(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】多相組織スキャフォールド構築物
(51)【国際特許分類】
A61F 2/08 20060101AFI20240807BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20240807BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20240807BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61F2/08
A61L27/18
A61L27/56
A61L27/38 110
(21)【出願番号】P 2020529780
(86)(22)【出願日】2018-08-13
(86)【国際出願番号】 AU2018000133
(87)【国際公開番号】W WO2019028494
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-11
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】509075181
【氏名又は名称】グリフィス・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】GRIFFITH UNIVERSITY
(73)【特許権者】
【識別番号】592253275
【氏名又は名称】クイーンズランド ユニバーシティ オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】520050978
【氏名又は名称】ゴールド コースト ホスピタル アンド ヘルス サービス
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バケット,セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ルイ,ヘイ マン ヘイマン
(72)【発明者】
【氏名】イヴァノフスキ,サソー
(72)【発明者】
【氏名】ビンドラ,ランディ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/164566(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0350677(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0095482(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0310623(US,A1)
【文献】特開2015-089433(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0282138(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0032135(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/08
A61L 27/18
A61L 27/56
A61L 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一、第二および第三コンパートメントを備える三次元多相合成組織スキャフォールドであって、
各前記コンパートメントは、異なる微細構造の、ならびに/または化学的な、および/もしくは機械的な特性を備え、連続界面を介して前記三次元多相合成組織スキャフォールドの少なくとも1つの他のコンパートメントと連結しており;
前記三次元多相合成組織スキャフォールドは多孔質であり;
前記三次元多相合成組織スキャフォールドの外的形態は、哺乳類関節またはその要素の外的形態を模倣するものであり;
前記第一、第二および第三コンパートメントのいずれか1つ以上は、一連の繊維を含み、前記一連の繊維は、好ましくは複数の繊維層を備え;
前記第二コンパートメントは、一連の靭帯の外的形態を模倣する一連の繊維を含み、前記一連の繊維は前記第一および第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一および第三コンパートメントを連結するものであり;ならびに
前記一連の繊維は、第一および第二繊維層を備え、
前記第一繊維層は、第一軸に沿って整列し、
前記第二繊維層は、第二軸に沿って整列し、ならびに
前記第二軸は、前記第一軸に対して25°~35°の角度で回転する、
三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項2】
前記複数の繊維層は、第三軸に沿って整列した第三層を備え、
前記第三軸は、前記第一軸および/もしくは前記第二軸のいずれかまたは両方に対して斜めに回転する;または
前記第三軸は、前記第一軸および/もしくは前記第二軸に対して同じ角度で回転する;または、
前記第三軸は、前記第一軸に対して反時計方向に回転し、前記第二軸に対して時計方向に回転する、
請求項1に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項3】
前記第一および第三コンパートメントの各々の外的形態は骨の外的形態を模倣し、前記第二コンパートメントの外的形態は前記第一コンパートメントおよび第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一コンパートメントおよび第三コンパートメントを連結する一連の靭帯の外的形態を模倣する;または
前記三次元多相合成組織スキャフォールドの外的形態は、舟状月状骨関節またはその要素の外的形態を模倣する;または
前記第一コンパートメントの外的形態は舟状骨の外的形態を模倣し、前記第三コンパートメントの外的形態は月状骨の外的形態を模倣し、前記第二コンパートメントの外的形態は一連の舟状月状骨靭帯の外的形態を模倣する、
請求項1又は2に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項4】
前記一連の舟状月状骨靭帯は背側舟状月状骨靭帯であり、近位側舟状月状骨靭帯でも掌側舟状月状骨靭帯でもない、請求項3に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項5】
前記三次元多相合成組織スキャフォールドは、哺乳類細胞を更に含み、好ましくは、前記哺乳類細胞は、靭帯由来幹細胞、軟骨幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)、脂肪由来幹細胞、骨芽細胞、骨芽細胞様細胞、幹細胞、前駆細胞、またはこれらのいずれかの組合せから成る群から選択される、または、好ましくは、前記哺乳類細胞は、ヒト間葉系幹細胞、もしくはヒト骨髄間葉系幹細胞である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項6】
前記哺乳類細胞は、1つ以上のコンパートメントに巻き付いている細胞シート内および/または1つ以上のコンパートメントに挿入されている細胞シート内に存在する、請求項5に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項7】
前記第一、第二および/または第三コンパートメントのいずれか1つ以上は、高分子材料を含み、好ましくは、前記高分子材料は、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEG)、ゼラチンメタ
クリロイル、マトリゲル、フィブリノーゲン、アガロース、およびポリカプロラクトンから成る群から選択され;または、好ましくは、前記高分子材料は、ポリカプロラクトンまたはポリウレタンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元多相合成組織スキャフォールドの製造方法であって、前記方法は、三次元(3D)バイオプリンターを使用して、前記三次元多相合成組織スキャフォールドが完全な形で製造されるまで、プラットフォーム上に高分子材料を連続的に堆積することを含む、方法。
【請求項9】
対象の損傷した靭帯の治療
において使用するための、請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【請求項10】
前記靭帯は、舟状月状骨靭帯またはその哺乳類均等物である、請求項9に記載の
三次元多相合成組織スキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本願は、オーストラリア国特許仮出願第2017903229号の優先権を主張し、この全文を相互参照することにより組み入れられるものとする。
【0002】
技術分野
本発明は、一般的に組織工学分野に関し、より詳細には、組織再生を支援することができる組織工学スキャフォールドに関する。スキャフォールドの製造方法およびその組織再生における使用も本明細書中に提供される。
【背景技術】
【0003】
腱および靭帯は外傷または慢性的な憎悪により障害となり得、両方の機序は実質的な筋骨格機能低下に至る。腱および靭帯修復を促進する治療は、整形外科の結果に対して顕著な影響を与え、修復の失敗および再手術を減らすだろう。現在ある多くの治療は、再生スキャフォールドとして患者自身の組織を使用することに頼っている。この手法は、ドナー部位罹患率、ならびに大きさのマッチング、解剖学的形状および骨との固定と関連することが多い。
【0004】
合成スキャフォールドは、種々の製作技術ならびに腱および靭帯修復の代替品としての重合体を使用して製造することができる。しかしながら、正常な生理学的な力に耐えるのに充分な強度を有する合成スキャフォールドの製造は、既存の関節構造物を複製するとき、依然として厳しい状況が続いている。合成組織構築物は膝などの大関節(例えば、前十字靭帯修復)においてまちまちな効果で使用されてきたが、どちらかと言えば、小関節のより困難な環境における合成スキャフォールドを使用する試みは余り行われていない。例えば、舟状月状骨靭帯(SLIL)、舟状骨と手首月状骨との間にあるC字型靭帯は、一般に断裂する手首靭帯である。この靭帯損傷は静的および動的手根不安定症の最も一般的な原因であり、変形性手関節症(SLAC)および背側手根不安定症(DISI)などの病態をもたらす。SLIL断裂の現行手術の選択肢は最適以下であり、これらの損傷は重度変形性関節症を伴う予後不良となることが多い。現存する腱固定術は手首運動を回復できないことが多い。全ての現行の方法が不完全な疼痛緩和を伴う手首運動不全をもたらすので、SLIL再構築の現在のコンセンサスおよび1つの成功方法がなく、骨間にあるネジを取り除く第二の方法がしばしば必要とされている。自家移植に基づく治療との関連で、臨床結果の不良は一般的であり、自家移植の不充分な組織集積、および/または生理的負荷に耐えることができない機械的特性不良をもたらす不適切な再生に由来するようである。靭帯が完全に再生され、強力な骨付着部を有して修復されて、前述の組織を回避し、現行SLIL再構築の成功速度を改善するストラテジーは有利となるだろう。
【0005】
腱および靭帯修復の要素を増強することができる改良された特質を有する合成構築物、ならびにその製造方法に対するニーズが存在する。好ましくは、製造された合成構築物を、例えば、SLIL修復を含む小関節修復において効果的に使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、現存する組織工学スキャフォールドおよびその製造方法の少なくとも1つの欠点を軽減する。
【0007】
本発明のバイオスキャフォールドは多相であり、再生しようとする組織の形態形質を正
確に模倣するように連続的に製造する。本発明の合成スキャフォールド構築物は、(i)軟組織損傷の統合的および機能的修復のための正常な生理学的な力に耐えることができ、ならびに/または(ii)既存の関節構造物を正確に模倣し、ならびに/または(iii)処置が血管新生および組織再生を促進することを可能とし、ならびに/または(iv)自家移植片を回収する場合にドナー罹患率を低下もしくは排除し得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非限定的例として、本発明は、少なくとも部分的に次の実施形態に関する:
実施形態1.
第一、第二および第三コンパートメントを備える三次元多相合成組織スキャフォールドであって、
各前記コンパートメントは、異なる微細構造の、および/または化学的な、および/もしくは機械的な特性を備え、連続界面を介してスキャフォールドの少なくとも1つの他のコンパートメントと連結しており;
組織スキャフォールドは多孔質であり;ならびに
組織スキャフォールドの外的形態は、哺乳類関節またはその要素の外的形態を模倣する、
多相合成組織スキャフォールド。
【0009】
実施形態2.
第一、第二および/もしくは第三コンパートメントのいずれか1つ以上は、一連の繊維を含むかまたはから成る、実施形態1に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0010】
実施形態3.一連の繊維は、複数の繊維層を備える、実施形態2に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0011】
実施形態4.
第二コンパートメントは、一連の靭帯の外的形態を模倣する一連の繊維を含み、前記一連の繊維は前記第一および第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一および第三コンパートメントを連結する、実施形態1~3のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0012】
実施形態5.
複数の繊維層は、第一および第二繊維層を備え、
前記第一繊維層は、第一軸に沿って整列し、
前記第二繊維層は、第二軸に沿って整列し、ならびに
前記第二軸は、前記第一軸に対して斜めに回転する、
実施形態4に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0013】
実施形態6.
第二軸は、
-少なくとも:第一軸に対して、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、もしくは20°;または
-第一軸に対して、20°~50°、25°~45°、30°~40°、25°~35°、もしくは約35°
の角度で回転する、実施形態5に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0014】
実施形態7.
前記複数の繊維層は、第三軸に沿って整列した第三層を備え、前記第三軸は、前記第一
軸および/もしくは前記第二軸のいずれかまたは両方に対して斜めに回転する、実施形態5または実施形態6に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0015】
実施形態8.
前記第三軸は、前記第一軸および/または前記第二軸に対して同じ角度もしくは実質的に同じ角度で回転する、実施形態7に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0016】
実施形態9.
前記第三軸は、前記第一軸に対して反時計方向に回転し、第二軸に対して時計方向に回転する、実施形態7または実施形態8に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0017】
実施形態10.
第一および第三コンパートメントの各々の外的形態は骨の外的形態を模倣し、第二コンパートメントの外的形態は前記第一コンパートメントおよび第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一コンパートメントおよび第三コンパートメントを連結する一連の靭帯の外的形態を模倣する、実施形態1~9のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0018】
実施形態11.
前記組織スキャフォールドの外的形態は、舟状月状骨関節またはその要素の外的形態を模倣する、実施形態1~10のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0019】
実施形態12.
前記第一コンパートメントの外的形態は、舟状骨の外的形態を模倣し、前記第三コンパートメントの外的形態は月状骨の外的形態を模倣し、前記第二コンパートメントの外的形態は一連の舟状月状骨靭帯の外的形態を模倣する、実施形態1~11のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0020】
実施形態13.
前記一連の舟状月状骨靭帯は、背側舟状月状骨靭帯であり、近位側舟状月状骨靭帯でも掌側舟状月状骨靭帯でもない、実施形態12に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0021】
実施形態14.
前記一連の舟状月状骨靭帯は、背側舟状月状骨靭帯、ならびに近位側および/もしくは掌側舟状月状骨靭帯のいずれかまたは両方である、実施形態12または実施形態13に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0022】
実施形態15.
前記スキャフォールドは、100μM~1000μM、100μM~1000μM、100μM~800μM、100μM~600μM、200μM~600μM、200μM~500μM、300μM~600μM、300μM~500μM、350μM~600μM、350μM~500μM、400μM~600μM、または400μM~500μMの最大幅を有する細孔を備える、実施形態1~14のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0023】
実施形態16.
前記多相合成組織スキャフォールドは、哺乳類細胞を更に含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0024】
実施形態17.
前記哺乳類細胞は、靭帯由来幹細胞、軟骨幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)、脂肪由来幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)、骨芽細胞、骨芽細胞様細胞、幹細胞、前駆細胞、またはこれらのいずれかの組合せから成る群から選択される、実施形態16に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0025】
実施形態18.
前記細胞は、ヒト間葉系幹細胞、またはヒト骨髄間葉系幹細胞である、実施形態16または実施形態17に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0026】
実施形態19.
前記哺乳類細胞は、1つ以上のコンパートメントに巻き付いているおよび/または1つ以上のコンパートメントに挿入されている細胞シート内に存在する、実施形態16~18のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0027】
実施形態20.
第一、第二および/または第三コンパートメントのいずれか1つ以上は、高分子材料を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0028】
実施形態21.
前記高分子材料は、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEG)、ゼラチンメタクリロイル、マトリゲル、フィブリノーゲン、アガロース、およびポリカプロラクトンから成る群から選択される、実施形態20に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0029】
実施形態22.
前記高分子材料は、ポリカプロラクトンまたはポリウレタンである、実施形態20または実施形態21に記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0030】
実施形態23.
