(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】フラックス、ソルダペースト、及び接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 35/363 20060101AFI20240807BHJP
C08G 59/42 20060101ALI20240807BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20240807BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
B23K35/363 C
B23K35/363 E
C08G59/42
B23K35/26 310A
C22C13/00
(21)【出願番号】P 2024015212
(22)【出願日】2024-02-02
【審査請求日】2024-02-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】宮城 奈菜子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 和順
【審査官】山本 佳
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-001184(JP,A)
【文献】特開平08-197282(JP,A)
【文献】特開2013-216830(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113118667(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104923985(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(P)成分:オキシアルキレン基及びエポキシ基を有する化合物と、
無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物と、
ロジンと、
溶剤と、
チキソ剤と、
活性剤と、
を含有する、フラックス。
【請求項2】
前記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
前記
(P)成分のエポキシ当量が、120g/eq以上である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項4】
前記
(P)成分が、プロピレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項5】
前記酸無水物が、下記一般式(AA-1)で表される化合物である、請求項1に記載のフラックス。
【化1】
[式中、R
01及びR
02は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は水素原子である。五員環を構成する炭素原子とR
01との結合は、二重結合又は単結合である。五員環を構成する炭素原子とR
02との結合は、二重結合又は単結合である。]
【請求項6】
前記式(AA-1)中のR
01又はR
02が、炭素原子数3~18の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基である、請求項5に記載のフラックス。
【請求項7】
前記酸無水物が、2-オクテニルコハク酸無水物を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項8】
前記ロジンが、アクリル酸変性水添ロジン、重合ロジン及び水添ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載のフラックス。
【請求項9】
前記酸無水物と前記ロジンとの混合比率が、
ロジン/酸無水物、で表される質量比として、5を超え25未満である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項10】
前記
(P)成分と前記ロジンとの混合比率が、
ロジン/
(P)成分、で表される質量比として、4.0以下である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項11】
無水コハク酸、無水コハク酸の誘導体及びロジンからなる群より選択される少なくとも一種と、
(P)成分:オキシアルキレン基及びエポキシ基を有する化合物との反応物と、
溶剤
と、
チキソ剤
と、
活性剤
と、
ロジンと、
コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸、又はその酸無水物と、
を含有する、フラックス。
【請求項12】
前記活性剤が、イミダゾール化合物を含む、請求項11に記載のフラックス。
【請求項13】
はんだ合金粉末と、請求項1~
12のいずれか一項に記載のフラックスと、を含有するソルダペースト。
【請求項14】
部品と基板とをはんだ付けすることにより接合体を得る工程を含み、
前記はんだ付けの際、請求項
13に記載のソルダペーストを用いて、大気雰囲気下でリフローを行う、接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、ソルダペースト、及び接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を製造する際、基板に対する部品の固定、及び基板に対する部品の電気的な接続が、はんだ付けにより行われている。はんだ付けにおいては、フラックス、はんだ粉末、並びに、フラックス及びはんだ粉末を混合したソルダペーストが用いられる。
フラックスは、はんだ付けの対象となる接合対象物の金属表面及びはんだに存在する金属酸化物を化学的に除去し、両者の境界で金属元素の移動を可能にする効能を持つ。このため、フラックスを使用してはんだ付けを行うことで、両者の間に、金属間化合物が形成されるようになり強固な接合が得られる。
【0003】
ソルダペーストを使用したはんだ付けでは、まず、基板にソルダペーストが印刷された後、部品が搭載され、リフロー炉と称される加熱炉で、部品が搭載された基板が加熱される。これにより、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末が溶融し、部品が基板に接合することで接合体が得られる。
はんだ付けの際には、炉内の酸素による部品等の酸化を防止するため、窒素を使用して炉内の酸素濃度を下げた雰囲気で、リフローはんだ付けが行われることもある。
【0004】
このリフローはんだ付けに用いられるフラックスには、一般に、樹脂成分、溶剤、チキソ剤、活性剤等が含まれる。
基板上に塗布されたフラックスに含まれる樹脂成分は、リフロー後の接合体に、フラックス残渣として残存する場合がある。フラックス残渣は、接合体を備えた装置の動作による温度上昇、又は、外気温の上昇若しくは低下等により、割れを生じる場合がある。
これに対し、例えば、特許文献1には、ロジンと、ヨウ素価の高いポリブタジエンと、を併用したフラックス、これを用いたソルダペーストが提案されている。特許文献1に記載されたソルダペーストによれば、外部環境が温度変化しても、フラックス残渣に亀裂が生じることが抑制され、また、フラックス残渣にべとつきが生じにくい、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、はんだ事業においても、カーボンニュートラル実現に貢献するため、フローソルダリングの製造工法及び関連製品の開発が進んでいる。そのなか、窒素使用量削減などに対する要求がある。
しかしながら、加熱炉で、エアのみによる大気リフローはんだ付けを試みた場合、従来のソルダペーストでは、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制することが困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、大気リフローはんだ付けの場合においても、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制することができるフラックス、ソルダペースト、及びこれらを用いた接合体の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0009】
[1] オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物と、ロジンと、溶剤と、チキソ剤と、活性剤と、を含有する、フラックス。
【0010】
[2] 前記オキシアルキレン基が、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選択される少なくとも一種である、[1]に記載のフラックス。
[3] 前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、120g/eq以上である、[1]又は[2]に記載のフラックス。
[4] 前記エポキシ樹脂が、プロピレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0011】
[5] 前記酸無水物が、下記一般式(AA-1)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0012】
【化1】
[式中、R
01及びR
02は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は水素原子である。五員環を構成する炭素原子とR
01との結合は、二重結合又は単結合である。五員環を構成する炭素原子とR
02との結合は、二重結合又は単結合である。]
【0013】
[6] 前記式(AA-1)中のR01又はR02が、炭素原子数3~18の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基である、[5]に記載のフラックス。
[7] 前記酸無水物が、2-オクテニルコハク酸無水物を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0014】
