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特許7534766果樹栽培用の除湿装置、及び湿度制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】果樹栽培用の除湿装置、及び湿度制御方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20240807BHJP
   A01G 17/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A01G7/00 601Z
A01G17/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020085830
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021177742
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】391008294
【氏名又は名称】フルタ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 成広
(72)【発明者】
【氏名】土屋 茂樹
【審査官】坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-168024(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090023(WO,A1)
【文献】特開2005-333923(JP,A)
【文献】特開2019-95937(JP,A)
【文献】特開2019-170359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 7/00
A01G 13/06
A01G 13/08
A01G 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に設けられ、前記圃場に風を吹き下ろす一基~数基のファンと、
少なくとも、前記圃場の果樹の近傍の湿度を検出する一基~数基の第1センサと、
少なくとも、前記圃場の果樹の近傍の温度を検出する一基~数基の第3センサと、
前記ファンの駆動源である一基~数基の発電機と、
前記第1センサの検出値に基づいて、前記発電機の運転制御用の運転信号を送信する一基~数基の制御装置と、
前記制御装置に電力を供給する一基~数基の蓄電池と、
を備え、
前記制御装置は、前記第1センサの検出値が湿度設定値よりも高い場合に、前記運転信号を前記発電機に送信し、前記発電機から発電確立信号を受信すると、前記ファンにこの発電機の電力を供給可能とし、前記第1センサが検出した直近の湿度が高い期間が長いほど大きくなり、直近の湿度が低い期間が長いほど小さくなり、前記第3センサが検出した直近の温度が高い期間が長い程大きくなり、直近の温度が低い期間が長い程小さくなり、気象情報が予測する湿度が高い程大きくなり、予測する湿度が低い程小さくなる関数の値と前記湿度設定値の基準値との和に基づいて前記湿度設定値を決定する、
除湿装置。
【請求項2】
少なくとも、逆転層が発生する高さの気温を検出する一基~数基の第2センサを備え、
前記制御装置は、
前記第1センサの検出値が設定湿度よりも高く、及び/又は前記第2センサの検出値か
ら前記第3センサの検出値を減算した値が、温度設定値よりも大きい場合に、前記発電機
に前記運転信号を送信する請求項1に記載の除湿装置。
【請求項3】
圃場に設けられ、前記圃場に風を吹き下ろすファン、少なくとも、前記圃場の果樹の近傍の湿度を検出する一基~数基の第1センサ、少なくとも、前記圃場の果樹の近傍の温度を検出する一基~数基の第3センサ、前記ファンの駆動源である発電機、前記第1センサの検出値に基づいて、前記発電機の運転制御用の運転信号を送信する制御装置、及び前記制御装置に電力を供給する蓄電池、を備える除湿装置を利用した湿度制御方法であって、
前記制御装置が、前記第1センサの検出値が湿度設定値よりも高い場合に、前記運転信号を前記発電機に送信し、前記発電機から発電確立信号を受信すると、前記ファンにこの発電機の電力を供給可能とし、前記第1センサが検出した直近の湿度が高い期間が長いほど大きくなり、直近の湿度が低い期間が長いほど小さくなり、前記第3センサが検出した直近の温度が高い期間が長い程大きくなり、直近の温度が低い期間が長い程小さくなり、気象情報が予測する湿度が高い程大きくなり、予測する湿度が低い程小さくなる関数の値と前記湿度設定値の基準値との和に基づいて前記湿度設定値を決定する、
