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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ヒータ、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20240807BHJP
   H05B 3/28 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H05B3/02 B
H05B3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020181501
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072190
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】玉井 雅彦
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-112701(JP,A)
【文献】特開2006-134831(JP,A)
【文献】特開2020-154104(JP,A)
【文献】特開平05-135848(JP,A)
【文献】特開平08-095402(JP,A)
【文献】特開2019-169417(JP,A)
【文献】特開2005-026185(JP,A)
【文献】登録実用新案第3218384(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02
H05B 3/28
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状を呈し、第1の方向に延びる基板と;
前記基板の一方の面に設けられた発熱部と;
前記基板の他方の面に設けられ、温度を検出する複数の検出部と;
前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部のそれぞれに接続された配線と;
前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部、および複数の前記配線を覆う保護膜と;
を具備し、
前記基板の、前記第1の方向における端部の近傍において、
前記複数の配線の端部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に並べて設けられ、
前記保護膜は、厚み方向を貫通する複数の孔を有し、
1つの前記孔の内部には、1つの前記配線が露出し、前記第2の方向において、前記配線は、前記孔の内壁に接触していないヒータ。
【請求項2】
板状を呈し、第1の方向に延びる基板と;
前記基板の一方の面に設けられた発熱部と;
前記基板の他方の面に設けられ、温度を検出する複数の検出部と;
前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部のそれぞれに接続された配線と;
前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部、および複数の前記配線を覆う保護膜と;
を具備し、
前記基板の、前記第1の方向における端部の近傍において、
前記複数の配線の端部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に並べて設けられ、
前記保護膜は、厚み方向を貫通する複数の孔を有し、
1つの前記孔の内部には、1つの前記配線が露出し、前記第2の方向において、前記配線の長さは、前記孔の内壁間の長さよりも短いヒータ。
【請求項3】
第1の配線が露出する前記孔と、前記第1の配線に隣接する第2の配線が露出する前記孔とが、前記第1の方向にずらせて設けられている請求項1または2に記載のヒータ。
【請求項4】
前記複数の検出部は、膜状のサーミスタである請求項1~3のいずれか1つに記載のヒータ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のヒータを具備した画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータ、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタなどの画像形成装置には、トナーを定着させるためのヒータが設けられている。一般的に、この様なヒータには、長尺状の基板と、基板の一方の面に設けられ、基板の長手方向に延びる発熱体と、発熱体と電気的に接続された配線と、が設けられている。
【0003】
また、ヒータの温度を検出するために、基板の、発熱体が設けられる側とは反対側の面に、サーミスタなどの検出部と、検出部と電気的に接続された配線と、が設けられている。配線の端部は、例えば、基板の長手方向の端部の近傍に設けられる。配線の端部には、例えば、コネクタが電気的に接続される。配線は、例えば、スクリーン印刷法および焼成法を用いて形成することができる。
【0004】
