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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】材料塗布装置及び押圧部材
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240807BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240807BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/00
B05C11/10
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021566879
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041050
(87)【国際公開番号】W WO2021131327
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2019232748
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】内野 良平
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-090264(JP,A)
【文献】特開平11-235546(JP,A)
【文献】特開2003-053587(JP,A)
【文献】特開2007-090345(JP,A)
【文献】特開2017-104821(JP,A)
【文献】特開2007-222768(JP,A)
【文献】特開2014-163372(JP,A)
【文献】特開平10-209632(JP,A)
【文献】特開2012-060725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
B05C 7/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャに当接し前記プランジャを押圧することによって貯留容器の内部に充填された材料を前記貯留容器から吐出可能な押圧部と、
前記押圧部を前記プランジャに向けて移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、モーターによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第1駆動部と、外部と隔離された内部空間に流体を供給することによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第2駆動部と、を備え
前記押圧部は、前記プランジャと当接可能な押圧部材と、前記貯留容器において材料を収容する充填部と前記プランジャとの間をシールするシール部材と、前記押圧部材とともに前記シール部材を挟持し前記シール部材を挟持することで前記シール部材を径方向における外方に変形可能な挟持部材と、を備え、
前記押圧部材は前記プランジャと篏合可能に構成され、中央に穴部を備える材料塗布装置。
【請求項2】
前記第1駆動部は、前記モーターの回転を受けて回転する長尺状のボールねじと、前記ボールねじと螺合し前記ボールねじの回転によって前記ボールねじの長手方向に移動可能なナットと、前記押圧部と連結され前記ナットとともに前記長手方向に移動することで前記押圧部を移動可能なスプライン部材と、を備える請求項1に記載の材料塗布装置。
【請求項3】
プランジャに当接し前記プランジャを押圧することによって貯留容器の内部に充填された材料を前記貯留容器から吐出可能な押圧部と、
前記押圧部を前記プランジャに向けて移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、モーターによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第1駆動部と、外部と隔離された内部空間に流体を供給することによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第2駆動部と、を備える材料塗布装置であり、
前記第1駆動部は、前記モーターの回転を受けて回転する長尺状のボールねじと、前記ボールねじと螺合し前記ボールねじの回転によって前記ボールねじの長手方向に移動可能なナットと、前記押圧部と連結され前記ナットとともに前記長手方向に移動することで前記押圧部を移動可能なスプライン部材と、を備え、
前記第2駆動部は、前記ボールねじを回転かつ挿通可能であって外部から内部に通じる穴部を備える中空のケース部材と、前記ケース部材に隣接して配置され、前記ケース部材と接続可能な中空のチューブと、前記ナットに接続可能であって前記ケース部材と前記チューブとを接続した状態の前記内部空間に収容され、前記ボールねじの回転によって前記ナット及び前記スプライン部材とともに前記長手方向に移動可能なピストンと、を備え、
