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  • 特許-乾燥調味料の製造方法 図1
  • 特許-乾燥調味料の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】乾燥調味料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20240807BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20240807BHJP
【FI】
A23L27/50 B
A23L27/50 E
A23L27/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020112689
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011503
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】506207130
【氏名又は名称】株式会社中嶋屋本店
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 恒治
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-355006(JP,A)
【文献】特開2005-261350(JP,A)
【文献】特開2001-149033(JP,A)
【文献】特開平11-075764(JP,A)
【文献】特開平04-020259(JP,A)
【文献】長崎県総合水産試験場 水産加工開発指導センター 加工科,魚醤油について,漁連だより,日本,長崎県漁業協同組合連合会,2003年03月,No.95,URL:https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2018/11/1543305626.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00-27/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚醤とカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干し、昆布粉のうち少なくとも一つ以上の魚粉とを混合して70~100℃に保った状態で20~120分間乾燥させる工程と、乾燥した魚醤魚粉混合物に対してさらに前記魚粉を混合して塩分濃度が5~10%となるように調整する工程とを有しており、前記魚醤はカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上を粉砕した魚粉を6~20重量%、麦麹又は米麹を10~21重量%、食塩を15重量%に水を加えたもろみを製造する工程と、このもろみを25~35℃に維持して発酵させる工程と、発酵が完了したもろみを濾過する工程と、濾過したものに火入れを行なう工程とを経て製造されたものであることを特徴とする乾燥調味料の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の乾燥調味料の製造方法において、魚醤とカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干し、昆布粉のうち少なくとも一つ以上の魚粉を混合する際の前記魚醤と前記魚粉との重量比は1:1であることを特徴とする乾燥調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥調味料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生魚を原料とする伝統的な調味料としては、能登地方のいしる、秋田地方のしょっつる、ベトナムのヌクマム、タイのナンプラー等が知られている。
【0003】
いしるは、イワシやイカの内蔵や頭、骨を塩漬けして発酵させた魚醤油であり、しょっつるは、イワシの頭と内臓を取ったあと、大量の塩と混ぜて半年以上発酵させた魚醤油である。なお、両者とも魚体に20~30重量%の食塩をまぶして放置することで製造される。また、ヌクマム、ナンプラー等の製造方法もいしる等とほぼ同等である。
【0004】
しかしながら、生のままの加工残滓を原材料として使用した前記魚醤油には、どうしても生魚の生臭みが残るため、出汁として使用するにはふさわしくないという問題点があった。
【0005】
そこで、長崎県総合水産試験場の水産加工開発指導センターの加工科は、低利用水産資源の新たな有効活用法として、カタクチイワシ、アイゴ、マアジの頭部、骨や皮等の生のままの加工残滓を原材料として使用する新たな調味料としての魚醤油を開発した(魚連だより2003.3(平成15年3月,No.95,URL:https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2018/11/1543305626.pdf)
この魚醤油は、丸大豆醤油を製造する際に使用されていた醤油麹を、前記加工残滓に混合することで製造される。
醤油麹を使用することで生魚の生臭さが少なくなるのである。
【0006】
【文献】魚連だより2003.3(平成15年3月,No.95,URL:https://www.pref.nagasaki.jp/shared/uploads/2018/11/1543305626.pdf)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
丸大豆醤油の製造に使用される醤油麹を使用した魚醤油は、どうしてもカタクチイワシ、アイゴ、マアジの頭部、骨や皮等の生のままの加工残滓を原材料として使用するため、従来からのいしるやしょっつる等の伝統的な魚醤のイメージが残り、生魚の生臭さを想起させてしまい、消費者の消費意欲を喚起しないとして問題点があった。