[8] 前記ロジンが、アクリル酸変性水添ロジン、重合ロジン及び水添ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含む、[1]~[7]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0015】
[9] 前記酸無水物と前記ロジンとの混合比率が、ロジン/酸無水物、で表される質量比として、5を超え25未満である、[1]~[8]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0016】
[10] 前記エポキシ樹脂と前記ロジンとの混合比率が、ロジン/エポキシ樹脂、で表される質量比として、4.0以下である、[1]~[9]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0017】
[11] 無水コハク酸、無水コハク酸の誘導体及びロジンからなる群より選択される少なくとも一種と、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂との反応物、並びに、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有する、フラックス。
【0018】
[12] コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸、又はその酸無水物をさらに含有する、[11]に記載のフラックス。
[13] ロジンをさらに含有する、[11]又は[12]に記載のフラックス。
[14] 前記活性剤が、イミダゾール化合物を含む、[11]~[13]のいずれか一項に記載のフラックス。
【0019】
[15] はんだ合金粉末と、[1]~[14]のいずれか一項に記載のフラックスと、を含有するソルダペースト。
【0020】
[16] 部品と基板とをはんだ付けすることにより接合体を得る工程を含み、前記はんだ付けの際、[15]に記載のソルダペーストを用いて、大気雰囲気下でリフローを行う、接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、大気リフローはんだ付けの場合においても、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制することができるフラックス、ソルダペースト、及びこれらを用いた接合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施例の評価における、リフロープロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(フラックス)
第1の態様に係るフラックスの一実施形態は、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物と、ロジンと、溶剤と、チキソ剤と、活性剤と、を含有するものである。
かかる実施形態のフラックスは、リフローはんだ付けに好適に用いられ、特には、大気雰囲気下でリフローが行われたはんだ接合部における、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑えられるものである。本実施形態のフラックスにおいては、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物と、を組み合わせて用いることを特徴とする。
【0024】
<オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂>
本実施形態のフラックスは、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂(以下これを「(P)成分」ともいう。)を含有する。
(P)成分は、オキシアルキレン基とエポキシ基とを有する化合物であり、エポキシ基で架橋構造を形成して硬化する高分子であればよい。
【0025】
(P)成分におけるオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、これらのなかでも、親疎水性のバランスの点から、オキシエチレン基及びオキシプロピレン基からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。
【0026】
(P)成分のエポキシ当量は、120g/eq以上であることが好ましく、150g/eq以上600g/eq以下がより好ましく、200g/eq以上450g/eq以下がさらに好ましい。
エポキシ当量が前記の好ましい範囲内である(P)成分を用いることで、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすくなる。
【0027】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K 7236:2001に規格化される電位差滴定法により測定することができる。
【0028】
(P)成分としては、例えば、ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂、アルキレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。
(P)成分の好ましいものとしては、下記一般式(P1)で表されるポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂(以下これを「(P1)成分」ともいう。)、下記一般式(P2)で表されるアルキレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂(以下これを「(P2)成分」ともいう。)が挙げられる。
【0029】
【化2】
[式中、R
10は、エポキシ基含有基である。複数のR
10は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。R
11は、炭素原子数2~4のアルキレン基である。n1は、カッコ内の構造の繰り返し数を表す。]
【0030】
【化3】
[式中、R
20は、エポキシ基含有基である。複数のR
20は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。R
21及びR
22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の炭化水素基又は水素原子である。R
23は、炭素原子数2~4のアルキレン基である。複数のR
23は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。n21及びn22は、それぞれ独立に、カッコ内の構造の繰り返し数を表す。]
【0031】
≪(P1)成分≫
(P1)成分は、前記一般式(P1)で表されるポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂である。
前記式(P1)中、R10は、エポキシ基含有基である。複数のR10は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
R10におけるエポキシ基含有基としては、エポキシ基のみからなる基;脂環式エポキシ基のみからなる基;エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基が挙げられる。
脂環式エポキシ基の基本骨格となる脂環式基としては、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。また、これら脂環式基の水素原子は、アルキル基、アルコキシ基、水酸基等で置換されていてもよい。
エポキシ基又は脂環式エポキシ基と、2価の連結基とを有する基の場合、式中の酸素原子(-O-)に結合した2価の連結基を介してエポキシ基又は脂環式エポキシ基が結合していることが好ましい。
R10におけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0032】
前記式(P1)中、R11は、炭素原子数2~4のアルキレン基であり、炭素原子数2又は3のアルキレン基が好ましく、エチレン基(-CH2CH2-)、プロピレン基(-CH(CH3)-CH2-)がより好ましい。
前記式(P1)中、n1は、カッコ内の構造の繰り返し数を表し、好ましくは2~25である。
【0033】
(P1)成分には、市販品として、例えばナガセケムテックス株式会社製のデナコールシリーズ等を用いることができる。具体的には、アルコール性水酸基をグリシジルエーテル化した特殊エポキシ化合物(ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル)が利用可能である。
【0034】
≪(P2)成分≫
(P2)成分は、前記一般式(P2)で表されるアルキレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂である。
前記式(P2)中、R20は、エポキシ基含有基である。複数のR20は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
R20におけるエポキシ基含有基としては、上述したR10におけるエポキシ基含有基と同様のものが挙げられる。R20におけるエポキシ基含有基としては、グリシジル基が好ましい。
【0035】
前記式(P2)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、炭素原子数1~6の炭化水素基又は水素原子である。
R21及びR22における炭化水素基は、それぞれ、鎖状炭化水素基でもよいし、脂環式基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。R21及びR22は、それぞれ、鎖状炭化水素基が好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましい。これらのなかでも、R21及びR22としては、それぞれ、直鎖状のアルキル基又は水素原子が好ましく、メチル基又は水素原子が特に好ましい。
前記式(P2)中、複数のR21は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。複数のR22は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。R21とR22とは、同一であることが好ましい。
