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特許7534759抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240807BHJP
   A61K 8/9728 20170101ALI20240807BHJP
   A61K 36/28 20060101ALI20240807BHJP
   A61Q 17/00 20060101ALI20240807BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K8/9728
A61K36/28
A61Q17/00
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018205729
(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公開番号】P2020070258
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-09-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】593012228
【氏名又は名称】株式会社希松
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】澤田 真吾
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 嘉純
(72)【発明者】
【氏名】小松 令以子
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-70610(JP,A)
【文献】特開2003-267822(JP,A)
【文献】特開2003-171310(JP,A)
【文献】特表2017-536093(JP,A)
【文献】特開2005-176610(JP,A)
【文献】特開2002-348245(JP,A)
【文献】特開2006-111541(JP,A)
【文献】Journal of Traditional Chinese Medicine、2012年、32(3)、411-414
【文献】Pharmacognosy Reviews、2013年、7(14)、179-187
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99,36/00-36/9068
A61Q1/00-90/00
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とする抗酸化剤。
【請求項2】
トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とする抗糖化剤。
【請求項3】
トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
【請求項4】
前記乳酸菌が、Lactobacillus plantarumである請求項1~3の何れか一項に記載の剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料に関する。特に、トウキンセンカ花エキスを乳酸菌で発酵した発酵物を有効成分として配合した抗酸化剤、抗糖化剤、および、ヒアルロニダーゼ阻害剤、並びに、発酵物を有効成分として配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
トウキンセンカ(学名:Calendula officinalis 英名:Marigold)は、南ヨーロッパ(地中海沿岸)原産で、花壇や切花用に盛んに栽培される1年草または越年草である。トウキンセンカ花エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化はあるものの、主に、
・カロチノイド類:カロチン、キサントフィル
・サポニン
・トリテルペノイド
・フラボノイド類:クエルセチン
などで構成されている(非特許文献1)。
【0003】
また、トウキンセンカ花エキスは、消炎、鎮痛、清浄、創傷治癒促進、細胞賦活、刺激抑制、育毛、殺菌等の効果を奏することが知られている(非特許文献1参照)。そのため、創傷治癒促進効果(特許文献1参照)、養毛効果(特許文献2参照)、肌荒れ改善効果(特許文献3参照)、抗菌効果(特許文献4参照)、を得ることを目的として、トウキンセンカ花エキスを配合した化粧料も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-91908号公報
【文献】特公平6-6525号公報
【文献】特開2009-215272号公報
【文献】特開2013-256481号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】日光ケミカルズ(2007)、「新化粧品ハンドブック」、I化粧品原料、14.植物・海藻エキス、p378.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、化粧料にトウキンセンカ花エキスを配合することは知られている。しかしながら、化粧料に配合する従来のトウキンセンカ花エキスは、水、エタノール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン等、または、これらの混液を用いて、トウキンセンカの花弁から抽出したエキスをそのまま使用したものしか知られていない。本発明者らは、鋭意研究を行ったところ、トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させることで得られた発酵物は、抗酸化能、抗糖化能、ヒアルロニダーゼ阻害能が、トウキンセンカ花エキスより向上することを新たに見出した。
【0007】
すなわち、本発明の目的は、トウキンセンカ花エキスを乳酸菌で発酵した発酵物を有効成分として配合した抗酸化剤、抗糖化剤、および、ヒアルロニダーゼ阻害剤、並びに、発酵物を有効成分として配合した化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す、抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料に関する。
