(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】同種組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/28 20150101AFI20240807BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240807BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240807BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240807BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20240807BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240807BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240807BHJP
C12N 5/0775 20100101ALN20240807BHJP
【FI】
A61K35/28
A61P1/04
A61P3/10
A61P19/02
A61P21/02
A61P29/00
A61P37/06
C12N5/0775
(21)【出願番号】P 2022149351
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2020543858の分割
【原出願日】2019-02-15
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520306727
【氏名又は名称】ネクストセル ファーマ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】スバーン,マティアス ヨースタ
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/131618(WO,A1)
【文献】特表2017-522029(JP,A)
【文献】NEKANTI, U et al.,Optimization and scale-up of Wharton's jelly-derived mesenchymal stem cells for clinical applications,Stem Cell Research,2010年,Vol. 5,pp. 244-254
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A61K
A61P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3の個体ドナーに由来する間葉系幹細胞(MSC)を含む、単離されプールされた同種MSC集団
を含む医薬組成物であって、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の50%を超えず、前記MSCは最大8つの継代に供されており、前記MSC集団は、
-前記少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSCを培養または提供して、少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSC集団を得る工程と、
-少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイし、前記各個体ドナー由来のMSC集団についての少なくとも3つのアッセイ結果を得る工程であって、前記少なくとも3つのアッセイは、各個体ドナー由来のMSC集団の免疫抑制能力を測定する少なくとも1つのアッセイを含む、工程と、
-各アッセイについて、前記アッセイ結果に基づいて個体のランク付けスコア値を前記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当て、したがって、各個体ドナー由来のMSC集団について少なくとも3つの個体ランク付けスコア値を得る工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示すか、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す、工程と、
-前記少なくとも3つの個体ランク付けスコア値に基づいて、合計スコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てる工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示し、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す、工程と、
-それらの合計スコア値に基づいて、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来のMSC集団のサブセットを選択する工程と、
-前記選択された個体ドナー由来のMSC集団をプールして、単離されプールされた同種MSC集団を得る工程と、を含む方法により得られ、
前記プールされた同種MSC集団は、前記プール工程後にさらに培養されず、
前記少なくとも3つのアッセイは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性を測定する1つのアッセイ、前記MSCによって分泌されたプロスタグランジンE2を測定する1つのアッセイ、および末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対する前記MSCの効果を測定する1つのアッセイを含み、前記集団が、統計的に有意なバッチ間の変動を示さず、
前記バッチ間の変動を、前記個体ドナー由来のMSC集団をアッセイするために用いられた前記少なくとも3つのアッセイの1つまたはいくつかからの結果を比較することによって定量し
、
バッチ内の総合評価の変動は、アッセイされたすべての個体ドナー由来MSC集団のアッセイ結果と、個体ドナー由来MSC集団の選択されたサブセットのアッセイ結果と、を比較した場合、少なくとも30%低減さ
れ、
前記医薬組成物は、前記プール工程後に、前記単離されプールされた同種MSC集団をさらに培養することなく、患者に直接投与するためのものであり、かつ
前記医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤または担体を含む、
医薬組成物。
【請求項2】
前記統計的に有意なバッチ間の変動を示さないことは、2つの連続して生成されたバッチ間
のことである、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記統計的に有意なバッチ間の変動を示さないことは、生成されたバッチと参照バッチとの間
のことであり、前記参照バッチは、前記方法により以前に生成された単離されプールされた同種MSC集団である、請求項1に記載の
医薬組成物。
【請求項4】
バッチ内の総合評価の変動は、アッセイされたすべての個体ドナー由来MSC集団のアッセイ結果と、個体ドナー由来MSC集団の選択されたサブセットのアッセイ結果と、を比較した場合、少なくとも35%低減される、請求項1~3のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項5】
薬剤として使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項6】
炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防に使用するための、請求項5に記載の
医薬組成物。
【請求項7】
前記自己免疫疾患が、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、および関節炎からなる群から選択される、請求項6に記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記自己免疫疾患が、1型糖尿病または成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)である、請求項6または7に記載の
医薬組成物。
【請求項9】
前記集団を投与される患者が、1型糖尿病またはLADAと3年以内に診断された、請求項8に記載の
医薬組成物。
【請求項10】
前記集団を投与される患者が、C-ペプチドを発現する、請求項8または9に記載の
医薬組成物。
【請求項11】
前記患者が、空腹時血漿C-ペプチド濃度≧0.01nmol/Lを示す、請求項10に記載の
医薬組成物。
【請求項12】
前記使用が、患者に、少なくとも3x10
6個の細胞の用量を投与することを含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項13】
前記使用が、前記患者に、少なくとも3x10
6個の細胞の用量を投与することを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項14】
前記単離されプールされた同種MSC集団の投与が、患者において、抗HLA抗体力価を誘発しないか、もしくは低い抗HLA抗体力価を誘発する、請求項5~8のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項15】
前記単離されプールされた同種MSC集団の投与が、前記患者において、抗HLA抗体力価を誘発しないか、もしくは低い抗HLA抗体力価を誘発する、請求項9~13のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、間葉系幹/間質細胞の同種集団および関連する組成物であって、複数のドナーからプールされた細胞を含む集団および組成物、ならびに1型糖尿病などの疾患の処置および/または予防におけるそれらの使用に関する。本開示はまた、上記組成物を得るための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞(MSC)は、CD14、CD34、およびCD45の発現を欠きながら、表面マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する非造血細胞である。ポリクローナル培養として増殖させた場合、それらは自己複製および間葉の様々な形態への分化を保持する能力を有する不均一な細胞集団である(Dominici,et al.(2006),The International Society for Cellular Therapy position statement.Cytotherapy 8:315-317)。インビトロでは、MSCは、標準的な組織培養条件下でプラスチックに接着し、骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化する能力を有する必要がある。MSCは、最初に発見された骨髄だけでなく、ウォートンゼリーおよび胎盤などのほぼすべての他の形態の組織にも見出すことができる。
【0003】
MSCは、生存、血管新生、および組織修復を促進し、自然免疫および適応免疫細胞による応答を調節する能力がある(Berman et al,(2010)Diabetes 59:2558-2568)。したがって、MSCの移植は、例えば自己免疫疾患、炎症性疾患および移植拒絶の分野において魅力的な治療選択肢を提供する。
【0004】
1型糖尿病(Diabetes mellitus type 1)(1型糖尿病(type 1 diabetes)、T1Dとも称される)は、不十分なインスリンが産生される糖尿病の一種である。根本的なメカニズムには、膵臓におけるインスリン産生β細胞の自己免疫破壊が含まれる。T1Dの発症時に、β細胞の量は、正常レベルと比較して定期的に20~40%に減少している。残留インスリン分泌の維持は、HbA1cの低下、より少ない血糖変動、およびケトアシドーシスのリスクの低下に寄与する上で重要である(Madsbad et al.,(1979)Br Med J;2(6200):1257-9;Steffes et al.,(2003)Diabetes Care;26(3):832-6)。これは、重度の低血糖イベントおよび後期合併症のリスクも大幅に軽減する。同定されている成功的介入は、疾患を予防するために使用されるだけでなく、明白な高血糖となる前に進行中の疾患を有する患者にも適用され、それによって疾患の発症を予防する手段を提供する。
【0005】
残留β細胞を保全するための異なる介入戦略が試験されているが、内因性インスリン産生はせいぜい一時的にしか維持されていない。
【0006】
培養で増殖させたMSCの移植を使用した最初の臨床試験が1995年に発表された(Lazarus et al.,(1995)Bone Marrow Transplant 16:557-564)。それ以来、様々な疾患の処置のためのMSCを使用した多くの臨床試験が発表され、多くが進行中である。
【0007】
しかしながら、移植におけるMSCの使用を制限する要因は、望ましい特性を有する細胞の大規模なバッチを得ることが難しいことである。さらに、あるドナー由来の細胞の増殖は、一般には単一のバッチの生産に使用され、次のバッチは、典型的には、別のドナー由来の細胞を使用する。したがって、バッチ間の変動は、安全性および有効性の両方にとって大きな懸念事項である。
【0008】
これらの課題により、細胞療法業界は、広範囲の試験を伴う厄介な製造プロセスを経るようになり、過剰増殖の結果として、細胞はその能力を失い、および/または高い遺伝的不安定性リスクを示し得る。さらに、細胞増殖が個別の場合に応じて行われる場合、レシピエント患者に対するMSCの最適な投与量を保証することが困難であり、「何とか増殖した細胞数を患者に与える」ことが一般的な手法である。これにより、処置の結果および潜在的な有害な副作用について非常に予測不可能になる。さらに、好適なドナーを見つけるプロセスは時間がかかり、面倒であり、好適なドナーが見つかるかどうかに関して不確実となり得る。さらに、患者が、移植されたMSCに対する抗体を作るリスクがある。特に、投与されたMSCとMSCに対する患者が作る抗体との間の用量反応関係が予想される。この効果は、複数の投与によって甚大になり得る。
【0009】
したがって、自己免疫疾患、炎症性疾患、および移植拒絶の処置および/または予防に好適なMSC集団を提供することが当該技術分野で大いに必要であり、MSC集団はそれを必要とする患者への好適な投与量の細胞の投与を可能にする。生産は、バッチ間の変動がほとんどない堅牢な製造プロセスを保証する必要があり、すべてのバッチが複数の用量を生成する必要がある。細胞は効力があることが証明されている必要があり、同種感作および/またはドナー特異的抗体のリスクを最小限に抑えるように製剤化する必要がある。上記集団は、ドナー-レシピエント適合を必要とせずに患者にとって即時に利用可能であることがさらに望ましい。
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、先行技術の欠点を克服する、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶のための方法、薬剤、および処置を提供することである。本明細書に記載される単離されプールされた同種MSC集団による処置は、興味深い治療選択肢であることが企図される。
【0011】
したがって、本開示は、移植に好適なMSC集団をそれを必要とする患者に提供することを目的とし、その集団は、効力がある細胞を含み、統計的に有意なバッチ間の変動が低いかまたは全くなく、処置患者において低い同種免疫または同種感作をもたらす。本目的は、本明細書に記載の選択アルゴリズムを使用する開示された方法によって得られる、単離されプールされた同種MSC集団によって達成される。
【0012】