前記第2駆動部は、前記穴部から前記内部空間に流体が流通することによって、前記ピストンを前記長手方向に移動させるように前記ボールねじを回転させ
前記押圧部は、前記プランジャと当接可能な押圧部材と、前記貯留容器において材料を収容する充填部と前記プランジャとの間をシールするシール部材と、前記押圧部材とともに前記シール部材を挟持し前記シール部材を挟持することで前記シール部材を径方向における外方に変形可能な挟持部材と、を備え、
前記押圧部材は前記プランジャと篏合可能に構成され、中央に穴部を備える材料塗布装置。
【請求項4】
前記押圧部及び前記駆動部は、材料を塗布するワークに対して相対的に移動可能な機械に搭載される請求項1~3のいずれか1項に記載の材料塗布装置。
【請求項5】
プランジャに当接し前記プランジャを押圧することによって貯留容器の内部に充填された材料を前記貯留容器から吐出可能な押圧部と、
前記押圧部を前記プランジャに向けて移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有し、
前記駆動部は、モーターによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第1駆動部と、外部と隔離された内部空間に流体を供給することによって前記押圧部に駆動力を付与可能な第2駆動部と、を備える材料塗布装置であり、
前記押圧部は、前記プランジャと当接可能な押圧部材と、前記貯留容器において材料を収容する充填部と前記プランジャとの間をシールするシール部材と、前記押圧部材とともに前記シール部材を挟持し前記シール部材を挟持することで前記シール部材を径方向における外方に変形可能な挟持部材と、を備え、
前記押圧部材は前記プランジャと篏合可能に構成され、中央に穴部を備える材料塗布装置に含まれる押圧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料塗布装置及び押出部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカートリッジ等の貯留容器に外力を作用させて貯留容器に充填された接着剤を吐出させる技術がある。このような技術に関連する従来の装置において接着剤はモーターやボールねじ等を用いることによってシリンジ等の貯留容器内の被吐出材料を押し出すピストンシャフトを回転駆動させ、接着剤を貯留容器内部から外部に押し出している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-5657号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明者は、特許文献1のような材料塗布装置の重量が比較的重くなることから、卓上ロボットに搭載して利用すること等が難しくなる点に着目し、鋭意検討を行っている。
【0005】
そこで本発明は、材料塗布装置の重量を抑制することを目的とする。
【0006】
上記課題を解決する本発明の一態様は材料塗布装置である。当該材料塗布装置は、押圧部と、駆動部と、を有する。押圧部はプランジャに当接し、プランジャを押圧することによって貯留容器の内部に充填された材料を貯留容器から吐出可能に構成している。駆動部は、押圧部をプランジャに向けて移動させる駆動力を付与し、第1駆動部と第2駆動部とを備える。第1駆動部はモーターによって押圧部に駆動力を付与可能に構成している。第2駆動部は、外部と隔離された内部空間に流体を供給することによって押圧部に駆動力を付与可能に構成している。また、本発明の一態様は上記材料塗布装置に含まれる押圧部材である。押圧部は押圧部材とシール部材と挟持部材とを備える。シール部材は貯留容器において材料を収容する充填部とプランジャとの間をシールする。挟持部材は押圧部材とともにシール部材を挟持しシール部材を挟持することでシール部材を径方向における外方に変形可能に構成している。押圧部材はプランジャと当接可能でありプランジャと篏合可能
に構成され、中央に穴部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る材料塗布装置を示す斜視図である。
図2図1の正面図(又は側面図)である。
図3図1の平面図である。
図4図1のディスペンサの長手方向に沿う断面図である。
図5】ディスペンサを構成するスプライン部材を示す斜視図である。
図6図4において材料塗布装置を構成するベアリングケース付近の拡大図である。
図7図4において材料塗布装置を構成する押し子付近の拡大図である。
図8図4の変形例に係る材料塗布装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。なお、以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0009】
