続されている。第2排水弁32は、例えば、第2給湯配管L14を流れる湯水の量を調整するために、第2給湯配管L14を流れる湯水の一部を外部に排出するために操作される。
【0049】
第1浴槽戻り配管L16の一端は、浴槽150に接続され、第1浴槽戻り配管L16の他端は、追焚熱交換器35の入口側に接続されている。第1浴槽戻り配管L16には、追焚ポンプ34が設けられている。浴槽150と追焚ポンプ34との間において、第1浴槽戻り配管L16には、浴槽戻り温度センサT10が設けられている。浴槽戻り温度センサT10は、第1浴槽戻り配管L16内を流れる湯水の温度を検出する。
【0050】
第2浴槽戻り配管L17の一端は、追焚熱交換器35の出口側に接続され、第2浴槽戻り配管L17の他端は、第2流量センサ33と浴槽150との間において、第2給湯配管L14に接続されている。第2浴槽戻り配管L17と第2給湯配管L14との接続地点と、浴槽150との間において、第2給湯配管L14には、第2給湯温度センサT9が設けられている。第2給湯温度センサT9は、第2給湯配管L14内を流れる湯水の温度を検出する。
【0051】
第1追焚配管L18は、第2混合弁28と湯はり電磁弁31との間において、第2給湯配管L14から分岐している。第1追焚配管L18は、追焚熱交換器35の入口側に接続されている。
【0052】
第2追焚配管L19の一端は、追焚熱交換器35の出口側に接続され、第2追焚配管L19の他端は、入水弁23に接続されている。
【0053】
(1-3)制御部
制御部190は、主として、ヒートポンプユニット110の第1制御装置10と、貯湯ユニット120の第2制御装置20とから構成される。第1制御装置10及び第2制御装置20は、典型的には、制御演算装置及び記憶装置を備えるマイクロコンピュータと、入出力回路とから構成される。制御演算装置は、CPU又はGPU等のプロセッサである。制御演算装置は、記憶装置に記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムに従って、貯湯式給湯装置100の運転制御を行う。制御演算装置は、制御プログラムに従って、演算結果を記憶装置に書き込んだり、記憶装置に記憶されている情報を読み出したりすることができる。
【0054】
ただし、制御部190の構成は、上記のものに限られない。例えば、第1制御装置10及び第2制御装置20は、互いに通信を行って協調動作を行ってもよい。また、貯湯式給湯装置100は、第1制御装置10及び第2制御装置20を備える代わりに、第1制御装置10及び第2制御装置20の両方の機能を有し、かつ、ヒートポンプユニット110及び貯湯ユニット120のいずれか一方に設けられる装置を備えてもよい。このような装置は、貯湯式給湯装置100の外部に設置され、ヒートポンプユニット110及び貯湯ユニット120とネットワークを介して接続されてもよい。
【0055】
図2に示されるように、制御部190は、温度センサT1-T10、第1流量センサ30、及び、第2流量センサ33からの信号に基づいて、圧縮機11、膨張弁13、入水弁23、沸上ポンプ24、バイパス弁25、沸上弁26、第1混合弁27、第2混合弁28、湯はり電磁弁31、及び、追焚ポンプ34等を制御する。
【0056】
(1-4)リモートコントローラ
リモートコントローラ130は、貯湯式給湯装置100を制御するためのユーザインターフェースである。リモートコントローラ130は、例えば、台所及び浴室に設置される。図2に示されるように、リモートコントローラ130は、第1制御装置10及び第2制御装置20と、無線通信又は有線通信により双方向にデータ通信可能に接続されている。第1制御装置10及び第2制御装置20には、貯湯式給湯装置100の運転を指示するための信号等が、無線通信又は有線通信によりリモートコントローラ130から入力される。リモートコントローラ130の他に、貯湯式給湯装置100のユーザインターフェースとして、スマートフォン等の携帯情報端末が用いられてもよい。
【0057】
リモートコントローラ130は、表示部130a及び操作部130bを有する。表示部130aは、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイである。
【0058】
表示部130aは、貯湯式給湯装置100の状態に関する情報、及び、貯湯式給湯装置100の設定に関する情報等を表示する。表示部130aは、例えば、給湯部140及び浴槽150に供給される湯水の温度(給湯温度)の設定値、及び、貯湯タンク21の貯湯量を表示する。
【0059】
操作部130bは、貯湯式給湯装置100のユーザが操作するためのボタン、ダイヤル及びキー等を含む。貯湯式給湯装置100のユーザは、操作部130bを操作して、給湯温度の設定値等の情報を入力する。表示部130aは、操作部130bの機能を兼ね備えるタッチスクリーンでもよい。
【0060】
リモートコントローラ130は、スピーカ及びマイク等をさらに有してもよい。この場合、リモートコントローラ130は、表示部130aに表示される情報をスピーカで報知し、マイクを介して操作部130bによって入力される情報を取得してもよい。
【0061】
(1-5)太陽光発電装置
太陽光発電装置170は、貯湯式給湯装置100が設置される施設の屋根等に設置される。図2に示されるように、太陽光発電装置170は、第1制御装置10及び第2制御装置20と、無線通信又は有線通信により双方向にデータ通信可能に接続されている。貯湯式給湯装置100、及び、施設で使用される他の電機機器は、太陽光発電装置170によって発電された電力により運転可能である。
