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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】温度センサ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/22 20060101AFI20240807BHJP
   H01C 1/01 20060101ALI20240807BHJP
   H01C 1/028 20060101ALI20240807BHJP
   H01C 7/04 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G01K7/22 J
H01C1/01 Z
H01C1/028
H01C7/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020168906
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2021156864
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020055314
(32)【優先日】2020-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】吉田 利博
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】稲場 均
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124125(JP,A)
【文献】特開2005-158397(JP,A)
【文献】特開2011-052240(JP,A)
【文献】特開2019-110277(JP,A)
【文献】特開平11-351975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
H01C 1/01,1/028,7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱素子部と、
測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と前記感熱素子部が取り付けられた底面部とを有した圧着端子とを備え、
前記感熱素子部が、前記底面部の上面に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備え、
前記底面部の上面のうち少なくとも前記感熱素子部の直下が、前記底面部の下面よりも粗面とされ
前記底面部の上面に、複数のドット状の凹部が形成され、
前記凹部が、格子点上に配置又は千鳥配置に配列され、
四方に隣接する前記凹部同士が、互いに外周部で重なってオーバーラップしており、前記オーバーラップした部分にも凹凸が形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の温度センサにおいて、
前記底面部の上面のうち少なくとも前記絶縁性フィルムの直下が、前記底面部の下面よりも粗面とされていることを特徴とする温度センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の温度センサにおいて、
前記凹部内に、複数の凹凸が形成されていることを特徴とする温度センサ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の温度センサにおいて、
前記圧着端子が、前記底面部上に前記感熱素子部を囲んだ平面視コ字状の壁部と、
前記壁部内で前記感熱素子部を封止した封止樹脂とを備え、
前記壁部の内面が、前記底面部の下面よりも粗面とされていることを特徴とする温度センサ。
【請求項5】
請求項1からのいずれか一項に記載の温度センサの製造方法であって、
測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と底面部とを有した圧着端子の前記底面部の上面を下面よりも粗面化する粗面化工程と、
前記粗面化した前記底面部の上面に感熱素子部を取り付ける素子部取り付け工程とを有し、
前記感熱素子部が、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備え、
前記粗面化工程で、前記底面部の上面にレーザ光を照射して複数のドット状の凹部を形成し、
前記素子部取付工程で、前記底面部の上面に前記絶縁性フィルムを接着剤で接着することを特徴とする温度センサの製造方法。
【請求項6】
請求項に記載の温度センサの製造方法において、
前記粗面化工程で、隣接する前記凹部の外周部が互いに重なる位置にレーザ光を照射して前記凹部を形成することを特徴とする温度センサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物への取り付けが容易で、耐久性及び応答性に優れた温度センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度センサとして、チップ状やフレーク状のサーミスタ素子を圧着端子に取り付けたものが知られている。
この温度センサでは、いわゆるR端子である圧着端子にネジ止め取り付けが可能な円環部が設けられているので、この部分にネジを挿通させた状態で測定対象物の雌ネジ部等に螺着させることで、温度センサを測定対象物に容易にネジ止めすることができる。
【0003】