前記組織スキャフォールドを、三次元(3D)バイオプリンターを使用して、前記組織スキャフォールドが完全な形で製造されるまで、プラットフォーム上に前記高分子材料を連続的に堆積して製造する、実施形態1~22のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0031】
実施形態24.
前記連続界面は多孔質である、実施形態1~23のいずれか1つに記載の多相合成組織スキャフォールド。
【0032】
実施形態25.
高分子材料を含む三次元多相合成組織スキャフォールドの製造方法であって、前記方法は三次元(3D)バイオプリンターを使用して、前記組織スキャフォールドが完全な形で製造されるまで、プラットフォーム上に前記高分子材料を連続的に堆積することによって前記組織スキャフォールドを印刷することを含み、
前記組織スキャフォールドは第一、第二および第三コンパートメントを備え、各前記コンパートメントは、異なる微細構造の、および/または化学的な、および/もしくは機械的な特性を備え、各前記コンパートメントは連続界面を介してスキャフォールドの少なくとも1つの他のコンパートメントと連結しており;ならびに
前記組織スキャフォールドは多孔質であり、印刷されて哺乳類関節またはその要素の外的形態を模倣する、方法。
【0033】
実施形態26.
前記方法は前記高分子材料を重合して繊維を形成することを含み、前記第一、第二および/または第三コンパートメントは一連の前記繊維を含むかまたは一連の前記繊維から成る、実施形態25に記載の方法。
【0034】
実施形態27.
前記一連の繊維を印刷して複数の繊維層を備える、実施形態26に記載の方法。
【0035】
実施形態28.
第二コンパートメントを印刷して一連の靭帯の外的形態を模倣する一連の繊維を備え、前記一連の繊維は前記第一および第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一および第三コンパートメントを連結する、実施形態25~27のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
実施形態29.
前記複数の繊維層を印刷して、第一および第二繊維層を備え、
前記第一繊維層は、第一軸に沿って整列し、
前記第二繊維層は、第二軸に沿って整列し、ならびに
前記第二軸は、前記第一軸に対して斜めに回転する、
実施形態28に記載の方法。
【0037】
実施形態30.
前記第二軸は、
-少なくとも:第一軸に対して、2°、3°、4°、5°、6°、7°、8°、9°、10°、11°、12°、13°、14°、15°、16°、17°、18°、19°、もしくは20°;または
-第一軸に対して、20°~50°、25°~45°、30°~40°、25°~35°、もしくは約35°
の角度で回転する、実施形態29に記載の方法。
【0038】
実施形態31.
前記複数の繊維層は、第三軸に沿って整列した第三層を備え、前記第三軸は、前記第一軸および/もしくは前記第二軸のいずれかまたは両方に対して斜めに回転する、実施形態29または実施形態30に記載の方法。
【0039】
実施形態32.
前記第三軸は、前記第一軸および/または前記第二軸に対して同じ角度もしくは実質的に同じ角度で回転する、実施形態31に記載の方法。
【0040】
実施形態33.
前記第三軸は、前記第一軸に対して反時計方向に回転し、第二軸に対して時計方向に回転する、実施形態31または実施形態32に記載の方法。
【0041】
実施形態34.
前記第一および第三コンパートメントを印刷して骨の外的形態を模倣し、前記第二コンパートメントを印刷して前記第一および第三コンパートメントの中間に位置し、前記第一および第三コンパートメントを連結する一連の靭帯の外的形態を模倣する、実施形態25~33のいずれか1つに記載の方法。
【0042】
実施形態35.
前記組織スキャフォールドを印刷して、舟状月状骨関節またはその要素の外的形態を模
倣する、実施形態34に記載の方法。
【0043】
実施形態36.
前記第一コンパートメントを印刷して舟状骨の外的形態を模倣し、第三コンパートメントを印刷して月状骨の外的形態を模倣し、第二コンパートメントを印刷して一連の舟状月状骨靭帯の外的形態を模倣する、実施形態25~35のいずれか1つに記載の方法。
【0044】
実施形態37.
前記一連の舟状月状骨靭帯は、背側舟状月状骨靭帯であり、近位側舟状月状骨靭帯でも掌側舟状月状骨靭帯でもない、実施形態36に記載の方法。
【0045】
実施形態38.
前記一連の舟状月状骨靭帯は、背側舟状月状骨靭帯、ならびに近位側および/もしくは掌側舟状月状骨靭帯のいずれかまたは両方である、実施形態36に記載の方法。
【0046】
実施形態39.
前記細孔は、100μM~1000μM、100μM~1000μM、100μM~800μM、100μM~600μM、200μM~600μM、200μM~500μM、300μM~600μM、300μM~500μM、350μM~600μM、350μM~500μM、400μM~600μM、または400μM~500μMの最大幅を有する、実施形態25~38のいずれか1つに記載の方法。
【0047】
実施形態40.
前記プラットフォーム上に連続的に堆積して、前記組織スキャフォールドを製造した前記高分子材料は、細胞を含まない、実施形態25~39のいずれか1つに記載の方法。
【0048】
実施形態41.
前記方法は、哺乳類細胞を前記スキャフォールドに播種して、その後、前記スキャフォールドを製造することを更に含む、実施形態25~40のいずれか1つに記載の方法。
【0049】
実施形態42.
前記哺乳類細胞は、靭帯由来幹細胞、軟骨幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)、脂肪由来幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)、骨芽細胞、骨芽細胞様細胞、幹細胞、前駆細胞、またはこれらのいずれかの組合せから成る群から選択される、実施形態41に記載の方法。
【0050】
実施形態43.
前記細胞は、ヒト間葉系幹細胞、またはヒト骨髄間葉系幹細胞である、実施形態41または実施形態42に記載の方法。
【0051】
実施形態44.
前記播種は、1つ以上のコンパートメントに哺乳類細胞を含む細胞シートを巻き付けること、および/または1つ以上のコンパートメントに前記細胞シートを挿入することを含む、実施形態41~43のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
実施形態45.
前記方法は、それを必要としている対象に、前記組織スキャフォールドを移植することを更に含む、実施形態41~44のいずれか1つに記載の方法。
【0053】
実施形態46.
前記哺乳類細胞は、それを必要としている対象の自家性である、実施形態45に記載の方法。
【0054】
実施形態47.
前記高分子材料は、コラーゲン、キトサン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、ポリエチレングリコールジメタクリレート(PEG)、ゼラチンメタクリロイル、マトリゲル、フィブリノーゲン、アガロース、ポリウレタンおよびポリカプロラクトンから成る群から選択される、実施形態25~46のいずれか1つに記載の方法。
【0055】
実施形態48.
実施形態1~24のいずれか1つに記載の三次元多相合成組織スキャフォールドの製造方法であって、前記方法は、三次元(3D)バイオプリンターを使用して、前記組織スキャフォールドが完全な形で製造されるまで、プラットフォーム上に高分子材料を連続的に堆積することを含む、方法。
【0056】
実施形態49.
実施形態25~48のいずれか1つに記載の方法によって製造された三次元多相合成組織スキャフォールド。
【0057】
実施形態50.
対象の損傷した靭帯の治療方法であって、前記方法は、実施形態1~24または49のいずれか1つに記載の三次元多相合成組織スキャフォールドを、前記損傷した靭帯を含む前記対象の体コンパートメントに移植することを含む、方法。
【0058】
実施形態51.
前記体コンパートメントは、関節である、実施形態50に記載の方法。
【0059】
実施形態52.
前記関節は舟状月状骨関節であり、前記靭帯は舟状月状骨靭帯(SLIL)またはその哺乳類均等物である、実施形態50または実施形態51に記載の方法。
【0060】
実施形態53.
前記対象は、ヒトである、実施形態50~52のいずれか1つに記載の方法
【0061】
実施形態54.
対象の損傷した靭帯の治療のための薬物の製剤のための、実施形態1~24または49のいずれか1つに記載の三次元多相合成組織スキャフォールドの使用。
【0062】
実施形態55.
対象の損傷した靭帯の治療における使用のための、実施形態1~24または49のいずれか1つに記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【0063】
実施形態56.
前記靭帯は、舟状月状骨靭帯またはその哺乳類均等物である、実施形態54に記載の使用、または実施形態55に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【0064】
実施形態57.
前記対象は、ヒトである、実施形態54もしくは実施形態56に記載の方法、または実施形態55もしくは実施形態56に記載の三次元多相合成組織スキャフォールド。
【0065】
定義
本願中で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別段に明記されていない限り、複数形を包含する。例えば、用語「polymer(重合体)」は、複数の重合体も包含する。
【0066】
本明細書中において使用されるとき、用語「comprising(含む)」は、「including(含む)」を意味する。「comprise(含む)」および「comprises(含む)」などの単語「comprising(含む)」は、同様に多様な意味を有する。したがって、例えば、重合体タイプAを「comprising(含む)」組織スキャフォールド構築物は重合体タイプAのみから構成されていてもよく、1つ以上の追加の要素(例えば、重合体タイプBおよび/または非重合体物質)を含んでもよい。
【0067】
本明細書中において使用されるとき、「多相」組織スキャフォールドは、少なくとも2つ(例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上)のコンパートメントを含む組織スキャフォールドであって、スキャフォールドの隣接するコンパートメントと比較して、各々が異なる微細構造の、および/または化学的な、および/または機械的な特性を含む、組織スキャフォールドを表す。本明細書で記載されている「多相」組織スキャフォールドを、別々に製造してから融着および/または結合するよりむしろ、連続的に(例えば、三次元バイオプリンティングの同セッションにおいて)製造すると理解されるだろう。
【0068】
本明細書中において使用されるとき、「合成」組織スキャフォールドは、天然で形成された組織スキャフォールドを排除し、スキャフォールドを人工的に製造することを要件とすることを意図している。
【0069】
本明細書中において使用されるとき、生物学的要素(例えば、関節、骨、靭帯、軟骨)を「模倣」する「外的形態」を有する組織スキャフォールドまたは組織スキャフォールドコンパートメントは、当業者が組織スキャフォールドまたは組織スキャフォールドコンパートメントを生物学的要素の代表であると認めるように、該生物学的要素を模倣するように、組織スキャフォールドまたは組織スキャフォールドコンパートメントの外面/外側に面している面を造形し、および/または大きさにすることを意味すると理解されよう。
【0070】
本明細書中において使用されるとき、用語「舟状月状骨関節」は、舟状骨、舟状月状骨靭帯および月状骨によって形成される関節を意味する。
【0071】
本明細書中において使用されるとき、用語「対象」は、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類、トリおよびげっ歯類種を含む経済的、社会的または研究に重要ないずれもの動物を含む。したがって、「対象」は、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類などの哺乳類であってよい。
【0072】
本明細書中において使用されるとき、記載された数値に関して使用される場合の用語「about(約)」は、記載された数値および記載された数値の±10%以内の数値を包含する。
【0073】
本明細書中において使用されるとき、数値の範囲に関して使用される場合の用語「between(の間)」は、範囲の各端点の数値を包含する。例えば、長さ10残基~20残基のポリペプチドは、長さ10残基のポリペプチドおよび20残基のポリペプチドを含む。
【0074】
本明細書中の従来技術の文献のいずれもの記載、またはこれらの文献から抽出されたもしくはこれらの文献に基づく本明細書中の記載は、これらの文献またはこれらから抽出さ
れた記載が関連技術の一般常識の一部であると認めるものではない。
【0075】
説明の目的のため、本明細書中に参照される全文献は、特に断りのない限り、その全文を参照することにより本明細書に組み入れられるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0076】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図を参照してほんの一例として説明する。
【
図1】
図1は、ヒトbmMSC細胞シートの回収およびBLBスキャフォールドへの播種の過程を示す。A)滅菌ピンセットを使用して、細胞シートの外端部を優しくかき取り、ウェルの壁から剥離した。B)細胞シートを、ピンセットを使用してウェルの中心方向に回転して折り畳んで束ねた。C~D)4つの細胞シートの束をPCLスキャフォールド(背面が下を向いている)の靭帯ストランド間に播種した。E)スキャフォールド(背面が下を向いている)を、骨および靭帯コンパートメントに巻き付いている第5細胞シート上に配置した。F)ハイドロゲル25μLを、骨コンパートメントに注意深く分注した。
【
図2】
図2は、350μmおよび600μm多孔性BLB構築物のSEM画像を示す。PCL繊維のたるみを、白色矢印によって示している。隣接する層間のPCL繊維融着を、四角矢印によって示している。A)350μm骨コンパートメントの40倍下面図。B~D)各層のPCLストランド間の良好な融着を示す350μm骨コンパートメントの40倍、100倍および500倍横断面図。E)600μm骨コンパートメントの40倍下面図。F~H)600μm靭帯コンパートメントの40倍、100倍および500倍横断面図。
