(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】回収システム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/22 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
A61B17/22 528
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022063991
(22)【出願日】2022-04-07
(62)【分割の表示】P 2020517175の分割
【原出願日】2018-09-28
【審査請求日】2022-05-02
(32)【優先日】2017-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520095072
【氏名又は名称】セレトリーブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ハラリ シャハール
(72)【発明者】
【氏名】フェルド タンフム
(72)【発明者】
【氏名】ムスタファ マイサ
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0215900(US,A1)
【文献】特開2005-103302(JP,A)
【文献】特表2013-505108(JP,A)
【文献】特表2017-517338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0257362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0222035(US,A1)
【文献】特開平11-047140(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/22
17/221
17/3201
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の逆螺旋巻きワイヤと交差する複数の螺旋巻きワイヤを含む細長い編組構造を含む、生体血管から物質または物体を回収するためのシステムであって、前記細長い編組構造は、収縮状態と拡張状態との間で移行するように構成され、前記細長い編組構造はカバーでコーティングされており、前記細長い編組構造の遠位端は、
前記細長い編組構造を形成する第2のワイヤ部分よりも柔軟である第1のワイヤ部分から形成される複数の曲線状であるワイヤループを形成し、さらに前記複数の曲線状であるワイヤループは、前記細長い編組構造の外面に対して径方向外向きに角度が付いている、システム。
【請求項2】
前記細長い編組構造に取り付けられたカテーテルをさらに含む、請求項
1に記載のシステム。
【請求項3】
前記カテーテルは、ルーメンの遠位開口部に吸引力を加えるための吸引導管を含む、請求項
2に記載のシステム。
【請求項4】
前記複数の曲線状であるワイヤループを形成するワイヤは、互いに交差する、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体血管から物質または物体を回収するためのシステムおよびそれを使用する方法に関する。本発明の実施形態は、生体血管内に配置された血塊(clot)などの物質またはステントなどの物体などの材料を把持または捕捉することができる細長い編組構造を有するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈などの生体血管の閉塞を解除する手順は、当技術分野で周知であり、通常、血管ルーメンを閉塞している物質を開いたり、分解したり、除去したりできる最小侵襲デバイスを使用する。
【0003】
例えば、虚血性脳卒中または肺塞栓症の治療に使用される従来の血塊除去デバイスは、血塊物質を吸引するために吸引を使用する。
【0004】
そのような吸引デバイスは小さな血塊を回収するのに効果的であるが、大きな血塊の吸引は、血塊の断片化と潜在的に有害な血塊粒子の血流への放出につながる可能性がある。
【0005】
近年、脈管構造から血塊物質を機械的に捕捉および回収するように設計された機械的血栓摘出術デバイスの分野で大きな進歩が見られた。
【0006】
ただし、機械的血栓摘出術の進歩にも関わらず、特に血栓の係合および最小限の血栓の断片化を有する引き込みにおいて、改善の余地がある。
【0007】
したがって、血管内の流れを効果的に停止することができ、血塊の断片化を最小限に抑えながら閉塞物質を捕捉、カプセル化および除去することができる回収システムが必要であり、それを有することは非常に有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、生体血管から物質または物体を回収するためのシステムであって、収縮状態と拡張状態との間を移行するように構成された細長い構造であって、細長い構造は、拡張状態にあるときに遠位開口部を有するルーメンを取り囲む、細長い構造と、細長い構造の長さに沿って配置された閉鎖ワイヤであって、閉鎖ワイヤは、細長い構造の遠位部分を内側に引っ張って、それにより遠位開口部を少なくとも部分的に閉じるように作動可能である、閉鎖ワイヤと、を含み、閉鎖ワイヤは、細長い構造が長さに沿って曲げられたときに、細長い構造の遠位部分が内側に引っ張られないように配置される、システムが提供される。
【0009】
本発明の実施形態によれば、細長い構造は、細長い編組構造である。
【0010】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、拡張されると、長さが減少する。
【0011】
本発明の実施形態によれば、閉鎖ワイヤは、細長い編組構造の長さに沿って螺旋状である。