【0009】
(1)トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とする抗酸化剤。
(2)トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とする抗糖化剤。
(3)トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とするヒアルロニダーゼ阻害剤。
(4)前記乳酸菌が、Lactobacillus plantarumである上記(1)~(3)の何れか一つに記載の剤。
(5)トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合したことを特徴とする化粧料。
【発明の効果】
【0010】
トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させることで得られた発酵物は、抗酸化能、抗糖化能、および、ヒアルロニダーゼ阻害能が、乳酸菌発酵していないトウキンセンカ花エキスより向上する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料について詳しく説明する。
【0012】
本発明の抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤、および、化粧料は、トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物を有効成分として配合することを特徴としている。
【0013】
トウキンセンカ花エキスを乳酸菌により発酵させて得られる発酵物は、以下の工程により製造することができる。
(1)トウキンセンカ花エキス抽出工程
(2)乳酸菌発酵工程
(3)精製工程
【0014】
(1)トウキンセンカ花エキス抽出工程では、トウキンセンカの花弁を溶媒に浸漬することで、花弁中のエキスを溶媒中に抽出した抽出液を作製する。トウキンセンカの花弁は、そのまま用いてもよいし、粉砕したものを用いてもよい。溶媒は、水;エタノール、プロパノールなどの低級アルコール類;グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオールなどのグリコール類;水、低級アルコール類、グリコール類の混液;等が挙げられるが、トウキンセンカの花弁からエキスを抽出することができ、且つ、乳酸菌発酵する時、および、化粧料として人体に使用する時に、悪影響を与えない溶媒であれば特に制限はない。また、溶媒には、必要に応じて乳酸菌の増殖に必要な糖源、栄養素、微量生育因子などを添加してもよい。なお、トウキンセンカ花エキスは、上記の手順で作製してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、トウキンセンカ抽出液-J(丸善製薬社製)、トウキンセンカ抽出液BG-J(丸善製薬社製)、ファルコレックス トウキンセンカ(一丸ファルコス社製)、マリー ゴールド ハーバソル エキス BG(Lipoid Kosmetik AG社製)等が挙げられる。
【0015】
(2)乳酸菌発酵工程では、上記(1)で作製したトウキンセンカ花エキスの抽出液に、予め培養した乳酸菌を植菌し、乳酸菌発酵に好ましい培養条件下で培養することで発酵液を作製する。乳酸菌としては、例えば、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス デルブルッキー(L.delbrueckii)、ラクトバシルス ブレビス(L.brevis)、ラクトバシルス カゼイ(L.casei)等のラクトバシルス(Lactobacillus)属の乳酸菌;ロイコノストック メセンテロイズ(Leuconostocmesenteroides)、ロイコノストック シトレウム(Leuconostoccitreum)等のロイコノストック(Leuconostoc)属の乳酸菌;ストレプトコッカス フェーカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス ピオジェネス(Streptococcus pyogenes)等のストレプトコッカス属の乳酸菌;エンテロコッカス カゼリフラバス(Enterococcus caseliflavus)、エンテロコッカス サルフレウス(Enterococcus sulfreus)等のエンテロコッカス(Enterococcus)属の乳酸菌;ラクトコッカス プランタラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス ラフィノラクティス(Lactococcus rafinolactis)等のラクトコッカス属の乳酸菌;ペディオコッカス ダムノサス(Pediococcusdamnosus)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等のペディオコッカス(Pediococcus)属の乳酸菌、等が挙げられる。それら乳酸菌のうちでも、得られる発酵物の有効性の観点とさらに極度の嫌気性でなく取り扱い易いという点から、ラクトバシルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、および、ラクトバシルス デルブルッキー(L.delbrueckii)が好ましいが、勿論限定されるわけではない。
【0016】
乳酸菌の培養培地としては、乳酸菌を培養することができれば特に制限はないが、例えば、乳酸菌全体の良好な生育を示す培地として開発されたMRS培地を用いることが出来る。(MRS培地組成:ペプトン 10g、牛肉エキス 10g、酵母エキス 5g、グルコース 20g、Tween80 1g、K2HPO4 2g、酢酸ナトリウム 5g、クエン酸二アンモニウム 2g、MgSO4・7H2O 0.2g、MnSO4・nH2O 0.05g、精製水1L)
【0017】