例えば、特許文献1には、感熱素子部と、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と感熱素子部が取り付けられた底面部とを有した圧着端子とを備え、感熱素子部が、底面部の上面に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、絶縁性フィルムの上面に設けられたサーミスタ素子と、一端がサーミスタ素子に接続され絶縁性フィルムの表面に形成された一対のパターン配線とを備えた温度センサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-124125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、圧着端子の底面部上にエポキシ系接着剤等の接着剤を塗布して絶縁性フィルムを接着しているが、厳しい条件で温度サイクル試験を行うと、圧着端子の底面と接着剤との界面の一部で剥離やクラックが生じてしまうおそれがある。圧着端子の底面と接着剤との界面に剥離やクラックが生じると熱時定数の値が悪化し、熱応答性が低下してしまう不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、圧着端子の底面部と接着剤との界面における剥離やクラックの発生を抑制し、安定した熱時定数及び高い熱応答性を有する温度センサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る温度センサは、感熱素子部と、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と前記感熱素子部が取り付けられた底面部とを有した圧着端子とを備え、前記感熱素子部が、前記底面部の上面に接着剤で接着された絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備え、前記底面部の上面のうち少なくとも前記感熱素子部の直下が、前記底面部の下面よりも粗面とされていることを特徴とする。
【0008】
この温度センサでは、底面部の上面のうち少なくとも感熱素子部の直下が、底面部の下面よりも粗面とされているので、粗面化された上面の凹凸に接着剤が入り込み、アンカー効果及び接触面積が増大することで、少なくとも感熱素子部の直下において接着強度が高くなり、剥離やクラックの発生を抑制することができる。
【0009】
第2の発明に係る温度センサは、第1の発明において、前記底面部の上面のうち少なくとも前記絶縁性フィルムの直下が、前記底面部の下面よりも粗面とされていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、底面部の上面のうち少なくとも絶縁性フィルムの直下が、底面部の下面よりも粗面とされているので、絶縁性フィルム全体において接着強度が高くなり、絶縁性フィルム全体で剥離やクラックの発生を抑制することができる。特に、剥がれ易い絶縁性フィルムの縁を確実に接着することができる。
【0010】
第3の発明に係る温度センサは、第1又は第2の発明において、前記底面部の上面に、複数のドット状の凹部が形成され、前記凹部内に、複数の凹凸が形成されていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、底面部の上面に、複数のドット状の凹部が形成され、凹部内に、複数の凹凸が形成されているので、凹部内の凹凸により接触面積が増大すると共にアンカー効果も増大し、さらに接着強度が向上する。
【0011】
第4の発明に係る温度センサは、第3の発明において、隣接する前記凹部同士が、互いに外周部で重なっていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、隣接する凹部同士が、互いに外周部で重なっているので、隣接する凹部同士が互いにオーバーラップして全体としてさらに粗面化され、接触面積がより増大することで、高い熱伝導性やアンカー効果等を得ることができる。
【0012】
第5の発明に係る温度センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記圧着端子が、前記底面部上に前記感熱素子部を囲んだ平面視コ字状の壁部と、前記壁部内で前記感熱素子部を封止した封止樹脂とを備え、前記壁部の内面が、前記底面部の下面よりも粗面とされていることを特徴とする。
すなわち、この温度センサでは、壁部の内面が、底面部の下面よりも粗面とされているので、封止樹脂と粗面化された壁部との高い接着強度を得ることができる。
【0013】
第6の発明に係る温度センサの製造方法は、第1から第5の発明のいずれかの温度センサの製造方法であって、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部と底面部とを有した圧着端子の前記底面部の上面を下面よりも粗面化する粗面化工程と、前記粗面化した前記底面部の上面に感熱素子部を取り付ける素子部取り付け工程とを有し、前記感熱素子部が、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの上面に設けられた感熱素子と、一端が前記感熱素子に接続され前記絶縁性フィルムの上面に形成された一対のパターン配線とを備え、前記粗面化工程で、前記底面部の上面にレーザ光を照射して複数のドット状の凹部を形成し、前記素子部取付工程で、前記底面部の上面に前記絶縁性フィルムを接着剤で接着することを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、粗面化工程で、底面部の上面にレーザ光を照射して複数のドット状の凹部を形成するので、レーザ光照射により局所的に溶融及び蒸発させた凹部内に複数の凹凸が形成され、接着強度がより高い凹部を得て、信頼性の高い温度センサを作製することができる。
【0014】
第7の発明に係る温度センサの製造方法は、第6の発明において、前記粗面化工程で、隣接する前記凹部の外周部が互いに重なる位置にレーザ光を照射して前記凹部を形成することを特徴とする。