本明細書で使用する場合、「選択アルゴリズム」という用語は、以下に定義される方法の工程2~5を指し、言い換えれば、培養または提供工程およびプール工程を除いて、開示されるすべての方法工程を指す。本開示の範囲を逸脱することなく、さらなる工程が選択アルゴリズムに追加されてもよいことが理解されよう。
【0013】
したがって、本開示の第1の態様では、少なくとも3の個体ドナーに由来する間葉系幹細胞(MSC)を含む、単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法であって、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の50%を超えず、MSCは最大8つの継代に供されており、
-少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSCを培養して、少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSC集団を得る工程と、
-少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイし、上記各個体ドナー由来のMSC集団についての少なくとも3つのアッセイ結果を得る工程であって、上記少なくとも3つのアッセイは、各個体ドナー由来のMSC集団の免疫抑制能力を測定する少なくとも1つのアッセイを含む、工程と、
-各アッセイについて、アッセイ結果に基づいて個体のランク付けスコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当て、したがって、各個体ドナー由来のMSC集団について少なくとも3つの個体ランク付けスコア値を得る工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示すか、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す、工程と、
-少なくとも3つの個体ランク付けスコア値に基づいて、合計スコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てる工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示し、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す、工程と、
-それらの合計スコア値に基づいて、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来のMSC集団のサブセットを選択する工程と、
-上記選択された個体ドナー由来のMSC集団をプールして、単離されプールされたMSC集団を得る工程と、を含み、
上記プールされた同種MSC集団は、プール工程の後にさらに培養されず、上記少なくとも3つのアッセイは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性を測定する1つのアッセイ、上記MSCによって分泌されたプロスタグランジンE2を測定する1つのアッセイ、および末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対する上記MSCの効果を測定する1つのアッセイを含む、方法が提供される。
【0014】
本開示は、少なくとも3の個体ドナー由来の細胞を含む、単離されプールされた同種MSC集団を得る方法を提供し、いずれか1のドナー由来の細胞の数は総細胞数の50%を超えず、したがって、集団が各ドナーに由来するかなりの数の細胞を含み、いずれか1のドナー由来の細胞が集団において支配的ではないことが保証される。集団が同様の数または同じ範囲の数の異なる個体ドナーに由来する細胞を含むことが有益であると考えられる。本発明者らは、本方法に従って得られた単離されプールされた同種MSC集団が低い免疫原性特性を示すと予想する。本明細書では、所望の機能を有する細胞を選択するために選択アルゴリズムを使用する。さらに、選択アルゴリズムの基準を満たす複数のドナー由来の細胞をプールすることにより、バッチ間の変動が低下する。方法はまた、選択アルゴリズムが望ましい特性を有する細胞を選択するように機能することにより、単離されプールされた同種MSC集団が効力がある細胞を含むことを保証する。さらに、本明細書に記載の方法は、プール工程に起因して、細胞の大きなバッチを得ることを可能にする。特に、少ない数の継代に供された細胞の大きなバッチを得てもよい。さらに、大きなバッチにより、製造コストの削減も可能になる。対照的に、細胞がプールされない場合、特に、細胞が少ない数の継代に供される場合、細胞の大きなバッチを得ることは困難である。さらに、少ない継代数はMSCの効力が高いことと関連するので、細胞が過剰な数の継代に供されないことが望ましい。明確にするために、継代培養とは、以前の培養から新鮮な増殖培地に一部またはすべての細胞を移すことによって作成された新しい細胞または微生物培養である。この作用は、細胞の継代培養または継代と称される。細胞が培養において行ったおおよその分裂数を記録するために、継代数を記録してもよい。本明細書で使用する場合、「継代」という用語は、以前の培養物から新鮮な増殖培地に細胞を移すことを指す。
【0015】
したがって、一実施形態では、単離されプールされた同種MSC集団中の上記MSCが、最大7つの継代、例えば最大6つの継代、例えば最大5つの継代、例えば最大4つの継代、例えば最大3つの継代、例えば1つ、2つ、または3つの継代、例えば2つまたは3つの継代に供されている、本明細書に開示される方法が提供される。継代数は、培養物に存在する細胞数に関連することを理解されたい。したがって、望ましい特性を有する十分な数の細胞を得るために、細胞数と効力の維持との間のバランスを保持することは有益であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、上記MSCは、2つ~6つ、例えば2つ~5つ、例えば2つ~4つ、例えば2つ~3つの継代に供されている。
【0016】
間葉系幹細胞(MSC)は、CD14、CD34、およびCD45の発現なしに、表面マーカーCD73、CD90、およびCD105を発現する非造血細胞である。インビトロでは、MSCは標準的な組織培養条件下でプラスチックに接着し、骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化する能力を有する必要がある。本明細書で使用する場合、「MSC」、「間葉系幹細胞」、「間葉系間質細胞」、および「骨髄間質細胞」という用語は、上記の特性を有する細胞を指す。本開示は、国際細胞療法学会(ISCT)の基準に従ったMSCの定義に準拠している。MSCは、骨髄、末梢血、脂肪組織、歯組織、胎盤、臍帯、羊水、臍帯血、ウォートンゼリー、脱落膜、軟骨膜、および羊膜に由来し得る。
【0017】
したがって、一実施形態では、上記MSCが、骨髄由来MSC、末梢血由来MSC、脂肪組織由来MSC、歯組織由来MSC、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、脱落膜由来MSC、軟骨膜由来MSC、および羊膜由来MSCからなる群から選択される、本明細書に開示される方法が提供される。特定の実施形態では、上記MSCは、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、脱落膜由来MSC、軟骨膜由来MSC、歯髄および羊膜由来MSC、例えば、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、脱落膜由来MSC、歯髄由来MSC、および羊膜由来MSC、例えば、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、歯髄由来MSC、例えば、胎盤由来のMSC、臍帯由来のMSC、臍帯血由来のMSC、およびウォートンゼリー由来MSC、例えば、臍帯由来のMSC、臍帯血由来のMSC、およびウォートンゼリー由来MSCからなる群から選択される。一実施形態では、上記MSCは、臍帯由来MSCまたはウォートンゼリー由来MSC、例えば、ウォートンゼリー由来MSCである。
【0018】
本発明の方法のいくつかの実施形態では、任意の同種ヒト白血球抗原(HLA)の濃度が、単一のドナー由来の細胞または少数のドナー由来の細胞を使用した場合よりも低くなることを保証するために、単離されプールされた同種MSC集団が、3より多いドナーに由来するMSCを含むことが有益であり得る。これにより、単離されプールされた同種MSC集団を投与された患者における抗HLA抗体(すなわち、ドナー特異的抗体、DSA)の生成のリスクが低下することが企図される。本発明者らは、単離されプールされた同種MSC集団における、低濃度の任意の特定のHLA対立遺伝子が、上記細胞の単回および複数回投与に関連する悪影響のリスクを低減すると予想する。さらに、複数のドナー由来の細胞を使用することにより、低いバッチ変動を得ることができる。製造に適格であり、かつ、大規模な臨床グレードの薬品への展開におけるすべてのGMP品質基準に合格しているドナー間におけるドナー間の変動は、すべてのドナーの結果をプールについて選択したドナーからの結果と比較した場合、最大40%またはそれより低下する。特定のアッセイについての変動の低下は、実施例12に示され、該実施例では、選択アルゴリズムに基づき、選択されたドナーと特定のバッチについて評価されたすべてのドナーと間において、最大40%またはそれより多い変動の総合評価による低下が生じる。
【0019】
MSCのGMP生産により、ドナーの変動が劇的に低減し、選択アルゴリズムにより、最大40%またはそれより多く、変動がさらに低減し、統計的有意差のないバッチ間の変動をもたらす。
【0020】
したがって、一実施形態では、上記集団は、少なくとも4の個体ドナー、例えば少なくとも5の個体ドナー、例えば少なくとも6の個体ドナー、例えば少なくとも7の個体ドナー、例えば少なくとも8の個体ドナー、例えば少なくとも9の個体ドナー、例えば少なくとも10の個体ドナーに由来するMSCを含む。別の実施形態では、単離されプールされた同種MSC集団は、3~20の個体ドナー、例えば3~15の個体ドナー、例えば3~10の個体ドナー、例えば4~8の個体ドナー、例えば5~7の個体ドナー、例えば5、6、または7の個体ドナーに由来するMSCを含む。特定の一実施形態では、各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする上記工程は、プール工程でプールされた個体ドナー由来のMSC集団の数よりも、少なくとも1より多く、例えば少なくとも2より多く、例えば少なくとも3より多く、例えば少なくとも4より多く、例えば少なくとも5より多く、例えば少なくとも6より多く、例えば少なくとも7より多く、例えば少なくとも8より多く、例えば少なくとも9より多く、例えば少なくとも10より多くの個体ドナーに由来するMSC集団をアッセイすることを含む。特定の一実施形態において、各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする上記工程は、プール工程でプールされた個体ドナー由来のMSC集団の数と同じ数の個体ドナー由来のMSC集団の少なくとも1~4倍、例えば2~4倍、例えば2~3倍または3~4倍アッセイすることを含む。したがって、例えば、単離されプールされた同種MSC集団が3の個体ドナー由来のMSC集団に由来するMSCを含む場合、各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程は、3~12、例えば、6~12、例えば6~9、または9~12の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む。この例では、3の個体ドナー由来のMSC集団のみがプールのために選択され、残りの個体ドナー由来MSC集団は破棄される。
【0021】
本開示の一実施形態では、MSCを培養または提供する上記工程は、少なくとも4の個体ドナー由来のMSCを培養または提供して、上記少なくとも4の個体ドナー由来のMSC集団、例えば少なくとも5、例えば少なくとも6、例えば少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば少なくとも9、例えば少なくとも10、例えば少なくとも11、例えば少なくとも12、例えば少なくとも13、例えば少なくとも14など、少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17個、例えば少なくとも18、例えば少なくとも19、例えば少なくとも20の個体ドナー由来のMSC集団を得ることを含む。例えば、約3~約50の個体ドナー由来のMSC集団、例えば約4~約50、例えば約5~約50、例えば約6~約50、例えば約6~約30、例えば約6~約20、例えば約6~約15、例えば約8~約12の個体ドナー由来のMSC集団を提供または培養してもよい。
【0022】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、上記個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程は、少なくとも3、例えば少なくとも4,例えば少なくとも5,例えば少なくとも6、例えば少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば少なくとも9、例えば少なくとも10、例えば少なくとも11、例えば少なくとも12、例えば少なくとも13、例えば少なくとも14、例えば少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17、例えば少なくとも18、例えば少なくとも19、例えば少なくとも20の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む。別の実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程は、約3~約50の個体ドナー由来のMSC集団、例えば約4~約50、例えば約5~約50、例えば約6~約50、例えば約6~約30、例えば約6~約20、例えば約6~約15、例えば約8~約12の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む。一実施形態では、約3~約20の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイし、例えば、8、9、10、11、12、13、14の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイしてもよい。本明細書に開示される方法の本工程においてアッセイされる個体ドナー由来のMSC集団は、本方法による培養工程または提供工程で得られることを理解されたい。
【0023】
いくつかの実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団が、各MSC集団の特性についてより多くの情報を得るために、少なくとも1つ以上の機能的アッセイを使用してアッセイされることが有益であり得る。したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程は、例えば少なくとも1つの機能的アッセイ、例えば少なくとも2つの機能的アッセイ、例えば少なくとも3つの機能的アッセイ、例えば少なくとも4つの機能的アッセイ、例えば少なくとも5つの機能的アッセイを使用することを含む。当業者は、上記アッセイが、MSC集団における望ましい特性を反映するように調整されてもよいことを理解するであろう。例えば、MSC集団が免疫抑制性であることが望ましい場合、アッセイは目的のこの特性を反映するように選択されてもよい。
【0024】
