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特許7534649冷媒の状態を検知する複数のセンサを備える冷凍装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】冷媒の状態を検知する複数のセンサを備える冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20240807BHJP
   F25B 39/02 20060101ALI20240807BHJP
   F25B 41/39 20210101ALI20240807BHJP
   F25B 49/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F25B1/00 304H
F25B1/00 304T
F25B39/02 T
F25B41/39
F25B49/02 510B
F25B49/02 510C
F25B49/02 510F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021205905
(22)【出願日】2021-12-20
(65)【公開番号】P2023091255
(43)【公開日】2023-06-30
【審査請求日】2023-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】冨田 千晴
(72)【発明者】
【氏名】伊東 孝将
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 健太
(72)【発明者】
【氏名】浮田 一輝
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 佑起
(72)【発明者】
【氏名】倉本 翔平
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095484(JP,A)
【文献】国際公開第2021/144909(WO,A1)
【文献】特開2017-053498(JP,A)
【文献】特開2001-241779(JP,A)
【文献】特開2012-032063(JP,A)
【文献】特開2004-309027(JP,A)
【文献】特開2004-108625(JP,A)
【文献】特開平09-014771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 39/02
F25B 41/39
F25B 49/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(11)と、
熱源熱交換器(13)と、
冷媒を減圧させる膨張弁(15、24)と、
前記膨張弁から前記冷媒を受け取る第1熱交換器(21)と、
前記第1熱交換器から前記冷媒を受け取る第2熱交換器(22)と、
前記第2熱交換器を流れる前記冷媒の温度(Tu)を測定する第1センサ(51)と、
前記第2熱交換器以外を流れる前記冷媒の状態を測定する第2センサ(52)と、
温度を制御される対象(G)の温度(Tg)を測定する第3センサ(53)と、
冷熱提供運転において、前記第1センサの出力に基づいて前記膨張弁を制御する第1制御と、前記第2センサの出力に基づいて前記膨張弁を制御する第2制御と、を選択的に実行できる制御部(9)と、
を備え
前記制御部は、前記第3センサの出力に基づいて前記第1制御と前記第2制御とを切り替える、冷凍装置(100)。
【請求項2】
前記第2センサは、前記膨張弁と前記第1熱交換器の間の区間の前記冷媒の温度(Tb)を測定する、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項3】
前記第2センサは、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の圧力(Ps)を測定する、
請求項1に記載の冷凍装置。
【請求項4】
前記第2熱交換器から排出される前記冷媒の温度(Tl)を測定する第4センサ(54)、
をさらに備え、
前記制御部は、さらに前記第4センサの出力に基づいて前記膨張弁を制御する、
請求項1からのいずれか1項に記載の冷凍装置。
【請求項5】
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器の間に設けられ、前記第1熱交換器の冷媒排出管(26)から前記冷媒を受け取る流入ポート(25a)、及び、前記第2熱交換器の複数の冷媒受取管(27)へ前記冷媒を受け渡す複数の流出ポート(25b)、を有する分流器(25)、
