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特許7534678光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20240807BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20240807BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240807BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240807BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240807BHJP
【FI】
G02B7/04 E
G03B5/00 J
G03B30/00
H04N23/50
H04N23/57
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023013370
(22)【出願日】2023-01-31
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝本 征宏
(72)【発明者】
【氏名】荒内 正彦
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-220775(JP,A)
【文献】特開2006-058662(JP,A)
【文献】特開2016-180836(JP,A)
【文献】特開2015-232682(JP,A)
【文献】特開2021-175992(JP,A)
【文献】特開2019-028289(JP,A)
【文献】国際公開第2022/113510(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
G02B 7/02 -7/16
G03B 30/00
H04N 23/50
H04N 23/57
H04N 23/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子を保持可能な可動部を、前記可動部の径方向の外側を囲うよう配置された固定部に対して光軸方向に移動させる光学素子駆動装置であって、
前記固定部に設けられた凹部と、周方向に並んで前記可動部に設けられ、前記凹部の内部へ前記径方向に突出する一対の凸部と、を互いに当接させることにより前記周方向での前記可動部の回転規制をする回転規制部と、
前記可動部及び前記固定部に接触するよう前記一対の凸部の間で前記回転規制部に設けられたダンパ材と、
を有する光学素子駆動装置。
【請求項2】
前記一対の凸部の間の位置にて前記径方向で互いに対向して前記ダンパ材を挟む前記可動部の中間壁及び前記固定部の中間壁は、前記ダンパ材を保持するダンパ材受け部を有する、
請求項に記載の光学素子駆動装置。
【請求項3】
前記可動部の前記中間壁は、前記可動部の外周面よりも前記径方向の外側に張り出し、
前記光軸方向において前記可動部の前記中間壁から離間する位置で、前記固定部の前記中間壁から前記径方向の内側に延在する前記固定部の下壁は、前記可動部の前記中間壁の壁面よりも前記径方向の内側に張り出す、
請求項に記載の光学素子駆動装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光学素子駆動装置と、
前記光学素子と、
前記光学素子により結像される被写体像を撮像する撮像部と、を備える、
カメラモジュール。
【請求項5】
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
請求項に記載のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える、
カメラ搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スマートフォン等の携帯端末には、小型のカメラモジュールが搭載されている。このようなカメラモジュールには、光学素子を駆動する光学素子駆動装置が使用されている。
【0003】
光学素子駆動装置は、オートフォーカス機能(以下「AF機能」と称する、AF:Auto Focus)及び振れ補正機能(以下「OIS機能」と称する、OIS:Optical Image Stabilization)を有している。光学素子駆動装置は、AF機能により、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行い、OIS機能により、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して画像の乱れを軽減している。
【0004】
例えば特許文献1には、AF機能とOIS機能とを有する光学素子駆動装置が示されている。特許文献1に示される光学素子駆動装置は、レンズを保持可能なレンズホルダーと、コイル及び磁石を有し、レンズホルダーを光軸の方向(光軸方向)に移動させる第1駆動部と、レンズホルダーを光軸と交差する方向(光軸直交方向)に移動させる第2駆動部と、を有している。
【0005】
このような光学素子駆動装置において、板バネのような弾性部材により、AF可動部(引用文献1ではレンズホルダー)を、その外周を囲うAF固定部(引用文献1ではムービングベース)に対して光軸方向に移動可能に支持する構成が広く知られている。このような構成では、AF固定部には凹部を設け、AF可動部にはその凹部に挿入されるよう突出する凸部を設け、AF固定部(凹部)とAF可動部(凸部)とを互いに当接させることでAF可動部の光軸周り方向の回転を規制する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-180836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の光学素子駆動装置において、AF可動部の回転規制に上記のようにAF固定部とAF可動部とを当接させる構成を採る場合、当接時の衝撃により、望ましくない振動が生じてAF可動部の姿勢が不安定になり撮影画像の画質等に影響するおそれがある。そのため、当接時の衝撃抑制が望まれる。一方で、当接時の衝撃抑制のために装置を著しく複雑化させたり大型化させたりすることは望ましくない。