一実施形態では、上記少なくとも3つのアッセイは、上記MSCの免疫抑制能力を測定する少なくとも1つのアッセイを含む。本明細書で使用する場合、「免疫抑制能力」という用語は、免疫系の活性化または効力の低下を誘発する能力を指す。当業者は、免疫抑制能力がアッセイにおいて直接的または間接的に測定され得ることを理解するであろう。
【0025】
一実施形態では、上記MSCの免疫抑制能力を測定する上記少なくとも1つのアッセイにより、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性が測定される。免疫抑制能力は、培養上清中のトリプトファンおよびキヌレニンを測定することにより決定されるIDO活性の測定値として報告してもよい。IDOは、ヒトにおいてIDO1遺伝子によってコードされるヘム含有酵素である。IDO酵素は、Lートリプトファンを、T細胞を含む免疫細胞の増殖阻害物質として作用する免疫抑制分子であるNーホルミルキヌレニン(またはキヌレニン)に変換する。IDO活性は、キヌレニン/トリプトファンの比率として表してもよく、例えばELISAキットを使用して細胞培養上清に存在するトリプトファンおよびキヌレニンの量を計算することにより決定することができる。インターフェロンγ(IFNγ)で刺激した場合、間葉系幹細胞/間質細胞(MSC)は、刺激していない場合よりも多くのIDOを分泌する。
【0026】
誘導性IDO活性により、細胞が、本発明者らがこの方法で使用されるMSCの重要な品質特性とみなす免疫調節および/または免疫抑制に関連する機能的効力を有することが示される。
【0027】
MSCが末梢血単核球(PBMC)の増殖に対して有する免疫抑制効果を定量的に測定することが可能である。MSCは、Tリンパ球の増殖を抑制することが示されている。MSCとの混合リンパ球反応は、MSCの免疫抑制活性を示すために頻繁に使用される。一実施形態では、上記MSCの免疫抑制能力を測定する上記少なくとも1つのアッセイは、Tリンパ球などの末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対する上記MSCの効果を測定する。例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激Tリンパ球の増殖などのTリンパ球の増殖。PHAは、Tリンパ球の増殖を活性化する分裂促進因子として使用される。したがって、一実施形態では、上記のPBMC増殖は、PHA刺激Tリンパ球の増殖などのTリンパ球の増殖である。MSCの免疫抑制活性は、PHA刺激Tリンパ球の増殖の減少として定量化してもよい。
【0028】
さらに、MSCをアッセイして、上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定してもよい。プロスタグランジンE2(PGE2)は、酵素プロスタグランジンシンセターゼによってアラキドン酸から合成されるプロスタグランジンH2から様々な細胞において形成される。PGE2には、血管増殖、抗炎症作用および炎症促進作用の両方、睡眠/覚醒サイクルの調節、ならびにヒト免疫不全ウイルス複製の促進を含む、多くの生物学的作用がある。PGE2は、炎症、免疫調節、発熱、疼痛知覚、胃粘膜の保護、受胎能および分娩、ならびにナトリウムおよび水分貯留に活性である。PGE2はインビボで急速に代謝され、循環系でのPGE2の半減期は約30秒で、正常な血漿レベルは3~12pg/mLである。PGE2は、免疫応答の様々な工程の調節と免疫の様々なエフェクターメカニズムに関与している。MSCは、PGE2を構成的に生成し、その増殖は、cAMP依存性タンパク質キナーゼアイソフォームの差異的活性化を介してこのプロスタグランジンによって調節される。このPGE2産生は、炎症シグナルによってその誘導が刺激される局所環境に対して感受性がある。免疫細胞との共培養中、MSCによるPGE2産生は大幅に増加し、MSCの免疫調節効果に関与する。さらに、Rasmusson et al.(Rasmusson et al.,(2005)Exp.Cell.Res,305(1)(2005),pp.33-41)によって報告されたように、MSC誘発性免疫抑制効果におけるPGE2の役割はT細胞刺激に依存する。PGE2は、アロ抗原ではなくPHAによって活性化されるT細胞のMSC阻害に有効である。MSCは、COX1/COX2の発現および最終的にはPGE2の産生を調節することにより、リンパ球の活性化を防ぎ、T細胞の増殖阻害を誘導する。したがって、免疫抑制能力の測定値として、末梢血単核細胞(PBMC)およびMSCの共培養由来の細胞培養上清に見出されるPGE2分泌量を使用することができる。一実施形態では、上記MSCの免疫抑制能力を測定する上記少なくとも1つのアッセイは、上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定する。一実施形態では、上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定する上記少なくとも1つのアッセイは、PBMC、例えばPHA刺激PBMC、例えばPHA刺激Tリンパ球と共培養したときに上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定することを含む。
【0029】
さらに別のアッセイでは、MSCにおけるHLA-G発現を測定してもよい。HLA-Gは、天然に存在する耐性誘導分子として同定されている。生理的条件下では発現が制限されるが、例えば、IFNγ、IL-10、およびPHAに対する応答において上方制御され得る。MSCは、低レベルの細胞内HLA-Gを有し、低レベルの可溶性HLA-G(sHLA-G)を発現するが、IFNγまたはIL-10による刺激はレベルの増加をもたらすと予想される。PHAまたはGABAによる刺激は、可溶性HLA-Gレベルを増加させることが予想される。胎盤由来細胞株であるJEG-3は、細胞内および可溶性の両方について高レベルのHLA-G発現を有し、アッセイにおいて陽性対照として使用してもよい。範囲は、例えばフローサイトメトリー(FACS)分析による細胞内HLA-G発現および例えば個体ドナー由来のMSC集団間のELISAによるsHLA-Gの放出の両方を比較することであってもよい。
【0030】
したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、上記少なくとも3つのアッセイは、上記MSCにおけるHLA-G発現を測定する少なくとも1つのアッセイをさらに含み、例えば、上記少なくとも1つのアッセイは、IFNγ、IL-10、PHAおよび/またはGABAに応答して上記MSCにおけるHLA-G発現を測定し、例えば、上記少なくとも1つのアッセイは、IFNγ、IL-10、および/またはPHAに応答して上記MSCにおけるHLA-G発現を測定する。一実施形態では、上記少なくとも1つのアッセイは、IFNγ、IL-10、PHA、およびGABAからなる群から選択される1つまたはいくつかに応答して上記MSCにおけるHLA-G発現を測定する。上記HLA-G発現は、可溶性HLA-Gの発現であってもよい。
【0031】
さらに、個体ドナー由来のMSC集団は、所望の特徴を有する集団を選択するために、タンパク質発現および/またはサイトカイン発現に関して評価してもよい。例えば、上記集団におけるインターロイキン、成長因子、インターフェロン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、およびリポタンパク質の発現を評価することは関心があってもよい。したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、上記少なくとも3つのアッセイは、上記MSCによるタンパク質発現および/またはサイトカイン発現、例えば、インターロイキン、成長因子、インターフェロン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子、およびリポタンパク質からなる群から選択される1つまたはいくつかのタンパク質またはサイトカインの発現を測定する少なくとも1つのアッセイをさらに含む。別の実施形態では、タンパク質発現および/またはサイトカイン発現を測定する上記少なくとも1つのアッセイは、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-12/13、IL-17A、IL-21、IL-22、IL-29、IL-31、TGFβ、VEGF、FGF、GM-CFS、IFNα、IFNγ、アポEおよびTNFαからなる群、例えば、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-12、IL-12/13、IL-17A、IL-21、IL-22、IL-29、IL-31、TGFβ、VEGF、FGF、GM-CFS、IFNα、IFNγ、アポEおよびTNFαからなる群、例えば、IL-6、IL-8、GM-CSF、およびTGFβからなる群、例えば、少なくともIL-6からなる群から選択される1つまたはいくつかのタンパク質またはサイトカインの発現を測定する少なくとも1つのアッセイをさらに含む。特定の一実施形態では、上記タンパク質および/またはサイトカインのうちの少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば少なくとも5つ、例えば少なくとも6つ、例えば少なくとも7つ、例えば少なくとも8つ、例えば少なくとも9つ、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも11個、例えば少なくとも12個、例えば少なくとも13個、例えば少なくとも14個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも16個、例えば少なくとも17個、例えば少なくとも18個、例えば19個すべてが測定される。さらに、当業者は、上記タンパク質および/またはサイトカインの発現が、任意の刺激の非存在下および/または少なくとも1つの刺激の存在下で測定されてもよいことを理解するであろう。一実施形態では、上記タンパク質および/またはサイトカインの発現は、少なくとも1つの刺激またはいくつかの刺激、例えば、2つ、3つ、4つまたはそれ以上の刺激の存在下で測定される。一実施形態では、上記刺激(単数または複数)は、免疫応答修飾刺激(単数または複数)である。上記免疫応答修飾刺激の非限定的な例には、PBMC、刺激されたPBMC(PHAで刺激されたPBMCなど)、IL10、γ-アミノ酪酸(GABA)、インターフェロンγ(IFNγ)などが含まれる。したがって、一実施形態では、上記免疫応答修飾刺激(単数または複数)は、PBMC、刺激されたPBMC、PHA、IL10、GABA、およびIFNγで刺激されたPBMCからなる群から選択される。一実施形態では、上記刺激(単数または複数)は、GABAおよび/またはIFNγである。一実施形態では、刺激(単数または複数)が、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C)、レシキモド(r848)、GABAおよびIFNγからなる群、例えば、ポリI:CおよびIFNγからなる群から選択される、本明細書に開示される方法が提供される。一実施形態では、上記刺激は、PBMC、例えば刺激または非刺激PBMC、例えばPHA刺激PBMC、例えばPHA刺激Tリンパ球である。一実施形態では、刺激/刺激が、PHA刺激Tリンパ球および/またはGABAである、本明細書に開示される方法が提供される。
【0032】
特定の一実施形態では、本明細書に開示される方法は、PHA刺激Tリンパ球および/またはGABAによる刺激に応答して、上記MSCにおけるIL-10発現を測定することを含む。
【0033】
当業者は、アッセイされるMSC集団(複数可)の望ましい特性に応じて、目的の特定のアッセイの組み合わせを得るために上記アッセイを組み合わせてもよいと理解する。アッセイは、互いに独立して選択してもよい。
【0034】
さらに、本明細書に開示される方法によって得られる単離された同種のプールされたMSC集団を得るためにプールされる任意のMSCは、正常細胞の細胞形態を有する細胞であることがさらに重要である。MSC培養は、通常はフローサイトメトリーによって前方散乱が低く、側方散乱が低いとして同定される、急速に自己再生する小さな丸い細胞の亜集団を含むことが知られている。より高いコロニー形成能を有するドナーから単離されたMSCは、顕著により高い割合のサイズの小さい細胞を有することが知られている。まとめると、高い増殖能を有するとして分類されたドナーMSCは、自己再生能力がより高く、CFU-F効率がより高く、サイズの小さい細胞の比率がより高いことが、データにより示される。細胞は、増殖(培養)中および回収直前にまたは回収に関連して視覚的に試験され、例えば細胞のサイズ、核のサイズ、細胞の形状、および細胞サイズと核サイズとの比率に基づいて評価されてもよい。したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、上記少なくとも3つのアッセイは、少なくとも1つの形態学的アッセイを含む。一実施形態では、上記形態学的アッセイは、細胞および/または細胞核の形態学的特徴をアッセイする。一実施形態では、細胞および/または細胞核の上記形態学的特徴は、細胞のサイズ、核のサイズ、細胞の形状、および細胞サイズと核サイズとの比からなる群から選択される1つ以上の特徴である。
【0035】
単離されプールされた同種MSC集団が、健康で望ましい形態、別言すると、正常な形態を示す、できるだけ多くの細胞を含むことが重要である。したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、個体ドナー由来のMSC集団は、少なくとも90%、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の正常な細胞および/または核を示す場合にのみ、プールに適格である。したがって、上記個体ドナー由来のMSC集団が90%未満の正常細胞を含む場合、上記集団はプールに適格ではない。
【0036】
少なくとも3つのアッセイを使用して、各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする上記工程は、継代0(p0)~p8のいずれかで行ってもよいことが理解されよう。例えば、上記アッセイは、上記個体ドナー由来のMSC集団が望ましい特性を関連する時点で示すことを保証するために、上記個体ドナー由来のMSC集団がそれらがプールされたときと同じ継代にある場合に行ってもよい。アッセイはまた、それらがプールされる継代よりも早い継代で行うことも可能である。各個体ドナー由来のMSC集団について得られたアッセイ結果を比較し得ることを保証するために、同じ継代で各個体ドナー由来のMSC集団に対して特定のアッセイを行うことを条件に、異なる継代で異なるアッセイを行うことも理解される。
【0037】
したがって、本方法の一実施形態では、少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程は、MSC集団が継代0(p0)~継代8(p8)、例えばp1~p5、例えばp1~p4、例えばp2~p4またはp1~p4、例えばp1、p2、および/またはp3、例えばp2および/またはp3である場合に行われる。一実施形態では、細胞が、プールされたときと同じ継代にある場合に、少なくとも1つのアッセイ、例えば少なくとも2つのアッセイ、例えば少なくとも3つのアッセイ、例えばすべてのアッセイが行われる。別の実施形態では、少なくとも2つのアッセイが異なる継代で行われる。
【0038】
本方法の一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、少なくとも1つの形態学的アッセイによってアッセイされる。本方法の一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性を測定する少なくとも1つのアッセイによってアッセイされる。一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、PBSCの増殖に対する上記MSCの効果を測定する少なくとも1つのアッセイによってアッセイされる。一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定する少なくとも1つのアッセイによってアッセイされる。