をさらに備え、
前記第1センサは前記複数の冷媒受取管のいずれかに設けられる、
請求項1からのいずれか1項に記載の冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷媒の状態を検知する複数のセンサを備える冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2001-221520号公報)が開示する冷凍装置においては、利用熱交換器の近傍に設けられたセンサの出力に基づいて、利用膨張弁の制御が行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
冷凍装置が冷熱提供運転をする場合において、利用熱交換器に設けられたセンサの出力に基づいて利用膨張弁の制御を行うと、利用膨張弁が完全に閉じる状態に達してしまうことがある。とりわけ、利用ユニットおいて、センサが設けられている熱交換器の上流に別の熱交換器が備えられている場合に、この現象は顕著である。このような冷凍装置が冷熱提供運転をする場合、冷媒はセンサが設けられている熱交換器に達する前に完全に蒸発してしまうので、ユーザに冷熱を提供できなくなる事態が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の冷凍装置は、圧縮機と、熱源熱交換器と、膨張弁と、第1熱交換器と、第2熱交換器と、第1センサと、第2センサと、制御部と、を備える。膨張弁は、冷媒を減圧させる。第1熱交換器は、膨張弁から冷媒を受け取る。第2熱交換器は、第1熱交換器から冷媒を受け取る。第1センサは、第2熱交換器を流れる冷媒の温度を測定する。第2センサは、第2熱交換器以外を流れる冷媒の状態を測定する。制御部は、冷熱提供運転において、第1センサの出力に基づいて膨張弁を制御する第1制御と、第2センサの出力に基づいて膨張弁を制御する第2制御と、を選択的に実行できる。
【0005】
この構成によれば、冷媒の蒸発温度を検知するために、冷凍装置の状態に応じて第1センサと第2センサを切り替えて用いることができる。したがって、第1熱交換器と第2熱交換器の集合体において、蒸発温度の検知の誤差を低減できる。
【0006】
第2観点に係る冷凍装置は、第1観点の冷凍装置において、第3センサをさらに備える。第3センサは、温度を制御される対象の温度を測定する。制御部は、第3センサの出力に基づいて第1制御と第2制御とを切り替える。
【0007】
この構成によれば、温度制御の対象の温度に基づいて、第1センサ及び第2センサが切り替えられる。したがって、例えば、低負荷運転の時に第1センサを、高負荷運転の時に第2センサを使用することによって、蒸発温度の検知誤差を低減できる。
【0008】
第3観点に係る冷凍装置は、第1観点又は第2観点の冷凍装置において、第2センサが、膨張弁と第1熱交換器の間の区間の冷媒の温度を測定する。
【0009】
この構成によれば、第2センサは膨張弁の下流の温度センサである。したがって、温度制御の対象の温度が高い場合、利用熱交換器の入口において冷媒が過剰に蒸発することに起因して第1センサが蒸発温度を実際よりも高いものとして検知する可能性がある場合に、気液2相冷媒が通過している区間に設けられる第2センサを用いることによって、対象の高温の影響を低減できる。
【0010】
第4観点に係る冷凍装置は、第1観点又は第2観点の冷凍装置において、第2センサが、圧縮機に吸入される冷媒の圧力を測定する。
【0011】
この構成によれば、第2センサは熱源ユニットにある圧縮機の吸入部の圧力センサである。したがって、液連絡配管において気液二相冷媒が圧力損失を受けることに起因して第1センサが蒸発温度を実際よりも低いものとして検知する可能性がある場合に、熱源ユニットに搭載される第2センサを使用することによって圧力損失の影響を除去できる。
【0012】
第5観点に係る冷凍装置は、第1観点から第4観点のいずれか1つの冷凍装置において、第4センサをさらに備える。第4センサは、第2熱交換器から排出される冷媒の温度を測定する。制御部は、さらに第4センサの出力に基づいて膨張弁を制御する。
【0013】
この構成によれば、第4センサは、第2熱交換器から排出される蒸発した冷媒の過熱度を測定することができる。したがって、第4センサを第1センサ又は第2センサと併用することにより、過熱度に基づいて膨張弁の制御を行うことができる。
【0014】