ここで、複数の検出部を設ければ、例えば、発熱体が設けられた複数の領域毎に温度を制御することができる。この場合、発熱体が設けられた領域の数や、検出部の数を増やせば、ヒータの温度をより精密に制御することができる。また、配線の数が増加しても、配線の幅を小さくしたり、配線同士の間隔を小さくしたりすれば、ヒータ(基板)のサイズが大きくなるのを抑制することができる。また、複数の検出部、および複数の配線は、絶縁性を有する保護膜で覆われているため、配線同士の間隔を小さくしても、配線同士が短絡するのを抑制することができる。
【0005】
ところが、複数の配線の端部は、コネクタなどに電気的に接続されるので、保護膜から露出している。そのため、複数の配線の端部同士の間隔が小さくなると、配線の端部同士の間で、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーションなどとも称される)が発生するおそれがある。エレクトロケミカルマイグレーションが発生すると、配線同士が短絡するおそれがある。
そこで、複数の配線の端部においてエレクトロケミカルマイグレーションが発生するのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-059508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、複数の配線の端部においてエレクトロケミカルマイグレーションが発生するのを抑制することができるヒータ、および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係るヒータは、板状を呈し、第1の方向に延びる基板と;前記基板の一方の面に設けられた発熱部と;前記基板の他方の面に設けられ、温度を検出する複数の検出部と;前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部のそれぞれに接続された配線と;前記基板の他方の面に設けられ、前記複数の検出部、および複数の前記配線を覆う保護膜と;を具備している。前記基板の、前記第1の方向における端部の近傍において、前記複数の配線の端部は、前記第1の方向に直交する第2の方向に並べて設けられ、前記保護膜は、厚み方向を貫通する複数の孔を有し、1つの前記孔の内部には、1つの前記配線が露出している。前記第2の方向において、前記配線は、前記孔の内壁に接触していない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、複数の配線の端部においてエレクトロケミカルマイグレーションが発生するのを抑制することができるヒータ、および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】発熱部が設けられた側から本実施の形態に係るヒータを見た模式平面図である。
図2】検出部が設けられた側から本実施の形態に係るヒータを見た模式平面図である。
図3図2におけるヒータのA部の模式拡大図である。
図4】本実施の形態に係る画像形成装置を例示するための模式図である。
図5】定着部を例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。また、各図面中の矢印X、Y、Zは互いに直交する三方向を表している。例えば、基板の長手方向をX方向(第1の方向の一例に相当する)、基板の短手方向(幅方向)をY方向(第2の方向の一例に相当する)、基板の面に垂直な方向をZ方向としている。
【0012】
まず、本実施の形態に係るヒータ1について説明する。
(ヒータ)
図1は、発熱部20が設けられた側から本実施の形態に係るヒータ1を見た模式平面図である。
図2は、検出部50が設けられた側から本実施の形態に係るヒータ1を見た模式平面図である。
図3は、図2におけるヒータ1のA部の模式拡大図である。
なお、図3においては、X方向における、ヒータ1の一方の端部の近傍を例示したが、ヒータ1の他方の端部の近傍も同様とすることができる。
【0013】
図1および図2に示すように、ヒータ1には、基板10、発熱部20、配線部30、保護膜40、検出部50、配線部60、および保護膜70を設けることができる。
基板10は、板状を呈し、一方の方向(例えば、X方向)に延びる形態を有する。基板10の平面形状は、例えば、長尺状の長方形とすることができる。基板10の厚みは、例えば、0.5mm~1.0mm程度とすることができる。基板10の平面寸法は、加熱対象物(例えば、紙)のサイズなどに応じて適宜変更することができる。
【0014】
基板10は、耐熱性および絶縁性を有する材料から形成されている。基板10は、例えば、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどのセラミックス、結晶化ガラス(ガラスセラミックス)、金属板の表面を絶縁材料で被覆したものなどから形成することができる。
【0015】
発熱部20は、印加された電力を熱(ジュール熱)へ変換することができる。発熱部20は、基板10の一方の面に設けられている。