なお、以下では図面を用いた説明にあたり、図面に直交座標系と円筒座標系とを図示する。直交座標系のXは後述する載置部が移動する方向であり、便宜上、奥行方向Xと称する。Yは移動部80を構成する第2移動部82の移動方向であり、幅方向Yと称する。Zは、装置の高さ方向にあたり、高さ方向Zと称する。円筒座標系のrは、略円筒形状のボールねじ44やピストン46の径方向又は放射方向に相当し、径方向rと称する。θはボールねじ44の回転方向又は角度方向に相当し、回転方向θと称する。
【0010】
図1図7は本発明の一実施形態に係る材料塗布装置100の説明に供する図である。本実施形態に係る材料塗布装置100は、例えばシール剤、接着剤等として湿気硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、加熱硬化性樹脂等の材料を供給する際に使用される。
【0011】
シール剤、接着剤の粘度の範囲は、20~1000Pa・sが好ましく、より好ましくは50~500Pa・sであり、特に好ましくは75~350Pa・sの範囲である。また、シール剤、接着剤のチクソ比は、1.0~5の範囲が好ましく、さらに好ましくは1.5~5の範囲であり、特に好ましくは1.7~3の範囲である。
【0012】
なお、チクソ比とは、湿気硬化性樹脂の流れ易さを表す特性値であり、レオメーターを用いてせん断速度が1(1/s)の時の粘度をせん断速度が10(1/s)の時の粘度で除した比率で定義される。
【0013】
材料塗布装置100は、図1、2等を参照して概説すれば、貯留容器90から材料を吐出するディスペンサ10と、貯留容器90を設置する設置部70と、ディスペンサ10とワークとの相対的な位置を調整する移動部80と、を有する。材料塗布装置100は、貯留容器90を取り付けて使用することによって貯留容器90内に充填された材料を外部に吐出するように構成している。以下、詳述する。
【0014】
(貯留容器)
まず、貯留容器90について説明する。貯留容器90は、ワークに塗布する材料を貯留するものであって本実施形態では一例としてカートリッジを採用している。ただし、材料を貯留(収容)できれば上記に限定されず、カートリッジ以外にも例えばシリンジを採用することもできる。貯留容器90は、図4等に示すように充填部91と、吐出部92と、プランジャ93と、を備える。
【0015】
貯留容器90は、本実施形態において一例として略円柱形状に形成している。ただし、材料を収容し、外部に吐出できれば、具体的な形状は円柱に限定されず、六面体等の多面体で形成してもよい。充填部91は、中空の円柱形状の内部空間を備えるように構成し、当該内部空間に材料を収容(充填)するように構成している。
【0016】
吐出部92は、一例として円柱形状の底面にあたる部位を略円錐形状に形成し、円錐形状の先端に穴を設けて構成している。ただし、充填部91に充填された材料を吐出できれば、上記に限定されず、円錐形状の代わりに六面体等の多面体の底面に穴を設ける等によって構成してもよい。また、吐出部92には材料の吐出の有無を切り替えるニードルバルブなどの開閉弁を取り付けてもよい。
【0017】
プランジャ93は、円柱形状の長手方向において吐出部92と反対側に配置している。充填部91は、内部空間に材料を収容できるように円柱形状の底面を少なくとも一部切り欠いて構成している。プランジャ93は、円柱形状において上記のように底面の少なくとも一部を切り欠いた部位に移動可能に配置している。また、プランジャ93は、充填部91の内側面に合わせて円柱形状に形成し、外側面にOリングなどのシール部材を設置している。これにより、充填部91に材料を収容した状態でプランジャ93が吐出部92に向かって移動すれば、充填部91に充填された材料は吐出部92に集められ、吐出部92から外部に吐出される。
【0018】
(ディスペンサ)
ディスペンサ10は、図4に示すように押圧部20と、駆動部30と、を備える。
【0019】
(押圧部)
押圧部20は、貯留容器90を構成するプランジャ93に当接し、プランジャ93を押圧することによって充填部91に充填された材料を貯留容器90の吐出部92から吐出可能に構成している。押圧部20は、図7に示すように押し子21(押圧部材に相当)と、シール部材22と、挟持部材23と、を備える。
【0020】
押し子21は、プランジャ93に当接可能に構成している。押し子21は、貯留容器90のプランジャ93の形状と同様に略円盤形状に構成している。ただし、プランジャ93を押圧できれば、具体的な形状は円盤形状に限定されない。例えば、上記以外にも六面体や直方体といった形状によって構成してもよい。押し子21は、図7に示すようにプランジャ93の凸形状と篏合する凹部を備えるように構成している。凹部の底面中央には穴部21aを設けている。
【0021】
シール部材22は、貯留容器90において材料を収容する充填部91とプランジャ93との間をシールするように構成している。シール部材22は、押し子21と挟持部材23とによって高さ方向Zに挟持され、潰れることが可能に構成している。押し子21と挟持部材23とを高さ方向Zに接近させることによって、シール部材22は高さ方向Zに圧縮され、径方向rに拡張して充填部91の内壁面に接触して、シール部位を形成可能になる。
