(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】リーシュマニア症の処置用に選択されたアーテミシニンダイマー
(51)【国際特許分類】
C07D 493/18 20060101AFI20240807BHJP
A61K 31/5377 20060101ALI20240807BHJP
A61K 31/357 20060101ALI20240807BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C07D493/18 CSP
A61K31/5377
A61K31/357
A61P33/02
(21)【出願番号】P 2021573135
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 US2020019681
(87)【国際公開番号】W WO2020176488
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521375265
【氏名又は名称】エルソーリー マフムード エイ
(73)【特許権者】
【識別番号】521375276
【氏名又は名称】グール ワシーム
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(74)【代理人】
【識別番号】100182903
【氏名又は名称】福田 武慶
(72)【発明者】
【氏名】エルソーリー マフムード エイ
(72)【発明者】
【氏名】グール ワシーム
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-503582(JP,A)
【文献】特表2006-504753(JP,A)
【文献】特表2009-533398(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109467565(CN,A)
【文献】特表2021-504302(JP,A)
【文献】CHEN,Y. et al,Yaoxue Xuebao,1985年,Vol.20, No.6,pp.470-473
【文献】POSNER,G.H. et al,Bioorganic & Medicinal Chemistry,1997年,Vol.5, No.7,p.1257-1265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D、A61K、A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式:
【化1】
を有するアーテミシニンダイマー。
【請求項2】
原虫感染症を処置する
ための医薬の製造における、請求項1に記載のダイマーのうちの少なくとも1種の
使用。
【請求項3】
リーシュマニア症疾患を処置する
ための医薬の製造における、請求項1に記載のダイマーのうちの少なくとも1種の
使用。
【請求項4】
請求項1に記載の少なくとも1種のダイマーと、適切な薬学的担体とを含む、原虫感染症の処置に有用な医薬組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の少なくとも1種のダイマーと、適切な薬学的担体とを含む、リーシュマニア症疾患の処置に有用な医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、内臓リーシュマニア症を含む原虫感染症の処置における「アーテミシニンベースダイマー」の治療上の有用性を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
リーシュマニア症は、発展途上国の貧しい人々に主に影響を与える未治療の熱帯疾患である。3億5000万人を超える人々が、リーシュマニア症に罹る危険性があると考えられ、200万件近くの新しい症例が毎年生じている(1)。リーシュマニアは3種の主要な臨床的形態である:皮膚リーシュマニア症、粘膜皮膚リーシュマニア症および内臓リーシュマニア症として存在する(2)。内臓リーシュマニア症(VL)はドノバン・リーシュマニア(Leishmania donovani)寄生生物により引き起こされ、未処置のままだと命に関わる(2)。内臓リーシュマニア症を処置するために利用可能な薬物の選択肢はかねてから非常に限定されており、これらの薬物でさえ、有効性が低く、治療用量において毒性が高いという問題がある(3)。
第一選択の抗リーシュマニア薬の大部分は、複数の薬物耐性の増加によりすでにこれらの有用性を失っている(4)。抗リーシュマニア薬の現在の創薬パイプラインも、かなり減少している。新しい抗リーシュマニア薬の創薬パイプラインを豊かにするためには持続した取り組みが必要とされる。
【0003】
