(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ヘルスケアシステム、および、ヘルスケアプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 50/30 20180101AFI20240807BHJP
【FI】
G16H50/30
(21)【出願番号】P 2020191230
(22)【出願日】2020-11-17
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】396026569
【氏名又は名称】勤次郎株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加村 稔
(72)【発明者】
【氏名】平田 英之
(72)【発明者】
【氏名】折戸 輝也
【審査官】梅岡 信幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/187933(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010103(WO,A1)
【文献】特開2020-052757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組織体における、構成員の健康診断結果にかかわる健診判定データを集計した健診判定集計データ、前記構成員のストレスチェック結果にかかわるストレスチェック判定データを集計したストレスチェック判定集計データ、前記構成員ごとの勤怠にかかわる勤怠履歴を集計した勤怠集計データ、および、人事にかかわる人事履歴データ、ならびに、各構成員における、勤怠にかかわる勤怠履歴データ、および、生活習慣にかかわる生活習慣履歴データの各々が項目データであって、前記項目データの集合が働き方データであって、
前記働き方データの各項目データを機械学習によって複数種類に分類する分類用機械学習モデルを生成する働き方データ分類部と、
前記構成員の健康診断およびストレスチェックが実施された実施日をもとに、今回と前回の2回分の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した健康関連結合データであって、前記健康関連結合データと前記構成員の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の前回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データとを結合した初期結合データを生成し、前記初期結合データを前記働き方データ分類部が複数種類に分類し、その分類ごとに前記初期結合データを分割した分類データを生成する分類データ生成部と、
前記分類データごとに、今回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を目的変数とし、前記働き方データの各項目データ、および、前回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を説明変数に設定して教師データを生成する教師データ生成部と、
前記説明変数の判定ごとに、前記目的変数の予測用機械学習モデルを生成する学習部と、
予測対象者である構成員における健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の今回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データ、および、前記予測対象者である構成員の今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを前記分類用機械学習モデルを用いて分類し、分類結果に応じた前記予測用機械学習モデルを用いて、前記予測対象者データを説明変数に設定して目的変数である将来の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測する予測部とを備える
ヘルスケアシステム。
【請求項2】
前記働き方データ分類部は、さらに、前記働き方データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを機械学習によって複数種類に分類し、
前記分類データ生成部は、さらに、前記初期結合データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを前記働き方データ分類部によって複数種類に分類する
請求項1に記載のヘルスケアシステム。
【請求項3】
前記働き方データ分類部は、前記分類ごとの特徴点を生成する
請求項1または2に記載のヘルスケアシステム。
【請求項4】
前記予測対象者の働き方データは、変更可能であり、
前記予測部は、変更後の働き方データを含む前記予測対象者データを説明変数に設定して、選択された予測用機械学習モデルとは異なる前記予測用機械学習モデルを用いて、目的変数である将来の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を予測する
請求項1ないし3のうち何れか1項に記載のヘルスケアシステム。
【請求項5】
前記働き方データは、前記構成員ごとの出退勤履歴データを含む
請求項1ないし4のうち何れか1項に記載のヘルスケアシステム。
【請求項6】
複数の組織体における、構成員の健康診断結果にかかわる健診判定データを集計した健診判定集計データ、前記構成員のストレスチェック結果にかかわるストレスチェック判定データを集計したストレスチェック判定集計データ、前記構成員ごとの勤怠にかかわる勤怠履歴を集計した勤怠集計データ、および、人事にかかわる人事履歴データ、ならびに、各構成員における、勤怠にかかわる勤怠履歴データ、および、生活習慣にかかわる生活習慣履歴データの各々が項目データであって、前記項目データの集合が働き方データであって、
コンピュータを、
前記働き方データの各項目データを機械学習によって複数種類に分類する分類用機械学習モデルを生成する働き方データ分類部と、
前記構成員の健康診断およびストレスチェックが実施された実施日をもとに、今回と前回の2回分の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した健康関連結合データであって、前記健康関連結合データと前記構成員の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の前回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データとを結合した初期結合データを生成し、前記初期結合データを前記働き方データ分類部が複数種類に分類し、その分類ごとに前記初期結合データを分割した分類データを生成する分類データ生成部と、
前記分類データごとに、今回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を目的変数とし、前記働き方データの各項目データ、および、前回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を説明変数に設定して教師データを生成する教師データ生成部と、