【0062】
(2)貯湯式給湯装置の動作
貯湯式給湯装置100は、主として、沸上運転、給湯運転、湯はり運転、及び、追焚運転を行う。制御部190は、貯湯式給湯装置100が行うこれらの運転を制御する。
【0063】
(2-1)沸上運転
沸上運転とは、ヒートポンプユニット110により貯湯タンク21内の湯水を加熱する運転である。沸上運転では、沸上ポンプ24を駆動することにより、貯湯タンク21内の湯水が、入水配管L1を介して水熱交換器12に案内されて加熱される。水熱交換器12において加熱された湯水は、出湯配管L3、第1戻し配管L4及び第2戻し配管L5を介して、貯湯タンク21内に戻される。このように、沸上運転では、貯湯タンク21内の湯水を、入水配管L1、出湯配管L3、第1戻し配管L4及び第2戻し配管L5を介して循環させながら、水熱交換器12において加熱する。
【0064】
制御部190は、圧縮機11、膨張弁13、入水弁23、沸上ポンプ24、バイパス弁25及び沸上弁26を制御することにより沸上運転を行う。制御部190は、圧縮機11のモータ11aの運転周波数、及び、膨張弁13の開度を制御して、ヒートポンプユニット110の能力、及び、水熱交換器12において加熱された湯水の温度(出湯温度)等を調整する。制御部190は、沸上ポンプ24の回転数を制御して、出湯温度、貯湯タンク21の貯湯量、及び、貯湯タンク21に供給される湯水の流量(貯留流量)等を調整する。
【0065】
貯湯タンク21内の湯水を循環させる通常の沸上運転では、制御部190は、入水配管L1が第2追焚配管L19と連通しないように入水弁23を制御し、入水配管L1がバイパス配管L6と連通しないようにバイパス弁25を制御する。制御部190は、後述するように、追焚運転を行う際に入水弁23を制御する。
【0066】
制御部190は、バイパス弁25を制御して、入水配管L1を流れる湯水が水熱交換器12を通過して出湯配管L3に供給される状態と、入水配管L1を流れる湯水が水熱交換器12をバイパスして出湯配管L3に供給される状態と、を切り替えることができる。水熱交換器12をバイパスする状態では、入水配管L1はバイパス配管L6と連通し、貯湯タンク21内の湯水は水熱交換器12において加熱されることなく循環する。
【0067】
制御部190は、沸上弁26を制御して、水熱交換器12から第1戻し配管L4を介して貯湯タンク21に湯水が供給される状態と、水熱交換器12から第2戻し配管L5を介して貯湯タンク21に湯水が供給される状態と、を切り替えることができる。
【0068】
制御部190は、圧縮機11のモータ11aの運転周波数、膨張弁13の開度、沸上ポンプ24の回転数、バイパス弁25及び沸上弁26の状態、及び、貯湯タンク21の温度センサT1-T6の出力信号等に基づいて、出湯温度、貯湯量及び貯留流量を取得してもよい。
【0069】
制御部190は、出湯温度、貯湯量及び貯留流量が所定の目標値になるように、圧縮機11のモータ11aの運転周波数、膨張弁13の開度、沸上ポンプ24の回転数、及び、バイパス弁25及び沸上弁26の状態をフィードバック制御してもよい。
【0070】
(2-2)給湯運転
給湯運転とは、貯湯タンク21内の湯水を給湯部140から出す運転である。給湯運転では、給湯部140が蛇口である場合、蛇口の栓を開くことにより、外部からの水が、給水圧力によりタンク給水配管L9を介して、貯湯タンク21の下部から貯湯タンク21内に供給される。これにより、貯湯タンク21内の上部から、貯湯タンク21内に貯留される高温の湯水が第1沸上配管L7を介して押し出される。
【0071】
そして、貯湯タンク21から第1沸上配管L7を介して高温の湯水が第1混合弁27に供給されると共に、タンク給水配管L9、分岐給水配管L10及び第1混合水配管L11を介して外部からの水が第1混合弁27に供給される。第1混合弁27において、第1沸上配管L7からの高温の湯水が、第1混合水配管L11からの水と混合される。混合された湯水は、第1給湯配管L13を介して給湯部140から出される。
【0072】
制御部190は、ユーザによって給湯部140が開かれて、第1給湯配管L13内の湯水の流量の増加を第1流量センサ30が検出すると、給湯運転を開始する。給湯運転の実行中、制御部190は、給湯部140から出される湯水の温度に応じて、第1混合弁27を制御する。制御部190は、給湯部140から出される湯水の温度として、第1給湯温度センサT8が検出する温度を用いてもよい。
【0073】
制御部190は、混合水温度センサT7及び第1給湯温度センサT8の出力信号等に基づいて、給湯部140から出される湯水の温度が所定の目標値になるように、第1混合弁27における高温の湯水と水との混合比をフィードバック制御してもよい。
【0074】
(2-3)湯はり運転
湯はり運転とは、貯湯タンク21内の湯水を浴槽150内に供給する運転である。湯はり運転では、湯はり電磁弁31を開くことにより、外部からの水が、給水圧力によりタンク給水配管L9を介して、貯湯タンク21の下部から貯湯タンク21内に供給される。これにより、貯湯タンク21内の上部から、貯湯タンク21内に貯留される高温の湯水が第2沸上配管L8を介して押し出される。
【0075】