【0036】
前記式(P2)中、R23は、炭素原子数2~4のアルキレン基であり、炭素原子数2又は3のアルキレン基が好ましく、プロピレン基(-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-)がより好ましい。複数のR23は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。
前記式(P2)中、n21は、カッコ内の構造の繰り返し数を表し、好ましくは1~12である。n22は、カッコ内の構造の繰り返し数を表し、好ましくは1~12である。
【0037】
(P2)成分には、市販品として、例えば、株式会社ADEKA製の商品名「EP-4000S」、旭化成株式会社製の商品名「AER9000」等が利用可能である。
【0038】
本実施形態のフラックスにおいて、(P)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(P)成分は、ポリアルキレングリコール型エポキシ樹脂、及びアルキレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、(P1)成分及び(P2)成分からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、少なくとも(P2)成分を含むことがさらに好ましく、プロピレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂を含むことが特に好ましい。
プロピレンオキシド変性ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、プロピレンオキシド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂などが挙げられる。そのなかでも、(P)成分は、プロピレンオキシド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂を含むことが最も好ましい。
上述の株式会社ADEKA製の商品名「EP-4000S」、旭化成株式会社製の商品名「AER9000」が、それぞれ、プロピレンオキシド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂に該当する。
【0039】
本実施形態のフラックス中の、(P)成分の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、3質量%以上17質量%以下であることが好ましく、8質量%以上12質量%以下であることがより好ましい。
(P)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、フラックス残渣のべたつきが低減されやすくなる。
【0040】
<無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物>
本実施形態のフラックスは、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物(以下これを「(AA)成分」ともいう。)を含有する。
(AA)成分は、(P)成分の硬化剤として作用するものであればよい。
【0041】
ここでいう無水コハク酸の誘導体とは、無水コハク酸の五員環を構成する2つのメチレン基(-CH2-)の一方又は両方における水素原子が置換された化合物をいう。
【0042】
(AA)成分の好ましいものとしては、下記一般式(AA-1)で表される化合物が挙げられる。
【0043】
【化4】
[式中、R
01及びR
02は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は水素原子である。五員環を構成する炭素原子とR
01との結合は、二重結合又は単結合である。五員環を構成する炭素原子とR
02との結合は、二重結合又は単結合である。]
【0044】
前記式(AA-1)中、R01及びR02は、それぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基、又は水素原子である。
R01及びR02における炭化水素基の炭素原子数は、それぞれ、1~20であることが好ましい。
R01及びR02における炭化水素基は、それぞれ、鎖状炭化水素基でもよいし、脂環式基でもよいし、芳香族炭化水素基でもよい。
【0045】
R01及びR02における鎖状炭化水素基、及び脂環式基は、それぞれ、飽和炭化水素基でもよいし、不飽和炭化水素基でもよい。R01及びR02における鎖状炭化水素基は、直鎖状でもよいし、分岐鎖状でもよい。
【0046】
上記のなかでも、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすいことから、R01及びR02における炭化水素基は、それぞれ、鎖状炭化水素基が好ましく、そのなかでも、鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基がより好ましい。
さらに、R01及びR02における炭化水素基は、それぞれ、炭素原子数3~18の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数3~12の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、炭素原子数8の鎖状の不飽和脂肪族炭化水素基であることが特に好ましい。
【0047】
前記式(AA-1)中、五員環を構成する炭素原子とR01との結合は、二重結合又は単結合である。五員環を構成する炭素原子とR02との結合は、二重結合又は単結合である。二重結合である場合、五員環を構成する炭素原子とR01とは、例えば、ビニリデン基となる。二重結合である場合、五員環を構成する炭素原子とR02とは、例えば、ビニリデン基となる。
【0048】
以下に、(AA)成分の具体例を示す。
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
本実施形態のフラックスにおいて、(AA)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(AA)成分としては、前記の化学式(AA-1-1)~(AA-1-9)、(AA-1-10)、(AA-1-11)、(AA-1-12)~(AA-1-17)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、前記の化学式(AA-1-1)~(AA-1-9)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、前記の化学式(AA-1-1)~(AA-1-7)でそれぞれ表される化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましく、前記の化学式(AA-1-5)で表される化合物、すなわち、2-オクテニルコハク酸無水物を含むことが特に好ましい。
【0053】
本実施形態のフラックス中の、(AA)成分の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、0.5質量%以上5質量%以下であることが好ましく、1質量%以上3質量%以下であることがより好ましい。
(AA)成分の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、フラックス残渣のべたつきが低減されやすくなる。
【0054】
<ロジン>
本実施形態のフラックスは、ロジンを含有する。
本発明において「ロジン」とは、アビエチン酸を主成分とする、アビエチン酸とこの異性体との混合物を含む天然樹脂、及び天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体と呼ぶ場合がある)を包含する。
【0055】
天然樹脂におけるアビエチン酸の含有量は、一例として、天然樹脂に対して、40質量%以上80質量%以下である。
本明細書において「主成分」とは、化合物を構成する成分のうち、その化合物中の含有量が40質量%以上の成分をいう。
【0056】
アビエチン酸の異性体の代表的なものとしては、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸等が挙げられる。
前記「天然樹脂」としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0057】
本発明において「天然樹脂を化学修飾したもの(ロジン誘導体)」とは、前記「天然樹脂」に対して水素化、脱水素化、中和、アルキレンオキシド付加、アミド化、二量化及び多量化、エステル化並びにDiels-Alder環化付加からなる群より選択される1つ以上の処理を施したものを包含する。
【0058】
ロジン誘導体としては、例えば、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。
変性ロジンとしては、水添ロジン、重合ロジン、重合水添ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン、ロジンエステル、酸変性水添ロジン、無水酸変性水添ロジン、酸変性不均化ロジン、無水酸変性不均化ロジン、フェノール変性ロジン及びα,β不飽和カルボン酸変性物(アクリル化ロジン、マレイン化ロジン、フマル化ロジン等)、並びに該重合ロジンの精製物、水素化物及び不均化物、並びに該α,β不飽和カルボン酸変性物の精製物、水素化物及び不均化物、ロジンアルコール、ロジンアミン、水添ロジンアルコール、ロジンエステル、水添ロジンエステル、ロジン石鹸、水添ロジン石鹸、酸変性ロジン石鹸等が挙げられる。
【0059】
ロジンアミンとしては、例えば、デヒドロアビエチルアミン、ジヒドロアビエチルアミン等が挙げられる。ロジンアミンは、いわゆる不均化ロジンアミンを意味する。
【0060】
