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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/18 20060101AFI20240807BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04694 20160101ALI20240807BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20240807BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/04313
H01M8/04694
H01M8/04537
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021502160
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006942
(87)【国際公開番号】W WO2020175340
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2019035027
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】巽 遼多
(72)【発明者】
【氏名】加來 宏一
(72)【発明者】
【氏名】池内 淳夫
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523103(JP,A)
【文献】特開昭62-229665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解液を貯留するタンクと、
前記電解液を電池セルに流通させる流通機構とを備えるレドックスフロー電池であって、
前記タンクは、前記タンクの内部の空間を第一空間と第二空間とに区画する仕切部を有し
前記流通機構は、
前記第一空間内の前記電解液を前記電池セルに供給する第一供給路と、
前記第二空間内の前記電解液を前記電池セルに供給する第二供給路と、
前記第一供給路及び前記第二供給路の下流同士と前記電池セルとを連結する一つの供給側連結路と、
前記電池セルを経た前記電解液を前記第一空間内に排出する第一排出路と、
前記電池セルを経た前記電解液を前記第二空間内に排出する第二排出路と、
前記第一排出路及び前記第二排出路の上流同士と前記電池セルとを連結する一つの排出側連結路と、
前記第一供給路及び前記第二供給路と前記供給側連結路との連結箇所に設けられて、前記電解液の前記第一供給路から前記供給側連結路への流通と前記第二供給路から前記供給側連結路への流通とを切り替える供給側切替弁と、
前記第一排出路及び前記第二排出路と前記排出側連結路との連結箇所に設けられて、前記電解液の前記排出側連結路から前記第一排出路への流通と前記排出側連結路から前記第二排出路への流通とを切り替える排出側切替弁とを有し、
前記仕切部は、フレキシブルな材料からなる一枚のシート材で構成されている、
レドックスフロー電池。
【請求項2】
電解液を貯留するタンクと、
前記電解液を電池セルに流通させる流通機構とを備えるレドックスフロー電池であって、
前記タンクは、前記タンクの内部の空間を第一空間と第二空間とに区画する仕切部を有し、
前記流通機構は、前記電池セルを介して前記第一空間と前記第二空間との間で前記電解液を流通させる流通路を有し、
前記仕切部は、
フレキシブルな材料からなる一枚のシート材で構成されていて、
その全周縁に設けられる外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有し、
前記外側領域が前記タンクの天板の周縁に固定されて、前記仕切部が前記タンクの天板から吊り下げられていて、
前記第一空間と前記第二空間とが、前記タンクの内部における内側とその外側とに設けられている、
レドックスフロー電池。
【請求項3】
前記第一空間内の電解液量及び前記第二空間内の電解液量の少なくとも一方を検知する液量検知部を有し、
前記液量検知部の検知結果に基づき、前記供給側切替弁と前記排出側切替弁の動作を制御する弁制御部を有する請求項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項4】
レドックスフロー電池の電力が供給される負荷の電力要求の有無を検知する有無検知部と、
前記第一空間内の前記電解液の充電状態と前記第二空間内の前記電解液の充電状態とを演算する演算部と、
前記有無検知部の検知結果と前記演算部の演算結果とに基づいて、前記供給側切替弁と前記排出側切替弁の動作を制御する弁制御部を有する請求項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項5】
前記仕切部は、その全周縁に設けられる外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有し、
前記外側領域が前記タンクの天板の周縁に固定されて、前記仕切部が前記タンクの天板から吊り下げられていて、
前記第一空間と前記第二空間とが、前記タンクの内部における内側とその外側とに設けられている請求項1、請求項3、および請求項のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【請求項6】
前記仕切部は、その全周縁に設けられる外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有し、
前記外側領域における前記電解液と接触する領域は、前記タンクの内面に対して実質的に液密に固定され、
前記内側領域は、前記第一空間内及び前記第二空間内の前記電解液の増減に伴って前記第一空間及び前記第二空間の一方の体積を大きくし他方の体積を小さくするように互いの空間の体積を可変にする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のレドックスフロー電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レドックスフロー電池に関する。
本出願は、2019年2月27日付の日本国出願の特願2019-035027に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のレドックスフロー型2次電池は、電解液を貯留する一本の長尺な蛇行管や螺旋管を用いた構成、又は電解液を貯留する正極液タンクと負極液タンクとをそれぞれ2つずつ用いた構成を備える。蛇行管や螺旋管は、電池セルに供給される各管内の電解液と電池セルから各管に排出される電解液とが互いに混合しない程度の長さを有する。