そして、貯湯タンク21から第2沸上配管L8を介して高温の湯水が第2混合弁28に供給されると共に、タンク給水配管L9、分岐給水配管L10及び第2混合水配管L12を介して外部からの水が第2混合弁28に供給される。第2混合弁28において、第2沸上配管L8からの高温の湯水が、第2混合水配管L12からの水と混合される。混合された湯水は、第2給湯配管L14を介して浴槽150内に供給される。
【0076】
制御部190は、ユーザによるリモートコントローラ130の操作によって湯はり運転の開始信号を受信すると湯はり電磁弁31を開き、これにより第2給湯配管L14内の湯水の流量の増加を第2流量センサ33が検出すると、湯はり運転を開始する。湯はり運転の実行中、制御部190は、浴槽150内に供給される湯水の温度に応じて、第2混合弁28を制御する。制御部190は、浴槽150内に供給される湯水の温度として、第2給湯温度センサT9が検出する温度を用いてもよい。
【0077】
制御部190は、混合水温度センサT7及び第2給湯温度センサT9の出力信号等に基づいて、浴槽150内に供給される湯水の温度が所定の目標値になるように、第2混合弁28における高温の湯水と水との混合比をフィードバック制御してもよい。
【0078】
また、制御部190は、湯はり運転の実行中、ユーザによるリモートコントローラ130の操作によって湯はり運転の終了信号を受信するか、又は、浴槽150に設けられる水位センサ(図示せず)により検出される浴槽150内の水位が所定の目標値になると、湯はり電磁弁31を閉じて湯はり運転を終了してもよい。
【0079】
(2-4)追焚運転
追焚運転とは、浴槽150内の湯水を追焚熱交換器35において加熱して、浴槽150内に戻す運転である。追焚運転では、追焚ポンプ34を駆動することにより、浴槽150内の湯水の一部が、第1浴槽戻り配管L16を介して追焚熱交換器35に案内されて加熱される。追焚熱交換器35において加熱された湯水は、第2浴槽戻り配管L17及び第2給湯配管L14を介して、浴槽150内に戻される。このように、追焚運転では、浴槽150内の湯水を、第1浴槽戻り配管L16、第2浴槽戻り配管L17及び第2給湯配管L14を介して循環させながら、追焚熱交換器35において加熱する。
【0080】
追焚熱交換器35は、貯湯タンク21から第2給湯配管L14及び第1追焚配管L18を介して供給される高温の湯水と、浴槽150内から第1浴槽戻り配管L16を介して供給される低温の湯水との間で熱交換を行う。これにより、追焚熱交換器35は、浴槽150内から第1浴槽戻り配管L16を介して供給される湯水を加熱する。第1追焚配管L18を介して追焚熱交換器35に供給される高温の湯水は、熱交換された後、第2追焚配管L19及び入水弁23を介して入水配管L1に供給される。追焚熱交換器35は、例えば、高温の湯水と低温の湯水とが反対方向に流れて熱交換が行われる、向流式の熱交換器等であってもよい。
【0081】
制御部190は、ユーザによるリモートコントローラ130の操作によって追焚運転の開始信号を受信すると、入水弁23を制御して入水配管L1と第2追焚配管L19とを連通させ、沸上ポンプ24及び追焚ポンプ34を駆動させて、追焚運転を開始する。追焚運転の実行中、制御部190は、浴槽150内の湯水の温度、及び、追焚熱交換器35から浴槽150内に戻される湯水の温度に応じて、沸上ポンプ24及び追焚ポンプ34の回転数を制御する。制御部190は、浴槽150内の湯水の温度として、浴槽戻り温度センサT10が検出する温度を用い、追焚熱交換器35から浴槽150内に戻される湯水の温度として、第2給湯温度センサT9が検出する温度を用いてもよい。
【0082】
制御部190は、第2給湯温度センサT9及び浴槽戻り温度センサT10の出力信号等に基づいて、浴槽150内の湯水の温度が所定の目標値になるように、沸上ポンプ24及び追焚ポンプ34の回転数をフィードバック制御してもよい。
【0083】
また、制御部190は、追焚運転の実行中、ユーザによるリモートコントローラ130の操作によって追焚運転の終了信号を受信するか、又は、浴槽150内の湯水の温度が所定の目標値になると、第2追焚配管L19が入水配管L1と連通しないように入水弁23を制御し、追焚ポンプ34を停止させて追焚運転を終了してもよい。
【0084】
(3)貯湯式給湯装置の制御
貯湯式給湯装置100は、商用電力及び余剰電力を用いて沸上運転を実行することができる。商用電力とは、電力会社等が保有する電力系統に接続される商用電源から供給される電力のうち、貯湯式給湯装置100が使用可能な電力である。余剰電力とは、商用電力以外の電力のうち、貯湯式給湯装置100が使用可能な電力である。本実施形態において、余剰電力は、太陽光発電装置170によって発電される電力のうち、貯湯式給湯装置100が使用可能な電力である。この場合、貯湯式給湯装置100は、太陽光発電装置170による発電が可能な時間帯において、余剰電力による沸上運転を実行することができる。
【0085】
貯湯式給湯装置100は、夜間沸上運転(第1運転)及び昼間沸上運転(第2運転)を実行する。夜間沸上運転とは、夜間時間帯の少なくとも一部の時間帯(第1時間帯)に実行される沸上運転である。昼間沸上運転とは、昼間時間帯の少なくとも一部の時間帯(第2時間帯)に実行される沸上運転である。昼間時間帯とは、夜間時間以外の時間帯である。通常、電力会社等から購入する商用電力の料金単価は、昼間時間帯よりも夜間時間帯の方が安い。夜間時間帯及び昼間時間帯は、商用電力の購入先である電力会社等が定める時間帯ごとの料金単価に応じて予め設定される。この場合、夜間時間帯及び昼間時間帯は、貯湯式給湯装置100のユーザがリモートコントローラ130を操作することによって設定されてもよく、貯湯式給湯装置100とネットワークを介して接続されるサーバ等から受信したデータに基づいて自動的に設定されてもよい。本実施形態では、夜間時間帯は、午後11時から翌日の午前7時までの時間帯であり、昼間時間帯は、午前7時から午後11時までの時間帯であるとする。夜間時間帯は、午後10時から翌日の午前6時までの時間帯であってもよい。その場合、昼間時間帯は、午前6時から午後10時までの時間帯である。夜間時間帯及び昼間時間帯は上記の時間帯に限られず、電力会社が定める時間帯であってもよい。