【
図3】
図3は、350μmおよび600μm多孔性BLB構築物を示す。A)3D印刷されたPCLスキャフォールド。B)マイクロCTスキャンの3D再構築。C)350μmおよび600μm多孔性スキャフォールドのスキャフォールド空隙率。
【
図4】
図4は、靭帯コンパートメントの引張試験結果を示す。20mm/分の伸長速度における引張試験結果。A)350μmおよび600μmスキャフォールドの力対ひずみ-変位曲線。B)350μmおよび600μmスキャフォールドの降伏力。C)350μmおよび600μmスキャフォールドの極限力。D)350μmおよび600μmスキャフォールドの最大ひずみ。E)350μmおよび600μmスキャフォールドの硬度。
【
図5】
図5は、骨コンパートメントの圧縮挙動を示すグラフを示す。A)350μmおよび600μmスキャフォールドの代表的応力-ひずみ曲線、B)350μmおよび600μm多孔性骨コンパートメントの圧縮弾性率。
【
図6】
図6は、5%および10%ひずみにおけるスキャフォールド設計のためのサイクル試験ヒステリシスループを示す。
【
図7】
図7は、構築物硬度を示すグラフを示す。1000サイクルにわたる極限力の変化を、各スキャフォールド設計について示す。曲線は、試験された5サンプルの代表値である。
【
図8】
図8は、DNAおよびコラーゲン定量結果を示す。細胞シートのDNAおよびコラーゲン定量。+AA群は、コントロール(-AA)と比較した場合、有意に大きい細胞増殖およびコラーゲン合成を示した。バーは、統計的有意性(p<0.05)を示す。
【
図9】
図9は、ECMタンパク質の蛍光免疫染色の結果を示す。A-コラーゲンIa(緑)/III(赤)染色;B-テネイシンC;C-エラスチン;D-アグリカン;E-マウスアイソタイプコントロール;F-ウサギアイソタイプコントロール;G-抗マウス二次抗体のみ;H-抗ウサギ二次抗体のみ。
【
図10】
図10は、FDA(緑、生細胞)およびPI(赤、死細胞)を播種した細胞シートおよび播種していない細胞シート上の細胞生存率分析の結果を示す。A)BLBスキャフォールドの背面に巻き付けた平らな細胞シートの代表的画像、B)靭帯コンパートメントのPCL繊維間に配置された細胞シートの束、ならびにC)非回収細胞シート(コントロール)。D)350μmおよび600μmスキャフォールドの平らなシートおよび束における生細胞のパーセンテージ。
【
図11】
図11は、細胞化されたBLB構築物のSEM画像を示す。細胞化されたBLB構築物のSEM。A)平らな細胞シートを備える350μmおよび600μm細孔径スキャフォールド、100倍および500倍。高密度な細胞外マトリックス繊維を見ることができる。B)細胞シートの束を備える350μmおよび600μm細孔径スキャフォールド、100倍および500倍。
【
図12】
図12は、骨ミネラル化のマイクロCT分析の結果を示す。A~B)350μmおよび600μm多孔性スキャフォールドにおける骨ミネラル化の3D再構築。C)2週目および8週目の350μmおよび600μm多孔性スキャフォールドにおける骨量。
【
図13】
図13は、移植されたヘマトキシリン・エオジン(H&E)染色した骨-靭帯-骨構築物の2週間の組織画像を示す。これらの切片は支柱の間で採取されたので、靭帯コンパートメントのいくつかの切片はPCL支柱を描写していない。星印は、血管の存在を示す。
【
図14】
図14は、移植されたH&E染色した骨-靭帯-骨構築物の8週間の組織画像を示す。星印は、血管の存在を示す。
【
図15】
図15は、2週目および8週目におけるサンプル中の骨形成、早期ミネラル化および靭帯アライメントの組織形態計測分析の結果を示す。バーは、統計的有意差(p<0.05)を示す。
【
図16】
図16は、8週間移植されたサンプル中の骨-靭帯相間のH&E染色の組織画像を示す。破線は、骨と靭帯コンパートメントとの間の界面を示す。
【
図17】
図17は、互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備えるスキャフォールド構築物のSEM画像を示す。
【
図18】
図18は、互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備えるスキャフォールド構築物のマイクロCT画像を示す。
【
図19】
図19は、互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備える様々なスキャフォールド構築物において観察された硬度を示すグラフを示す。
【
図20】
図20は、互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備える様々なスキャフォールド構築物の極限力を示すグラフを示す。
【
図21】
図21は、互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備える様々なスキャフォールド構築物の降伏力を示すグラフを示す。
【
図22】
図22は、ウサギに移植された、SLILの背側要素から作製された多相骨-靭帯-骨スキャフォールドの画像を示す。
【
図23】
図23は、多相骨-靭帯-骨スキャフォールド作製中に撮影された画像である。
【
図24】
図24は、多相骨-靭帯-骨スキャフォールド作製中に撮影された更なる画像である。
【
図25】
図25は、天然のウサギMCLの外科的切除および多相骨-靭帯-骨スキャフォールドの膝(A~L)への外科的移植を示す一連の画像を示す。
【
図26】
図26は、スキャフォールド移植、膝関節の固定および骨ミネラル化を示す画像を示す。A)骨-靭帯-骨コンパートメントを示す多相スキャフォールドのSEM画像。B)内弯症におけるウサギ膝関節のKワイヤー固定を示すX線。C)4週間後の大腿骨および脛骨における新しい骨ミネラル化を示すマイクロCT再構築。
【
図27-1】
図27は、多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを移植されたウサギのMCL関節における骨再生のマイクロCT結果を示す画像を示す。A)4週目。B)およびC)8週目。
【
図28】
図28は、多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを使用して生成された骨-靭帯-骨構築物の生体力学的試験のために使用された装置の画像を示す。
【
図29】
図29は、4週目および8週目の骨-靭帯-骨構築物の引張試験から導かれた機械的強度測定を示すグラフである。
【
図30-1】
図30は、(A)天然のウサギ膝関節およびMCLを取り除き多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを置換されたウサギ膝関節から生成されたひずみマップを示す。
【
図31-1】
図31は、ウサギ内側側副靭帯(膝)の組織画像(ヘマトキシリン・エオジン染色)を示す:A)天然MCL靭帯(「276天然」)。B)正常ウサギMCLアーキテクチャー。C)コントロールサンプル4週(「336コントロール」)骨コンパートメント間を横切る無処置靭帯繊維をインビボで示す完全スキャフォールド。D)PCL支柱周囲の骨コンパートメント骨ミネラル化。E)靭帯コンパートメント2倍。F)靭帯コンパートメント10倍(いくつかの整列した繊維)。G)8週(「241コントロール」)骨コンパートメント間を横切る無処置靭帯繊維を示すインビボの完全スキャフォールド。H)4週と比較した場合の8週において観察されたPCL支柱周囲のより多い骨ミネラル化。I)靭帯コンパートメント2倍。J)靭帯コンパートメント10倍(いくつかの整列した繊維)。
【発明を実施するための形態】
【0077】
本発明は、関節および/または靭帯修復における外科的応用のための合成および生体適合性スキャフォールドを提供する。
【0078】
極めて重要な生体模倣したこれらの多相バイオスキャフォールドは、(i)現存する関節構造物と同じ/ほとんど同じスキャフォールドのマッチングを可能とする治療下の組織の外的形態をより正確に複製する能力;ならびに/または(ii)天然関節および/もしくは靭帯として同じ生体力学的特性の維持;ならびに/または(iii)血管新生および組織再生を促進し、それにより、治癒にかかる時間全体を最短にする処置能力;ならびに/または(iv)自家移植片を回収する場合のドナー罹患率の排除、を含む因子のおかげで、同じ自家移植に対して優れている方法で軟組織損傷の統合的および機能的修復を可能とすることができる。
【0079】
本発明は、これらのスキャフォールド、その製造方法、および組織修復(例えば、関節および/または靭帯修復)におけるその使用に関する。下記本発明の様々な特徴は、文脈上そうであると明記されていない限り、限定されないと考えるべきである。
【0080】
重合体
本発明は、重合体から構築されたスキャフォールドおよびその製造方法を提供する。
【0081】
本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用してよい重合体の種類に特に制限はなく、特定の特徴が望ましい。例えば、重合体は、生体適合性(すなわち、無毒性)、非免疫原性であり、細胞の接着基質となる能力を有し、細胞増殖を促進し、および/または分化細胞機能の保持を可能とし得る。
【0082】
加えてまたはあるいは、重合体は、機械的強度、大きな体積に対する表面比、および/または所望の形状構造への直接的加工を可能とする1つ以上の物理的特徴を備え得る。
【0083】
本発明の方法による重合体から構築されたスキャフォールドは、インビボ条件下で所望の形状を維持するのに充分な硬さであり得る。
【0084】
本発明の方法または構築物において使用される重合体は、生分解性または実質的に生分解性であり得る。好ましくは、重合体の分解産物は生体適合性である。
【0085】
あるいは、本発明の方法または構築物において使用される重合体は、非分解性重合体であってもよい。制限なく、使用してよい適切な非分解性重合体材料としては、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、およびその組合せが挙げられる。
【0086】
重合体は、ホモ重合体であってもよく、共重合体であってもよい。
【0087】
重合体は、合成品であってもよく、天然品であってもよい。
【0088】
適切である可能性がある合成重合体の非限定的例としては、ポリエステル(例えば、ポリ(グリコール酸)、ポリ(l-乳酸)、ポリ(d,l-乳酸)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(プロピレンフマレート)、ポリ(p-ジオキサノン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、およびこれらの共重合体、酸無水物(例えば、ポリ[1,6-ビス(カルボキシフェノキシ)ヘキサン])、ポリ(リン酸エステル)(例えば、ポリ(ビス(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸エチル、オルトリン酸/塩化テレフタロイル)、ポリ(オルトエステル)(例えば、Alzamer(登録商標))、ポリカーボネート(例えば、チロシン誘導ポリカーボネート)、ポリウレタン(例えば、LDIベースポリウレタンおよびポリ(グリコリド-co-γ-カプロラクトン))、ならびにポリホスファゼン(例えば、グリシン酸エチル・ポリホスファゼン)が挙げられる。
【0089】
適切である可能性がある天然重合体の非限定的例としては、コラーゲン、フィブリン、ゼラチン、アルブミンなどのタンパク質から誘導されるものならびにセルロース、ヒアルロン酸、キチン、グリコサミノグリカン(例えば、ヒアルロン酸)などの多糖類、プロテオグリカン(例えば、コンドロイチン硫酸、ヘパリン)、フィブロネクチン、ラミニン、およびアルギン酸が挙げられる。
【0090】
特定の実施形態では、重合体はタンパク質を含んでよい。タンパク質は、繊維状タンパク質であってよい。適切な繊維状タンパク質の非限定的例としては、コラーゲン、エラスチン、フィブリノーゲン、フィブリン、アルブミンおよびゼラチンが挙げられる。
【0091】
本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用される重合体は、その自然状態の重合体として存在し得る。かかる重合体は、さらに重合してもよく、および/または他の重合体と架橋してもよい。
【0092】
加えてまたはあるいは、本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用される重合体は、当技術分野において公知のいずれかの適切な技術を使用して単量体単位から製造してよい。重合体鎖は、更なる単量体単位の添加および/または他の重合体鎖との結合によって更に重合してもよい。
【0093】
特定の実施形態では、単量体単位および/または別の重合体鎖を、適切な重合開始剤を使用して重合してよい。重合開始剤およびその使用方法は、当業者に周知である。適切である可能性がある重合開始剤の非限定的例としては、ジイソシアネート、過酸化物、ジイミド、ジオール、トリオール、エポキシド、シアノアクリレート、酵素(例えば、ポリメラーゼ)および同様のものが挙げられる。
【0094】
本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用される重合体を架橋して、高分子網目を形成してもよい。高分子網目は二次元であってもよく、三次元であってもよい。適切である可能性がある架橋剤としては、ゲニピン、グルタルアルデヒド、カルボジイミド(例えば、EDC)、イミドエステル(例えば、スベルイミノ酸ジメチル)、N-ヒドロキシコハク酸イミドエステル(例えば、BS3)、ジビニルスルホン、エポキシド、イミダゾール、糖類(例えば、ペントースまたはヘキサノース)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
非限定的例によってのみ、フィブリン重合体を、セリンプロテアーゼ(例えば、トロンビン)の存在下でフィブリノーゲン単量体前駆体から生成して、フィブリン単量体をナノファイバーネットワークへの自然凝集を開始させてもよい。それから、カルシウムイオンおよび因子XIII(トランスグルタミナーゼ)を使用してフィブリン重合体を共有結合的に架橋してよい。
【0096】