前記説明変数の判定ごとに、前記目的変数の予測用機械学習モデルを生成する学習部と、
予測対象者である構成員における健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の今回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データ、および、前記予測対象者である構成員の今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを前記分類用機械学習モデルを用いて分類し、分類結果に応じた前記予測用機械学習モデルを用いて、前記予測対象者データを説明変数に設定して目的変数である将来の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測する予測部
として機能させるヘルスケアプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織体の構成員のヘルスケアを支援するヘルスケアシステム、および、ヘルスケアプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、目的変数に健康状態(健診データ)を設定し、説明変数に勤怠データを時間的な分解を行い集計(月次など)したデータを設定して、機械学習などの予測用機械学習モデルを作り、その機械学習モデルに、従業員の勤怠データを入力すると影響のある説明変数とその値が分かる。その影響のある説明変数の元の勤怠データを要約説明として出力する。また、他の勤怠データを入力すると、その勤怠での健康状態を予測する。特許文献1では、従業員を、「勤怠データ」、「健診データ」、「事業所や職種といった項目」で分類(グループ化)したデータでの予測を行っている。
【0003】
特許文献2には、健康状態(健診結果)とアンケートを元に分類(グループ化)し、そのグループのアンケートから更に特徴抽出し、指導を行うことが記載されている。
特許文献3には、ストレスチェックのデータと勤怠データ、生体データ(唾液)を多変量解析によって重みづけパラメータとし、これにストレスチェックと勤怠データ、生体データ(唾液)を与えることで、経年のストレス予測データを作成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6105825号公報
【文献】特開2010-170534号公報
【文献】特開2020-52757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、説明変数を勤怠データとしているだけなので、勤務状態が類似していると、類似の健康状態が予測されてしまう可能性がある。例えば、同じような勤務状態の従業員であっても日々の運動習慣、飲酒量などの生活習慣が異なれば、健康状態も非類似のものになるはずである。また、特許文献2は、従業員の将来を予測するものではない。さらに、特許文献3は、重みづけパラメータとし、これにストレスチェックと勤怠データ、生体データ(唾液)を与えることで、経年のストレス予測データを作成するものであり、生活習慣を考慮したものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためのヘルスケアシステムでは、複数の組織体における、構成員の健康診断結果にかかわる健診判定データを集計した健診判定集計データ、前記構成員のストレスチェック結果にかかわるストレスチェック判定データを集計したストレスチェック判定集計データ、前記構成員ごとの勤怠にかかわる勤怠履歴を集計した勤怠集計データ、および、人事にかかわる人事履歴データ、ならびに、各構成員における、勤怠にかかわる勤怠履歴データ、および、生活習慣にかかわる生活習慣履歴データの各々が項目データであって、前記項目データの集合が働き方データである。前記ヘルスケアシステムは、前記働き方データを予測対象者における健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定予測に用いるヘルスケアシステムである。そして、前記働き方データの各項目データを機械学習によって複数種類に分類する分類用機械学習モデルを生成する働き方データ分類部と、前記構成員の健康診断およびストレスチェックが実施された実施日をもとに、今回と前回の2回分の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した健康関連結合データであって、前記健康関連結合データと前記構成員の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の前回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データとを結合した初期結合データを生成し、前記初期結合データを前記働き方データ分類部が複数種類に分類し、その分類ごとに前記初期結合データを分割した分類データを生成する分類データ生成部と、前記分類データごとに、今回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を目的変数とし、前記働き方データの各項目データ、および、前回の前記構成員の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を説明変数に設定して教師データを生成する教師データ生成部と、前記説明変数の判定ごとに、前記目的変数の予測用機械学習モデルを生成する学習部と、予測対象者である構成員における健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の今回の判定の実施日を起点として遡った期間の前記働き方データ、および、前記予測対象者である構成員の今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを前記分類用機械学習モデルを用いて分類し、分類結果に応じた前記予測用機械学習モデルを用いて、前記予測対象者データを説明変数に設定して目的変数である将来の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測する予測部とを備える。
【0007】
上記構成によれば、学習フェーズにおいて、働き方データを分類し、分類ごとに、予測用機械学習モデルを生成する。したがって、予測対象者の働き方に合わせた予測用機械学習モデルを使って健康にかかわる項目の判定を予測できる。これにより、予測対象者の健康にかかわる項目の判定予測を支援することができる。そして、予測フェーズにおいて、予測対象者の働きに合わせた予測用機械学習モデルを使って、当該予測対象者の健康にかかわる項目の判定を予測できるので、予測精度を向上させることができる。
【0008】
上記ヘルスケアシステムにおいて、前記働き方データ分類部は、さらに、前記働き方データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを機械学習によって複数種類に分類し、前記分類データ生成部は、さらに、前記初期結合データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを前記働き方データ分類部によって複数種類に分類するように構成する。