すなわち、この温度センサの製造方法では、粗面化工程で、隣接する凹部の外周部が互いに重なる位置にレーザ光を照射して凹部を形成するので、隣接する凹部の外周部がオーバーラップしてより粗面化させることができる。特に、オーバーラップした部分には、2度のレーザ光照射によって、より多くの凹凸が形成され、接触面積がさらに増大することで、より高いアンカー効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る温度センサによれば、底面部の上面のうち少なくとも感熱素子部の直下が、下面よりも粗面とされているので、粗面化された上面の凹凸に接着剤が入り込み、少なくとも感熱素子部の直下において接着強度が高くなり、剥離やクラックの発生を抑制することができる。
したがって、本発明の温度センサでは、厳しい温度サイクル試験を行っても圧着端子と接着剤との界面で剥離やクラックが生じ難くなり、安定した熱時定数及び高い熱応答性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第1実施形態を示す樹脂封止前の分解斜視図である。
図2】第1実施形態において、圧着端子の要部(a)及び感熱素子部(b)を示す平面図である。
図3】第1実施形態において、樹脂封止後の温度センサを示す斜視図である。
図4】第1実施形態において、凹部を示す拡大断面図である。
図5】第1実施形態において、底面部を示す模式的な拡大断面図である。
図6】本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例において、底面部の上面を示す要部の拡大平面図である。
図7】本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例において、底面部の上面を示す要部の拡大平面図である。
図8】本発明に係る温度センサ及びその製造方法の実施例及び比較例において、温度サイクル試験による熱応答速度の経時変化を示すグラフである。
図9】本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第2実施形態において、底面部を示す模式的な拡大断面図である。
図10】第2実施形態において、底面部の上部を示す要部の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第1実施形態を、図1から図5を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0018】
本実施形態の温度センサ1は、図1から図3に示すように、感熱素子部2と、測定対象物にネジで固定可能なネジ取り付け部3と感熱素子部2が取り付けられた底面部4とを有した圧着端子5とを備えている。
上記感熱素子部2は、底面部4の上面に接着剤(図示略)で接着された絶縁性フィルム6と、絶縁性フィルム6の上面に設けられた感熱素子7と、一端が感熱素子7に接続されていると共に他端が一対のリード線8に接続され絶縁性フィルム6の上面に形成された一対のパターン配線9とを備えている。
【0019】
上記底面部4の上面のうち少なくとも感熱素子部2の直下は、図1図2及び図5に示すように、底面部4の下面よりも粗面とされている。すなわち、底面部4の上面のうち少なくとも感熱素子部2の直下が、底面部4の下面よりも表面粗さが大きくなっている。
さらに、底面部4の上面のうち少なくとも絶縁性フィルム6の直下は、底面部4の下面よりも粗面とされている。
すなわち、底面部4の上面には、複数のドット状の凹部Hが形成されている。
【0020】
なお、本実施形態では、底面部4の上面全体に凹部Hを形成して粗面化しているが、絶縁性フィルム6の直下の凹部Hを、その周りの領域よりも高い密度で形成して面粗さを大きく設定しても構わない。これにより、絶縁性フィルム6の直下における底面部4と接着剤との接着強度を、その周りの領域よりも高く設定することができ、絶縁性フィルム6の縁からの剥がれを抑制することができる。
【0021】
また、圧着端子5は、底面部4上に感熱素子部2を囲んだ平面視コ字状の壁部11と、図3に示すように、壁部11内で感熱素子部2を封止した封止樹脂12とを備え、図1に示すように、壁部11の内面が、底面部4の下面よりも粗面とされている。
本実施形態では、壁部11の内面にも、底面部4の上面と同様に、複数のドット状の凹部Hが形成されている。
壁部11は、感熱素子部2を三方向から囲んで底面部4の周縁部に立設されている。
また、封止樹脂12は、壁部11で囲まれた部分を埋めている。
【0022】
上記凹部H内には、図4に示すように、複数の凹凸が形成されている。
複数の凹部Hは、格子点上に配置されている。なお、複数の凹部Hを千鳥配置等に配列しても構わない。
底面部4の上面及び壁部11の内面は、多数の凹部Hにより例えばRa0.6μm以下の面粗さとされている。例えば、凹部Hのピッチは、20~60μmに設定し、凹部Hの深さが約1μmに設定される。
なお、底面部4の下面は、測定対象物に密着させるため、できるだけ平坦面とすることが好ましい。
【0023】
上記感熱素子7は、両端に端子電極が形成されたチップサーミスタである。なお、感熱素子7として、フレーク状のサーミスタ素子,薄膜サーミスタや焦電素子等を採用しても構わない。
上記絶縁性フィルム6は、樹脂や金属フィラーを含有した接着剤で圧着端子5の底面部4に接着されている。
例えば、上記接着剤として、銀フィラーを含有した高熱伝導性銀接着剤(50~95W/(m・K))などが採用可能である。
【0024】
上記一対のリード線8は、一対のパターン配線9の他端にあるパッド部9aに半田材、溶接又は導電性接着剤で接合され接続されている。なお、パッド部9aは、リード線8を接続するために、他の部分よりも幅広に形成されている。
【0025】
上記絶縁性フィルム6は、例えば厚さ7.5~125μmのポリイミド樹脂シートで矩形状に形成されている。
上記一対のパターン配線9の一端は、感熱素子7の両端の端子電極に接続されている。
これら一対のパターン配線9は、例えばCu膜等の金属膜でパターン形成されている。