【0003】
一方、各極液タンクを2つずつ用いた場合、例えば正極用電解液は、一方の正極液タンクから電池セルに供給され、電池セルから他方の正極液タンクに排出される。一方の正極液タンク内における全ての正極用電解液が他方の正極液タンクに流通すれば、ポンプを逆回転させることで、正極用電解液は、他方の正極液タンクから電池セルに供給され、電池セルから一方の正極液タンクに排出される。このように各極液タンクを2つずつ用いることで、電池セルから排出された電解液と電池セルに供給される電解液との混合が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-27666号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示に係るレドックスフロー電池は、
電解液を貯留するタンクと、
前記電解液を電池セルに流通させる流通機構とを備えるレドックスフロー電池であって、
前記タンクは、前記タンクの内部の空間を第一空間と第二空間とに区画する仕切部を有し、
前記流通機構は、前記電池セルを介して前記第一空間と前記第二空間との間で前記電解液を流通させる流通路を有し、
前記仕切部は、フレキシブルな材料で構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態1に係るレドックスフロー電池の概略を示す構成図である。
図2図2は、実施形態1に係るレドックスフロー電池の電解液の流通経路を説明する構成図である。
図3図3は、実施形態1に係るレドックスフロー電池の電解液の流通経路を説明する構成図である。
図4図4は、実施形態1に係るレドックスフロー電池に備わるタンクの上面図である。
図5図5は、実施形態2に係るレドックスフロー電池に備わるタンク及び流通機構の一例の概略を示す構成図である。
図6図6は、実施形態2に係るレドックスフロー電池に備わるタンク及び流通機構の他の例の概略を示す構成図である。
図7図7は、実施形態2に係るレドックスフロー電池に備わるタンク及び流通機構の別の例の概略を示す構成図である。
図8図8は、実施形態3に係るレドックスフロー電池の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
レドックスフロー電池の電池容量と電解液量とは、比例関係にある。即ち、電池容量の大きなレドックスフロー電池を構築しようとすると、電解液量が多くなる。電解液量が多くなれば、蛇行管や螺旋管の長さが長くなる。その結果、圧力損失が増大する。電解液量を少なくして蛇行管や螺旋管の長さを短くすれば、圧力損失の増大が抑制される。しかし、レドックスフロー電池の電池容量が小さくなる。また、上述のように各極電解液のタンクを2つずつ用いれば、電解液量が多くても、螺旋管などを用いた場合に比較して圧力損失の増大が抑制される。しかし、タンクの設置面積が大きくなる。
【0008】
そこで、本開示は、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招くことなく、電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合を抑制できるレドックスフロー電池を提供することを目的の一つとする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示に係るレドックスフロー電池は、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招くことなく、電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合を抑制できる。
【0010】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様に係るレドックスフロー電池は、
電解液を貯留するタンクと、
前記電解液を電池セルに流通させる流通機構とを備えるレドックスフロー電池であって、
前記タンクは、前記タンクの内部の空間を第一空間と第二空間とに区画する仕切部を有し、
前記流通機構は、前記電池セルを介して前記第一空間と前記第二空間との間で前記電解液を流通させる流通路を有し、
前記仕切部は、フレキシブルな材料で構成されている。
【0012】
上記の構成は、従来のような蛇行管、螺旋管、或いは各極において二つのタンクを用いることなく、各極において一つのタンクで電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合を抑制できる。その理由は、タンク内を区画する仕切部を有することで、第一空間と第二空間の一方の空間に電池セルに供給する電解液を貯留し、他方の空間に電池セルから排出される電解液を貯留できるからである。電解液の混合が抑制されることで、電解液の充電状態の平均化が抑制される。そのため、上記の構成は、セル抵抗の連続的な上昇を抑制できる。よって、上記の構成は、電池効率、即ち充放電効率を改善できる。
【0013】
また、上記の構成は、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招かない。その理由は、上述のように従来のような蛇行管、螺旋管、或いは各極において二つのタンクを用いなくてもよいからである。その上、タンク内を区画する仕切部がフレキシブルな材料で構成されていることで、体積の大きなタンクを用いなくてもよいからである。
【0014】
(2)上記レドックスフロー電池の一形態として、
前記仕切部は、その全周縁に設けられる外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有し、
前記外側領域における前記電解液と接触する領域は、前記タンクの内面に対して実質的に液密に固定され、
前記内側領域は、前記第一空間内及び前記第二空間内の前記電解液の増減に伴って前記第一空間及び前記第二空間の一方の体積を大きくし他方の体積を小さくするように互いの空間の体積を可変にすることが挙げられる。
【0015】
上記の構成は、外側領域がタンクの内面に対して実質的に液密に固定される領域を有するため、各極において一つのタンクで電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合をより一層抑制できる。また、上記の構成は、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招くことがない。その理由は、内側領域により第一空間と第二空間の体積を変えられるからである。