【0009】
上記構成によれば、働き方データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを生成し、これを分類している。項目結合データは、働き方データを構成する分類された項目データを結合したものであり、各項目の着目した分類ではなく、働き方データ全体に亘る全体的観点からの分類が可能となる。このような全体的観点を反映させた予測用機械学習モデルを使うことで、予測対象者の健康にかかわる項目の判定の予測精度を高めることができる。
【0010】
上記ヘルスケアシステムにおいて、前記働き方データ分類部は、前記分類ごとの特徴点を生成するように構成する。上記構成によれば、予測対象者は、自身の働き方の分類の特徴を知ることができる。
【0011】
上記ヘルスケアシステムにおいて、前記予測対象者の働き方データは、変更可能であり、前記予測部は、変更後の働き方データを含む前記予測対象者データを説明変数に設定して、選択された予測用機械学習モデルとは異なる前記予測用機械学習モデルを用いて、目的変数である将来の健診判定データおよびストレスチェック判定データにかかわる判定を予測するように構成する。上記構成によれば、働き方データを変更することで、現在とは異なる働き方をしたときの将来の健康にかかわる項目の判定を確認することができる。
【0012】
上記ヘルスケアシステムにおいて、前記働き方データは、前記構成員ごとの出退勤履歴データを含むように構成する。上記構成によれば、働き方データに、個人ごとに、従業員個人の出勤時間データと退勤時間データといった出退勤履歴データを含めることで、労働時間の長さだけでなく、勤務時間帯も考慮して働き方データを分類することができる。
【0013】
さらに、本発明は、コンピュータを上記ヘルスケアシステムとして機能させるコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、構成員の健康にかかわる結果だけでなく、日常の勤怠や生活習慣に関するデータを考慮して、構成員の健康にかかわる項目の判定予測を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明が適用されたヘルスケアシステムの構成を示す図。
【
図4】(a)は、月次の勤怠履歴データを説明する図、(b)は、日次の勤怠履歴データを説明する図。
【
図11】学習フェーズの手順を示すフローチャート。
【
図12】働き方データを示す図であって、(a)は、働き方データの中のA項を示し、(b)は、分類後のA項の分類1を示し、(c)は、分類後のA項の分類4を示す。
【
図13】(a)は、働き方データに組わされるG項を示し、(b)は、分類後のG項の分類1を示し、(c)は、分類後のG項の分類4を示す。
【
図14】(a)は、働き方データのA項の説明変数の平均を示し、(b)は、A項の分類1における特徴となる説明変数を示し、(c)は、A項の分類4における特徴となる説明変数を示す。
【
図15】学習フェーズにおいて、ステップS2~ステップS5の手順を概念的に説明する図。
【
図16】今回と前回の2回分の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した健康関連結合データを示す図。
【
図18】働き方データ(
図17)と健康関連結合データ(
図16)とが結合された初期結合データを示す図。
【
図19】初期結合データを生成する際の、各項目データの時間的範囲を説明する図。
【
図20】(a)は、6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)のデータを組み合わせた(G)項を示す図、(b)および(c)は分類データを示す図。
【
図21】学習フェーズにおいて、予測用機械学習モデルを生成するための手順を概念的に説明する図。
【
図22】予測フェーズの手順を示すフローチャート。
【
図23】予測フェーズにおいて、ステップS21~ステップS25の手順を概念的に説明する図。
【
図24】予測フェーズにおいて、ステップS25の手順を概念的に説明する図。
【
図25】予測対象者の将来の判定の出力例を示す図。
【
図26】予測フェーズにおいて、他の予測用機械学習モデルを選択する場合の手順を示すフローチャート。
【
図27】予測フェーズにおいて、他の予測用機械学習モデルを選択する場合の手順を概念的に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明が適用されたヘルスケアシステムについて図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
〔全体構成〕
本発明が適用されたヘルスケアシステムは、組織体である会社に所属する構成員である従業員のヘルスケアに供されるシステムである。そして、従業員の健康にかかわる健診やストレスチェックなどの健康関連判定データ、勤怠履歴データ、人事履歴データなどに加え、生活習慣履歴データなどを使用して、予測対象者となる各従業員の将来の健康にかかわる項目の判定を予測するシステムである。ここでは、組織体としての会社に属する構成員としての従業員のヘルスケアシステムを説明する。ここでの予測対象者は、従業員である。
【0017】
図1に示すように、ヘルスケアシステムは、学習用データ入力部10と、学習用データを蓄積するデータ蓄積部20とを備えている。また、予測対象者の健康状態を予測するための予測用機械学習モデルを生成するとともに予測用機械学習モデルを使用して予測対象者の健康状態を予測する学習予測処理部30と、予測用機械学習モデルを生成するためのデータを記録するモデル記録部40とを備えている。さらに、予測対象者の健康に関するデータを入力するための予測対象者用データ入力部50と、予測結果を出力する予測対象者用データ出力部60とを備えている。
【0018】
学習用データ入力部10は、データ蓄積部20に対して、会社に属する従業員に関する各種データを提供する。具体的に、学習用データ入力部10は、会社に所属する各従業員の健康診断判定データ(以下、「健診判定データ」という。)を入力するための健診データ入力部11と、各従業員のストレスチェック結果判定データ(以下、「ストレスチェック判定データ」という。)を入力するためのストレスチェックデータ入力部12とを備えている。さらに、各従業員の勤怠履歴データを入力するための勤怠データ入力部13と、従業員の人事履歴データを入力するための人事データ入力部14と、従業員の給与履歴データを入力するための給与データ入力部15と、従業員の生活習慣などの生活習慣履歴データを入力するための生活習慣データ入力部16とを備えている。さらに、従業員の医療履歴データを入力するための医療データ入力部17と、従業員が所属する会社の履歴データを入力するための会社データ入力部18とを備えている。
【0019】