乳酸菌の発酵には、上記MRS培地以外の合成培地を用いてもよい。合成培地の培地組成としては、最低限の炭素源と窒素源とリン源を含んでいれば良い。炭素源としては、リボース、アラビノース、キシロース、グルコース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、ラムノース、等の単糖類、シュクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、等の二糖類、またラフィノース、マルトトリオース等の三糖類を用いることができる。これらから1種以上含有していれば良い。窒素源としては、尿素、硝酸塩として硝酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、アンモニウム塩として硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、また、アミノ酸として、トリプトファン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、バリン、イソロイシン、ロイシン、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、セリン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、プロリン、チロシン等の窒素含有化合物を用いることができ、これらから1種以上含有していれば良い。リン源としては、リン酸塩を用いることが出来、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素カリウム、リン酸アンモニウムを用いることができ、これらから1種以上含有していれば良い。
【0018】
また、合成培地には、ビタミン源、ミネラル源を追加してもよい。ビタミン源としては、例えばビオチン、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン、ピリドキシン(ビタミンB6)、パントテン酸、アスコルビン酸、ヨウ酸、シアノコバラミン、イノシトール、ニコチン酸、コリン、カルニチン、パラアミノ安息香酸、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド等を用いることができる。ミネラル源としては、カリウム、カルシウム、マグネシウム、イオウ、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、銅、モリブデン、ナトリウム、ヨウ素、コバルト等が挙げられ、これらを供給できる具体的な成分としては、例えば、硝酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、ホウ酸、硫酸銅、モリブデン酸ナトリウム、三酸化モリブデン、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等の化合物を用いることができる。
【0019】
乳酸菌発酵工程は、乳酸菌の生育至適温度である約25~40℃で、3~50日程度行えばよい。乳酸菌発酵工程は静置で行えば十分であるが、発酵時間の短縮等の為、振とう培養、通気培養を行ってもよい。なお、乳酸菌発酵工程では、トウキンセンカ花エキスの抽出液に上記の培養培地を添加してトウキンセンカ花エキスを発酵してもよいし、或いは、培養培地を添加せずに、トウキンセンカ花エキスの抽出液に予め培養した乳酸菌を植菌しトウキンセンカ花エキスを発酵してもよい。トウキンセンカ花エキスの抽出液には、乳酸菌発酵に必要な最低限の元素が含まれている。
【0020】
(3)精製工程では、上記(2)の乳酸菌発酵工程で得られた発酵液を加熱殺菌し、乳酸菌やトウキンセンカの花弁等の残渣を除去取り除くことで、トウキンセンカ花エキスの発酵物を得ることができる。加熱殺菌は、80~120℃、好ましくは90℃~105℃で、30~60分間程度加熱すればよい。残渣の除去は、使用した乳酸菌を濾過できるサイズのフィルターを用いて濾過、或いは、遠心分離により残渣を沈殿させ、上澄み液を回収すればよい。
【0021】
得られた発酵物は、そのままの状態で化粧料等の原料として用いることもできるが、必要に応じて希釈もしくは濃縮してもよい。また、スプレードライ法、凍結乾燥法などの方法により固体化し、さらに必要に応じて粉砕して粉末状にしたものを発酵物として用いてもよい。
【0022】
得られた発酵物は、発酵前のトウキンセンカ花エキスと比較して、抗酸化能、抗糖化能、および、ヒアルロニダーゼ阻害能が向上する。したがって、得られた発酵物は、該発酵物を有効成分として配合することで、抗酸化剤、抗糖化剤、ヒアルロニダーゼ阻害剤として用いることができる。なお、抗酸化能とは、紫外線などの照射により、活性酸素が発生しても、それらを除去する能力を意味する。抗酸化能を有すると、体内で発生した活性酸素を除去することができ、細胞保護などの観点から老化を抑制できる。また、抗糖化能とは、タンパク質が糖化することを防ぐ能力を意味する。抗糖化能を有すると、アンチエイジング効果が期待できる。更に、ヒアルロニダーゼ阻害能とは、ヒアルロン酸を分解するヒアルロニダーゼの活性を阻害する能力を意味する。ヒアルロニダーゼ阻害能を有すると、肌の水分量の維持がし易くなり、保湿・美肌効果が期待できる。
【0023】
また、得られた発酵物は、化粧料への添加剤として配合することができる。化粧料としては、例えば、乳液、クリーム、ローション、エッセンス、パック、洗顔料などの基礎化粧料;口紅、ファンデーション、リキッドファンデーション、メイクアッププレスドパウダーなどのメイクアップ化粧料;洗顔料、ボディーシャンプー、石けんなどの清浄用化粧料;頭髪化粧料;日焼け・日焼け止め化粧料;爪化粧料;口唇化粧料;入浴用化粧料;等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。得られた発酵物を配合した化粧料は、抗酸化能、抗糖化能、および、ヒアルロニダーゼ阻害能の向上という、複合的な効果を奏することが期待される。
【0024】
得られた発酵物の化粧料に対する配合量は、少なすぎると効果を奏しない。一方、配合量が多くなると、化粧料全体のバランスが崩れる恐れがある。したがって、配合する化粧料の目的に応じて、適宜配合量を決めればよい。
【0025】