【0008】
本発明の目的は、装置の顕著な複雑化や大型化を伴うことなく、可動部の回転規制時に生じる衝撃を抑制することができる光学素子駆動装置、カメラモジュール及びカメラ搭載装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学素子駆動装置の一態様は、
光学素子を保持可能な可動部を、前記可動部の径方向の外側を囲うよう配置された固定部に対して光軸方向に移動させる光学素子駆動装置であって、
前記固定部に設けられた凹部と、周方向に並んで前記可動部に設けられ、前記凹部の内部へ前記径方向に突出する一対の凸部と、を互いに当接させることにより前記周方向での前記可動部の回転規制をする回転規制部と、
前記可動部及び前記固定部に接触するよう前記一対の凸部の間で前記回転規制部に設けられたダンパ材と、
を有する。
【0010】
本発明に係るカメラモジュールの一態様は、
上記の光学素子駆動装置と、
前記光学素子と、
前記光学素子により結像される被写体像を撮像する撮像部と、を備える。
【0011】
本発明に係るカメラ搭載装置の一態様は、
情報機器又は輸送機器であるカメラ搭載装置であって、
上記のカメラモジュールと、
前記カメラモジュールで得られた画像情報を処理する画像処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、装置の顕著な複雑化や大型化を伴うことなく、可動部の回転規制時に生じる衝撃を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1Aは、本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置の一例の正面図であり、図1Bは、同カメラ搭載装置の一例の背面図である。
図2図2Aは、本実施の形態に係るカメラモジュールを搭載するカメラ搭載装置の他の例の正面図であり、図2Bは、同カメラ搭載装置の他の例の斜視図である。
図3】本実施の形態に係るカメラモジュールの構成を模式的に示す斜視図である。
図4】本実施の形態に係るカメラモジュールの光学素子駆動装置の外観斜視図である。
図5】本実施の形態に係るカメラモジュールにおいてカバーを光学素子駆動装置から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。
図6図5に示す光学素子駆動装置の内部構成を示す分解斜視図である。
図7図5に示す光学素子駆動装置におけるAF駆動部の駆動原理の説明に供する図である。
図8図5に示す光学素子駆動装置におけるOIS駆動部の駆動原理の説明に供する図である。
図9図5に示す光学素子駆動装置における回転規制部の構成を拡大して示す斜視図である。
図10図5に示す光学素子駆動装置における回転規制部の構成を拡大して示す平面図である。
図11図9、10に示す回転規制部における回転規制凹部の構成を示す斜視図である。
図12図9、10に示す回転規制部における回転規制凸部の構成を示す斜視図である。
図13図9、10に示す回転規制部の、図10のXIII-XIII線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
[カメラ搭載装置の構成について]
まず、本実施の形態に係るカメラモジュールが適用されるカメラ搭載装置について説明する。
【0016】
図1A図1Bは、本実施の形態に係るカメラモジュールAを搭載するスマートフォンM(カメラ搭載装置の一例)を示す図である。図1AはスマートフォンMの正面図であり、図1BはスマートフォンMの背面図である。スマートフォンMは、一つ以上の背面カメラOCを有し、背面カメラOCに、カメラモジュールAが適用されている。カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を備え、被写体を撮影するときのピント合わせを自動的に行うと共に、撮影時に生じる振れ(振動)を光学的に補正して像ぶれのない画像を撮影することができる。
【0017】
図2A図2Bは、車載用カメラモジュールVC(Vehicle Camera)を搭載する自動車V(カメラ搭載装置の他の例)を示す図である。図2Aは自動車Vの正面図であり、図2Bは自動車Vの後方斜視図である。図2A及び図2Bに示すように、車載用カメラモジュールVCは、例えば、前方に向けてフロントガラスに取り付けられたり、後方に向けてリアゲートに取り付けられたりする。この車載用カメラモジュールVCは、バックモニター用、ドライブレコーダー用、衝突回避制御用、自動運転制御用等として使用される。自動車Vの車載用カメラモジュールVCに、カメラモジュールAが適用されている。
【0018】
本実施の形態は、カメラモジュールAをスマートフォンMに適用する場合を例に挙げて説明するが、カメラモジュールAは、カメラモジュールAを有すると共に、カメラモジュールAで得られた画像情報を処理する画像処理部を有する、種々のカメラ搭載装置に適用できる。例えば、カメラ搭載装置は、種々の情報機器及び輸送機器を含む。情報機器は、例えば、カメラ付き携帯電話機、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、webカメラ、カメラ付き車載装置(例えば、バックモニター装置、ドライブレコーダー装置)やドローン等を含む。また、輸送機器は、例えば、自動車やドローン等を含む。
【0019】
[カメラモジュールの構成について]
続いて、カメラモジュールAの概略構成について説明する。なお、本実施の形態の説明には、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。なお、本実施の形態では、XY平面におけるX方向及びY方向の中間方向を、U方向及びV方向として説明する(図7、8参照)。例えば、U方向及びV方向は、本実施の形態では正方形であるカメラモジュールAの平面視形状における対角方向である。なお、本実施の形態の説明で用いる形状に関する表現は、簡略的な概形説明のための便宜的な表現であって、幾何学的な図形の定義に対して必ずしも精緻に当てはまるものでないことは、言うまでもない。