健診データ入力部11、ストレスチェックデータ入力部12、勤怠データ入力部13、人事データ入力部14、給与データ入力部15、および、会社データ入力部18は、例えば、本システムのサービスの提供を受ける複数の会社の各々が管理するデータベースを備えたコンピュータである。生活習慣データ入力部16は、従業員が身体に装着されるウェアラブルデバイス端末(スマートウォッチなど)やスマートフォンなどのタブレット端末である。医療データ入力部17は、例えば従業員が管理する個人端末である。
【0020】
健診データ入力部11がデータ蓄積部20に対して入力する健診判定データは、会社に所属する各従業員の「総合判定」、「メタボリックシンドローム判定」、「糖尿病判定」、「高血圧判定」、「腹囲判定」、「GPT(ALT)判定」、「GOT(AST)判定」、「肝機能障害判定」、「γ-GTP判定」、「収縮期血圧判定」、「拡張期血圧判定」、「脂質異常症判定」など、一般的な健康診断で測定され、判定される結果データである。判定については、人間ドック学会の区分やその他の医療機関が定める区分でもよい。以後、判定例としては人間ドック学会の区分A(異常なし)~E(治療中)を用いる。なお、加えて、健康診断で計測された検査値データ(体重、身長、腹囲、BMI、血圧(収縮期血圧と拡張期血圧)、尿酸、尿蛋白、LDLコレステロール、空腹時血糖、γ-GTP、GOT(AST)、GPT(ALT)といった検査値データなど)が入力されてもよい。具体的に、健診判定データは、
図2のように構成される。なお、
図2~
図10において、企業CDは、会社を一意に特定する会社識別データであり、従業員CDは、個人識別データである。
【0021】
ストレスチェックデータ入力部12がデータ蓄積部20に対して入力するストレスチェック判定データは、例えば、会社に所属する各従業員の職業性ストレス簡易調査票(57項目)の回答項目および因子項目の評価点、ならびに、特開2017-102673号公報に記載しているストレスチェックの分類「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、および、「職場環境(部署)」の判定A(良好)~E(要面談)の結果データが入力される。具体的に、ストレスチェック判定データは、
図3のように構成される。
【0022】
勤怠データ入力部13がデータ蓄積部20に対して入力する勤怠履歴データは、会社に所属する各従業員の月次と日次のデータとがある。月次の勤怠履歴データは、就業時間、休憩時間、残業時間、深夜残業時間、休日出勤などのデータである。日次の勤怠履歴データは、出勤時間、退勤時間、外出開始時間、外出終了時間、休憩開始時間、休憩終了時間などのデータである。具体的に、月次の勤怠履歴データは、
図4(a)のように構成され、日次の勤怠履歴データは、
図4(b)のように構成される。
【0023】
人事データ入力部14がデータ蓄積部20に対して入力する人事履歴データは、会社に所属する各従業員の入社年月日、部門異動年月日、昇格の年月日などのデータである。具体的に、人事履歴データは、
図5のように構成される。
【0024】
給与データ入力部15がデータ蓄積部に対して入力する給与履歴データは、会社に所属する各従業員の月次給与、賞与、年俸、残業手当、休日出勤手当などの給与データなどのデータである。具体的に、給与履歴データは、
図6のように構成される。
【0025】
生活習慣データ入力部16がデータ蓄積部20に対して入力する生活習慣履歴データは、会社に所属する各従業員の歩数(一日平均)などの運動習慣、喫煙習慣(1日の本数)、飲酒回数(週平均回数)、飲酒量(1回の飲酒量)などの飲酒習慣、食事習慣(食事回数)、摂取カロリ(一日平均)、睡眠時間(一日平均)などの生活習慣にかかわるデータである。具体的に、生活習慣履歴データは、
図7のように構成される。
【0026】
医療データ入力部17がデータ蓄積部20に対して入力する医療履歴データは、会社に所属する各従業員の治療歴データと薬歴データとがある。治療歴データは、受診年月日、医療機関名称、医師氏名、病名、治療の履歴などの履歴データであり、薬歴データは、調剤年月日、薬局名、薬品名称、調剤数量、服用方法などの履歴データである。具体的に、治療歴データは、
図8のように構成され、薬歴データは、
図9のように構成される。
【0027】
会社データ入力部18がデータ蓄積部20に対して入力する会社履歴データは、従業員の所属する会社に関するデータであり、その会社が属する業種/業界、年ごとの会社規模(人数、年商、売上額、売上数量、受注額、受注数量)などのデータである。具体的に、会社履歴データは、
図10のように構成される。
【0028】
データ蓄積部20は、健診データ蓄積部21と、ストレスチェックデータ蓄積部22と、勤怠データ蓄積部23と、人事データ蓄積部24と、給与データ蓄積部25と、生活習慣データ蓄積部26と、医療データ蓄積部27と、会社データ蓄積部28とを備えている。
【0029】
健診データ蓄積部21には、健診データ入力部11から定期的にまたは不定期に健診判定データが入力される。ストレスチェックデータ蓄積部22には、ストレスチェックデータ入力部12から定期的にまたは不定期にストレスチェック判定データが入力される。勤怠データ蓄積部23には、勤怠データ入力部13から定期的にまたは不定期に勤怠履歴データが入力される。人事データ蓄積部24には、人事データ入力部14から定期的にまたは不定期に人事履歴データが入力される。給与データ蓄積部25には、給与データ入力部15から定期的にまたは不定期に給与履歴データが入力される。生活習慣データ蓄積部26には、生活習慣データ入力部16から定期的にまたは不定期に生活習慣履歴データが入力される。医療データ蓄積部27には、医療データ入力部17から定期的にまたは不定期に医療履歴データが入力される。会社データ蓄積部28には、会社データ入力部18から定期的にまたは不定期に会社履歴データが入力される。
【0030】
各蓄積部21~28には、複数の会社や従業員のデータなどが蓄積される。データ蓄積部20の各蓄積部21~28の各データは、個人を特定する個人識別データと、個人が所属する会社の会社識別データとが付与されており、個人識別データと当該個人が所属する会社識別データとは関連付けられている。なお、蓄積されるデータは、匿名化されていてもよい。
【0031】
学習予測処理部30は、予測用機械学習モデルを生成するための手段として、働き方データ生成部31と、働き方データ分類部32と、分類データ生成部33と、教師データ生成部34と、学習部35とを備える。また、予測対象者の将来の健康状態を予測する手段として、予測対象者データ生成部36と、予測部37と、予測結果出力部38とを備えている。
【0032】
モデル記録部40は、働き方データ記録部41と、特徴データ記録部42と、初期結合データ記録部43と、分類データ記録部44と、初期分類教師データ記録部45と、分類用機械学習モデル保存部47と、予測用機械学習モデル保存部48とを備えている。
【0033】
予測対象者用データ入力部50は、予測対象者の健診判定データを入力するための健診データ入力部51と、予測対象者のストレスチェック判定データを入力するためのストレスチェックデータ入力部52とを備えている。健診データ入力部51、および、ストレスチェックデータ入力部52は、例えば、予測対象者の個人端末である。
【0034】