【0016】
(3)上記レドックスフロー電池の一形態として、
前記流通機構は、
前記第一空間内の前記電解液を前記電池セルに供給する第一供給路と、
前記第二空間内の前記電解液を前記電池セルに供給する第二供給路と、
前記第一供給路及び前記第二供給路の下流同士と前記電池セルとを連結する一つの供給側連結路と、
前記電池セルを経た前記電解液を前記第一空間内に排出する第一排出路と、
前記電池セルを経た前記電解液を前記第二空間内に排出する第二排出路と、
前記第一排出路及び前記第二排出路の上流同士と前記電池セルとを連結する一つの排出側連結路と、
前記第一供給路及び前記第二供給路と前記供給側連結路との連結箇所に設けられて、前記電解液の前記第一供給路から前記供給側連結路への流通と前記第二供給路から前記供給側連結路への流通とを切り替える供給側切替弁と、
前記第一排出路及び前記第二排出路と前記排出側連結路との連結箇所に設けられて、前記電解液の前記排出側連結路から前記第一排出路への流通と前記排出側連結路から前記第二排出路への流通とを切り替える排出側切替弁とを有することが挙げられる。
【0017】
上記の構成は、各極において電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合を抑制できる。その理由は、供給側切替弁と排出側切替弁とを有することで、第一空間と第二空間の一方の空間に貯留した電解液を、電池セルを通って他方の空間に排出できるからである。
【0018】
(4)上記供給側切替弁と上記排出側切替弁とを有する上記レドックスフロー電池の一形態として、
前記第一空間内の電解液量及び前記第二空間内の電解液量の少なくとも一方を検知する液量検知部を有し、
前記液量検知部の検知結果に基づき、前記供給側切替弁と前記排出側切替弁の動作を制御する弁制御部を有することが挙げられる。
【0019】
上記の構成は、各極において電池セルからタンクに排出される電解液とタンク内の電解液との混合を抑制できる。その理由は、電解液の流通の切り替えを、第一空間と第二空間の一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液が電池セルを経て他方の空間内に流通した後に行えるからである。
【0020】
(5)上記供給側切替弁と上記排出側切替弁とを有する上記レドックスフロー電池の一形態として、
レドックスフロー電池の電力が供給される負荷の電力要求の有無を検知する有無検知部と、
前記第一空間内の前記電解液の充電状態と前記第二空間内の前記電解液の充電状態とを演算する演算部と、
前記有無検知部の検知結果と前記演算部の演算結果とに基づいて、前記供給側切替弁と前記排出側切替弁の動作を制御する弁制御部を有することが挙げられる。
【0021】
上記の構成は、負荷の電力要求の有無に対応して充放電できる。その理由は、電解液の流通の切り替えを、第一空間と第二空間の一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液が電池セルを経て他方の空間内に流通し終わる前に行えるからである。
【0022】
(6)上記レドックスフロー電池の一形態として、
前記仕切部は、その全周縁に設けられる外側領域と、前記外側領域に囲まれる内側領域とを有し、
前記外側領域が前記タンクの天板の周縁に固定されて、前記仕切部が前記タンクの天板から吊り下げられていて、
前記第一空間と前記第二空間とが、前記タンクの内部における内側とその外側とに設けられていることが挙げられる。
【0023】
上記の構成は、仕切部を有するタンクの製造作業性に優れる。その理由は、天板に対してのみ外側領域を固定すればよいからである。その上、天板をタンクから取り外した状態で外側領域の天板への固定を行えるからである。
【0024】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0025】
《実施形態1》
〔レドックスフロー電池〕
図1から図4を参照して、実施形態1のレドックスフロー電池を説明する。以下、レドックスフロー電池をRF電池1と表記することがある。RF電池1は、電解液4を貯留するタンク3と、電解液4を電池セル10に流通させる流通機構5とを備える。RF電池1の特徴の一つは、タンク3の内部を第一空間31と第二空間32とに区画する特定の仕切部36を有する点にある。以下、RF電池1の概要を説明し、その後、本形態のRF電池1の各構成を詳細に説明する。
【0026】
[RF電池の概要]
RF電池1は、代表的には、交流/直流変換器100と変電設備120とを介して発電部110と負荷130との間に接続され、発電部110で発電した電力を充電して蓄え、蓄えた電力を放電して負荷130に供給する(図1)。図1の変電設備120から交流/直流変換器100に向かって伸びる実線矢印は充電を意味する。図1の交流/直流変換器100から変電設備120に向かって伸びる破線矢印は放電を意味する。発電部110としては、例えば、太陽光発電装置や風力発電装置、その他一般の発電所などが挙げられる。負荷130としては、例えば、電力の需要家などが挙げられる。RF電池1は、酸化還元により価数が変化する金属イオンを活物質として含有する電解液4を正極電解液と負極電解液とに使用する。RF電池1の充放電は、正極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位と負極電解液に含まれるイオンの酸化還元電位との差を利用して行われる。金属イオンとしては、例えば、バナジウムイオン、チタンイオン、マンガンイオンなどが挙げられる。電解液4の溶媒としては、例えば、硫酸、リン酸、硝酸、及び塩酸からなる群より選択される1種以上の酸又は酸塩を含む水溶液が挙げられる。RF電池1は、例えば、負荷平準化用途、瞬低補償や非常用電源などの用途、大量導入が進められている太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの出力平滑化用途などに利用される。
【0027】
[タンク]
タンク3は、電池セル10に流通される電解液4を貯留する(図1)。図1は、正極用のタンク3のみを示す。負極用のタンクの図示は、図1では省略する。負極用のタンクの構成は、正極用のタンク3と同様とすることができる。タンク3の大きさは、電池容量に応じて適宜選択できる。タンク3の形状は、本例のように直方体状でもよいし、円柱状でもよい。
【0028】