【0020】
図3は、カメラモジュールAの構成を模式的に示す斜視図である。カメラモジュールAは、例えばスマートフォンMで撮影が行われる場合、X方向が上下方向(又は左右方向)、Y方向が左右方向(又は上下方向)、Z方向が前後方向となるように搭載される。すなわち、Z方向が光路方向であり、図3において、図中上側(+Z側)が光路方向の受光側(マクロ位置側とも称される)、下側(-Z側)が光路方向の結像側(無限遠位置側とも称される)である。Z方向に直交する方向は光路直交方向であり、X方向及びY方向は、光路直交方向の例である。
【0021】
ここで、後述するカバー3の開口部301、後述するAF可動部11においてレンズ部2を収容するレンズ収容開口部110a1、或いは、後述するOIS固定部20において撮像素子502に対する中央開口部250によって形成される光の通り道が光路である(図4参照)。そして、この光路の延びる方向(各開口部の貫通方向)が光路方向である。光路方向については、光学素子の種類等に基づき、光軸方向や焦点方向(焦点を調整する方向)等、別の呼称を用いてもよい。また、光路直交方向については、光軸直交方向や振れ補正方向等と呼んでもよく、XY平面については、光軸直交面や振れ補正面等と呼んでもよい。
【0022】
また、以下の説明において、特に断らない限り、「径方向」とは、光路又は光軸Oを中心として放射状又は遠心状に延びる方向を意味し、「周方向」とは、光路周り又は光軸周りに延びる方向を意味する。また、特に断らない限り、「外側」とは光路又は光軸Oを中心とする径方向における外側を意味し、「内側」とは光路又は光軸Oを中心とする径方向における内側を意味する。
【0023】
また、以下の説明において、カメラモジュールAの平面視形状(本実施の形態では正方形)の四隅を互いに区別して特定する場合がある。その場合は便宜上、X方向+側且つY方向+側の隅部を第一隅部といい、X方向-側且つY方向+側の隅部を第二隅部といい、X方向-側且つY方向-側の隅部を第三隅部といい、X方向+側且つY方向-側の隅部を第四隅部という。
【0024】
図3に示すように、カメラモジュールAは、AF機能及びOIS機能を実現する光学素子駆動装置1と、円筒形状のレンズバレルにレンズが収容されてなるレンズ部2(光学素子の一例)と、レンズ部2により結像される被写体像を撮像する撮像部5と、を備える。
【0025】
光学素子駆動装置1は、外側をカバー3で覆われている。カバー3は、Z方向から見た平面視で矩形状の有蓋四角筒体である。本実施の形態では、カバー3は、平面視で正方形状を有している。カバー3は、上面(Z方向+側の面)に略円形の開口部301を有する。レンズ部2は、カバー3の開口部301から外部に臨む。カバー3は、光学素子駆動装置1のOIS固定部20のベース部材25に、例えば接着により固定される。カバー3は、例えば磁性体からなり、光学素子駆動装置1の外部からの電磁波を遮断したり、光学素子駆動装置1の内部と外部との磁気的な相互作用を防いだりする、シールド部材として機能する。
【0026】
撮像部5は、光学素子駆動装置1の結像側(Z方向の-側)に配置される。撮像部5は、例えば、イメージセンサー基板501、イメージセンサー基板501に実装される撮像素子502及び制御部503を有する。撮像素子502は、例えば、CCD(charge-coupled device)型イメージセンサー、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)型イメージセンサー等により構成され、レンズ部2により結像される被写体像を撮像する。光学素子駆動装置1は、イメージセンサー基板501に実装されてイメージセンサー基板501と電気的に接続される。
【0027】
制御部503は、例えば、制御IC(Integrated Circuit)で構成され、光学素子駆動装置1の駆動制御を行う。制御部503は、イメージセンサー基板501に設けられてもよいし、カメラモジュールAが搭載されるカメラ搭載機器(本実施の形態では、スマートフォンM)に設けられてもよい。
【0028】
なお、本実施の形態では、位置が固定されたイメージセンサー基板501に対し、光学素子駆動装置1においてOIS可動部レンズ部2を光軸方向及び光軸直交方向に移動可能とする構成が採られているが、ピント合わせ或いは振れ補正を目的として光軸方向及び光軸直交方向のうちの少なくとも一方においてレンズ部2を固定(移動不能)とし撮像素子502を可動(移動可能)としてもよい。この場合、撮像素子502は、AF可動部又はOIS可動部に保持される光学素子の一例となる。
【0029】
[光学素子駆動装置の構成について]
続いて、光学素子駆動装置1の構成について、図4~6を用いて説明する。なお、本実施の形態における以下の説明においては、便宜上、Z方向+側を「上」とし、Z方向-側を「下」とする。
【0030】
図4は、光学素子駆動装置1の外観斜視図である。図5は、カバー3を光学素子駆動装置1から取り外した状態を上方から見た分解斜視図である。図6は、光学素子駆動装置1の内部構成を示す分解斜視図である。
【0031】
光学素子駆動装置1は、OIS可動部10、OIS固定部20、及びOIS支持部30を有する。
【0032】
OIS可動部10は、OIS駆動部の一例であるOIS用ボイスコイルモーターを構成するOISマグネット部を有し、振れ補正時に光軸直交面内で揺動する部分である。OIS固定部20は、OISコイル部を有する部分である。すなわち、光学素子駆動装置1のOIS駆動部には、ムービングマグネット方式が採用されている。OIS可動部10は、AF駆動部を含む「AFユニット」でもある。
【0033】
OIS可動部10は、OIS固定部20上に、OIS固定部20からZ方向+側(光軸方向受光側又は上側)に離間して配置され、OIS支持部30によってOIS固定部20と連結される。
【0034】
[OIS支持部について]
OIS支持部30は、Z方向に沿って延在する複数本のサスペンションワイヤで構成される(以下、「OIS支持部30」に代えて「サスペンションワイヤ30」という)。各サスペンションワイヤ30において、一端(下端)は、OIS固定部20に固定され、他端(上端)はOIS可動部10(具体的には、上側弾性支持部13)に固定される。OIS可動部10は、サスペンションワイヤ30によって、光軸直交面内で揺動可能に支持される。