本発明の化粧料は、発酵物の他は、通常化粧料に用いられる成分、例えば、水、油性成分、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、色素、香料、その他の添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0026】
油性成分は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、ワセリン、スクワランや流動パラフィン等のような炭化水素系油、ミリスチン酸ミリスチル、イソステアリン酸イソステアリルのようなエステル類、牛脂などの天然油脂、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルやオリーブ油等のトリグリセライド系油、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール等の高級アルコール系油、イソステアリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系油、ミツロウ、カルナバロウ、キャンデリラなどのロウ系油、高重合ジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン系油又はその誘導体、セラミド、コレステロール、フィトステロール、コレステロール又はフィトステロール誘導体、タンパク誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、レシチンなどの油性基剤、ラベンダー油、ユーカリ葉油、ティーツリー葉油、レモングラス油、ハッカ油、メントール、カンフル等の精油、香料又は清涼化剤などが挙げられる。油性成分は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0027】
界面活性剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビトールテトラ脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグリコシド、ポリエーテル変性シリコーン、レシチン及び/又はその誘導体、などの非イオン界面活性剤;脂肪酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン脂肪酸アミン硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、α-スルホン化脂肪酸アルキルエステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩などのアニオン界面活性剤;第四級アンモニウム塩、第一級~第三級脂肪酸アミン塩、トリアルキルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、2-アルキル-1-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリニウム塩、N,N-ジアルキルモルフォルニウム塩、ポリエチレンポリアミン脂肪酸アミド塩などのカチオン界面活性剤;N,N-ジメチル-N-アルキル-N-カルボキシメチルアンモニオベタイン、N,N,N-トリアルキル-N-アルキレンアンモニオカルボキシベタイン、N-アシルアミドプロピル-N′,N′-ジメチル-N′-β-ヒドロキシプロピルアンモニオスルホベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられる。界面活性剤は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0028】
保湿剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びジグリセリンのような多価アルコール;ソルビトール、キシリトール、グルコース、マルトース、エリスリトール及びトレハロースのような糖類;ヒアルロン酸、コラーゲン、エラスチン、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体のような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、及びアルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、及びピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;並びにカミツレエキス、トウキンセンカエキス、ヨクイニンエキス、及びラベンダーエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。保湿剤は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0029】
増粘剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はなく、天然系、半合成系、合成系から適宜選択すればよい。天然系高分子とは、植物もしくは動物由来の多糖類及びたんぱく質や、微生物等による発酵処理や、熱による処理がされたもので、半合成系高分子とは、植物もしくは動物由来の多糖類及びたんぱく質等の天然系高分子を、化学反応を用いて変性させたもので、合成系高分子とは、化学反応を用いて人工的に作られたものである。