【0086】
貯湯式給湯装置100は、電力会社等から購入する商用電力を用いて、夜間沸上運転を実行する。貯湯式給湯装置100は、電力会社等から購入する商用電力、及び、太陽光発電装置170によって発電される余剰電力の少なくとも一方を用いて、昼間沸上運転を実行する。本実施形態では、昼間沸上運転は、午前11時から午後2時までの時間帯に余剰電力を用いて実行されるとする。言い換えると、昼間沸上運転が実行される第2時間帯は、午前11時から午後2時までの時間帯である。第2時間帯の開始時刻及び終了時刻は、貯湯式給湯装置100のユーザがリモートコントローラ130を操作することによって設定されてもよい。また、第2時間帯の開始時刻及び終了時刻は、外部から入力されたデータに基づいて自動的に設定されてもよい。外部から入力されたデータは、例えば、翌日の日照時間に関する予報データである。
【0087】
次に、図3に基づいて、制御部190が、夜間沸上運転の実行時に加熱する湯水の量である第1水量を決定する処理について説明する。制御部190は、翌日に必要な湯量である目標湯量(第1要求量)と、貯湯タンク21の許容容量に基づくタンク容量(所定量)とに応じて、第1水量を決定する。目標湯量は、貯湯式給湯装置100のユーザが給湯部140及び浴槽150を介して翌日に使用すると予測される湯水の量(使用湯量)である。
【0088】
最初に、ステップS11で、制御部190は、目標湯量を取得する。制御部190は、貯湯式給湯装置100のユーザが設定した目標湯量を取得してもよく、過去の使用湯量に基づいて算出される目標湯量を取得してもよい。過去の使用湯量から目標湯量を算出する場合、図2に示されるように、制御部190(第1制御装置10及び第2制御装置20)は、測定部191と、記憶部192と、決定部193と、を有する。測定部191は、貯湯式給湯装置100の使用湯量を測定する。測定部191は、例えば、過去1ヵ月における一日の使用湯量を測定する。測定部191は、例えば、第1流量センサ30からの信号に基づいて一日に給湯部140から出される湯水の量を取得し、第2流量センサ33からの信号に基づいて一日に浴槽150内に供給される湯水の量を取得して、一日の使用湯量を算出する。記憶部192は、測定部191が測定した使用湯量を記憶する。決定部193は、記憶部192に記憶される使用湯量から目標湯量を決定する。決定部193は、例えば、過去1ヵ月における一日の使用湯量の平均値を目標湯量としてもよい。また、曜日によって一日の使用湯量が大きく異なる場合、決定部193は、曜日が同じ過去の日の使用湯量から目標湯量を決定してもよい。また、制御部190は、以下の式に基づいて目標湯量を算出してもよい。
【0089】
目標湯量[L]=目標貯湯熱量[kcal]/(沸上温度[℃]-給水温度[℃])
上式において、目標貯湯熱量とは、貯湯タンク21内の湯水の蓄熱量の目標値である。目標貯湯熱量は、翌日に必要な負荷の総量等に基づいて算出されてもよく、貯湯式給湯装置100のユーザによって設定されてもよい。沸上温度は、貯湯タンク21に貯留される湯水の温度の目標値であり、例えば、65℃である。沸上温度は、外気温等に基づいて算出されてもよく、貯湯式給湯装置100のユーザによって設定されてもよい。給水温度は、水道等の外部の給水源から止水栓160を介して貯湯ユニット120に供給される水の温度であり、例えば、5℃である。給水温度は、混合水温度センサT7が検出する温度でもよく、貯湯式給湯装置100のユーザによって設定されてもよい。
【0090】
次に、ステップS12で、制御部190は、タンク容量を取得する。制御部190は、貯湯式給湯装置100のユーザが設定したタンク容量を取得してもよく、貯湯タンク21の許容容量に基づいてタンク容量を取得してもよい。貯湯タンク21の許容容量とは、例えば、貯湯タンク21の仕様上の容量から、所定のマージンに相当する量を差し引いた量である。制御部190は、貯湯タンク21の許容容量の0.9倍から1.2倍の間の任意の容量を、タンク容量として取得してもよい。タンク容量の単位は、リットル(L)である。
【0091】
次に、ステップS13で、制御部190は、翌日の昼間沸上運転の実行時に加熱する湯水の量である第2水量を取得する。第2水量は、翌日の第2時間帯に沸き上げられる湯水の量の予測値である。制御部190は、第2水量を以下の式に基づいて算出する。
【0092】
第2水量[L]=第2時間帯における沸上熱量[kcal]/(沸上温度[℃]-給水温度[℃])
第2時間帯における沸上熱量[kcal]=ヒートポンプユニット110の能力[kW]×沸上運転時間[s]×0.9×860/3600
上式において、ヒートポンプユニット110の能力は、ヒートポンプユニット110の第1制御装置10から送信されてもよく、ヒートポンプユニット110の過去の運転データ等から算出されてもよい。沸上運転時間は、第2時間帯の長さの予測値である。本実施形態の場合、沸上運転時間は、太陽光発電装置170によって発電される余剰電力が供給される、午前11時から午後2時までの10800秒(s)である。沸上温度及び給水温度は、ステップS11で目標湯量を算出するために用いられる値と同じである。