【0022】
挟持部材23は、シール部材22に隣接して配置し、押し子21とともにシール部材22を挟持することによってシール部材22を径方向rの外方に変形するように構成している。挟持部材23は、押し子21と同様に略円盤形状に構成している。本実施形態においてシール部材22は、押し子21の外周に設けられた溝部に設置された状態で押し子21と挟持部材23によって挟持される。ただし、シール部材22が高さ方向Zに圧縮されることによってシール部位を形成できれば、溝部は挟持部材に形成してもよく、押し子と挟持部材の両方に形成してもよい。
【0023】
(駆動部)
駆動部30は、押圧部20をプランジャ93に向けて移動させる駆動力を付与するように構成している。駆動部30は、図4に示すように第1駆動部40と、第2駆動部60と、を備える。
【0024】
(第1駆動部)
第1駆動部40は、図4に示すようにモーター41と、カップリング42と、カップリングケース43と、ボールねじ44と、ナット45と、ピストン46と、ベアリングケース47(第1ケースに相当)と、ベアリング48と、リテーナ49と、を備える。第1駆動部40は、スプライン部材51と、スプライン受け部材52と、シリンダチューブ53(チューブに相当)と、ケース部材54と、を備える。
【0025】
モーター41は、ボールねじ44を回転させる駆動力を付与するように構成している。第1駆動部40は、モーター41によって押圧部20に駆動力を付与するように構成している。モーター41は、ボールねじ44に回転力を付与できれば特に限定されないが、一例としてリニアモーター、サーボモーター、ステッピングモーター等を挙げることができる。
【0026】
カップリング42は、中空の円筒形状が角度方向に分割されたような形状に構成し、内部空間にモーター41の軸とボールねじ44の軸を挿入可能に構成している。カップリング42は、モーター41とボールねじ44の軸を内部空間に挿入した状態においてねじなどで分割された円弧形状を締め付けることによってモーター41からの回転力をボールねじ44に伝達可能に構成している。カップリング42を用いることによってモーター41の軸とボールねじ44の軸ずれを吸収し得る。
【0027】
カップリングケース43は、カップリング42を収容するようにカップリング42の奥行方向X及び幅方向Yにおいてカップリング42を包囲する。
【0028】
ボールねじ44は、長尺状に構成し、ナット45と螺合するねじ形状を外側面に形成している。ボールねじ44は、カップリング42を介してモーター41の回転を受けて回転することによってナット45を高さ方向Zに移動できるように構成している。
【0029】
ナット45は、ボールねじ44の外側面に螺合して取り付けられ、ボールねじ44の回転によってボールねじ44の長手方向に相当する高さ方向Zに移動可能に構成している。
【0030】
ピストン46は、図6に示すようにナット45に対して高さ方向Zにおいて隣接して配置され、ボルト等によってナット45に接続されるように構成している。ピストン46は、ベアリングケース47とシリンダチューブ53を接続した状態で形成される内部空間Sに収容され、ボールねじ44の回転によってナット45及びスプライン部材51とともに高さ方向Zに移動可能に構成している。ピストン46は第2駆動部60をも構成する。
【0031】
ベアリングケース47は、ボールねじ44を回転かつ挿通可能であって外部から内部空間Sに通じる穴部63を備える。ベアリングケース47は後述するように第2駆動部60をも構成する。ベアリングケース47は、ベアリング48を設置可能な中空形状に構成している。
【0032】
ベアリング48は、ベアリングケース47の内部空間に設置され、ボールねじ44を回転可能かつ挿通可能に構成している。リテーナ49は、ベアリングケース47においてベアリング48を保持するようにベアリング48に対して高さ方向Z(軸方向)に隣接して配置している。
【0033】
スプライン部材51は、栓部材64を介して押圧部20と連結するように構成している。スプライン部材51は、図5に示すように外側面に凹状の溝51aを形成しており、ボールねじ44の回転に合わせてナット45及びピストン46とともに高さ方向Zに移動することで押圧部20を移動可能に構成している。
【0034】
スプライン受け部材52は、スプライン部材51を挿通可能な穴部を備えており、固定して設置されている。スプライン受け部材52はナットとも呼ばれ、スプライン部材51の溝51aと係合し径方向rの内方に突出する凸部を備えるように構成している。
【0035】
シリンダチューブ53は、ベアリングケース47に隣接して配置され、ベアリングケース47と接続可能な中空形状を備えるように構成している。シリンダチューブ53は、ボールねじ44及びスプライン部材51の径方向rにおける外方に配置している。シリンダチューブ53の内部空間にはボールねじ44やスプライン部材51を動作可能に収容するように構成している。ケース部材54は、スプライン受け部材52を固定して設置する部材として構成している。シリンダチューブ53及びスプライン部材51は第2駆動部60をも構成する。