本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用される重合体は、「感光性重合体」であってよい。本明細書中において使用されるとき、用語「感光性重合体」は、電磁放射(例えば、赤外線、可視光、紫外線、X線、ガンマ線)に露光すると重合および/または架橋させることができる、重合体、および重合体に組み立てることができる単量体単位を包含する。重合および/または架橋は、電磁放射に露光すると自然に起こってもよく、1つ以上の追加の化合物(例えば、触媒、または光開始剤)の存在を必要としてもよい。
【0097】
いずれの種類の感光性重合体も本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用してもよい。適切な感光性重合体としては、樹脂(例えば、エポキシ樹脂、アクリレート樹脂、Accura(登録商標)SI10)、ジメタクリレート重合体、ポリ(プロピレンフマレート)(PPF)、PPFとフマル酸ジエチル(DEF)との配合物、感光性重合体化ポリ(エチレングリコール)(PEG)、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)、ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(PEGDA)、および同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0098】
本発明の方法またはスキャフォールドにおいて使用される感光性重合体は、光開始剤の存在下、重合、架橋および/または硬化するように誘起してもよい。本明細書中において使用されるとき、「光開始剤」は、特定の波長の光を吸収すると重合、架橋および/または硬化反応を触媒することができる1つ以上の反応性化学種を生成する分子である。例えば、光開始剤は水相溶性であり、アクリレート基またはスチレン基を含む分子に対して作用し得る(例えば、Irgacure2959、184、および651;VA-086;またはV-50)。光開始剤は、発色団であってもよい。適切な光開始剤の他の非限定的例としては、トリスビピリジルルテニウム(II)クロリド[Ru(II)(bpy)3]2+、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Irgacure651)および2光子感光性発色団(AF240)が挙げられる。
【0099】
組織スキャフォールド
本発明によるスキャフォールドは合成であり、生体組織(例えば、哺乳類組織、ヒト組織)の特性を模倣するように設計され得る。上記のように、本発明によるスキャフォールドは、重合体を使用して製造してよい。
【0100】
スキャフォールドは多相であり、スキャフォールドの隣接するコンパートメントと比較して、異なる微細構造の、および/または化学的な、および/または機械的な特性を有する複数のコンパートメントを備え得ることを意味する。したがって、スキャフォールドは、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の個別のコンパートメントを備えてよい。一連の個別のコンパートメントを製造するよりむしろそのコンパートメントの全てを含むスキ
ャフォールド全体を単一単位として作製して、その後、これらを結合、融着または連結して完全なスキャフォールドを形成するように、スキャフォールドの個別のコンパートメントを、連続的方法で製造してよい。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態では、多相スキャフォールドは、関節の外的形態または関節の要素(例えば、靭帯、骨、軟骨、およびその組合せ)を模倣するコンパートメントを備える。関節は、哺乳類関節(例えば、ヒト関節)であってよい。関節の非限定的例としては、線維性関節(例えば、縫合線、釘状関節、靭帯関節)、軟骨性関節(例えば、軟骨結合、線維軟骨結合)、および滑膜関節(例えば、滑走、蝶番、車軸、楕円、鞍、球窩)が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、関節は、椎間関節(例えば、椎間軟骨性関節、椎間滑膜面(intervertebral synovial facet)関節、関節突起間関節)、環軸関節、肘関節、手指または母指関節(例えば、指節間関節、中手指節関節、近位指節間関節、遠位指節間関節)、前腕関節(例えば、近位橈尺関節、遠位橈尺関節)、股関節、肩関節(例えば、肩甲上腕関節、胸鎖関節、肩鎖関節)または手首関節(例えば、橈骨手根関節、手根間関節、手根中央関節、手根中手関節、中手間関節)であってよい。多相スキャフォールドは、関節の要素(例えば、靭帯、骨、軟骨)の外的形態を模倣するコンパートメントを備えてよい。当業者は、文献(非限定的な一例として、Marieb and Hoehn,Human Anatomy and Physiology(10th Addition);Harris,Mammal Anatomy,an illustrated guide,2010,Marshall Cavendish;Jacob,Human Anatomy:A Clinically Oriented Approach, 2007,Elsevier;Dimon Rr,Anatomy of the Moving Bod(2nd edition),2012,North Atlantic Books;Agur and Dalley,Grant’s Atlas of Anatomy(12th edition),2009,Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins参照)中の特徴がはっきりした哺乳類(例えば、ヒト)対象内の関節の様々な要素を充分知っている。
【0102】
多相スキャフォールドの非限定的例としては、順に、骨-靭帯コンパートメント、靭帯-骨コンパートメント、骨-靭帯-骨コンパートメント、骨-軟骨コンパートメント、軟骨-骨コンパートメント、骨-軟骨-骨コンパートメント、筋肉-腱コンパートメント、腱-骨コンパートメント、および筋肉-腱-骨コンパートメントを備えるものが挙げられる。
【0103】
制限なく、多相スキャフォールドは、舟状月状骨靭帯、舟状骨と連結した舟状月状骨靭帯、月状骨と連結した舟状月状骨靭帯、または舟状骨と連結した第一端部および月状骨と連結した第二端部を有する舟状月状骨靭帯の外的形態を模倣し得る。舟状月状骨靭帯としては、背側(背中)、および/または近位側(中間、骨間)、および/または掌側(前側、掌側)靭帯を挙げることができる。
【0104】
本発明のスキャフォールドは、多孔質であってよい。スキャフォールドの多孔性は、好ましくは、スキャフォールド内および/またはスキャフォールドを貫通する要素(例えば、細胞、タンパク質、成長因子、栄養素、および/または細胞片)の遊走を可能とする大きさである。いくつかの実施形態では、構築物は、約100μM~約1000μMの幅もしくは径、約100μM~約900μMの幅もしくは径、約100μM~約800μMの幅もしくは径、約100μM~約700μMの幅もしくは径、約100μM~約600μMの幅もしくは径、または約800μM未満の幅もしくは径、または約700μM未満、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、または50μMの幅もしくは径の細孔を備えてよい。いくつかの実施形態では、構築物は、約80
0μM未満の径、または約700μM未満、600μM、500μM、400μM、300μM、200μM、100μM、または50μMの径の実質的に円形の細孔を備えてよい。
【0105】
バイオプリンティング
本発明によるスキャフォールドを、適切なバイオプリンティング技術を使用して製造してよい。好ましくは、バイオプリンティング技術は、三次元バイオプリンティング技術である。
【0106】
適切なバイオプリンティング技術の非限定的例としては、液滴バイオインクを熱または圧電アクチュエーターによってノズルにおいて生成するインクジェット系バイオプリンティング(例えば、サーマルインクジェットバイオプリンティング、圧電インクジェットバイオプリンティング)、バイオマテリアルをマイクロスケールノズルまたはマイクロニードルにより基質上に圧力下で(例えば、スクリュー圧もしくはプランジャー圧または空気圧によって)押出し、層ごとに三次元スキャフォールドを製造するために使用し得る圧力支援バイオプリンティング(例えば、マイクロ押出)、レーザーを基質上にバイオマテリアルを堆積してスキャフォールドを製作するエネルギー源として使用するレーザー支援バイオプリンティング(例えば、レーザー走査フォトリソグラフィー、二光子レーザー走査フォトリソグラフィー)、およびパターン化された光を使用して層ごとに選択的に液体感光性重合体を重合する立体リソグラフィーが挙げられる。
【0107】
当業者は、本発明の方法において使用することができるこれらおよび他の適切なバイオプリンティング技術を充分知っている。ほんの一例として、Boland et al.Biotechnol J.2006 Sep 1(9):910-7;Chia and Wu,J Biol Eng. 2015;9:4;Irvine and Venkatraman, Molecules 2016,21,1188;Jana and Lerman, Biotechnol Adv.2015 Dec;33(8):1503-21;Li et al.J Transl Med.2016;14:271;Melchels,et al.Progr.Polymer Sci.37(8)2012:1079-1104;Murphy and Atala Nat.Biotechnol.32(8)2014:773-785;Skardal A.Bioprinting Essentials of Cell and Protein Viability.Essentials of 3D Biofabrication and Translation.Atala A,Yoo JJ,Eds.Academic Press:Cambridge,MA,January 2015:1-17;およびWang et al.Biofabrication.2015 Dec 22;7(4):045009の文献を参照。本願の実施例は、本発明によるスキャフォールドを製造するために使用することができる例示的バイオプリンティング技術も提供する。
【0108】
本発明は、本明細書で記載されているスキャフォールド構築物の作製を支援する「CAD」(コンピュータ支援設計)の使用を企図する。本明細書中において使用されるとき、用語「CAD」は、純粋なCADシステム、CAD/CAMシステムおよび同様のものを含むコンピュータ支援設計システムの全方法を含むが、但し、かかるシステムを少なくとも部分的に使用して本発明の三次元スキャフォールド構築物モデルを開発または加工する。非限定的例としては、Solidworks(Solidworks Corp.)およびLSMソフトウェア(Zeiss)が挙げられる。
【0109】
細胞播種
本発明のスキャフォールドに、細胞を播種してよい。スキャフォールドに播種するため
に使用してよい特定の細胞型に関して特に制限はないが、対象の組織(すなわち、スキャフォールドが模倣しようとする組織)内の細胞型に分化することができる幹細胞および/または前駆細胞を含むことが想定される。ほんの非限定的例として、幹細胞および/または前駆細胞は、間葉系骨前駆細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、軟骨細胞、および軟骨前駆細胞のいずれか1つ以上に分化することができる可能性がある。
【0110】
例えば、骨を模倣する1つ以上のコンパートメントを備えるスキャフォールドに、骨芽細胞に分化または展開することができる細胞を播種してよい。例えば、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)および/または脂肪由来幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)を、この目的のために使用してよい。
【0111】
軟骨を模倣する1つ以上のコンパートメントを備えるスキャフォールドに、軟骨細胞に分化または展開することができる細胞を播種してよい。例えば、軟骨幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)および/または脂肪由来幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)を、この目的のために使用してよい。
【0112】
靭帯を模倣する1つ以上のコンパートメントを備えるスキャフォールドに、靭帯細胞に分化または展開することができる細胞を播種してよい。例えば、靭帯由来幹細胞、間葉系幹細胞(骨髄間質細胞)および/または脂肪由来幹細胞(例えば、骨髄由来間葉系幹細胞、脂肪由来間葉系幹細胞)を、この目的のために使用してよい。
【0113】
本明細書で記載されているスキャフォールドに播種するために使用してよい他の非限定的細胞型としては、臍帯血幹細胞、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、成体幹細胞、芽細胞、クローン細胞、および/または胎盤細胞が挙げられる。
【0114】
本明細書で記載されているスキャフォールドに播種するために使用してよい細胞型の他の非限定的例としては、間葉系骨前駆細胞、骨芽細胞、骨細胞、破骨細胞、軟骨細胞、および軟骨前駆細胞などのいずれもの細胞が挙げられる。好ましくは、細胞は、適合性のあるヒトドナー由来である。より好ましくは、細胞は、患者由来(すなわち、自己細胞)である。
【0115】
スキャフォールドに播種するために使用されるタイミングまたは方法に関して制限はない。
【0116】
したがって、いくつかの実施形態では、スキャフォールドそれ自体の構築中に細胞を播種する。例えば、細胞を、スキャフォールドの製作に使用される材料中に含有させる、または該材料と混合することができる(例えば、高分子材料と細胞との液体混合物)。細胞をバイオプリンティング材料中に含有させる、または該材料と混合する実施形態では、得られた構築物を、例えば、特定のコンパートメントの至る所に分散された細胞、特定のコンパートメント中に分散された細胞、ならびに/または所望の天然組織を模倣するために配置された異なる細胞型および/もしくは整列された異なる細胞型で細胞化してよい。
【0117】
他の実施形態では、スキャフォールドを、その後に播種することができる細胞と無関係に製造してよい。例えば、細胞を適切な培養培地中に入れ、スキャフォールドを培地中に入れてスキャフォールドの播種を促進してもよい。これとの関連で細胞は種を促進する様々な技術は当業者に公知であり、手動による振盪、細胞を濃縮する技術、細胞増殖、分化および/または接着因子の添加などを含み得る。
