(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】放射線撮像装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B6/42 500S
(21)【出願番号】P 2022561225
(86)(22)【出願日】2020-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2020042488
(87)【国際公開番号】W WO2022102095
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516088329
【氏名又は名称】株式会社ANSeeN
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】青木 徹
(72)【発明者】
【氏名】都木 克之
(72)【発明者】
【氏名】小池 昭史
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-096798(JP,A)
【文献】特開2012-032322(JP,A)
【文献】特開2010-021151(JP,A)
【文献】特開昭59-137874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線のエネルギ又は粒子の数に対応する電荷を生成する複数の画素と、
複数の前記画素ごとに接続されると共に、前記画素から提供された前記電荷に基づいてデジタル値を生成する複数の信号処理部と、
複数の前記画素及び複数の前記信号処理部を含む放射線検出器が、二次元状に配置された回路基板と、を備え、
複数の前記信号処理部は、
前記信号処理部ごとに前記電荷に基づくアナログ値を前記デジタル値に変換する信号変換部と、
前記デジタル値を生成するためのクロック信号を前記信号変換部に提供するクロック信号生成部と、をそれぞれ含む、放射線撮像装置。
【請求項2】
前記クロック信号生成部は、前記画素への前記放射線の入射に起因する前記電荷の発生をトリガとして、前記信号変換部への前記クロック信号の提供を開始する、請求項1に記載の放射線撮像装置。
【請求項3】
前記信号処理部から前記デジタル値を前記回路基板に出力させるための転送信号を、複数の前記信号処理部のそれぞれに提供する転送信号生成部と、
前記転送信号を前記信号処理部に伝送する配線部と、を更に備える、請求項1又は2に記載の放射線撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線を検出する技術が開発されている。放射線検出技術は、医療分野、工業分野、セキュリティ分野などへの応用が期待されている。放射線を検出する装置として、放射線画像を得る放射線撮像装置がある。放射線撮像装置は、入射した放射線の状態を示す画像データを出力する。画像データの生成には、例えば、アナログ信号をデジタル信号に変換するといった信号処理が行われる。この信号処理は、所望の機能を発揮する電子回路に対して、当該電子回路を駆動するクロック信号が提供されることにより実行される。特許文献1及び特許文献2は、X線又は放射線を検出する装置を開示する。さらに、特許文献1及び特許文献2は、これらの装置がクロックに応じて動作することを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2020―507753号公報
【文献】国際公開第2020/077217号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
放射線撮像装置の技術分野では、有効画素領域の大面積化が望まれている。有効画素領域の拡大は、画素数の増加を伴う。画素数が増加すると、消費電力も増加する傾向にある。
【0005】
本発明は、消費電力の増加を抑制することが可能な放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である放射線撮像装置は、入射した放射線のエネルギ又は粒子の数に対応する電荷を生成する複数の画素と、複数の画素ごとに接続されると共に、画素から提供された電荷に基づいてデジタル値を生成する複数の信号処理部と、複数の画素及び複数の信号処理部を含む放射線検出器が、二次元状に配置された回路基板と、を備える。複数の信号処理部は、電荷に基づくアナログ値をデジタル値に変換する信号変換部と、デジタル値を生成するためのクロック信号を信号変換部に提供するクロック信号生成部と、をそれぞれ含む。