【0036】
(第2駆動部)
第2駆動部60は、外部と隔離された内部空間Sに流体を供給することによって押圧部20に駆動力を付与可能に構成している。第2駆動部60は、図6、7に示すようにパッキンケース61と、パッキン62と、穴部63と、栓部材64と、を備える。なお、本発明において流体とはエアー、液体等が挙げられるが、中でも装置の軽量化を実現できることからエアーが好ましい。
【0037】
パッキンケース61は、高さ方向Zにおいてカップリングケース43と、ベアリングケース47の間に配置している。パッキンケース61は、パッキン62と、リテーナ49を設置する中空空間を設けるように構成している。なお、パッキンケース61はカップリングケース43及びベアリングケース47と一体として構成してもよい。パッキンケース61、カップリングケース43及びベアリングケース47は別々に構成する場合も一体に構成する場合も本明細書ではケース部材と呼ぶことができる。ケース部材は図6等に示すように外部から流体を導入する穴部63を備え、流体圧により押圧部20を動作させる内部空間Sを備える。すなわち、第2駆動部60はベアリングケース47等のケース部材、シリンダチューブ53、及びスプライン部材51をも構成要素として含む。前記流体圧は、特に制限されないが、0.01~0.8MPaの範囲が好ましい。
【0038】
穴部63は、配管等を介して材料塗布装置100とは別に設置されたコンプレッサなどの供給源からエアー等の流体を装置内に流入可能に構成している。第2駆動部60は穴部63から内部空間Sに流体が流通することによってピストン46を高さ方向Zに移動させるようにボールねじ44を回転させる。穴部63は、本実施形態においてベアリングケース47に設けているが、流体の供給によってナット45、ピストン46及びスプライン部材51を高さ方向Zに移動できれば、流路を設ける部位はベアリングケースでなくてもよい。
【0039】
栓部材64は、スプライン部材51の内部空間における高さ方向Zの端部に設けられる。穴部63から流入した流体は、図6に示すようにベアリングケース47とシリンダチューブ53の接続部における内部空間Sに充填される。ベアリングケース47とシリンダチューブ53の接続部における内部空間Sにはナット45やピストン46が配置されうる。内部空間Sに流体が充填されることによって、ナット45、ピストン46及びスプライン部材51は高さ方向Zに移動できるようにボールねじ44が回転する。
【0040】
穴部63から流入した流体は、上述した内部空間Sに加えて、ボールねじ44を伝ってスプライン部材51の内部空間にも充填される。栓部材64は、スプライン部材51の内部空間に充填された流体が外部に漏出し、これによりナット45、ピストン46及びスプライン部材51が高さ方向Zに移動できなくなることを防止するために設けられる。このように、栓部材64は、穴部63から流入した流体がスプライン部材51の内部空間から外部に漏出しないように構成している。
【0041】
また、栓部材64がスプライン部材51の端部に設けられることによって、スプライン部材51の高さ方向Zにおける移動に伴って押し子21は挟持部材23とともに高さ方向Zに移動する。栓部材64は、高さ方向Zにおけるスプライン部材51に取り付けられる側と反対側において挟持部材23と篏合等によって取り付けられる。これにより、スプライン部材51の高さ方向Zの移動は栓部材64を通じて挟持部材23及び押し子21に伝達される。
【0042】
(設置部)
設置部70は、図2に示すように載置部71と、保持部72と、レバー73と、を備える。載置部71は、貯留容器90を載置する部位であり、高さ方向Zにおいて貯留容器90の一部に相当する下端を載置するように構成している。保持部72は、レバー73の動作によって高さ方向Zにおいて上下に移動可能に構成している。保持部72と載置部71とによって貯留容器90を挟持して固定することができる。レバー73は、所定の部位を起点に回転可能に構成しており、これにより保持部72を上下に移動可能に構成している。
【0043】
(移動部)
移動部80は、材料を塗布するワークに対して押圧部20と駆動部30を相対的に移動可能な機械として構成している。移動部80は、図1に示すように第1移動部81と、第2移動部82と、第3移動部83と、操作部(図示省略)と、を備える。押圧部20及び駆動部30は、第1移動部81、第2移動部82、第3移動部83を含む移動部80に搭載されることによって直交座標系における奥行方向X、幅方向Y、及び高さ方向Zの3方向に移動可能に構成している。
【0044】