【0012】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造の遠位部分は、アイレットを含み、さらに閉鎖ワイヤは、アイレットのうちの少なくともいくつかを通って延びる。
【0013】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、複数の逆螺旋状に巻かれたワイヤと交差する複数の螺旋状に巻かれたワイヤを含む。
【0014】
本発明の実施形態によれば、複数の螺旋状に巻かれたワイヤのうちの少なくともいくつかは、複数の逆螺旋状に巻かれたワイヤと70~120°の角度で交差する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造の遠位端は、複数のワイヤループを形成する。
【0016】
本発明の実施形態によれば、アイレットの平面は、ワイヤループの平面とは異なる。
【0017】
本発明の実施形態によれば、複数のワイヤループの各々は、螺旋状に巻かれたワイヤを逆螺旋状に巻かれたワイヤに相互接続する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、複数のワイヤループは、互いに交差する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、システムは、細長い編組構造に取り付けられたカテーテルをさらに含む。
【0020】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、カテーテルの遠位部分内で収縮した状態に維持可能である。
【0021】
本発明の実施形態によれば、カテーテルの遠位部分は、シースを含み、細長い編組構造は、シースが引き込まれると、自己拡張する。
【0022】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、血管内に配置するためのサイズである。
【0023】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、カバーを含む。
【0024】
本発明の実施形態によれば、カバーは、ポリウレタンまたはPTFEから製造される。
【0025】
本発明の実施形態によれば、閉鎖ワイヤは、編組構造とカバーとの間に捕捉されるか、またはカバー内に埋め込まれる。
【0026】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、遠位開口部で吸引を加えることができる。
【0027】
本発明の実施形態によれば、システムは、細長い編組構造のルーメンと連通する真空源をさらに含む。
【0028】
本発明の実施形態によれば、ワイヤは、細長い編組構造の長さにわたって延びる管内に配置される。
【0029】
本発明の実施形態によれば、複数のワイヤループのうちの1つのループを形成するワイヤ部分は、複数のワイヤループの近位にある細長い編組構造を形成する第2のワイヤ部分よりも柔軟(compliant)である。
【0030】
本発明の実施形態によれば、閉鎖ワイヤは、アイレットのうちの少なくとも1つのアイレットに取り付けられる。
【0031】
本発明の実施形態によれば、複数のワイヤループの各々は、遠位開口部から外向きに角度を付ける。
【0032】
本発明の別の態様によれば、収縮状態と拡張状態との間で移行するように構成された細長い編組構造を含む、生体血管から物質または物体を回収するためのシステムであり、細長い編組構造は、拡張状態にあるときに遠位開口部を有するルーメンを取り囲む、システムであって、細長い編組構造は、細長い編組構造の遠位開口部の周りに複数のワイヤループを形成する、複数の逆螺旋巻きワイヤと交差する複数の螺旋巻きワイヤを含む、システムが提供される。
【0033】
本発明の実施形態によれば、複数のワイヤループの各々は、螺旋状に巻かれたワイヤを逆螺旋状に巻かれたワイヤに相互接続する。
【0034】
本発明の実施形態によれば、複数の螺旋状に巻かれたワイヤは、複数の逆螺旋状に巻かれたワイヤと70~120°の角度で交差する。
【0035】
本発明の実施形態によれば、細長い編組構造は、血管内に配置するためのサイズである。
【0036】
本発明のさらに別の態様によれば、生体血管から物質または物体を回収する方法であって、システムを生体血管内に配置するステップと、物質または物体をルーメンに引き込むステップと、細長い編組構造の遠位開口部を少なくとも部分的に閉じるステップと、を含む、方法が提供される。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合は、定義を含む特許明細書が優先される。さらに、材料、方法、および例は、単なる例示であり、限定を意図するものではない。
【0038】
本発明は、添付図面を参照して、例としてのみ本明細書で説明される。ここで図面を具体的に参照すると、示されている詳細は、例として、本発明の好ましい実施形態の例示的な説明のみを目的としており、本発明の原理および概念的側面の最も有用かつ容易に理解される説明であると考えられることを提供するために提示される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要なものよりも詳細に本発明の構造の詳細を示す試みは行われず、図面を用いた説明は、実際に具体化され得る本発明のいくつかの形態がどのようにして当業者に明らかになるかを明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図2A】
図2Aは、拡張開状態で示された細長い編組構造の一実施形態の等角図である。
【
図2B】
図2Bは、閉状態で示された細長い編組構造の一実施形態の等角図である。