【0118】
本発明のいくつかの実施形態では、予め作製された多相スキャフォールドを、細胞シート技術を使用して播種してよい。細胞シート技術は、当業者に公知である。ほんの非限定
的な一例として、Costa et al.Journal of clinical periodontology.2014;41(3):283-94;Neo et al.Connect Tissue Res.2016:1-15;Yamato and Okano,2004,Today 7,42-47;Yang et al.2005,Biomaterials 26,6415-6422)を参照。細胞シートをこのように製造、回収、および本発明の予め作製されたスキャフォールド内に、および/または該スキャフォールドに巻き付けて配置してもよい。細胞シートを組織スキャフォールド内への、および/または周囲への適用/播種を、例えば、Carter et al.Ann Biomed Eng.2017;45(1):12-22に記載されているものと同様な方法を使用して行うことができる。
【0119】
所与のスキャフォールド構築物の播種に使用される細胞数は、概して、利用される細胞の大きさおよび形態に加えて構築物の寸法などの因子に依存するだろう。細胞密度は特定用途に依存するだろうが、好ましくは、スキャフォールド構築物は、高密度の細胞を含む。
【0120】
特定の実施形態では、スキャフォールドに、約5千万~2億細胞/ml、約1億~2億細胞/ml、約1億~1.5億細胞/ml、約1百万細胞/mlおよび約5千万細胞/ml、または約1百万細胞/mlおよび約1千万細胞/mlを播種してよい。
【0121】
スキャフォールドは、他の生理活性成分を付加的に含んでもよい。生理活性成分の非限定的例としては、タンパク質(例えば、コラーゲン、エラスチン、ピカチュリンなどの細胞外マトリックスタンパク質;アクチン、ケラチン、ミオシン、チューブリン、スペクトリンなどの細胞骨格タンパク質;血清アルブミンなどの血漿タンパク質;カドヘリン、インテグリン、セレクチン、NCAMなどの細胞接着タンパク質;および酵素);神経伝達物質(例えば、セロトニン、ドーパミン、エピネフリン、ノルエピネフリン、アセチルコリン);血管新生因子(例えば、アンジオポエチン、線維芽細胞増殖因子、骨形態形成タンパク質(例えば、BMP-2)、軟骨成長因子などの骨成長因子、軟骨成長因子、靭帯成長因子、半月板成長因子、血管内皮増殖因子、 マトリックスメタロプロテイナーゼ酵素);アミノ酸;ガラクトースリガンド;核酸(例えば、DNA、RNA);薬物(抗生物質、抗炎症剤、抗血栓剤など);多糖類;プロテオグリカン;ヒアルロン酸;因子XIIIなどのクロスリンカー;リジル酸化酵素;抗凝固剤;酸化防止剤;サイトカイン(例えば、インターフェロン(IFN)、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン、コロニー刺激因子(CSF));ホルモンもしくは増殖因子(例えば、インスリン、インスリン様増殖因子、上皮増殖因子、オキシトシン、骨形成因子抽出物(OFE)、上皮増殖因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGF)(例えば、骨形成タンパク質2を含むTGF-βタンパク質、血小板由来増殖因子(PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB)、酸性線維芽細胞増殖因子(FGF)、塩基性FGF、結合組織活性化ペプチド(CTAP)、トロンボグロブリン、エリスロポエチン(EPO)、および神経成長因子(NGF));またはこれらの組合せが挙げられる。
【0122】
追加の生理活性成分を、いずれもの供給源(例えば、ヒト、他の動物、微生物)から得ることもできる。例えば、これらを組換え手法によって製造してもよく、天然源から直接抽出・精製してもよい。
【0123】
治療
本発明のスキャフォールドを、対象の損傷組織の再生および/または修復に使用してよい。本明細書に記載されているスキャフォールドを、例えば、いずれもの組合せで、骨、軟骨および/または靭帯のうちいずれかの1つ以上を含むものを含むいくつかの哺乳類(例えば、ヒト)組織を模倣するように設計された方法で、バイオプリンティングすること
ができることを、当業者は容易に認識するだろう。
【0124】
本発明の治療方法によれば、スキャフォールドを、それを必要とする対象の修復および/または再生を必要とする組織部位に移植することができる。
【0125】
本発明の方法により治療してよい組織の非限定的例としては、関節または関節要素(例えば、靭帯、骨、軟骨、およびこれらの組合せ)が挙げられる。関節は、哺乳類関節(例えば、ヒト関節)であってよい。
【0126】
本発明の方法により治療してよい関節の非限定的例としては、線維性関節(例えば、縫合線、釘状関節、靭帯関節)、軟骨性関節(例えば、軟骨結合、線維軟骨結合、半月板)、および滑膜関節(例えば、滑走、蝶番、車軸、楕円、鞍、球窩)が挙げられる。したがって、いくつかの実施形態では、関節は、椎間関節(例えば、椎間軟骨性関節、椎間滑膜面(intervertebral synovial facet)関節、関節突起間関節)、環軸関節、肘関節、手指または母指関節(例えば、指節間関節、中手指節関節、近位指節間関節、遠位指節間関節)、前腕関節(例えば、近位橈尺関節、遠位橈尺関節)、股関節、肩関節(例えば、肩甲上腕関節、胸鎖関節、肩鎖関節)または手首関節(例えば、橈骨手根関節、手根間関節、手根中央関節、手根中手関節、中手間関節)であってよい。関節の個々の要素(例えば、靭帯、骨、軟骨)を、治療方法の標的としてもよい。当業者は、文献(非限定的な一例として、Marieb and Hoehn,Human Anatomy and Physiology(10th Addition);Harris,Mammal Anatomy,an illustrated guide,2010,Marshall Cavendish;Jacob,Human Anatomy:A Clinically Oriented Approach, 2007,Elsevier;Dimon Rr,Anatomy of the Moving Bod(2nd edition),2012,North Atlantic Books;Agur and
Dalley,Grant’s Atlas of Anatomy(12th edition),2009,Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins参照)中の特徴がはっきりした哺乳類(例えば、ヒト)対象内の関節の様々な要素を充分知っている。
【0127】
本発明の治療方法によれば、スキャフォールドを、それを必要とする対象の修復および/または再生を必要とする組織部位に移植することができる。
【0128】
移植に利用されるスキャフォールドに播種される細胞は、適合性のあるヒトドナー、または対象者自身(すなわち、自己細胞)由来であってよい。対象は、ウシ、ウマ、ヒツジ、霊長類、トリおよびげっ歯類種を含む経済的、社会的または研究に重要ないずれもの動物であってよい。したがって、対象は、例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類などの哺乳類であってよい。
【0129】
概して記載された本発明の要旨または範囲を逸脱することなく具体的な実施形態に開示された本発明に多数の変更および/または修正を行うことができることを当業者は理解するだろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例証であって、制限されるものではないものとする。
【実施例】
【0130】
本発明を、具体的な実施例を参照して説明するが、決して限定的と解釈されるべきでない。
【0131】
実施例1:舟状月状骨靭帯再構築のための付加的に製造された多相骨-靭帯-骨スキャ
フォールド
【0132】
-概要
(i)目的
舟状月状骨靭帯(SLIL)は、一般に断裂する手首靭帯である。SLIL断裂の現行手術の選択肢は最適以下であり、これらの損傷は二次性変形性関節症をもたらす手根運動を変化させる。本研究は、背側舟状月状骨靭帯(SLIL)再構築のために3D印刷および細胞シート技術を使用して新規多相骨-靭帯-骨(BLB)スキャフォールドを開発することを目的とする。
【0133】
(ii)方法
SLILの背側要素からモデル化された多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを、医療グレードのポリカプロラクトン(PCL)で3D印刷した。これらは、天然靭帯のアーキテクチャーを模倣する整列されたPCL繊維によって架橋された2つの骨コンパートメントから成る。
【0134】
(iii)結果
BLBスキャフォールドの機械的試験は、これらが生理学的な力に耐えることができることを示した。BLB構築物を無胸腺症ラットに異所的に移植し、2週間目および8週間目に回収した。3つの実験群を活用した(i)BLBスキャフォールドのみのコントロール、(ii)BLBスキャフォールドの骨コンパートメント中に骨形成タンパク質(BMP)、ならびに(iii)BLBスキャフォールドの骨コンパートメント中にBMPおよび靭帯中にヒト細胞シート。アスコルビン酸添加培地のあるなしで、21日間組織培養プラスチック上でヒト骨髄間葉系幹細胞を培養することによって、細胞シートを形成した。アスコルビン酸で処置された細胞シートは、高DNA含有率および移植前のインビトロでのECM沈着を示し、したがって、その後の実験に使用した。インビトロでの細胞シートの分析は、細胞シートの回収および配置は細胞生存率を低下させなかったこと、ならびにシートは移植前に靭帯コンパートメントに均一に分散されたことを示した。インビトロサンプルの組織学的分析は、スキャフォールドは生体適合性があり、良好な組織集積を示し、高度に血管が新生されたことを実証した。8週間の時点でのみ骨形成は観察され、骨コンパートメントに位置したままであった。靭帯コンパートメント中の細胞は整列し、移植片はインビボで広範に組織修復していた。
【0135】
(iv)結論
この実証実験は、3D印刷多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを、舟状月状骨靭帯再構築における応用のために、上手く作製し予測可能な方法で移植することができることを実証した。スキャフォールドの具体的アーキテクチャーは、靭帯繊維アライメントおよび組織再生に導く特性を提供した。
【0136】
-材料および方法
(i)骨-靭帯-骨スキャフォールド製造
医療グレードのポリカプロラクトン(mPCL、80kDa)を、Corbion社から購入した。加えて、天然靭帯のアーキテクチャーおよび組織を模倣する整列されたmPCL繊維(靭帯コンパートメント)によって架橋された2つの骨コンパートメントから成る製造されたBLB mPCLスキャフォールドを設計した。インビトロ試験および異所性移植における物理的特徴を決定するために、靭帯コンパートメントにおいて350μmおよび600μmの繊維距離間隔からなる2つの設計を作製した。次の条件下で社内のバイオ押出機を使用してmPCL 3Dスキャフォールドを製作した:mPCLをステンレスリザーバーに入れて加熱されたカートリッジユニットにより110℃まで加熱し、22Gニードルにより押し出してプログラミングされたステージ上にmPCL繊維を堆積させ
た。連続式印刷方法を行った結果、靭帯コンパートメント(整列された繊維)において層間0/90°および0/0°配置を有し、層厚さ300μmの構成を形成する適切に連結された繊維を作製した。この結果、細長いU字型を有する個々のスキャフォールドを製造し、これにより、骨コンパートメントは5×5×10mm3の寸法を有し、長さ5mm、幅5mm、高さ3mmの寸法の靭帯コンパートメントにより架橋した。BLBスキャフォールドを、引張試験を除く残りの試験のためのBLBスキャフォールドとして利用し、5mm長骨コンパートメントおよび5mm長靭帯コンパートメントを更に特徴とする15×5×3mm3のBLB長方形スキャフォールドを実験要件のために使用した。
【0137】
(ii)BLB形態および多孔性
スキャフォールドの形態を、操作電子顕微鏡(SEM)を使用して調査した。SEMは、QUANTA200顕微鏡を使用して分析研究センター施設(CARF)において行った。mPCLスキャフォールドを顕微鏡下で(EHT=10kV)可視化する前に150秒間、金をスパッタリング蒸着した。スキャフォールド(n=6)の多孔性に加えて形態を、マイクロコンピュータ断層撮影(μCT)を使用して調査した。350μmおよび600μmBLBスキャフォールドを、μCT40(SCANCO Medical AG、スイス国ブリュッティーゼレン)を使用して、電圧55kVp、電流120μA、電力8W、積分時間300ミリ秒およびボクセル(voxel)サイズ20μmで分析した。3D画像を、μCTソフトウェアを使用して再構築した。
【0138】
(iii)機械的試験
-引張試験およびサイクル試験
機械的試験のための調製では、骨コンパートメントに速硬性エポキシ樹脂(Selleys Araldite 5分、オーストラリア)を注意深く充填し、骨コンパートメントを硬化し、次いで、空気圧グリップに挿入した。これにより、靭帯-骨コンパートメント界面における非可逆圧縮および応力集中を防止した。残存樹脂が骨コンパートメント中に含まれ、靭帯繊維との接触がないことを確かにするように注意を払った。検体を室温で一夜乾燥した。サンプルを、確実に靭帯繊維がグリップの縦軸と平行になるようにして、グリップ中に入れた。構築物の引張機械的特性を、500Nロードセルを備えた5848
Instronマイクロ試験機を使用して室温において20mm/分のクロスヘッド速度で測定した。5反復試験サンプルを各設計について試験し、線形硬度(F/伸び曲線の初期直線部分から算出)、降伏力および極限力ならびにひずみを算出した。サイクル試験を、0.1Nの予荷重の印加によって37℃においてPBS中で行った。それから、サンプルを、0~5%または0~10%ひずみの範囲で0.5Hzの周期において1,000連続サイクルに付した。硬度およびピーク時の力の展開を測定し、サイクル数の関数としてプロットした。
【0139】
-圧縮試験
350μmおよび600μm設計の骨コンパートメントを印刷し、5×5mm2正方形に切断した。圧縮特性を、500Nロードセルを備えた5848 Instronマイクロ試験機を使用して室温において0.5mm/分のクロスヘッド速度で評価した。圧縮弾性率を、応力対ひずみ曲線の初期直線曲線(n=5)から決定した。
【0140】