【0035】
本実施の形態では、サスペンションワイヤ30は、四隅の夫々に一対ずつ配置される。このような配置では、四隅の夫々に一本ずつ配置する場合に比べて、一本当たりのばね定数をより低くしても(換言すれば、可撓性をより高くしても)、同じ重量のOIS可動部を支持することができる。これにより、安定的な支持性能と振れ補正での揺動性能との両立を図ることができる。また、個々のサスペンションワイヤ30に応力が集中し難くなるため、耐久性の向上も図ることができる。
【0036】
四隅の夫々に配置されるサスペンションワイヤ30は、全て又は選択的にAFコイル部111への給電経路として使用される。なお、サスペンションワイヤ30の本数は、8本に限定されず、OIS可動部10を揺動可能に支持する性能が維持される限り、8本より少なくてもよいし、8本より多くてもよい。また、OIS支持部の構成は、サスペンションワイヤのような線状部材には限定されず、例えばエラストマー等の樹脂材料を母材とする枠体によってOIS可動部10を揺動可能に支持する構成であってもよい。また、本実施の形態では、サスペンションワイヤ30は、給電や信号伝送の目的のため金属材料で形成された部材であるが、給電や信号伝送のための手段が別に確保されるのであれば、必ずしもサスペンションワイヤ30を金属材料で形成する必要はない。
【0037】
[OIS可動部について]
OIS可動部10(AFユニットともいう)は、AF可動部11、AF固定部12、AF支持部(上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14)、及びダンパ材15を有する。
【0038】
[AF可動部について]
AF可動部11は、AF固定部12に対して径方向における内側に離間して配置され、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14によってAF固定部12と連結される。
【0039】
AF可動部11は、AF駆動部の一例であるAF用ボイスコイルモーターを構成するコイル部を有し、ピント合わせ時にAF固定部12に対してZ方向(光軸方向)に移動する部分である。AF固定部12は、AF用ボイスコイルモーターを構成するマグネット部を有する部分である。すなわち、光学素子駆動装置1のAF駆動部には、ムービングコイル方式が採用されている。
【0040】
AF可動部11は、レンズホルダー110及びAFコイル部111を有する。AF可動部11は、本発明における可動部の一例である。
【0041】
レンズホルダー110は、筒状のレンズ収容部110aを有する。レンズ収容部110aの開口部(レンズ収容開口部)110a1の内周面には、レンズ部2が例えば接着により固定される。なお、レンズホルダー110へのレンズ部2の固定方法は接着に限定されず、他の方法であってもよい。
【0042】
レンズホルダー110は、例えば、ポリアリレート(PAR)又はPARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)からなる成形材料で形成される。これにより、従来の成形材料、例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)よりもウェルド強度が高まるので、レンズホルダー110を薄肉化しても靭性及び耐衝撃性を確保できる。したがって、光学素子駆動装置1の外形サイズを小さくでき、小型化及び軽量化を図れる。
【0043】
レンズホルダー110は、レンズ収容部110aの外周面の上部及び下部の夫々から径方向外側に突出する上側フランジ110e及び下側フランジ110fを有し、外周面110dにおける上側フランジ110eと下側フランジ110fとの間は、全周にわたり連続した溝となっている。すなわち、レンズホルダー110は、ボビン構造を有する。レンズホルダー110の外周面110dの全周に形成された溝は、AFコイル部111が配置されるAFコイル収容溝部110cである(図12、13参照)。
【0044】
レンズホルダー110は、上側フランジ110eからさらに外側に突出する凸部を有する。この凸部は、レンズホルダー110が光軸周り方向(周方向)に回転するのを規制する回転規制部として機能する。本実施の形態では、この凸部は回転規制凸部110dである。周方向における回転規制部の配置位置は、マグネットホルダー12aの後述するマグネット配置部が位置する四隅とは異なる位置であり、より具体的には、マグネットホルダー12aの四辺夫々の中央部分に対応する位置である。本実施の形態における回転規制部の詳細構成については後述する。
【0045】
AFコイル部111は、ピント合わせ時に通電されるコイルである。AFコイル部111の両端は、レンズホルダー110に設けられた絡げ部(図示略)に絡げられる。
【0046】
AF可動部11の構成の細部については、従来公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0047】
[AF固定部について]
AF固定部12は、AF支持部によりAF可動部11を光軸方向に移動可能に支持する。AF固定部12は、マグネットホルダー12a及びマグネット部125を有する。AF固定部12は、本発明における固定部の一例である。
【0048】
マグネットホルダー12aは、Z方向からの平面視で正方形の四角筒形状であり、内周面において四隅に対応する部分に、マグネット部125を配置するマグネット配置部を有する。マグネットホルダー12aの内周面12a2(図11、13参照)及びマグネット配置部に装着されたマグネット部125の内側面により画定される内側の空洞部は、AF可動部11を収容するレンズホルダー収容開口部を構成する。
【0049】
マグネットホルダー12aの外周面における四隅の夫々には、径方向内側に凹んだ溝が形成されており、各溝にサスペンションワイヤ30が配置される。この溝には、ダンパ材(例えばシリコーンゲル)を配置してよく、ダンパ材の配置により、不要共振(高次の共振モード)の発生を抑制して、OISの動作を安定化させることができる。