【
図2C】
図2Cは、編組構造に通された螺旋状閉鎖ワイヤを示す細長い編組構造の一実施形態の等角図である。
【
図3A】
図3Aは、本システムの一実施形態を使用した血塊回収を示す。
【
図3B】
図3Bは、本システムの一実施形態を使用した血塊回収を示す。
【
図3C】
図3Cは、本システムの一実施形態を使用した血塊回収を示す。
【
図3D】
図3Dは、本システムの一実施形態を使用した血塊回収を示す。
【
図3E】
図3Eは、本システムの一実施形態を使用した血塊回収を示す。
【
図4A】
図4Aは、拡張開状態の細長い編組構造のプロトタイプを示す。
【
図4B】
図4Bは、閉状態の細長い編組構造のプロトタイプを示す。
【
図4C】
図4Cは、閉じた反転状態の細長い編組構造のプロトタイプを示す。
【
図5】
図5は、本プロトタイプを使用したステント回収を示す。
【
図6】
図6は、本システムのプロトタイプを使用した血塊回収を示す血管造影図(angiograph)である。
【
図7】
図7は、本システムのプロトタイプを使用した血塊回収を示す血管造影図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明は、生体血管から物質および物体を回収するために使用することができるシステムに関する。具体的には、本発明の実施形態は、血塊の断片化を最小限にしながら血管から血塊を回収するために使用することができる。
【0041】
本発明の原理および動作は、図面および付随する説明を参照してよりよく理解され得る。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途において、以下の説明に記載されるかまたは実施例によって例示される詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、またはさまざまな方法で実施または実行することが可能である。また、本明細書で使用される語法および用語は、説明を目的とするものであり、限定と見なされるべきではないことを理解されたい。
【0043】
血塊物質を回収するためにスリーブ状トラップを利用する機械的血栓摘出術デバイスは、当技術分野でよく知られている。このようなトラップは、回収された血塊をスリーブ内に維持し、脈管構造から引き出されたときのスリーブからの血塊または断片の放出を最小限にするための閉鎖可能な遠位開口部を含み得る。スリーブ型トラップの閉鎖メカニズムは、遠位開口部の有効径を小さくすることができ、それにより、そのようなスリーブによって回収できる血塊の最大サイズを小さくすることができる。
【0044】
本発明を実施に移している間、本発明者らは、血塊の断片化を最小限にしながら血塊の回収を最大にすることができる機械的血栓摘出術システムを提供することを目指した。本システムは、編組構造内に血塊物質を捕捉することができる閉鎖可能な遠位端が形成された細長い編組構造を含む。細長い編組構造は、遠位開口部が血管ルーメンの直径に適応し、それにより、断片化を最小限に抑えながら大きな血塊の回収を最大化する、収縮状態と拡張状態との間で移行するように構成される。細長い編組はまた、完全な閉鎖および任意選択で遠位開口部の内部反転を可能にしながら、細長い編組構造の長手方向の曲がりの影響を受けず、遠位開口部の直径を減少させない閉鎖機構も含む。
【0045】
したがって、本発明の一態様によれば、生体血管から物質または物体を回収するためのシステムが提供される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「物質」という用語は、血栓/血塊、結石などの生体物質を指し、一方、「物体」という用語は、ステント、ステントグラフトなどのインプラントを指す。
【0047】
本システムを使用して任意の生体血管にアクセスし、治療することができ、例には、脈管構造の血管(例えば、動脈、静脈)、尿路の血管(例えば、尿道、尿管)および脳の血管が含まれる。
【0048】
本発明のシステムは、収縮状態と拡張状態との間で移行するように構成された細長い編組構造を含む。拡張状態にあるとき、細長い編組構造は、遠位開口部を介してアクセス可能なルーメンを有するシリンダ/スリーブ/漏斗として成形することができる。収縮されたとき、細長い編組構造は、小さなルーメン(ガイドワイヤおよびマイクロカテーテルの挿入に十分な大きさ)を有する細いシリンダである。細長い編組構造は、自己拡張することができ、その場合、それは、血管の直径によって制限される最終直径まで(編組構造によって制限される直径まで)自己拡張する。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、細長い編組構造は、螺旋方向と逆螺旋方向を交互に編組した金属(例えば、ステンレス鋼またはニチノール)または高分子(例えば、PTFE)ワイヤから製造することができる。ワイヤの編組角度は70~140°の範囲であり得る一方、ワイヤの直径は0.04~0.08mmであり得る。
【0050】
デバイスのパラメータおよび寸法は、使用法および血管のタイプによって異なる。頭蓋内動脈の虚血性脳卒中用途で使用される場合、標的動脈のサイズは2.5~4.5mmの間で変動する可能性がある。拡張可能な編組構造の直径は、血流を停止させるために血管の直径よりも少なくともわずかに大きくなければならず、したがって2~7mmの範囲になる。拡張可能な編組構造の長さは、受け入れる長い血塊を支持するのに十分な長さである必要があるが、取り外し可能なシースを引っ張って拡張可能な編組構造を最小限の力で(通常は10~60mmまたは20~40mm)展開できる程度に短くする必要がある。取り外し可能なシースを引っ張るための引っ張り力は、拡張可能な編組構造の長さに相当する。血管の解剖学的な蛇行性は、引っ張り力をさらに増加させる。より短い拡張可能な編組構造の別の利点は、側枝(side branch)が閉塞する可能性が低減することである。