タンク3は、天板33と底板34と側板35と後述する仕切部36とを有する。天板33と底板34と側板35の材質は、電解液4と反応せず、電解液4に対する耐性に優れる樹脂やゴムが挙げられる。樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが挙げられる。その他、天板33と底板34と側板35は、鋼製の板状部材と、板状部材のうち電解液4との接触箇所を覆うコーティング層とを備える板で構成できる。コーティング層の材質は、上述の樹脂やゴムなどが挙げられる。天板33と底板34と側板35の厚みは、例えば、5mm以上50mm以下が挙げられ、更に10mm以上40mm以下、特に15mm以上30mm以下が挙げられる。この厚みとは、各板が樹脂やゴムで構成される場合はその樹脂やゴムの厚みであり、各板が板状部材とコーティング層とを備える場合、板状部材とコーティング層との合計厚みをいう。
【0029】
(仕切部)
仕切部36は、タンク3の内部の空間を第一空間31と第二空間32とに区画する。仕切部36の材質は、電解液4と反応せず、フレキシブルな材料であると共に電解液4に対する耐性に優れる材質が挙げられる。フレキシブルな材料で構成される仕切部36は、柔軟であること、たわむこと、曲げても割れないこと、及びある程度伸びること、の少なくとも1つを満たすことをいう。即ち、仕切部36は、第一空間31内及び第二空間32内の電解液4の増減に伴って第一空間31及び第二空間32の一方の体積を大きくし他方の体積を小さくするように変形する特性を有する。仕切部36の材質は、具体的には、上述の樹脂やゴムが挙げられる。仕切部36は、本形態ではフレキシブルな一枚のシート材で構成されている。シート材は、第一面と、第二面と、第三面とを有する。第一面と第二面とは互いに対向する。第三面は、第一面と第二面とをつなぐ。
【0030】
仕切部36の厚みは、例えば、0.006mm以上0.2mm以下が挙げられる。仕切部36の厚みとは、本形態のように仕切部36がシート材で構成されている場合、シート材の上記第一面と第二面との間の長さをいう。仕切部36の厚みが0.2mm以下であれば、仕切部36は、厚すぎないため、上記特性に優れる。即ち、仕切部36は、第一空間31内及び第二空間32内の電解液4の増減によって伸びたり変形したりすることが可能である。仕切部36の厚みが0.15mm以下であれば、仕切部36は上記特性により優れる。仕切部36の厚みが0.006mm以上であれば、仕切部36は、薄すぎないため、第一空間31内及び第二空間32内の電解液4の増減によって伸びたり変形したりしても破れ難い。仕切部36の厚みが0.03mm以上であれば、仕切部36はより破れ難い。仕切部36の厚みは、更に0.03mm以上0.13mm以下、特に0.06mm以上0.1mm以下が挙げられる。
【0031】
仕切部36は、詳しくは後述する外側領域361と内側領域362とを有する。外側領域361は、仕切部36の全周縁に設けられる。即ち、外側領域361は、シート材の上記第一面における全周縁と上記第二面における全周縁とに設けられる。この外側領域361、即ち上記第一面における全周縁と上記第二面における全周縁とは、一定の幅のある領域である。内側領域362は、外側領域361に囲まれる。即ち、内側領域362は、シート材の上記第一面における外側領域361に囲まれ、シート材の上記第二面における外側領域361に囲まれる。
【0032】
〈外側領域〉
外側領域361は、仕切部36をタンク3の内面に固定する。具体的には、外側領域361のうち電解液4に接触する領域がタンク3の内面に固定される。勿論、外側領域361は、その全周にわたってタンク3の内面に固定されていてもよい。外側領域361のタンク3に対する固定手法は、タンク3の内面に対して実質的に液密に固定できれば特に限定されない。実質的に液密に固定とは、電解液4の充電状態に影響を与えない程度の少量の電解液4であれば、外側領域361を介して第一空間31と第二空間32の一方から他方に移動することを許容することをいう。この移動する電解液4の量は、少ないほど好ましく、全く無いことが好ましい。外側領域361が実質的に液密に固定されることで、仕切部36は第一空間31と第二空間32との間を実質的に封止でき、好ましくは完全に封止できる。そのため、仕切部36は、第一空間31内の電解液4と第二空間32内の電解液4とが混合することを抑制できる。本形態では、外側領域361は、その全周にわたってタンク3の内面に対して実質的に液密に固定されている。外側領域361の固定手法は、例えば、溶着、融着、接着剤を使用した接着などが挙げられる。
【0033】
外側領域361の固定箇所は、第一空間31と第二空間32とに同一量の電解液4を貯留できるように、第一空間31と第二空間32とを形成できる位置であれば特に限定されず、適宜選択できる。外側領域361の固定箇所は、第一空間31の体積と第二空間32の体積とが互いに均一となる位置とすることが好ましい。外側領域361の固定箇所は、本例では天板33である(図4)。具体的には、外側領域361は、その全周にわたってタンク3の天板33の周縁側の領域に固定されている。外側領域361が天板33に固定されていることで、仕切部36を有するタンク3の製造作業性に優れる。その理由は、天板33に対してのみ外側領域361を固定すればよいからである。その上、天板33を側板35から取り外した状態で外側領域361の天板33への固定を行えるからである。外側領域361の天板33への固定により、仕切部36は天板33から吊り下げられている。そして、第一空間31と第二空間32とは、タンク3の内部における内側とその外側とに形成されている。
【0034】
〈内側領域〉
内側領域362は、第一空間31内及び第二空間32内の電解液4の増減に伴って第一空間31と第二空間32の体積を可変にすることが好ましい(図1)。具体的には、内側領域362は、第一空間31及び第二空間32の一方の体積を大きくし他方の体積を小さくする。仕切部36がフレキシブルな材料で構成されることで、内側領域362は、第一空間31と第二空間32の一方の空間側に偏在したり、第一空間31と第二空間32の一方の空間側に伸びたりする。そのため、内側領域362は、第一空間31と第二空間32の体積を変えられる。
【0035】
[流通機構]
流通機構5は、電解液4を電池セル10に流通させる。この流通機構5は、電池セル10を介して第一空間31と第二空間32との間で電解液4を流通させる流通路を有する。本形態の流通機構5は、第一供給路51s、第二供給路52s、供給側連結路53s、供給側切替弁54s、第一排出路51d、第二排出路52d、排出側連結路53d、排出側切替弁54d、及びポンプ55を有する。図1は、正極用の流通機構5のみを示す。負極用の流通機構の図示は、図1では省略する。負極用の流通機構の構成は、正極用の流通機構5と同様とすることができる。
【0036】