発熱部20は、例えば、発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gを有する。なお、一例として、発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gが設けられる場合を例示したが、発熱体の数、平面寸法、厚み、および平面形状などは、加熱対象物のサイズなどに応じて適宜変更することができる。また、平面寸法、厚み、および平面形状が異なる発熱体を設けることもできるし、平面寸法、厚み、および平面形状の少なくともいずれかが同じ発熱体を設けることもできる。
【0016】
発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gは、基板10の一方の面に設けることができる。発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gは、例えば、X方向(基板10の長手方向)に沿って延びる形状を有する。発熱体21a~21gは、X方向に並べて設けることができる。発熱体22a~22gは、X方向に並べて設けることができる。
【0017】
X方向において、発熱体21dの中心と発熱体22dの中心は、例えば、ヒータ1(基板10)の基準線1a(例えば、中心線)と重なる位置に設けることができる。X方向において、発熱体21cの中心と発熱体21eの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。X方向において、発熱体21bの中心と発熱体21fの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。X方向において、発熱体21aの中心と発熱体21gの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。X方向において、発熱体22cの中心と発熱体22eの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。X方向において、発熱体22bの中心と発熱体22fの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。X方向において、発熱体22aの中心と発熱体22gの中心は、例えば、基準線1aに対して互いに線対称となる位置に設けることができる。
【0018】
例えば、ヒータ1を画像形成装置100に取り付ける際には、基準線1aが加熱対象物の搬送経路の中心線に重なるようにする。この様にすれば、加熱対象物の、搬送方向に直交する方向の寸法が変化した場合であっても、加熱対象物を略均一に加熱することが容易となる。
【0019】
また、発熱体21aと発熱体22aは、Y方向(基板10の短手方向)に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21bと発熱体22bは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21cと発熱体22cは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21dと発熱体22dは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21eと発熱体22eは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21fと発熱体22fは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。発熱体21gと発熱体22gは、Y方向に所定の間隔をあけて並べて設けることができる。
【0020】
また、発熱体21a、発熱体22a、発熱体21g、および発熱体22gのX方向の寸法(長さ寸法)は、略同一とすることができる。発熱体21b、発熱体22b、発熱体21f、および発熱体22fのX方向の寸法は、略同一とすることができる。発熱体21c、発熱体22c、発熱体21e、および発熱体22eのX方向の寸法は、略同一とすることができる。発熱体21dと発熱体22dのX方向の寸法は、略同一とすることができる。
【0021】
発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gは、例えば、酸化ルテニウム(RuO)、銀・パラジウム(Ag-Pd)合金などを用いて形成することができる。発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gは、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を基板10の面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0022】
配線部30は、例えば、配線31、および、配線32a~32gを有する。配線31、および、配線32a~32gは、基板10の、発熱部20が設けられる面に設けられている。
【0023】
配線31は、第1の部分31aと、第2の部分31bを有する。Y方向において、第1の部分31aは基板10の一方の周縁の近傍に設けられ、第2の部分31bは基板10の他方の周縁の近傍に設けられている。第1の部分31aは、基板10の一方の周縁に沿ってX方向に延びている。第2の部分31bは基板10の他方の周縁に沿ってX方向に延びている。