(iv)細胞培養および細胞シート(CS)の作製
5~7回継代したヒト骨髄間葉系幹細胞(bmMSC)(PT-2501、Lonza
Australia社、オーストラリア国ビクトリア州マウントウェイブレイ)をこの実験に使用した。細胞培養培地は、10%ウシ胎仔血清、1%ペニシリンストレプトマイシン(Gipco社)、MEM非必須アミノ酸(Gibco社)を含み、100μg/mLのL-アスコルビン酸2-リン酸塩(Sigma-Aldrich社)を含むかまたは含まないダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco社)の組合せであった。細
胞シートを作製するために、bmMSCを、12ウェルプレートにウェル当たり40,000細胞で播種し、アスコルビン酸を含む培地中、21日間(37℃、5%CO2)培養した。この時点で、成熟細胞シートは、ウェルの壁から目に見えるほどに退縮した。比較の目的のため、増殖培地(1%ペニシリンストレプトマイシン(Gipco社)に更にMEM非必須アミノ酸を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco社))中でも培養した。培地を2日毎に交換した。21日目、サンプルを様々な実験用に使用した:免疫蛍光検査用に4%パラホルムアルデヒドで固定するか、DNAおよびコラーゲン定量用に-80℃で凍結するか、または生死分析用に直ぐに回収もしくは異所性移植前のスキャフォールド播種用に使用するかのいずれかであった。
【0141】
(v)細胞シート特性決定
-DNAおよびコラーゲン定量
DNA定量を、Quant-iTTM PicoGreen(登録商標) dsDNAキット(Invitrogen社)を使用して、プロトコールに従って行った(各群n=6)。サンプルの蛍光を、蛍光プレートリーダー(BMG POLARstar Omega、独国オッテンベルク)を使用して、480nmの励起波長および480nmおよび520nmの発光波長において測定した。同様に、コラーゲン定量を、ヒドロキシプロリン比色分析キット(Biovision社)を使用して、プロトコールに従って行った(各群n=6)。サンプルの吸光度を、プレートリーダー(BMG POLARstar Omega、独国オッテンベルク)を使用して、560nmの波長において評価した。
【0142】
-免疫蛍光検査
蛍光免疫染色を行い、サンプル中の細胞外マトリックスの形態および定量を評価した(染色当たりn=3)。細胞シートを、1%BSA、22.52mg/mLのPBST中のグリシンと共に30分間インキュベートして、抗体の非特異的結合を遮断した。コラーゲン1a(Santa Cruz Biotechnology社;1:250)、コラーゲンIII(Abcam社;1:200)、エラスチン(Abcam社;1:200)、テネイシン(Abcam社;1:500)およびアグリカン(Abcam社;1:50)に対して一次抗体を1%BSA中それぞれに応じて希釈し、サンプルを4℃で一夜インキュベートした。サンプルをPBSで3回洗浄し、30分間それぞれの二次抗体(1:200;Invitrogen社、ヤギ抗マウスIgG alexa fluor、Santa Cruz Biotechnology社、ヤギ抗ウサギPE)と共にさらにインキュベートした。それから、これらを、HOECHST(ThermoFischer社;1:1000)で対比染色した後、波長405nm、488nmおよび561nmを用いた共焦点顕微鏡(ニコンAR1+共焦点機)を使用して可視化した。
【0143】
-SEM
上記と同じ方法を使用してSEMを行った。細胞化されたスキャフォールド(設計当たりn=3)を、室温での仕上げ乾燥前に四酸化オスミウム浸潤、脱水およびヘキサメチルジシラザン浸漬を含む標準的プロトコールに従って処理した。上記方法と同様に、BLBスキャフォールドを、顕微鏡下で(EHT=5kV)可視化する前に150秒間、金をスパッタリング蒸着した。
【0144】
(vi)スキャフォールドのインビトロ特性決定
-スキャフォールド製造および滅菌
まず、スキャフォールドを、37℃で30分間、5M NaOH中に浸漬することによりエッチングした後、蒸留水で3回(5分間)洗浄した。次に、スキャフォールドを、室温で30分間、100%エタノール中でインキュベートした後、30分間紫外線下で滅菌した。
【0145】
-細胞シート回収
アスコルビン酸(100μg/mL)と共に培養された5つの細胞シートを使用して、次のプロトコールに従ってBLBスキャフォールドを細胞化した:21日目、培地を各ウェルから取り除き、約100μLを残して細胞シートが乾ききるのを防いだ。滅菌ピンセットを使用して、細胞シートの外側端部を優しく擦り落とし、ウェルの壁から剥離し(
図1A)、次いで、その長軸に沿って2回折り畳んで長方形にし(
図1B)、そうして束を形成した(
図1C)。4つの細胞シートの束をPCLスキャフォールド(背面が上を向いている)の靭帯ストランド間に播種した(
図1CおよびD)。5番目の細胞シートをBLBスキャフォールドの背面上に配置し、したがって、束に折り畳まなかった。剥離された細胞シート上に面する背面を有するBLBスキャフォールドの配置によってこれを行い、次いで、骨および靭帯コンパートメントに巻き付けた(
図1E)。2mLの新しい培地をウェルに添加し、スキャフォールドを37℃、5%CO
2下で4~6時間インキュベートして、細胞シート接着を促進した。
【0146】
-細胞生存率
細胞シートの取り扱いおよびスキャフォールドへの配置に対する影響を、細胞生存率の測定によって評価した。スキャフォールドに5つの細胞シートを播種した後、37℃で、5%CO2下で6時間インキュベートした。播種されたスキャフォールド(設計当たりn=3)およびコントロール、平らな処理なし単一細胞シート(n=3)を、それぞれ、5μg/mLおよび2μg/mLでフルオレセイン二酢酸エステル(FDA)およびヨウ化プロピジウム(PI)で染色した後、488nmおよび561nmにおいて共焦点顕微鏡(ニコンAR1+共焦点機)を使用して可視化した。
【0147】
(vii)インビボ異所性移植
BLB構築物の再生能を、げっ歯類皮下移植モデルを使用して評価した。臨床背景で舟状骨および月状骨において起こる治癒イベントを再利用するために、骨形成キュー(大腸菌(Genscript社、香港)内で産生された組換え骨形成タンパク質2、BMP-2)を負荷されたヘパリン化されたゼラチン-ヒアルロン酸ゲル(HyStemTM-HP、Sigma Aldrich社)を使用して関連骨コンパートメント中に骨形成を行った。
【0148】
-BLBスキャフォールド製造:
6つの異なる群をインビボ試験のために作成した;1)350μmBLBスキャフォールド(350μmコントロール)、2)骨コンパートメント内にBMP-2を含む350μmBLBスキャフォールド(350μmBMP)、3)骨コンパートメント内にBMP-2を含み、靭帯コンパートメント内に細胞シート(CS)を含む350μmBLBスキャフォールド(350μmBMP-CS)、4)600μmBLBスキャフォールド(600μmコントロール)、5)骨コンパートメント内にBMP-2を含む600μmBLBスキャフォールド(600μmBMP)、骨コンパートメント内にBMP-2を含み、靭帯コンパートメント内に細胞シート(CS)を含む600μmBLBスキャフォールド(600μmBMP-CS)。
【0149】
コントロール群(350μmコントロールおよび600μmコントロール)のため、製造者説明書に従って1%(wt/volハイドロゲル組成物に達するようにBMP-2なしで25μLのヘパリン化されたゼラチン-ヒアルロン酸ハイドロゲルを再構成し、骨コンパートメントの各々に注意深く分注した(
図1F)。スキャフォールドを、37℃、5%CO
2下で約45分間インキュベートして、ゲルを硬化させた後移植した。BMP-2を含むサンプルを同じ方法を使用して作製し、25μgの組換えヒトBMP-2を、1%ハイドロゲル濃度をなお維持しながら25μLのハイドロゲル中に組み込んだ。検体を播種された細胞シートにおいて培地の存在を避けるために、200μLピペットを使用して
、骨コンパートメントからいずれの液体も取り除いた。これにより、BMP-2を負荷したハイドロゲルの注射が可能となった。靭帯コンパートメント上に暖かい培地の20μLの液滴を入れることにより、10分毎に細胞シートに定期的に水分補給した。
【0150】
-動物モデルおよび動物飼育
動物研究センター(西オーストラリア)から8週齢胸腺欠損ヌードCBH-rnu/Arcラット(n=6)を7日間環境に慣らした後、外科手術を行った。全実験は、グリフィス大学の動物実験倫理の承認を受け(免疫無防備状態のラットにおける細胞担持ポリカプロラクトンスキャフォールドの靭帯再生の可能性、承認番号DOH/04/15/AEC)、実験は科学目的のための動物飼育および使用のオーストラリア規範を遵守していた。
【0151】
-異所性移植
Keflin(登録商標)(セファロチンナトリウム)20mg/kg、ゲンタマイシン5mg/kgおよびブプレノルフィン0.01~0.05mg/kgの皮下注射を使用して手術前に、予防の抗生物質保護および手術前鎮痛を行った。動物を腹臥位に置き、全身麻酔(作用のため1~3%吸入薬(導入のために5%以下))を、Mediquipイソフルラン気化器を用いて投与した。手術野を剪毛し、ベータダインで消毒して6表層切開を行った。ブラントディセクターを使用してスキャフォールドに装着させるのに充分深い皮下組織中にポケットを作製した。スキャフォールドを無作為に割り当て、ポケットに挿入した。4-0ナイロン縫合糸を使用して傷を閉じ、ベータダインを使用して傷口を消毒した。純酸素を使用して動物の復活を支援した。手術後に、マルチモーダルオピオイド(ブプレノルフィン0.01~0.05mg/kg)およびNSAID(カルプロフェン4~5mg/kg)を併用して皮下に投与して疼痛緩和した。7日間毎日、その後は毎週1回定期的に、創傷治癒の進行に関してラットをモニターした。
【0152】
-動物犠牲およびサンプル回収
2週および8週の時点で、ラット(時点当たりn=3)を犠牲にし、スキャフォールドを回収し、24時間4%パラホルムアルデヒド中に直ぐに固定した後、その後の分析のためにPBS中に入れた。
【0153】
(viii)マイクロCT
サンプルを、マイクロCT(μCT40(SCANCO Medical AG、スイス国ブリュッティーゼレン)によって、電圧55kVp、電流120μA、電力8W、積分時間300ミリ秒およびボクセルサイズ20μmで分析して、骨ミネラル化を決定した。マイクロCTソフトウェアを使用して、3D画像を再構成した。
【0154】
(ix)組織学的検査
-ヘマトキシリン&エオジン(H&E)
脱水および組織プロセッサー(Shandon(商標)Excelsion ES、Thermo Scientific社、米国ウォルサム)を使用したパラフィン包埋前に室温で3週間、5M EDTAを使用してサンプルを脱灰した。構築物の5μm縦軸方向のスライスを薄片にして、ポリリジン被覆スライド上に集めた。これらのサンプルを、キシレンを用いて脱パラフィン化した後、エタノール濃度を減らしていき再水和した。薄片をH&Eで染色し、Aperio AT2 Console(Leica Biosystems Imaging Inc.、米国)で走査した。
【0155】
骨形態計測・組織形態計測一式を使用して、組織形態計測を行った。骨ミネラル化によって占有された表面積、早期段階のミネラル化および靭帯コンパートメントにおける繊維アライメントを、種々のスキャフォールド設計の性能を定量するために測定した。
【0156】
(x)統計
ウェルチ補正を使用した対応のないパラメトリック両側t検定を、引張試験、圧縮試験、スキャフォールド多孔性、DNAおよびコラーゲン定量化結果について行った。2より多くの平均値を比較するとき、1元配置分散分析を細胞生存率において統計的有意性を判定するために使用した。インビボ試験から得たデータ(μCtおよび組織形態計測)を、ウィンドウズバージョン21.0用IBM SPSS Statistics(IBM Corporation 2012(コピーライト)、米国ニューヨーク州アーモンク)を使用して一般化推定方程式を使用し、クラスター変数として個々の動物を使用して解析した。全ての2要因の交互作用に加えて説明変数として、時間および群を使用した。最も簡潔なモデルに達するために後方変数減少法を使用した。Ap≦0.05を、統計的有意差があるとみなした。
【0157】
-結果
(i)スキャフォールド形態
スキャフォールドの形態をSEMによって調査し、これにより、構築物内の2つの構築的に高度に異なる要素の産生が明らかになり;BLBスキャフォールドの2つの末端(骨コンパートメント)は典型的な交互の0/90角度の高分子支柱層から成り(
図2AおよびE)、一方、本発明者らの印刷設計に従った靭帯コンパートメントは巨視的溝を造る整列および重ね合った支柱から成った(
図2BおよびF)。付加製造は様々な形状および寸法の造形を理論的には可能とするが、内部多孔室構造または支柱レイアウトがスキャフォールド印刷の間ずっと変わることは困難である(challenging)。この二重アーキテクチャーを達成するために、社内Gコード製造ソフトウェアを使用して、スキャフォールドの内部レイアウトのマニュアル修正を可能にし、その結果、整列された支柱を作製した。重要なことに、靭帯コンパートメントを構成する支柱を骨コンパートメント内に完全に組込み、したがって、多孔質界面を維持しながら機械的に強い接着を確保する。
【0158】
この意味では、BLBスキャフォールドは、2つの構築的に異なる部分を備える二層スキャフォールドであるが、一体化した3D印刷構築物と同様な連続的方法で製造する。SEM画像は、支柱径は420μm±24.49μm(n=5)であり、350μmおよび600μm設計の両方に関して層間に充分な融着があり(
図2CおよびH、四角矢印)、それにより、層間の強力な相互関係を確保することを示した。靭帯コンパートメント内のmPCL支柱は、いくつかのたるみが観察されたが、幅は均一であった(
図2BおよびF、白色矢印)。これは、mPCLはその融点以上で充分に押出され、したがって、堆積される場合に半溶融状態であったという事実によって説明することができる。さらに、靭帯コンパートメントの長さ以上の隣接する支持がなく、したがって、その結果、フィラメントのたるみとなった。これは設計固有の限界であったが、この現象は少数の支柱に限定され、スキャフォールドの機能を損なわなかった。
【0159】
スキャフォールドのマイクロCT分析は、BLBスキャフォールドの空隙率の決定を可能とした(