第一供給路51sは、タンク3の第一空間31内の電解液4を電池セル10に供給する。第一供給路51sの上流は、第一空間31内に開口する。第一空間31内に電解液4が貯留されている場合、第一供給路51sの上流は電解液4中に開口する(図1)。第一供給路51sの下流は、供給側連結路53sに接続される。
【0037】
第二供給路52sは、タンク3の第二空間32内の電解液4を電池セル10に供給する。第二供給路52sの上流は、第二空間32内に開口する。第二空間32内に電解液4が貯留されている場合、第二供給路52sの上流は電解液4中に開口する(図2図3)。第二供給路52sの下流は、供給側連結路53sに接続される。
【0038】
供給側連結路53sは、第一供給路51sと第二供給路52sの下流同士と電池セル10とを接続する。第一供給路51s又は第二供給路52sを流通する電解液4は、供給側連結路53sを通って電池セル10に供給される。
【0039】
供給側切替弁54sは、第一供給路51sと第二供給路52sの一方の開通と他方の閉鎖とを行う。即ち、供給側切替弁54sは、電解液4の第一供給路51sから供給側連結路53sへの流通と第二供給路52sから供給側連結路53sへの流通とを切り替える。供給側切替弁54sの設置箇所は、第一供給路51s及び第二供給路52sと供給側連結路53sの連結箇所が挙げられる。供給側切替弁54sの種類は、例えば、三方弁が挙げられる。
【0040】
第一排出路51dは、電池セル10を経た電解液4を第一空間31内に排出する。第一排出路51dの上流は、排出側連結路53dに接続される。第一排出路51dの下流は、第一空間31内に開口する。第一空間31内に電解液4が貯留されている場合、第一排出路51dの下流は第一空間31内の気相部分に開口する(図1)。
【0041】
第二排出路52dは、電池セル10を経た電解液4を第二空間32内に排出する。第二排出路52dの上流は、排出側連結路53dに接続される。第二排出路52dの下流は、第二空間32内に開口する。第二空間32内に電解液4が貯留されている場合、第二排出路52dの下流は第二空間32内の気相部分に開口する(図2図3)。
【0042】
排出側連結路53dは、第一排出路51dと第二排出路52dの上流同士と電池セル10とを接続する。電池セル10から排出された電解液4は、排出側連結路53dを通って第一排出路51d又は第二排出路52dを流通する。
【0043】
排出側切替弁54dは、第一排出路51dと第二排出路52dの一方の開通と他方の閉鎖とを行う。即ち、排出側切替弁54dは、電解液4の排出側連結路53dから第一排出路51dへの流通と排出側連結路53dから第二排出路52dへの流通とを切り替える。排出側切替弁54dの設置箇所は、排出側連結路53dと第一排出路51d及び第二排出路52dとの連結箇所が挙げられる。排出側切替弁54dの種類は、例えば、供給側切替弁54sと同様、三方弁が挙げられる。
【0044】
第一供給路51s、第二供給路52s、供給側連結路53s、第一排出路51d、第二排出路52d、及び排出側連結路53dは、例えば、樹脂管や被覆管で構成できる。樹脂管の材質は、例えば、ポリ塩化ビニルが挙げられる。被覆管は、金属製の管状部材と、その管状部材のうち電解液4との接触箇所を覆うコーティング層とを備える。管状部材は、例えば、ステンレス鋼管が利用できる。コーティング層の材料は、電解液4と反応せず、電解液4に対する耐性に優れる材料が挙げられる。コーティング層の具体的な材料は、上述したタンク3と同様の樹脂やゴムなどの材料が挙げられる。
【0045】
ポンプ55は、第一空間31内又は第二空間32内の電解液4を電池セル10を介して第二空間32又は第一空間31に圧送する。ポンプ55の設置箇所は、本例では供給側連結路53sの途中である。充放電を行う運転時、ポンプ55が駆動される。この点は、後述する制御部65で説明する。充放電を行わない待機時、ポンプ55が停止される。この待機時には、電解液4が圧送されない。ポンプ55の種類は、適宜選択でき、例えば自吸式ポンプが挙げられる。
【0046】
供給側切替弁54sと排出側切替弁54dとポンプ55とは、後述する制御機構6により制御される。
【0047】
[制御機構]
制御機構6は、第一空間31内と第二空間32内の電解液量に基づき、第一空間31内の電解液4の流通と第二空間32内の電解液4の流通とを制御する。本形態の制御機構6は、液量検知部と制御部65とを有する。
【0048】
(液量検知部)
液量検知部は、第一空間31内の電解液量、及び第二空間32内の電解液量の少なくとも一方を検知する。本形態では、液量検知部は、第一空間31内の電解液量を検知する第一液量検知部61と、第二空間32内の電解液量を検知する第二液量検知部62とを有する。図2図3では、説明の便宜上、第一液量検知部61と第二液量検知部62の図示は省略している。例えば、第一液量検知部61は、第一空間31内の電解液量が実質的にゼロになったか否かを検知することが挙げられる。同様に、第二液量検知部62は、第二空間32内の電解液量が実質的にゼロになったか否かを検知することが挙げられる。
【0049】
第一液量検知部61及び第二液量検知部62の種類は、例えば、スイッチやセンサが挙げられる。スイッチとしては、例えば、フロート式などのレベルスイッチが挙げられる。センサとしては、例えば、フロート式、静電容量式、光学式、超音波式などの液量センサや液面レベルセンサが挙げられる。第一液量検知部61及び第二液量検知部62の検知結果は、制御部65に送られる。
【0050】
(制御部)
制御部65は、弁制御部651とポンプ制御部652とを有する。制御部65は、例えば、コンピュータなどが利用できる。
【0051】
〈弁制御部〉
弁制御部651は、液量検知部の検知結果に基づき、供給側切替弁54sと排出側切替弁54dの動作を制御する。弁制御部651は、第一供給路51sと第二供給路52sの一方を開通させて、他方を閉鎖させるように、供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第一排出路51dと第二排出路52dの一方を開通させて、他方を閉鎖させるように、排出側切替弁54dを動作させる。
【0052】
〈ポンプ制御部〉
ポンプ制御部652は、液量検知部の検知結果に基づき、ポンプ55の駆動を制御する。換言すれば、ポンプ制御部652による制御は、弁制御部651による供給側切替弁54s及び排出側切替弁54dの制御に連動して行われる。ポンプ制御部652は、ポンプ55を駆動させたり停止させたりする。
【0053】
(制御手順)
制御部65による第一空間31内の電解液4の流通と第二空間32内の電解液4の流通との制御手順を説明する。ここでの説明は、電解液4を充電する場合を例に行う。