第1移動部81は、ワークを載置するステージと、ステージを奥行方向Xに移動させる不図示のモーターと、を備える。第2移動部82は、ディスペンサ10、設置部70、及び貯留容器90を幅方向Yに移動させる不図示のモーターを備える。第3移動部83は、ディスペンサ10、設置部70、及び貯留容器90を固定し、ディスペンサ10、設置部70、及び貯留容器90とともに高さ方向Zに移動する不図示のモーターを備える。これにより、載置台に設置されたワークは奥行方向Xに移動可能になり、第3移動部83に設置されたディスペンサ10が高さ方向Zに移動するとともにレールに沿って幅方向Yに移動可能になる。なお、ディスペンサ10とワークとの位置関係を調節できれば、第1移動部から第3移動部の具体的な設置態様は図1等に限定されない。すなわち、押圧部及び駆動部は図面に示す、いわゆる直交座標型のロボット(移動部)に搭載する以外にも、6軸垂直多関節型等のロボット(移動部)に搭載してもよい。
【0045】
操作部は使用者によって押圧可能な複数のボタンやレバーなどの組み合わせ、又はタッチパネル等によって使用者からの指示を受け付ける。
【0046】
(材料塗布方法)
次に本実施形態に係る材料塗布装置100を用いた材料塗布方法について説明する。まず、使用者は設置部70の載置部71に貯留容器90を設置してレバー73を動作させて保持部72を載置部71に接近させて載置部71と保持部72とによって貯留容器90を挟持した状態にする。
【0047】
次に、移動部80の第1移動部81にワークを載置させる。次に、操作部を操作してワークとディスペンサ10の位置関係を調整する。具体的には、第1移動部81を移動させて奥行方向Xにおけるディスペンサ10との位置を調整する。同様に第2移動部82と第3移動部83を移動させてディスペンサ10と第1移動部81との幅方向Y及び高さ方向Zにおける位置関係を調整する。
【0048】
次にコンプレッサ等を駆動させて、穴部63からエアー等の流体を流入させる。そして、モーター41を動作させる。穴部63から流入した流体により、ボールねじ44は回転してナット45、ピストン46及びスプライン部材51は高さ方向Zにおける下方に移動する。また、ボールねじ44はモーター41によっても回転し、上記と同様にナット45、ピストン46及びスプライン部材51を高さ方向Zに移動させる。エアー及びモーター41によって押圧部20は高さ方向Zにおける下方に移動してプランジャ93を下方に移動させる。これにより、吐出部92から材料が外部に吐出される。このように、穴部63からの流体の供給によってナット45、ピストン46及びスプライン部材51を移動させ、モーター41の動作を調整することでナット45、ピストン46及びスプライン部材51の移動速度を調整することができる。
【0049】
ディスペンサ10からの材料の供給量が規定量に達したら、操作部を操作して穴部63からの流体の供給を停止し、モーター41の回転を停止させる。これにより、吐出部92からの材料の吐出が中断又は終了する。
【0050】
以上説明したように本実施形態に係る材料塗布装置100は、押圧部20と、駆動部30と、を有する。押圧部20は、プランジャ93に当接し、プランジャ93を押圧することによって貯留容器90の内部に充填された材料を貯留容器90から吐出可能に構成している。駆動部30は、押圧部20をプランジャ93に向けて移動させる駆動力を付与するように構成している。駆動部30は、第1駆動部40と、第2駆動部60と、を備える。第1駆動部40は、モーター41によって押圧部20に駆動力を付与可能に構成している。第2駆動部60は、外部と隔離された内部空間Sに流体を供給することによって押圧部20に駆動力を付与可能に構成している。
【0051】
このように構成することによって、プランジャを押圧するために必要な推力を上述したモーターとボールねじ等だけで賄う必要がなくなり、装置全体の重量が重くなることを抑制することができる。なお、ここでいう重量とは穴部63に接続されるコンプレッサ等の重量を含めない重量を意味する。また、上記装置と異なり、貯留容器をエアー等の流体のみで加圧すると、気温が変わった場合に液剤の粘度が変わって吐出量が変わるおそれがある。また、プランジャを電動アクチュエータで押圧すると、電動アクチュエータが比較的大きくて重いことから、卓上ロボットに搭載して利用することが難しくなる。本実施形態に係る材料塗布装置100によれば、上記のようにエアーとモーター41を併用することによって温度変化があっても吐出量に影響を表れ難くできる。具体的には、エアーのみだと、40℃の吐出量は20℃の吐出量と比べて60%以上増加し、温度変化による吐出量への影響が大きいことがわかっている。一方で、エアーとモーターとを併用する場合、40℃の吐出量は20℃の吐出量と比べて変化量が5%未満であり、温度変化による吐出量の影響が少なく、安定しているとみることができる。また、エアーとモーターとを併用することによって装置全体が大型になることを抑制することも期待できる。なお、ここにいう装置の大型化とは一例として装置を平面視した際に装置が占めるスペースが比較的大きくなることを意味する。
【0052】
また、第1駆動部40はボールねじ44と、ナット45と、スプライン部材51と、を備える。ボールねじ44はモーター41の回転を受けて回転する。ナット45はボールねじ44と螺合し、ボールねじ44の回転によってボールねじ44の長手方向に相当する高さ方向Zに移動可能に構成している。スプライン部材51は、押圧部20と連結されナット45とともに高さ方向Zに移動可能に構成している。このように構成することによって、モーター41の回転によって押圧部20を駆動させることができる。