湿度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キウイフルーツ等の果実栽培において、安定して品質の高い果実を育成するために、芽・葉・茎・果実等の周辺を低湿に保つためのファンを利用した除湿装置と、この除湿装置を利用した湿度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
キウイフルーツ等の果樹栽培では、果樹の品質が、温度、湿度、降雨、霜、風、病害虫等のいくつもの環境条件に左右されやすい。また、施肥、土壌管理、水質管理等の栽培条件を好条件で安定して管理する必要がある。このような複雑な状況において、安定して高糖度の果実を生産するための方法として、特許文献1に開示された方法が挙げられる。特許文献1では、果実被覆袋と、湿度制御装置と、ポンプとを備えた果実育成装置において、果実を果実被覆袋で隔離することにより、果実近傍を外部から隔離し、この果実被覆袋と接続された湿度制御装置により、果実被覆袋の内部の湿度を制御する。これにより、果実近傍を低湿度条件の状態で果実を育成することができるため、糖度が高く、優れた色付きの品質の高い果実を容易に育成することができる。
【0003】
非特許文献1では、愛媛県におけるキウイフルーツすす斑病の発生と防除対策についての詳細が示されている。すす病の発生生態の解明、及び有効な防除法の検討が行われた結果から、「すす病は薬剤がかかりにくい棚面よりも上部に遅伸びした枝に多く発生が見られるため、既に発病しているほ場においての発病確認が困難になっていると考えられる。また、一度発病すると根絶には至らないため、ほ場管理時に遅伸びした枝の除去、園内湿度に配慮したほ場環境の改善などの基本管理に努めることが重要である。」とある。つまり、キウイフルーツのような果樹における病害の防除法として薬剤散布が行われているが、薬剤がほ場全体に均一に散布できないことがあり、その場合、一度発病したすす病を防除することは極めて困難であるため、ほ場の環境管理の中でも湿度管理が極めて重要であるといえる。
【文献】特開2005-333923号公報
【文献】愛媛果樹セ研報 第5号 17-27(2014)「愛媛県におけるキウイフルーツすす斑病の発生と防除対策」[online][令和2年3月15日検索]、インターネット<URL:https:surasshusurasshuwww.pref.ehime.jpsurasshukashisurasshukenkyusurasshudocumentssurasshu03susu.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の果実育成装置では、果実と同数の果実被覆袋が必要であることに加えて、湿度制御装置やポンプ等の電力消費量も多くなることから、ランニングコストが高くなる。そして、この発明では、山間地等の外部電源の確保が難しい場所ではファン、及び除湿装置を利用した適度の乾燥状態(除湿)の制御とか、又は防霜制御を行うことが期待できない。
【0005】
上記を鑑みて、本発明は、安定して品質の高い果実を育成するために、圃場に設けた1基~数基のファンと、このファンを稼動する、1基~数基の除湿装置を用いた、圃場の湿度制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1からを提案する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、キウイフルーツ等の果実栽培において多湿環境下での病害を回避、及び/又は、外部電源の確保が難しい圃場(栽培箇所)において、ファンを利用した除湿装置と、この除湿装置を利用した圃場の湿度制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る除湿装置及び圃場の一例を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態に係る制御装置の機能構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態に係る制御装置によるファンの電源制御を示すブロック図である。
図4】本発明の実施の形態に係る制御装置に係る発電機制御処理、及び湿度制御方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の変形例に係る制御装置に係る発電機制御処理、及び湿度制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る、ファンを利用した除湿装置及び湿度制御方法について説明する。なお、図中、同一又は相当する部分には、同じ符号を付す。