【0024】
第1の部分31aは、発熱体21a~21gに電気的に接続されている。第2の部分31bは発熱体22a~22gに電気的に接続されている。また、基板10の、X方向における端部の近傍において、第1の部分31aは第2の部分31bに電気的に接続されている。配線31は、共通配線とすることができる。
【0025】
Y方向において、配線32a~32gは基板10の中央領域に設けられている。配線32a~32gは、第1の部分31aと第2の部分31bとの間に設けることができる。配線32a~32gのそれぞれは、例えば、X方向に延びる形状を有する。配線32a~32gは、X方向に並べて設けられている。
【0026】
配線32aは、発熱体21aおよび発熱体22aに電気的に接続されている。配線32bは、発熱体21bおよび発熱体22bに電気的に接続されている。配線32cは、発熱体21cおよび発熱体22cに電気的に接続されている。配線32dは、発熱体21dおよび発熱体22dに電気的に接続されている。配線32eは、発熱体21eおよび発熱体22eに電気的に接続されている。配線32fは、発熱体21fおよび発熱体22frに電気的に接続されている。配線32gは、発熱体21gおよび発熱体22gに電気的に接続されている。
【0027】
例えば、加熱対象物のサイズが変わった際には、配線32a~32gの中から、電圧の印加に用いる配線を選択することができる。例えば、サイズが最も小さい第1の加熱対象物の場合には、配線32dおよび配線31を用いて、発熱体21dおよび発熱体22dに電圧を印加することができる。例えば、サイズが第1の加熱対象物よりも大きい第2の加熱対象物の場合には、配線32d、配線32c、配線32e、および配線31を用いて、発熱体21d、発熱体21c、発熱体21e、発熱体22d、発熱体22c、および発熱体22eに電圧を印加することができる。例えば、サイズが第2の加熱対象物よりも大きい第3の加熱対象物の場合には、配線32d、配線32c、配線32e、配線32b、配線32fおよび配線31を用いて、発熱体21d、発熱体21c、発熱体21e、発熱体21b、発熱体21f、発熱体22d、発熱体22c、発熱体22e、発熱体22b、および発熱体22fに電圧を印加することができる。例えば、サイズが第3の加熱対象物よりも大きい第4の加熱対象物の場合には、配線32d、配線32c、配線32e、配線32b、配線32f、配線32a、配線32g、および配線31を用いて、発熱体21d、発熱体21c、発熱体21e、発熱体21b、発熱体21f、発熱体21a、発熱体21g、発熱体22d、発熱体22c、発熱体22e、発熱体22b、発熱体22f、発熱体22a、および発熱体22gに電圧を印加することができる。
【0028】
この様にすれば、加熱対象物のサイズに応じて発熱面積を変化させることができるので、消費電力を抑制することができる。また、ヒータ1が設けられる装置などに対して意図しない加熱が生じるのを抑制することができる。
【0029】
配線部30(配線31、および、配線32a~32g)は、例えば、銀や銅などを含む材料を用いて形成することができる。この場合、配線部30は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10の、発熱部20が設けられる面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0030】
保護膜40は、発熱部20(発熱体21a~21g、および発熱体22a~22g)、および配線部30(配線31、および配線32a~32g)を覆っている。この場合、電源などとの電気的な接続のために、配線31、および配線32a~32gのそれぞれの一部分を、保護膜40から露出させることができる。
【0031】
保護膜40は、例えば、発熱部20および配線部30を絶縁する機能、発熱部20において発生した熱を外部に伝える機能、および、外力や腐食性ガスなどから発熱部20および配線部30を保護する機能を有する。
【0032】
保護膜40は、耐熱性および絶縁性を有し、化学的安定性の高い材料から形成することが好ましい。保護膜40は、例えば、セラミックスやガラスなどを用いて形成することができる。この場合、酸化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含むフィラーが添加されたガラスを用いれば、保護膜40の形成を容易とすることができる。フィラーが添加されたガラスの熱伝導率は、例えば、2[W/(m・K)]以上とすることができる。保護膜40は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10、発熱部20、および配線部30の上に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0033】
図2および図3に示すように、検出部50は、基板10の他方の面(発熱部20が設けられる側とは反対側の面)に複数設けることができる。検出部50は、ヒータ1の温度を検出する。検出部50は、例えば、膜状のサーミスタなどとすることができる。
【0034】