図3)。600μm設計は空隙率70%という結果であり、350μm設計は空隙率約60%を示した。350μm設計はより小さな繊維間隔のせいで印刷された単位体積当たりより多くの材料を有するので、これは予想された結果であった。
【0160】
(ii)機械的特性
構築物の機械的特性を、準静的およびサイクル負荷下、引張および圧縮の両方において評価した。3D印刷スキャフォールドは、初期直線領域、その後、降伏点および塑性変形領域から成る高分子材料の典型的な力-ひずみ曲線を示した(
図4A)。予想通りに、350μm BLBスキャフォールドは降伏力約65Nおよび極限力70Nを有する最も強い構築物であったが、600μmは、それぞれ、40Nおよび50Nの降伏力および極限
力を示した。同様に、より小さい多孔性BLBスキャフォールドは600μm BLBスキャフォールドより有意に硬く、それぞれ、130N/mmおよび90N/mmであった。表1は、準静的引張試験を測定した機械的パラメーターを一覧にしており、これらをヒト天然組織の特性と比較している。両方の構築物の極限力は解剖学的SLIL複合体より実質的に低いことは明白である。しかしながら、靭帯が耐える生理的負荷は20Nの範囲であり、まだBLBスキャフォールドの弾性域内である。
【0161】
【0162】
-骨コンパートメントの圧縮試験
骨コンパートメントの機械的圧縮挙動も調査し(
図5)、スキャフォールドの内部微細構造変化にもかかわらず、2つの設計(350μm:29.03±3.35MPa;600μm:26.94±2.37MPa(p>0.05))の圧縮弾性率の間に有意な差はないことが明らかになった。
【0163】
(iii)サイクル試験
舟状月状骨靭帯の機能的再生に関してBLBスキャフォールドの適合性をさらに評価するために、機械的挙動を動的条件下で調査した。正常動作の間に天然組織が耐える生理的伸びをある程度代表するように、試験パラメーター、0.5Hzにおいて5%および10%ひずみを選択した。350μmおよび600μmの両設計について、スキャフォールドは、変形ヒステリシスの重ね合わせによって
図6に示されているように高レベルの回復を示した。塑性変形の累積は、実験の1000を超えるサイクルを示されなかった。興味深いことに、スキャフォールドは、ひずみ0に戻ると同時にある程度の圧縮に耐えた。これは、重合体は伸びから完全に回復せず、スキャフォールドはある程度の圧縮力に耐えたことを示している。特に、圧縮レベルは、印加されたひずみ(5%または10%)に関係なく所与の設計に対して変化しなかったが、より硬い構築物(350μm)はより高レベルの圧縮を経験した。ピーク時の力の展開をサイクル数に対してプロットし、これは、第一サイクル後にピーク時の力は急速に低下し、その後比較的一定のままであり、BLB構築物においてひずみ誘起緩和が起こったことを示すことを実証した(
図7)。同様に、構築物硬度を評価し、これは、350μmおよび600μm設計間の異なる挙動を明らかにした(
図7)。事実、より硬い構築物である350μm設計は、5%および10%ひずみの両方においてこのパラメーターの減少パーセンテージは小さいので、その硬度をより保持することができた(表2)。しかしながら、より硬くない構築物(600μm)は、両方
のひずみに対して約20~30%の硬度低下を示した。これは、生体力学的観点から、350μmは、SLIL再構築のより優れた候補である可能性を秘めていることを示している。構築物の軟化にもかかわらず、ピーク時の力は天然靭帯が経験した生理的負荷の範囲内のままであったことも注目すべきである。
【0164】
【0165】
(iv)細胞シート特性決定
細胞シート技術利用の1つのもっともな利点は、細胞培養期間延長が移植前に成熟および細胞自体のECMの堆積増大を促進することである。そのようなものとして、現在の試験に利用される細胞シートは、関連する細胞数およびコラーゲン堆積の指標としてDNA含有量の測定によって特性を決定された(
図8)。アスコルビン酸添加培地において培養されたヒトbmMSC細胞シートのDNA総含有量およびコラーゲン合成は、増殖培地中で培養されたコントロール細胞より有意に高い。コントロールサンプルで検出されたDNA量が少ないのは、21日の培養期間にわたる増殖減少および細胞死増加によるものであり、DNAは各培地交換と共に廃棄される。コラーゲンIa、コラーゲンIII、エラスチン、テネイシンCおよびアグリカンの免疫蛍光法は、+AA群における腓骨構造(fibular structure)を含む細胞外マトリックスの高密度および均一な分布を示した(
図9)。これは、アスコルビン酸なしで培養されたコントロール群において見られなかった。アイソタイプおよび二次抗体コントロールは、最小バックグラウンドを示すだけであった。
【0166】
(v)細胞化された構築物のアセンブリ
生死アッセイを行い、細胞シートの機械的回収およびローリングを利用して、細胞生存率に対するアセンブリ方法の影響を評価した(
図10)。
【0167】
図10A~Cは、大部分の細胞が生存していることを示す共焦点レーザー顕微鏡画像を示す(緑色染色)。未回収コントロール細胞シートは、生細胞が90%を超える最も高い細胞生存率を有するが、両方の設計の播種された細胞シートにおいては、約80%の生細胞まで僅かに減少するだけであった。靭帯コンパートメントの背側面上に配置された束ねられた細胞シートおよび平らな細胞シート間に細胞生存率の統計的に有意な差はなく、設計に関係なくこのことは観察された。構築物における細胞シートおよびコントロール細胞シート間に細胞生存率の統計的に有意な差はあった(p<0.05)(
図10D)。
【0168】
(vi)SEM(細胞化された構築物)
細胞化されたスキャフォールドのSEM可視化は、細胞シートにおける広範囲なECMマトリックスを図示した(
図11)。
【0169】
(vii)異所性移植
BLB構築物の再生能力を、異所的モデルを使用して、胸腺欠損ラットにおいて異所的に評価した。細胞化された構築物を6時間後アセンブリに移植し、軟組織再生に加えて骨形成を移植後2週目および8週目に測定した。
【0170】
-骨ミネラル化
構築物内の骨形成の評価をマイクロコンピューテッドトモグラフィー(マイクロCT法)によって行った。これは、移植後2週目で検出される骨はないが、移植後8週目で著しい量のミネラル化された組織が観察された(
図12)。予想通り、新しい骨は3D印刷構造のパターンに従い、高分子フィラメントの周囲の空間に形成し(
図12A)、より重要なことに、骨コンパートメントに限局されていた。これは、BMP-2送達方法は、靭帯コンパートメント内に骨形成をもたらさず、したがって、多孔質界面の存在にもかかわらず高レベルのコンパートメント化は行われたことを示すことを実証した。移植後8週目の骨形成の定量は、2つの設計間に統計的に有意な差はなかったことを明らかにした。同様に、細胞シートの存在は、ミネラル化の程度に影響を及ぼさなかった(
図12C)。
【0171】
(viii)組織学的検査
組織学的検査は、このタイプのスキャフォールドおよび細孔径に関して予想されるように、両方のコンパートメントは移植後早ければ2週目で多量の組織浸潤を有することを示した。後の時点における靭帯コンパートメント中で観察された骨形成の痕跡はないので、スキャフォールドコンパートメント化も確認された(
図13)。
【0172】
-骨コンパートメント
BMP-2を担持するいくつかのサンプルにおいていくつかのミネラル化の早期徴候が特定されたが、移植後2週目において骨形成は存在しなかった。事実、コラーゲンマトリックス中に豊富に存在する高密度細胞領域が観察され(
図13)、ミネラル化の早期段階の特徴である。脂肪髄も骨コンパートメント中に分散していた。8週目(
図14)、マイクロCT所見を実証するBMP-2で処置されたサンプルにおいて骨コンパートメントに局在したいくつかの骨形成があった。
【0173】
しかしながら、この後の時点においてBMP群とBMP-CS群との間または350μm設計と600μm設計との間の骨形成において統計的有意差はなかった(
図15)。
【0174】
-靭帯コンパートメント
靭帯コンパートメントは迅速に血管新生し、2週目および8週目H&E薄片における赤血球を含む血管構造物の存在によって示されるように依然として血管新生していた(
図13および14、*によって示されている)。両方の時点において、細胞シートの存在は、
図13および14に示されているようにより密度が高く、コラーゲンに富み、より構造化されている再生された組織の形態に対して著しい影響を及ぼした。これは、細胞化された構築物の靭帯コンパートメントの中央部分における整列されたコラーゲン繊維も存在により最もよく反映された。これは、組織再生中のスキャフォールドアーキテクチャーの繊維誘導特性に脚光を当てた。全体的に見て、2週目における全群間の靭帯アライメントの程度に有意差はなかった(
図15)。しかしながら、細胞シートを含む2つの設計間に有意差はなかったが、他の群と比較した場合、8週目における350μmおよび600μm BMP-CS群において、著しく高い程度の靭帯アライメントが観察された(
図15)。これは、スキャフォールドの繊維誘導能力および細胞シートの存在が新しく形成された靭
帯に対して相乗的に働くことを示した。場合によっては、整列された繊維は各骨コンパートメント内に挿入し、それにより、連続的骨-靭帯様界面相を形成した(
図16)。
【0175】
(ix)スキャフォールド構築物の物理的特性
互いに対して異なる角度で配置された個々の層を備える3D印刷されたスキャフォールドの画像を
図17および18に示す。空隙率(表3)機械的試験(準静的、引張)を含む様々な試験を行った:
-硬度(表4、
図19)
-極限力(表5、
図20)
-降伏力(表6、
図21)
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
-考察
SLIL傷害に対する信頼ある臨床的解決方法がないことは、かなりの健康上の負担の一因となる。この領域における再生医療ストラテジーの不足は、取込み成功を達成するために、生物レベルおよび生体力学的レベルの両方においてこのタイプの再構築に対するティッシュ・エンジニアド・コンストラクト(TEC)のチャレンジに脚光が当てられている。本研究において開発されたスキャフォールドを、生理的負荷を耐えることができる構築物の製造によって生体力学的要件に対処しながら、成熟した細胞外マトリックスを含む細胞要素を使用して再生を増大するように設計した。
【0180】
この研究は、背側SLIL再構築のために付加製造および細胞シート技術を組み合わせて、多相BLB多相構築物の開発を特徴とする。再構築手術は手首の安定性の主な要因であるSLILの背側部分を置き換えることを目的とするので、このスキャフォールドの潜在的利用は臨床行為と強く合致する。さらに、移植片の置換術として組織工学手法を使用することは、ドナー部位罹患率の問題点を軽減する。臨床解釈できること(clinical translatability)およびこの新規手法から利益を得ることができるより多数の患者は、合成BLBスキャフォールドの作製および利用を証明している。
【0181】
他の整形用途にTECを開発することを目的とする多数の研究にもかかわらず、この特定領域にあるチャレンジに脚光を当てている手および手首の骨、靭帯および腱の再生のための組織工学の応用は少ない。近位側指節間関節側副靭帯の脱細胞化された死体同種移植は、移植片有効性、解剖学的寸法差および感染症伝播の可能性を含む制限がある。加えて、このような同種移植の再生能力および再細胞化能力は未知である。
【0182】
インビトロ培養中に発現された成熟したECMネットワーク内の細胞の移植は、構築物内の宿主細胞浸潤および分化に関する限界をかなり回避することができる。細胞シート技術は、細胞自体の細胞外マトリックスの堆積が再生された組織の品質を改善する長期インビトロ成熟ステップによって特定の分化系統に向かって単分化される(committed towards)細胞を送達する有効な方法である。この研究は、移植後3日目の細胞死ピークを特徴とする移植の早期において細胞シートを著しく修復し、組織成熟と調和して後期において好中球浸潤増加、次いで、コラーゲン高密度化を伴うことを示した。加えて、移植された細胞の存在は組織工学移植片内で徐々に小さくなるが、総細胞数は手術後28日目で増加し、このより進行した治癒過程期において新しい細胞の浸潤を示唆した。これは、細胞は、宿主細胞の漸増ならびに移植片成熟および治癒が起こるのに必要な適切なECM鋳型の生成の両方に活発に関与したことを示している。同様に、本発明者らのBLB構築物の異所性移植は、移植後早ければ2週間で完全組織コロニー形成があり、その後、靭帯コンパ
ートメント内の組織アライメント増加によって実証されるように細胞シートが著しく成熟することを明らかにした。したがって、細胞シートは同様な役割;すなわち、ECM構成成分による走化性および細胞誘導性の両方を発揮したという仮説は理にかなっている。
【0183】
細胞シートの存在に加えて、スキャフォールドの設計は、細胞シート内の検体のための靭帯コンパートメント内の組織アライメントの僅かな増加によって示されるように、組織誘導特性を実証した。本明細書に示されているように、スキャフォールドのアーキテクチャーは、組織再生の誘導において重要な役割を果たす。事実、最新のスキャフォールド製造技術の開発は、内部多孔質組織を制御して組織特異的ニーズに合わせることができる複雑な多相スキャフォールドの製作を可能とした。従来、これらの多相スキャフォールドのコンパートメントは別々に製作された後に様々な方法を使用して構築される。これは、異なるコンパートメントの界面における弱い接着をもたらし、多相構築物が過剰な生体力学的疲労なしで生理的負荷を耐える能力に影響を及ぼすことがある。本ストラテジーでは、骨および靭帯コンパートメントを連続式付加製造方法により作製し、多孔質だが完全集積された界面の形成を可能とする。このストラテジーは、靭帯コンパートメントの高分子フィラメントを骨コンパートメントの隣接する層中に完全に固着して、多数の融着点を可能とし、したがって、優れた生体力学的安定性を提供することを保証する。これは、BLBスキャフォールドが反復される機械的サイクル下で骨-靭帯界面における過剰な疲労も剥離もなく反復付加に耐える能力によって最もよく例証された。BLB設計のもう1つの重要な耐用は、連続式印刷から得られたコンパートメント間の多孔質界面の作製に由来し、骨コンパートメントへの靭帯の集積に対して重要な影響を有した。天然靭帯では、コラーゲン繊維は月状骨および舟状骨の両方に横方向に配向し挿入され、手首の湾曲およびねじれ運動中に力の伝達を可能とする。BLBの長軸に整列され、骨コンパートメントに挿入されたコラーゲン組織の形成を含む本発明者らの構築物において、このような組織は部分的に観察された。新しく形成された骨への直接的挿入は形成された骨の小さい体積のせいで観察されなかったが、これらの結果は、コンパートメント界面において硬組織と軟組織との間の相互情報伝達を可能としながら、BLB構築物が靭帯コンパートメントにおける組織再生を誘導する可能性を例証している。