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係る除湿装置1の一例と圃場の模式図である。一基~数基の除湿装置1は、それぞれ、圃場の一本~数本の建柱100と、各建柱100の上端部に設けられた一基~数基のファン2と、圃場の湿度を検出する一基~数基の湿度センサ12、及び一基~数基の温度センサ14と、建柱100の下部に設けられた制御装置16と、圃場に設けられた発電機15と、建柱100の上部に設けられた太陽光パネル17と、一基~数基の降雨センサ11、で構成される。
【0011】
ファン2により発生する風を、建柱100の上端部から圃場のキウイフルーツAが栽培されている範囲に吹き下ろす。ファン2は、モータ、首振り機構、俯角機構などを備える。ファン2は、発電機15から電力が供給されると回転し、発電機15からの電力の供給が停止されると回転を停止する。
【0012】
圃場には、一基~数基の湿度センサ12、圃場の気温を測定する一基~数基の温度センサ14を設ける。つる性果樹であるキウイフルーツAの場合、湿度センサ12と温度センサ14は、例えば、果樹の根元の枝、葉面、前記根本の枝又は葉面の近傍の湿度と温度を各々検出する。各センサの設置位置は、適宜変更するとよい。湿度センサ12と温度センサ14は、例えば、ファン2の風、及び/又は、自然風の影響を受けない位置に設ける。尚、湿度センサ12は第1センサの一例である。
【0013】
建柱100の上部に設ける一基~数基の降雨センサ11は降雨信号を検出する。この検出信号から降雨判定を演算し制御装置16に送信する。原則として、降雨時には、ファン2は運転しない。
【0014】
湿度センサ12と温度センサ14は、各箇所の湿度と温度の各測定値と、生育ステージにおいて定めた温湿度を、制御装置16に送信する。制御装置16は、受信した各測定値から、1日の平均湿度とか、1日の平均気温等を算出することもできる。さらに、この算出した各算出値と実際の各測定値とを比較し比較結果を出す。制御装置16では、前記各測定値、演算した前記各算出値、前記比較結果、降雨情報、湿度情報、温度情報、ファン2の異常情報等のファン運転情報、及び発電機15の稼働時間や燃料残量等の発電機情報を記録し保存する。
【0015】
キウイフルーツのような果樹では、例えば、かいよう病、すす斑病、果実軟腐病等の病害は、主に生育環境条件により発病が多くなる。特に多湿環境下では発病が多くなることが知られている。そのため制御装置16は、生育環境等により適宜予め決定した湿度設定値と、湿度センサ12による測定値に基づいて、ファン2を運転するか否かを判定する。
【0016】
キウイフルーツの生育環境、季節や生育ステージから、予め湿度設定値を決定し、制御装置16にインプットする。制御装置16は、インプットされた湿度設定値と、圃場に設けた湿度センサ12の測定値とを比較し、湿度測定値≧湿度設定値の場合、発電機15を起動してファン2の運転を開始する。制御装置16は、湿度測定値<湿度設定値の状態では、発電機15を停止してファン2の運転を停止する(ファンモータへの給電停止する)。
【0017】
ファン2の稼働制御の一例を以下に示す。制御装置16は、湿度測定値が湿度設定値(閾値湿度)より高い場合、発電機15に運転を指示する運転信号を連続的に送信する。この信号を受けた発電機15は、起動後電力を安定供給できる状態になると、発電確立信号を制御装置16に送信する。電力供給が安定している間、発電確立信号は制御装置16に連続的に送信される。制御装置16は、発電確立信号を受信すると、発電機15の電磁接触器をONにし、ファン2に発電機15の電力を供給する。ファン2は、電力が供給されると運転を開始する。ファン2が複数ある場合には、始動電流の増大を防ぐために、制御装置16が時間差で、順次、ファン2の運転を開始するように指令する構成としてもよい。
【0018】
ファン2の停止制御の一例を以下に示す。湿度測定値が湿度設定値未満になると、制御装置16は発電機15への運転信号の送信を停止する。併せて、発電機15への運転信号が止まり、運転を停止する(ファンモータへの給電を停止する)。例えば、制御装置16は、発電機15の電磁接触器をOFFにし、ファン2への電力供給を停止する。ファン2は、電力供給が停止されると運転を停止する。
【0019】
太陽光を利用して太陽光パネル17で発電した電気を蓄電池18に充電する。制御装置16は、この充電した蓄電池18から駆動電力を得る。制御装置16の電源は、太陽光パネル17で発電した電気に限らず、単独の蓄電池を使用し、制御装置16を使用しないシーズンオフの時期等に別途充電を行ってもよいし、発電機15が備えるセルモータ起動用の蓄電池から駆動電力を得てもよい。
【0020】
太陽光パネル17で発電した電気を制御装置16の電源とする場合、蓄電池18をユーザが充電する必要がない。また、蓄電池18を建柱100の上部に設ければ、盗難防止になる。
【0021】