【0050】
マグネットホルダー12aにおいて、Z方向-側の端面(裏面)には、下側弾性支持部14が固定され、Z方向+側の面(表面)には、上側弾性支持部13が固定される。
【0051】
本実施の形態では、マグネットホルダー12aは、レンズホルダー110と同様に、ポリアリレート(PAR)又はPARを含む複数の樹脂材料を混合したPARアロイ(例えば、PAR/PC)からなる成形材料で形成されている。これにより、ウェルド強度が高まるので、マグネットホルダー12aを薄肉化しても靭性及び耐衝撃性を確保することができる。したがって、光学素子駆動装置1の外形サイズを小さくすることができ、小型化及び低背化を図れる。
【0052】
マグネット部125は、4つの矩形柱状の永久磁石125A~125D(マグネットの一例)を有する。永久磁石125A~125Dは、マグネット配置部に、例えば接着により固定される。本実施の形態では、永久磁石125A~125Dは、平面視で、略等脚台形状を有する。
【0053】
これにより、マグネットホルダー12aの角部のスペース(具体的にはマグネット配置部)を有効利用できる。永久磁石125A~125Dは、図7に示すようにAFコイル部111を径方向に横切り、且つ、図8から理解できる通りOISコイル部22(OISコイル22A~22D)を光軸方向に横切る、磁界が形成されるように着磁される。本実施の形態では、永久磁石125A~125Dは、内周側がN極、外周側がS極に着磁されている。
【0054】
永久磁石125A~125DのZ方向-側の端面(裏面)は、マグネットホルダー12aよりもZ方向-側に突出する。すなわち、OIS可動部10の高さは、永久磁石125A~125Dによって規定される。これにより、磁力を確保するための永久磁石125A~125Dのサイズに応じて、OIS可動部10の高さを最小限に抑えられるので、光学素子駆動装置1の低背化を図ることができる。
【0055】
以上のようなマグネット部125及びAFコイル部111によって、AF用ボイスコイルモーター(AF駆動部)が構成される。また、マグネット部125は、AFマグネット部とOISマグネット部に兼用される。
【0056】
マグネットホルダー12aは、内周側において、四辺夫々の中央部分に、径方向外側に凹む凹部を有する。この凹部は、レンズホルダー110が光軸周り方向に回転するのを規制する回転規制部として機能する。本実施の形態では、この凹部は回転規制凹部12a1である。本実施の形態における回転規制部の詳細構成については後述する。
【0057】
AF固定部12の構成の細部については、従来公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0058】
[AF支持部について]
AF支持部は、AF固定部12に対してAF可動部11を弾性的に支持する。AF支持部は、本実施の形態では、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14を有する。本実施の形態では、上側弾性支持部13及び下側弾性支持部14はいずれも、板バネである場合を例に採る。そこで、以下の説明では、「上側弾性支持部13」及び「下側弾性支持部14」に代えて夫々「上側板バネ13」及び「下側板バネ14」という。板バネは、例えば、ベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレスからなる。
【0059】
上側板バネ13は、外側でマグネットホルダー12aのZ方向+側の面(表面)に固定され、内側でレンズホルダー110のZ方向+側の面(表面)に固定される。上側板バネ13において、外側と内側との中間部分に延びるアーム部は弾性変形可能であり、これにより、上側板バネ13の内側部分は上側板バネ13の外側部分に対してZ方向に相対変位可能である。
【0060】
上側板バネ13は、マグネットホルダー12aの表面に固定される外側部分よりもさらに外側に延在する外側延在部を有する。外側延在部は、マグネットホルダー12aにおいてサスペンションワイヤ30が配置される溝のZ方向+側に配置される。外側延在部は、サスペンションワイヤ30の上端がはんだにより固定されるワイヤ固定部である。
【0061】
上側板バネ13は、AF制御部(図示略)への給電経路として使用されるサスペンションワイヤ30と接続される給電経路部分と、AF制御部(図示略)に制御信号を伝達する信号経路として使用されるサスペンションワイヤ30と接続される信号経路部分と、に分離している。給電経路部分を構成する上側板バネ13は、マグネットホルダー12aに設けられた絡げ部で、はんだによりAFコイル部111に接続される。
【0062】
下側板バネ14は、外側でマグネットホルダー12aのZ方向-側の面(裏面)に固定され、内側でレンズホルダー110のZ方向-側の面(裏面)に固定される。下側板バネ14において、外側と内側との中間部分に延びるアーム部は弾性変形可能であり、これにより、下側板バネ14の内側部分は下側板バネ14の外側部分に対してZ方向に相対変位可能である。
【0063】
AF支持部の構成の細部については、従来公知の技術を適宜採用可能であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0064】
[OIS固定部について]
OIS固定部20は、サスペンションワイヤ30によりOIS可動部10を光軸直交方向に揺動可能に支持する。OIS固定部20は、OISコイル部22、磁気センサー部23、保護部材24、ベース部材25、及び配線部材27を有する。
【0065】
[OISコイル部について]
OIS固定部20は、Z方向(光軸方向)においてマグネット部125に対向する四隅夫々の位置にOISコイル部22を有する。OISコイル部22は、振れ補正時に通電されるコイルである。OISコイル部22は、永久磁石125A~125Dに対応する4つのOISコイル22A~22Dを有する。OISコイル22A~22Dは、本実施の形態では、空芯コイルである。
【0066】
OISコイル22A~22Dのそれぞれの長辺部分を、永久磁石125A~125Dの底面から放射される磁界がZ方向に横切るように(図8参照)、OISコイル22A~22D及び永久磁石125A~125Dの大きさや配置が設定される。マグネット部125とOISコイル部22との組合せは、OIS用ボイスコイルモーター(OIS駆動部)を構成する。