また、この魚醤油には、和風料理の出汁として活用することも難しく、洋風料理には合わないという欠点があった。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、従来からの伝統的な魚醤が有する生臭さいというイメージを払拭し、和風料理にはもちろんのこと、洋風料理にも合わせられる魚醤及びその製造方法、乾燥調味料の製造方法、出汁パックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る乾燥調味料の製造方法は、カツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上を粉砕した魚粉を重量%、麦麹又は米麹を10~21重量%、食塩を15重量%に水を加えたもろみを製造する工程と、このもろみを25~35℃に維持して発酵させる工程と、発酵が完了したもろみを濾過する工程と、濾過したものに火入れを行う工程とを有しており、前記魚醤はカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上を粉砕した魚粉を6~20重量%、麦麹又は米麹を10~21重量%、食塩を15重量%に水を加えたもろみを製造する工程と、このもろみを25~35℃に維持して発酵させる工程と、発酵が完了したもろみを濾過する工程と、濾過したものに火入れを行なう工程とを経て製造されたものである。
【0012】
さらに、本発明に係る乾燥調味料の製造方法では、魚醤にカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干し、昆布粉のうち少なくとも一つ以上の魚粉を混合する際の前記魚醤と前記魚粉との重量比は1:1とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る魚醤の製造方法で製造された魚醤は、カツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上を粉砕した魚粉を原材料として使用するため、消費者に生魚を原材料とした伝統的ないしる等の生臭さを想起させない。それどころか、従来の伝統的な魚醤にはない香りがあり、出汁とよく馴染み強い味の濃い出汁を取ることができる。
このため、従来の伝統的な魚醤では合わなかった和風料理の出汁として活用することができ、しかも洋風料理の隠し味としても活用することができるようになった。
【0016】
また、本発明に係る乾燥調味料の製造方法で製造された乾燥調味料は、魚醤のみならずさらに魚粉を加えたものなので、和風料理のみならず洋風料理にも合う調味料となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る乾燥調味料の製造方法で使用される魚醤の製造方法のフローチャートである。
図2】本発明の実施の形態に係る乾燥調味料の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態に係る乾燥調味料の製造方法で使用される魚醤は、カツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上を粉砕した魚粉を6~20重量%、麦麹又は米麹を10~21重量%、食塩を15重量%に水を加えたもろみを製造する工程と、このもろみを25~35℃に維持して発酵させる工程と、発酵が完了したもろみを濾過する工程と、濾過したものに火入れを行なう工程とを経て製造されたものである。
【0020】
カツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節の魚粉96gに対して水224gを加えてえる。
【0021】
この魚粉と水とを混合したものに、320gの麦麹と24gの食塩とを混ぜ合わせてもろみとし発酵させる。
【0022】
このもろみを30℃に維持して60日間にわたって発酵させる。
【0023】
発酵が完了したもろみ(図1のS13参照)を不織布で自然濾過する(図1のS14参照)。この濾過によってもろみに含まれるカツオ削り節等の残滓を除去する。
【0024】
残滓が除去されたもろみに火入れを行い(図1のS15参照)、それ以降の発酵を停止させるとともに殺菌を行なう。
これにより魚醤が完成する(図1のS16参照)。
【0026】
次に、上述した方法で製造した魚醤を用いた乾燥調味料の製造方法について、図2を参照しつつ説明する。
この乾燥調味料の製造方法は、前記魚醤とカツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干し、昆布粉のうち少なくとも一つ以上の魚粉とを混合して70~100℃に保った状態で20~120分間乾燥させる工程と、乾燥した魚醤魚粉混合物に対して前記魚粉を混合して塩分濃度が5~10%となるように調整する工程とを有している。
【0027】
最初に魚醤に混合する魚粉は、カツオ削り節、サバ削り節、イワシ削り節、煮干しのうち少なくとも一つ以上であるが、例えば煮干し250g、カツオ削り2400g、昆布粉50gとする。
この魚粉500gと500gの前記魚醤とを混合して魚醤魚粉混合物とする(図2のS21参照)。
なお、魚醤魚粉混合物の魚粉と魚醤との重量比は1:1となっている。
この魚醤魚粉混合物を85℃に保った状態で40分間乾燥させる(図2のS22参照)。
【0028】
魚醤魚粉混合物が乾燥したならば、この乾燥した魚醤魚粉混合物に対して250gの前記魚粉をさらに混合して乾燥調味料とする(図2のS23参照)。
【0029】
この乾燥調味料は、そのままでも使用することができるが、不織布等からなるパックに詰めることによって出汁パックとする。
出汁パックとする工程は通常のものと同様である。すなわち、乾燥調味料をパックに入れ(図2のS24参照、パック落としと称する)、計量し(図2のS25参照)、袋詰めして最終製品とする(図2のS26参照)。
【0030】
このようにして製造された出汁パックは、いわゆる通常の出汁パックと同様の使用態様でより風味の高い出汁をとることができる。
すなわち、この出汁パックを熱湯に浸漬することによって、単なるカツオ削り節等の出汁ではなく、魚醤の風味をも併せ持った出汁を簡単にとることができる。
【0031】
この出汁パックによってとった出汁は、従来の伝統的な魚醤にはない香りがあり、出汁とよく馴染み強い味の濃い出汁となる。
このため、従来の伝統的な魚醤では合わなかった和風料理の出汁として活用することができ、しかも洋風料理の隠し味としても活用することができるようになった。
その上、この魚醤や乾燥調味料、出汁パックの原材料としては、生魚そのものではなく、香りがよいとのイメージをもったカツオ削り節等の魚粉であるため、消費者には伝統的な魚醤につきまとっていた生臭いというイメージを想起させることがない。
【0032】
なお、上述した実施の形態に含まれるカツオ削り節等の比率、製造時の温度、時間等は一例を示したものであって、本発明がこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。
図1
図2