複数の検出部50の一端は、配線61に電気的に接続されている。配線61は、共通配線とすることができる。この様にすれば、複数の検出部50が設けられる場合であっても、配線の数が増加するのを抑制することができる。そのため、ヒータ1(基板10)のサイズが大きくなるのを抑制することができる。
複数の検出部50のそれぞれの他端は、配線62a~62gのいずれかに電気的に接続されている。
【0035】
検出部50は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、配線61と、配線62a~62gのいずれかとの間に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。検出部50がサーミスタの場合には、検出部50は、例えば、チタン酸バリウムを含む材料、酸化物を含む材料などを用いて形成することができる。酸化物は、例えば、ニッケル、マンガン、コバルト、鉄などの酸化物とすることができる。
【0036】
例えば、検出部50は、Z方向から見た場合に、発熱体21aおよび発熱体22aが設けられる領域、発熱体21bおよび発熱体22bが設けられる領域、発熱体21cおよび発熱体22cが設けられる領域、発熱体21dおよび発熱体22dが設けられる領域、発熱体21eおよび発熱体22eが設けられる領域、発熱体21fおよび発熱体22fが設けられる領域、および、発熱体21gおよび発熱体22gが設けられる領域、のそれぞれに少なくとも1つ設けることができる。この場合、複数の検出部50をX方向に並べて設けることができる。ただし、検出部50の数、配置などは、例示をしたものに限定されるわけではなく、ヒータ1(基板10)のサイズ、発熱体が設けられる領域のサイズなどに応じて適宜変更することができる。
【0037】
図2および図3に示すように、配線部60は、例えば、配線61、および配線62a~62gを有する。配線61、および配線62a~62gは、基板10の他方の面に設けられている。
配線61は、Y方向において、基板10の、中央に設けることができる。配線61は、X方向に延びている。
【0038】
配線62a~62gは、それぞれ別の検出部50に電気的に接続される。配線62a~62gは、検出部50を挟んで、配線61と対向させて設けることができる。配線62a~62gは、互いに平行となる部分を有することができる。また、配線62a~62gは、配線61と平行となる部分を有することができる。
【0039】
配線61、および配線62a~62gの端部は、基板10の、X方向における端部の近傍に設けることができる。
基板10の、X方向における端部の近傍において、配線61、および配線62a~62gの端部は、Y方向に並べて設けることができる。
【0040】
配線61および配線62a~62gの端部には、コネクタ220および配線などを介して、例えば、画像形成装置100のコントローラ210を電気的に接続することができる。
【0041】
配線部60(配線61、および配線62a~62g)は、例えば、銀や銅などを含む材料を用いて形成することができる。この場合、配線部60は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を基板10の面に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0042】
なお、配線61、および配線62a~62gが設けられる場合を例示したが、配線の数や形状などは、検出部50の数、配置などに応じて適宜変更することができる。
【0043】
図2および図3に示すように、保護膜70は、基板10の他方の面に設けることができる。保護膜70は、複数の検出部50、および配線部60を覆っている。
【0044】
保護膜70は、耐熱性および絶縁性を有する材料から形成することができる。保護膜70の材料は、例えば、セラミックスやガラスなどとすることができる。この場合、酸化アルミニウムなどの熱伝導率の高い材料を含むフィラーが添加されたガラスを用いれば、保護膜70の形成を容易とすることができる。フィラーが添加されたガラスの熱伝導率は、例えば、2[W/(m・K)]以上とすることができる。
【0045】
保護膜70は、例えば、スクリーン印刷法などを用いてペースト状の材料を、基板10、検出部50、および配線部60の上に塗布し、焼成法などを用いてペースト状の材料を硬化させることで形成することができる。
【0046】
この場合、配線61、および配線62a~62gは、コネクタ220などと電気的に接続される。そのため、基板10の、X方向における端部の近傍において、保護膜70は、厚み方向を貫通する複数の孔70aを有している。それぞれの孔70aの内部には、配線61、および配線62a~62gのいずれかが露出している。すなわち、1つの孔70aの内部には、1つの配線が露出している。この場合、コネクタ220は、孔70aの内部に露出する配線61、および配線62a~62gに電気的に接続することができる。
【0047】