例えば、アラビアガム、トラガントガム、ガラクタン、グアーガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(ガッソウエキス)、澱粉(コメ、トウモロコシ、馬鈴薯、小麦等に由来するもの)等の植物系天然系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系天然系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン等の微生物系天然系高分子;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子;カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、可溶性デンプン等のデンプン系高分子;アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子;カチオン化グアーガム等のグアーガム系高分子;カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸アミド、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、4級化ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等のビニル系高分子;ポリエチレンオキシド;エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体;ビニルピロリドン・ジメチルアミノエチルメタクリル酸共重合体のカチオン化物;ジメチルジアリルアンモニウムクロリドのホモポリマー、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリルアミド共重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド・アクリル酸共重合体等の第4級アンモニウム塩重合物誘導体等が挙げられる。増粘剤は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0030】
防腐剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)の他、安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p-トルエンスルホン酸及びそれらの塩類、フェノキシエタノール等が挙げられる。パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン類)は、炭素数1~4のアルキル基を有する低級アルキルエステル類であって、パラオキシ安息香酸メチル(メチルパラベン)、パラオキシ安息香酸エチル(エチルパラベン)、パラオキシ安息香酸ブチル(ブチルパラベン)等が含まれる。安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、デヒドロ酢酸、p-トルエンスルホン酸の塩類としては、アルカリ金属塩、特にナトリウム塩が挙げられる。防腐剤は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0031】
紫外線吸収剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、A波(320~400nm)を吸収する紫外線吸収剤、B波(290~320nm)を吸収する紫外線吸収剤、AB波を吸収する紫外線吸収剤が挙げられる。これら紫外線吸収剤は、公知のものを用いればよい。また、紫外線吸収剤は、化粧料に直接配合してもよいし、紫外線吸収剤をカプセル化し、カプセルを化粧料に分散してもよい。
【0032】
紫外線散乱剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化鉄などが挙げられる。紫外線散乱剤は、単独の微粒子粉体として配合される以外に、例えば、雲母やタルク等の体質顔料粉体上に担持されたもの、ポリメチルメタクリレート等の球状有機粉体やシリカ等の球状無機粉体の表面に担持されたもの、または微粒子金属酸化物の格子欠陥中に鉄等の他の金属を導入したもの等と複合化された状態で用いることもできる。紫外線散乱剤は、1種でも良いし、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0033】
さらに必要ならば、本発明で用いる発酵物の作用効果及び特長を損なわない範囲で、他の活性成分(美白剤、皮膚老化防止・肌荒れ改善剤、抗炎症剤等)を配合してもよく、例えば美白剤であれば、トラネキサム酸及びその誘導体、t-シクロアミノ酸誘導体、コウジ酸及びその誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、ハイドロキノン誘導体、エラグ酸及びその誘導体、レゾルシノール誘導体、胎盤抽出物、システイン、ソウハクヒ抽出物、ユキノシタ抽出物、ハマメリス抽出物、イタドリ抽出物、甘草抽出物、ゲンノショウコ抽出物、ナツメ抽出物、シャクヤク抽出物、トウキ抽出物、モモ抽出物、緑藻類、紅藻類又は褐藻類の海藻の抽出物、リノール酸及びその誘導体もしくは加工物(例えばリノール酸メントールエステルなど)、2,5-ジヒドロキシ安息香酸誘導体等が、皮膚老化防止・肌荒れ改善成分であれば、動物又は魚由来のコラーゲン及びその誘導体、エラスチン及びその誘導体、セラミドなどの細胞間脂質、胎盤抽出物、ニコチン酸及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体(ジカリウム塩等)、t-シクロアミノ酸誘導体、ビタミンA前駆体、ビタミンA及びその誘導体、ビタミンE及びその誘導体、アラントイン、α-ヒドロキシ酸類、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、コエンザイムQ-10、アデノシン、α-リポ酸、ピコリン、カルニチン及びその誘導体、ゲンチアナエキス、甘草エキス、ハトムギエキス、カミツレエキス、ニンジンエキス、アロエエキスなどの生薬抽出エキス、緑藻類、紅藻類又は褐藻類の海藻の抽出物、ソウハクヒエキス、ブナ抽出物、キダチアロエ抽出物、マンネンロウ抽出物、イチョウ抽出物、スギナ抽出物、ベニバナ抽出物、オタネニンジン抽出物、セイヨウニワトコ抽出物、ハゴロモグサ抽出物、レンゲ抽出物、マンゴー抽出物、卵殻膜抽出タンパク質、デオキシリボ核酸カリウム塩、紫蘭根抽出物、ムラサキシキブ抽出物、イネ抽出物等が、又抗炎症成分であれば、例えばグアイアズレンスルホン酸ナトリウム、グアイアズレンスルホン酸エチルなどのアズレン誘導体、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルレチン酸ステアリルなどのグリチルリチン酸誘導体、アラントイン、カンゾウ抽出物、クジン抽出物、シャクヤク抽出物、ボタンピ抽出物、レンギョウ抽出物、リュウタン抽出物、トウキンセンカ抽出物、パセリ抽出物、オトギリソウ抽出物等が挙げられる。抗酸化剤としては、例えばスーパーオキシドディスムターゼ(Superoxide