また、予測対象者用データ出力部60は、予測結果表示部61を備えている。予測結果表示部61は、予測対象者の個人端末のモニタであり、また、プリンタである。そして、予測対象者は、将来の判定を個人端末で個人ファイルを開くことによってモニタを介して見ることができ、また、プリンタで印刷された紙媒体で見ることができる。
【0035】
<学習フェーズ>
ここで、
図11は、学習予測処理部30が分類用機械学習モデルや予測用機械学習モデルを生成するための手順を示すフローチャートである。
【0036】
ステップS1において、働き方データ生成部31は、データ蓄積部20から各種データを読み込み、ステップS2において、以下の(A)~(F)項目から構成される働き方データを生成する。なお、(A)~(C)項目は、会社に関する会社目線のデータであり、(D)~(F)項目は、従業員個人に関する個人目線のデータである。各従業員の働き方データは、(A)~(C)項目で構成される会社目線のデータと(D)~(F)項目で構成される従業員の個人目線のデータとを備えることで、従業員個人のデータと従業員が所属する会社のデータとを使った予測用機械学習モデルの生成と予測対象者の健康にかかわる項目の判定予測を可能とする。
【0037】
(A)働き方データ生成部31は、健診データ蓄積部21にアクセスして、会社ごとの各年の「メタボリックシンドローム判定」、「糖尿病判定」などに対する判定A(非常に良い)~E(非常に悪い)を読み出す。また、働き方データ生成部31は、ストレスチェックデータ蓄積部22にアクセスして、会社ごとの各年の「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」などに対する判定A(良好)~E(要面談)を読み出す。そして、判定A~E毎の人数比を算出し、各年の健康健診判定データおよびストレスチェック判定データを集計した健康関連判定集計データ、すなわち健康判定集計データおよびストレスチェック判定集計データを生成する。時間的範囲は、集計を行うときより前の2年から3年分である。
【0038】
(B)働き方データ生成部31は、勤怠データ蓄積部23、人事データ蓄積部24、および、給与データ蓄積部25にアクセスして、会社ごとの各月の平均勤務日数、平均総労働時間、平均休暇日数、人事発令の発生頻度、平均給与(月額)を算出し、勤務状況・人事にかかわる時系列データである勤怠集計データ、および、人事履歴データを生成する。時間的範囲は、集計を行うときより前の半年から1年分である(
図19参照)。
【0039】
(C)働き方データ生成部31は、給与データ蓄積部25、および、会社データ蓄積部28にアクセスし、各会社の年ごとの業種/業界、年ごとの会社規模(人数、年商、売上額、売上数量、受注額、受注数量、平均給与(年額))を算出し、会社全体にかかわる時系列データである会社履歴集計データを生成する。時間的範囲は、集計を行うときより前の2年から3年分である(
図19参照)。
【0040】
(D)働き方データ生成部31は、勤怠データ蓄積部23にアクセスし、個人ごとの日次の出勤時間データと退勤時間データを読み出し、日時勤怠の時系列データである出退勤履歴データを生成する。時間的範囲は、健診やストレスチェックが実施された日より前の3か月から6か月である(
図19参照)。
【0041】
(E)働き方データ生成部31は、勤怠データ蓄積部23、人事データ蓄積部24、および、給与データ蓄積部25にアクセスし、個人ごとの各月の勤務日数、総労働時間、休暇日数、人事発令の有無、平均給与(月額)のデータを読み出し、勤務状況にかかわる時系列データである勤怠履歴データを生成する。時間的範囲は、健診やストレスチェックが実施された日より前の半年から1年分である(
図19参照)。
【0042】
(F)働き方データ生成部31は、生活習慣データ蓄積部26、および、医療データ蓄積部27にアクセスし、個人ごとの各年および各月の歩数などの運動習慣、喫煙習慣、飲酒習慣、食事時間などの食事習慣、睡眠時間、基礎疾患の有無、入院/通院の日数、薬剤服用歴などの時系列データである生活習慣履歴データを生成する。時間的範囲は、健診やストレスチェックが実施された日より前の2年から3年分である(
図19参照)。
【0043】
上記(A)~(F)項でデータを取得する時間的範囲は、長期間(10年間など)にわたって過去に遡る長期間ではなく、現在の身体および精神面の健康状態に大きく影響を与える期間である。
【0044】
ここで、一般的に、健診やストレスチェックは、年に1度で行われていることが多い。例えば、今回が2002年だとすると前回は2001年になる。また、今回が2001年だとすると前回は2000年になる。月は、2~3か月ずれることもある。働き方データを生成するにあたっては、勤怠履歴データ、人事履歴データ、および、生活習慣履歴データを時間的範囲の重複を許容しながら取得する。すなわち、勤怠履歴データ、人事履歴データ、および、生活習慣履歴データの各々には、取得する時間的範囲が
図19に示すようになっており、3か月のもの、6か月のもの、1年のもの、3年のものなどがある。項目によっては、健診やストレスチェックの実施日のずれによって、当該年の時間的範囲が前年または後年の時間的範囲と重複することが生じる。例えば、時間的範囲が1年や3年のものでは、時間的な重複がし易い、または、発生する。このような場合であっても、働き方データは、時間的範囲の重複が許容され、必要な時間的範囲の勤怠履歴データ、人事履歴データ、生活習慣履歴データなどによって生成される。
【0045】
ステップS3において、働き方データ分類部32は、上記(A)~(F)項の各項目データをK-Meansなどの機械学習によって、クラスタ分類(グループ化)を行う。分類数は、特に限定されるものではないが、一例として、従業員などが違いを認識できる程度の数が目安であり、ここでは4種としている。これにより、上記(A)~(F)項の6項目について、4種の分類(合計24種類)が作成される。
図12は、上記(A)項のデータの分類を示している。
図12(a)に示すように、働き方データ生成部31が生成したデータは、会社ごとに、時系列に、健診の判定A~判定Eが時系列に並べられている。そして、働き方データ分類部32は、
図12(a)のデータを「1」~「4」に分類する。
図12(b)は、分類後の分類「1」を示し、
図12(c)は、分類後の分類「4」を示す。
【0046】
ステップS4において、働き方データ分類部32は、働き方データの6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)を組み合わせた項目結合データ(G)項の項目結合データを生成し、これをさらにK-meansなどの機械学習によってクラスタ分類を行う。
図13は、(G)項の項目結合データを示し、(a)は、(A)~(F)項で分類したデータを組み合わせたデータを示す。
図13(b)は、分類後の分類「1」を示し、
図13(c)は、分類後の分類「4」を示す。これにより、計7項目((A)~(G))×4種(「1」~「4」)の分類が行われる。働き方データ分類部32は、機械学習により学習された分類用機械学習モデルを分類用機械学習モデル保存部47に保存する。(A)~(F)項の各項の分類は、各項の定義に従った個別視点の分類であり、(G)項の分類は、(A)~(F)項の個々では現れない(A)~(F)項を合わせた全体的観点からの分類である。
