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  • 特許-凍結造粒装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】凍結造粒装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/06 20060101AFI20240807BHJP
   B05B 15/68 20180101ALI20240807BHJP
   F25D 3/10 20060101ALI20240807BHJP
   B05B 7/04 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
B01J2/06
B05B15/68
F25D3/10 A
B05B7/04
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020069595
(22)【出願日】2020-04-08
(65)【公開番号】P2021164911
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】591245543
【氏名又は名称】東京理化器械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】冨水 政昭
(72)【発明者】
【氏名】尾坂 隆之
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0075777(US,A1)
【文献】国際公開第2019/175954(WO,A1)
【文献】特開平10-197145(JP,A)
【文献】特開平04-110577(JP,A)
【文献】特開2017-023934(JP,A)
【文献】特開2004-231986(JP,A)
【文献】特開平03-202138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/06
B05B 15/68
F25D 3/10
B05B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口を有する断熱性の処理容器と、該処理容器に貯留した低温液体の液面に向けて試料液を噴霧する噴霧機構とを備えている凍結造粒装置であって、
前記噴霧機構は、
スプレーノズルと、
前記開口を覆う蓋体と、
該蓋体を上下方向に貫通して前記処理容器の内部と外部とを連通し、前記スプレーノズルを内挿支持する筒状金属製のノズル収納部と、
該ノズル収納部に埋め込まれて前記スプレーノズルに熱を伝えるノズル加熱手段とを備え、
前記蓋体には、前記ノズル収納部によって内挿支持した前記スプレーノズルを前記低温液体の液面に対して接近又は離反する方向に移動させる操作手段が設けられ
前記操作手段は、上端部に操作つまみが設けられた回転軸と、前記蓋体の上面に設けられ、前記回転軸を回転可能に支持するベース部材と、前記ノズル収納部に設けられ、前記回転軸が貫通する軸孔を有するガイド部材とを備え、
前記軸孔には、前記回転軸に設けられた雄ねじ部と螺合することにより、前記操作つまみの回転操作に従って前記ノズル収納部を上下移動させる雌ねじ部が設けられ、前記ベース部材には、前記ノズル収納部の移動量を示す目盛が付されていることを特徴とする凍結造粒装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結造粒装置の噴霧機構に関し、詳しくは、低温液体に向けて試料液を噴霧することによって凍結微粒子を取得する凍結造粒装置の噴霧機構に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる噴霧凍結乾燥造粒法は、既知の手法であり、そのプロセスは、前工程において懸濁液を低温液体に噴霧して顆粒を凍結し、その後、凍結乾燥工程に移行して顆粒を取得するものである(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-293128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
凍結微粒子を取得するには、通常、低温液体を処理容器に貯留した後、スプレーノズルの先端を液面から離して保持し、この状態で、水やアルコールの懸濁液をスプレーノズルから噴霧することによって凍結微粒子が得られる。しかしながら、懸濁液の噴霧中は、低温液体を用いた急速凍結によってスプレーノズルの先端部が短時間で凍結閉塞してしまうため、ごく少量のバッチでしか凍結造粒処理ができないという問題があった。