dismutase)、カタラーゼなどの生体内活性酸素分解酵素、アスコルビン酸、ビタミンE、ビタミンDなどのビタミン類及びその誘導体、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、没食子酸プロピル、ユビデカキノン(ユビキノン)、ルチン、ルチングルコシド、γ-オリザノール等がある。
【0034】
その他の添加剤は、化粧料の分野で用いられているものであれば特に制限はない。例えば、エタノールなどの低級アルコール類;クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、水酸化ナトリウムなどのpH調整剤や緩衝剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、乾燥炭酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等の無機塩類;メタリン酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(エデト酸ナトリウム)などの安定化剤;その他、色素、粉体類、血行促進剤、動植物由来の天然エキス類およびその発酵物、アントシアニンなどのフラボノイド類およびその誘導体、ビタミン類及びその誘導体、ハッカ水、ローズ水などの清涼化剤又は芳香水、水膨潤性粘土鉱物等の各種粉末や、顔料などが挙げられる。
【0035】
本発明の発酵液は、そのまま化粧料として用いても良く、保湿性や抗菌性を持たせるために、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコールやフェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル類等を添加して化粧料としても良い。また、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の保湿用化粧料に、保湿成分として配合しても良い。
【0036】
以下に実施例を掲げ、本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本願で開示する発明の範囲を限定、あるいは制限することを表すものではない。
【実施例
【0037】
<実施例1>
以下の材料および手順により、発酵物を作製した。
〔材料〕
(1)トウキンセンカ:トウキンセンカの花弁を用いた。
(2)抽出液:精製水を用いた。
(3)乳酸菌:Lactobacillus plantarum(NBRC 101975)を用いた。
(4)培地:MRS寒天培地(ペプトン 10g、牛肉エキス 10g、酵母エキス 5g、グルコース 20g、Tween80 1g、KHPO 2g、酢酸ナトリウム 5g、クエン酸二アンモニウム 2g、MgSO・7HO 0.2g、MnSO・nHO 0.05g、精製水1L)を用いた。
【0038】
〔作製手順〕
(1)トウキンセンカ花3g(粉末化済)に対して、精製水100g(85℃)にて熱水抽出した。その後、37℃まで放置冷却して、トウキンセンカ花エキスを作製した。
(2)乳酸菌はMRS寒天培地にて保存培養したものを使用した。上記(1)と同様の操作で調製した液に、乳酸菌を少量接菌して3日間、静置培養した。これを種菌とした。(保存培地の成分は混入しない。)
(3)上記(1)で作製したトウキンセンカ花エキスに、上記(2)で作製した乳酸菌培養液を混合し、30℃~37℃で7日間、静置培養した。
(4)培養終了後、花弁をろ過して除去し、上清を85℃で30分間、加熱殺菌した。殺菌した液を、メンブランフィルターを用いて残渣を除去後、1,3-ブチレングリコールを30%質量添加し、発酵液を得た。
なお、後述する機能評価の比較対象には、上記(1)で作製したトウキンセンカ花エキスに1,3-ブチレングリコールを30%質量添加したもの(以下、「トウキンセンカエキスBG-K」と記載することがある。)を用いた。また、後述する各試験において、発酵液および比較対象の濃度を調整する際には、1,3-ブチレングリコールを30%質量添加した水を用いて調整した。
【0039】
次に、作製した発酵物の抗酸化能、抗糖化能、および、ヒアルロニダーゼ阻害能について、以下に示す手順で確認を行った。
〔抗酸化能〕
抗酸化能は、DPPH(ジフェニルピクリルヒドラジル)消去能測定法、および、OHラジカル消去能測定法により測定した。
(1)測定物質
<被験物質>
・実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)
・トウキンセンカエキスBG-K(乳酸菌で発酵していない比較対象)
【0040】
(2)材料
<DPPHラジカル消去能>
・緩衝液:200mM MES(2-morpholinoethanesulphonic acid)緩衝液(pH6.0)
・試薬:400μM DPPH(1,1-diphenyl-2-picrylhydrazyl)
<OHラジカル消去能>
・緩衝液:KHPOアッセイバッファー
・試薬:XOD(Xanthine Oxidase)、Hypoxanthine
【0041】
(3)試験方法
<DPPHラジカル消去能>
(a)200mM MES緩衝液に、被験物質の濃度が、それぞれ、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/mlとなるように濃度を調整して加えることで、被験物質溶液を作製した。被験物質溶液、および、200mM MES緩衝液(ブランク)を、それぞれ、96マイクロプレートに250μL添加した。
(b)400μM DPPH溶液を、50μL添加し反応を開始した。
(c)反応前および室温で20分間反応後に、520nmの吸光度を測定した。
【0042】
測定値から、以下の計算を行った。なお、n=5で実施した。

DPPHラジカル消去能(%)={1-(A/B)}×100
A:(被験物質溶液の反応後吸光度)-(被験物質溶液の反応前吸光度)
B:(ブランクの反応後吸光度)-(ブランクの反応前吸光度)
【0043】