本実施形態のフラックスにおいて、ロジンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ロジンは、ロジン誘導体を含むことが好ましく、酸変性ロジン、水添ロジン、重合ロジン及び酸変性水添ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがより好ましく、酸変性水添ロジン、水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことがさらに好ましく、酸変性水添ロジン及び重合ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが特に好ましく、酸変性水添ロジンを少なくとも含むことが最も好ましい。
酸変性水添ロジンとしては、はんだ付け性の観点から、アクリル酸変性水添ロジンが好ましい。すなわち、前記ロジンが、アクリル酸変性水添ロジン、重合ロジン及び水添ロジンからなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
本実施形態のフラックスにおいて用いられるロジンは、酸変性水添ロジン単独でもよいし、酸変性水添ロジンと重合ロジンとの組合せでもよいし、酸変性水添ロジンと水添ロジンとの組合せでもよいし、重合ロジン単独でもよい。
【0061】
本実施形態のフラックス中の、ロジンの含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、10質量%以上であることが好ましく、10質量%以上32.5質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。
ロジンの含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、はんだ合金粉末が溶融しやすくなり、はんだ付け性が高められやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、フラックス残渣の低減化が図られやすい。
【0062】
本実施形態のフラックスにおいては、前記酸無水物と前記ロジンとの混合比率が、ロジン/酸無水物、で表される質量比として、5を超え25未満であることが好ましく、6以上20以下であることがより好ましく、6.5以上17.5以下であることがさらに好ましく、12.5以上15以下であることが特に好ましい。
ロジン/酸無水物、で表される質量比が、前記の好ましい範囲の下限値を超えると、フラックス残渣のべたつきが低減されやすくなり、前記の好ましい範囲の上限値未満であると、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすくなる。
【0063】
本実施形態のフラックスにおいては、前記エポキシ樹脂と前記ロジンとの混合比率が、ロジン/エポキシ樹脂、で表される質量比として、4.0以下であることが好ましく、1.25以上3.75以下であることがより好ましく、1.33以上3.33以下であることがさらに好ましく、1.5以上3.0以下であることが特に好ましい。
ロジン/エポキシ樹脂、で表される質量比が、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されやすくなり、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、フラックス残渣のべたつきが低減されやすくなる。
【0064】
<溶剤>
本実施形態のフラックスは、溶剤を含有する。
溶剤としては、例えば、水、アルコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、テルピネオール類等が挙げられる。
【0065】
アルコール系溶剤としては、例えば、イソプロピルアルコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、イソボルニルシクロヘキサノール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、1,1,1-トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,2’-オキシビス(メチレン)ビス(2-エチル-1,3-プロパンジオール)、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、1,2,6-トリヒドロキシヘキサン、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2-ヘキシル-1-デカノール、オクタンジオール等が挙げられる。
【0066】
グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール:HeDG)、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコール、テトラエチレングリコールジメチルエーテル;モノアルキルプロピレングリコール等が挙げられる。
【0067】
テルピネオール類としては、例えば、α-ターピネオール、β-ターピネオール、γ-ターピネオール、ターピネオール混合物(すなわち、その主成分がα-ターピネオールであり、β-ターピネオール又はγ-ターピネオールを含有する混合物)等が挙げられる。
その他溶剤としては、例えばセバシン酸ジオクチル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0068】
本実施形態のフラックスにおいて、溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、溶剤は、グリコールエーテル系溶剤が好ましく、特にはソルダペーストとした際の粘度安定性、はんだ合金粉末の溶融性の観点から、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテルとトリエチレングリコールモノメチルエーテルとを併用することがより好ましい。
【0069】
本実施形態のフラックス中の、溶剤の含有量は、フラックスにおける残部であり、他の成分の含有量に応じて決定される。
例えば、本実施形態のフラックス中の、溶剤の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、20質量%以上70質量%以下であってもよいし、25質量%以上60質量%以下であってもよいし、30質量%以上50質量%以下であってもよい。
【0070】
<チキソ剤>
本実施形態のフラックスは、チキソ剤を含有する。
チキソ剤としては、例えば、アミド系チキソ剤、エステル系チキソ剤、ソルビトール系チキソ剤等が挙げられる。
【0071】
アミド系チキソ剤としては、例えば、モノアミド、ビスアミド、ポリアミドが挙げられる。
モノアミドとしては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、不飽和脂肪酸アミド、4-メチルベンズアミド(p-トルアミド)、芳香族アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、置換アミド、メチロールステアリン酸アミド、メチロールアミド、脂肪酸エステルアミド等が挙げられる。
ビスアミドとしては、例えば、エチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、エチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、ヘキサメチレンビス脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシ脂肪酸(脂肪酸の炭素原子数C6~24)アミド、芳香族ビスアミド等が挙げられる。前記ビスアミドの原料である脂肪酸としては、例えば、ステアリン酸(炭素原子数C18)、オレイン酸(炭素原子数C18)、ラウリン酸(炭素原子数C12)等が挙げられる。
ポリアミドとしては、例えば、飽和脂肪酸ポリアミド、不飽和脂肪酸ポリアミド、芳香族ポリアミド、1,2,3-プロパントリカルボン酸トリス(2-メチルシクロヘキシルアミド)、環状アミドオリゴマー、非環状アミドオリゴマー等が挙げられる。
【0072】
前記環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、トリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー、ジカルボン酸及びトリカルボン酸とジアミン及びトリアミンとが環状に重縮合したアミドオリゴマー等が挙げられる。
【0073】
また、前記非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸とモノアミンとが非環状に重縮合したアミドオリゴマーである場合等が挙げられる。モノカルボン酸又はモノアミンを含むアミドオリゴマーであると、モノカルボン酸、モノアミンがターミナル分子(terminal molecules)として機能し、分子量を小さくした非環状アミドオリゴマーとなる。また、非環状アミドオリゴマーは、ジカルボン酸及び/又はトリカルボン酸と、ジアミン及び/又はトリアミンとが非環状に重縮合したアミド化合物である場合、非環状高分子系アミドポリマーとなる。更に、非環状アミドオリゴマーは、モノカルボン酸とモノアミンとが非環状に縮合したアミドオリゴマーも含まれる。
【0074】
エステル系チキソ剤としては、例えばエステル化合物が挙げられ、具体的には、硬化ひまし油、ミリスチン酸エチル等が挙げられる。
【0075】
ソルビトール系チキソ剤としては、例えば、ジベンジリデン-D-ソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)-D-ソルビトール、(D-)ソルビトール、モノベンジリデン(-D-)ソルビトール、モノ(4-メチルベンジリデン)-(D-)ソルビトール等が挙げられる。
【0076】
本実施形態のフラックスにおいて、チキソ剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記のなかでも、チキソ剤は、アミド系チキソ剤及びエステル系チキソ剤からなる群より選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、アミド系チキソ剤とエステル系チキソ剤とを併用することがより好ましく、例えばポリアミドと硬化ひまし油との組合せが挙げられる。
【0077】
本実施形態のフラックス中の、チキソ剤の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、4質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上9質量%以下であることがさらに好ましい。