【0039】
上記方法の一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、少なくとも1つの形態学的アッセイ、IDO活性を測定するアッセイ、およびPBSCの増殖に対する上記MSCの効果を測定するアッセイによってアッセイされる。上記方法の一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団は、少なくとも形態学的アッセイ、IDO活性を測定するアッセイ、PBSCの増殖に対する上記MSCの効果を測定するアッセイ、および上記MSCにより分泌されたプロスタグランジンE2を測定するアッセイによってアッセイされる。一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団が、上記MSCにおけるHLA-G発現を測定するアッセイによってさらにアッセイされる、本明細書に開示される方法が提供される。一実施形態では、上記各個体ドナー由来MSC集団が、IL-6、IL-8、GM-CFS、およびTGFβから選択される少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つすべての因子(複数可)の発現を測定する、少なくとも1つのアッセイ、例えば少なくとも2つのアッセイ、例えば少なくとも3つのアッセイ、例えば少なくとも4つのアッセイによってさらにアッセイされる方法を提供する。各アッセイは、IL-6、IL-8、GM-CFS、およびTGFβのうちの1つの発現を測定してもよいことが理解されるであろう。一実施形態では、上記各個体ドナー由来MSC集団が、上記MSCにおけるHLA-G発現を測定するアッセイ、ならびにIL-6、IL-8、GM-CFS、およびTGFβから選択される少なくとも1つ、例えば2つ、例えば3つ、例えば4つすべての因子(複数可)の発現を測定する、少なくとも1つのアッセイ、例えば少なくとも2つのアッセイ、例えば少なくとも3つのアッセイ、例えば少なくとも4つのアッセイによってさらにアッセイされる方法を提供する。各アッセイは、IL-6、IL-8、GM-CFS、およびTGFβのうちの1つの発現を測定してもよいことが理解されるであろう。
【0040】
本方法は、合計スコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てる工程を含む。この工程では、合計スコア値が、上記少なくとも3の個体のランク付けスコア値に基づいて、各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられる。より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す。あるいは、より低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す。当業者は、上記システムが、望ましい特性に関して個体ドナー由来のMSC集団間の比較を可能にすることを条件に、本開示の範囲から逸脱することなく、ランク付けスコア値システムおよび/または合計スコア値システムが修正されてもよいことを理解するであろう。本明細書に開示される方法の一実施形態では、少なくとも1つのアッセイについての個体ランク付けスコア値は、上記各個体ドナー由来のMSC集団についてのアッセイ結果と、残りの個体ドナー由来のMSC集団についての結果と、の比較に基づいて、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられる。したがって、分析された個体ドナー由来のMSC集団間の比較に基づいて、個体ランク付けスコア値を割り当ててもよい。一実施形態では、少なくとも1つのアッセイについての個体ランク付けスコア値は、上記個体ドナー由来のMSC集団について得られた絶対アッセイ結果に基づいて、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられる。したがって、アッセイの所望の閾値が選択されてもよい。一実施形態では、上記絶対結果が少なくとも所定の値または多くても所定の値に対応する場合、アッセイ結果が望ましいとみなされ、得られた望ましいアッセイ結果を反映する個体ランク付けスコア値が割り当てられる。
【0041】
個体ランク付けスコア値を上記少なくとも3つのアッセイのうちの1つ、2つ、3つまたはそれ以上の結果に割り当てる工程は、個体ランク付けスコア値を割り当てることを含み、その個体ランク付けスコア値は非二元的である(nonbinary)ことを理解されたい。非二元的スコア値は、少なくとも3つのレベル、別言すれば、少なくとも3つの異なるスコアから選択されるスコア値である。非二元的スコア値の非限定的な例は、1、2、および3;0、1、および2;ならびに1、3、および5である。非二元的ランク付けスコア値は、X、Y、およびZが異なる数である、任意の3つの数X、Y、Zによって表してもよいことが理解されよう。非二元的スコア値の割り当てにより、二元的スコア値と比較して、アッセイ結果のランク付けのより高い解析が可能となる。したがって、本明細書に開示される方法の一実施形態では、アッセイ結果に基づいて個体ドナー由来のMSC集団に個体ランク付けスコア値を割り当てることは、少なくとも3つのランク付けスコア値、例えば少なくとも4つのランク付け、例えば少なくとも5つのランク付けスコア値から選択されるスコア値を割り当てることを含む。例えば、上記個別のランク付けスコア値は、5、6、7、8、9、10またはそれ以上の可能なスコア値から選択されてもよい。当業者は、ランク付けスコア値が数値であってもよいし、または数値でなくてもよいことを理解するであろう。
【0042】
合計スコア値は、個体ドナー由来のMSC集団についてのランク付けスコア値を加算することによって得られる加算スコア値であってもよい。あるいは、合計スコア値は、1)各アッセイについてのランク付けスコア値に重みを割り当てること、および2)個体ドナー由来のMSC集団について重み付けされたランク付けスコア値を加算することによって得られる、重み付けされた合計スコア値であってもよい。このようにして、残りのアッセイ結果と比較して、相対的に高い重み(または重要度)を選択した1つまたはいくつかのアッセイ結果に割り当てることができる。当業者は、1つまたはいくつかのアッセイ結果が重み付けされてもよく、各アッセイ結果に割り当てられた重みが独立して選択されてもよいことを理解するであろう。したがって、一実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられた上記合計スコア値が、各個体ドナー由来のMSC集団についてのランク付けスコア値の加算によって得られる加算合計スコア値である、本明細書に開示される方法が提供される。別の実施形態では、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられた上記合計スコア値は、1)各アッセイについてのランク付けスコア値に重みを割り当てること、および2)個体ドナー由来のMSC集団についての重み付けされたランク付けスコア値を加算することによって得られる、重み付けされた合計スコア値である。
【0043】
合計スコア値に基づいて、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来のMSC集団のサブセットが選択される。この工程では、少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5、例えば少なくとも6、例えば少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば少なくとも9、例えば少なくとも10の個体ドナー由来のMSC集団が選択されることが企図される。本明細書で使用する場合、「サブセット」という用語は、アッセイされた個体ドナー由来のMSC集団のすべてまたはすべてより少ないことを指す。
【0044】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来MSC集団のサブセットを選択する工程が、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、少なくとも所定の合計スコア値に対応する合計スコア値、またはより低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、多くても所定の合計スコア値に対応する合計スコア値を有する個体ドナー由来のMSC集団を選択することを含む。別の実施形態において、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来MSC集団のサブセットを選択する工程は、所定の数の個体ドナー由来のMSC集団を選択することを含み、より高い合計スコア値がより望ましい集団を示す場合、上記集団が、残りの個体ドナー由来のMSC集団と比較してより高い合計スコア値を示すか、またはより低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、上記集団が、残りの個体ドナー由来のMSC集団と比較してより低い合計スコア値を示す。
【0045】
本発明の方法の次の工程では、選択された個体ドナー由来のMSC集団をプールして、単離されプールされた同種MSC集団を得る。上記で説明したように、1のドナー由来の細胞が上記プールされた集団において有意に支配的にならないように、単離されプールされた同種MSC集団が、同様の数または同じ範囲の数の各個体ドナーに由来する細胞を含むことが有益であると考えられる。したがって、本明細書で開示される方法の一実施形態では、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の45%を超えず、例えば40%を超えず,例えば35%を超えず、上記集団が少なくとも3のドナーに由来するMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の40%を超えず、例えば35%を超えず、例えば30%を超えず、上記集団が少なくとも4のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、総細胞数の35%を超えず、例えば30%を超えず、例えば25%を超えず、上記集団が少なくとも5のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の30%を超えず、例えば25%を超えず、例えば20%を超えず、上記集団が少なくとも6のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の25%を超えず、例えば22%を超えず、例えば20%を超えず、上記集団が少なくとも7のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の20%を超えず、例えば18%を超えず、例えば16%を超えず、上記集団が少なくとも8のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の18%を超えず、例えば15%を超えず、例えば13%を超えず、上記集団が少なくとも9のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、455667761223344556677612または細胞の上記単離されプールされた同種MSC集団の数が、上記単離されプールされた同種MSC集団における総細胞数の16%を超えず、例えば14%を超えず、例えば12%を超えず、上記集団が少なくとも10のドナー由来のMCSを含む。上記方法の特定の一実施形態では、任意の1の個体ドナーに由来するMSCの数は、他の任意のドナー由来の細胞の数の約4倍、例えば約3倍、例えば約2倍を超えない。
【0046】
個体ドナー由来のMSCの所望の分布を維持するために、個体ドナー由来のMSC集団の選択されたサブセットをプールした後、MCSのさらなる培養を行わないことが理解されよう。理論に拘束されることなく、プールされた集団における個体ドナーに由来するMSCの分布は、単離されプールされた同種のMSC集団を投与された患者においてHLA免疫がないかまたはHLA免疫が低いことを保証することが予想される、HLA不適合を得るために重要であることが企図される。したがって、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団は、本方法に従ってプールした後にさらに培養されない。本態様の一実施形態では、上記集団がプール工程の後にさらに培養されない、本明細書に開示される方法が提供される。
【0047】
上記のように、上記少なくとも3つのアッセイによってアッセイされる所望の要件を満たす個体ドナー由来のMSC集団のみが、プール工程におけるプールに適格である。したがって、適格でない細胞は廃棄される。個体ドナー由来のMSC集団について得られたアッセイ結果、したがって上記細胞の特性と、以前に得られた単離されプールされた同種MSC集団から得られるアッセイ結果であって、以前の集団が本明細書に開示される方法によって得られる、アッセイ結果と、を比較することが可能である。したがって、以前の集団は、本方法における内部品質対照として機能する。したがって、本方法の一実施形態では、方法は、上記個体ドナー由来のMSC集団のアッセイ結果が同じ方法で以前に得られたプールされた同種MSC集団についての対応するアッセイ結果よりも望ましくない場合、プール工程から個体ドナー由来のMSC集団を廃棄する工程をさらに含む。
【0048】
重要なことに、本開示による方法は、単離されプールされた同種MCS集団の総合評価における変動の低減をもたらす。明確にするために、バッチ内の変動は、すべてのドナーからプールされたMSCを含むバッチと比較して低下する。
【0049】
例えば、評価の変動は次式で計算することができる:
【数1】
式中、最大値および最小値は、取られた最大および最小アッセイ結果である。
【0050】
総合評価は、選択したドナーについてのデルタ選択アルゴリズムスコア(この例では6-3=3)を評価したすべてのドナーについてのデルタ選択アルゴリズムスコア(この例では6-1=5)で除算して、計算してもよい。
【数2】
【0051】
したがって、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法の一実施形態では、バッチ内の総合評価の変動は、アッセイされたすべての個体ドナー由来MSC集団のアッセイ結果と、個体ドナー由来MSC集団の選択されたサブセットのアッセイ結果と、を比較した場合、少なくとも30%、例えば少なくとも35%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも45%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%低減される。
【0052】
本開示の第2の態様について詳細に説明されるように、本明細書に開示される方法は、本明細書に開示される単離されプールされた同種間葉系幹細胞(MSC)集団のバッチを得ることを可能にし、該バッチは統計的に有意なバッチ間の変動を示さない。
【0053】
本開示の第2の態様では、本明細書に開示される方法により得られる単離されプールされた同種MSC集団であって、上記集団がプール後にさらに培養されない、同種MSC集団が提供される。さらに、一実施形態では、上記単離されプールされた同種MSC集団は、統計的に有意なバッチ間の変動を示さない。本方法は、有利な特性を示す単離されプールされた同種MSC集団を得ることを可能にする。細胞をプールする工程により、MSCの大きなバッチが得られることが有利であると考えられ、さらに、これは製造コストの削減を可能にする。個体ドナー由来MSC集団をプールすることにより、上記のように細胞を少ない継代数で維持することが可能であり、それによって、得られた単離されプールされた同種MSC集団は、高い効力および低い遺伝的不安定性リスクを示す。したがって、高い効力を有する遺伝的に安定な細胞の大きなバッチを得ることができる。さらに、本明細書に開示される方法によって得られる単離されプールされた同種MSC集団は、使用される方法工程により、統計的に有意なバッチ間の変動を示さない。