また、液面とノズル先端との距離を一定に保つことは、微粒子の径や回収率に大きく影響するものであるが、スプレーノズルの固定に関してムッフ付クランプなどの市販品を用いると、ノズル位置が定まりにくく、しかも、手作業によるスプレーノズルの位置調整になるため定常性、定量性に欠け、噴霧距離を測定するための定規が別途に必要となり、安定した凍結造粒処理が行えないという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、凍結微粒子の製作時における定量性及び再現性を向上させた凍結造粒装置の噴霧機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の凍結造粒装置は、上部に開口を有する断熱性の処理容器と、該処理容器に貯留した低温液体の液面に向けて試料液を噴霧する噴霧機構とを備えている凍結造粒装置であって、前記噴霧機構は、スプレーノズルと、前記開口を覆う蓋体と、該蓋体を上下方向に貫通して前記処理容器の内部と外部とを連通し、前記スプレーノズルを内挿支持する筒状金属製のノズル収納部と、該ノズル収納部に埋め込まれて前記スプレーノズルに熱を伝えるノズル加熱手段とを備え、前記蓋体には、前記ノズル収納部によって内挿支持した前記スプレーノズルを前記低温液体の液面に対して接近又は離反する方向に移動させる操作手段が設けられ、前記操作手段は、上端部に操作つまみが設けられた回転軸と、前記蓋体の上面に設けられ、前記回転軸を回転可能に支持するベース部材と、前記ノズル収納部に設けられ、前記回転軸が貫通する軸孔を有するガイド部材とを備え、前記軸孔には、前記回転軸に設けられた雄ねじ部と螺合することにより、前記操作つまみの回転操作に従って前記ノズル収納部を上下移動させる雌ねじ部が設けられ、前記ベース部材には、前記ノズル収納部の移動量を示す目盛が付されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の凍結造粒装置の噴霧機構によれば、処理容器の蓋体を貫通するノズル収納部によってスプレーノズルを内挿支持し、さらには、ノズル収納部に埋め込まれたノズル加熱手段が発する熱をスプレーノズルに伝えるように構成しているので、たとえ噴霧中であってもスプレーノズルの先端部が凍結しない温度に保つことが可能となり、凍結微粒子の製作を連続的に行うことができる。また、操作手段を構成する回転軸とガイド部材との螺合によって、操作つまみを回すだけの簡単な操作でノズル収納部を所望の目盛に対応させた高さ位置に調節することができる。これにより、スプレーノズルの噴霧距離を低温液体の液面から一定に保つことが容易に行え、もって、安定した凍結造粒処理が達成される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の凍結造粒装置の噴霧機構を適用した一形態例を示す凍結造粒装置の平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図3は、本発明を噴霧凍結乾燥造粒法の実施に用いる凍結造粒装置に適用した一形態例を示すものである。凍結造粒装置11は、図1及び図2に示すように、上部に開口12aを有する断熱性の処理容器12と、該処理容器12の開口12aを覆う着脱可能な蓋体13と、該蓋体13を上下方向に貫通して処理容器12の内部と外部とを連通する筒状のノズル収納部14と、該ノズル収納部14内に挿し込まれて支持されるスプレーノズル15とを備え、スプレーノズル15の噴霧動作によって、処理容器12に貯留した低温液体(例えば液体窒素)の液面Lに向けて試料液(懸濁液)を噴霧するものである。
【0011】
処理容器12は、外槽12bと内槽12cとの間に断熱層を形成した金属製の断熱容器であり、外槽12bと内槽12cとが互いの開口縁部同士を溶着して一体的に形成されている。蓋体13は、上面両側部に一対の把手13a,13aを備えた厚肉の金属製円板であり、胴部13bを処理容器12の開口12aに嵌めた状態で、フランジ状の周縁部13cがパッキン16を介して処理容器12の上端周縁部に係止されている。また、蓋体13は、その中央部にノズル収納部14を摺動可能にする貫通孔13dが設けられ、該貫通孔13dから離した位置には排気口13eが設けられている。
【0012】
ノズル収納部14は、スプレーノズル15のノズル本体17を収納可能な長さをもつ金属製の円筒体であって、ノズル収納空間Sを間に挟んだ両側部にノズル加熱手段として一対の電気ヒータ18,18が埋め込まれている。電気ヒータ18は、給電制御部19と電気的に接続され、通電状態において、発熱部(通電された発熱抵抗層)が発した熱をノズル収納部14を介してノズル本体17に伝えるように配置されている。
【0013】
スプレーノズル15は、試料液と加圧エアーとの2流体を連続的に供給することによって試料液を微細化して噴霧するもので、具体的には、下端にノズル孔17aを備えた前記ノズル本体17と、該ノズル本体17の上端部に連結された配管接続部20とからなる。また、ノズル本体17をノズル収納空間Sに挿し込んで配管接続部20をノズル収納部14の上端14aに当接させた収納位置で、ノズル孔17aは、ノズル収納部14の下端14bから僅かに引き込んだ内側位置に保持されている。これにより、圧送供給された試料液及びエアーは、配管接続部20の管路内で混合された後、ノズル本体17を通ってノズル孔17aから噴霧される。
【0014】
ここで、凍結造粒装置11は、蓋体13、ノズル収納部14及びスプレーノズル15を互いに組み合わせてなる噴霧機構において操作手段21が設けられ、該操作手段21を操作することにより、ノズル収納部14とスプレーノズル15とが蓋体13に対して一体で上下移動可能になっている。
【0015】