【0051】
細長い編組構造は、適切なサイズのマンドレルを使用して、ワイヤを交互の螺旋パターンに巻き付けることによって製造することができる。例えば、1本のワイヤをループさせ、ループの尾部をマンドレルの周りに螺旋状のパターンで巻いて、マンドレルの長さに沿って、すべてのワイヤに交差パターン(1×1パターン)または2本のワイヤごとに交差パターン(2×1パターン)を形成することができる。いくつかのワイヤ(12~64)を使用して編組構造を形成することができる。そのような編組の例は、実施例のセクションにおいて提供される。
【0052】
本システムはまた、細長い編組構造を血管内に送達するためのカテーテルを含む。本発明の一実施形態によれば、細長い編組構造は、カテーテルシャフトの遠位端に取り付けられることができ、収縮構成のときに取り外し可能なシースによって覆われることができる。シースの除去(近位方向への引っ張り)により、細長い編組構造を展開することができる。
【0053】
本発明の別の実施形態では、細長い編組構造は、収縮状態でカテーテルシャフトのルーメン内に捕捉され、展開のために押し出される。
【0054】
細長い編組構造は、バルーンを介して展開するように構成することもできる。そのような構成では、細長い編組構造の拡張は、その中の取り外し可能なバルーンの膨張を必要とする。
【0055】
上記のように、細長い編組構造の遠位開口部は、閉鎖機構を介して閉鎖可能である。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、細長い編組構造の遠位端は、リーフレット状の閉鎖フラップを形成するループ端で構成される。
【0057】
開位置にあるとき、ループは、編組構造の壁と同じ平面に位置することができるか、またはループは、編組構造の壁に対して角度を付けることができる。例えば、ループは、外側に10~30°傾けることができる。このような角度付けは、リーフレットが血塊の収集を妨害する可能性、または収集中に不必要に内側に偏向する可能性を減少させる。
【0058】
ループを形成するワイヤ部分は、編組構造の残りの部分を形成する第2のワイヤ部分と同一であり得るか、または第2のワイヤ部分よりも柔軟であり得る。より細いワイヤ、または異なる特性のワイヤ(例えば、異なる材料から作られる)、または異なる編組パターン-編組構造の密度よりも密度が低い(例えば、ループ用のリブ/ワイヤの長さ0.5mm、編組構造のひし形リブの長さ3mm)を使用することにより、増加した柔軟性(compliance)を達成できる。ループをより柔軟にすることにより、例えば、プルワイヤを使用してリーフレットを閉じるときに、細長い編組構造に曲げ力を加えることなく閉じることができる。
【0059】
細長い編組構造(およびカテーテル)の長さにわたる閉鎖ワイヤは、これらのループまたはそこに形成されたアイレット(例えば、ループの端を捻ることによって)に通されるか、またはそれに取り付けられる。アイレットは、ループと同じ平面に配置することができ、またはループに対して角度を付けることができる(10~90°)。ワイヤを引くと、ループが内側に引っ張られ(弾性的に曲がり)、遠位開口部の中心に入り、それによりループが閉じる。本発明の一実施形態によれば、ワイヤおよびループは、閉鎖後にワイヤをさらに引っ張ることにより、ループを細長い編組構造のルーメン内に反転させること、すなわち、閉じた遠位開口部が近位にそして細長い編組構造のルーメンへと引かれること、ができるように構成することができる。このような特徴は、閉鎖ワイヤを引っ張るためのより長い作動長さを提供するという点で有利である。反転はまた、編組構造内部の血塊を固定するために有益であり、編組構造からの血塊の押し出しを最小限に抑える。編組構造をガイドカテーテルまたはガイドシースに引き戻そうとする間に、押し出し力を血塊に加えることができる。
【0060】
クロージャー(プル)ワイヤは、1つ以上のフィラメントから作られた金属またはポリマーワイヤであり得る。ワイヤの直径は0.02~0.25mmであり得る。ワイヤは、編組構造の長さに沿って自由に配置することができ、または導管(例えば、ポリマー製チューブまたはスリーブ編組構造内の編組チューブ)内に捕捉することができる。
【0061】
本発明の一実施形態によれば、閉鎖ワイヤは、細長い編組構造がその長手方向軸に沿って曲がっても、ループを内側に引っ張って遠位開口部を閉じないように、細長い編組構造の長さに沿って配置される。
【0062】
細長い編組構造の長さは、外側のシースに拘束されるときに長くなる。細長い編組構造内部のプルワイヤの軸方向の長さと、細長い編組構造の長さとは、両方を一緒に圧縮および拡張できるようにするために、類似している必要がある。プルワイヤの軸方向の長さが圧縮時に細長い編組構造の長さと共に増加しない場合、プルワイヤが引き伸ばされてループを内側に引っ張り、ループを損傷して圧縮を妨げる可能性がある。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、この問題は、細長い編組構造と共にその軸長を変化させる細長い編組構造内部のプルワイヤの非線形経路を作成することによって克服することができる。そのような非線形経路は、好ましくは螺旋状(例えば、螺旋またはコルク栓抜き)であるが、曲がりくねった曲線でもあり得る。
【0064】
本発明の実施形態によれば、プルワイヤの遠位端は、(ループまたはアイレットに通される)円として形作られる。そのような円形のワイヤ部分は、ループを補強し、ループの半径方向の抵抗を増加させる。この目的でプルワイヤを使用すると、ループの遠位端でループに半径方向の力がかかり、ループに最大の外向きのトルクがかかるので、非常に効率的である。