【0054】
本明細書で使用する場合、「バッチ」という用語は、本明細書で開示される方法によって得られる単離されプールされた同種MSC集団を指す。
【0055】
本明細書で使用する場合、「バッチ間の変動」という用語は、本明細書に開示される方法によって得られる単離されプールされた同種MSC集団と、本明細書に開示される方法によって得られる別の単離されプールされた同種MSC集団と、の間の特性の違いを指す。
【0056】
上記バッチ間の変動は、個体ドナー由来のMSC集団をアッセイするために使用された上記少なくとも3つのアッセイの1つまたはいくつかからの結果を比較することによって定量化してもよい。あるいは、1つまたはいくつかの異なるアッセイを使用してもよい。
【0057】
本明細書で使用する場合、「統計的に有意なバッチ間の変動がない」という用語は、あるバッチからのアッセイ結果と異なるバッチからのアッセイ結果との差が統計的に有意ではない(例えば、P>0.05の確率値を使用する)と解釈される。上記統計的有意性は、バッチ間の変動係数が、アッセイ間および/またはアッセイ内変動係数に等しいかまたはそれ以下である際に正当化され得る。当業者は、好適な統計計算に精通している。
【0058】
したがって、一実施形態では、集団が統計的に有意なバッチ間の変動を示さない、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団が提供される。一実施形態において、上記統計的に有意なバッチ間の変動は、2つの連続して生成されたバッチ間ではない。一実施形態では、統計的に有意なバッチ間の変動は、任意の2つのバッチ間である。一実施形態では、上記統計的に有意なバッチ間の変動は、生成されたバッチと参照バッチとの間であり、上記参照バッチは、本明細書に開示される方法によって以前に生成された単離されプールされた同種MSC集団である。
【0059】
一実施形態では、上記統計的に有意なバッチ間の変動は、確率値(P)>0.05、例えばP>0.04、例えばP>0.03、例えばP>0.02、例えばP>0.01、例えばP>0.005、例えばP>0.001に関連する。
【0060】
一実施形態では、上記バッチ間の変動は、本明細書に記載のIDOアッセイ、本明細書に記載のPGE2アッセイ、および本明細書に記載の増殖アッセイからなる群から選択される少なくとも1つのアッセイ、例えば、本明細書に記載のIDOアッセイ、本明細書に記載のPGE2アッセイ、および本明細書に記載の増殖アッセイからなる群から選択される少なくとも2つのアッセイ、例えば、本明細書に記載のIDOアッセイ、本明細書に記載のPGE2アッセイ、および本明細書に記載の増殖アッセイからなる群から選択される少なくとも3つのアッセイからのアッセイ結果に基づいて定量化される。任に選択で、バッチ間の変動は、1つ以上の追加のアッセイに基づいて定量化してもよい。
【0061】
本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団は、所望の機能的および形態学的特性、高い効力を示し、統計的に有意なバッチごとの変動を示さず、大規模なバッチでも得ることができる。これにより、上記集団が薬剤として使用される場合、予測可能で、かつ変動が低くなる。したがって、単離されプールされた本同種MSC集団は、標準化医療処置手順で使用してもよい。本明細書に開示される方法によって得られる単離されプールされた同種MSC集団について、上記集団が特に製剤化および投与計画に関して薬剤として使用される場合、ロジスティクスおよび投与上の両方の利点があることが企図される。ロジスティクスチェーンは、単離されプールされた同種MSC集団を極低温保存で維持することであり、これにより、従来技術による「何とか増殖した細胞数を患者に与えること」とは対照的に、単離されプールされた同種MSC集団の特性が維持され、患者が薬剤として所定の細胞数を受けることを保証することが重要であると考えられる。したがって、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団は、「既製の(off the shelf)」標準化医用製品として好適であり、治療効果および安全性に関する予測可能性を提供する。
【0062】
本明細書に開示される上記単離されプールされた同種MSC集団は、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防に有用であることが企図される。
【0063】
したがって、本開示の第3の態様では、薬剤として使用するための、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団が提供される。
【0064】
理論に拘束されることなく、単離されプールされた同種MSC集団は、自然免疫および適応免疫細胞による応答を調節し、樹状細胞を未熟な状態に保ち、樹状細胞の分化を阻害し、それらの炎症性サイトカイン産生を抑制することが企図される。したがって、本発明の単離されプールされた同種MSC集団は、これにより、炎症性および自己免疫疾患または状態ならびに移植拒絶の処置および/または予防に有用であることが企図される。
【0065】
したがって、本開示の関連する第4の態様では、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防に使用するための、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団が提供される。
【0066】
一実施形態では、上記使用は、それを必要とする患者への注入としての上記単離されプールされた同種MSC集団の投与を含む。一実施形態では、上記注入は、静脈内、腹腔内もしくはリンパ内、静脈内、髄腔内、脳内、および/もしくはオンマヤリザーバーにより、動脈内または皮下投与される。一実施形態では、上記注入は、静脈内、腹腔内、またはリンパ内、例えば静脈内に投与される。
【0067】
MSCの調節特性およびHLA-DRの低発現は、MSCの同種移植がドナーおよびレシピエント間のHLA適合をせずに受け入れられると想定する2つの理由である。上記注入は、患者の治療上の必要性に応じて、繰り返しまたは一度にも行ってもよいことが企図される。理論に拘束されることなく、1回の注入または反復注入による上記投与は、処置される患者において臨床的に関連するレベルの抗HLA抗体をもたらさないことが企図される。したがって、上記患者は、本明細書に記載されるいくつかの注入処置に適格であるか、または移植を必要とする場合に移植を受けることに適格であるであろう。したがって、一実施形態では、上記注入は1回のみ行われる。別の実施形態では、上記注入は繰り返し行われる。例えば、上記注入は、2回、3回、4回またはそれ以上行われてもよい。
【0068】
したがって、一実施形態では、上記投与は、上記患者において抗HLA抗体力価を誘発しないか、または低い抗HLA抗体力価を誘発する。本明細書で使用する場合、「抗HLA抗体力価が低いかまたはない」という用語は、臨床的に重要ではないとみなされる力価を指す。固相多重技術による抗体分析により、HLA抗体の幅および強さをより正確に定義できることが可能となっている。これらの結果を実際の細胞に基づく交差適合によって得られる結果および最終的な移植結果と相関させることにより、臨床的に関連する抗体をセンター固有の様式で定義することができる(Zachary et al.Using real data for a virtual crossmatch.Hum Immunol 2009;70:574-579)。当業者は、臨床的に重要ではない抗HLA抗体力価が、ドナー特異的抗体についての平均蛍光強度(MFI)が1000よりも高い、DSA MFI>1000である、LABScreen単一抗原ビーズ試験によって定義されてもよいことを理解するであろう。
【0069】
上記のように、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団は、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防に有用であることが企図される。
【0070】
炎症性疾患または状態の非限定的な例には、尋常性座瘡、喘息、自己免疫疾患、自己炎症性疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、大腸炎、憩室炎、糸球体腎炎、化膿性汗腺炎、炎症性腸疾患、間質性膀胱炎、骨盤内炎症性疾患、再灌流障害、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植片拒絶、II型糖尿病、および血管炎が含まれる。自己免疫疾患または状態の非限定的な例には、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、自閉症、全身性自己免疫疾患、例えば、SLE、シェーグレン症候群、サルコイドーシス、強皮症、関節リウマチ、クリオグロブリン血症性血管炎、および皮膚筋炎;および特定の臓器または組織に影響を与える局所自己免疫疾患/症候群または状態、例えば、内分泌自己免疫疾患または状態、例えば、1型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、橋本甲状腺炎、およびアジソン病;消化管自己免疫疾患または状態、例えば、セリアック病、クローン病および悪性貧血;皮膚自己免疫疾患または状態、例えば、尋常性天疱瘡および白斑;血液学的自己免疫疾患または状態、例えば、自己免疫性溶血性貧血および特発性血小板減少性紫斑病;ならびに神経学的自己免疫疾患または状態、例えば、多発性硬化症、重症筋無力症、および脳炎が含まれる。単離されプールされた本同種MSC集団の投与が有用であり得る移植拒絶疾患または状態の非限定的な例には、移植片対宿主病、臓器移植、造血幹細胞移植、細胞移植、および膵島移植が含まれる。当業者は、単離されプールされた本同種MSC集団の投与が、上記の疾患および状態のいずれかに関連する処置および/または予防アプローチとして有用であり得ることを理解するであろう。
【0071】
特定の実施形態では、本明細書に開示される使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供され、上記炎症性疾患または状態は自己免疫疾患からなる群から選択される。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書に開示される使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供され、上記疾患または状態は、移植拒絶、例えば、細胞、組織、器官、または移植片(implant)を含む任意の種類の移植拒絶である。一実施形態では、上記移植拒絶は、臓器移植拒絶または膵島移植拒絶であってもよい。一実施形態では、上記臓器は、腎臓、肝臓、肺、および心臓からなる群から選択される。一実施形態では、上記移植は、腎臓移植である。一実施形態では、上記移植拒絶は、膵島移植拒絶である。
【0073】
特定の実施形態では、本明細書に開示される使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供され、自己免疫疾患が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および関節炎からなる群から選択される。一実施形態では、上記自己免疫疾患は、ALSまたは炎症性腸疾患である。特定の一実施形態では、上記自己免疫疾患は、1型糖尿病またはLADAである。単離され隔離された本同種MSC集団は、LADA患者、最近診断された1型糖尿病の症例、および少なくともいくつかの残留内因性インスリン産生を有する長年にわたる1型糖尿病患者の予防および処置に特に有用であることが企図される。理論に拘束されることなく、単離されプールされた同種MSC集団の免疫抑制特性は、膵臓におけるインスリン産生β細胞の自己免疫破壊を減速させるまたは妨げることが企図される。上記の単離されプールされた同種MSC集団を少なくともいくらかの内因性インスリン産生を有する患者に投与することが有益であり得る。
【0074】
したがって、一実施形態では、上記1型糖尿病またはLADAが、最近診断された1型糖尿病またはLADA、例えば注入の投与前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内、例えば注入の投与前の6ヶ月以内、例えば注入の投与前の5、4、3、2、または1ヶ月以内に診断された1型糖尿病またはLADAである、本明細書に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供される。最近診断された1型糖尿病患者は、少なくともいくつかの内因性インスリン産生を示し、したがってインスリンのA鎖をプロインスリン分子のB鎖に結合する短い31アミノ酸のポリペプチドであるCペプチドを発現することが予想される。
【0075】
一実施形態では、上記患者は、1型糖尿病またはLADAの臨床症状を最近示し始め、例えば上記注入の投与前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内、例えば注入の投与前の6ヶ月以内、例えば注入の投与前の5、4、3、2、または1ヶ月以内に1型糖尿病またはLADAの臨床症状を示し始めた、本明細書に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供される。
【0076】
一実施形態では、上記患者がCペプチドを発現する、本明細書に開示される使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供される。一実施形態では、上記患者は、空腹時血漿C-ペプチド濃度≧0.01nmol/L、例えば≧0.04nmol/L、例えば≧0.08nmol/L、例えば≧0.12nmol/Lを示す。
【0077】