アーテミシニンは、主に抗マラリア剤として利用されてきたセスキテルペンラクトンである。アーテミシニンは、他の標準的なキノロンタイプの抗マラリア剤とは異なり、エンドペルオキシド環を有する独特の化学構造を有し、他の利用可能な抗マラリア剤と比べて、マラリア寄生生物の血液からの有意に急速なクリアランスを促す(6)。アーテミシニンは、一般に、体内でその活性代謝物、ジヒドロアーテミシニン(DHA)へと変換される(7、8)。アーテミシニンは、迅速な作用を含むいくつかの利点を有し、耐性および選択的作用機序を生じる傾向が低い(9、10)。アーテミシニンは優れた安全性プロファイル、無視できるほどの毒性、および優れた治療域を有する。
抗マラリア処置に対するより高い有効性、ならびに生理学的環境下でのバイオアベイラビリティーおよび安定性に関係した問題を克服するためのより良い化学的プロファイルを有するアーテミシニンのいくつかの誘導体が開発されてきた(11、12)。アーテミシニン誘導体はまた、がん、炎症性疾患、ウイルス性疾患、リーシュマニア症および他の感染性疾患を含む、いくつかの非抗マラリア状態の処置におけるこれらの潜在的用途についても調査されてきた(13、14)。
アーテミシニンおよびその誘導体は、皮膚リーシュマニア症に対する原因物質である大形リーシュマニアに対する抗リーシュマニア活性が初めて報告されている(15)。続いて、いくつかの他のグループが、大形リーシュマニアにおけるアーテミシニンの抗リーシュマニア活性を報告した(16、17)。ドノバン・リーシュマニア(L.donovani)に対するアーテミシニンの活性に関係した研究は非常に限定されている(18~20)。アーテミシニンは、非常に高濃度で、ドノバン・リーシュマニアプロマスチゴートに対するその抗リーシュマニア活性が報告されており(21)、その活性は、寄生生物の生物学的関連形態であるアマスチゴートに対しては明白に存在しない。アーテミシニンはまた、ドノバン・リーシュマニアに感染したBALB/cマウスにおいて抗リーシュマニア活性が報告されている(17)。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、安全であり、抗リーシュマニア薬として短い処置過程(<10日)(コンプライアンスの増加のため)を有するアーテミシニンダイマーを開発し、アーテミシニンダイマーの臨床効果を増加させることである。
【0005】
本発明は、抗マラリア剤を含む抗原虫剤としての活性および抗リーシュマニア特性を有するアーテミシニンダイマーを含有する組成物を含む。本発明はまた、マラリアまたはリーシュマニア症を含む原虫感染症の処置のための方法について記載する。本発明の組成物は以前に記載されていない。
アーテミシニンおよびその誘導体のモノマーの大部分は、経口バイオアベイラビリティーの欠如に悩まされている(22、23)。本発明のアーテミシニンダイマーは、これら製剤の特徴を改善するように設計されている。
並行して、本発明のダイマーを、異なる形態のドノバン・リーシュマニア寄生生物に対してスクリーニングした。本発明のアーテミシニンダイマーは強力な抗リーシュマニア活性を有することが判明した。
さらに、これらの抗リーシュマニア作用の分子モードについて本発明のアーテミシニンダイマーを評価した。アーテミシニンおよびその誘導体は、ドノバン・リーシュマニアプロマスチゴート寄生生物に対するそのアポトーシス効果について報告されている(20、24)。この関連で、アネキシンV結合アッセイの助けを借りて、プロマスチゴート形態の寄生生物に対するアポトーシス応答を評価するため、現在最も強力なアーテミシニンダイマー、ダイマーモルホリン、およびダイマーガンマ-アミノ酪酸(GABA)が選択された。
【0006】
ダイマーモルホリンおよびダイマーGABAは両方とも時間依存性アポトーシス効果を示す。親化合物、アーテミシニンは、濃度35μMにおいて抗リーシュマニア効果、およびアポトーシス効果を有さない。本発明のアーテミシニンダイマーは、経口バイオアベイラビリティーおよびリーシュマニア処置のための他の薬物動態学的/薬力学的(PK/PD)特徴に対して最適化することができる。さらに、本発明のアーテミシニンダイマーは生産コストが低く、このことは発展途上国の貧しい人々における内臓リーシュマニア症の処置に対して重要な要件である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】寄生生物としてドノバン・リーシュマニアアマスチゴートおよび宿主細胞として分化THP1細胞を使用した、核酸染色でのデジタル画像分析による、アーテミシニンダイマーに対するマクロファージアマスチゴートアッセイを示す画像である。
【
図2】親アーテミシニン、ダイマーモルホリン、およびダイマーGABAを用いた、異なる時間間隔での処置のFL2/FL1ドットプロットのパネルである。
【