【0093】
なお、制御部190は、ステップS11-S13を任意の順番で実行してもよい。
【0094】
次に、ステップS14で、制御部190は、目標湯量がタンク容量よりも多いか否かを判定する。目標湯量がタンク容量よりも多い場合、ステップS15で、制御部190は、タンク容量から第2水量を差し引いた量を、第1水量とする。目標湯量がタンク容量以下である場合、又は、目標湯量がタンク容量より少ない場合、ステップS16で、制御部190は、目標湯量から第2水量を差し引いた量を、第1水量とする。この場合、図3のステップS15において、第1水量は以下の式により算出される。
【0095】
第1水量[L]=タンク容量[L]-第2水量[L]
同様に、図3のステップS16において、第1水量は以下の式により算出される。
【0096】
第1水量[L]=目標湯量[L]-第2水量[L]
その後、制御部190は、ステップS15又はステップS16で決定された第1水量の湯水を、夜間時間帯の終了時刻までに生成して貯湯タンク21内に貯留されるように、夜間沸上運転を制御する。制御部190は、夜間時間帯の開始時刻に夜間沸上運転を開始してもよく、又は、貯湯タンク21から失われる熱量を低減するために以下の制御を行ってもよい。この制御では、制御部190は、ヒートポンプユニット110の能力、第1水量、及び、夜間沸上運転前の貯湯タンク21内の湯水の蓄熱量等に基づいて、夜間沸上運転の必要運転時間を算出する。そして、制御部190は、夜間時間帯の終了時刻から、算出された必要運転時間だけ遡った時刻に夜間沸上運転を開始する。言い換えると、制御部190は、夜間時間帯の終了時刻に夜間沸上運転が終了するように、夜間沸上運転を制御する。これにより、夜間沸上運転の終了時刻から、翌日に貯湯タンク21内の湯水が最初に使用される時刻までの時間を短くできるので、その間に貯湯タンク21から失われる熱量を低減することができる。
【0097】
次の表は、目標湯量及び第2水量が互いに異なる4つのパターン(例1~例4)における第1水量の具体例を示す。表中の数値の単位はリットル(L)である。
【0098】
【表1】

目標湯量は、通常、貯湯式給湯装置100のユーザ、及び、貯湯式給湯装置100が使用される季節に応じて異なる。
【0099】
タンク容量は、ここでは、貯湯タンク21の許容容量と等しい500Lである。
【0100】
第2水量は、貯湯式給湯装置100が使用される季節、第2時間帯における沸上熱量、沸上温度、及び、給水温度に応じて異なる。例えば、冬季の給水温度は夏季の給水温度よりも低いので、冬季の第2水量は夏季の第2水量よりも少なくなる傾向がある。また、沸上温度が高いほど、第2水量が少なくなる傾向がある。
【0101】
第1水量Aは、タンク容量から第2水量を差し引いた値である。
【0102】
第1水量Bは、目標湯量から第2水量を差し引いた値である。ただし、目標湯量から第2水量を差し引いた値がタンク容量よりも多い場合、第1水量Bはタンク容量に設定される。なぜなら、夜間沸上運転において沸き上げることができる湯水の最大量は、貯湯タンク21の許容容量と等しいタンク容量であるからである。表中の例1の場合、目標湯量から第2水量を差し引いた値は700Lであり、タンク容量の500Lより多いので、第1水量Bは500Lである。
【0103】
第1水量Cは、第1水量A及び第1水量Bのうち少ない方の湯量である。第1水量Cは、図3のステップS15又はステップS16で算出される第1水量に相当する。制御部190は、第1水量Cを、夜間沸上運転の実行時に採用する第1水量として決定する。
【0104】
(4)特徴
(4-1)
制御部190は、翌日に必要な湯量である目標湯量が、貯湯タンク21の許容容量に基づくタンク容量よりも多い場合に、翌日の昼間沸上運転で加熱できる湯水の量(第2水量)をタンク容量から差し引いた量を、夜間沸上運転で加熱する湯水の量(第1水量)とする。目標湯量がタンク容量よりも多い場合に目標湯量から第2水量を差し引いた量を第1水量とすると、翌日の昼間沸上運転に使用できる電力を十分に活用できないおそれがある。
【0105】
例えば、上記の表の例1の場合、目標湯量(900L)から第2水量(200L)を差し引いた量(700L)は、貯湯タンク21の許容容量であるタンク容量(500L)よりも多い。夜間沸上運転では、貯湯タンク21の許容容量を超える量の湯水を沸き上げることができないので、夜間時間帯の使用湯量がゼロである場合、夜間沸上運転で加熱できる湯水の量の最大値は、タンク容量と同じ500Lとなる。しかし、第1水量を500Lとすると、翌日の昼間沸上運転の開始前までの使用湯量がゼロである場合、翌日の昼間沸上運転の開始時に貯湯タンク21には500Lの湯水が貯留されている。この場合、昼間沸上運転において湯水を沸き上げることができない。一方、第1水量を、タンク容量(500L)から第2水量(200L)を差し引いた300Lとすると、翌日の昼間沸上運転の開始前までの使用湯量がゼロである場合、翌日の昼間沸上運転の開始時に貯湯タンク21には300Lの湯水が貯留されている。この場合、昼間沸上運転において第2水量(200L)の湯水を沸き上げることができる。
【0106】