単独の蓄電池を制御装置16の電源とする場合、電圧低下時に報知ランプ等でユーザに知らせ、その都度ユーザが別の場所で充電する。キウイフルーツ栽培のシーズン中に電圧低下が頻発すると不便、かつ、所望の除湿効果を得ることが難しくなるため、シーズンオフ時にまとめて充電をしておく等の対応が必要になるが、太陽光パネルと充電回路が不要であるため、太陽光パネルを利用した発電に比べて安価である。
【0022】
セルモータ起動用の蓄電池を制御装置16の電源とする場合、発電機15の定期点検時に動作させて蓄電池に充電する時間が必要である。
【0023】
図1には、建柱100、ファン2、降雨センサ11、湿度センサ12、温度センサ14、発電機15、制御装置16、太陽光パネル17及び蓄電池18を1つずつ備える除湿装置1を記載しているが、これらの構成要素の数は、それぞれ1つに限らない。例えば、ファン2は、1本の建柱100に対して複数設けてもよく、ファン2を備える建柱100を圃場に複数本設けてもよい。また、1つ、又は複数の制御装置16が複数のファン2及び発電機15を制御してもよい。
【0024】
制御装置16の機能構成について図2及び図3を用いて説明する。図2に示すように、制御装置16は、検出信号受信部141、演算部142、記憶部143、及び制御部145を備える。これらの機能は、図3に示すコントロールBOX43により実現可能である。従って、図2の如く、制御装置16において、制御部145に指令が伝わると、発電機15に伝わり、駆動電力が、電磁接触器44を経由し、ファン2のモータに伝わる。これにより、ファン2からの風が、キウイフルーツAに吹き下ろされる。また必要とする箇所に伝わる構造である。
【0025】
コントロールBOX43は、例えば、CPU、RAM、不揮発性メモリ、他の装置と接続するインタフェースなどから構成される。CPUは、不揮発性メモリに記憶されている制御プログラムをRAMにロードする。CPUは、ロードした制御プログラムに従って、検出信号受信部141、演算部142及び制御部145の各処理を実行する。記憶部143は不揮発性メモリにより構成される。
【0026】
蓄電池18は、例えば太陽光パネル17が発電した電気を蓄電し、制御装置16に電力を供給する。蓄電池18は、制御装置16の内部に配置されていてもよい。
【0027】
検出信号受信部141は、降雨センサ11、湿度センサ12、及び温度センサ14から各々の測定値を示す信号を受信する。検出信号受信部141は、降雨情報、湿度情報、及び温度情報として、各センサの各測定値を記憶部143に記憶する。
【0028】
演算部142は、検出信号受信部141が取得した湿度情報、及び温度情報から、1日の平均湿度、及び平均温度等を算出してもよい。この算出した平均湿度、及び平均温度は、湿度情報、及び温度情報として、記憶部143に記憶する。
【0029】
記憶部143は、検出信号受信部141と演算部142からのデータを基に、降雨情報、湿度情報、及び温度情報を記憶する。さらに、記憶部143はこれらのデータを学習データとして蓄積・保存してもよい。
【0030】
制御部145は、記憶部143から各情報を受け取ると、記憶部143が記憶する湿度情報、及び温度情報等の各情報と、圃場の気象条件等の学習データを参照し、湿度設定値(閾値温度)を決定する。検出信号受信部141が取得し記憶部143に保存した降雨情報、湿度情報、及び温度情報と、記憶部143に学習データとして蓄積された各データ(降雨情報、湿度情報、及び温度情報、圃場気象条件等)とを比較・検討し、その都度キウイフルーツAに最適な湿度設定値を特定する。なお、温度設定値の決定方法については、後述する。なお、学習データは上述の情報の一部でもよく、他の情報を含んでもよい。
【0031】
制御部145は、湿度情報が記憶部143に記憶されると、湿度測定値が湿度設定値以上か否かを判定する。制御部145は、湿度測定値が湿度設定値以上の場合、発電機15に運転信号を送信する。運転信号を受けた発電機15は起動後、電力が安定供給できる状態になると、発電確立信号を制御装置16に送信する。制御部145は、発電機15から発電確立信号を受信すると、電磁接触器をONにして、発電機15の電力をファン2に供給し、ファン2の運転を開始する。制御部145は、湿度測定値が湿度設定値未満になると、発電機15への運転信号の送信を停止するとともに、発電機15からの電力の供給を停止してファン2を停止する。原則として運転信号の送信停止と電力の供給停止を同時に行うことがよい。具体的には、制御部145は、電磁接触器をOFFにして、発電機15の電力のファン2への供給を停止し、ファン2の運転を停止する。なお、制御部145は、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなったとき、及び/又は、発電機15から発電異常信号を受信したときにも、ファン2の運転を停止してもよい。
【0032】