図3】未処置のおよび親アーテミシニンで処置したプロマスチゴートと比較した、異なる時間間隔でのダイマーモルホリンおよびダイマーGABAのアポトーシス効果のチャートである。
【
図5】表2は選択されたアーテミシニンダイマーの抗リーシュマニア活性である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
アーテミシニンの治療上の有用性を改善することを目的に、いくつかの「アーテミシニンベースダイマー」が発明者らにより合成された。合成した化合物は、O-スルフェート、ピペリジン(Piperdine)、ピペラジン、モルホリン、バリン、ドーパミン、トリプタミン、3-アミノ-1,2-プロパンジオール(APD)、アニリン、セリノール、boc-バリン、4-アミノメチル-安息香酸(AB酸)、ガンマアミノ酪酸(GABA)、オキシム、シクロヘキシルアミン、オキシムヘミスクシネートおよびベンジルアミンとのダイマーを含む一連のアーテミシニンダイマーであった。
【0009】
アーテミシニンダイマーに対する合成プロトコールの概略は以下の通りである。
【化1】
【0010】
抗リーシュマニア活性について試験したアーテミシニンダイマーの構造は以下を含む。
【化2】
【0011】
好ましい実施形態の詳細な考察
本発明のダイマーの投与は、従来の投与経路、例えば、経口、皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内または直腸内のうちのいずれかによるものであってよい。好ましい実施形態では、化合物は、選択および投与経路に応じて、固体または液体であってよい薬学的に許容される担体と組み合わせて投与される。許容される担体の例として、これらに限定されないが、デンプン、ブドウ糖、スクロース、ラクトース、ゼラチン、寒天、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、アカシア、および類似の担体が挙げられる。液体の例として、生理食塩水、水、緩衝液、および食用油、例えば、ピーナッツ油およびトウモロコシ油が挙げられる。
【0012】
固体形態で投与される場合、化合物および希釈剤担体は、周知の方法のいずれかで調製した、錠剤、カプセル剤、散剤、または坐剤の形態であってよい。液体調製物として付与される場合、活性化合物と液体希釈担体の混合物は、乳剤、または真の溶液などとして投与される懸濁液の形態であってよい。化合物は、がんの成長を阻害するおよび/もしくはがんを破壊する、またはがん転移を予防する、あるいは原虫生物、例えば、マラリアおよびリーシュマニアを消滅させるのに十分な無毒性の投薬濃度で投与される。実際の用量単位は、十分認識された要素、例えば、患者の体重および/または罹患している可能性のある患者の病理学的状態の重症度および種類により決定される。
これらの検討材料を考慮に入れて、特定の患者に対する用量単位は、医学的技術において公知の技術に従い医師により容易に決定することができる。
【0013】
本発明は、アーテミシニンダイマーがより良い有効性を有し、毒性をもたない抗リーシュマニア剤として進化し得ることを実証することで、抗リーシュマニア症薬の創薬の分野に新たな可能性をもたらす。リーシュマニア症は未治療の熱帯疾患であり、内臓リーシュマニア症は、熱帯疾患においてマラリアに続き2番目に多くの死者を出していることから、本発明はかなりの意義を有する(1)。
内臓リーシュマニア症による死亡の原因となる要素はいくつかある。第1に、影響を受ける集団の大部分は貧困層であり、生活水準が低い。現在、影響を受ける集団は食料調達の余裕がなく、大部分の処置は非常に高価である(25、26)。また、利用可能な処置の大部分は重度の毒性を有する(27)。
【0014】
アムホテリシンBなどの第一選択の薬物の一部はリポソーム形態(Amphisome)へと製剤化されているが、製剤化コストは再度コストを増加させる(28)。スチボグルコン酸ナトリウムは主要な抗リーシュマニア薬であるが、大部分の病気流行地域は完全にこの薬物に耐性がある(4)。耐性に対して報告された、いくつかの他の事例も存在する。最近導入されたものは唯一の経口薬物、ミルテホシンである(29、30)。ペンタミジンおよびシタマキンは、内臓リーシュマニア症に対する有効性が低いことからすでに販売が打ち切られている(31)。
高い有効性、より良い安全性プロファイルおよび低コストを有し、耐性が発生しにくいより良い薬物を開発することが非常に必要となっている。アーテミシニンはクソニンジン(Artemisia annua)から単離した天然産物であり、より良い、より安価の代替物をここにもたらすが、強力な抗リーシュマニア活性を有するアーテミシニンは報告されていない(5)。
【0015】