また、上記の表の例3の場合、目標湯量(600L)から第2水量(250L)を差し引いた量(350L)は、貯湯タンク21の許容容量であるタンク容量(500L)よりも少ない。しかし、第1水量を350Lとすると、翌日の昼間沸上運転の開始前までの使用湯量がゼロである場合、翌日の昼間沸上運転の開始時に貯湯タンク21には350Lの湯水が貯留されている。この場合、翌日の昼間沸上運転で加熱できる湯水の量は、タンク容量(500L)から第1水量(350L)を差し引いた150Lであるので、昼間沸上運転において第2水量(250L)の湯水を沸き上げることができない。一方、第1水量を、タンク容量(500L)から第2水量(250L)を差し引いた250Lとすると、翌日の昼間沸上運転の開始前までの使用湯量がゼロである場合、翌日の昼間沸上運転の開始時に貯湯タンク21には250Lの湯水が貯留されている。この場合、翌日の昼間沸上運転で加熱できる湯水の量は、タンク容量(500L)から第1水量(250L)を差し引いた250Lであるので、昼間沸上運転において第2水量(250L)の湯水を沸き上げることができる。
【0107】
従って、貯湯式給湯装置100は、夜間時間帯以外の時間帯(昼間時間帯)に供給される電力を活用できるように、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を決定することができる。
【0108】
(4-2)
制御部190は、翌日に必要な湯量である目標湯量が、貯湯タンク21の許容容量に基づくタンク容量以下である場合に、翌日の昼間沸上運転で加熱できる湯水の量(第2水量)を目標湯量から差し引いた量を、夜間沸上運転で加熱する湯水の量(第1水量)とする。これにより、第2水量の湯水を沸き上げるために翌日の昼間沸上運転で使用される電力を活用することができるので、夜間沸上運転で使用される電力を抑えることができる。昼間沸上運転で使用される電力が、太陽光発電装置170によって発電される余剰電力である場合、夜間沸上運転で使用される電力を抑えることで、一日の沸上運転で使用される商用電力を低減することができる。
【0109】
従って、貯湯式給湯装置100は、夜間時間帯以外の時間帯(昼間時間帯)に供給される電力を活用して夜間での沸上運転に必要な電力が抑えられるように、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を決定することができる。
【0110】
(4-3)
制御部190は、ユーザの過去の使用湯量に基づいて、翌日に必要な湯量である目標湯量を取得してもよい。この場合、貯湯式給湯装置100は、目標湯量の予測値を精度よく決定できるので、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を適切に決定することができる。
【0111】
(4-4)
本実施形態では、昼間沸上運転で使用される電力は、太陽光発電装置170によって発電される余剰電力である。そのため、夜間沸上運転で使用される電力を抑えることで、一日の沸上運転で使用される商用電力を低減することができる。
【0112】
従って、貯湯式給湯装置100は、夜間時間帯以外の時間帯(昼間時間帯)に供給される余剰電力を活用して夜間での沸上運転に必要な電力が抑えられるように、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を決定することができる。
【0113】
(5)変形例
(5-1)変形例A
実施形態において、制御部190は、目標湯量がタンク容量よりも多いか否かに基づいて、タンク容量又は目標湯量から第2水量を差し引いた量を、第1水量とする。しかし、制御部190は、タンク容量又は目標湯量から第2水量を差し引いて、さらに第3水量を加えた量を、第1水量としてもよい。この場合、図3のステップS15において、第1水量は以下の式により算出される。
【0114】
第1水量[L]=タンク容量[L]-第2水量[L]+第3水量[L]
同様に、図3のステップS16において、第1水量は以下の式により算出される。
【0115】
第1水量[L]=目標湯量[L]-第2水量[L]+第3水量[L]
第3水量は、以下の式により算出される。
【0116】
第3水量[L]=予測負荷[kcal]/(沸上温度[℃]-給水温度[℃])
予測負荷とは、第2時間帯以前の使用負荷の予測値である。具体的には、予測負荷は、昼間時間帯の開始時刻から、第2時間帯の開始時刻までに、貯湯タンク21内の湯水に所定の熱量が蓄積されている状態を維持するために必要な熱量の予測値である。予測負荷は、昼間時間帯の開始時刻より所定時間前の時刻から、第2時間帯の開始時刻までの、当該必要な熱量の予測値であってもよい。沸上温度及び給水温度は、ステップS11で目標湯量を算出するために用いられる値と同じである。
【0117】
本変形例では、貯湯式給湯装置100は、昼間時間帯における沸上運転の開始時刻までの負荷を考慮に入れて、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を決定することができる。
【0118】
(5-2)変形例B
制御部190は、さらに、夜間沸上運転の終了時刻の後であって翌日の第2時間帯の前の第3時間帯に必要な湯量である第2要求量に応じて、第1水量を決定してもよい。例えば、夜間沸上運転が午前7時に終了し、昼間沸上運転が午前11時から午後2時までの間に実行される場合、第3時間帯は、午前7時から午前11時までの時間帯である。第2要求量は、貯湯式給湯装置100のユーザが給湯部140及び浴槽150を介して翌日の第3時間帯に使用すると予測される湯水の量である。