【0007】
この放射線撮像装置は、画素ごとに信号処理部が設けられている。そして、信号処理部は、信号変換部とクロック信号生成部と、をそれぞれ含んでいる。つまり、この放射線撮像装置は、画素ごとにクロック信号生成部が設けられている。このような構成によると、放射線が入射した画素に対応する信号変換部のみを駆動すると共に、放射線が入射していない画素に対応する信号変換部を駆動させないという動作を行うことができる。従って、画素の数が増えた場合であっても、動作が不要な信号変換部を動作させることがないので、消費電力の増加を抑制することができる。
【0008】
クロック信号生成部は、画素への放射線の入射に起因する電荷の発生をトリガとして、信号変換部へのクロック信号の提供を開始してもよい。この構成によれば、放射線が入射するごとに信号変換部の動作を行うことができる。
【0009】
本発明の一形態である放射線撮像装置は、信号処理部からデジタル値を回路基板に出力させるための転送信号を、複数の信号処理部のそれぞれに提供する転送信号生成部と、転送信号を信号処理部に伝送する配線部と、を更に備えてもよい。この構成によれば、複数の信号処理部の出力動作を同期させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、消費電力の増加を抑制することが可能な放射線撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る放射線撮像装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す放射線撮像装置を分解すると共に第1の視点から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す放射線撮像装置を分解すると共に第2の視点から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の放射線撮像装置が備える放射線検出器を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す放射線撮像装置が備える信号処理部の構成を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、放射線撮像装置の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す放射線撮像装置1は、検査対象から到達する放射線に基づく二次元画像を得る。放射線とは、例えば、ガンマ線、X線、アルファ線及びベータ線などである。放射線撮像装置1は、複数の放射線検出器2と、回路基板3と、を有する。放射線検出器2は、回路基板3の回路主面3aに取り付けられている。放射線検出器2は、入射した放射線に応じた画素信号を出力する。放射線検出器2は、複数の画素G(
図4参照)を含んでおり、画素Gごとに画素信号を出力する。画素信号は、画像生成部4において放射線画像の生成に用いられる。回路基板3は、放射線検出器2から出力された画素信号を受ける。回路基板3は、制御信号を制御部5から放射線検出器2に提供するための信号線を有する。また、回路基板3は、画素信号を画像生成部4に出力するための信号線を有する。また、回路基板3は、放射線検出器2同士を電気的に接続する信号線を有してもよい。
【0013】
図2及び
図3に示すように、放射線検出器2は、電荷生成部10と、読出部20と、を有する。電荷生成部10及び読出部20の形状は、板状である。放射線検出器2は、積層構造を有する。電荷生成部10は、読出部20の上に配置されている。電荷生成部10は、読出部20に対して電気的に接続されている。電荷生成部10は、入射した放射線に応じた電荷を生成する。電荷生成部10は、電荷を読出部20に出力する。読出部20は、電荷生成部10が生成した電荷を利用して画素信号を生成する。
【0014】
電荷生成部10は、半導体検出部11と、制御電極部12と、電荷出力電極13と、を有する。
【0015】