第6観点に係る冷凍装置は、第1観点から第5観点のいずれか1つの冷凍装置において、分流器、をさらに備える。分流器は、第1熱交換器と第2熱交換器の間に設けられる。分流器は、流入ポート、及び、複数の流出ポート、を有する。流入ポートは、第1熱交換器の冷媒排出管から冷媒を受け取る。流出ポートは、第2熱交換器の複数の冷媒受取管へ冷媒を受け渡す。
【0015】
この構成によれば、第1センサは、分流器の流出ポートに接続される第2熱交換器の冷媒受取管に設けられる。この冷媒受取管は、分流器の性質上、第1熱交換器の冷媒排出管よりも細い径を有する。そして、冷媒排出管を通過する冷媒は圧力損失を受けて減圧されやすい。したがって、第1センサは蒸発温度として最適な値を取得しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の基本形に係る冷凍装置100の模式図である。
図2】冷凍装置制御部9による制御手順を示すフローチャートである。
図3】プルダウン運転の制御手順を示すフローチャートである。
図4】通常運転の制御手順を示すフローチャートである。
図5】利用ユニットデフロスト運転の要否判定の手順を示すフローチャートである。
図6】第2実施形態の基本形に係る冷凍装置101の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
(1)全体構成
図1は、第1実施形態の基本形に係る冷凍装置100を示す。冷凍装置100は、熱源から冷熱(cold)又は温熱(heat)を取得して、その冷熱又は温熱をユーザに提供するためのものである。冷凍装置100の具体的態様は、例えば、空気調和装置、冷蔵庫、冷凍庫、倉庫温度制御装置、給湯機、床暖房装置、洗濯乾燥機である。
【0018】
冷凍装置100は、ユーザに冷熱又は温熱を提供するために、対象Gの温度を制御する。例えば、冷凍装置100が空気調和装置である場合、対象Gはユーザがいる室内の空気である。冷凍装置100が倉庫温度制御装置である場合、対象Gは荷物が貯蔵されている室内の空気である。冷凍装置100が給湯機である場合、対象Gはユーザに供給されるお湯である。
【0019】
冷凍装置100は、冷媒を循環させる冷媒回路RCを有する。冷媒回路RCは、例えば1台の熱源ユニット10、1台の利用ユニット20、及び連絡配管30によって構成されている。1台の冷凍装置100に含まれる熱源ユニット10及び利用ユニット20の数は複数であってもよい。
【0020】
冷凍装置100は、温度調節運転、及び、利用ユニットデフロスト運転を実行することができる。温度調節運転は、ユーザに冷熱又は温熱を提供することを目的とする運転である。温度調節運転は、ユーザに冷熱を提供する冷熱提供運転、及び、ユーザに温熱を提供する温熱提供運転を含む。利用ユニットデフロスト運転は、利用ユニット20に付着した霜を溶かすことを目的とする運転であり、温熱提供運転と類似の動作によって実行される。
【0021】
(2)詳細構成
(2-1)熱源ユニット10
熱源ユニット10は、室外空気等の熱源から冷熱又は温熱を取得するためのものである。熱源ユニット10は、圧縮機11、四路切換弁12、熱源熱交換器13、熱源膨張弁15、液閉鎖弁17、ガス閉鎖弁18、熱源センサ群60、及び、熱源制御部19を有する。
【0022】
(2-1-1)圧縮機11
圧縮機11は、低圧ガス冷媒を圧縮することによって高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機11は、吸入口11a、及び吐出口11bを有する。吸入口11aは、低圧ガス冷媒を吸入するためのものである。吐出口11bは、高圧ガス冷媒を吐出するためのものである。
【0023】
(2-1-2)四路切換弁12
冷凍装置100が冷熱提供運転を実行するとき、四路切換弁12は、図1の実線で示した接続を確立する。これにより、冷熱提供運転において、冷媒は矢印Cの方向に循環する。
【0024】
一方、冷凍装置100が温熱提供運転を実行するとき、四路切換弁12は、図1の破線で示した接続を確立する。これにより、温熱提供運転において、冷媒は矢印Hの方向に循環する。
【0025】
(2-1-3)熱源熱交換器13
冷凍装置100が冷熱提供運転を実行するとき、熱源熱交換器13は、凝縮器又は放熱器として機能する。このとき、熱源熱交換器13は、高圧ガス冷媒を凝縮することによって、高圧液冷媒を生成する。その過程で、熱源熱交換器13は、熱源から冷熱を取得する。
【0026】
一方、冷凍装置100が温熱提供運転を実行するとき、熱源熱交換器13は、蒸発器又は吸熱器として機能する。このとき、熱源熱交換器13は、気液二相冷媒を蒸発することによって、低圧ガス冷媒を生成する。その過程で、熱源熱交換器13は、熱源から温熱を取得する。