【0047】
ステップS5において、働き方データ分類部32は、(A)~(G)の7項×4種の分類における特徴点を抽出する。具体的に、働き方データ分類部32は、(A)~(G)の項目毎に、4種の分類を実施し、その4種の分類の各説明変数のパラメータを平均化する(
図14(a)参照)。そして、各分類の説明変数の値と、平均値との差を算出し、差が大きい説明変数を各分類の特徴点とする(
図14(b)および(c)参照)。そして、働き方データ分類部32は、各分類の特徴点のデータを、特徴データ記録部42に保存する。
【0048】
すなわち、ステップS4およびステップS5をまとめると、
図15に示すように、学習フェーズにおいて、働き方データ分類部32が上記(A)~(F)項の各々について、例えば4つに分類し、さらに、(A)~(F)項を組み合わせた(G)項の項目結合データについて、例えば4つに分類する。そして、分類用機械学習モデルを分類用機械学習モデル保存部47に保存する。また、ステップS5で(A)~(G)の各々の「1」~「4」の各分類の特徴点を特徴データ記録部42に保存する。
【0049】
以上は、分類用機械学習モデルを生成するための処理であり、以下は、予測用機械学習モデルを生成するための処理である。
ステップS6において、分類データ生成部33は、個人ごとの、健診やストレスチェックが実施された実施日をもとに、今回と前回の2回分の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した健康関連結合データを生成する(
図16参照)。そして、例えば、ここ1年間の健康状態の傾向を把握するため、前回の健診をもとに、今回の健診の結果を結合する。
【0050】
ステップS7において、分類データ生成部33は、個人ごとの前回の健診やストレスチェックが実施された実施日を起点にして、(A)~(F)から構成される働き方データを生成し(
図17参照)、この働き方データに、ステップS6で生成した健康関連結合データを結合する。または、ステップS2で生成した働き方データに健康関連結合データを結合する。これにより、働き方データと、前回の健診判定データとストレスチェック判定データと、今回の健診判定データとストレスチェック判定データとが結合された初期結合データが生成される(
図18参照)。ステップS8において、働き方データ生成部31は、初期結合データを、初期結合データ記録部43に保存する。働き方データを取得する時間的範囲は、
図19の通りである。
【0051】
ステップS9において、分類データ生成部33は、初期結合データに対して、ステップS4で生成した分類用機械学習モデルを使って分類を行う。ここでの分類数は、ステップS3と同じく4つである。さらに、働き方データ分類部32は、働き方データの6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)のデータを組み合わせた(G)項の項目結合データを生成し(
図20(a)参照)、これをさらにステップS4で生成した分類用機械学習モデルを使って分類を行い、分類ごとに初期結合データを分割する(
図20(b),(c)参照)。これにより、計7項目((A)~(G))×4種(「1」~「4」)の分類データを生成できる。分類データ生成部33は、分類用機械学習モデルにより得られた分類データを分類データ記録部44に保存する。
【0052】
ステップS10において、教師データ生成部34は、分類データごとに、目的変数を、今回の健診の「総合判定」、および、今回のストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」の各判定に設定する。そして、説明変数を、前回の「健診判定データ」と前回の「ストレスチェック判定データ」に設定する。これにより、初期分類教師データが生成され、初期分類教師データが初期分類教師データ記録部45に保存される。このときの目的変数の値は、判定「A」~「E」となる。ここでの健診における目的変数は、血圧や血糖値などの判定でもよいが、ここでは、「総合判定」にしている。また、ストレスチェックの判定もこれに限定されるものではない。
【0053】
ステップS11において、教師データ生成部34は、偏った教師データが生成されることを抑制するため、以下の(1)~(3)の条件に従って教師データを生成する。具体的には、次のように初期分類教師データから教師データを生成する。
【0054】
(1)先ず、教師データ生成部34は、目的変数側の判定(今回の健診の「総合判定」、および、今回のストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」)の値ごとに、説明変数(「働き方データ」、および、前回の「健診判定データ」と前回の「ストレスチェック判定データ」)のデータ量を揃えた教師データを作成する。
【0055】
例えば、今回の健診の「総合判定」の予測の場合であって、説明変数側の前回の健診の「総合判定」の結果の人数が、
A判定:50人、B判定:200人、C判定:300人、D判定:70人、E判定:20人
の場合を説明する。この場合、以下の(a)~(e)の教師データを生成する。
【0056】
(a)A判定で人数を揃える。
A判定:50人、B判定:50人、C判定:50人、D判定:50人、E判定:20人
【0057】
(b)B判定で人数を揃える。
A判定:50人、B判定:200人、C判定:200人、D判定:70人、E判定:20人
【0058】
(c)C判定で人数を揃える。この場合、全データをそのまま使用するので同じになる。
A判定:50人、B判定:200人、C判定:300人、D判定:70人、E判定:20人
【0059】
(d)D判定で人数を揃える。
A判定:50人、B判定:70人、C判定:70人、D判定:70人、E判定:20人
(e)E判定で人数を揃える。この場合、全データが同じ量になる。
A判定:20人、B判定:20人、C判定:20人、D判定:20人、E判定:20人
【0060】
(1)では、(a)~(e)の各々の条件で教師データを生成する。
(2)次いで、教師データ生成部34は、上記(1)のデータに対して、PCA(Principal Correlation Analysis)、KPCA(Kernel PCA)、ISOMAP(Isometric Mapping)といった主成分分析を行った教師データを生成する。すなわち(1)の教師データに対して絞り込みを行った教師データとなる。
なお、主成分分析以外の方法で教師データを生成してもよい。
【0061】
(3)教師データ生成部34は、上記(1)のデータに対して、上記(2)の主成分分析を行った教師データを新たな説明変数として加えた教師データを生成する。
【0062】
ステップS12において、教師データ生成部34はステップ11で作成した各教師データに対して、量にして10~50%未満のデータを検証データとして分離する。
ステップS13において、教師データ生成部34は、上記(1)~(3)で生成した教師データを教師データ記録部46に保存する。
【0063】