本発明のアーテミシニンダイマーは、ドノバン・リーシュマニア寄生生物のプロマスチゴートと細胞内アマスチゴートの両形態に対して強力な抗リーシュマニア活性を有する。大部分のアーテミシニンダイマーは、分化THP1細胞(ヒト急性白血病細胞)に対して毒性を示さない。アーテミシニンダイマーは、対照の抗リーシュマニア薬アムホテリシン(IC50 0.062μM、SI201)およびペンタミジン(IC50 0.545μM、SI63)よりずっと良い選択性プロファイルを有する。
他のいくつかのアーテミシニン誘導体が調査された。これらの大部分は、対照薬物(シタマキン、ミルテホシン、アムホテリシンBまたはペンタミジン)より高いまたは同等の活性を有する(14、19、32)。
本発明では、アーテミシニンダイマーは、対照薬物アムホテリシンBおよびペンタミジンより高い活性およびより高い選択性を有すると報告されている。ダイマーモルホリンおよびダイマーGABAはそれぞれSI>2056および>1086を有する。ここで初めて、一部の抗リーシュマニア薬物リード(ダイマーモルホリンおよびダイマーGABA)がこのような高い選択性プロファイルを有すると報告されている。
【0016】
これら2種の分子を、殺リーシュマニア作用のこれらのモードについてさらに評価した。両方のダイマーは、プロマスチゴート形態の寄生生物に対してアポトーシス効果を示し、このアポトーシス効果は、24時間~72時間まで徐々に増加している(
図2)。親アーテミシニンは殺リーシュマニア効果またはアポトーシス効果を有さない。別個の研究(未公開)は、アーテミシニンダイマーは、親薬物アーテミシニンよりも有意により高いバイオアベイラビリティーを有することを示している。本発明のダイマーは、経口製剤として開発することができ、内臓リーシュマニア症の経口処置に対する可能性を有する。これら初期データは、これら新規の薬物リードの作用の分子機構の評価においてさらに有益となるだろう。さらに、アーテミシニンダイマーは、低い合成コスト、より良いバイオアベイラビリティープロファイル、より良い選択性プロファイルおよび耐性に対するより低い感受性など、いくつかの要素をすでに有する。よって、これら新規のアーテミシニンダイマーは、内臓リーシュマニア症に対するより良い抗リーシュマニア薬として開発することができる。
【0017】
結果
細胞毒性および抗リーシュマニア活性
分化THP1細胞に対して細胞毒性を評価した。ダイマートリプタミン(IC50 7.388μM)およびダイマーオキシム(IC50 11.383μM)を除いて、化合物のいずれも分化THP1細胞に対して毒性を有さなかった。すべてのアーテミシニンダイマー、親アーテミシニン、および対照薬物アムホテリシンBならびにペンタミジンの抗リーシュマニア活性をプロマスチゴートおよび細胞内アマスチゴート形態のドノバン・リーシュマニア寄生生物に対して評価した(表1)。アラマーブルーアッセイにより、すべてのアーテミシニンダイマーは、プロマスチゴート形態の寄生生物に対して強力な活性を示す。寄生生物レスキューおよび変換アッセイ(transformation assay)において、すべてのアーテミシニンダイマーは、細胞内アマスチゴート形態の寄生生物に対して強力な活性を示す(表1)。親アーテミシニンは、非常に高濃度(IC50 99.175μM)でプロマスチゴート形態の寄生生物に対して活性を示し、細胞内アマスチゴートでは、濃度35.419μMまでいかなる活性も有さない(THP1細胞に対するDMSOの許容限度が0.5%であるという事実により、寄生生物レスキューおよび変換アッセイにおける濃度は限定される)。寄生生物レスキューおよび変換アッセイにおける細胞毒性のIC50値を抗リーシュマニア活性のIC50値で割ることにより、各アーテミシニンダイマーに対する選択指数(SI)を計算した。ダイマーモルホリン(0.007μM、SI>2052)およびダイマーGABA(0.013μM、SI>1086)は、最も高い選択性インデックスを有する最も活性のあるアーテミシニンダイマーであった。デジタル画像分析アッセイでは、寄生生物レスキューおよび変換アッセイにおいて以前に強力な活性を示した、選択されたアーテミシニンダイマーの抗リーシュマニア活性を再確認した(表2)。アマスチゴート核の数を、THP1細胞核の数で割ることにより、分化THP1細胞の感染性を計算した。選択されたアーテミシニンダイマーは、デジタル画像分析アッセイにおいても細胞内アマスチゴートに対して強力な活性を示している(
図3/表2)。
【0018】
アポトーシス実験
テューキー比較検定を用いた二元配置ANOVA(
図2):