【0067】
各OISコイル22A~22Dの両端に夫々設けられたリード線の端部は、ベース部材25に設けられた配線部材27のコイル用端子要素27a1(コイル用端子の一例)に、はんだにより接続される。すなわち、本実施の形態では、各OISコイル22A~22Dは、基板を介さず直接的にコイル用端子要素27a1に接続される。ベース部材25には、各OISコイル22A~22Dを配置するためのコイル用凹部(第二凹部の一例)252が設けられており、各OISコイル22A~22Dは、四隅のコイル用凹部252に夫々配置される。
【0068】
[磁気センサー部について]
OIS固定部20は、四隅のうちの第一隅部及び第四隅部において、対応するOISコイル22A、22Dの中央の空洞部内に磁気センサー部23を有する。磁気センサー部23は、マグネット部125(永久磁石125A、125D)によって形成される磁界をホール素子231A1、231D1(図8参照)で検出することにより特定される、光軸直交面における永久磁石125A、125Dとホール素子231A1、231D1との相対位置に基づいて、OIS可動部10の光軸直交面における位置を検出する。磁気センサー部23は、ホール素子チップアセンブリを有する。ホール素子チップアセンブリは、ホール素子231A1、231D1(磁気センサーの一例)と、ホール素子231A1、231D1のチップが実装された磁気センサー基板と、を有する。磁気センサー基板は、例えばプリント基板(PWB:Printed Wiring Board)である。
【0069】
ホール素子231A1、231D1は、磁気センサー基板231A2、231D2の主面の中央部に設けられ、その周辺部には、基板側端子部が設けられている。基板側端子部は、ベース部材25に設けられた配線部材27の基板用端子要素(図示略)に、はんだにより接続される。すなわち、本実施の形態では、各ホール素子231A1、231D1は、磁気センサー基板を介して基板用端子要素に接続される。ベース部材25には、各ホール素子チップアセンブリを配置するための基板用凹部(第一凹部の一例)が設けられており、各ホール素子チップアセンブリは、基板用凹部に夫々配置される。
【0070】
[ベース部材について]
ベース部材25は、光路又は光軸が通過する中央開口部250を有する平面視正方形の部材である。ベース部材25は、合成樹脂などの非導電性材料、例えば、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)からなる。ベース部材25には、配線部材27がインサート成型されている。
【0071】
配線部材27は、ベース部材25にインサート成型された金属製の板状部材である。配線部材27は、例えばベリリウム銅、ニッケル銅、ステンレス等の導電性材料からなる。
【0072】
配線部材27は、コイル用端子部材と、基板用端子部材と、ワイヤ用端子部材と、を含む。
【0073】
コイル用端子部材は、コイル用端子要素27a1と、コイル用端子接続部と、を有する。コイル用端子要素27a1は、ベース部材25に設けられたコイル用凹部252の底部で上方に露出されるよう配置され、コイル用凹部252に配置されたOISコイル22A~22Dのリード線に、はんだにより直接接続される。コイル用端子接続部は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。コイル用端子部材において、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。
【0074】
基板用端子部材は、基板用端子要素と、基板用端子接続部と、を有する。基板用端子要素は、ベース部材25に設けられた基板用凹部の底部で上方に露出されるよう配置され、基板用凹部に配置されたホール素子チップアセンブリの基板側端子部に、はんだにより直接接続される。基板用端子接続部は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。基板用端子部材において、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。
【0075】
ワイヤ用端子部材は、ワイヤ用端子要素と、ワイヤ用端子接続部と、を有する。ワイヤ用端子要素は、ベース部材25の四隅で上方及び下方に露出されるよう配置され、自身に形成された挿通孔に挿通されたサスペンションワイヤ30の下端に、はんだにより直接接続される。ワイヤ用端子接続部は、ベース部材25の外縁から突出して、外部のイメージセンサー基板501に接続可能とされている。ワイヤ用端子部材において、ベース部材25から露出又は突出している部分以外の部分は、ベース部材25の内部に埋設されている。なお、ワイヤ用端子部材において、ベース部材25から露出又は突出している部分は、光学素子駆動装置1の組立時においては外部に曝されるが、完成時においては樹脂製のシール材28(図5参照)等により被覆されることが好ましい。
【0076】
[保護部材について]
保護部材24は、ベース部材25において中央開口部250を囲む領域を被覆するように設けられる。保護部材24は、樹脂材料等の非導電材料からなる薄型のプレート部材又はフィルム部材である。保護部材24は、OISコイル22A~22Dの配置領域を完全に覆うため、保護部材24は、Z方向においてOISコイル22A~22Dと永久磁石125A~125Dとの間に介在することになる。よって、外部からの衝撃に伴ってOISコイル22A~22Dと永久磁石125A~125Dとが衝突することを防ぐことができる。また、金属製であるOISコイル22A~22Dに対して、同じく金属製である下側板バネ14が接触して、ショートが発生することも防ぐことができる。
【0077】
[細部構成について]
OIS固定部20におけるその他の細部構成について、ここでは詳述しないが、従来公知の技術が適宜採用可能である。
【0078】
[光学素子駆動装置の動作について]
ここで、光学素子駆動装置のピント合わせ動作及び振れ補正動作について説明する。図7、8は、光学素子駆動装置1におけるAF駆動部(AF用ボイスコイルモーター)及びOIS駆動部(OIS用ボイスコイルモーター)夫々の駆動原理の説明に供する図である。