チキソ剤の含有量が、前記の好ましい範囲の下限値以上であると、経時安定性(経時に伴うフラックス分離の抑制)が高められやすくなり、一方、前記の好ましい範囲の上限値以下であると、ソルダペーストの初期粘度が高くなり過ぎることを抑えられやすくなる。
【0078】
<活性剤>
本実施形態のフラックスは、活性剤を含有する。活性剤としては、例えば、有機酸、ハロゲン化合物、アミンが挙げられる。
本実施形態のフラックス中の、活性剤の総含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、25質量%以下であることが好ましく、2.5質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、6質量%以上15質量%以下であることがさらに好ましい。
【0079】
≪有機酸≫
有機酸としては、例えば、カルボン酸、有機スルホン酸が挙げられる。このカルボン酸としては、脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸等が挙げられる。
【0080】
脂肪族モノカルボン酸としては、例えば、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソペラルゴン酸、カプリン酸、カプロレイン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、ウンデカン酸、リンデル酸、トリデカン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、イソパルミチン酸、パルミトレイン酸、ヒラゴン酸、ヒドノカーピン酸、マーガリン酸、イソステアリン酸、エライジン酸、ペトロセリン酸、モロクチン酸、エレオステアリン酸、タリリン酸、バクセン酸、リミノレイン酸、ベルノリン酸、ステルクリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸としては、例えば、サリチル酸、パラヒドロキシフェニル酢酸、安息香酸、2,3-ジヒドロキシ安息香酸、2-キノリンカルボン酸、3-ヒドロキシ安息香酸、p-アニス酸;ピコリン酸、3-ヒドロキシピコリン酸等が挙げられる。
ジカルボン酸としては、シュウ酸、シトラコン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、グルタル酸、ジグリコール酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、エイコサン二酸、o-フタル酸、m-フタル酸(イソフタル酸)、p-フタル酸(テレフタル酸)等が挙げられる。
【0081】
有機スルホン酸としては、例えば、脂肪族スルホン酸、芳香族スルホン酸等が挙げられる。脂肪族スルホン酸としては、例えば、アルカンスルホン酸、アルカノールスルホン酸等が挙げられる。
【0082】
アルカンスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、1-ブタンスルホン酸、2-ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、デカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等が挙げられる。
アルカノールスルホン酸としては、例えば、2-ヒドロキシエタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシペンタン-1-スルホン酸、1-ヒドロキシプロパン-2-スルホン酸、3-ヒドロキシプロパン-1-スルホン酸、4-ヒドロキシブタン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシヘキサン-1-スルホン酸、2-ヒドロキシデカン-1-スルホン酸及び2-ヒドロキシドデカン-1-スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸としては、例えば、1-ナフタレンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸、クレゾールスルホン酸、スルホサリチル酸、ニトロベンゼンスルホン酸、スルホ安息香酸及びジフェニルアミン-4-スルホン酸等が挙げられる。
【0083】
活性剤として有機酸を用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸のなかでは、ジカルボン酸を用いることが好ましく、脂肪族ジカルボン酸を用いることがより好ましく、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸及びエイコサン二酸からなる群より選択される少なくとも一種を用いることがさらに好ましい。
本実施形態のフラックス中の、有機酸の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、15質量%以下であることが好ましく、2質量%以上12質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0084】
≪ハロゲン化合物≫
ハロゲン化合物としては、例えば、アミンハロゲン化水素酸塩、アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0085】
アミンハロゲン化水素酸塩は、アミンとハロゲン化水素とを反応させた化合物である。ここでのアミンとしては、脂肪族アミン、アゾール類、グアニジン類等が挙げられる。ハロゲン化水素としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素の水素化物が挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン等が挙げられる。
グアニジン類及びアゾール類としては、後述のアミンについての説明の中で例示したものが挙げられる。
【0086】
アミンハロゲン化水素酸塩以外の有機ハロゲン化合物としては、例えば、ハロゲン化脂肪族化合物が挙げられる。ハロゲン化脂肪族化合物は、脂肪族炭化水素基を構成する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されたものをいう。
ハロゲン化脂肪族化合物としては、ハロゲン化脂肪族アルコール、ハロゲン化複素環式化合物が挙げられる。
【0087】
活性剤としてハロゲン化合物を用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ハロゲン化合物のなかでは、ハロゲン化脂肪族化合物を用いてもよく、ハロゲン化脂肪族アルコールを用いることが好ましい。ハロゲン化脂肪族アルコールとしては、例えば、1-ブロモ-2-プロパノール、3-ブロモ-1-プロパノール、3-ブロモ-1,2-プロパンジオール、1-ブロモ-2-ブタノール、1,3-ジブロモ-2-プロパノール、2,3-ジブロモ-1-プロパノール、1,4-ジブロモ-2-ブタノール、トランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール等が挙げられる。
本実施形態のフラックス中の、ハロゲン化合物の含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上2.5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0088】
≪アミン≫
アミンとしては、例えば、ロジンアミン、アゾール類、グアニジン類、アルキルアミン化合物、アミノアルコール化合物等が挙げられる。
ロジンアミンとしては、上記<ロジン>において例示したものが挙げられる。
【0089】
アゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、エポキシ-イミダゾールアダクト、2-メチルベンゾイミダゾール、2-オクチルベンゾイミダゾール、2-ペンチルベンゾイミダゾール、2-(1-エチルペンチル)ベンゾイミダゾール、2-ノニルベンゾイミダゾール、2-(4-チアゾリル)ベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール化合物;1,2,4-トリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-tert-オクチルフェノール]、6-(2-ベンゾトリアゾリル)-4-tert-オクチル-6’-tert-ブチル-4’-メチル-2,2’-メチレンビスフェノール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]メチルベンゾトリアゾール、2,2’-[[(メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]イミノ]ビスエタノール、1-(1’,2’-ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール、1-(2,3-ジカルボキシプロピル)ベンゾトリアゾール、1-[(2-エチルヘキシルアミノ)メチル]ベンゾトリアゾール、2,6-ビス[(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)メチル]-4-メチルフェノール、5-メチルベンゾトリアゾール等のトリアゾール化合物;2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ビニル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-s-トリアジン等のトリアジン化合物;5-フェニルテトラゾール等のテトラゾール化合物が挙げられる。
【0090】
グアニジン類としては、例えば、1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジ-o-トリルグアニジン、1-o-トリルビグアニド、1,3-ジ-o-クメニルグアニジン、1,3-ジ-o-クメニル-2-プロピオニルグアニジン等が挙げられる。
【0091】
アルキルアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、トリエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、シクロヘキシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン等が挙げられる。
【0092】
アミノアルコール化合物としては、例えば、1-アミノ-2-プロパノール、N,N,N’,N’-テトラキス(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン等のアルカノールアミンが挙げられる。
【0093】
活性剤としてアミンを用いる場合には、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記の中でも、アミンとしては、アゾール類を用いることが好ましい。アゾール類のなかでも、特には、(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、の硬化反応の促進剤として効果的である観点から、イミダゾール化合物を用いることが好ましく、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のアルキル基置換のイミダゾール化合物を用いることがより好ましく、これらのなかでも、2-エチルイミダゾールを用いることが特に好ましい。
本実施形態のフラックス中の、アミンの含有量は、前記フラックスの総質量(100質量%)に対して、5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0094】
<その他成分>
本実施形態のフラックスは、上述した(P)成分、(AA)成分、ロジン、溶剤、チキソ剤及び活性剤以外に、必要に応じてその他成分を含有してもよい。
その他成分としては、(P)成分及びロジン以外の樹脂成分、金属不活性化剤、界面活性剤、シランカップリング剤、酸化防止剤、着色剤等が挙げられる。
【0095】
≪(P)成分及びロジン以外の樹脂成分≫
ロジン系樹脂以外の樹脂成分としては、例えば、テルペン樹脂、変性テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、変性テルペンフェノール樹脂、スチレン樹脂、変性スチレン樹脂、キシレン樹脂、変性キシレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリル-ポリエチレン共重合樹脂等が挙げられる。
変性テルペン樹脂としては、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、水添芳香族変性テルペン樹脂等が挙げられる。変性テルペンフェノール樹脂としては、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。変性スチレン樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、スチレンマレイン酸樹脂等が挙げられる。変性キシレン樹脂としては、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール変性キシレン樹脂、フェノール変性レゾール型キシレン樹脂、ポリオール変性キシレン樹脂、ポリオキシエチレン付加キシレン樹脂等が挙げられる。
【0096】
≪金属不活性化剤≫
金属不活性化剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、窒素化合物等が挙げられる。
ここでいう「金属不活性化剤」とは、ある種の化合物との接触により金属が劣化することを防止する性能を有する化合物をいう。
ヒンダードフェノール系化合物とは、フェノールのオルト位の少なくとも一方に嵩高い置換基(例えばt-ブチル基等の分岐状又は環状アルキル基)を有するフェノール系化合物をいう。
金属不活性化剤における窒素化合物としては、例えば、ヒドラジド系窒素化合物、アミド系窒素化合物、トリアゾール系窒素化合物、メラミン系窒素化合物等が挙げられる。
【0097】
≪界面活性剤≫
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、例えば、脂肪族アルコールポリオキシエチレン付加体、芳香族アルコールポリオキシエチレン付加体、多価アルコールポリオキシエチレン付加体、脂肪族アルコールポリオキシプロピレン付加体、芳香族アルコールポリオキシプロピレン付加体、多価アルコールポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、例えば、末端ジアミンポリエチレングリコール、末端ジアミンポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール共重合体、脂肪族アミンポリオキシエチレン付加体、芳香族アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシエチレン付加体、多価アミンポリオキシプロピレン付加体等が挙げられる。
【0098】
[フラックスの調製方法]
本実施形態のフラックスは、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂((P)成分)と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物((AA)成分)と、ロジンと、溶剤と、チキソ剤と、活性剤と、を混合することにより調製できる。
【0099】
これらの成分のうち、(P)成分と(AA)成分とロジンとは、加熱により、(P)成分のエポキシ基が、加水分解により発生する(AA)成分のカルボキシ基、及びロジンのカルボキシ基の少なくとも一方のカルボキシ基と反応して反応物(X)を生成し得る。
この反応物(X)は、(P)成分由来の構造単位(P’)と、(AA)成分由来の構造単位(AA’)及びロジン由来の構造単位(ロジン’)の少なくとも一方の構造単位と、を有するものである。
すなわち、第1の態様に係るフラックスの他の実施形態は、無水コハク酸、無水コハク酸の誘導体及びロジンからなる群より選択される少なくとも一種と、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂との反応物(X)、並びに、溶剤、チキソ剤及び活性剤を含有するものである。
【0100】
前記反応物(X)は、フラックスを調製する過程で(例えば、全配合成分を一括に混合している際に)生成したものでもよいし、あるいは、(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、を予め反応させて得たものでもよい。
但し、後者の予め反応させて反応物(X)を調製する場合でも、反応液中に、未反応の(P)成分、未反応の(AA)成分又は未反応のロジンが残存していてもよく、残存しているのが通常である。
例えば、他の実施形態のフラックスは、前記反応物(X)、溶剤、チキソ剤及び活性剤に加え、コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸、又はその酸無水物をさらに含有するものを包含する。あるいは、他の実施形態のフラックスは、前記反応物(X)、溶剤、チキソ剤及び活性剤に加え、ロジンをさらに含有するものを包含する。あるいは、他の実施形態のフラックスは、前記反応物(X)、溶剤、チキソ剤及び活性剤に加え、さらに、コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸又はその酸無水物と、ロジンと、をそれぞれ含有するものを包含する。
【0101】
(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、の反応方法は、特に制限はない。その反応温度は100~250℃が好ましく、その反応時間は5分~30分間が好ましい。
【0102】
(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、の反応において、(P)成分と(AA)成分とロジンとの混合比率は、大気雰囲気におけるはんだ付け性、及び(P)成分と(AA)成分との高分子化を抑制する観点から、ロジンを1としたときの(P)成分の質量比を、0.25以上0.8以下とすることが好ましい。あるいは、ロジンを1としたときの(AA)成分の質量比を、0.04超0.2未満とすることが好ましい。
この場合において、ロジンの配合量は、フラックスを構成する全配合成分の総質量(100質量%)に対して、例えば、10質量%以上とすることが好ましく、10質量%以上32.5質量%以下とすることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下とすることがさらに好ましい。
【0103】
反応物(X)の生成は、フラックスを調製する際における各成分の配合量(仕込み量)と、調製後のフラックスにおいて定量される(未反応の)成分の量と、が異なることから確認できる。
フラックスの調製において、一例として、(P)成分につき、フラックスを調製する際の配合量(仕込み量)と、調製後におけるフラックス中の含有量との差分が、反応物(X)の生成に消費されている。他の例として、(AA)成分につき、フラックスを調製する際の配合量(仕込み量)と、調製後におけるフラックス中の含有量との差分が、反応物(X)の生成に消費されている。他の例として、ロジンにつき、フラックスを調製する際の配合量(仕込み量)と、調製後におけるフラックス中の含有量との差分が、反応物(X)の生成に消費されている。
例えば、反応物(X)を含有するフラックスとしては、(P)成分について、フラックスを調製する際の配合量(仕込み量)と、調製後におけるフラックス中の含有量と、の差分が特に大きいものが挙げられる。(P)成分の配合量(仕込み量)のほぼ全量が、反応物(X)の生成に消費されているフラックスも挙げられる。
【0104】
調製後におけるフラックス中の(P)成分の含有量は、フラックスから抽出した試料に対して、液体クロマトグラフ/フーリエ変換質量分析(LC/FTMS)を行うことにより定量できる。
調製後におけるフラックス中の(AA)成分及びロジンの各含有量は、フラックスから抽出した試料に対して、ガスクロマトグラフ/質量分析(GC/MS)を行うことにより定量できる。
【0105】