【0119】
次に、図4に基づいて、制御部190が、さらに第2要求量に応じて、夜間沸上運転の実行時に加熱する湯水の量である第1水量を決定する処理について説明する。図4のステップS21-S26は、それぞれ図3のステップS11-S16と同じ処理を示すので説明を省略する。
【0120】
ステップS25又はステップS26で第1水量が算出された後、ステップS27で、制御部190は、第2要求量を取得する。制御部190は、貯湯式給湯装置100のユーザが設定した第2要求量を取得してもよく、過去の使用湯量に基づいて算出される第2要求量を取得してもよい。過去の使用湯量から第2要求量を算出する場合、実施形態における目標湯量の決定方法と同様に、制御部190(第2制御装置20)は、図2に示される測定部191、記憶部192及び決定部193が行う処理により第2要求量を決定してもよい。例えば、制御部190は、過去1ヵ月における毎日の第3時間帯の使用湯量の平均値を第2要求量としてもよい。また、制御部190は、後述する式を用いて第2要求量を算出してもよい。
【0121】
なお、ステップS27における第2要求量の取得は、ステップS25又はステップS26で第1水量が算出される前に行われてもよい。
【0122】
次に、ステップS28で、制御部190は、第2要求量が、ステップS25又はステップS26で算出された第1水量よりも多いか否かを判定する。第2要求量が、ステップS25又はステップS26で算出された第1水量よりも多い場合、ステップS29で、制御部190は、第1水量を、第2要求量と同じ湯水の量とする。制御部190は、第1水量を、第2要求量以上の湯水の量としてもよい。ただし、ステップS29で決定される第1水量がタンク容量を超える場合、制御部190は、第1水量をタンク容量に設定する。第2要求量が、ステップS25又はステップS26で算出された第1水量以下である場合、ステップS25又はステップS26で算出された第1水量が沸上運転の制御で用いられる。
【0123】
本変形例では、制御部190は、翌日の第3時間帯に必要な湯量である第2要求量が、ステップS25又はステップS26で算出された第1水量よりも多い場合、第1水量を第2要求量と同じ湯水の量とする。第1水量が第2要求量よりも少ない場合、翌日の第3時間帯に貯湯タンク21内の湯水が使用されることで貯湯タンク21内の湯水の量が少なくなり、貯湯式給湯装置100のユーザが給湯部140及び浴槽150を介して湯水が使用できなくなる湯切れが発生するおそれがある。
【0124】
従って、貯湯式給湯装置100は、夜間時間帯における沸上運転で加熱する湯水の量を、翌日の第3時間帯に必要な湯量以上とすることで、翌日の第3時間帯における湯切れの発生を抑制することができる。
【0125】
なお、変形例Aは、図4のフローチャートにも適用できる。言い換えると、図4のステップS25において、第1水量は以下の式により算出されてもよい。
【0126】
第1水量[L]=タンク容量[L]-第2水量[L]+第3水量[L]
同様に、図4のステップS26において、第1水量は以下の式により算出されてもよい。
【0127】
第1水量[L]=目標湯量[L]-第2水量[L]+第3水量[L]
また、本変形例では、安全性の確保のために、第1水量の下限値である最低湯量がさらに設定されてもよい。この場合、制御部190は、図4に示される処理で決定される第1水量が最低湯量を下回る場合に、第1水量を最低湯量とする。最低湯量は、タンク容量から算出されてもよく、貯湯式給湯装置100のユーザによって設定されてもよい。
【0128】
(5-3)変形例C
変形例Bにおいて、制御部190は、第3時間帯に沸き上げておくべき湯水に蓄えられる熱量の予測値に基づいて第2要求量を算出してもよい。この場合、第2要求量は以下の式により算出される。
【0129】
第2要求量[L]=第3時間帯における沸上熱量[kcal]/(沸上温度[℃]-給水温度[℃])
第3時間帯における沸上熱量は、第3時間帯に沸き上げておくべき湯水に蓄えられる熱量の予測値である。沸上温度及び給水温度は、ステップS21で目標湯量を算出するために用いられる値と同じである。
【0130】
第3時間帯における沸上熱量は、以下の式により算出される。
【0131】
第3時間帯における沸上熱量[kcal]=(予測負荷[kcal]×補正係数+昼間沸上補正熱量[kcal]+その他補正熱量[kcal])×放熱係数×設定係数
予測負荷は、変形例Aで説明したように、第2時間帯以前の使用負荷の予測値である。昼間沸上補正熱量は、後述するように、昼間沸上運転のみでは不足する分の熱量の予測値である。その他補正熱量は、湯切れの発生時、及び、追焚運転の実行時等に必要となる熱量の予測値である。補正係数、放熱係数及び設定係数は、無次元の値であり、所定の値が用いられてもよく、貯湯式給湯装置100のユーザによって設定されてもよい。
【0132】
昼間沸上補正熱量は、以下の式により算出される。
【0133】
昼間沸上補正熱量[kcal]=ヒートポンプユニット110の能力[kW]×(第2時間帯の開始時刻-昼間沸上補正運転の予定開始時刻)[s]×0.9×860/3600
次に、昼間沸上補正運転の予定開始時刻について、図5を参照しながら説明する。図5に示される昼間時間帯の一部の時間帯(午前7時から午後7時まで)のタイムチャートには、余剰電力を用いる昼間沸上運転が行われる第2時間帯(午前11時から午後2時まで)、及び、1時間ごとの使用湯量の予測値が示されている。例えば、午後4時から午後5時までの使用湯量の予測値は100リットル(L)である。