【0079】
光学素子駆動装置1において自動ピント合わせを行う場合には、AFコイル部111に通電する。AFコイル部111に通電すると、マグネット部125の磁界とAFコイル部111に流れる電流との相互作用により、AFコイル部111にローレンツ力が生じる(フレミングの左手の法則)。この場合のローレンツ力の方向は、磁界の方向(径方向内側に向かう方向、図7参照)及びAFコイル部111に流れる電流の方向(周方向、図7参照)に直交する方向(つまり、Z方向(光軸方向))である。マグネット部125(永久磁石125A~125D)は固定されているので、AFコイル部111に反力が働く。この反力がAF用ボイスコイルモーター(AF駆動部)の駆動力となり、AFコイル部111を有するAF可動部11がZ方向(光軸方向)に移動し、ピント合わせが行われる。
【0080】
光学素子駆動装置1において振れ補正を行う場合には、OISコイル22A~22Dに通電する。OISコイル22A~22Dに通電すると、マグネット部125の磁界とOISコイル22A~22Dに流れる電流との相互作用により、OISコイル22A~22Dにローレンツ力が生じる(フレミング左手の法則)。この場合のローレンツ力の方向は、OISコイル22A~22Dの長辺部分における磁界の方向(Z方向(光軸方向)、図8参照)と電流の方向(U方向又はV方向、図8参照)に直交する方向(つまりV方向又はU方向)である。OISコイル22A~22Dは固定されているので、永久磁石125A~125Dに反力が働く。この反力がOIS用ボイスコイルモーター(OIS駆動部)の駆動力となり、マグネット部125を有するOIS可動部10が光軸直交面内で揺動し、振れ補正が行われる。
【0081】
[回転規制部について]
続いて、光学素子駆動装置1における回転規制部の構成について説明する。図9、10は、光学素子駆動装置1における回転規制部の構成を拡大して示す斜視図及び平面図である。図11、12は、回転規制凹部12a1及び回転規制凸部110bの構成を夫々示す斜視図である。図13は、回転規制部の、図10のXIII-XIII線に沿う断面図である。
【0082】
回転規制部は、AF可動部11であるレンズホルダー110がAF固定部12であるマグネットホルダー12aに対して光軸周り方向に回転するのを規制するよう機能する。回転規制部は、具体的には、光軸周り方向で四箇所(四辺の中央部分)の夫々に配置された、マグネットホルダー12a内周側の回転規制凹部12a1と、レンズホルダー110外周側の一対の回転規制凸部110bと、を有する。
【0083】
回転規制凹部12a1は、径方向内側に開口する平面視C字状の凹部である。具体的には、回転規制凹部12a1は、光軸周り方向の両端で互いに離間する一対の側壁12a11と、一対の側壁12a11間を接続して延在する中間壁12a12と、中間壁12a12の中央部から径方向の外側に凹むダンパ材受け部12a13と、光軸方向における中間壁12a12の端部から径方向の内側に延在する下壁12a14と、を有する。
【0084】
一対の回転規制凸部110bは、回転規制凹部12a1に対向する位置で、光軸周り方向に並んで設けられ、レンズホルダー110の外周面110dから径方向の外側に突出し、夫々の先端が回転規制凹部12a1の内部に収容される。
【0085】
一対の回転規制凸部110bは夫々、光軸周り方向において回線規制凹部12a1の側壁12a11に対向する当接側壁110b1と、その反対側に位置する非当接側壁110b2と、を有する。夫々の回転規制凸部110bの非当接側壁110b2同士は光軸周り方向において互いに対向する。一対の非当接側壁110b2間を接続して延在する中間壁110b3には、中間壁110b3の中央部から径方向の内側に凹むダンパ材受け部110b4が設けられている。
【0086】
回転規制部は、マグネットホルダー12aにおける回転規制凹部12a1の側壁12a11と、レンズホルダー110における回転規制凸部110bの当接側壁110b1とを、互いに当接させることで、マグネットホルダー12aに対するレンズホルダー10の光軸周り方向の回転を規制する。すなわち、回転規制部は、AF可動部11及びAF固定部12に配設された凹凸部を互いに当接させることにより周方向でのAF可動部11の回転規制をする。
【0087】
このような回転規制部の構成では、上述した通り、当接時に生じ得る衝撃を抑制したいという要望がある。本実施の形態では、個々の回転規制凹部12a1に対応してレンズホルダー110に設ける回転規制凸部110bを一対とし、一対の回転規制凸部110bを光軸周り方向に離間させて、一対の回転規制凸部110bの間の位置に、当接時に生じ得る衝撃を吸収可能なダンパ材15を配置し、衝撃の抑制を実現した。
【0088】
ダンパ材15は、粘性を有する例えばゲル状の樹脂材料からなる部材である。ダンパ材15は、一対の回転規制凸部110bの間の位置にて径方向で互いに対向するレンズホルダー110側の中間壁110b3及びマグネットホルダー12a側の中間壁12a12により挟まれて配置されている。このようなレンズホルダー110及びマグネットホルダー12aの当接部分近傍の位置にてレンズホルダー110及びマグネットホルダー12aがダンパ材15により橋絡されているため、当接時の衝撃を効果的に抑制することができる。
【0089】
マグネットホルダー12a側の中間壁12a12及びレンズホルダー110側の中間壁110b3には、夫々径方向の外側及び内側に凹むダンパ材受け部12a13、110b4が設けられている。ダンパ材受け部12a13、110b4は、ダンパ材15の体積の一部、具体的には中間部151、152を収容する空間を形成している。また、ダンパ材受け部12a13、110b4は、上側は上方に開口しているが下側は有底となっている。よって、マグネットホルダー12aとレンズホルダー110との間に注入されたダンパ材15の一部が、ダンパ材受け部12a13、110b4に留まる。このため、一定程度の流動性を有するダンパ材15が、中間壁12a12、110b3に挟まれた状態に保持されやすくなっている。すなわち、ダンパ材受け部12a13、110b4は、中間壁12a12、110b3に挟まれたダンパ材15を保持するよう機能する。これにより、ダンパ材15によるマグネットホルダー12aとレンズホルダー110との橋絡状態、ひいては回転規制部にて発生し得る衝撃の吸収性能を、安定的に維持させることができる。