半導体検出部11は、受けたX線によって電子正孔対(電荷対)を生成する。つまり、半導体検出部11は、受けた放射線をそのエネルギに対応した電流信号(電荷信号)に変換する。半導体検出部11の平面形状は、矩形である。半導体検出部11の大きさは、例えば、9.6mm×9.6mm程度である。半導体検出部11は、X線などの放射線を受ける半導体入射面11aと、電荷を出力する半導体出力面11bと、を有する。電荷に基づく信号は、半導体出力面11bから読出部20に提供される。半導体検出部11としては、例えば、Cd(Zn)Te電荷生成器、Si電荷生成器、Ge電荷生成器、GaAs電荷生成器、GaN電荷生成器及びTlBr電荷生成器等を利用してよい。また、半導体検出部11として、シンチレータと光検出器とを備えた装置を用いてもよい。シンチレータは、X線を光に変換する。光検出器は、シンチレータが生成した光を電荷に変換する。
【0016】
制御電極部12は、半導体入射面11aに設けられている。制御電極部12は、半導体入射面11aの全面を覆う。平面視すると、制御電極部12の平面形状は、半導体入射面11aの平面形状と一致する。制御電極部12は、半導体検出部11が配置される領域に、電界を形成する。電界は、半導体検出部11に発生した電荷が移動する方向を決める。制御電極部12は、半導体検出部11の内部において電荷が半導体出力面11bに向かって移動するように電界を発生させる。
【0017】
複数の電荷出力電極13は、半導体出力面11bに設けられている。電荷出力電極13は、バンプであってもよい。1個の電荷出力電極13は、1個の画素Gに対応する。従って、電荷出力電極13が配置されている領域は、画素領域である。例えば、第1の辺にn個の電荷出力電極13が配置され、第2の辺にm個の電荷出力電極13が配置されている場合には、電荷出力電極13の総数はk個(k=n×m)である。この場合には、1個の放射線検出器2の画素数は、kであるといえる。そして、放射線撮像装置1がp個の放射線検出器2を有する場合には、放射線撮像装置1の画素数は、r(r=k×p)であるといえる。
【0018】
1個の放射線検出器2の画素数は、例えば、96である。従って、電荷出力電極13の数も96である。前述したように半導体検出部11の大きさが9.6mm×9.6mm程度の正方形であるとすれば、電荷出力電極13の間隔は、100μmである。なお、
図2などでは、図示の都合上、電荷出力電極13の数は96より少ない数として図示している。
【0019】
読出部20は、半導体検出部11が発生した電荷に基づく画素信号を生成する。画素信号は、デジタル値である。読出部20は、画素信号を回路基板3に出力する。読出部20は、中間基板30と、リードアウト基板40と、を有する。
【0020】
中間基板30は、半導体検出部11が発生した電荷をリードアウト基板40に導く。詳細は後述するが、電荷出力電極13の配置は、第1リードアウト電極41の配置と異なっている。そこで、中間基板30は、互いに異なる位置に配置された電極同士を接続する機能を奏する。この機能をピッチ変換と称する。従って、中間基板30は、ピッチ変換基板である。中間基板30は、半導体検出部11が有する電荷出力電極13のピッチを、リードアウト基板40の第1リードアウト電極41のピッチに変換する。
【0021】
中間基板30は、中間入力面30aと、中間出力面30bと、を有する。中間入力面30aは、電荷生成部10に対面する。中間出力面30bは、リードアウト基板40に対面する。
【0022】
中間入力面30aは、半導体検出部11の半導体出力面11bに対面する。中間入力面30aには、平面視して矩形の中間入力領域30Sが設定されている。中間入力領域30Sは、中間入力面30aのほぼ全面に亘って設定されている。例えば、中間入力領域30Sは、中間入力面30aの全面としてもよい。中間入力領域30Sには、複数の第1中間電極31が二次元状に等間隔に配置されている。第1中間電極31には、半導体検出部11の電荷出力電極13が電気的に接続される。従って、互いに隣り合う第1中間電極31のピッチは、電荷出力電極13のピッチと同じである。例えば、電荷出力電極13のピッチが100μmであるとすれば、第1中間電極31のピッチも100μmである。中間入力面30aにおいて中間入力領域30Sは、画素領域に対応する。
【0023】