【0134】
昼間沸上補正運転とは、第2時間帯の開始時刻における貯湯タンク21内の湯水の蓄熱量をゼロとする場合に、昼間時間帯の開始時刻から、昼間時間帯の所定の時刻までに使用される湯水の量を確保するための沸上運転である。
【0135】
図5には、午前7時から午後5時までに使用される湯量(100L)を確保するために必要な第1運転期間C1、午前7時から午後6時までに使用される湯量(150L)を確保するために必要な第2運転期間C2、及び、午前7時から午後7時までに使用される湯量(350L)を確保するために必要な第3運転期間C3が示されている。第1運転期間C1は、午後4時から午後5時までの使用湯量(100L)の沸き上げに必要な第1沸上期間P1と、予備期間P0とから構成される。第2運転期間C2は、第1沸上期間P1と、午後5時から午後6時までの使用湯量(50L)の沸き上げに必要な第2沸上期間P2と、予備期間P0とから構成される。第3運転期間C3は、第1沸上期間P1と、第2沸上期間P2と、午後6時から午後7時までの使用湯量(200L)の沸き上げに必要な第3沸上期間P3と、予備期間P0とから構成される。図5では、予備期間P0は1時間である。昼間沸上補正運転は、第1運転期間C1、第2運転期間C2及び第3運転期間C3のそれぞれの期間に行われる沸上運転である。
【0136】
昼間沸上補正運転の予定開始時刻は、第1運転期間C1、第2運転期間C2及び第3運転期間C3の開始時刻のうち、最も早い時刻である。図5の場合、昼間沸上補正運転の予定開始時刻は、第3運転期間C3の開始時刻である午前10時半である。
【0137】
図5では、第2時間帯の開始時刻は午前11時であり、昼間沸上補正運転の予定開始時刻は午前10時半であるので、昼間沸上補正熱量は、0.5時間の沸上運転によって貯湯タンク21内の湯水に蓄積される熱量に相当する。図5において、第2時間帯より前には余剰電力を用いる沸上運転を行うことができないので、昼間沸上補正熱量は、商用電力を用いる沸上運転によって貯湯タンク21内の湯水に蓄積される熱量である。
【0138】
なお、上記の式を用いて算出された昼間沸上補正熱量がゼロ未満となる場合、言い換えると、昼間沸上補正運転の予定開始時刻が第2時間帯の開始時刻よりも後になる場合、昼間沸上補正熱量はゼロである。
【0139】
(5-4)変形例D
制御部190は、翌日に必要な湯量である目標湯量が、貯湯タンク21の許容容量に基づくタンク容量よりも多く、かつ、夜間沸上運転、及び、翌日の余剰電力を用いる昼間沸上運転を実行しても目標湯量が賄えない場合、翌日の昼間時間帯において商用電力を用いてさらに沸上運転を行ってもよい。これにより、貯湯式給湯装置100は、夜間沸上運転、及び、翌日の余剰電力を用いる昼間沸上運転の両方を実行しても不足する分の湯量を、翌日の商用電力を用いる沸上運転によって確保できるので、湯切れの発生を抑制することができる。
【0140】
(5-5)変形例E
制御部190は、さらに、安全のために、図3及び図4に示されるフローチャートにより決定された第1水量、及び、貯湯タンク21の温度センサT1-T6の出力信号に基づいて、夜間沸上運転を停止する制御を行ってもよい。例えば、制御部190は、第1水量が所定の範囲内にある場合に、6つの温度センサT1-T6のいずれか1つが検出した温度が所定値以上になると、第1水量の湯水が貯湯タンク21内に貯留されたと判断して、夜間沸上運転を停止する。
【0141】
次の表は、図3及び図4に示されるフローチャートにより決定された第1水量の範囲と、夜間沸上運転を停止する条件との対応の具体例を示す。貯湯タンク21の許容容量は500Lである。表中のR1-R6は、予め設定された値である。
【0142】
【表2】
上の表によると、第1水量が多いほど、より高い位置に設置される温度センサT1-T6の検出値が、夜間沸上運転を停止するか否かの判定に用いられる。例えば、第1水量が400Lである場合、制御部190は、貯湯タンク21の側面の上部に設けられる第1湯量温度センサT1が検出する温度がR1以上になると、夜間沸上運転を停止する。本変形例では、上記の制御により、貯湯式給湯装置100は、夜間での沸上運転の安全性を確保することができる。
【0143】
(5-6)変形例F
実施形態において、余剰電力の供給源は、太陽光発電装置170である。しかし、余剰電力の供給源は、太陽光発電装置170に限られず、貯湯式給湯装置100が設置される施設に設置可能な小型水力発電装置、小型風力発電装置及びバイオマス発電装置等であってもよい。余剰電力の供給源は、施設に設置可能な複数種類の発電装置の組み合わせであってもよい。
【0144】
また、実施形態において、貯湯式給湯装置100は、商用電力を用いて夜間沸上運転を実行する。しかし、貯湯式給湯装置100は、夜間時間帯に利用可能な余剰電力をさらに用いて夜間沸上運転を実行してもよい。夜間時間帯に利用可能な余剰電力の供給源は、小型水力発電装置、小型風力発電装置及びバイオマス発電装置等である。
【0145】
―むすび―
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0146】
21 :貯湯タンク(タンク)
100 :貯湯式給湯装置(給湯装置)
190 :制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0147】
【文献】特開2019-113235号公報
図1
図2
図3
図4
図5