ここで、複数の検出部50を設ければ、例えば、発熱体21a~21g、および発熱体22a~22gが設けられた領域毎に、ヒータ1の温度を制御することができる。この場合、発熱体が設けられる領域の数や、検出部50の数を増やせば、ヒータ1の温度をより精密に制御することができる。また、検出部50に接続される配線の数が増加しても、配線の幅を小さくしたり、配線同士の間隔を小さくしたりすれば、ヒータ1(基板10)のサイズが大きくなるのを抑制することができる。また、配線同士の間には、保護膜70が設けられるので、配線同士の間隔を小さくしても、配線同士が短絡するのを抑制することができる。
【0048】
ところが、配線61、および配線62a~62gの端部は、コネクタ220などに電気的に接続されるので、保護膜70から露出させる必要がある。この場合、配線61、および配線62a~62gの端部を、単に露出させると、配線61、および配線62a~62gの端部同士の間で、エレクトロケミカルマイグレーション(イオンマイグレーションなどとも称される)が発生するおそれがある。エレクトロケミカルマイグレーションが発生すると、配線同士が短絡するおそれがある。
【0049】
そこで、前述したように、保護膜70には、保護膜70を厚み方向に貫通する複数の孔70aが設けられている。そして、それぞれの孔70aの内部に、配線61、および配線62a~62gのいずれかが露出するようにしている。この様にすれば、孔70aの内部に露出する配線と、この配線に隣接する配線との間には保護膜70が設けられているので、孔70aの内部に露出する配線と、この配線に隣接する配線との間で、エレクトロケミカルマイグレーションが発生するのを抑制することができる。
【0050】
この場合、X方向における、複数の孔70aの位置を同じにすると、孔70a同士が干渉しやすくなる。そのため、孔70a同士の間隔、ひいては配線同士の間隔を小さくすることが困難となり、ヒータ1(基板10)のサイズが大きくなるおそれがある。
【0051】
そこで、本実施の形態においては、図3に示すように、第1の配線(例えば、配線62a)が露出する孔70aと、第1の配線に隣接する第2の配線(例えば、配線62b)が露出する孔70aとをX方向にずらせて設けるようにしている。この様にすれば、配線同士の間隔を小さくしても、1つの孔70aの内部に、1つの配線を露出させるのが容易となる。すなわち、孔70aの内部に露出する配線と、この配線に隣接する配線との間に保護膜70を設けることが容易となる。
そのため、配線の同士の間隔を小さくしてもエレクトロケミカルマイグレーションが発生するのを抑制することができる。
【0052】
次に、本実施の形態に係る画像形成装置100について説明する。
(画像形成装置)
以下においては、一例として、画像形成装置100が複写機である場合を説明する。ただし、画像形成装置100は複写機に限定されるわけではなく、トナーを定着させるためのヒータが設けられているものであればよい。例えば、画像形成装置100は、プリンタなどとすることもできる。
【0053】
図4は、本実施の形態に係る画像形成装置100を例示するための模式図である。
図5は、定着部200を例示するための模式図である。
図4に示すように、画像形成装置100には、フレーム110、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、放電部151、現像部160、クリーナ170、収納部180、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を設けることができる。
【0054】
フレーム110は、箱状を呈し、その内部に、照明部120、結像素子130、感光ドラム140、帯電部150、現像部160、クリーナ170、収納部180の一部、搬送部190、定着部200、およびコントローラ210を収納可能となっている。
フレーム110の上面には、ガラスなどの透光性材料を用いた窓111を設けることができる。窓111の上には、複写される原稿500を載置することができる。また、原稿500の位置を移動させる移動部を設けることができる。
【0055】
照明部120は、窓111の近傍に設けることができる。照明部120は、ランプなどの光源121、および反射鏡122を備えることができる。
結像素子130は、窓111の近傍に設けることができる。
感光ドラム140は、照明部120および結像素子130の下方に設けることができる。感光ドラム140は、回転可能に設けることができる。感光ドラム140の表面には、例えば、酸化亜鉛感光層または有機半導体感光層を設けることができる。
帯電部150、放電部151、現像部160、およびクリーナ170は、感光ドラム140の周辺に設けることができる。
【0056】
収納部180は、カセット181、およびトレイ182を有することができる。カセット181は、フレーム110の一方の側部に着脱可能に取り付けることができる。トレイ182は、フレーム110の、カセット181が取り付けられる側とは反対側の側部に設けることができる。カセット181には、複写が行われる前の紙510(例えば、白紙)を収納することができる。トレイ182には、複写像511aが定着した紙511を収納することができる。
【0057】