中間出力面30bには、平面視して矩形の中間出力領域30Rが設定されている。平面視すると、中間出力領域30Rの全体は、中間入力領域30Sと重複する。つまり、中間出力領域30Rの面積は、中間入力領域30Sの面積よりも小さい。中間出力領域30Rには、複数の第2中間電極32(第2の電極)が二次元状に配置されている。
【0024】
第1中間電極31(
図2参照)は、中間基板30の側面の近傍にまで配置される。一方、第2中間電極32(
図3参照)は、中間基板30の側面の近傍には配置されない。最外周に配置される第2中間電極32は、中間基板30の側面から離間する。第2中間電極32から中間基板30の側面までの距離は、第1中間電極31から中間基板30の側面までの距離よりも大きい。例えば、第2中間電極32から中間基板30の側面までの距離は、第2中間電極32の数個分の長さよりも大きい。この距離は、後述するリードアウト出力部40Rの幅に対応する。リードアウト出力部40Rの幅が200μmであるとすれば、第2中間電極32から中間基板30の側面までの距離もおおむね200μmである。
【0025】
図4に示すように、1個の第1中間電極31は、1個の第2中間電極32に電気的に接続されている。従って、中間基板30は、第1中間電極31を第2中間電極32に接続する配線33を有する。配線33の構成は特に制限はない。例えば、配線33は、中間基板30の厚み方向に延びる部分と、中間基板30の表面の方向に延びる部分との組み合わせであってもよい。また、配線33は、第1中間電極31から第2中間電極32へ向かって直線状に延びていてもよい。このような配線構造は、斜めビアと称される。斜めビアによれば、第1中間電極31から第2中間電極32までの配線の距離であるピッチ変換距離を短くできる。その結果、浮遊容量の影響を低減することができる。
【0026】
第1中間電極31の数は、第2中間電極32の数と同じである。互いに隣接する第2中間電極32のピッチP32は、互いに隣接する第1中間電極31のピッチP31よりも小さい。第1中間電極31のピッチP31が100μmであるとすれば、第2中間電極32のピッチP32として80μmが例示できる。なお、本実施形態では、複数の第2中間電極32は、等間隔に配置されているが、第2中間電極32のピッチP32は等間隔に限定されない。
【0027】
再び
図2及び
図3を参照する。リードアウト基板40は、電荷を受けて、受けた電荷に対応する画素信号を生成する。リードアウト基板40は、リードアウト入力面40aと、リードアウト出力面40bと、を有する。リードアウト入力面40aは、中間出力面30bに対面する。リードアウト出力面40bは、回路基板3に対面する。また、リードアウト基板40は、リードアウト入力部40Sと、リードアウト出力部40Rと、複数の信号処理部45(
図4参照)と、を有する。
【0028】
リードアウト入力部40Sは、リードアウト入力面40aに形成されている。リードアウト入力部40Sは、複数の第1リードアウト電極41を含む。第1リードアウト電極41の配置は、第2中間電極32の配置に対応している。つまり、第1リードアウト電極41は、第2中間電極32に対面する。その結果、1個の第1リードアウト電極41は、1個の第2中間電極32に電気的に接続される。そして、第1リードアウト電極41は、第2中間電極32から電荷を受ける。
【0029】
リードアウト出力部40Rは、放射線検出器2と別の構成要素(制御部5及び画像生成部4)との間における信号の入出力部として機能する。例えば、リードアウト出力部40Rは、制御部5から制御信号を受ける。また、リードアウト出力部40Rは、画像生成部4に対して、デジタル値を出力する。リードアウト出力部40Rは、リードアウト入力部40Sを囲むように形成されている。例えば、リードアウト出力部40Rの幅は、200μmである。平面視するとリードアウト出力部40Rは、枠形状を有する。
【0030】
リードアウト出力部40Rは、複数の第2リードアウト電極42を含む。例えば、枠状のリードアウト出力部40Rにおいて、1つの辺には、50個の第2リードアウト電極42が配置されている。従って、リードアウト出力部40Rを構成する4つの辺において、200個の第2リードアウト電極42が配置されている。1個の第2リードアウト電極42は、1個の信号処理部45に接続されている。第2リードアウト電極42は、リードアウト入力部40Sを囲む。換言すると、リードアウト入力面40aにおいて、複数の第2リードアウト電極42は、複数の第1リードアウト電極41を囲むように配置されている。第2リードアウト電極42は、貫通電極である。つまり、第2リードアウト電極42は、リードアウト入力面40aからリードアウト出力面40bに至る。第2リードアウト電極42は、リードアウト出力面40bに設けられたバンプを介して回路基板3に電気的に接続されている。