【0027】
(2-1-4)熱源膨張弁15
熱源膨張弁15は、冷媒を減圧させる。さらに、熱源膨張弁15は、単位時間あたりに移動する冷媒の量を調節する。これらの目的のために、熱源膨張弁15は、調節可能な開度を有している。
【0028】
(2-1-5)液閉鎖弁17、ガス閉鎖弁18
液閉鎖弁17及びガス閉鎖弁18は、冷凍装置100の設置の際などに冷媒回路RCを遮断する。
【0029】
(2-1-6)熱源センサ群60
熱源センサ群60は、熱源ユニット10の各部における冷媒の状態その他を測定する。熱源センサ群60は、吸入センサ61、及び吐出センサ62を有する。吸入センサ61は、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力Psを測定する。吐出センサ62は、圧縮機11から吐出される冷媒の圧力Pdを測定する。
【0030】
(2-1-7)熱源制御部19
熱源制御部19は、熱源センサ群60からデータを取得するとともに、熱源ユニット10に搭載されている各種アクチュエータを制御する。さらに、熱源制御部19は、各種演算を実行する。
【0031】
(2-2)利用ユニット20
利用ユニット20は、冷熱又は温熱をユーザに提供するためのものである。利用ユニット20は、利用熱交換器23、利用膨張弁24、液ポート41、ガスポート42、利用センサ群50、及び、利用制御部29を有する。
【0032】
(2-2-1)利用熱交換器23
冷凍装置100が冷熱提供運転を実行するとき、利用熱交換器23は、蒸発器又は吸熱器として機能する。このとき、利用熱交換器23は、気液二相冷媒を蒸発することによって、低圧ガス冷媒を生成する。その過程で、利用熱交換器23は、対象Gに冷熱を提供する。
【0033】
冷凍装置100が温熱提供運転を実行するとき、利用熱交換器23は、凝縮器又は放熱器として機能する。このとき、利用熱交換器23は、高圧ガス冷媒を凝縮することによって、高圧液冷媒を生成する。その過程で、利用熱交換器23は、対象Gに温熱を提供する。
【0034】
利用熱交換器23は、第1熱交換器21、第2熱交換器22、及び、分流器25、を有する。
【0035】
第1熱交換器21は、温熱提供運転において、第2熱交換器22が凝縮させた冷媒に過冷却度を与えるためのものである。温熱提供運転において、第1熱交換器21は、分流器25から冷媒を受け取る。
【0036】
一方、冷熱提供運転において、第1熱交換器21は、利用膨張弁24から冷媒を受け取る。第1熱交換器21には、冷媒排出管26が設けられている。冷媒排出管26は、冷熱提供運転において冷媒を排出するためのものである。冷媒排出管26は、分流器25に接続されている。
【0037】
第2熱交換器22は、温熱提供運転において冷媒を凝縮させるための主たる熱交換器である。温熱提供運転において、第2熱交換器22は、ガスポート42から流入する冷媒を受け取る。
【0038】
一方、冷熱提供運転において、第2熱交換器22は、第1熱交換器21から冷媒を受け取る。第2熱交換器22に設けられている複数の冷媒受取管27は、それぞれ、分流器25の複数の流出ポート25bのいずれかに接続されている。冷媒受取管27は、冷熱提供運転において冷媒を受け取るためのものである。
【0039】
分流器25は、冷熱提供運転において、第1熱交換器21が蒸発させた冷媒を分流させることによって、第2熱交換器22において行われる冷媒のさらなる蒸発を促進するためのものである。分流器25は、第1熱交換器21と第2熱交換器22の間に設けられる。分流器25は、流入ポート25a及び複数の流出ポート25bを有している。流入ポート25aは、冷熱提供運転において、第1熱交換器21の冷媒排出管26から冷媒を受け取る。複数の流出ポート25bは、第2熱交換器22の複数の冷媒受取管27へ冷媒を受け渡す。
【0040】
(2-2-2)利用膨張弁24
利用膨張弁24は、冷媒を減圧させる。さらに、利用膨張弁24は、単位時間あたりに移動する冷媒の量を調節する。これらの目的のために、利用膨張弁24は、調節可能な開度を有している。
【0041】
(2-2-3)液ポート41、ガスポート42
液ポート41及びガスポート42は、利用ユニット20における冷媒の出入口である。液ポート41は、主に液冷媒又は気液二相冷媒を熱源ユニット10と授受する。ガスポート42は、主にガス冷媒を熱源ユニット10と授受する。
【0042】
(2-2-4)利用センサ群50