【0065】
代替の実施形態では、プルワイヤは、編組構造に沿ってループアイレットを通して1回以上回転する螺旋状にされ、次いで編組構造内に螺旋状に戻され、シャフトルーメン内のプルワイヤに取り付けられる。
【0066】
プルワイヤは、細長い編組構造が拡張するときにプルワイヤがループの拡張に実質的に抵抗しないように、その遠位部分(ループと係合する場所)で柔らかい材料から製造することもできる。例えば、プルワイヤは、複数の材料、すなわち、カテーテルおよび編組構造の長さに沿ったニチノールワイヤ、ならびにループを係合するための遠位部分のポリマー延長部、から構築することができる。
【0067】
細長い編組構造は、断片化して血流中に放出することができる血塊物質を捕捉するために使用されるので、ポリウレタン、PTFEなどから製造されたカバーで覆われることが好ましい。カバーは、細長い編組構造のルーメンからの粒子の漏出を防ぎ、必要に応じてそれを通る吸引の適用を容易にする。
【0068】
カバーを含む本システムの実施形態では、プルワイヤは、カバーと編組の内壁/外壁との間を、または、カバーと編組の内壁/外壁との間を経路指定する0.05~0.5mmの直径を有する管を通して、経路指定されることができる。
【0069】
ワイヤループは、ループに提供される電流を使用して、閉位置と開位置との間で作動させることができる。ループ上の電荷が電流によって変更されるときに、それはループの動きを作動させる。電荷は、カテーテルの近位端からリーフレットの遠位開口部まで延び、隔離されたルーメンを通過し、近位端の専用電源に接続された金属ワイヤによって適用される。
【0070】
本発明の別の実施形態によれば、細長い編組構造の遠位端は、アイレットを含む細長いワイヤセグメントで構成される。そのようなワイヤセグメントは、編組構造の延長部であり得るか、またはそれらは、プルワイヤから形成されることができる。
【0071】
本システムはまた、カテーテルシャフトの近位端に取り付けられたハンドルを含む。ハンドルは、細長い編組構造の展開および遠位開口部の閉鎖を作動させるための制御部を含む。あるいは、細長い編組構造の展開は、ハンドルとは別個にシースの近位端を単に引き込むことによって達成することができる一方で、ハンドルは、遠位開口部の閉鎖のための制御部を含むことができる。ハンドルは、吸引源(例えば、シリンジ、ポンプ)に取り付けることができる。
【0072】
上記で述べたように、本システムは、任意の生物学的血管から物質または物体を回収するように構成することができる。
【0073】
本システムは、血管からの血塊の回収に特に有用である。そのようなシステムの例を以下に説明する。
【0074】
ここで図面を参照すると、
図1A~
図1Bは、本明細書でシステム10と呼ばれる血塊回収システムを示す。
【0075】
システム10は、カテーテルシャフトの近位端がハンドル16に取り付けられているカテーテルシャフト14の遠位端に取り付けられた細長い編組構造12(拡張状態を示す)を(遠位から近位に向かって)含む。
【0076】
ハンドル16は、シース20に接続することができ、ハンドル16は、例えば、シース20(
図1Aに引き戻されて示されている)を引き戻すことによって、またはシース20から細長い編組構造12を押し出すことによって、細長い編組構造12の拡張を作動させるための、そして細長い編組構造12の遠位開口部22の開閉を作動させるための、制御部18を含むことができる。シース20の遠位端は、ハンドル16に近づく(例えば5cm)ように本体の外に配置することができる。シース20の露出した遠位端をカテーテルシャフト14に対して引く/押すことは、編組構造12の拡張(expansion)/収縮(collapse)を制御する。あるいは、プランジャ/プッシュワイヤ機構を使用して、細長い編組構造12は、シース20から押し出されることができる。
【0077】
制御部18は、シャフトの小さなルーメンを通してリーフレットに接続されたプル(閉鎖)ワイヤを引っ張るためのノブ24を含むことができる。 制御部18はまた、シース20を引き戻すための、または細長い編組構造12を押すためのスライダを含み得る。
【0078】
ハンドル16は、細長い編組構造12に吸引力を加えるために吸引源17に取り付けられることができる。吸引源17は、シリンジ(
図1A~
図1Bに示されるように)またはポンプであり得る。吸引源17は、カテーテルシャフト14内に配置された吸引ルーメンを介して細長い編組構造のルーメンに流体接続されている。
【0079】
ハンドル16は、ノブ24を保持および操作するのに適した形状のポリマーから製造されることができる。
【0080】
カテーテルシャフト14は、ハンドル16を編組構造12に接続する細長い中空管であり得る。カテーテルシャフト14は、意図された治療位置に適した長さ、直径、および可撓性から選択される。解剖学的位置が異なると、剛性および軸方向の可撓性が異なるカテーテルシャフト14が必要になる。シャフトの長さに沿って可変の剛性および軸方向の可撓性を有するカテーテルシャフト14は、当技術分野でよく知られている。このようなシャフトは、PTFEなどの低摩擦層を有する内部ポリマーシャフト、内部層を覆う金属編組またはコイル、およびさまざまなデュロメーター評価のPEBAXまたはポリアミド複合材などの外部ポリマー層(ジャケット)を含む、編組またはコイルシャフトであり得る。これらのタイプのシャフトは、曲がりくねった脈管構造または頭蓋内脈管構造への送達に一般的に使用される。
【0081】