【0031】
図4に示すように、信号処理部45は、電荷をデジタル値である画素信号に変換する。1個の信号処理部45は、1個の第1リードアウト電極41に接続されている。つまり、1個の信号処理部45は、1個の画素Gに接続されている。従って、読出部20は、複数の信号処理部45を含んでいる。信号処理部45は、リードアウト入力部40Sから電荷を受ける。信号処理部45は、リードアウト出力部40Rからデジタル値を出力する。より詳細には、信号処理部45は、電荷生成部10が出力する電荷を画素信号であるエネルギ積分信号に変換する。エネルギ積分信号は、少なくとも入射した放射線が有していたエネルギの情報を含む。
【0032】
図5に示すように、信号処理部45は、信号変換部46と、メモリ47と、クロック信号生成部48と、をそれぞれ有する。信号処理部45は、画素Gごとに接続されているので、信号処理部45の数は、画素Gの数と同じである。同様に、信号変換部46の数も画素Gの数と同じであり、メモリ47の数も画素Gの数と同じであり、クロック信号生成部48の数も画素Gの数と同じである。つまり、1個の画素Gに対して、1個の信号変換部46、1個のメモリ47及び1個のクロック信号生成部48が接続されている。
【0033】
信号変換部46は、中間基板30の配線33を介して電荷生成部10の電荷出力電極13に接続されている。信号変換部46は、電荷生成部10から電荷φ1を受ける。信号変換部46は、電荷φ1に基づくアナログ信号を離散化する。アナログ信号は、電圧として表現される。電圧は、電荷生成部10の対応する画素Gに入射した放射線のエネルギ又は粒子の数に対応する。従って、信号変換部46は、デジタル信号を出力するA/D変換器である。例えば、信号変換部46の分解能は、10ビットであるとしてよい。
【0034】
信号変換部46は、クロック信号生成部48から提供されるクロック信号θ2によって動作する。信号変換部46は、クロック信号θ2を受けると、画素Gから放射線の入射に起因して生じたアナログ信号を転送する動作と、画素Gに蓄積された電荷をリセットする動作と、転送したアナログ信号をデジタル信号に変換する動作と、を行う。なお、信号変換部46は、上記の動作に加えて、そのほかの所望の動作を行ってもよい。
【0035】
クロック信号生成部48は、信号変換部46の動作に必要なクロック信号θ2を生成する。そして、クロック信号生成部48は、クロック信号θ2を信号変換部46へ提供する。つまり、1個の信号変換部46に対して、1個のクロック信号生成部48が接続されている。換言すると、あるクロック信号生成部48の出力先は、特定された1個の信号変換部46である。信号変換部46は、画素Gごとに設けられている。従って、クロック信号生成部48も画素Gごとに設けられているといえる。このような構成によれば、信号変換部46に隣接するようにクロック信号生成部48を配置することができる。その結果、クロック信号生成部48から信号変換部46に至る信号線の長さを短くすることが可能になる。信号線が短くなると、クロック信号θ2の伝送距離も短くなるので、信号の遅延も生じにくくなる。さらに、クロック信号の周波数も、100MHz程度にまで高めることができる。
【0036】
クロック信号生成部48は、対応する画素Gへの放射線の入射(
図6の符号S1参照)をトリガとして、クロック信号θ2の生成を開始する。クロック信号生成部48は、トリガに応じて、所定数のパルスを出力する。出力されるパルスの数は、信号変換部46におけるアナログ-デジタル変換動作に必要な数としてよい。例えば、1回の放射線の入射が検出されたとき、クロック信号生成部48は、16個のパルスをクロック信号θ2として出力する。
【0037】