【0053】
また、第2駆動部60は、ベアリングケース47と、シリンダチューブ53と、ピストン46と、を備える。ベアリングケース47はボールねじ44を回転かつ挿通可能であって外部から内部に通じる穴部63を備える中空形状に形成している。シリンダチューブ53は、ベアリングケース47に隣接して配置され、ベアリングケース47と接続可能に構成している。ピストン46はナット45に接続可能であってベアリングケース47とシリンダチューブ53とを接続した状態の内部空間Sに収容される。ピストン46は、ボールねじ44の回転によってナット45及びスプライン部材51とともに高さ方向Zに移動可能に構成している。第2駆動部60は穴部63から内部空間Sに流体が流通することによってピストン46を高さ方向Zに移動させるようにボールねじ44を回転させる。このように構成することによって、外部から穴部63を通じて流通した流体によって押圧部20を駆動させることができる。
【0054】
また、押圧部20及び駆動部30を備えたディスペンサ10は、材料を塗布するワークに対して相対的に移動可能な機械として、第1移動部81、第2移動部82及び第3移動部83を備えた移動部80に搭載される。このように構成することによって、装置の重量を抑制しつつ、ディスペンサ10を搭載した移動部80を比較的小型な卓上ロボットなどとして利用できる。なお、本明細書において卓上ロボットとは、移動部80に別途ワークを設置する台を設ける必要のない機械装置等を意味する。
【0055】
また、押圧部20は、押し子21と、シール部材22と、挟持部材23と、を備える。押し子21はプランジャ93と当接可能に構成している。シール部材22は貯留容器90において材料を収容する充填部91とプランジャ93との間をシールする。挟持部材23は押し子21とともにシール部材22を挟持し、シール部材22を挟持することによってシール部材22を径方向rの外方に変形可能に構成している。押し子21はプランジャ93と篏合可能に構成され、中央に穴部21aを設けるように構成している。このように構成することによって、押し子21をプランジャ93と篏合させて、押し子21をプランジャ93から抜き取る際に負圧が生じて押し子21がプランジャ93から抜けなくなることを防止できる。
【0056】
なお、本発明は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。図8は変形例に係る材料塗布装置100aを示し、図4に対応する断面図である。上記ではモーター41がカップリング42を介してボールねじ44と接続され、モーター41はボールねじ44と並ぶように配置する実施形態について説明したが、材料塗布装置の重量を抑制できれば、これに限定されない。
【0057】
上記以外にも図8に示すようにモーター41の回転を、ギア対を構成するギア42a、42b等を介してボールねじ44に伝達してもよい。この場合、モーター41は、ボールねじ44の径方向rにおいてボールねじ44と隣接して配置される。また、ギア対を構成するギア42a、42bはギアケース43aに収容され、ギア42aはモーター41の回転軸と接続され、ギア42bはボールねじ44の回転軸と接続される。その他の構成は図4と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
このように構成することによってもモーターとボールねじを用い、エアー等を供給する機構を用いずに押し子を駆動させる場合と比べて装置全体の重量が重くなることを抑制できる。また、図8に示す変形例ではギア対を構成するギア42a、42bによってモーター41からの回転をボールねじに伝達したが、ギアの代わりにベルトを介してボールねじにモーターの回転(駆動力)を伝達してもよい。
【0059】
本出願は、2019年12月24日に出願された日本国特許出願2019-232748号に基づいており、その開示内容は全体として引用されている。
【符号の説明】
【0060】
100 材料塗布装置、
10 ディスペンサ、
20 押圧部、
21 押し子(押圧部材)、
22 シール部材、
23 挟持部材、
30 駆動部、
40 第1駆動部、
41 モーター、
44 ボールねじ、
45 ナット、
46 ピストン、
47 ベアリングケース(ケース部材)、
51 スプライン部材、
53 シリンダチューブ(チューブ)、
60 第2駆動部、
61 パッキンケース(ケース部材)、
80 移動部、
81 第1移動部、
82 第2移動部、
83 第3移動部、
90 貯留容器、
91 充填部、
93 プランジャ、
r 径方向、
S 内部空間、
X 奥行方向、
Y 幅方向、
Z 高さ方向(ボールねじの長手方向)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8