図3を用いて、制御装置16によるファン2A~ファン2Cの電源制御の一例について説明する。コントロールBOX43は、湿度センサ12の検出値から算出した湿度測定値が湿度設定値以上の場合、発電機15に運転信号を送信する。運転信号を受けた発電機15は起動し、安定して電力が供給できる状態になると、発電確立信号を制御装置16に送信する。コントロールBOX43は、発電機15から発電確立信号を受信すると、電磁接触器44をONにする。さらに、図3の例では、始動電流の増大防止のため、コントロールBOX43は、順送タイマ48A及び順送タイマ48Bを用いて、時間差で電磁接触器44A、電磁接触器44B及び電磁接触器44Cの順にONにする。発電機15の出力電力は、電磁接触器44、漏電遮断機45,配線遮断機46A~46C,電磁接触器44A~44Cを介して、ファン2A、ファン2B及びファン2Cの順に時間差で供給される。従って、ファン2A、ファン2B及びファン2Cは、時間差で運転を開始する。なお、ファン2A、ファン2B及びファン2Cが同じタイミングで運転を開始する場合には、制御装置16は、電磁接触器44C、電磁接触器44B及び電磁接触器44A、ならびに、順送タイマ48A、及び順送タイマ48Bを備えなくてもよい。
【0033】
コントロールBOX43は、湿度センサ12からの湿度測定値が湿度設定値未満になると、運転信号の送信を停止し、電磁接触器44C、電磁接触器44B、電磁接触器44A及び電磁接触器44をOFFにする。発電機15は、運転信号を受信しなくなると停止する。ファン2C、ファン2B及びファン2Aへの発電機15の電力の供給が停止され、ファン2A、ファン2B及びファン2Cは、運転を停止する。また、コントロールBOX43は、湿度測定値が湿度設定値未満になったときだけでなく、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなったとき、及び/又は、発電機15から発電機異常信号を受信したときにも、電磁接触器44C、電磁接触器44B、電磁接触器44A及び電磁接触器44をOFFにしてもよい。
【0034】
漏電遮断器45は、漏電を検知した際に回路を遮断する。配線遮断器46A、配線遮断器46B及び配線遮断器46Cは、過電流を検知した際に回路を遮断する。トランス47は、発電機15の電力を、ファン2A、ファン2B及びファン2Cの制御電圧(AC200V)に変圧して供給する。この制御電圧はAC200Vに限定されない。例えば、図示しないが、制御電圧(AC400V)においても、同じ回路の構成を有すればよい。
【0035】
制御装置16は1つの装置に限らず、複数の装置で実現してもよい。例えば、図2に示す制御部145の機能を備えるファン制御装置を複数台設けてもよい。この場合、各ファン制御装置は、例えば、図3に示す制御装置16のうちのファン2A~2Cを制御する部分と同様の構成を有すればよい。
【0036】
制御装置16が実行する発電機制御及びファン2による湿度制御の流れを、図4のフローチャートを用いて説明する。制御装置16に蓄電池18から電源が投入されると、発電機制御が開始され、湿度測定値と湿度設定値との比較を基に、ファン2による湿度制御を行う。図4では、湿度測定値をL、湿度設定値をαとする。制御装置16の制御部145は、湿度測定値Lが湿度設定値α以上であるか否かを判定する(ステップS21)。
【0037】
湿度測定値Lが、湿度設定値α未満である場合(ステップS21;NO)、制御部145は、ステップS21を繰り返して、湿度測定値Lが、湿度設定値α以上になるのを待機する。湿度測定値Lが湿度設定値α以上の場合(ステップS21;YES)、圃場は多湿のために除湿が必要であり、制御部145は、発電機15に運転信号を送信する(ステップS22)。発電機15は、運転信号を受けて起動し、電力が安定供給できる状態になると、発電確立信号を制御装置16に送信する。発電機15から発電確立信号を受信しない場合(ステップS23;NO)、制御部145は、ステップS23を繰り返して、発電確立信号の受信を待機する。発電機15から発電確立信号を受信した場合(ステップS23;YES)、制御部145は、電磁接触器44をONにして、発電機15の電力をファン2に供給し、ファン2の運転を開始する(ステップS24)。
【0038】
ファン2の稼働中は、圃場の湿度が低湿になったか否かを判断するために、湿度測定値Lが湿度設定値αより低くなったか否かを判定する(ステップS25)。湿度測定値Lが湿度設定値α以上の場合(ステップS25;NO)、圃場はまだ多湿状態であるので、制御部145はステップS25を繰り返して、湿度測定値Lが湿度設定値α未満になるのを待機する。湿度測定値Lが湿度設定値α未満になった場合(ステップS25;YES)、圃場の湿度が低湿になり除湿が必要ないので、制御部145は、発電機15への運転信号の送信を停止する(ステップS26)。発電機15は、運転信号を受信しなくなると停止する。制御部145は、電磁接触器44をOFFにして、発電機15の電力のファン2への供給を停止し、ファン2の運転を停止する(ステップS27)。制御装置16の電源がOFFになっていなければ(ステップS28;NO)、ステップS21に戻り、ステップS21~ステップS28を繰り返す。制御装置16の電源がOFFになった場合(ステップS28;YES)、処理を終了する。