一実施形態では、上記処置および/または予防は、未処置の患者と比較して、処置された患者における血漿C-ペプチド濃度のより低い減少率をもたらし、例えば、未処置の患者と比較して、処置された患者における、食事負荷試験(MMTT)によって測定される刺激された血漿C-ペプチドのより低い減少率をもたらす。一実施形態では、注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度の上記減少率は、未処置の患者よりも少なくとも10%より低く、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%より低い。別の実施形態では、上記処置および/または予防は、投与前の空腹時血漿C-ペプチド濃度と比較して、患者における空腹時血漿C-ペプチド濃度の増加をもたらす。空腹時または刺激された血漿C-ペプチド濃度の上記増加は、例えば、処置後3ヶ月、6ヶ月、または1年で測定されてもよい。一実施形態では、HbA1cレベルを7未満に維持しながら、上記処置および/または予防は、投与前の体重1kgあたりのインスリン必要量と比較して、上記患者の体重1kgあたりのインスリン必要量の減少をもたらす。一実施形態では、上記処置および/または予防は、投与前の体重1kgあたりのインスリン必要量と比較して、上記患者の体重1kgあたりのインスリン必要量の減少をもたらす。例えば、体重1kgあたりのインスリン必要量の上記減少は、処置後3ヶ月、6ヶ月、または1年で測定されてもよい。一実施形態では、上記処置および/または予防は、上記患者におけるインスリン非依存性をもたらし(ADA基準に従う)、これは、例えば、処置後3ヶ月、6ヶ月、または1年で測定されてもよい。一実施形態では、上記処置および/または予防は、投与前の毎日のインスリン必要量と比較して、上記患者における毎日のインスリン必要量の減少をもたらす。例えば、上記減少は、例えば処置後3か月、6か月、または1年後に測定した際に、処置された患者において1日あたりインスリン必要量<0.50U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<0.40U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<0.30U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<0.25U体重をもたらし得る。明細書に記載される単離されプールされた本同種MSC集団は、治療上有効な用量で投与される。一実施形態では、上記使用が、上記患者に、少なくとも約3x106個の細胞、例えば少なくとも約5x106個の細胞、例えば少なくとも約10x106個の細胞、例えば少なくとも約15x106個の細胞、例えば少なくとも約20x106個の細胞、少なくとも約25x106個の細胞、例えば少なくとも約50x106個の細胞、例えば少なくとも約75x106個の細胞、例えば少なくとも約100x106個の細胞、例えば少なくとも約125x106個の細胞、例えば少なくとも約150x106個の細胞、例えば少なくとも約175x106個の細胞、例えば少なくとも約200x106個の細胞の用量を投与することを含む、本明細書に開示される使用のための単離されプールされた同種MSC集団が提供される。一実施形態では、上記使用が、上記患者に、少なくとも約0,1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約0.5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約10x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む。1つの実施形態において、上記使用が、上記患者に、約0.1x106個の細胞/kg体重~約10x106個の細胞/kg体重、例えば約0.25x106個の細胞/kg体重~約5x106個の細胞/kg体重、例えば約0.25x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約0.5x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約1x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約1x106個の細胞/kg体重~約3x106個の細胞/kg体重、例えば約2x106個の細胞/kg体重~約3x106個の細胞/kg体重、または約1x106個の細胞/kg体重~約2x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む。
【0078】
上記単離されプールされた同種MSC集団は、医薬組成物として有用であることが企図される。
【0079】
したがって、本開示の関連する第5の態様では、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤または担体を含む、医薬組成物が提供される。上記医薬組成物は、例えば、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置のための薬剤として有用であり得る。医薬組成物は、簡潔にするために疾患または状態をここで繰り返さないが、本開示の第4の態様に関連して列挙された疾患または状態のうちのいずれか1つの処置および/または予防に有用であり得ることが理解されるであろう。一の実施形態では、医薬組成物は、少なくとも約3x106個の細胞、例えば少なくとも約5x106個の細胞、例えば少なくとも約10x106個の細胞、例えば少なくとも約15x106個の細胞、例えば少なくとも約20x106個の細胞、少なくとも約25x106個の細胞、例えば少なくとも約50x106個の細胞、例えば少なくとも約75x106個の細胞、例えば少なくとも約100x106個の細胞、例えば少なくとも約125x106個の細胞、例えば少なくとも約150x106個の細胞、例えば少なくとも約175x106個の細胞、例えば少なくとも約200x106個の細胞を含む。したがって、上記組成物の1回の投与量は、上記に述べた細胞数を含む。
【0080】
一実施形態では、上記医薬組成物は、注入、例えば静脈内注入、腹腔内注入、リンパ内注入、静脈内注入、髄腔内注入、脳内注入、動脈内注入、皮下注入、またはオンマヤリザーバーによる注入用に製剤化される。一実施形態では、上記医薬組成物は、静脈内、腹腔内、またはリンパ内注入用に製剤化される。
【0081】
関連する第6の態様では、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防のための方法であって、治療有効量の、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団または本明細書に開示される医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法が提供される。当業者は、本開示の第4の態様に関連して述べられた任意の実施形態が、本発明の処置および/または予防方法に等しく適用可能であることを理解するであろう。簡潔にするために、上記実施形態をここでは繰り返さないか、または簡単に述べるにとどめる。上記方法の一実施形態では、上記MSC集団の投与は、注入、例えば、静脈内注入、腹腔内注入、リンパ内注入、静脈内注入、髄腔内注入、脳内注入、動脈内注入、皮下注入、またはオンマヤリザーバーによる注入による。上記方法の一実施形態では、投与は、静脈内、腹腔内、またはリンパ内注入による。
【0082】
一実施形態では、上記注入は繰り返し行われる。別の実施形態では、上記注入は1回のみ行われる。本明細書に開示される処置および/または予防のための方法の一実施形態では、上記投与は、患者において抗HLA抗体力価を誘発しないか、または低い抗HLA抗体力価を誘発する。一実施形態では、上記疾患または状態は、移植拒絶、例えば、細胞、組織、器官または移植片を含む任意の種類の移植の拒絶である。一実施形態では、上記移植拒絶は、臓器移植拒絶または膵島移植拒絶であってもよい。一実施形態では、上記器官は、腎臓、肝臓、肺、および心臓からなる群から選択される。一実施形態では、上記移植は、腎臓移植である。一実施形態では、上記移植拒絶は、膵島移植拒絶である。一実施形態では、上記炎症性疾患または状態は、自己免疫疾患からなる群から選択される。別の実施形態では、上記自己免疫疾患は、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、および関節炎、例えば1型糖尿病またはLADAからなる群から選択される。一実施形態では、上記自己免疫疾患は、ALSまたは炎症性腸疾患である。一実施形態では、上記1型糖尿病が、最近診断された1型糖尿病またはLADA、例えば投与前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内、例えば注入の投与前の6ヶ月以内、例えば注入の投与前の5、4、3、2、または1ヶ月以内に診断された1型糖尿病またはLADAである。一実施形態では、上記患者は、Cペプチドを発現する。特定の実施形態において、上記患者は、空腹時血漿C-ペプチド濃度≧約0.01nmol/L、例えば≧約0.04nmol/L、例えば≧約0.08nmol/L、例えば≧約0.12nmol/Lを示す。
【0083】
本明細書に開示される方法の一実施形態では、上記患者は、1型糖尿病またはLADAの臨床症状を最近示し始め、例えば上記注入の投与前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内、例えば注入の投与前の6ヶ月以内、例えば注入の投与前の5、4、3、2、または1ヶ月以内に1型糖尿病またはLADAの臨床症状を示し始めた。
【0084】
一実施形態において、上記処置および/または予防は、未処置の患者と比較して、注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度のより低い減少率をもたらす。一実施形態では、注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度の上記減少率は、未処置の患者よりも少なくとも約10%より低く、例えば少なくとも約20%、例えば少なくとも約30%、例えば少なくとも約40%、例えば少なくとも50%より低い。別の実施形態では、上記処置および/または予防は、上記投与前の空腹時血漿C-ペプチド濃度と比較して、患者における空腹時血漿C-ペプチド濃度の増加をもたらす。例えば、空腹時血漿C-ペプチド濃度の上記増加は、処置後約3ヶ月、約6ヶ月、または約1年で測定されてもよい。一実施形態では、上記処置および/または予防は、投与前の体重1kgあたりのインスリン必要量と比較して、上記患者の体重1kgあたりのインスリン必要量の減少をもたらす。例えば、体重1kg当たりのインスリン必要量の上記減少は、処置後約3ヶ月、約6ヶ月、または約1年で測定されてもよい。一実施形態では、上記処置および/または予防は、上記患者におけるインスリン非依存性をもたらし(ADA基準に従う)、これは、例えば、処置後3ヶ月、6ヶ月、または1年で測定されてもよい。一実施形態では、上記処置および/または予防は、投与前の毎日のインスリン必要量と比較して、上記患者における毎日のインスリン必要量の減少をもたらす。例えば、上記減少は、例えば処置後3か月、6か月、または1年後に測定した際に、処置された患者において1日あたりインスリン必要量<約0.50U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<約0.40U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<約0.30U/kg体重、例えば1日あたりインスリン必要量<約0.25U体重をもたらし得る。
【0085】
一実施形態では、上記方法は、上記患者に、少なくとも約3x106個の細胞、例えば少なくとも約5x106個の細胞、例えば少なくとも約10x106個の細胞、例えば少なくとも約15x106個の細胞、例えば少なくとも約20x106個の細胞、少なくとも約25x106個の細胞、例えば少なくとも約50x106個の細胞、例えば少なくとも約75x106個の細胞、例えば少なくとも約100x106個の細胞、例えば少なくとも約125x106個の細胞、例えば少なくとも約150x106個の細胞、例えば少なくとも約175x106個の細胞、例えば少なくとも約200x106個の細胞の用量を投与することを含む。一実施形態では、上記方法は、上記患者に、少なくとも約0.1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約0.5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも約10x106個の細胞/kg体重の用量を上記患者に投与することを含む。一実施形態では、上記方法は、上記患者に、約0.1x106個の細胞/kg体重~約10x106個の細胞/kg体重、例えば約0.25x106個の細胞/kg体重~約5x106個の細胞/kg体重、例えば約0.25x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約0.5x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約1x106個の細胞/kg体重~約4x106個の細胞/kg体重、例えば約1x106個の細胞/kg体重~約3x106個の細胞/kg体重、例えば約2x106個の細胞/kg体重~約3x106個の細胞/kg体重、または約1x106個の細胞/kg体重~約2x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む。
【0086】
本開示のさらに別の態様では、炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置のための薬剤の製造における、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団の使用が提供される。
【0087】
本開示の別の態様では、MSC集団の効力を評価するための方法であって、
MSC集団の培養または提供する工程と、
少なくとも3つのアッセイを使用して上記MSC集団をアッセイして、少なくとも3つのアッセイ結果を得る工程と、
各アッセイについて、アッセイ結果に基づいて上記MSC集団にスコア値を割り当てる工程であって、より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示すか、または低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す、工程と、
各アッセイに割り当てられたスコア値に基づいて、合計スコア値を上記MSC集団に割り当てる工程であって、より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示し、またはより低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す、工程と、
より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合において、上記合計スコア値が所定の閾値を超える場合にMSC集団を効力があるとして適格とするか、またはより低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合において、上記合計スコア値が所定の閾値を下回る場合にMSC集団を効力があるとして適格とする、工程と、を含む、方法を提供する。上記方法の一実施形態では、方法は、本明細書で定義される少なくとも3つのアッセイを使用する。
【0088】
単離されプールされた同種MSC集団は、エクスビボ療法で使用されるための細胞の培養にさらに有用であってもよく、例えば、MSC集団は、フィーダー細胞として、または目的の因子もしくはシグナルを提供するために使用されてもよい。したがって、本開示のさらに別の態様では、免疫細胞の共培養のための、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団の使用が提供される。例えば、上記MSC集団は、例えば、樹状細胞、ナチュラルキラー細胞、リンパ球(B細胞またはT細胞など)、単球およびマスト細胞であるがこれらに限定されない、免疫細胞のエクスビボ増殖および/または刺激のための培養におけるフィーダー細胞として使用されてもよい。上記MSC集団は、エキソソーム産生細胞および/またはパラクリン因子産生細胞として、および/または培養でのMSCおよび免疫細胞間の細胞間刺激のために使用されてもよい。一実施形態では、免疫細胞の共培養のためのフィーダー細胞としての、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団の使用が提供される。一実施形態では、上記集団と共培養された免疫細胞を刺激するための、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団の使用が提供される。本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団と共培養された上記免疫細胞は、治療において有用であることが企図される。
【0089】