カテーテルシース20は、シャフト14および細長い編組構造12の上をスライドすることができる細長い中空管であり得る。編組構造12の拡張のためにシースを引き戻すことができるように、シース20の長さは、シャフト14および編組構造12を合わせた長さよりも短くすることができる。シースは、ハンドルから展開可能なシースプルワイヤにより引っ張ることができる。シースの引き戻しにより、自己拡張して血管ルーメンを占める細長い編組構造12が露出する。
【0082】
カテーテルシース20は、意図された治療位置に適した長さ、直径、および可撓性から選択される。遠位の高い可撓性および追跡性能は、柔らかい素材のジャケットおよび金属コイルのデザインを選択することによって達成される。シース20は、曲がりくねった解剖学的構造の送達のために機能し、近位の剛性および押し込み可能性は、異なる剛性および軸方向の可撓性のカテーテルシース20を必要とする。シースの長さに沿って可変の剛性および軸方向の可撓性を有するカテーテルシース20は、当技術分野でよく知られている。このようなカテーテルは、編組またはコイル状にすることができ、PTFEなどの低摩擦層を有する内部ポリマーシャフト、内部層を覆う異なるセクションにある金属編組およびコイル、およびさまざまなデュロメーター評価を含むPEBAX、ポリウレタンまたはポリアミド複合材などの外部ポリマー層(ジャケット)を含む。
【0083】
典型的には、シャフトの近位領域は、カラム力の伝達を最大化するために比較的硬く、剛性は次第に減少し、曲がりくねった解剖学的構造を通る経路指定を可能にするように遠位領域に向かって可撓性が増加する。
【0084】
カテーテルシャフト14は、吸引源17からの吸引を収容するための吸引導管を含むことができる。吸引導管はまた、細長い編組構造12をシース20から押し出すためにそれを使用することによって、細長い編組構造12を展開するために使用され得る。カテーテルシャフト14はまた、遠位開口部22を閉鎖/開放するための作動ワイヤを収容するための第2のルーメンを含み得る。吸引導管およびワイヤルーメンは、円形、矩形、または三日月形にすることができる。
【0085】
カテーテルシャフト14の外径は、1.5~3mm(例えば、1.9mm)であり得る一方、吸引導管であるカテーテルシャフトの内径は、1.2~2.8mmであり得る。プル/クロージャーワイヤルーメンの直径は、0.02~0.20mmである。カテーテルシャフトの長さは、10~180cmの範囲にあり得て、治療対象の血管および場所に応じて選択され得る。
【0086】
図2A~
図2Bは、細長い編組構造12をより詳細に示す。拡張したとき、細長い編組構造12は、外径3~7mm、長さ2~5cm、容積0.14~2cm
3のスリーブ/漏斗として形作られる。折り畳まれたとき、細長い編組構造12は、1.5~3mmの外径および2~7cmの長さに拘束される。
【0087】
細長い編組構造12は、6~24本のワイヤ30から構成され、各ワイヤ30はループ32(6~12本のループ32)を形成する。ワイヤ30は、直径0.025~0.1mmであり得て、ニチノールまたはステンレス鋼などの合金から、またはポリエチレンまたはポリプロピレンなどのポリマーから作製され得る。各ループワイヤ30のテール34は、遠位方向から近位方向に螺旋パターンで逆巻きされる。形成された編組は、交差するワイヤ30間の角度が70~140度の範囲であるメッシュを形成するワイヤ30の交差パターンを含む。
【0088】
ワイヤ30の部分31は、部分33よりも薄くすることができ、それにより、細長い編組構造の残りの部分よりもループ32におけるより大きな柔軟性を可能にする。例えば、ワイヤ30の部分33は、直径が0.04~0.1mmであり得る一方、部分31は、直径が0.025~0.05mmであり得る。
【0089】
ループ32は、細長い編組構造の遠位端を形成し、2本のワイヤごとまたは3本または4本のワイヤごとに、重なり合うパターンで円周方向に並んで配置される。ループ32は、細長い編組構造12の閉鎖機構の一部を形成する。
図2Aおよび
図2Bの(それぞれ)開いた状態と閉じた状態との間の移行に示されるように、細長い編組構造の閉じた遠位開口22内側にループ32を引く。
【0090】
このような閉鎖は、ハンドル16から作動される閉鎖ワイヤ36(
図2Aの破線で強調され、ループ32で示される)によって促進することができる。閉鎖ワイヤ36は、0.025~0.25mmの直径および15~200cmの長さ(ハンドル16から編組構造12まで)を有する合金またはポリマーワイヤであり得る。閉鎖ワイヤ36は、好ましくは、細長い編組構造の長さに沿って螺旋状であり、その内壁または外壁に対して配置される。上述したように、ワイヤ36の螺旋は、それが、曲がりくねった血管を通しての送達または編組構造の長さの変化に起因する細長い編組構造12の曲げの影響を打ち消すという点で有利である。細長い編組構造12をまっすぐ走るワイヤは、細長い編組構造が曲げられるとき(例えば、湾曲した血管を通して送達されるかまたは配置されるとき)または拡張/収縮すると、短くなり、したがって遠位開口部22の閉鎖を作動させる。
【0091】
閉鎖ワイヤ36が細長い編組構造12の長さに沿って螺旋状に巻かれ、アイレット50に通され、次いで細長い編組構造12の長さに沿って戻される、本デバイスの実施形態が
図2Cに示されている。本デバイスのそのような構成では、閉鎖ワイヤ36の両端は、ハンドルに経路指定され、単一のワイヤに、または直接作動ノブに取り付けられる。この二重螺旋ワイヤ構成は、ワイヤが対称的な方法で取り付けられ、アイレット50における摩擦がより均一に分配されるので、遠位開口部作動の信頼性を高める。これにより、遠位端の完全な開口に対抗できる摩擦が減少し、遠位開口が引かれて閉じたときの操作がよりスムーズになる。
【0092】
細長い編組構造12は、高度に湾曲した血管に適合し、大きな血塊を回収できるように設計されている。 また、拡張時に血管内の流れを阻止し、血塊がカプセル化されると血塊と血管との相互作用を防ぐようにも設計されている。