他の実施形態にかかる、反応物(X)を含有するフラックス中、当該フラックスの総質量(100質量%)に対して、反応物(X)の含有量は、例えば1質量%以上20質量%以下であり、(P)成分の含有量は、例えば0質量%以上5質量%以下であり、コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸、及びその酸無水物の総含有量は、例えば0.1質量%以上4.5質量%以下であり、ロジンの含有量は、例えば7質量%以上30質量%以下であり、溶剤の含有量は、残部であり、例えば20質量%以上70質量%以下であり、チキソ剤の含有量は、例えば2質量%以上15質量%以下であり、活性剤の含有量は、例えば2.5質量%以上25質量%以下である。
【0106】
後者の予め反応させて反応物(X)を調製する場合、(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、の反応終了後、反応物(X)を精製することなく、その反応液に、溶剤とチキソ剤と活性剤と必要に応じてその他成分とを混合することで、反応物(X)を含有するフラックスを調製することができる。
あるいは、(P)成分と、(AA)成分及びロジンの少なくとも一方と、を予め反応させる際、硬化反応の促進剤としてイミダゾール化合物(好ましくは、アルキル基置換のイミダゾール化合物、特に好ましくは2-エチルイミダゾール)を併用して、反応物(X)を含有するフラックスを調製することもできる。
【0107】
以上説明したように、本実施形態のフラックスは、ロジン、溶剤、チキソ剤及び活性剤に加えて、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂((P)成分)と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物((AA)成分)と、を併用する。かかる(P)成分と(AA)成分との組合せを採用したことにより、理由は定かではないが、大気リフローはんだ付けの場合においても、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制することができるフラックスを提供することができる。
【0108】
かかる本実施形態のフラックスにおいては、(AA)成分とロジンとの混合比率を制御することで、あるいは、(P)成分とロジンとの混合比率を制御することで、温度変化によるフラックス残渣割れの発生の抑制と、そのフラックス残渣のべたつき低減と、の両立を容易に図ることができる。
【0109】
(ソルダペースト)
第2の態様に係るソルダペーストの一実施形態は、はんだ合金粉末と、上述した実施形態のフラックスと、を含有するものである。かかるソルダペーストは、はんだ合金粉末と、上述した実施形態のフラックスとを、公知の方法を使用して混合することにより調製できる。
はんだ合金粉末を構成するはんだ合金としては、公知の組成のはんだ合金を使用することができる。
はんだ合金は、Sn単体のはんだ、又は、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Bi系、Sn-In系等、あるいは、これらの合金にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Sn-Pb系、あるいは、Sn-Pb系にSb、Bi、In、Cu、Zn、As、Ag、Cd、Fe、Ni、Co、Au、Ge、P等を添加したはんだ合金であってもよい。
はんだ合金は、Pbを含まないはんだ合金が好ましく、SnとAgとCuとを含むはんだ合金からなるものであることがより好ましい。
【0110】
はんだ付け工程における、はんだ付けの条件は、はんだ合金の融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn-Ag-Cu系のはんだ合金を用いる場合には、溶融はんだの温度は、230~280℃であることが好ましく、240~260℃であることがより好ましい。あるいは、Sn-Bi系のはんだ合金(SnとBiとを含むはんだ合金)を用いる場合には、溶融はんだの温度は、170~220℃であることが好ましく、180~200℃であることがより好ましい。
【0111】
フラックスの含有量:
本実施形態のソルダペースト中、フラックスの含有量は、ソルダペーストの全質量に対して、5~30質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0112】
以上説明した本実施形態のソルダペーストによれば、上述した実施形態のフラックスが用いられているため、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制されて、はんだ接合部の耐久性が向上し、接合体を備えた装置の動作の安定化が図られる。
【0113】
(接合体の製造方法)
第3の態様に係る接合体の製造方法の一実施形態は、部品と基板とをはんだ付けすることにより接合体を得る工程を含む方法である。かかる接合体の製造方法においては、前記はんだ付けの際、上述した第2の態様に係るソルダペーストを用いて、大気雰囲気下でリフローを行う。
以下、かかる接合体の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る接合体の製造方法は、ソルダペースト塗布工程、部品取付け工程、リフロー工程をこの順に含む方法である。
【0114】
[ソルダペースト塗布工程]
ソルダペースト塗布工程においては、第2の態様に係るソルダペーストを、基板の表面に塗布する。
基板としては、例えば、プリント配線基板、ウエハ等が挙げられる。
ソルダペーストを塗布する方法としては、例えば、開口部を有するマスクを用いてソルダペーストを印刷塗布する方法、ディスペンサ等を用いてソルダペーストを吐出する方法、プローブピン等を用いてソルダペーストを転写する方法等が挙げられる。
【0115】
[部品取付け工程]
部品取付け工程においては、ソルダペーストが塗布された基板に、部品を取り付ける。
部品としては、例えば、チップ、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器及びコンデンサ等が挙げられる。
【0116】
[リフロー工程]
リフロー工程は、大気雰囲気下でリフロー(大気リフロー)を行う操作を少なくとも含む。一般的に「大気リフロー」とは、加熱した空気(窒素約80vol%、酸素約20vol%)中で、はんだ付けを行うことをいう。
【0117】
リフロー工程においては、リフロー炉において、大気雰囲気下で炉内を加熱し、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも高い温度(すなわち、ピーク温度)で、部品取り付け後の基板を加熱する(これを本加熱工程という)。
加熱温度としては、例えば、はんだ粉末の融点よりも5~30℃高い温度であってもよい。加熱時間としては、例えば、30秒~3分間であってもよい。
【0118】
リフロー工程は、本加熱工程の前に、プリヒート工程を有するものであってもよい。
プリヒート工程は、リフロー炉において、ソルダペーストに含まれるはんだ粉末の融点よりも低い温度で、部品取り付け後の基板を加熱する。加熱温度としては、例えば、150~180℃であってもよい。加熱時間としては、例えば、1分~5分間であってもよい。
【0119】
以上説明した本実施形態に係る接合体の製造方法によれば、上述した本実施形態のフラックスを含有するソルダペーストが採用されていることで、大気リフローはんだ付けの場合であっても、製造される接合体は、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑制される。
加えて、本実施形態に係る接合体の製造方法によれば、大気雰囲気下でリフローを安定に行うことが可能であることから、窒素使用量の削減などに貢献することができる。
【実施例】
【0120】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0121】
<フラックスの調製>
(実施例1~105、比較例1~9)
表1~13に示す組成で、実施例及び比較例の各フラックスを調合した。
各フラックスの調製は、次のようにして行った。すなわち、全ての成分をステンレス缶に投入し、撹拌しながら約200℃まで昇温させて5分間加熱し、均一に溶解させた。その後、24時間冷却をして、フラックスを得た。
【0122】
表中、各原料の含有量は、フラックスの総質量(100質量%)に対する割合(質量%)を示している。使用した原料を以下に示した。
【0123】
・エポキシ樹脂
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-850」、一般式(P1)中のR10はグリシジル基、R11はエチレン基(-CH2CH2-)、n1は2;エポキシ当量122(g/eq)
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-841」、一般式(P1)中のR10はグリシジル基、R11はエチレン基(-CH2CH2-)、n1は13;エポキシ当量372(g/eq)
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-861」、一般式(P1)中のR10はグリシジル基、R11はエチレン基(-CH2CH2-)、n1は22;エポキシ当量551(g/eq)
【0124】
ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-920」、一般式(P1)中のR10はグリシジル基、R11はプロピレン基(-CH(CH3)-CH2-)、n1は3;エポキシ当量176(g/eq)
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-931」、一般式(P1)中のR10はグリシジル基、R11はプロピレン基(-CH(CH3)-CH2-)、n1は11;エポキシ当量471(g/eq)
【0125】
プロピレンオキシド変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂
株式会社ADEKA製の商品名「EP-4000S」、一般式(P2)中のR20はグリシジル基、R21及びR22はそれぞれメチル基、R23はプロピレン基(-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-);エポキシ当量260(g/eq)