【0184】
この研究は、傷害後、背側SLILを再構築する臨床応用の可能性のための付加製造を使用して多相BLBスキャフォールドを製造することは実行可能であることを実証した。動物モデルの天然靭帯と類似の構造的特性および機械的特性を有するこれらの対応するコンパートメントにおいて、骨および靭帯組織を形成した。人工的スキャフォールドは、舟状月状骨再構築の不安定性に対する現行技術の代替物を提供し得る。
【0185】
実施例2:舟状月状骨靭帯再構築のためのウサギ膝における新規3D印刷された多相スキャフォールドのインビボ移植および特性決定
【0186】
-概要
(i)目的
多相骨-靭帯-骨(BLB)スキャフォールド(背側舟状月状骨靭帯(SLIL)を模倣)のウサギへの移植。ウサギ内側側副靭帯(MCL)は背側SLILと同様な解剖学的特性を有し、したがって、この新規スキャフォールドをインビボで試験するための動物モデルとして使用することができる。このスキャフォールドは複合組織の再構築を促進し、臨床用途で移植することができる。
【0187】
(ii)方法
SLILの背側要素からモデル化された多相骨-靭帯-骨スキャフォールドを、医療グレードのポリカプロラクトン(PCL)で3D印刷した。これらは、死体検体から研究された天然靭帯のアーキテクチャーを模倣する整列されたPCL繊維によって架橋された2
つの骨コンパートメントを備えるBLB構築物を模倣した。外科的移植のため、ウサギの天然MCLを取り出し、5mm穿孔器を使用して大腿骨および脛骨の靭帯の付着点および元の位置にドリルで穴を開けた。スキャフォールドの骨コンパートメントを穴中に圧入して所定位置にステープルで留めた。ウサギ膝関節を、1.4mm Kワイヤーを使用して4週間曲げて固定した(n=9)後、さらに4週間モビライゼーションを行った(n=9)。全部で、18サンプルを18羽のウサギに移植し、4週目および8週目において回収した。機械的引張試験(群当たりn=5)および構築物のインビボ特性決定を行った。
【0188】
(iii)結果
インビボで4週および8週間後、スキャフォールドは無処置のままであった。BLBスキャフォールドの機械的試験は、これらが正常なSLILの生理学的な力に耐えることができることを示した。膝関節の4週間のモビライゼーション後、スキャフォールドは強度が向上した。ウサギにおけるインビボ研究は、スキャフォールドは生体適合性があり、良好な組織集積および血管新生を示した。4週目および8週目に、骨形成および靭帯修復は対応するコンパートメントにおいて観察された。
【0189】
-材料および方法
(i)臨床応用目的
-再構築のために使用することができるスキャフォールドのみの製品(充分な生体力学的特性を有する)を作製した。
【0190】
【0191】
(iii)術前管理および麻酔
1.動物を25ゲージ針の注射器を使用して、ケタミン(35mg/kg)およびキシラジン(5mg/kg)の筋肉内注射により麻酔した。ウサギを、外科手術中挿管した。
【0192】
2.25ゲージ針の注射器を用いてKefzol(登録商標)(セファゾリンナトリウム)20mg/kgおよびゲンタマイシン5mg/kgの皮下注射を使用して、手術前に予防的抗生物質保護を行った。
【0193】
3.予防的鎮痛を行った(メロキシカム、1mg/kg、皮下)。
【0194】
4.抗ムスカリン薬(グリコピロレート、0.004mg/kg、筋肉内)を麻酔前に投与し、唾液分泌、および徐脈のリスクを低減した。
【0195】
5.イソフルラン(Isofluorane)0.5~3%吸入薬を使用して手術の間ずっと麻酔を維持した。提案された研究において自然呼吸する麻酔されたウサギに、適切な大きさのノーズコーンおよびげっ歯類タイプ呼吸回路による酸素補充を行った。ウサギに適したノーズコーンをAAS(Advanced Anaesthesia Specialists)より購入し、特にこのプロジェクト用に使用した。
【0196】
6.麻酔の間(必要に応じて)、静脈内体液の投与のため、静脈アクセス(22G血管カテーテル)をウサギ耳の辺縁静脈により行った。[注射器ポンプを使用して2.5~5mL生理食塩水/kg/時間]
【0197】
7.手術中体温を維持するために、ウサギを暖かいパッドの上に配置した。
【0198】
(iv)スキャフォールド製造
ウサギスキャフォールド靭帯コンパートメントは10mmである(膝関節を架橋するのび必要な伸び)(
図22)。
スキャフォールドエッチング(PCLの疎水性を低下させるため)
1.37℃(水浴)で30分間、5M NaOH中にスキャフォールドを入れる。
2.水がスキャフォールドを容易に貫通するまで、ミリQ水で洗浄する。
3.スキャフォールドを振盪機プレート上に置き、5分間水中に沈める。
4.水をpHが約7になるまで、捨てて繰り返す。
【0199】
スキャフォールド滅菌(前夜)
1.室温で30分間、100%エタノール中でスキャフォールドをインキュベートする。
2.底部に触れながら(逆さまのU字状に)骨コンパートメントと共にウェル中にスキャフォールドを入れ、1時間紫外線下に置く。
3.フード下に放置して一夜蒸発させる。
【0200】
(v)スキャフォールドアセンブリ
-装置チェックリスト
・ファルコンチューブラック(滅菌ピンセットを置くため)
・滅菌ピンセット ×2
・スキャフォールド
・Hystem-C細胞培養キット(Sigma-Aldrich社)
・ピペット(1000μL、200μL、10μL)+チップ
・滅菌エッペンドルフチューブ
・滅菌メス(チップを切断するため)
・ローラー/振盪プレート(主実験室内)
・6ウェルプレート(ロードされたスキャフォールドを作製/輸送するために使用)
【0201】
-Hystem再構成
・HA=670μL脱気水(約700μL過剰)
・Gelin=670μL脱気水(約700μL過剰)
1.バイアルを室温まで解凍した。
2.700μLの脱気水をHystem-HA(銀色?バイアル)に添加し、ボルテックスして30分間ローラー上に置いた。
3.700μLの脱気水をGelin(青色バイアル)に添加し、ボルテックスして30分間ローラー上に置いた。
4.Gelinの内容物をHAに添加した。(注:ゲルは非常に粘性であり、測定の場合ピペットチップを切断する)
5.500μL脱気水を架橋剤バイアルに添加した。
6.バイアルをボルテックスして、使用前に5~10分間ローラー上に置いた。
【0202】
【0203】
-スキャフォールドへのゲルの添加
1.スキャフォールドを培地から取り出し、乾燥ウェル中に入れた。
2.200μLピペットを使用して、骨コンパートメントから培地を吸い出した。
3.50μLのコントロールゲルを靭帯コンパートメント中に分注した。
a.底部+上部から25μL
4.12.5μLのコントロールゲルを各骨-靭帯界面相に分注した。
5.40μLのコントロールゲルを切断された200μLピペットチップ中に分注し(溶液は非常に粘性である)、上下にピペット操作をしてゲルを骨コンパートメント中に押し入れた。
a.1つの骨プラグをピンセットで持ち、ゲルをコンパートメントの上部および両側面に分注する。
b.他の側面にも繰り返す。
6.スキャフォールドを、5分間、ウェル間に斜めにして入れる(
図23)。
7.20~30分間、ペトリ皿上に平らに置く(約45分までに移植する)(
図24)。
【0204】
(vi)インビボ移植(35羽のウサギ、約1~1.5時間)-新規外科技術の開発
1.ウサギを横向きに寝る姿勢にして、左膝関節の内側面を注意深く剪毛し、ベータダイン液を塗布して消毒した。右膝関節も剪毛して、滅菌野への毛の混入を防止した。ウサギ膝を、移植のために完全に曲げた。滅菌ドレープをウサギに被せ、手術野上に切り込みを入れた。
2.表層縦方向の切開(15-C刃を使用して)を行い(膝蓋骨位置に合わせて)、皮膚を裏返し、膝関節を露出させた。次の組織層中のいずれもの表層血管を、ジアテルミーを使用して焼灼した。それから、支帯に切り込みを入れて、下にある筋肉から鈍的切開し、注意深く裏返した。
3.Kワイヤー固定
a.1.6mmキルシュナーワイヤーをドライバーに取り付け、脛骨上の脛中央部から大腿骨まで全体にわたって縦方向に挿入して完全に曲げた膝関節を固定した。(先端:軟組織がワイヤーに巻き込まれるのを防ぐように隠す)。Kワイヤーを曲げて、脛骨端部上で曲げるだけでなく、大腿骨上で引っ掛けて、ワイヤーが引き抜かれるのを防ぎ、関節の動きを制限した。
4.天然MCLを暴露し、近位側端部を、メスを使用して大腿骨の内側結節から取り出
した。近位側端部をスキャフォールドに縫合して移植後にさらに固定することができるように、MCLを脛骨に取り付けたままにした(
図25)。
5.5mm穿孔器バー(ストライカー1/4インチドリル)を使用して、MCL結合部位において大腿骨内側結節中のスキャフォールド骨コンパートメントに嵌合するために、1つ中央穴をドリルで開けた(先端:骨と接触する前にバーを開始し、さもないと、バーは表面に滑り落ちる)。(注:洗浄を確実にする)
6.鋳型スキャフォールド(使用して、脛骨上のMCLの遠位側結合に近い遠位側骨窪みの位置を示す)。5mm穿孔器バーを使用して脛骨に中央穴をドリルで開けた。
7.1.8mm円形バー+4mm楕円形バーを使用して表面的に窪みを広げて(膝関節と隣接する骨の表面を削り落とす)スキャフォールドを圧入した。膝関節の半月を保護するためにエレベーター(elevator)を使用する。スキャフォールドのアライメントは天然MCLと同じであることを確実にした。
8.インビボ構築物を、骨コンパートメントをドリルで開けた穴に圧入することによって膝関節に移植した。(注:インビボ構築物の過剰な取り扱いを避ける)
9.ステープル留めのために穴をドリルで開けた(最小のドリルビットを用いて開始)、深さ=10mm。
10.2×8mmステープル(各骨コンパートメントを横切って配置)をドリルで開けた穴に圧入して、大腿骨および脛骨にスキャフォールドを固定した。
11.支帯を引き寄せてスキャフォールドを覆い、単層結節縫合法を使用して4-0バイクリルモノフィラメントで縫合した。
12.皮膚を、単層結節縫合法/連続縫合法を使用して4-0バイクリルモノフィラメント縫合糸で縫合した。
13.領域を生理食塩水で洗浄し、ベータダインで拭いて創傷部を消毒した。
【0205】
(vii)Kワイヤー除去(4週目)
1.手術部位の髪を剪毛し、皮膚を、消毒薬を使用して消毒する。
2.Kワイヤーの大腿骨端部に小さい1cmの切り込みを切開した。
3.Kワイヤーを切断してプライヤーを使用して取り出す。
4.4.0バイクリルモノフィラメント縫合糸を使用して切開部を縫合する。
【0206】
(viii)術後処置
1.手術完了時、キシラジンの効果を回復し、麻酔からの回復を促進するために、Antisedan(登録商標)(アチパメゾール塩酸塩)(0.5~1mg/kg、筋肉内)を各ウサギに投与する。
2.ウサギが完全に回復するまで、ウサギを術後モニターし、術後モニタリング報告書(添付)に全観察結果を記録した。ウサギが意識、神経筋伝導、および気道防御反射を取り戻した場合に、完全に回復したとする。
3.動物が警戒、応答性および覚醒状態に回復し、咽頭反射が回復し、ウサギが歩行するまで、ウサギを常にモニターした。ウサギの心拍数、呼吸数および呼吸リズム、毛細血管再充填時間(CRT)、ならびに粘膜色も正常値に回復するまで常にチェックした。
4.オピオイド(ブプレノルフィン、0.05~0.1mg/kg、8~10時間毎、48時間まで)、トラマドール(25mg/lit、飲用水、術後5日間)、メロキシカム(1mg/kg、経口、術後2日間)の併用を使用して術後多様式の鎮痛を提供した。
5.術後最初の5日間、術後抗生物質を投与した。
6.術後長期チェックの間、手術部位の発赤または膿などのいずれもの炎症の徴候に関して検査することによって、創傷治癒をモニターした。縫合部をモニターして完全に創傷閉鎖したことを確認した。
【0207】
(ix)安楽死およびサンプル回収(4週目および8週目)
1.36動物を、4週および8週の時点でペントバルビタールナトリウム(Letha
barb 150mg/kg、25ゲージ針)を静脈内注射することによって安楽死させた。
2.サンプルから、Kワイヤーを除去した。
3.膝関節(サンプルを含む)を抽出し、パラホルムアルデヒド中で固定した。
【0208】
-結果
図26は、Kワイヤー固定下、ウサギ膝関節(取り出されたMCLおよび移植された多相骨-靭帯-骨スキャフォールド)における新しい骨ミネラル化を示す。
図27は、4週目および8週目の関節における骨再生/ミネラル化をさらに示す。
【0209】
生体力学的試験は、4週目および8週目にスキャフォールドを比較した場合、引張試験の機械的強度は時間とともに著しく増強した (
図28および29)。
【0210】
ひずみマップ(
図30)は、天然MCLは増大したひずみのずっとより濃縮領域を有したことを図示する。より大きな表面積にわたって力を分布しているコントロールスキャフォールドのひずみマップと、これを比較することができる。骨-靭帯界面相において天然MCLと比較して、コントロールスキャフォールドの破壊点は靭帯コンパートメント内に存在する。これは、スキャフォールドの骨-靭帯界面相はかなりの力を耐えるのに充分強いことを示唆する。
【0211】
組織学的検査結果を
図31に示す。
A.天然MCL靭帯(「276天然」)
B.正常ウサギMCLアーキテクチャー
C.コントロールサンプル4週(「336コントロール」)骨コンパートメント間を横切る無処置靭帯繊維をインビボで示す完全スキャフォールド
D.PCL支柱周囲の骨コンパートメント骨ミネラル化
E.靭帯コンパートメント2倍
F.靭帯コンパートメント10倍(いくつかの整列した繊維)
G.8週(「241コントロール」)骨コンパートメント間を横切る無処置靭帯繊維をインビボで示す完全スキャフォールド
H.4Wと比較した場合の8Wにおいて観察されたPCL支柱周囲のより多い骨ミネラル化
I.靭帯コンパートメント2倍
J.靭帯コンパートメント10倍(いくつかの整列した繊維)
【0212】
組織学的検査結果はマイクロCTデータを支持する。
サンプル:
-4週目または8週目に異所性骨形成を有しなかった。
-4週目と比較して8週目にPCL支柱周囲において認められる骨コンパートメントのより多い骨ミネラル化を示した。
-4週目と比較して8週目に靭帯コンパートメントにおいて認められるより多い靭帯アライメントを示した。
【0213】
チャレンジングモデルでは、手首の正常な運動に見られるより大きな生体力学的力で、スキャフォールドは8週目においても破壊されなかった。