【0054】
〈第一手順〉
図1に示すように、第一空間31内に実質的に全ての電解液4が貯留されていて第二空間32内に電解液4が実質的に貯留されていない場合、第二液量検知部62が第二空間32内の電解液量がゼロと検知する。この検知結果に基づき、弁制御部651は、第一供給路51sを開通させて第二供給路52sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第二排出路52dを開通させて第一排出路51dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。弁制御部651の制御に連動して、ポンプ制御部652は、ポンプ55を駆動させる。この制御により、第一空間31内に貯留されていた電解液4は、第一供給路51sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて充電される。電池セル10で充電された電解液4は、電池セル10から排出側連結路53dと第二排出路52dとを順に通って第二空間32内に排出される(図2)。弁制御部651及びポンプ制御部652は、図3に示すように、第一空間31内の実質的に全ての電解液4が第二空間32内に送られるまで、即ち、第一液量検知部61(図1)が第一空間31内の電解液量がゼロと検知するまで、供給側切替弁54s及び排出側切替弁54dと、ポンプ55の状態を維持する。そうして、充電状態が上がった全ての電解液4が第二空間32内に貯留される。充電状態が上がった全ての電解液4が第二空間32内に貯留されたら、ポンプ制御部652は、ポンプ55を停止させる。
【0055】
〈第二手順〉
図3に示すように、第二空間32内に実質的に全ての電解液4が貯留されていて第一空間31内に電解液4が実質的に貯留されていない場合、第一液量検知部61(図1)が第一空間31内の電解液量がゼロと検知する。この検知結果に基づき、弁制御部651は、第一手順と逆の手順となるように制御する。即ち、弁制御部651は、第二供給路52sを開通させて第一供給路51sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第一排出路51dを開通させて第二排出路52dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。ポンプ制御部652は、ポンプ55を駆動させる。この制御により、第二空間32内に貯留されていた電解液4は、第二供給路52sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて充電される。電池セル10で充電された電解液4は、電池セル10から排出側連結路53dと第一排出路51dとを順に通って第一空間31内に排出される(図2)。弁制御部651及びポンプ制御部652は、図1に示すように、第二空間32内の実質的に全ての電解液4が第一空間31内に送られるまで、即ち、第二液量検知部62が第二空間32内の電解液量がゼロと検知するまで、供給側切替弁54s及び排出側切替弁54dと、ポンプ55の状態を維持する。そうして、充電状態が上がった全ての電解液4が第一空間31内に貯留される。
【0056】
制御部65は、電解液4の充電状態が満充電に達するまで、第一手順と第二手順とを繰り返し行う。制御部65は、電解液4の充電状態が満充電に達した時点で、第一手順及び第二手順を終了する。
【0057】
なお、電池セル10の一度や二度の通過で、電解液4の充電状態が満充電に達した場合、制御部65は、第一手順と第二手順とを繰り返さなくてもよい。その場合、制御部65は、第一手順と第二手順の少なくとも一方の手順のみを行えばよい。
【0058】
[電池セル]
電池セル10は、水素イオンを透過させる隔膜で正極セルと負極セルとに分離されている。隔膜、正極セル、及び負極セルの図示はいずれも省略している。正極セルには、正極電極が内蔵されている。正極セルには、上述した流通機構5により上述したタンク3から正極電解液が流通される。負極セルには、負極電極が内蔵されている。負極セルには、上述した流通機構5により上述した負極用のタンクから負極電解液が流通される。電池セル10は、通常、セルスタック20と呼ばれる構造体の内部に形成される。
【0059】
[セルスタック]
セルスタック20は、サブスタックと呼ばれる積層体と、積層体をその両側から挟み込む2枚のエンドプレートと、両エンドプレートを締め付ける締付機構とで構成されている。積層体、エンドプレート、及び締め付け機構の図示はいずれも省略している。サブスタックの数は、単数でもよいし複数でもよい。サブスタックは、セルフレーム、正極電極、隔膜、及び負極電極を、この順番で複数積層した積層体と、その積層体の両端に配置される給排板とを有する。セルフレームは、双極板と双極板の外周縁部を囲む枠体とを有する。隣接するセルフレームの双極板の間に一つの電池セル10が形成される。双極板を挟んで表裏に、隣り合う電池セル10の正極電極と負極電極とが配置され、正極セルと負極セルとが配置される。セルフレームの枠体は、電池セル10の内部に電解液4を供給する給液マニホールド及び給液スリットと、電池セル10の外部に電解液4を排出する排液マニホールド、及び排液スリットとを有する。各枠体間には、環状のシール溝にOリングや平パッキンなどの環状のシール部材が配置され、電池セル10からの電解液4の漏洩を抑制している。電池セル10及びセルスタック20は、公知のものを利用できる。
【0060】
〔作用効果〕
本形態のRF電池1は、従来のような蛇行管、螺旋管、或いは各極において二つのタンクを用いることなく、各極において一つのタンク3で電池セル10からタンク3に排出される電解液4とタンク3内の電解液4との混合を抑制できる。その理由は、タンク3内を区画する仕切部36を有するため、第一空間31と第二空間32の一方の空間に電池セル10に供給する電解液4を貯留できて、他方の空間に電池セル10から排出される電解液4を貯留できるからである。また、供給側切替弁54sと排出側切替弁54dとを有することで、第一空間31と第二空間32の一方の空間に貯留した電解液4を、電池セル10を通って他方の空間に排出できるからである。そして、弁制御部651を有することで、電解液4の流通の切り替えを、第一空間31と第二空間32の一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て他方の空間内に流通した後に行えるからである。
【0061】