なお、上記ネジ取り付け部3は、底面部4の先端側に設けられ、ネジが挿通可能なネジ取付孔3aを有している。
【0026】
本実施形態の温度センサ1の製造方法は、圧着端子5の底面部4の上面を下面よりも粗面化する粗面化工程と、粗面化した底面部4の上面に感熱素子部2を取り付ける素子部取り付け工程とを有し、粗面化工程で、底面部4の上面にレーザ光を照射して複数のドット状の凹部Hを形成し、素子部取付工程で、底面部4の上面に絶縁性フィルム6を接着剤で接着する。
【0027】
上記粗面化工程では、レーザ光の照射条件として、例えば電流:25A、加工速度:1200mm/s、周波数:30kHz、重ね回数:2回、ピッチ20μm、出力:5.4kw、ビーム径:約100μmのYAGレーザを用いる。
上記素子部取付工程では、圧着端子5の底面部4上に接着剤を塗布し、その上に、図2の(b)に示す感熱素子部2を載置する。
次に、パッド部9aにリード線8の端部を半田付け等で接着し、さらに図3に示すように、感熱素子部2を封止樹脂12で封止することで、温度センサ1が作製される。
【0028】
このように本実施形態の温度センサ1では、底面部4の上面のうち少なくとも感熱素子部2の直下が、底面部4の下面よりも粗面とされているので、粗面化された上面の凹凸に接着剤が入り込み、アンカー効果及び接触面積が増大することで、少なくとも感熱素子部2の直下において接着強度が高くなり、剥離やクラックの発生を抑制することができる。
さらに、底面部4の上面のうち少なくとも絶縁性フィルム6の直下が、底面部4の下面よりも粗面とされることで、絶縁性フィルム6全体において接着強度が高くなり、絶縁性フィルム6全体で剥離やクラックの発生を抑制することができる。特に、剥がれ易い絶縁性フィルム6の縁を確実に接着することができる。
【0029】
また、底面部4の上面に、複数のドット状の凹部Hが形成され、凹部H内に、複数の凹凸が形成されているので、凹部H内の凹凸により接触面積が増大すると共にアンカー効果も増大し、さらに接着強度が向上する。
さらに、壁部11の内面も、底面部4の下面よりも粗面とされているので、封止樹脂12と粗面化された壁部11との高い接着強度を得ることができる。
【0030】
また、本実施形態の温度センサ1の製造方法では、粗面化工程で、底面部4の上面にレーザ光を照射して複数のドット状の凹部Hを形成するので、レーザ光照射により局所的に溶融及び蒸発させた凹部H内に複数の凹凸が形成され、接着強度がより高い凹部Hを得て、信頼性の高い温度センサを作製することができる。
【0031】
次に、本発明に係る温度センサ及びその製造方法の第2実施形態について、図9を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0032】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、隣接するドット状の凹部Hが互いに間隔を空けて形成されているのに対し、第2実施形態の温度センサでは、図9に示すように、底面部24に形成され隣接する凹部H同士が、互いに外周部で重なっている点である。
すなわち、第2実施形態では、粗面化工程で、隣接する凹部Hの外周部が互いに重なる位置にレーザ光を照射して凹部Hを形成する。
【0033】
例えば、第1実施形態と同じビーム径のままピッチを狭く設定したり、ビーム径を大きくすることで凹部Hの内径Wを大きくしたりして、隣接する凹部Hの外周部が互いに重なるようにレーザ光を照射する。
このように第2実施形態の温度センサでは、隣接する凹部H同士が、互いに外周部で重なっているので、隣接する凹部H同士が互いにオーバーラップして全体としてさらに粗面化され、接触面積がより増大することで、高い熱伝導性やアンカー効果等を得ることができる。
【0034】
また、粗面化工程で、隣接する凹部Hの外周部が互いに重なる位置にレーザ光を照射して凹部Hを形成するので、隣接する凹部Hの外周部がオーバーラップしてより粗面化させることができる。特に、オーバーラップした部分には、2度のレーザ光照射によって、より多くの凹凸が形成され、接触面積がさらに増大することで、より高いアンカー効果を得ることができる。
【実施例
【0035】
上記第1実施形態に基づいて実際に温度センサ及びその製造方法の実施例を作製した。
本発明の実施例では、上記レーザ照射条件で底面部の上面に複数の凹部を形成した。その拡大写真を、図6及び図7に示す。これらの写真からわかるように、レーザ光で形成した凹部内にも複数の凹凸が形成されている。
【0036】
また、本発明の実施例について、温度サークル試験による熱応答速度の経時変化を測定した結果を、図8に示す(図中、処理品と記載)。
なお、比較例として、底面部及び壁面部を粗面化していない未処理品も同様に測定した結果も合わせて図8に示す。
これらの結果からわかるように、本発明の実施例は、比較例に比べて温度サイクル試験による熱時定数比率の変化が大幅に小さくなっている。
【0037】
次に、上記第2実施形態に基づいて実際の温度センサ及びその製造方法の実施例を作製した。
その拡大写真を、図10に示す。この写真からわかるように、隣接する凹部Hの外周部が重なっており、全体としてより粗面化されていると共に、オーバーラップした部分にも多くの凹凸が形成されている。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述したように、底面部の上面にレーザ光を照射して複数の凹部を形成することで粗面化することが好ましいが、他の方法、例えば底面部の上面にサンドブラスタで面粗さRaが1μm以下の細かな凹凸を形成することで粗面化しても構わない。
【符号の説明】
【0039】
1…温度センサ、2…感熱素子部、3…ネジ取り付け部、4,24…底面部、5…圧着端子、6…絶縁性フィルム、7…感熱素子、9…パターン配線、11…壁部、12…封止樹脂、H…凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10