旭化成株式会社製の商品名「AER9000」、一般式(P2)中のR20はグリシジル基、R21及びR22はそれぞれメチル基、R23はプロピレン基(-CH2-CH(CH3)-、-CH(CH3)-CH2-);エポキシ当量380(g/eq)
【0126】
1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル
ナガセケムテックス株式会社製の商品名「デナコール EX-212」、エポキシ当量151(g/eq)
【0127】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂
DIC株式会社製の商品名「エピクロン840」、エポキシ当量180(g/eq)
【0128】
脂肪酸ポリカルボン酸グリシジルエステル混合物
岡村製油株式会社製の商品名「IPU-22G」、8,13-ジメチル-8,12-エイコサジエン二酸ビス(2,3-エポキシプロピル)(70%以上)、CAS番号78352-82-6;エポキシ当量240(g/eq)
【0129】
・ポリブタジエン
水酸基末端液状ポリブタジエン
出光興産株式会社製の商品名「Poly bd R-15HT」
【0130】
・酸無水物
無水コハク酸又はその誘導体
アリルコハク酸無水物
一般式(AA-1)中のR01は-CH2CH=CH2、R02は水素原子
2-ブテン-1-イルコハク酸無水物
一般式(AA-1)中のR01は-CH2CH=CHCH3、R02は水素原子
2-オクテニルコハク酸無水物
一般式(AA-1)中のR01は-CH2CH=CH(CH2)4CH3、R02は水素原子
テトラプロペニルコハク酸無水物
一般式(AA-1)中のR01は-C12H23、R02は水素原子
イソオクタデセニルコハク酸無水物
一般式(AA-1)中のR01は-C18H35、R02は水素原子
【0131】
ブチルコハク酸無水物(融点46℃)
一般式(AA-1)中のR01は-(CH2)3CH3、R02は水素原子
n-オクチルコハク酸無水物(融点65℃)
一般式(AA-1)中のR01は-(CH2)7CH3、R02は水素原子
無水コハク酸(融点120℃)
一般式(AA-1)中のR01は水素原子、R02は水素原子
【0132】
マレイン酸無水物(融点54℃)
フタル酸無水物(融点131℃)
【0133】
脂肪族ポリカルボン酸ポリ無水物混合物
岡村製油株式会社製の商品名「IPU-22AH」、脂肪族ポリカルボン酸混合物(イソドコサジエン二酸70%以上)のポリ無水物、主物質名:8,12-エイコサジエン二酸,8,13-ジメチル-,ホモポリマー;CAS番号86851-05-0
【0134】
・ロジン
アクリル酸変性水添ロジン、重合ロジン、水添ロジンをそれぞれ用いた。
【0135】
・溶剤
ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(HeDG)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルトリグリコール(MTG))をそれぞれ用いた。
【0136】
・チキソ剤
ポリアミド(飽和脂肪酸ポリアミド、融点200℃以下)、硬化ひまし油をそれぞれ用いた。
【0137】
・活性剤
有機酸
ジカルボン酸としてシュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、エイコサン二酸をそれぞれ用いた。ダイマー酸として水添ダイマー酸を用いた。
ハロゲン化合物としてトランス-2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオールを用いた。
イミダゾール化合物として2-エチルイミダゾールを用いた。
【0138】
<ソルダペーストの調製>
上述した実施例及び比較例の各フラックスと、下記のはんだ合金粉末と、をそれぞれ混合してソルダペーストを調合した。調合したソルダペーストは、いずれも、フラックスを11質量%、はんだ合金粉末を89質量%とした。
【0139】
はんだ合金粉末:Cuが0.5質量%と、Agが3.0質量%と、残部がSnとのはんだ合金からなる粉末。このはんだ合金の固相線温度は217℃であり、液相線温度は220℃である。前記はんだ合金粉末のサイズは、JIS Z 3284-1:2014における粉末サイズの分類(表2)において、記号4を満たすサイズ(粒度分布)である。
【0140】
<評価>
以下に示すようにして、はんだ付け性の評価、フラックス残渣割れ防止性の評価、フラックス残渣のべたつき防止性の評価をそれぞれ行った。これらの評価結果を表1~13に示した。
【0141】
[はんだ付け性の評価]
Cuランドに、ソルダペーストを印刷した後、大気雰囲気下でリフロー(大気リフロー)を行った。リフローの後、Cuランド64個の各々のはんだの溶融状態を確認し、未溶融もしくは一部未溶融が発生したCuランドの数をカウントした。そして、下記の判定基準に基づき、はんだ付け性を評価した。
かかる評価において、開口部は直径0.30mmに設定し、マスク厚は0.15mmに設定した。リフロー条件(リフローのプロファイル)は、プリヒートを150~180℃で90秒間とし、ピーク温度を240℃とし、はんだ溶融時間を40秒間とした。このリフローのプロファイルを
図1に示した。
【0142】
判定基準
◎:未溶融もしくは一部未溶融が発生したCuランドの数が15個以下
〇:未溶融もしくは一部未溶融の発生したCuランドの数が16~32個
×:未溶融もしくは一部未溶融の発生したCuランドの数が33個以上
【0143】
[フラックス残渣割れ防止性の評価]
プリント基板(材質:FR-4、厚さ1.0mm、ランド寸法1.5mm×0.25mm、ピッチ0.5mm、ランド間幅0.25mm、ランド数64)を準備した。調製したソルダペーストを、厚さが150μmのメタルマスクを用いて、前記プリント基板上に印刷した。
次いで、印刷後のプリント基板を用い、大気雰囲気下でリフローはんだ付け(大気リフロー)を行い、試験基板を得た。リフロー条件(リフローのプロファイル)は、上記[はんだ付け性の評価]と同じである(
図1)。
【0144】
次いで、得られた各試験基板をヒートサイクル試験装置に入れ、低温(-40℃)及び高温(85℃)での静置を1サイクルとして、1000サイクル行った。このサイクルにおいて、低温及び高温で静置する時間をいずれも30分間とし、1サイクルの時間を70分間に設定した。1000サイクル行った後、フラックス残渣のクラックを観察し、下記の判定基準に基づき、フラックス残渣割れ防止性を評価した。
【0145】
判定基準
◎:1000サイクル後も、クラックなし
〇:500サイクル後まで、クラックなし
△:500サイクル後、0.125mm以内のクラックあり
×:500サイクル後、横断するクラックあり
【0146】
[フラックス残渣のべたつき防止性の評価]
基板のCuランドに、フラックスを印刷した後、窒素雰囲気下(酸素濃度3000ppm)でリフローを行った。リフローの後、その基板を、温度25℃、相対湿度50%で保管した。
保管後の基板におけるフラックス残渣を指で触り、べたつきを確認した。そして、下記の判定基準に基づき、フラックス残渣のべたつき防止性を評価した。
かかる評価において、開口部は直径6.5mmに設定し、マスク厚は0.15mmに設定した。リフロー条件(リフローのプロファイル)は、窒素雰囲気下であることの他は、上記[はんだ付け性の評価]と同じである(
図1)。
なお、フラックス残渣のべたつき防止性の評価におけるリフロー条件は、大気雰囲気下でリフローを行った場合に比べ、窒素雰囲気下でリフローを行った場合の方が、フラックス残渣がべたつきやすいことから、窒素雰囲気下でリフローを行う条件とした。
【0147】
判定基準
◎:はんだ付け後から1日間以内に、フラックス残渣にべたつきなし
〇:はんだ付け後から3日間以内に、フラックス残渣にべたつきなし
△:はんだ付け後から7日間以内に、フラックス残渣にべたつきなし
×:はんだ付け後から7日間経過後も、フラックス残渣にべたつきあり
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
表1~12に示す結果から、本発明を適用した実施例1~105のフラックスを用いた場合、大気リフローはんだ付けの場合においても、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制できること、が確認された。
【0161】
[リフロー条件(雰囲気)の違いの評価]
比較例7~9のフラックスを用いた場合について、上述のはんだ付け性の評価、フラックス残渣割れ防止性の評価、フラックス残渣のべたつき防止性の評価におけるリフロー条件を、大気雰囲気(窒素約80vol%、酸素約20vol%)と、窒素雰囲気(酸素濃度3000ppm)とでそれぞれ行った。これらの評価結果を表13に示した。
【0162】
【0163】
表13に示す結果から、比較例7~9のフラックスを用いた際には、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑えられないこと、が確認された。
これに対して、本発明を適用した実施例8に係るフラックスは、大気リフローはんだ付けの場合において、温度変化によるフラックス残渣割れの発生が抑えられており、大気リフローはんだ付け用として特に好適なものであること、が認められる。
【0164】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【要約】
【課題】大気リフローはんだ付けの場合においても、温度変化によるフラックス残渣割れの発生を抑制することができるフラックス、ソルダペースト、及び接合体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、オキシアルキレン基を有するエポキシ樹脂と、無水コハク酸及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも一種の酸無水物と、ロジンと、溶剤と、チキソ剤と、活性剤と、を含有することを特徴とする。本発明に係る接合体の製造方法は、部品と基板とをはんだ付けすることにより接合体を得る工程を含み、はんだ付けの際、はんだ合金粉末と本発明に係るフラックスとを含有するソルダペーストを用いて、大気雰囲気下でリフローを行うことを特徴とする。
【選択図】なし