ステップS14において、学習部35は、ステップS11で生成した上記(1)~(3)の教師データに対して複数の機械学習アルゴリズムでの学習を行い複数の予測用機械学習モデルを作成する。
【0064】
ステップS15において、ステップS14にて生成した複数の予測用機械学習モデルに対して、学習部35は、ステップ12で生成した検証データを使用し、説明変数の判定ごとに、目的変数の予測を行う。そして、学習部35は、その予測が検証データの目的変数に対して正解する比率「正解率」を測定する。次に、この複数の予測用機械学習モデルを組み合わせて予測させ、組み合わせの中で多数決を行った場合の予測の正解率を測定する。この予測用機械学習の組み合わせも複数作成し、正解率を測定しておく。そして、これらの正解率の中から最も高い正解率の単一の予測用機械学習モデルもしくは予測用機械学習モデルの組み合わせを予測用機械学習モデルとして選択し、ステップS16において、学習部35は、その予測用機械学習モデルを予測用機械学習モデル保存部48に保存する。学習部35は、健診の「総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」の計5種類について予測用機械学習モデルを生成する。
【0065】
なお、単一の予測学習モデルおよび予測用機械学習モデルの組み合わせから選択する値は正解率だけではなく、目的変数の値ごとに予測した値がどれくらい正解するかの比率を示す「適合率」、目的変数の値の中で正解した比率を示す「再現率」、機械学習の評価指標である「F値」であってもよい。また、予測用機械学習モデルの組み合わせによる予測の決定方法は多数決だけではなく、平均や加重平均、調和平均などであってもよい。
【0066】
以上のような学習フェーズでは、
図21に示すように、まず、分類用機械学習モデルを生成する。そして、初期結合データを予測用機械学習モデルで分類し、分類ごとに、目的変数に今回の健診の「総合判定」などを設定し、説明変数に前回の「健診判定データ」などを設定して教師データを生成し、学習処理を行って複数の予測用機械学習モデルを生成する。
【0067】
<予測フェーズ>
次に、予測対象者である従業員の健康に関する将来(例えば今回の健診やストレスチェックが実施された実施日から1年後)の判定を予測するための手順を
図22を参照して説明する。
【0068】
ステップS21において、働き方データ生成部31は、データ蓄積部20からデータ読み出す。なお、データ読み出し前に、従業員である予測対象者は、予測対象者用データ入力部50から今回の健診判定データ、及び、今回のストレスチェック判定データを入力し、予測対象者用データ入力部50は当該入力データをデータ蓄積部20に保存する。
【0069】
ステップS22において、予測対象者データ生成部36は、予測対象者の今回の健診やストレスチェックが実施された実施日を起点にして、(A)~(F)項から構成される働き方データを生成する。働き方データを取得する時間的範囲は、
図19の通りである。ここでの働き方データは、(A)~(C)項については、個人識別データおよび会社識別データで特定される予測対象者が所属する会社のデータであり、(D)~(F)は、個人識別データで特定される当該予測対象者のデータである。
【0070】
ステップS23において、予測対象者データ生成部36は、ステップS22で生成した働き方データに、予測対象者の今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを生成する。
【0071】
ステップS24において、予測対象者データ生成部36は、予測対象者データを予測部37に入力する。ステップS25において、予測部37は、予測対象者データの(A)~(G)項の各々を分類用機械学習モデルを使用し、「1」~「4」に分類する。また、働き方データの6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)のデータを組み合わせた(G)項の項目結合データを生成する。
【0072】
そして、予測部37は、予測対象者の働き方データの分類および予測対象者の今回の健診の「総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」の判定に応じて、使用する予測用機械学習モデルを選択し、例えば今回の健診やストレスチェックが実施された実施日から1年後の予測を実行する。予測結果出力部38は、予測結果表示部61に予測結果を出力する。これらの予測は、健診の「総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」という5種類の目的変数ごとに実施される。
【0073】
すなわち、
図23に示すように、予測フェーズにおいて、予測対象者データ生成部36が予測対象者の今回の健診やストレスチェックが実施された実施日を起点にして、(A)~(F)項から構成される働き方データに、(G)項を加え、予測対象者の今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを生成する。そして、働き方データ分類部32が予測対象者データの(A)~(G)項の各々を分類する。そして、
図24は、健診の「総合判定」の場合を示す。今回の健診の「総合判定」がA判定の場合、A判定の場合用の予測用機械学習モデルを用いて予測し、将来の健診の「総合判定」を予測する。その後、ステップS26において、予測結果出力部38は、予測結果表示部61に出力する。
【0074】
図25は、予測結果表示部61での予測結果の表示例を示す。予測結果では、予測対象者の将来の「健診の総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」について、判定が示される。
【0075】
ところで、予測部37は、予測対象者などの操作者は、予測対象者の本来の分類とは異なる働き方データおよび/または予測用機械学習モデルを使って予測を行うこともできる。例えば、将来、予測対象者が昇進や部署移動などで職場環境などが変わった場合を想定し、現職場環境から想定職場環境に変化したときの「健診の総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」を予測することができる。
【0076】
図26に示すように、ステップS31において、働き方データ生成部31は、データ蓄積部20から予測対象者の今回の健診判定データおよびストレスチェック判定データを読み出す。ステップS32において、予測対象者データ生成部36は、予測対象者の今回の健診やストレスチェックが実施された実施日を起点にして、(A)~(F)項から構成される働き方データを生成する。
【0077】
ステップS33において、予測対象者データ生成部36は、予測対象者の働き方データの(A)~(G)項の各々を分類用機械学習モデルに従って、「1」~「4」に分類する。また、働き方データの6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)のデータを組み合わせた(G)項の項目結合データを生成し分類する。
【0078】