利用センサ群50は、利用ユニット20の各部における冷媒の状態その他を測定する。利用センサ群50は、第1センサ51から第5センサ55を有する。
【0043】
第1センサ51は、第2熱交換器22を流れる冷媒の温度Tuを測定するためのものである。第1センサ51は、複数の冷媒受取管27のいずれかに設けられる。冷熱提供運転において、第1センサ51が測定した冷媒の温度Tuは、冷媒の蒸発温度Teとして用いられることがある。
【0044】
第2センサ52は、第2熱交換器22以外を流れる冷媒の状態を測定するためのものである。本実施形態においては、第2センサ52は、利用膨張弁24と第1熱交換器21の間の区間の冷媒の温度Tbを測定する。冷熱提供運転において、第2センサ52が測定した冷媒の温度Tbもまた、冷媒の蒸発温度Teとして用いられることがある。
【0045】
第3センサ53は、対象Gの温度である対象温度Tgを測定するためのものである。
【0046】
第4センサ54は、冷熱提供運転において、第2熱交換器22から排出される冷媒の温度Tlを測定するためのものである。
【0047】
第5センサ55は、利用ユニット20に吸い込まれる空気の温度である吸込温度Tiを測定するためのものである。第5センサ55は、冷凍装置100が例えば空気調和装置である場合に設けられる。
【0048】
(2-2-5)利用制御部29
利用制御部29は、利用センサ群50からデータを取得するとともに、利用ユニット20に搭載されている各種アクチュエータを制御する。利用制御部29はまた、各種演算を実行する。さらに、利用制御部29は、通信線39を介して熱源制御部19とデータを授受することによって、熱源制御部19と協働して冷凍装置制御部9を構成する。
【0049】
(2-3)連絡配管30
連絡配管30は、熱源ユニット10と利用ユニット20とを接続する。連絡配管30は、液連絡配管31、及び、ガス連絡配管32を有する。液連絡配管31は、主に液冷媒又は気液二相冷媒を移動させる。ガス連絡配管32は、主にガス冷媒を移動させる。液連絡配管31は、液閉鎖弁17と液ポート41とを接続する。ガス連絡配管32は、ガス閉鎖弁18とガスポート42とを接続する。
【0050】
(3)全体動作
以下に、様々な運転における冷凍装置100の動作を説明する。
【0051】
(3-1)温度調節運転
温度調節運転は、ユーザに冷熱又は温熱を提供することを目的として、対象Gの温度を調節する運転である。前述した通り、温度調節運転は、冷熱提供運転、及び、温熱提供運転を含む。
【0052】
(3-1-1)冷熱提供運転
冷熱提供運転において、冷凍装置100は、ユーザに冷熱を提供する。
【0053】
四路切換弁12は、図1の実線で示した接続を確立する。圧縮機11は、吸入口11aから吸入された低圧ガス冷媒を圧縮することによって、高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機11は、高圧ガス冷媒を吐出口11bから吐出する。その後、高圧ガス冷媒は、四路切換弁12を経由して、熱源熱交換器13に到達する。熱源熱交換器13は、高圧ガス冷媒を凝縮することによって、高圧液冷媒を生成する。高圧液冷媒は、熱源膨張弁15へ到達する。熱源膨張弁15は、高圧液冷媒を減圧することによって気液二相冷媒を生成する。気液二相冷媒は、液閉鎖弁17、及び液連絡配管31、及び液ポート41を順に経由して、利用膨張弁24へ到達する。
【0054】
利用膨張弁24は、気液二相冷媒をさらに減圧する。その後、気液二相冷媒は、利用熱交換器23へ到達する。
【0055】
利用熱交換器23は、対象Gに冷熱を提供するために、気液二相冷媒を蒸発させて、低圧ガス冷媒を生成する。具体的には、第1熱交換器21が気液二相冷媒を蒸発させることによって、気液二相冷媒の湿り度を低下させる。気液二相冷媒は、その後、分流器25によって第2熱交換器22の複数の部位へ供給される。第2熱交換器22は気液二相冷媒をさらに蒸発させ、湿り度をさらに低下させることによって、低圧ガス冷媒を生成する。
【0056】
低圧ガス冷媒は、ガスポート42、ガス連絡配管32、ガス閉鎖弁18、及び四路切換弁12を順に経由して、吸入口11aにおいて圧縮機11に吸入される。
【0057】
(3-1-2)温熱提供運転
温熱提供運転において、冷凍装置100は、ユーザに温熱を提供する。
【0058】
四路切換弁12は、図1の破線で示した接続を確立する。圧縮機11は、吸入口11aから吸入された低圧ガス冷媒を圧縮することによって、高圧ガス冷媒を生成する。圧縮機11は、高圧ガス冷媒を吐出口11bから吐出する。その後、高圧ガス冷媒は、四路切換弁12、ガス閉鎖弁18、ガス連絡配管32、及びガスポート42を順に経由して、利用熱交換器23に到達する。