搬送部190は、感光ドラム140の下方に設けることができる。搬送部190は、カセット181とトレイ182との間で紙510を搬送することができる。搬送部190は、搬送される紙510を支持するガイド191、および紙510を搬送する搬送ローラ192~194を備えることができる。また、搬送部190には、搬送ローラ192~194を回転させるモータを設けることができる。
【0058】
定着部200は、感光ドラム140の下流側(トレイ182側)に設けることができる。
【0059】
図5に示すように、定着部200は、ヒータ1、ステー201、フィルムベルト202、および加圧ローラ203を有することができる。
ステー201の、紙510の搬送ライン側にはヒータ1を取り付けることができる。ヒータ1は、ステー201に埋め込むことができる。ヒータ1の、保護膜40が設けられた側がステー201から露出するようにすることができる。
【0060】
フィルムベルト202は、ヒータ1が設けられたステー201を覆っている。フィルムベルト202は、例えば、ポリイミドなどの耐熱性を有する樹脂を含むことができる。
【0061】
加圧ローラ203は、ステー201と対向するように設けることができる。加圧ローラ203は、芯金203a、駆動軸203b、および弾性部203cを有することができる。駆動軸203bは、芯金203aの端部から突出し、モータなどの駆動装置に接続することができる。弾性部203cは、芯金203aの外面に設けることができる。弾性部203cは、耐熱性を有する弾性材料から形成することができる。弾性部203cは、例えば、シリコーン樹脂などを含むことができる。
【0062】
コントローラ210は、フレーム110の内部に設けることができる。コントローラ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算部、および制御プログラムが格納された記憶部を有することができる。演算部は、記憶部に格納されている制御プログラムに基づいて、画像形成装置100に設けられた各要素の動作を制御することができる。また、コントローラ210は、使用者が複写条件などを入力する操作部、動作状態や異常表示などを表示する表示部などを備えることもできる。
【0063】
例えば、コントローラ210は、駆動装置を制御して、窓111の上に載置された原稿500を移動させる。コントローラ210は、帯電部150を制御して、感光ドラム140を一様に帯電させる。コントローラ210は、照明部120を制御して、原稿500に光を照射する。コントローラ210は、結像素子130を制御して、原稿500からの反射光を感光ドラム140上に露光させる。例えば、コントローラ210は、結像素子130を制御して、帯電した感光ドラム140に静電画像を形成する。コントローラ210は、現像部160を制御して、静電画像を顕像化する、すなわちトナー像510aを形成する。
【0064】
コントローラ210は、搬送ローラ192を制御して、カセット181から紙510を取り出す。コントローラ210は、搬送ローラ193を制御して、カセット181から取り出された紙510を感光ドラム140に供給する。コントローラ210は、搬送ローラ193を制御して、搬送ローラ193による紙510の送りを、感光ドラム140の回転と同期させる。コントローラ210は、放電部151を制御して、感光ドラム140のトナー像510aを紙510に転写させる。トナー像510aが転写された後、感光ドラム140の上に残留するトナーは、クリーナ170により除去される。コントローラ210は、搬送ローラ193を制御して、トナー像510aが転写された紙510を定着部200に供給する。
【0065】
コントローラ210は、定着部200(ヒータ1)を制御して、トナー像510aを紙510に定着させる。コントローラ210は、検出部50の抵抗値の変化、ひいてはヒータ1の温度を検出する。コントローラ210は、ヒータ1の温度が適切な範囲内にあると判断した場合には、画像形成装置100の動作を続行させる。コントローラ210は、ヒータ1の温度が不適切であると判断した場合には、ヒータ1に印加する電力を制御して、ヒータ1の温度が適切な範囲内となるようにする。
【0066】
前述したように、ヒータ1は、発熱体が設けられた領域を複数有し、複数の領域のそれぞれには、少なくとも1つの検出部50が設けられている。そのため、紙510のサイズが複数種類あったとしても、適切な加熱を行うことができる。
【0067】
フィルムベルト202を介して、ヒータ1と、加圧ローラ203の弾性部203cとが接触する位置において、トナー像510aが加熱溶融されて複写像511aとなる。複写像511aは、定着部200からトレイ182に送られる間に放熱して紙510に定着する。
【0068】
コントローラ210は、搬送ローラ194を制御して、複写像511aが定着した紙511をトレイ182に収納する。
【0069】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 ヒータ、10 基板、20 発熱部、21a~21g 発熱体、22a~22g 発熱体、30 配線部、31 配線、32a~32g 配線、40 保護膜、50 検出部、60 配線部、61 配線、62a~62g 配線、70 保護膜、70a 孔、100 画像形成装置、200 定着部
図1
図2
図3
図4
図5