操作手段21は、図3に示すように、上端部に操作つまみ22が設けられた回転軸23と、該回転軸23を回転可能に支持するベース部材24と、前記回転軸23が貫通する軸孔を有するガイド部材25とを備えている。ベース部材24は、ノズル収納部14の上下移動量を示す目盛26aが付された支柱26と、上下一対の軸受部材27,28とからなる略コ字状の部材であって、蓋体13の上面で、かつ、貫通孔13dの近傍位置に設けられている。ガイド部材25は、ノズル収納部14の上端外周部に設けられた板片であって、前記軸孔に回転軸23を通した状態で、両軸受部材27,28間において係合保持されている。
【0016】
また、回転軸23には、両軸受部材27,28間のスパンに相当する長さの雄ねじ部23aが設けられており、操作つまみ22と一体でグリップボルト(つまみねじ)としての機能を有している。一方、ガイド部材25の軸孔には、前記雄ねじ部23aに螺合する雌ねじ部25aが設けられている。これにより、操作つまみ22を回転操作すると、回転軸23の回転運動がねじ部23a,25aの噛み合いによってガイド部材25の直線運動に変換される。すなわち、ノズル収納部14が蓋体13に対して上下方向に移動し、これに従ってスプレーノズル15が前記収納位置を保ったままの状態で、低温液体の液面Lに対して接近又は離反する方向に移動される。
【0017】
このように形成された凍結造粒装置11を使用して噴霧凍結乾燥造粒法を実施するには、乾燥工程に移行する前工程において凍結微粒子の製作が行われる。まず、試料液の種類や処理量に基づいて、あらかじめ設定した量の低温液体を処理容器12内に貯留する。低温液体を撹拌する方法は、例えば、処理容器12の載置台としてマグネチックスターラーを使用し、処理容器12内に投入した撹拌子を磁力によって回転させて低温液体を撹拌する方法が挙げられる。
【0018】
次いで、スプレーノズル15について、配管接続部20の試料液ホース継手20a及びエアホース継手20bにそれぞれ対応するホース(図示せず)を接続した後、ノズル本体17をノズル収納部14に挿し込み、この仮組立状態で、蓋体13を処理容器12の開口12aに被せる。これにより、開口12aが封止されて内槽12cの内部領域が極低温雰囲気下に保持される。ここで、操作つまみ22を回転操作して、例えば、上昇限界位置にあるガイド部材25を降下させて所望する目盛26aの位置に合わせる。この結果、初動時の噴霧距離、すなわち、低温液体の液面Lとスプレーノズル15のノズル孔17aとの距離が一定に保たれ、処理が行える状態となる。
【0019】
試料液をノズル孔17aから噴霧すると同時に電気ヒータ18を通電すると、熱伝導体であるノズル収納部14は、電気ヒータ18が発した熱をノズル本体17に対して速やかに伝える。これにより、ノズル孔17aを含むノズル本体17の先端部が加熱されて、その温度は0℃以上、つまりノズル孔17aの凍結閉塞が生じない程度の温度に保持される。一方、噴霧した微粒子は低温液体の冷気で瞬時に凍結され、凍結微粒子となって処理容器12の底部に堆積される。このとき、給電制御部19は、設定した時間、例えば、低温液体が蒸発しきる時間でタイマーが切れ、電気ヒータ18の通電を終了させる。こうして、処理容器12内の温度上昇が抑えられる。
【0020】
このように、凍結造粒装置11の噴霧機構によれば、処理容器12の蓋体13を貫通するノズル収納部14によってスプレーノズル15を内挿支持し、さらには、ノズル収納部14に埋め込まれた電気ヒータ18が発する熱をスプレーノズル15に伝えるように構成しているので、たとえ噴霧中であってもスプレーノズル15の先端部が凍結しない温度に保つことが可能となり、凍結微粒子の製作を連続的に行うことができる。また、操作手段21を構成する回転軸23とガイド部材25との螺合によって、操作つまみ22を回すだけの簡単な操作でノズル収納部14を所望の目盛26aに対応させた高さ位置に調節することができる。これにより、スプレーノズル15の噴霧距離を低温液体の液面Lから一定に保つことが容易に行え、もって、安定した凍結造粒処理が達成される。
【0021】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、ノズル加熱手段は、ノズル本体を加熱することが可能なヒータであれば特に限定されないが、製作コストの観点から、電気ヒータであることが好ましい。また、操作手段は、ねじの噛み合い構造を採用することでノズル収納部の昇降動作を安定して行える利点があるが、ガイド部材を蓋体上に保持できればよく、例えば、ブロック体を積み上げてガイド部材を任意の高さに保持する構造など、種々の構造を採用できる。さらに、操作手段による調節は任意のタイミングで行うことができ、蓋体に取り付ける前段階で調節しておくこともできる。加えて、各材料は、伝熱性、断熱性、強度、成形性などを考慮して適宜に選定することができ、特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
11…凍結造粒装置、12…処理容器、12a…開口、12b…外槽、12c…内槽、13…蓋体、13a…把手、13b…胴部、13c…周縁部、13d…貫通孔、13e…排気口、14…ノズル収納部、14a…上端、14b…下端、15…スプレーノズル、16…パッキン、17…ノズル本体、17a…ノズル孔、18…電気ヒータ、19…給電制御部、20…配管接続部、20a…試料液ホース継手、20b…エアホース継手、21…操作手段、22…操作つまみ、23…回転軸、23a…雄ねじ部、24…ベース部材、25…ガイド部材、25a…雌ねじ部、26…支柱、26a…目盛、27,28…軸受部材
図1
図2
図3