【0093】
細長い編組構造12はまた、拡張前および蛍光透視法を使用する回収中に、オペレータが漏斗の位置を識別することを可能にする放射線不透過性マーカ(例えば、金、プラチナまたはタンタル)を含むことができる。一実施形態によれば、編組ワイヤの少なくとも1つは、ニチノールワイヤ(例えば、DFTワイヤ)の内側にプラチナなどの放射線不透過性コアワイヤを含むことができる。放射線不透過性クリンプは、1つ以上のリーフレットループに取り付けることができる。クロージャーワイヤはDFTワイヤであることもできる。
【0094】
細長い編組構造12は、オペレータが吸引源17を使用して細長い編組構造12のルーメン内に血塊を吸引できるように、薄くて柔軟なポリマーカバー40で(内部または外部に)コーティングされることができる。ステントおよび編組構造のコーティングは、当技術分野でよく知られている。それは、ディッピングスプレーまたは堆積などのさまざまな技術を使用して行われる。これは通常、構造すなわち構造ストラットを非常に薄い層でコーティングする第1のステップと、構造をマンドレルにマウントしてマンドレルをコーティングしてストラット間のセルを覆い、円筒状コーティングを形成する第2のステップと、を組み合わせる。
【0095】
コート40は、性能(例えば、編組12の屈曲性)に大きな影響を与える可能性があるので、好ましくは、厚さが5~30ミクロンであるポリウレタンなどの柔軟な材料から製造される。
【0096】
コート40で覆われた細長い編組構造12は、非常に高い弾性を示すことができる。コーティングの弾性は主に、圧縮構成と拡張構成との間の移行にとって重要である。編組構造のセルは、ひし形である。編組構造が外側のシースに圧縮されると、セルの軸方向の軸(編組構造の軸に沿った)は100%以上伸び、ポリマーコーティングはそのような伸びを引き裂くことなく許容するはずである。
【0097】
細長い編組構造12の内面または外面の長さに沿ってルーメンを形成することができる(例えば、コート40内に形成される)。そのようなルーメンは、カテーテルシャフト14の長さにわたって延びる導管を介してハンドル16に接続されることができる。ルーメンは、血塊位置と干渉することなく血塊の存在を識別するために、血管ルーメンに造影剤を投与するために使用することができる。
【0098】
細長い編組構造12の拡張された直径は、その長さ全体にわたって、またはループ32において、血管の直径よりもわずかに大きく構成される。これは、細長い編組構造12と血管壁との間の緊密なシールおよび血流の閉塞を確実にする。このような閉塞は、「きれいな」血液の吸引が血栓部位に流入するのを防ぎ、血塊の吸引を促進し、血塊粒子が細長い編組構造12を通過して流れるのを防ぐ。
【0099】
ループ32は、丸みを帯びたまたは三角形の形状(または他の適切な形状)であり、長さ1~4mm(例えば、3mm)、ベース(最初のワイヤ交差の領域)で2*PI*D/ループ数の幅である。
【0100】
ループ32は、外側に広がるか、または細長い編組構造12の壁と連続することができる。
【0101】
各ループ32またはいくつかのループ30は、そこを通る閉鎖ワイヤ36の経路指定のためのアイレット50を含み得る。アイレット50は、細長い編組構造12に接する軸(例えば、ループ32の平面に対して90°回転した90)を有して配向することができ、その結果、ワイヤ36とループ32との間の摩擦を低減し、そしてそれはループ32を閉じるために必要な引張力を低減しながら、固く縛られて閉じることができる円を形成するために、閉鎖ワイヤ36をアイレット50に通すことができる。摩擦を減らすために、コート40は、ループ32で終了して、アイレット50を覆わないことができる。
【0102】
アイレット50は、ループ32の端部を捻ることによって、またはループ32の端部にアイレット50を溶接/はんだ付けすることによって、形成することができる。
【0103】
本システムは、血塊などの生体物質またはステントなどの物体を回収するために使用することができる(
図5)。
【0104】
以下は、経皮的アプローチを使用した動脈などの血管からの血塊の回収における本システムの使用を説明する。
【0105】
ガイドカテーテルまたはガイドシースは、内頸動脈に配置され、本システムは、ガイドワイヤ(GW)を有するマイクロカテーテル上の3軸システムとして送達される。本システムは、シースの遠位端が血塊の近位になるまでシース内で収縮された編組構造とともに、蛍光透視下でマイクロカテーテルGW上を誘導される(
図3A、
図3B)。
【0106】
細長い編組構造を展開し、それが血管の直径および形状まで自己拡張できるようにし(
図3C)、それにより動脈の血流を停止させるために、オペレータは、カテーテルシャフトを前進させながらシースを引っ張る。
【0107】
オペレータはマイクロカテーテルGWを後退させ、シリンジまたはポンプをハンドルの近位端に接続する。シリンジ/ポンプを使用して、血塊を漏斗内に吸引する(
図3D)。あるいは、ステント回収器(
図5)を使用して血塊を回収し、その後、ステント回収器および血塊が本デバイスによって吸引または捕捉される。
【0108】
血塊が編組構造内に完全に回収されたら(
図3D)、オペレータは、ハンドルのノブを回して編組構造の遠位開口部を閉じ、血塊をカプセル化する(
図3E)。
【0109】
次に、編組構造がシースの中に引き込まれ、システムが身体から取り外される。次に、オペレータは、カテーテルを通して造影剤を注入することができ、血塊が除去されていることを確認することができる。
【0110】