【0090】
図13に示すように、レンズホルダー110において、一対の回転規制凸部110b間の中間壁110b3は、レンズホルダー110の外周面110dよりも径方向の外側に張り出している。そして、マグネットホルダー12aにおいて、回転規制凹部12a1の下壁12a14は、レンズホルダー110の中間壁110b3よりも径方向の内側に張り出している。よって、ダンパ材15全体の径方向位置が、マグネットホルダー12aの回転規制凹部12a1の最大深さ範囲(回転規制凹部12a1の中間壁12a12(又はダンパ材受け部12a13)からマグネットホルダー12aの内周面12a2まで)内に収まる。すなわち、ダンパ材15の全体積が回転規制凹部12a1内に収容される。そして、一対の回転規制凸部110b及びこれらの間で延在する中間壁110b3から下側に離間する回転規制凹部12a1の下壁12a14が、ダンパ材15の下方側全面をカバーする。これらの構成により、ダンパ材15が回転規制凹部12a1から外部に漏れ出してAFユニット外の部品に付着するのを抑制することができる。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態によれば、レンズ部2を保持可能なAF可動部11をAF固定部12に対して光軸方向に移動させる光学素子駆動装置1は、AF可動部11及びAF固定部12に配設された凹凸部を互いに当接させることにより光軸周り方向でのAF可動部11の回転規制をする回転規制部と、AF可動部11及びAF固定部12に接触するよう回転規制部に設けられたダンパ材15と、を有する。これにより、回転規制部の凹凸部の当接時に発生する衝撃をダンパ材15により抑制することができる。しかも、ダンパ材15を回転規制部に設けたことで、衝撃抑制を容易に実現することができ、光学素子駆動装置1の構成を顕著に複雑化させたり大型化させたりすることがない。
【0092】
また、本実施の形態によれば、ダンパ材15は、回転規制部の凹凸部に設けられる。回転規制部に行う回転規制時の衝撃は凹凸部が発生させるものであるため、ダンパ材15をその凹凸部に設けることで、当接部位とダンパ材15との距離を短くすることができ、より確実に衝撃抑制効果を実現することができる。
【0093】
また、本実施の形態によれば、回転規制部は、AF可動部11の径方向の外側を囲うAF固定部12に設けられた回転規制凹部12a1と、光軸周り方向に並んでAF可動部11に設けられ、回転規制凹部12a1の内部へ径方向に突出する一対の回転規制凸部110bと、を含み、ダンパ材15は、一対の回転規制凸部110bの間に設けられる。このように、回転規制凸部110bを一対とすることで、一対の回転規制凸部110bの間にダンパ材15を配置するスペースを確保することができ、回転規制部の空間を無駄なく利用することができる。
【0094】
以上、本発明の実施の形態を具体的に説明したが、本発明は上述した特定の実施の形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、上記実施の形態に記載された具体例に対する種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施の形態では、光学素子駆動装置1は、AF機能とOIS機能とを備えた構成を例に採ったが、光学素子駆動装置1は、OIS機能を備えずAF機能のみを備えた構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明に係る光学素子駆動装置及びカメラモジュールは、例えば、スマートフォン、携帯電話機、デジタルカメラ、ノート型パソコン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、車載カメラ、ドローン等のカメラ搭載装置に搭載して、有用なものである。
【符号の説明】
【0096】
A カメラモジュール
M スマートフォン
O 光軸
OC 背面カメラ
V 自動車
VC 車載用カメラ
1 光学素子駆動装置
2 レンズ部
3 カバー
301 開口部
5 撮像部
501 イメージセンサー基板
502 撮像素子
503 制御部
10 OIS可動部
11 AF可動部(可動部)
110 レンズホルダー
110a レンズ収容部
110a1 レンズ収容開口部
110b 回転規制凸部(回転規制部、凹凸部、凸部)
110b1 当接側壁
110b2 非当接側壁
110b3 中間壁
110b4 ダンパ材受け部
110c AFコイル収容溝部
110d 外周面
110e 上側フランジ
110f 下側フランジ
111 AFコイル部
12 AF固定部(固定部)
12a マグネットホルダー
12a1 回転規制凹部(回転規制部、凹凸部、凹部)
12a11 側壁
12a12 中間壁
12a13 ダンパ材受け部
12a14 下壁
12a2 内周面
125 マグネット部
125A、125B、125C、125D 永久磁石
13 上側弾性支持部
14 下側弾性支持部
15 ダンパ材
151、152 中間部
20 OIS固定部
22 OISコイル部
22A、22B、22C、22D OISコイル
23 磁気センサー部
231A1、231D1 ホール素子
24 保護部材
25 ベース部材
250 中央開口部
252 コイル用凹部
27 配線部材
27a1 コイル用端子要素
28 シール材
30 OIS支持部
【要約】
【課題】装置の顕著な複雑化や大型化を伴うことなく、可動部の回転規制時に生じる衝撃を抑制すること。
【解決手段】光学素子駆動装置は、光学素子を保持可能な可動部を固定部に対して光軸方向に移動させる光学素子駆動装置であって、前記可動部及び前記固定部に配設された凹凸部を互いに当接させることにより周方向での前記可動部の回転規制をする回転規制部と、前記可動部及び前記固定部に接触するよう前記回転規制部に設けられたダンパ材と、を有する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13