クロック信号生成部48が画素Gごとに設けられているので、それぞれの画素Gに関する動作は、独立させることができる。換言すると、複数の信号変換部46の動作を、同期させる必要がない。従って、複数の信号変換部46の動作を同期させるための信号も不要である。例えば、ある画素Gに放射線が入射された場合に、信号変換部46は、直ちに、デジタル信号を生成する動作を開始することが可能である。つまり、信号変換部46の動作は、放射線の入射に対して同期しているといえる。このような動作によれば、放射線の入射後に直ちに信号変換処理が行われるので、位相ずれの問題は生じない。また、無駄な待ち時間が発生することもない。このような動作は、ランダムに入射する粒子ごと信号変換処理を行うフォトンカウンティング型の検出器に対して親和性が高い。
【0038】
さらに、あるタイミングにおいて、複数の画素Gに放射線が入射された場合にも、それぞれ独立してデジタル信号を生成する動作を開始することができる。さらに、放射線の入射が生じた画素Gに対応する信号変換部46だけを動作させ、放射線の入射が生じていない画素Gに対応する信号変換部46は動作させない、ということも可能である。全ての画素Gについて一律に信号変換動作を行う場合には、画素数が増加すると消費電力も画素数に比例して増加する。しかし、本実施形態の放射線撮像装置1は、必要な信号変換部46だけを動作させることができるので、消費電力は画素数に比例しない。従って、画素数の増加と消費電力の増加の抑制を両立させることができる。
【0039】
メモリ47は、信号変換部46に接続される。メモリ47は、信号変換部46からデジタル信号φ2を受ける。そして、メモリ47は、デジタル信号φ2が入力されるたびに、デジタル信号φ2を保存する。メモリ47は、デジタル信号φ2を所定のメモリ空間に逐次保存する。メモリ47は、配線51(配線部)を介して制御部5に接続されている。配線51の入力は、1つであり、配線51の出力は複数である。そして、配線51の入力は、制御部5に接続されており、配線51の出力は信号処理部45のメモリ47に接続されている。つまり、1個の制御部5から複数のメモリ47に転送信号θ1が出力される。転送信号θ1を出力する制御部5は、転送信号生成部としての機能を有する。
【0040】
メモリ47は、制御部5から提供される転送信号θ1に応じて、デジタル信号φ2を画像生成部4に出力する。つまり、メモリ47は、クロック信号θ2を受けないので、クロック信号θ2によって制御されることはない。換言すると、信号変換部46の動作と、メモリ47の動作とは、互いに異なる信号に基づいている。従って、それぞれの動作も互いに独立している。
【0041】
放射線撮像装置1は、入射した放射線のエネルギ又は粒子の数に対応する電荷を生成する複数の画素Gと、複数の画素Gごとに接続されると共に、画素Gから提供された電荷に基づいてデジタル値を生成する複数の信号処理部45と、複数の画素G及び複数の信号処理部45を含む放射線検出器2が、二次元状に配置された回路基板3と、を備える。複数の信号処理部45は、電荷に基づくアナログ値をデジタル値に変換する信号変換部46と、デジタル値を生成するためのクロック信号を信号変換部に提供するクロック信号生成部48と、をそれぞれ含む。
【0042】
放射線撮像装置1は、画素Gごとに信号処理部45が設けられている。そして、信号処理部45は、信号変換部46とクロック信号生成部48と、をそれぞれ含んでいる。つまり、放射線撮像装置1は、画素Gごとにクロック信号生成部48が設けられている。このような構成によると、放射線が入射した画素Gに対応する信号変換部46のみを駆動すると共に、放射線が入射していない画素Gに対応する信号変換部46を駆動させないという動作を行うことができる。従って、画素Gの数が増えた場合であっても、動作が不要な信号変換部46を動作させることがないので、消費電力の増加を抑制することができる。
【0043】
本発明の放射線撮像装置1は、上記の実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1…放射線撮像装置、2…放射線検出器、3…回路基板、4…画像生成部、5…制御部、10…電荷生成部、20…読出部、11…半導体検出部、12…制御電極部、13…電荷出力電極、11a…半導体入射面、11b…半導体出力面、30…中間基板、40…リードアウト基板、30a…中間入力面、30b…中間出力面、30S…中間入力領域、31…第1中間電極、30R…中間出力領域、32…第2中間電極、40a…リードアウト入力面、40b…リードアウト出力面、41…第1リードアウト電極、42…第2リードアウト電極、45…信号処理部、46…信号変換部、47…メモリ、48…クロック信号生成部。