本発明を様々な例示的な態様および実施形態を参照して説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行ってもよく、同等物にその要素の代わりに置き換えてもよいことが当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況、MSC集団または組成物を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行ってもよい。したがって、本発明は、企図されるいかなる特定の実施形態にも限定されず、本発明は、付随する特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図される。本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】本開示による単離されプールされた同種MSC集団の製造プロセスを示すフローチャートである。
【
図2】実施例2に記載された増殖アッセイの結果を示す。72時間のインキュベーション後の末梢血単球におけるCFSE蛍光強度のヒストグラム。各ピークは世代(10^3においてG0)を表す。パネルA:PHAで刺激されたPBMC。パネルB:MSCと共培養された、PHAで刺激されたPBMC。パネルC:パネルAおよびBの重ね合わせ。
【
図3A-3B】実施例4によるFluorospotアッセイの結果を示す。個体ドナー由来の細胞が、96ウェルFluorospotアッセイプレートに播種されている。細胞は、刺激されていないか、または示されているr484、ポリI:C、GABA、IFNγで刺激する。
図3A:1番目および2番目の四分円は、それぞれIL-6およびIL-8の発現について分析した番号3のドナー由来の細胞を含む。3番目および4番目の四分円は、それぞれIL-6およびIL-8の発現について分析した番号5のドナー由来の細胞を含む。
図3B:1番目および2番目の四分円は、それぞれIL-13およびTGFβの発現について分析した番号3のドナー由来の細胞を含む。3番目および4番目の四分円は、それぞれIL-13およびTGFβの発現について分析した番号5のドナー由来の細胞を含む。
【
図4】選択された個体ドナー由来のMSC集団のIDO倍数誘導、増殖指数、およびPGE2アッセイ結果、ならびに本明細書に開示される選択アルゴリズムによる、分析されたすべての細胞のスコアおよび選択されたスコアの総合評価の変動の変動分析図である。標準分布が示され、灰色のボックスは選択されたドナーを示す。パネルに示されているように、特定のアッセイについての分析結果の変動は、最も所望する特性を有するドナーのみを選択することによって低下する。変動の低下は、IDO倍数誘導での53%から増殖指数での14%の範囲であった。ドナーの変動の低下は、総合評価、すなわち、選択アルゴリズムの結果に反映され、本例では変動が40%低下する。
【実施例】
【0091】
本非限定的な実施例は、細胞の特徴付け、適切なドナー由来の細胞集団の選択、および上記組成物を得るために上記ドナー由来の細胞集団をプールすることを含む、インビトロ増殖間葉系間質細胞の本発明のプールされた同種間MSC組成物の生成について記載する。実施例1~6は、本発明のプールされた同種MSC組成物を得るプロセスについて記載する。実施例7~10は、1型糖尿病の処置および/または予防のため、特に、1型糖尿病と診断された患者における内因性インスリン産生を維持するために、プールされた同種MSC組成物を使用する臨床研究について記載する。
【0092】
実施例の項目で使用する場合、以下の用語は以下で説明される意味を有する:
マスターセルストック(Master Cell Stock)-特定の継代での原薬中間体を定義するために使用される用語。本明細書に示す例では、マスターセルストックは継代1での原薬中間体である。
原薬中間体-産生中、したがって増殖している単一ドナー由来のMSCを定義するために使用される用語。プロセス品質基準を満たしているが、選択アルゴリズムで未だ評価されていない。原薬中間体は、本明細書に開示される個体ドナー由来のMSC集団であって、プールすることについて未だ選択されていない個体ドナー由来のMSC集団に対応する。
原薬-製造品質基準を満たし、選択アルゴリズムによって所望の特性を有すると同定された単一ドナー由来のMSCを定義するために使用される用語。したがって、さらなる培養および増殖には供しない。したがって、原薬は、本明細書に開示される個体ドナー由来のMSC集団であって、プールすることについて選択されている個体ドナー由来のMSC集団に対応する。
薬品-薬品という用語は、選択アルゴリズムによって所望の特性を有すると同定された複数のドナー由来のエクスビボで増殖されたウォートンゼリー由来間葉系幹細胞(WJMSC)の細胞懸濁液を指す。薬品は、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団に対応する。
最終製品-「最終製品」という用語は、薬品および少なくとも1つの製薬上許容される賦形剤または担体を含む医薬組成物を指す。
【0093】
実施例1
本実施例は、ウォートンゼリー由来MSCの回収、輸送、エクスビボ増殖、および凍結保存のプロセスについて記載する。さらに、母性血液を感染因子について試験する。さらに、培養条件についても記載する。
【0094】
材料および方法
ウォートンゼリー由来MSCのマスターセルストックの製造は、ドナー適格性およびその後のゼノフリー培養システムにおけるエクスビボ増殖からの継続的プロセスである。
【0095】
臍帯(UC)試料は、自然分娩後ならびに胎盤娩出および臍帯血採取(感染因子スクリーニングのため)後の帝王切開後に採取される。母体の末梢血試料も採取される。
【0096】
汚染のリスクを最小限に抑えるために、使い捨て可能な無菌ハサミおよび鉗子を使用し、臍帯の断片を、1%抗生物質/抗真菌薬溶液(Gibcoカタログ番号15240-062)を補充した輸送液(99%塩化ナトリウム(0.9%溶液)(Freseniusカタログ番号PK03XE050PL)で満たした無菌輸送容器に入れる。試料は、保護ボックス内に入れて製造元の研究所に輸送される。輸送状態が監視され、UC組織が出産後72時間以内に処理される。ウォートンゼリー組織の単離および細胞単離のための外植片の培養を、GMP実験室においてゼノフリー無血清培地および化合物を使用して行う。
【0097】
原材料としてのUC組織の適格性には、医療用アンケートへの完全な回答、および感染因子試験のためのUC採取の7日以内に採取した母体末梢血試料の提出が必要である。ドナーのサンプリング、試験、スクリーニング(医療健康アンケート)は、指令2006/17/ECの付録IIに準拠している。すべてのドナー試験キットは、意図する使用について検証される。臍帯適格性の前に行われる感染因子試験を表1に列挙する。採取された試料の約10~25%は、さらなる生産の適格がある。
【表1】
【0098】
製造元の研究所に到着したら、UC断片を輸送容器から取り出し、無菌輸送液中で洗浄する。UCを切片化し、血管を取り出す。ウォートンゼリー組織を、滅菌ランセットを使用して1~2mm3の細片に細かく切り刻み、一次外植片培養用の接着用溶液(Attachment Solution)(1%MSC接着用溶液ストック99%D-PBS)でコーティングされた培養フラスコ中のゼノフリー無血清培地中に入れる。フラスコを37℃、5%CO2でインキュベートする。1~2週間後、接着した線維芽細胞様細胞の存在について培養を調べる。培養中のすべての非接着細胞存在物を洗い流す。細胞培養培地は、94% NutriStem(登録商標)XF(Biological Science,カタログ番号05-200-1A)、5% NutriStem(登録商標)XF Supplement Mix(Biological Science,カタログ番号05-201-1U)、および1%抗生物質/抗真菌溶液(Gibcoカタログ番号15240-062)を含む。初代由来の接着細胞は、90%コンフルエンスに達したときに継代され(培養の制御された酵素消化)、p.1培養でのさらなる増殖のために1~1.5x105/cm2で再播種される。2~3週間増殖させた後、マスターセルストック(継代1の接着細胞)を回収し、
(i)液体窒素保存の気相のための凍結保護溶液(70~80%ヒト血清アルブミン(5%溶液)(CSL Behringカタログ番号Alburex5)および20~30%ジメチルスルホキシド(WAK Chemie,カタログ番号WAK-DMSO-50))の存在下で凍結保存し、
(ii)さらなる増殖のために直ちに再播種する。
【0099】
継代1後の細胞をさらに増殖するために再播種した場合、マスターセルストックは数時間しか存在しない。MCSのこの短い寿命に関係なく、
図1に言及されるすべての試験を実施する。
【表2】
【0100】
臍帯組織採取からの薬品リリースまでの製造プロセスで使用される動物由来原材料はない。
【0101】
外植片の初代培養中およびマスターセルストックの各細胞継代の製造終了時に、試料を採取して、細菌および真菌汚染、マイコプラズマ、ならびにエンドトキシンの存在を確認する。細胞数および生存率は、マスターセルストックおよび薬品において評価される。微生物培養、マイコプラズマ、およびエンドトキシンは、最終製品から評価される。さらに、薬品の1つの参照試料を解凍し、試験細胞培養を確立する。この試験培養は、製品の安全純度(微生物培養、ならびにマイコプラズマおよびエンドトキシン試験、核型などによる)、効力(細胞数、接着効率、および生存率)、ならびに同一性(サイトメトリー免疫表現型解析)の追加の最終確認のための材料の供給源として機能する。表3に列挙される承認基準を満たす培養物は、処理または凍結保存の次の工程に適格であり、培養物の評価のための分析手順は、実施例2で説明される。
【0102】
結果
製造元により、自然分娩後に得られた臍帯に由来するWJMSCの微生物学的安全性が実証された。次の製造工程中での輸送液への抗生物質/抗真菌溶液の添加により、マスターセルストックおよび薬品中に微生物(細菌および真菌)が存在しなくなった。
【0103】
表4に言及するように、異なるドナーから得られた細胞の特徴の遡及的分析により、同等の薬品を製造するためにすべてのMCSが満たすべき基準を得ることが可能となる。
【0104】
表6に示される異なるドナーに由来する5つのマスターセルストックの分析結果により、細胞の特徴に高い類似性があることが明らかである。したがって、本手順は、必要な安全基準を満たす非常に均一なMSC集団を提供する。
【表3】
【表4】
【0105】
実施例2
本実施例は、ISCTの基準に従った、形態学、増殖能、およびMSCのマーカーの発現に基づくドナー由来のMSCの特徴について記載する。さらに、細胞をマイコプラズマ、エンドトキシン、細菌汚染物質、真菌汚染物質、ウイルス汚染物質、および/またはエンドトキシンの存在についてスクリーニングし、核型試験を実施する。記載されている特徴により、MSCがプールするための品質基準を満たす原薬中間体に由来するMSC集団が同定される。
【0106】
材料および方法:
最初に、標準的な培養条件で維持する場合、MSCはプラスチック接着性でなければならない。プラスチック接着細胞のみが、以下に記載する分析手順に供される。以下に示す分析手順に従って、培養物をスクリーニングする。
【0107】
分析手順
感染因子
サンプリングWJ-MSC製造の供給源材料(臍帯の胎盤部分)を胎盤娩出から数分後に得る。それが、感染因子伝染の唯一の方法が胎盤を介した母体血液に由来する理由である。ドナー母体末梢血の2つの試料を出産日および供給源組織回収時に採取する。
【0108】
分析。化学発光イムノアッセイのためのABBOTT ARCHITECT 2000およびNATアッセイのためのProcleix PANTHERシステムを製造元の指示書に従って使用する。化学発光イムノアッセイのためのAbbott ACHITECTを使用する以下の試験を、HIV Ag/Ab組み合わせ、HBsAg定性II、抗HBc II、抗HCV、CMV IgM、CMV IgG、トキソIgM、トキソIgG、および梅毒TPで行う。さらに、Proclex Utrio Plus Assayを使用して、HIV-1 RNA、C型肝炎ウイルス(HCV)RNA、およびB型肝炎ウイルス(HBV)DNAについてのインビトロ核酸増幅をヒトドナー由来の血漿および血清標本において定性的にスクリーニングする。
【0109】
受入規準(acceptance criteria)。試験結果は、感染因子について「陰性」、「非反応性」、または「検出されない」でなければならない(CMV IgGを除く:この試験の陽性結果を有する場合、製造元は、リアルタイムPCR試験により製品中にCMV DNAがないことを確認する)。
【0110】
無菌。
サンプリング。酵素的回収後の培養液からの細胞および上清の試料(10mL)。
分析。試料は、嫌気性および好気性細菌の増殖ならびに真菌汚染の検出を意図した2つのBACTECボトルに播種される。ボトルをBACTEC FX400微生物分析装置に14日間入れる。
受入規準。試験結果は、14日間のインキュベーション後、好気性嫌気性細菌ならびに真菌微生物について「陰性である」または「検出されない」はずである。
【0111】
マイコプラズマ。
サンプリング酵素回収後の培養液からの細胞および上清の試料(0.1mL)
分析。Venor(登録商標)GeM Classicアッセイ(Merck KGaA,カタログ番号MP0025)はPCR増幅に基づき、製造元の指示書に従って使用される。
受入規準。試験結果は、ゲルスロット中の増幅産物について「検出されない」はずである。
【0112】
エンドトキシン。
サンプリング酵素的回収後の培養液からの細胞および上清の試料(0.5mL)
分析。Endosafe(登録商標)-PTS(商用)(Charles River Laboratories,カタログ番号PTS2005F)リアルタイムエンドトキシン試験システムを製造元の推奨に従って使用する。
受入規準。試験結果は、「検出されない」はずである。
【0113】
細胞計数。
サンプリング酵素的回収後の培養物からの細胞の試料(0.5mL)
分析。Malassezチャンバを使用した細胞数の光学顕微鏡分析。
受入規準。必要な細胞数の98%以上
【0114】
細胞生存率。
サンプリング酵素的回収後の培養物からの細胞の試料(0.5mL)
分析。7-AAD(Becton、Dickinson and Company,カタログ番号559925)で染色された細胞懸濁液のフローサイトメトリー分析は、FACS Caliburフローサイトメーターを使用して行われる。
受入規準。生存細胞の80%以上。
【0115】
免疫表現型解析。
サンプリング酵素的回収後の培養物からの細胞の試料(0.5mL)
分析。モノクローナル抗体で以前に標識した細胞のフローサイトメトリー分析は、表4に列挙されたFACS Caliburフローサイトメーター抗原の試験を使用して行われる。
受入規準-70%以上の細胞でのCD73、CD90およびCD105の発現。系統抗原(CD45、CD34、CD14またはCD11b、CD79αまたはCD19およびHLA-DR表面分子)の発現なし。
【0116】
核学。
サンプリングこのアッセイのために特に行われた細胞培養。
分析。培養をコルセミドでブロッキングし、ギムザで染色する。染色体数および構造異常を評価する。
受入規準。46染色体、XY;目に見える異常はない
【0117】
分化アッセイ
細胞を分化させる。
分析。製造元の指示書に従って、分化アッセイを使用する。複数の間葉系統に分化する能力に基づく、ヒトMSCの同定のために設計されたヒト間葉系幹細胞機能同定キット,カタログ番号SC006,R&D Systems、Inc.。このキットは、特別に製剤化された脂肪生成、軟骨形成、および骨形成培地サプリメントを含み、これは、MSCを脂肪生成、軟骨形成、または骨形成系統に効果的に分化するために使用することができる。抗mFABP4、抗hアグリカン、および抗hオステオカルシンからなる一連の抗体は、脂肪細胞、軟骨細胞、および骨細胞の成熟した表現型をそれぞれ定義するために含まれている。組織培養容器中での間葉系幹細胞(MSC)の軟骨分化のために開発されたStemPro(登録商標)Chondrogenesis Differentiation Kit,カタログ番号A1007101,Thermo Fisher Scientific Inc.。このキットは、MSCによる軟骨形成経路への関与および軟骨細胞の生成を誘導するのに必要なすべての試薬を含む。