【0059】
利用熱交換器23は、対象Gに温熱を提供するために、高圧ガス冷媒を凝縮することによって、高圧液冷媒を生成する。具体的には、第2熱交換器22が高圧ガス冷媒を凝縮させることによって、高圧液冷媒を生成する。高圧液冷媒は、その後、分流器25を経由して第1熱交換器21へ到達する。第1熱交換器21は、高圧液冷媒をさらに冷却することによって、高圧液冷媒に過冷却度を与える。その後、高圧液冷媒は、利用膨張弁24へ到達する。
【0060】
利用膨張弁24は、高圧液冷媒を減圧することによって、気液二相冷媒を生成する。その後、気液二相冷媒は、液ポート41、液連絡配管31、及び液閉鎖弁17を順に経由して、熱源膨張弁15へ到達する。
【0061】
熱源膨張弁15は、気液二相冷媒をさらに減圧される。その後、気液二相冷媒は、熱源熱交換器13へ到達する。熱源熱交換器13は、気液二相冷媒を蒸発させて、低圧ガス冷媒を生成する。低圧ガス冷媒は、四路切換弁12を経由して、吸入口11aにおいて圧縮機11に吸入される。
【0062】
(3-2)利用ユニットデフロスト運転
利用ユニットデフロスト運転は、冷熱提供運転において利用熱交換器23の第1熱交換器21及び第2熱交換器22に付着した霜を溶かすことを目的とする運転である。
【0063】
利用ユニットデフロスト運転において、四路切換弁12は、温熱提供運転と同様に、図2の破線で示した接続を確立する。これにより、冷媒は矢印Hの方向に循環する。
【0064】
利用ユニットデフロスト運転における冷凍装置100の動作は、温熱提供運転と同様である。利用熱交換器23は、凝縮器又は放熱器として機能する。このとき、利用熱交換器23を流れる高圧ガス冷媒が凝縮されて高圧液冷媒になる過程で、熱を放出する。これにより、利用熱交換器23の温度が上昇するので、第1熱交換器21及び第2熱交換器22に付着した霜が溶ける。
【0065】
(4)冷凍装置制御部9による制御内容
(4-1)温度調節運転の制御
図2図4は、冷凍装置制御部9による冷熱提供運転の制御手順を示すフローチャートである。このうち図2は、メインルーチンを示す。温度調節運転の1つである冷熱提供運転の中には、プルダウン運転と呼ばれるものがある。プルダウン運転は、対象温度Tgが比較的高い状態において、対象温度Tgを大きく下げることを目的として行われる運転のことである。プルダウン運転が行われる状況の一例としては、長らく通電されていなかった冷凍装置100の起動直後が挙げられる。他の例としては、冷凍装置100が一定時間の温熱提供運転を実行したことによって比較的高い対象温度Tgが実現されている状況が挙げられる。対象温度Tgが一定程度低下してきたら、冷凍装置100の運転は、プルダウン運転から通常運転に切り替えられる。
【0066】
ステップS200において、冷凍装置100が起動され、冷熱提供運転が開始される。
【0067】
ステップS201において、冷凍装置制御部9は、第3センサ53を用いて対象温度Tgを測定する。
【0068】
ステップS202において、冷凍装置制御部9は、対象温度Tgと温度閾値Ttを比較する。対象温度がTtと同じかそれより高い場合(S202:Yes)には、処理はステップS203へ進む。対象温度がTtより低い場合(S202:No)には、処理はステップS204へ進む。
【0069】
ステップS203において、冷凍装置制御部9はプルダウン運転を開始する。プルダウン運転を終了したら、処理はステップS205へ進む。
【0070】
ステップS204において、冷凍装置制御部9は通常運転を開始する。通常運転を終了したら、処理はステップS205へ進む。
【0071】
ステップS205において、運転終了条件が満足されているかが判定される。運転終了条件が満足されているとき(S205:Yes)は、処理はステップS206へ進む。運転終了条件が満足されていないとき(S205:No)、処理はステップS201へ進む。
【0072】
ステップS206において、冷凍装置100は停止する。
【0073】
図3は、プルダウン運転の制御手順を示す。プルダウン運転においては、対象温度Tgを大きく低下させることが求められる。このため、冷凍装置100は、大量の冷媒を循環させる必要がある。プルダウン運転において、処理はステップS203からステップS300へ進む。
【0074】
ステップS301において、冷凍装置制御部9は、第2センサ52が検知した温度Tbを冷媒の蒸発温度Teとして取得する。このとき、第1センサ51は、蒸発温度Teの取得のためには用いられない。