【0039】
ステップS25;NOのとき、制御部145は、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなった、又は、発電機15から発電を停止したことを示す発電機異常信号を受信したか否かを判定し、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなった、又は、発電機15から発電機異常信号を受信した場合にはステップS26に移行するようにしてもよい。
【0040】
次に、湿度設定値を設定する方法を説明する。例えば、制御部145は、記憶部143に記憶されている過去の湿度の履歴と過去の温度の履歴と気象情報を学習データとして学習し、湿度設定値を設定する。例えば、除湿の必要性が高くなるに従って湿度設定値を低くし、除湿の必要性が低くなるに従って湿度設定値が高く設定する。例えば、制御部145は、記憶部143に記憶している直近n個の湿度H1~Hnと、直近m個の温度T1~Tmと、k時間後の気象条件に基づいて、式Th=Ths+f(H1~Hn、T1~Tm,Fk)に基づいて、湿度設定値Thを設定してもよい。ここで、Thsは、湿度設定値の基準値、nとmは自然数、n=mでもよい。fはH1~Hn、T1~Tm,Fkの関数である。関数fは、湿度H1~Hnが高い期間が長い程大きくなり、湿度H1~Hnが低い期間が長い程小さくなり、温度T1~Tnが高い期間が長い程大きくなり、温度T1~Tnが低い期間が長い程小さくなり、気象情報Fkが予測する湿度が高い程大きくなり、予測する湿度が低い程小さくなる関数である。
【0041】
また、湿度或いは温度が時系列的に上昇する傾向にある場合に、湿度設定値Thを低くし、湿度或いは温度が時系列的に減少する傾向にある場合に、湿度設定値Thを高くするように設定してもよい。
【0042】
また上記の説明では、湿度測定値と湿度設定値の大小比較によりファン2のオン・オフを設定しているが、PID(Proportional-Integral-Differential)制御を使用し、湿度測定値と湿度設定値の偏差の比例積分微分値に基づいてオン・オフを設定してもよい。
【0043】
また、AI(Artificial Intelligence)技術を活用し、記憶部143に記憶しているH1~Hn、T1~Tm,Fkとそのときのファン2の望ましいオン・オフの組み合わせを学習し、そのオン・オフが得られるように湿度設定値を設定してもよい。
【0044】
本発明の実施の形態に係る除湿装置1によれば、外部電源の確保が難しい場所でも発電機15を利用することによりファン2が使用可能になる。また、キウイフルーツAの現在の生育環境に対応する湿度設定値を決定することで、自然環境の変化に対応できる湿度制御方法を提供することができる。
【0045】
尚、その他の例であって、図示しないが、本発明のファン2は、少なくとも、逆転層が発生すると推定される冬場に、霜対策として活用することもありえる。この一例の場合、上記除湿装置1の建柱100上部に高所温度センサを設けて逆転層の生じる高さの気温を検出する。また、圃場のキウイフルーツAの果樹周辺に設けた温度センサ14(低所温度センサ)により低所の気温を検出する。高所温度が低所温度よりも高くなった場合、即ち、建柱100上部に設けた高所温度センサ周辺に逆転層が生じていると推定できる場合には、ファン2を利用することで、圃場の霜対策に有効となる。この実施例においては、高所温度センサは第2センサで、低所温度センサは第3センサとする。
【0046】
この場合、制御装置16は、高所温度-低所温度>温度設定値である場合に、本発明の除湿装置1のファンとしての活用効果が高いと判断し、発電機15を起動しファン2の運転を開始する。温度設定値は栽培している環境により予め決められている。
【0047】
当該変形例に係る制御装置16が実行する発電機制御処理の流れを、図5を用いて説明する。図5に示す発電機制御処理は、制御装置16に蓄電池18から電源が投入されたことで開始する。図5では、湿度測定値をL、湿度設定値をα、高所温度をT(h)、低所温度をT(l)、温度設定値をβとする。
【0048】
まず制御装置16の制御部145は、湿度測定値Lが湿度設定値αより高いか否かを判定する(ステップS31)。湿度測定値Lが、湿度設定値α未満である場合(ステップS31;NO)、制御部145は、ステップS31を繰り返して、湿度測定値Lが、湿度設定値αより高くなるのを待機する。湿度測定値Lが、湿度設定値α以上の場合(ステップS31;YES)、制御部145は、高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値βより大きいか否かを判定する(ステップS32)。