あるいは、細長い編組構造12は、血塊と接触して展開されることができ、次いで、遠位開口部22は、(閉鎖ワイヤ36の部分的な引っ張りを介して)部分的に閉鎖され、先細の先端を形成することができる。次に、真空を適用して、血塊を細長い編組構造12のルーメンに吸引することができ、その後、遠位開口部22を完全に閉じることができ、カテーテルを血管から引き込むことができる。
【0111】
細長い構造を編組することは、それが軸方向の可撓性を特徴とし、したがって湾曲した解剖学的構造に非常に適応できるチューブ構造をもたらすので、好ましい。ただし、チューブのレーザー切断などの他のテクノロジーは、湾曲の少ない解剖学的構造に使用することができ、また、これらのテクノロジーの将来の進歩により、軸方向の可撓性の性能が向上する場合もある。チューブからのレーザー切断は、ブリッジで相互接続されたジグザグリングの軸配列を含む、自己拡張型ステントに使用されるパターンと同様のパターンを使用する。レーザー切断された細長い構造においてループをより柔軟にするために、ループは、細長い構造の他の部分よりも狭いプロファイルで切断され得る。
【0112】
その遠位端の閉鎖能力に起因して、本デバイスはまた、血管壁との高い摩擦を有し、編組構造内に完全に吸引することができない、大きくかつ硬い血塊を捕らえるために使用することができる。そのような場合、リーフレットは、血塊の上で閉じることができ、血塊物質を噛み込むことができ、血塊を体外に捕らえ出すことができる。
【0113】
編組構造のリーフレットは、組織の生検にも使用できる。そのような場合、ループワイヤは、遠位端が組織を覆って閉じられるときに、組織の一部が切断されることができて、編組構造内に回収されることができるように、組織の切断を可能にするようにプロファイルされ得る。
【0114】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【実施例】
【0115】
ここで、以下の実施例を参照するが、これらの実施例は、上記の説明と共に、本発明を非限定的な方法で例示する。
【0116】
[実施例1]
編組構造の製造
図4A~
図4Cに示す細長い編組構造は、直径0.06mmの9本のニチノールワイヤ、3本のDFTワイヤから製造された。技術者は、それらのワイヤを専用ジグに取り付け、アイレットを作成し、次いでワイヤを交差させて遠位ループを作成し、次いでワイヤを交差させて編組構造を作成した。次に、その形状を維持するためにその構造を熱処理した。ハンドル、シャフトおよびシースは別々に製造された。
【0117】
次に、編組構造は、浸漬によりポリウレタン薄層0.020mmでコーティングされた。
【0118】
クロージャーワイヤは、特殊治具を用いて適切な形状に熱処理される。次に、漏斗の遠位ループのアイレットに通して、一端を固定する。次に、ワイヤを漏斗の内側に配置し、遠位端から近位端までシャフト側ルーメンに通して、ハンドルに接続する。
【0119】
次に、細長い編組構造を、融合プロセスを使用してシャフトに接続した。
【0120】
編組構造の閉鎖と開放は、閉鎖ワイヤの近位端を(それぞれ)引っ張る/解放することで成功裏にテストされた(それぞれ
図4Bと
図4A)。内側に反転したクロージャを達成するためのクロージャーワイヤの引っ張りも成功裏にテストされた(
図4C)。
【0121】
[実施例2]
動物研究
ブタモデル(雌、49kg)を使用した動物試験を実施して、血栓除去と遠位塞栓形成の防止における本デバイスのプロトタイプをテストした。
【0122】
いくつかのプロトタイプを使用して、シースの設計、シースの材料、および放射線不透過性マーカを評価した。
【0123】
研究前に動物から自己血を採取し、放射線不透過性のために全血を硫酸バリウムと混合し、混合物を室温で1時間インキュベートすることにより、全血血栓を作成するために使用した。次に、ガイドカテーテルを通して選択された血管(総頸動脈枝)に血栓を注入した。血塊位置は、蛍光透視法(血管造影)下で造影剤注入により検査された。
【0124】
[結果]
本システムは、シースの先端が血塊の近位に配置されるまで、総頸動脈枝の閉塞部位に誘導された。漏斗が完全に展開されるまで、シースを引き込んだ。30 ccシリンジをカテーテルハブに接続し、シリンジプランジャをゆっくりと引いて、真空を生成し、血塊を吸引した。一旦、血塊が編組構造内で視覚化されたら(
図6)、カテーテルのハンドルのノブを回してワイヤループ(リーフレット)を閉じた。閉鎖は、編組構造に収縮されたリーフレットで視覚化された。編組構造をガイドシース内に引き込み、カテーテルを身体から取り外した。漏斗から血塊の破片は放出されなかった。血管造影(angiograph)を行って、動脈の再疎通を確認した(
図7)。
【0125】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明されている本発明のさまざまな特徴は、別個にまたは任意の適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0126】
本発明は、その特定の実施形態に関連して説明されてきたが、多くの代替、修正、および変形が当業者には明らかであることは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内にあるそのようなすべての代替、修正、および変形を包含することが意図されている。この明細書で言及されているすべての出版物、特許、および特許出願は、個々の出版物、特許、または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度に、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、本出願における参考文献の引用または特定は、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることの承認として解釈されるべきではない。