ステップS34において、予測対象者データ生成部36は、予測対象者の働き方データに今回の健診判定データとストレスチェック判定データとを結合した予測対象者データを生成する。この際、働き方データには、予測対象者の働き方データとは異なるデータを設定する。例えば、昇進や部署移動したときの働き方データを設定する。具体的に項目(D)~(F)のデータを変更する。
【0079】
ステップS35において、予測対象者データ生成部36は、変更後の予測対象者データを予測部37に入力する。ステップS36において、予測部37は、予測対象者データの(A)~(G)項の各々を分類用機械学習モデルに従って、「1」~「4」に分類する。また、働き方データの6項目(A)~(F)×4種(分類1~4)のデータを組み合わせた(G)項の項目結合データを生成する。そして、予測部37は、予測対象者の働き方データの分類および予測対象者の今回の健診の「総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」の判定に応じて、使用する予測用機械学習モデルを選択し、例えば今回の健診やストレスチェックが実施された実施日から1年後の予測を実行する。
【0080】
予測結果出力部38は、予測結果表示部61に予測結果を出力する。これらの予測は、健診の「総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」という5種類の目的変数ごとに実施される。なお、これらすべての項目について予測を行わなくてもよく、予測対象者が希望する項目だけを予測してもよい。
【0081】
その後、ステップS37において、予測結果出力部38は、予測結果表示部61に出力する。予測結果では、予測対象者の将来の「健診の総合判定」、および、ストレスチェックの「仕事の負担」、「仕事の仕方と目的」、「健康状態と満足度」、「職場環境(部署)」について、判定結果が示される。
【0082】
すなわち、
図27に示すように、予測部37は、働き方データを変更することで、予測用機械学習モデルを
図24の場合と異なる予測用機械学習モデルを使って、変更した働き方データに応じた予測結果を得ることもできる。一例として、
図23では健診の「総合判定」においてA判定が選択されているが、働き方データを変更することで、D判定となる場合がある。この際、予測対象者は、D判定になる場合の働き方データを把握することで、どのような働き方をするとD判定になるかを示すことができる。
【0083】
上記ヘルスケアシステムによれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)予測対象者の働き方に合わせた予測用機械学習モデルを使って、当該予測対象者の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測できる。これにより、予測対象者の健康にかかわる項目の判定を支援することができる。
【0084】
これまで、産業医/保健師が指導/面談を実施する従業員を選定する際は、従業員の現在の判定を元に実施していたが、本システムにより将来の予測が行えるので、現在は良いが将来悪くなる人の面談を行うという使い方で、産業医/保健師の支援ができる。
【0085】
(2)学習フェーズにおいて、働き方データを分類し、分類ごとの予測用機械学習モデルを生成することができる。これにより、予測フェーズにおいて、予測対象者の働き方に合わせた予測用機械学習モデルを使って健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測できるので、予測精度を向上させることができる。
【0086】
(3)予測対象者の健診結果の判定やストレスチェックの判定を予測することができる。すなわち、予測対象者の身体面と精神面からの健康を予測することができる。
(4)働き方データは、(A)~(C)項の会社に関する会社目線のデータと(D)~(F)項の従業員個人に関する個人目線のデータを含むことで、様々な要素を考慮に入れて、従業員の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測できる。さらに、働き方データの中に(C)を含ませることで、所属する会社や業界の業績なども考慮に入れて従業員の健康診断およびストレスチェックにかかわる項目の判定を予測できる。
【0087】
(5)働き方データにおける分類された項目データを結合した項目結合データを生成し((G)項)、これを分類している。項目結合データは、働き方データを構成する分類された項目データを結合したものであり、項目の着目した分類ではなく、働き方データ全体に亘る全体的観点(業界や各組織の働き方の傾向など)からの分類となる。したがって、このような全体的観点を反映させた予測用機械学習モデルを使うことで、予測対象者の健康にかかわる項目の判定の予測精度を高めることができる。
【0088】
(6)予測対象者は、自身の働き方データの分類の特徴を知ることができる。
(7)予測用機械学習モデルを変更することで、どのような働き方をすると、将来の健康にかかわる項目の判定が悪化したり、改善されるかを把握することができる。この際に、特徴データを、働き方データの変更後の分類に応じて、どのような働き方だと健康にかかわる項目が改善するのか、悪化するのかを説明の参考にすることができる。
【0089】
(8)働き方データに、個人ごとに、従業員個人の出勤時間データと退勤時間データといった出退勤履歴データ((D)項)を含めることで、労働時間の長さだけでなく、勤務時間帯も考慮して働き方データを分類することができる。
【0090】
なお、上記ヘルスケアシステムは、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・働き方データの中に従業員個人の出退勤履歴データを含めないようにしてもよい。
・予測フェーズにおける、予測部が選択した予測用機械学習モデルを変更する機能を省略してもよい。
【0091】
・学習フェーズにおいて、働き方データは、((G)項)の項目結合データを省略するようにしてもよい。
・健康にかかわる項目は、健康診断結果の項目、および、ストレスチェック結果の項目以外の項目を含んでいてもよい。また、健康にかかわる項目は、健康診断結果の項目、および、ストレスチェック結果の項目の何れか一方の項目だけでもよい。
【0092】
・予測する健康にかかわる項目の判定は、今回の健診やストレスチェックが実施された実施日から1年後に限定されるものではない。
・組織体としては、株式会社などの営利を目的とした組織体のほか、非営利の組織体であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…学習用データ入力部
11…健診データ入力部
12…ストレスチェックデータ入力部
13…勤怠データ入力部
14…人事データ入力部
15…給与データ入力部
16…生活習慣データ入力部
17…医療データ入力部
18…会社データ入力部
21…健診データ蓄積部
22…ストレスチェックデータ蓄積部
23…勤怠データ蓄積部
24…人事データ蓄積部
25…給与データ蓄積部
26…生活習慣データ蓄積部
28…会社データ蓄積部
31…働き方データ生成部
32…働き方データ分類部
33…分類データ生成部
34…教師データ生成部
35…学習部
36…予測対象者データ生成部
37…予測部