【0049】
高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値β以下である場合(ステップS32;NO)、処理はステップS40に移行する。高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値βより大きい場合(ステップS32;YES)、制御部145は、発電機15に運転信号を送信する(ステップS33)。発電機15は、運転信号を受けて起動し、安定して電力が供給できる状態になると、発電確立信号を制御装置16に送信する。発電機15から発電確立信号を受信しない場合(ステップS34;NO)、制御部145は、ステップS34を繰り返して、発電確立信号の受信を待機する。発電機15から発電確立信号を受信した場合(ステップS34;YES)、制御部145は、電磁接触器44をONにして、発電機15の電力をファン2に供給し、ファン2の運転を開始する(ステップS35)。
【0050】
高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値β―ηより大きい場合(ステップS36;NO)、制御部145は、湿度測定値Lが、湿度設定値α-γ未満であるか否かを判定する(ステップS37)。湿度測定値Lが、湿度設定値α-γ以上の場合(ステップS37;NO)、制御部145は、ステップS36およびステップS37を繰り返し、高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値β-η以下になり、かつ、湿度測定値Lが、湿度設定値α-γ未満になるのを待機する。η及びγは0以上の任意の値である。
【0051】
高所温度T(h)から低所温度T(l)を減算した値が、温度設定値β-η以下になった場合(ステップS36;YES)、かつ、湿度測定値Lが、湿度設定値α-γ未満になった場合(ステップS37;YES)、制御部145は、発電機15への運転信号の送信を停止する(ステップS38)。発電機15は、運転信号を受信しなくなると停止する。制御部145は、発電機15からファン2への供給を停止し、ファン2の運転を停止する(ステップS39)。制御装置16の電源がOFFになっていなければ(ステップS40;NO)、ステップS31に戻り、ステップS31~ステップS40を繰り返す。電源がOFFになった場合(ステップS40;YES)、処理を終了する。
【0052】
ステップS37;NOのとき、制御部145は、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなった、又は、発電機15から発電を停止したことを示す発電異常信号を受信したか否かを判定し、発電機15からの発電確立信号を受信しなくなった、又は、発電機15から発電異常信号を受信した場合にはステップS38に移行するようにしてもよい。
【0053】
なお、図5の説明では、L≧α(ステップS31)且つ{T(h)-T(l)}>β(ステップS32)のときにのみ、ファン2の運転を開始しているが、L≧α又は{T(h)-T(l)}>βのときに、ファン2の運転を開始してもよい。また、以上の説明では、{T(h)-T(l)}≦(β-η)(ステップS36)又はL<(α―γ)(ステップS37)のときに、ファン2の運転を停止しているが、{T(h)-T(l)}≦(β-η)(ステップS36)且つL<(α―γ)(ステップS37)のときに、ファン2の運転を停止してもよい。ただし、これらの例に限定されるものではなく、除湿の必要性に応じて適宜変更可能である。
【0054】
また図5の説明でも、測定値と設定値の大小比較によりファン2のオン・オフを設定しているが、PID制御或いはAIによる制御を使用してもよい。
【0055】
上述した説明とそれぞれの図面は、本発明の好ましい一例であって、この説明と各図面に限定されない。従って、発明の趣旨の範囲において構成の一部を変更する構造とか、同じ特徴と効果を達成できる構造、等は、本発明の範疇である。
【符号の説明】
【0056】
1 除湿装置
2、2A、2B、2C ファン
11 降雨センサ
12 湿度センサ
14 温度センサ
15 発電機
16 制御装置
17 太陽光パネル
18 蓄電池
43 コントロールBOX
44、44A、44B、44C 電磁接触器
45 漏電遮断器
46A、46B、46C 配線遮断器
47 トランス
48A、48B 順送タイマ
100 建柱
141 検出信号受信部
142 演算部
143 記憶部
145 制御部
A キウイフルーツ
図1
図2
図3
図4
図5