<OHラジカル消去能>
(a)スーパーオキシドと特異的に反応する発光試薬MPECを10μL、XODを60μL、KHPOアッセイバッファーを180μL、および、SOD(酵素ス-パーオキシドジスムターゼ)を60μL、を試験管に投入・混合し、ブランク溶液として調製した。
(b)被験物質を測定する場合は、KHPOアッセイバッファー180μLに対して、被験物質の濃度が、それぞれ、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/mlとなるよう調整して添加し、超音波分散させ、これにMPECを10μL、XODを60μL、SODを60μL加え、被験物質溶液とした。
(c)試験管内で調整した上記(a)及び(b)を、ルミノメーター(ATTO)にセットし、Hypoxanthine溶液を50μL添加後、1分間の発光積算値を測定した。
(d)測定した発光積算値は、残存しているスーパーオキシドアニオンラジカルの量に比例して多くなるため、被験物質がSOD酵素へ与える影響を検討した。
【0044】
測定値から、以下の計算を行った。なお、n=5で実施した。

OHラジカル消去能(%)={1-(A/B)}×100
A:ブランク
B:被験物質溶液
【0045】
DPPHラジカル消去能の実験結果を表1に、OHラジカル消去能の実験結果を表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1に示すように、DPPHラジカルの50%阻害濃度(IC50)は、実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)が362.9μg/mlであった。一方、比較対象である乳酸菌で発酵していないトウキンセンカエキスBG-KのIC50は、388.9μg/mlであった。
【0049】
また、表2に示すように、OHラジカルの50%阻害濃度(IC50)は、実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)が446.1μg/mlであった。一方、比較対象である乳酸菌で発酵していないトウキンセンカエキスBG-KのIC50は、483.2μg/mlであった。
【0050】
以上のとおり、DPPHラジカル及びOHラジカルのIC50は、何れも実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)の方が低かった。したがって、トウキンセンカ花エキスを乳酸発酵させることで、抗酸化能が向上することを確認した。
【0051】
〔抗糖化能〕
抗糖化能は、蛍光性AGEs生成抑制作用に基づき測定した。
(1)測定物質
<被験物質>
・実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)
・トウキンセンカエキスBG-K(乳酸菌で発酵していない比較対象)
<陰性対照>
・蒸留水
【0052】
(2)材料
・基質:ヒト血清アルブミン(BSA)
・糖質:グルコース
・緩衝液:100mMリン酸緩衝液(pH6.8)
【0053】
(3)試験方法
(a)100mMリン酸バッファー液500μL、蒸留水180μL、2Mグルコース溶液100μL、4mg/ml BSA溶液200μL、および、被験物質を、1.5mlチューブに入れ、被験物質溶液とした。なお、被験物質は、被験物質溶液の濃度が、それぞれ、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/mlとなるように調整して添加した。
(b)被験物質溶液、陰性対照溶液(上記(1)において、被験物質の代わりに蒸留水を添加した溶液)、陽性対照溶液(上記(1)において、被験物質の代わりにアミノグアニジンを添加した溶液)を、それぞれ、60℃のインキュベーターで30時間反応を行った。
(c)反応終了後、被験物質溶液、陰性対照溶液、陽性対照溶液に、それぞれ、トリクロロ酢酸(100%v/v溶液)を1ml添加し、4℃で15000rpmにて4分間遠心を行った。
(d)上清を除去し、沈殿物を0.25N水酸化ナトリウム-PBS溶液で溶解した。
(e)溶解液は蛍光マイクロプレートリーダーにて励起波長360nm、蛍光波長440nmで蛍光強度測定を行った。
(f)各蛍光強度から、以下の式により抗糖化活性を算出した。なお、n=3で実施した。

抗糖化活性(%)={(陰性対照-B1)-(被験物質-B2)}/(陰性対照-B1)×100

B1:陰性対照と同組成の溶液でインキュベートしていないもの
B2:被験物質溶液と同組成の溶液でインキュベートしていないもの
【0054】
抗糖化活性の実験結果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】
表3に示すように、抗糖化活性の50%阻害濃度(IC50)は、実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)が207.6μg/mlであった。一方、比較対象である乳酸菌で発酵していないトウキンセンカエキスBG-KのIC50は、329.3μg/mlであった。
【0057】
以上のとおり、抗糖化活性のIC50は、何れも実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)の方が低かった。したがって、トウキンセンカ花エキスを乳酸発酵させることで、抗糖化能が向上することを確認した。
【0058】
〔ヒアルロニダーゼ阻害能〕
ヒアルロニダーゼ阻害能は、ヒアルロニダーゼのヒアルロン酸分解反応により測定した。
(1)測定物質
<被験物質>
・実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)
・トウキンセンカエキスBG-K(乳酸菌で発酵していない比較対象)
<陰性対照>
・蒸留水
【0059】
(2)材料
・酵素:ヒアルロニダーゼ(Sigma社製)
・基質:ヒアルロン酸
・緩衝液:酢酸緩衝液(pH4.0、0.1M)
【0060】
(3)試験方法
(a)酢酸緩衝液(pH4.0、0.1M)で溶解した酵素溶液50μLを1.5mlチューブに加え、37℃で20分間予備インキュベートした。