また、本形態のRF電池1は、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招くことがない。上述のように従来のような蛇行管、螺旋管、或いは各極において二つのタンクを用いなくてもよいからである。その上、タンク3内を区画する仕切部36がフレキシブルな材料で構成され、内側領域362により第一空間31と第二空間32の体積を変えられることで、体積の大きなタンク3を用いなくてもよいからである。
【0062】
《実施形態2》
〔レドックスフロー電池〕
実施形態1では、仕切部36により第一空間31と第二空間32とがタンク3の内部を内側と外側とに設けられている形態を説明した。実施形態2では、図5から図7を参照して、第一空間31と第二空間32の形成箇所が実施形態1のRF電池1と相違する形態を説明する。即ち、実施形態2のRF電池1は、外側領域361の固定箇所が実施形態1のRF電池1と相違する。以下の説明は、実施形態1との相違点を中心に行う。実施形態1と同様の構成の説明は省略する。これらの点は、後述する実施形態3でも同様である。なお、図5から図7では、説明の便宜上、電解液を省略している。
【0063】
[タンク]
(仕切部)
外側領域361は、図5に示すように、第一空間31と第二空間32とがタンク3の内部の左右に設けられるように、天板33と側板35と底板34とに固定されていてもよい。また、外側領域361は、図6に示すように、第一空間31と第二空間32とがタンク3の内部の上下に設けられるように、側板35の全周にわたって固定されていてもよい。更に、外側領域361は、図7に示すように、第一空間31と第二空間32とがタンク3の内部の対角位置に設けられるように、天板33と側板35との角部と、側板35と、側板35と底板34との角部とに固定されていてもよい。
【0064】
〔作用効果〕
本形態のRF電池1は、実施形態1のRF電池1と同様、電池容量の低下と圧力損失の増大と設置面積の増加とを招くことなく、電池セル10からタンク3に排出される電解液4とタンク3内の電解液4との混合を抑制できる。
【0065】
《実施形態3》
〔レドックスフロー電池〕
実施形態1では、弁制御部651により電解液4の流通を切り替えるタイミングが、第一空間31と第二空間32の一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て他方の空間内に流通した後である形態を説明した。実施形態3のRF電池1では、図8を参照して、上記タイミングが実施形態1のRF電池1と相違する形態を説明する。具体的には、上記タイミングの一つが、一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て他方の空間内に流通し終わる前である。即ち、上記タイミングの一つは、一方の空間内に貯留された電解液4が電池セル10を経て他方の空間内に流通している途中である。
【0066】
(制御部)
制御部65は、実施形態1と同様の弁制御部651及びポンプ制御部652に加えて、有無検知部653と演算部654とを有する。本形態の弁制御部651は、有無検知部653の検知結果と演算部654の演算結果とに基づいて、供給側切替弁54sと排出側切替弁54dの動作を制御する。弁制御部651は、上述と同様、第一供給路51sと第二供給路52sの一方を開通させて他方を閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第一排出路51dと第二排出路52dの一方を開通させて他方を閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。ポンプ制御部652は、上述と同様、弁制御部651に連動してポンプ55を駆動させる。
【0067】
〈有無検知部〉
有無検知部653は、負荷130の電力要求の有無を検知する。検知結果が有りの場合、RF電池1は放電する。検知結果が無しの場合、RF電池1は充電する。負荷130の電力要求の有無は、給電指令所からの指令などによる交流/直流変換器100の動作に基づいて検知できる。
【0068】
〈演算部〉
演算部654は、第一空間31内の電解液4の充電状態(SOC)と、第二空間32内の電解液4の充電状態(SOC)とを演算する。電解液4の充電状態は、測定部10mを利用して求められる。
【0069】
本形態では、電池セル10の上流と下流とに設けた測定部10mを用いて、電池セル10に供給される電解液4の充電状態と電池セル10を経た電解液4の充電状態とを演算する。上流側の測定部10mは、供給側連結路53sを分岐した分岐路56sの途中に設けられる。上流側の測定部10mを通過した電解液4は、供給側連結路53sに戻されて、電池セル10に送られる。下流側の測定部10mは、排出側連結路53dを分岐した分岐路56dの途中に設けられる。下流側の測定部10mを通過した電解液4は、排出側連結路53dに戻されて、タンク3に送られる。両方の測定部10mには、正負の一方の電解液4のみが供給される。図8では、正極電解液が各測定部10mに供給される構成を示している。負極電解液の流通機構においても、電池セル10の上流と下流とに同様の測定部が設けられている。負極電解液の流通機構における測定部の図示は省略する。
【0070】
上流側の測定部10mと下流側の測定部10mとには、それぞれ電位が既知の標準電極10rが接続されている。標準電極10rには、例えば、飽和KCl銀塩化銀電極(Ag/AgCl/飽和KCl用溶液)を使用できる。上流側の測定部10mと標準電極10rとの間と、下流側の測定部10mと標準電極10rとの間とには、それぞれ電解液の絶対電位を測定する電圧測定部10vが設けられている。電圧測定部10vとしては、電圧計が利用できる。各電圧測定部10vでの測定結果は、演算部654に送られて電解液4の充電状態の演算に用いられる。この演算はコンピュータが行う。
【0071】
弁制御部651による供給側切替弁54sと排出側切替弁54dとの制御に基づき、電解液4が第一空間31と第二空間32のどちらに流通するかがわかる。演算した電解液4の充電状態と供給側切替弁54sと排出側切替弁54dの制御により構成される電解液4の流通経路とから、第一空間31内と第二空間32内の電解液4の充電状態が求められる。
【0072】
なお、電解液4の充電状態は、測定部10m及び標準電極10rを用いる代わりに、電池セル10と同様の構成のモニタセルを電池セル10の上流と下流の各々に設けて、モニタセルの開放電位を測定することで求めてもよい。測定した開放電位は、演算部654に送られて電解液4の充電状態の演算に用いられる。
【0073】
(制御手順)