【0075】
ステップS302において、冷凍装置制御部9は、蒸発温度Teに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御する。
【0076】
ステップS303において、運転終了条件が満足されているかが判定される。運転終了条件が満足されているとき(S303:Yes)は、処理はステップS304へ進む。運転終了条件が満足されていないとき(S303:No)は、処理はステップS301へ進む。
【0077】
図4は、通常運転の制御手順を示す。処理はステップS204からステップS400へ進む。
【0078】
ステップS401において、冷凍装置制御部9は、第1センサ51が検知した温度Tuを冷媒の蒸発温度Teとして取得する。このとき、第2センサ52は、蒸発温度Teの取得のためには用いられない。
【0079】
ステップS402において、冷凍装置制御部9は、蒸発温度Teに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御する。
【0080】
ステップS403において、運転終了条件が満足されているかが判定される。運転終了条件が満足されているとき(S403:Yes)は、処理はステップS404へ進む。運転終了条件が満足されていないとき(S403:No)は、処理はステップS401へ進む。
【0081】
(4-2)利用ユニットデフロスト運転の制御
冷熱提供運転において、冷凍装置制御部9は、利用熱交換器23の状態を判定して利用ユニットデフロスト運転を開始するか否かを決定する。
【0082】
図5は、利用ユニットデフロスト運転の要否判定の手順を示す。ステップS500にて要否判定が開始される。
【0083】
ステップS501において、蒸発温度Teが取得される。蒸発温度Teとしては、ステップS202~ステップS204のやり方と同様に、第1センサ51が検知した温度Tuと、第2センサ52が検知した温度Tuのうち、最適なものが採用される。
【0084】
ステップS502において、第5センサ55を用いて吸込温度Tiが測定される。
【0085】
ステップS503において、蒸発温度Teと吸込温度Tiに基づいて、利用熱交換器23のフィン温度Tfが算出される。
【0086】
ステップS504において、フィン温度Tfに基づいて、利用ユニットデフロスト運転を実行すべきか又は実行すべきでないかが判定される。
【0087】
ステップS505において、要否判定が終了する。
【0088】
(5)特徴
(5-1)
冷凍装置制御部9は、プルダウン制御において、第1センサ51の出力である温度Tuに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御する。また、冷凍装置制御部9は、通常制御において、第2センサ52の出力である温度Tbに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御する。そして、冷凍装置制御部9は、プルダウン制御と通常制御を選択的に実行することができる。したがって、第1熱交換器21と第2熱交換器22を含む利用熱交換器23において、蒸発温度Teの検知の誤差による動作不良を低減できる。
【0089】
(5-2)
温度制御の対象Gの対象温度Tgに基づいて、第1センサ51及び第2センサ52が切り替えられる。したがって、例えば、低負荷運転の時に第1センサ51を、高負荷運転の時に第2センサ52を使用することによって、蒸発温度Teの検知誤差を低減できる。
【0090】
(5-3)
第2センサ52は冷熱提供運転における利用膨張弁24の下流の温度センサである。したがって、温度制御の対象Gの対象温度Tgが高い場合、利用熱交換器23の入口において冷媒が過剰に蒸発することに起因して第1センサ51が蒸発温度Teを実際よりも高いものとして検知する可能性がある場合に、気液2相冷媒が通過している区間に設けられる第2センサ52を用いることによって、対象Gの高温の影響を低減できる。
【0091】
(5-4)
第1センサ51は、分流器25の流出ポート25bに接続される第2熱交換器22の冷媒受取管27に設けられる。この冷媒受取管27は、分流器25の性質上、第1熱交換器21の冷媒排出管26よりも細い径を有する。そして、冷媒受取管27を通過する冷媒は圧力損失を受けて減圧されやすい。したがって、第1センサ51は蒸発温度Teとして最適な値を取得しやすい。
【0092】
(6)変形例
(6-1)第1実施形態の第1変形例1A