24時間で、ダイマーモルホリン14μMは、対照群と比較して、FL2(PI)/FL1(アネキシンFITC)ドットプロットにおいて、右上(UR、後期アポトーシス)領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーGABA 14μMは、対照群と比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。48時間で、ダイマーモルホリン14μMは、対照群と比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーGABA 14μMは、対照群と比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。72時間で、ダイマーモルホリン14μMは、対照群と比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーGABA 14μM(P<0.0001)は、対照群と比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意により多くの集団を有する。ダイマーモルホリン14μMは、48時間で、24時間でのダイマーモルホリン14μMと比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーGABA 14μMは、48時間で、24時間でのダイマーGABA 14μMと比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーモルホリン14μMは、72時間で、24時間でのダイマーモルホリン14μMと比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。ダイマーGABA 14μMは、72時間で、24時間でのダイマーGABA 14μMと比較して、FL2/FL1ドットプロットのUR領域に有意に(P<0.0001)より多くの集団を有する。
【0019】
細胞株
THP-1細胞(ヒト単球性白血病細胞)は、American Type Culture Collection(ATCC)より入手可能となり、ピルビン酸ナトリウム、グルタミン、HEPES(Life-81 Technologies)および10%加熱不活性化したFBS(Sigma)を補充したRPMI 1640培地(Life-Technologies)内で維持した。培養物を5%CO2インキュベーター内で、37℃で維持した。THP1細胞の継代培養を3~4日ごとに行った。pH7.4で10%ウシ胎児血清を補充したRPMI 1640培地内で、プロマスチゴート形態のドノバン・リーシュマニア(S1株)を増殖させた。培養物をインキュベーターにより26℃で維持した。継代培養を3~4日ごとに行った。
【0020】
ドノバン・リーシュマニアプロマスチゴートのアッセイ
プロマスチゴートアッセイは、アラマーブルーベースの成長分析に基づいた(33)。3~4日経過した、指数増殖期のプロマスチゴート培養物をRPMI 1640培地で1×106細胞/mlに希釈した。アーテミシニンダイマー試料をストック濃度2mg/mlに希釈した。アーテミシニンダイマー試料を培養プレートに分注し、試料の最も高い最終濃度が10μg/mlとなり、親アーテミシニンの最も高い濃度が40μg/mlとなるよう、プロマスチゴート培養物で希釈した。最も高い濃度の各アーテミシニンダイマーを有する培養物を6つの異なる濃度へと1:5比で連続希釈した。すべてのアーテミシニンダイマーを3連で試験した。プロマスチゴート寄生生物およびアーテミシニンダイマーを有する培養プレートを26℃で48時間インキュベートした。48時間後、アラマーブルーを各ウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートした。標準蛍光を544nm ex、590nm emで、Fluostar Galaxy蛍光光度計(BMG LabTechnologies)により測定した。XLfit5.2.2ソフトウエアを使用して、用量反応曲線を調製した(34)。
【0021】
マクロファージ内在化ドノバン・リーシュマニアアマスチゴートアッセイ
寄生生物レスキューおよび変換アッセイ:
このアッセイはJainらにより以前に公開されたプロトコールに基づく(35)。3日経過した、指数増殖期にあるTHP1細胞の培養物をRPMI培地で2.5×105細胞/mlに希釈した。PMAを最終濃度25ng/mlまで加えた。PMAで処理した培養物を透明な平底培養物プレートに分注し、5%CO2インキュベーター内で、37℃で終夜インキュベートした。分化THP1細胞を有するプレートを、Molecular device AquaMax 4000の補助を用いて、血清を含まない培地で洗浄した。5×106細胞/mlに希釈した、5~6日経過したドノバン・リーシュマニアプロマスチゴート培養物を分化THP1細胞上に加えた。感染に対して、マクロファージ細胞の寄生生物に対する比は1:10であった。プレートを24時間インキュベートした。24時間後、AquaMax 4000の補助を用いて、プレートを再度洗浄し、血清を含まない培地を、希釈した試験試料を有する培地に置き換えた。プレートを再度CO2インキュベーター内に、37℃で48時間配置した。