有無検知部653が有りを検知したとき、演算部654は、第一空間31内と第二空間32内の電解液4の充電状態を演算する。弁制御部651は、第一空間31内と第二空間32内の電解液4のうち、充電状態の高い方の電解液4を電池セル10に流通させるように、供給側切替弁54sと排出側切替弁54dの動作を制御する。例えば、第一空間31内の電解液4の充電状態の方が高い場合、弁制御部651は、第一供給路51sを開通させて第二供給路52sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第二排出路52dを開通させて第一排出路51dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。このとき、ポンプ制御部652は、弁制御部651の上記制御の開始前にポンプ55を一旦停止させ、弁制御部651の上記制御の完了後にポンプ55を駆動させる。この制御により、第一空間31内の電解液4が第一供給路51sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて放電される。電池セル10で放電されて充電状態が下がった電解液4は、排出側連結路53dと第二排出路52dとを順に通って第二空間32内に排出される。
【0074】
第一空間31内の実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て第二空間32内に流通したら、実施形態1で説明したように、第一液量検知部61が第一空間31内の電解液量がゼロと検知する。そして、弁制御部651は、上述の手順と逆の手順となるように制御する。即ち、弁制御部651は、第二供給路52sを開通させて第一供給路51sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第一排出路51dを開通させて第二排出路52dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。ポンプ制御部652は、上述したように、弁制御部651の上記制御の開始前にポンプ55を一旦停止させ、弁制御部651の上記制御の完了後にポンプ55を駆動させる。この制御により、第二空間32内に貯留されていた電解液4は、第二供給路52sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて放電される。電池セル10で放電された電解液4は、電池セル10から排出側連結路53dと第一排出路51dとを順に通って第一空間31内に排出される。
【0075】
電解液4の充電状態が放電末に達した時点で、本制御は終了する。
【0076】
なお、第一空間31内の電解液4の充電状態が閾値未満の場合、本制御を行わないようにしてもよい。この場合、充電状態の低い第二空間32内の電解液4を電池セル10に流通させることで、電解液4が充電される。
【0077】
有無検知部653が無しを検知したとき、演算部654は、第一空間31内と第二空間32内の電解液4の充電状態を演算する。弁制御部651は、第一空間31内と第二空間32内の電解液4のうち、充電状態の低い方の電解液4を電池セル10に流通させるように、供給側切替弁54sと排出側切替弁54dの動作を制御する。例えば、第二空間32内の電解液4の充電状態の方が低い場合、弁制御部651は、第二供給路52sを開通させて第一供給路51sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第一排出路51dを開通させて第二排出路52dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。このとき、ポンプ制御部652は、弁制御部651の上記制御の開始前にポンプ55を一旦停止させ、弁制御部651の上記制御の完了後にポンプ55を駆動させる。この制御により、第二空間32内の電解液4が第二供給路52sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて充電される。電池セル10で充電された電解液4は、排出側連結路53dと第一排出路51dとを順に通って第一空間31内に排出される。
【0078】
第二空間32内の実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て第一空間31内に流通したら、実施形態1で説明したように、第二液量検知部62が第二空間32内の電解液量がゼロと検知する。そして、弁制御部651とポンプ制御部652とは、上述の手順と逆の手順となるように制御する。即ち、弁制御部651は、第一供給路51sを開通させて第二供給路52sを閉鎖させるように供給側切替弁54sを動作させる。また、弁制御部651は、第二排出路52dを開通させて第一排出路51dを閉鎖させるように排出側切替弁54dを動作させる。ポンプ制御部652は、上述したように、弁制御部651の上記制御の開始前にポンプ55を一旦停止させ、弁制御部651の上記制御の完了後にポンプ55を駆動させる。この制御により、第一空間31内に貯留されていた電解液4は、第一供給路51sと供給側連結路53sとを順に通って電池セル10に供給されて充電される。電池セル10で充電された電解液4は、電池セル10から排出側連結路53dと第二排出路52dとを順に通って第二空間32内に排出される。
【0079】
電解液4の充電状態が満充電に達した時点で、本制御は終了する。
【0080】
〔作用効果〕
本形態のRF電池1は、電解液4の流通の切り替えを、第一空間31と第二空間32の一方の空間内に貯留された実質的に全ての電解液4が電池セル10を経て他方の空間内に流通し終わる前に行える。そのため、例えば、充電途中に負荷130の電力要求が有りとなった場合でも、負荷130の電力要求に対して即座に対応できる。
【0081】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
1 RF電池
10 電池セル
10m 測定部
10r 標準電極
10v 電圧測定部
20 セルスタック
3 タンク
31 第一空間
32 第二空間
33 天板
34 底板
35 側板
36 仕切部
361 外側領域
362 内側領域
4 電解液
5 流通機構
51s 第一供給路
51d 第一排出路
52s 第二供給路
52d 第二排出路
53s 供給側連結路
53d 排出側連結路
54s 供給側切替弁
54d 排出側切替弁
55 ポンプ
56s 分岐路
56d 分岐路
6 制御機構
61 第一液量検知部
62 第二液量検知部
65 制御部
651 弁制御部
652 ポンプ制御部
653 有無検知部
654 演算部
100 交流/直流変換器
110 発電部
120 変電設備
130 負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8