第1実施形態の基本形のステップS302及びステップS402では、冷凍装置制御部9は、冷熱提供運転において、蒸発温度Teに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御する。これに代えて、冷凍装置制御部9は、冷熱提供運転において利用膨張弁24及び熱源膨張弁15を制御するに際し、蒸発温度Teのみならず、第2熱交換器22から排出される蒸発した冷媒の過熱度SHを参照してもよい。かかる過熱度SHは、第4センサ54によって測定できる。
【0093】
このように、第4センサ54を第1センサ51又は第2センサ52と併用することにより、過熱度SHに基づいて利用膨張弁24及び熱源膨張弁15の制御を行うことができる。
【0094】
(6-2)第1実施形態の第2変形例1B
第1実施形態の基本形において、第1センサ51は複数の冷媒受取管27のいずれかに設けられる。これに代えて、第1センサ51は、第2熱交換器22の本体の中に設けられてもよい。本体とは、例えばフィンと伝熱管によって構成される部位である。
【0095】
この構成によっても、第1センサ51は利用熱交換器23における冷媒の蒸発温度Teを取得することができる。
【0096】
<第2実施形態>
(1)構成
図6は、第2実施形態の基本形に係る冷凍装置101を示す。冷凍装置101は、第1実施形態の基本形の冷凍装置100に搭載される熱源センサ群60及び利用センサ群50に代えて、冷凍装置センサ群70を有する点において、冷凍装置100とは異なっている。
【0097】
冷凍装置センサ群70は、熱源ユニット10、利用ユニット20、及び連絡配管30のいずれかに設置された複数のセンサを含み、具体的には、熱源ユニット10に設置された第2センサ52及び吐出センサ62と、利用ユニット20に設置された第1センサ51、第3センサ53、及び第4センサ54を含む。
【0098】
第2センサ52は、第2熱交換器22以外を流れる冷媒の状態を測定するためのものである。本実施形態においては、第2センサ52は、圧縮機11に吸入される冷媒の圧力Psを測定するものであり、第1実施形態における吸入センサ61と同じ機能を有している。
【0099】
それ以外のセンサは、第1実施形態のものと同じである。
【0100】
(2)冷凍装置制御部9による制御内容
冷凍装置制御部9による制御内容は、第1実施形態と同様である。
【0101】
プルダウン運転時において、蒸発温度Teは第1実施形態と同様に、ステップS301で第2センサ52を用いて取得される。第2実施形態において第2センサ52が測定する物理量は冷媒の圧力Psである。したがって、冷凍装置制御部9は圧力Psを測定した後、それを温度の値に換算することによって、蒸発温度Teを取得する。
【0102】
(3)特徴
第2センサ52は、熱源ユニット10にある圧縮機11の吸入部の圧力センサである。したがって、液連絡配管31において気液二相冷媒が圧力損失を受けることに起因して第1センサ51が蒸発温度Teを実際よりも低いものとして検知する可能性がある場合に、熱源ユニット10に搭載される第2センサ52を使用することによって圧力損失の影響を除去できる。
【0103】
(4)変形例
第1実施形態の各変形例を、第2実施形態に適用してもよい。
【0104】
<むすび>
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0105】
9 :冷凍装置制御部(制御部)
10 :熱源ユニット
11 :圧縮機
13 :熱源熱交換器
15 :熱源膨張弁(膨張弁)
19 :熱源制御部
20 :利用ユニット
21 :第1熱交換器
22 :第2熱交換器
23 :利用熱交換器
24 :利用膨張弁(膨張弁)
25 :分流器
25a :流入ポート
25b :流出ポート
26 :冷媒排出管
27 :冷媒受取管
29 :利用制御部
30 :連絡配管
50 :利用センサ群
51 :第1センサ
52 :第2センサ
53 :第3センサ
54 :第4センサ
55 :第5センサ
60 :熱源センサ群
61 :吸入センサ
62 :吐出センサ
70 :冷凍装置センサ群
100、101:冷凍装置
G :対象
Pd :吐出冷媒の圧力(圧力)
Ps :吸入冷媒の圧力(圧力)
RC :冷媒回路
SH :過熱度
Tb、Tl、Tu:冷媒の温度(温度)
Te :蒸発温度
Tf :フィン温度
Tg :対象温度(温度)
Ti :吸込温度
Tt :温度閾値
【先行技術文献】
【特許文献】
【0106】
【文献】特開2001-221520号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6