48時間後、マクロファージアマスチゴートプレートを洗浄し、0.05%SDSで30秒間処理し、希釈したSDS培地を、完全なRPMI培地に直ちに置き換えた。アマスチゴートからプロマスチゴートへの変換のためにプレートをインキュベートし、プロマスチゴートを26℃で48時間成長させた。48時間後、5μlのアラマーブルーをマクロファージアマスチゴートアッセイプレートの各ウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートした。標準蛍光を、544nm ex、590nm emで、Fluostar Galaxy蛍光光度計(BMG LabTechnologies)により測定した。Xlfit5.3.1ソフトウエアですべての用量反応曲線を生成した。
【0022】
デジタル画像分析アッセイ
3日経過した、指数増殖期のTHP1細胞の培養物をRPMI培地で2.5×105細胞/mlに希釈した。PMAを最終濃度25ng/mlまで加えた。PMA処理した培養物を16ウェルチャンバースライドに分注し、5%CO2インキュベーター内で、37℃で終夜インキュベートした。分化THP1細胞を有する16ウェルチャンバースライドを、血清を含まない培地で洗浄した。5×106細胞/mlに希釈した、5~6日経過したドノバン・リーシュマニアプロマスチゴート培養物を分化THP1細胞上に加えた。感染に対して、マクロファージ細胞の寄生生物に対する比は1:10であった。16ウェルチャンバースライドを24時間インキュベートした。24時間後、チャンバースライドを再度洗浄し、残留する血清を含まない培地を、希釈した試験試料を有する完全培地に置き換えた。チャンバースライドを再度CO2インキュベーター内に、37℃で48時間配置した。48時間後、マクロファージアマスチゴートプレートを洗浄し、100%メタノールで30秒間固定した。固定したチャンバースライドを5×CybrGreen Iで15分間染色した。ドノバン・リーシュマニアアマスチゴート寄生生物に感染した分化THP1細胞のすべての画像をNIKON 90i Eclipse蛍光顕微鏡により収集した。THP1細胞の数およびTHP1細胞中のアマスチゴートの数の鑑別計算をImageJソフトウエアで行った(35)。
【0023】
THP1細胞毒性アッセイ
3日経過した、指数増殖期のTHP1細胞の培養物を、RPMI培地で2.5×105細胞/mlに希釈した。PMAを最終濃度25ng/mlまで加えた。PMAで処理した培養物を透明な平底培養物プレートに分注し、5%CO2インキュベーター内で、37℃で終夜インキュベートした。分化THP1細胞を有するプレートを、Molecular device AquaMax4000による補助を用いて、血清を含まない培地で洗浄し、血清を含まない培地を、希釈した試験試料を有する培地に置き換えた。プレートを再度CO2インキュベーター内に、37℃で48時間配置した。48時間後、2.5ulのalamar-blueを細胞毒性プレートの各ウェルに加え、プレートをさらに24時間インキュベートした。544nm ex、590nm emにおいて、標準蛍光をFluostar Galaxy蛍光光度計(BMG LabTechnologies)により測定した。すべての用量反応曲線はXlfit5.3.1ソフトウエアで生成された(36)。
【0024】
アネキシンV結合アポトーシスアッセイ
プログラム細胞死としても公知のアポトーシスは、望ましくない細胞を排除する生理的プロセスである(37)。アポトーシスのプロセスには、早期事象の1つに、細胞膜の内側から表面への膜ホスファチジルセリンの転位が含まれる(38)。アネキシンVは、ホスファチジルセリンに対して高親和性を有するCa
++依存性リン脂質結合タンパク質である(39)。よって、FITC標識したアネキシンVを、フローサイトメーターを使用して、曝露されたPSの分析に使用することができる(40)。アネキシンV/ヨウ化プロピジウム染色法を使用して、アポトーシス分析をフローサイトメトリーにより行った。高い選択指数を有する最も活性のあるアーテミシニンダイマーをアポトーシス実験に対して選択した(41)。1×10
7プロマスチゴート細胞/mlをアーテミシニン(35μM)、ダイマーモルホリン(14μM)およびダイマーGABA(14μM)で処理した。アリコートを異なる時間間隔で回収し、FITC-アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムで染色した。フローサイトメトリーで細胞を分析した。
図2に示されている通り、FFC/SSCドットプロットにおいて、ゲーティングした集団を健康なプロマスチゴート細胞に対して選択した。50,000回のゲート事象(gated event)をFL2(ヨウ化プロピジウム)/FL1(アネキシンFITC)で実行し、四角形描画法(quadrangle plot)により分析した。
【0025】