(b)上記(a)で用意した溶液に、酵素活性化溶液(Compound48/80、シグマ社製)200μL、基質溶液(ヒアルロン酸を緩衝液に溶解)500μL、および、被験物質を添加した後、アルミキャップをして37℃で40分間反応させた。なお、被験物質は、(b)における溶液中の被験物質の濃度が、それぞれ、100μg/ml、200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/mlとなるように調整して添加した。また、被験物質の代わりに蒸留水を加えた陰性対照、被験物質の代わりにタンニン酸を加えた陽性対照もそれぞれ作成し、反応させた。
(c)上記(b)の各溶液に0.4N水酸化ナトリウム溶液200μLを加えて反応を停止させ、ホウ酸ナトリウム溶液20μLを加えて沸騰水浴中で加熱した後、流水で室温まで冷却した。
(d)上記(c)の各溶液に、さらにp-ジメチルベンズアルデヒド試薬6.0mLを加え37℃で20分間反応させた後、585nmの吸光度を測定した。
(e)陰性対照、陽性対照、試料ブランク、および、酵素ブランクを調製し同様に反応させ吸光度を測定し、下記の式から阻害活性(%)を算出した。なお、n=3で実施した。

阻害率(%)={(A-C)-(B-D)}/(A-C)×100

A:対照(被験物質未添加)吸光度
B:反応液吸光度
C:試料ブランク(酵素、試料未添加)吸光度
D:酵素ブランク(酵素未添加)吸光度

なお、各溶液の組成を以下の表4に示す。また、ヒアルロニダーゼ阻害活性の実験結果を表5に示す。
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
表5に示すように、ヒアルロニダーゼ阻害活性の50%阻害濃度(IC50)は、実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)が234.4μg/mlであった。一方、比較対象である乳酸菌で発酵していないトウキンセンカエキスBG-KのIC50は、388.9μg/mlであった。
【0064】
以上のとおり、ヒアルロニダーゼ阻害活性のIC50は、何れも実施例1で作製した発酵物(トウキンセンカ発酵エキス)の方が低かった。したがって、トウキンセンカ花エキスを乳酸発酵させることで、ヒアルロニダーゼ阻害能が向上することを確認した。
【0065】
以下に、本発明の発酵物を配合した化粧料の処方例を示すが、以下に示す処方例は単なる例示であって、以下の処方例に限定されるものではない。
【0066】
処方例1 化粧水
(配合成分) (質量%)
1.トウキンセンカ発酵エキス 94.57
2.グリセリン 5
3.クエン酸 0.02
4.クエン酸Na 0.08
5.メタリン酸ナトリウム 0.03
6.防腐剤 0.3
(製法)
(a)1~6を十分に攪拌混合する。
【0067】
処方例2 クリーム
(配合成分) (質量%)
1.トウキンセンカ発酵エキス 3
2.グリセリン 5
3.1,3-ブチレングリコール 6
4.ペンチレングリコール 2
5.キシリトール 1
6.キサンタンガム 0.1
7.スクワラン 6
8.トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル 4
9.ベヘニルアルコール 1
10.自己乳化型グリセリルモノステアレート 2
11.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
12.カルボキシビニルポリマー 0.35
13.水酸化カリウム 0.06
14.防腐剤 0.3
15.精製水 残余
(製法)
(a)4に6を添加し分散させる。
(b)7~10を80℃に加熱し、均一に混合する。
(c)2、3、5、11、12、14、15、(a)を80℃に加熱し、均一に混合する。
(d)(c)に(b)を徐々に添加し、ホモミキサーにて乳化する。
(e)(d)を室温まで冷却後、これに15の一部に溶解した13、1を添加し、十分に攪拌混合する。
【0068】
処方例3 美容液
(配合成分) (質量%)
1.トウキンセンカ発酵エキス 5
2.グリセリン 10
3.1,3-ブチレングリコール 8
4.ペンチレングリコール 1
5.水素添加大豆リン脂質 0.8
6.コレステロール 0.2
7.イソステアリン酸イソステアリル 1.2
8.2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液

9.ハトムギ発酵液 1
10.トウキンセンカエキス 1
11.ラベンダーエキス 0.3
12.カルボキシビニルポリマー 0.3
13.水酸化カリウム 0.08
14.防腐剤 0.3
15.精製水 残余
(製法)
(a)2、3、5~7を80℃に加熱し、均一に混合する。
(b)4、12、14、15を80℃に加熱し、均一に混合する。
(c)(b)に(a)を徐々に添加し、ホモミキサーにて乳化する。
(d)(c)を室温まで冷却後、これに15の一部に溶解した13、1、8~11を添加し、十分に攪拌混合する。
【0069】
処方例4 泡吐出型皮膚洗浄料
(配合成分) (質量%)
1.トウキンセンカ発酵エキス 3
2.グリセリン 7
3.1,3-ブチレングリコール 7
4.ペンチレングリコール 1
5.キシリトール 0.5
6.グリコシルトレハロース・水添デンプン分解物混合溶液 3
7.ラウロイルアスパラギン酸Na液(純分25%) 15
8.ヤシ油脂肪酸アシルグルタミン酸TEA液(純分30%) 13
9.アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン(純分36%)

10.2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体液

11.ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
12.防腐剤 0.3
13.精製水 残余
(製法)
(a)1~6、10~13を均一に混合する。
(b)(a)に7~9を添加し、十分に攪拌混合する。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の抗酸化剤、抗糖化剤、および、ヒアルロニダーゼ阻害剤は、化粧料の添加剤として有用である。したがって、化粧品産業にとって有用である。