受入規準。インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化する能力。
【0118】
結果
得られたMSC集団は、標準的培養条件で維持された場合、プラスチック接着性である。MSCは、CD105、CD73、およびCD90を発現し、実施例3で示されるようにCD45、CD34、CD14またはCD11b、CD79αまたはCD19、およびHLA-DR表面分子を発現せず、インビトロで骨芽細胞、脂肪細胞、および軟骨芽細胞に分化することができる。したがって、プールすることに適格なMSC集団が同定される。
【0119】
これらの基準をここでは採用するが、ISCTの基準に従ってMSCの定義の変更などをもたらす新しい知識が展開されるにつれて、これらを修正することが必要になり得、本発明者らは、上記の最小の標準的基準セットがMSCのより均一な特徴を培うと考える。本明細書で使用する場合、MSCはISCTの基準に従って定義される。
【0120】
実施例3
本実施例は、プールするMSC集団を選択するために、形態学的、増殖的、および機能的特徴について原薬中間体に由来する上記MSC集団を特徴付けるために使用されるスクリーニングアッセイについて記載する。
【0121】
材料および方法:
以下は、MSC集団を特徴付けるために使用される6つのアッセイの記載である。
【0122】
アッセイ1-IDO:IDOアッセイは、原薬中間体または原薬、すなわち間葉系幹細胞/間質細胞(MSC)の免疫抑制能力を分析するために使用される。
UC-MSC免疫調節能力は、培養上清中のトリプトファンおよびキヌレニンを測定することにより決定されるインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性の測定値として報告される。インドールアミン-ピロール2,3-ジオキシゲナーゼ(IDOまたはINDO EC 1.13.11.52)は、ヒトではIDO1遺伝子によってコードされるヘム含有酵素である。IDO酵素は、L-トリプトファンを、T細胞を含む免疫細胞増殖の阻害剤として機能する免疫抑制分子であるN-ホルミルキヌレニン(またはキヌレニン)に変換する。IDO活性は、キヌレニン/トリプトファンの比であり、ELISAキットを使用して細胞培養上清中に存在するトリプトファンおよびキヌレニンの量を計算することによって決定することができる。インターフェロンγ(IFNγ)で刺激した場合、間葉系幹細胞/間質細胞(MSC)は刺激しない場合より多くのIDOを分泌する。
【0123】
誘導可能なIDO活性は、放出された細胞が免疫調節に関連する機能的効力を有することを示す。
【0124】
MSC培養:100μlアッセイ培地(DMEM、低グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(ThermoFisher Scientific,カタログ番号21885025)+10%ウシ胎児血清、適格性あり、熱不活性化(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071)中に、48ウェル細胞培養プレートに10000MSC/ウェルを播種する。ストックからのIFNγを1mg/mlに希釈する(ThermoFisher Scientific,カタログ番号PHC4033)。IFNγ/ウェルの最終濃度は100ng/mlである。ウェルに100μlの200ng/mlIFNγを添加する。非刺激細胞に100μlのアッセイ培地を添加する(IFNγなし)。細胞培養プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートする。各ウェルから上清を除去し、ELISA分析のためにさらに処理するまで-20℃でマイクロチューブに保存する。
【0125】
トリプトファンおよびキヌレニンの測定は、ELISAキット製造元(Immundiagnostik AG,カタログ番号K3730およびK3728)によって提供されるマニュアルに従って行う。トリプトファンおよびキヌレニンの両方のELISAを、別の機会ではなく同じ日に行う。2つのELISAを製造元の指示書に従って行う。各ELISAについてのマニュアルを参照のこと。
【0126】
620nmでのバックグラウンド減算を伴う450nmでの吸収をSpectramaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices,Spectramax 190)で測定する。
【0127】
結果の分析:測定された吸光度の量は、試料に存在するアミノ酸の量に反比例し、すなわち、OD450が低いほど、キヌレニンまたはトリプトファンが多くなる。キット製造元が推奨するように、4PLアルゴリズム(4つのパラメーターロジスティクス回帰)を使用して結果を計算する(ソフトウェアSoftMaxPro7.0.2,Molecular Devices)。濃度は標準曲線から直接決定される。キットで提供される対照試料を許容性について評価する。キット製造元による許容範囲外の場合、試料を再分析する必要がある。
【0128】
結果
原薬中間体からのIFNγ処理細胞の相対的IDO生物活性を、選択アルゴリズムに従って試料をランク付けするために使用する(実施例4)。生物活性の増加が最も高いドナーが最高のランク付けスコアを得る。ランク付けスコア(表5)は、後に、ドナーの最終選択において使用される(実施例4を参照)。
【表5】
【0129】
アッセイ2:増殖アッセイ
この方法は、原薬中間体および/または原薬の免疫抑制効果、すなわち臍帯由来MSCが、末梢血単核細胞(PBMC)の増殖にして有する免疫抑制効果を定量的に測定するために使用される。MSCは、Tリンパ球増殖を抑制することが示されている。MSCとの混合リンパ球反応は、MSCの免疫抑制活性を示すために頻繁に使用される。
【0130】
フィトヘマグルチニン(PHA)は、Tリンパ球の増殖を活性化するマイトジェンとして使用される。原薬中間体および/または原薬の免疫抑制活性をPHA刺激Tリンパ球の増殖の減少として定量化する。
【0131】
培養およびCFSEプライミング:500μlの基礎培地(working medium)(RPMI1640(ThermoFisher Scientific,カタログ番号12633012+2mM Glutamax(ThermoFisher Scientific,カタログ番号35050061))+100U/ml Pest(ThermoFisher Scientific,カタログ番号15140122)+10% FBS(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071)MSC(2x105細胞/ウェル)を12ウェル細胞培養プレートに播種する。細胞のプラスチック接着のために、プレートを37℃+5%CO2で2時間インキュベートする。Lymphoprep(商標)キットを、製造元の指示書(Stem Cell Technologies,カタログ番号07801)に従って、血液中心から収集された末梢血から単核細胞を単離するために使用する。PBMCをRPMI1640、22x106細胞/mlに懸濁する。CellTrace(商標)CFSE細胞増殖キット(ThermoFisher Scientific,カタログ番号C34554)を、製造元の指示に従って増殖を分析するために使用する。
【0132】
分析:CFSE陽性細胞をフローサイトメトリー(Merck,Guava easyCyte 5HT)で分析する。CFSEヒストグラムには3つまたは4つのピークが含まれ、右から1番目の上部は未分化細胞(G0)を表す。次の上部は、異なる世代(G1~G4)を示している。増殖指数(PI)は、すべての世代の細胞の総数を細胞分裂に入った親細胞の数で割って計算される。
【表6】
【0133】
結果
各原薬中間体についての平均増殖指数をドナーの相対的比較のために使用する。最も低いPIを有するドナーが最高のランク付けスコアを得る。ランク付けスコア(表6)は、後に、ドナーの最終選択において使用される(実施例4を参照)。
【0134】
アッセイ3:プロスタグランジンE2
プロスタグランジンE2(PGE2)アッセイは、フィトヘマグルチニン(PHA)で活性化された末梢血単核細胞(PBMC)と共培養した場合のPGE2の原薬中間体および/または原薬分泌を評価する。
【0135】
細胞培養:細胞を、アッセイ培地(DMEM、低グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(ThermoFisher Scientific,カタログ番号21885025)+10%ウシ胎児血清、適格性あり、熱不活性化(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071))において、共培養細胞比MSC-PBMC1/5で、3日間、PHA(Merck,カタログ番号11082132001)の存在下および非存在下で培養する。12ウェル細胞培養プレートにウェルあたり40000個のMSCを播種する。細胞培養プレートを37℃、5%CO2で2時間インキュベートして、細胞を接着させる。
【0136】
Lymphoprep(商標)キットを、製造元の指示書(Stem Cell Technologies,カタログ番号07801)に従って、中心血液から収集された末梢血から単核細胞を単離するために使用する。PBMCをアッセイ培地に懸濁し、0.5x106個の細胞/mlおよび400μlをPBMCを目的としたウェルに播種する。500μlのアッセイ培地をPBMCを含まないウェルに添加する。100μl/ウェルの100μg/mlをPHAからPBMCを含むウェルに添加し、細胞培養プレートを37℃、5%CO2で72時間インキュベートする。上清を各ウェルから取り出し、500gで5分間遠心して粒子を除去する。上清を凍結し、ELISA分析のためにさらに処理するまで-20℃で保存する。
【0137】
Parameter(商標)Prostaglandin E2イムノアッセイキットを、製造元の指示書(Bio-Techne,カタログ番号KGE004B)に従ってPGE2発現検出のために使用し、Spectramaxマイクロプレートリーダー(Molecular Devices、Spectramax190)で分析する。4PLアルゴリズム(4つのパラメーターロジスティクス回帰)を使用して結果を計算する(ソフトウェアSoftMax Pro 7.0.2、Molecular Devices)。
【0138】
結果
各原薬中間体のPGE2(pg/ml)の平均的発現をドナーの相対的比較のために使用する。発現レベルが最も高いドナーが最高のランク付けスコアを得る。ランク付けスコア(表7)は、後に、ドナーの最終選択において使用される(実施例4を参照)。
【表7】
【0139】
アッセイ4:HLA-G
HLA-Gアッセイは、IFNγ、IL-10、および/またはPHAに応答して、可溶性および/または細胞内HLA-Gの原薬中間体および/または原薬の発現を評価する。
【0140】
細胞培養:50000個のMSCおよび25000個のJEG-3細胞(陽性対照細胞、ATCC,カタログ番号ATCC(登録商標)HTB-36(商標))を、1ウェルあたり、1mlのアッセイ培地(DMEM、低グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(ThermoFisher Scientific,カタログ番号21885025)+10%ウシ胎児血清、適格性あり、熱不活性化(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071)での12ウェル細胞培養プレートに、最終濃度10~50ng/mlのIL-10(Miltenyi Biotec,カタログ番号130-108-985)または25~100ng/mlのIFNγ(ThermoFisher Scientific,カタログ番号PHC4033)と共にまたは刺激なしで播種した。次に、細胞を37℃、5%CO2で48時間~72時間インキュベートする。上清を各ウェルから取り出し、可溶性HLA-GのELISA分析のために-20℃で保存する。
【0141】
細胞内HLA-G:接着細胞をDPBSで2回洗浄し、TrypLE Express(Thermo Scientific,カタログ番号12604021)で剥離する。BD Cytofix/Cytoperm(商標)を、製造元の指示書(Becton、Dickinson and Company,カタログ番号554714)に従って、細胞の固定および透過処理のために使用する。細胞を、製造元の指示書に従ってHLA-G(PE)抗体(EXBIO Praha,カタログ番号1P-431-C100)で染色し、フローサイトメトリー(Merck、Guava easyCyte 5HT)で分析する。
【0142】
可溶性HLA-G:上清中のHLA-Gの濃度を、製造元の指示書に従ってsHLA-G ELISAキット(Enzo Life Sciences,カタログ番号ALX-850-309-KI01)で分析する。
【0143】
結果
原薬中間体および/または原薬は、細胞内および可溶性HLA-G発現の両方について分析し、分析した他の試料と比較した相対的発現に基づいてスコアを受け取る。細胞内および可溶性HLA-G発現の合計スコアを纏め、原薬中間体は、ドナーの最終選択に使用される(実施例4を参照)ランク付けスコア(表8)を受け取る。
【表8】
【0144】
アッセイ5:形態
原薬中間体および/または原薬培養物の細胞形態を継続的に監視する。細胞を増殖中および回収前に視覚的に検査し、以下に基づいて評価する:
【表9】
【0145】
結果
原薬中間細胞を上記基準に基づいて視覚的に評価する。正常細胞が90%を超える試料のみが許容される。異常細胞の頻度は、原薬中間体のランク付け(表9)に使用される(実施例4を参照)。
【表10】
【0146】
アッセイ6:Fluorospot
原薬中間体および/または原薬を、抗体で事前にコーティングされたFluorospot特異的96ウェルプレートで培養する(MabTechにより提供されるサービス)。1000~3000個の細胞を、1ウェルあたり、100μlアッセイ培地(DMEM、低グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(ThermoFisher Scientific,カタログ番号21885025)+10%ウシ胎児血清、適格性あり、熱不活性化(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071))で播種し、刺激の不在下または存在下で48時間インキュベートする。使用する刺激は、ポリI:C(Invivogen,カタログ番号tlrl-pic)、r848(Invivogen、カタログ番号tlrl-r848)、GABA(Diamyd Medical)、およびIFNγ(ThermoFisher Scientific、カタログ番号PHC4033)である。IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-12、IL-12/13、IL-17A IL-21、IL-22、IL-29、IL-31、TGFβ1、GM-CFS、IFNα、IFNγ、アポE、およびTNFαの発現をFluorospot(MabTech)によって分析する。
【0147】
プールされた同種MSC組成物の以前のバッチ、すなわち薬品を参照として使用する。アッセイは、望ましいおよび望ましくないとみなされるタンパク質およびサイトカインの両方を含む。例えば、細胞がIL-6を発現している場合は陽性とみなし、IFNγを発現している場合は陰性とみなす。
【表11】
【0148】
結果
結果をFluorspotリーダーに付属のソフトウェアで分析する。プログラムにより、視覚的出力および数値的出力の両方を生成される(
図3を参照)。
【0149】
原薬中間体試料は、参照試料(数値)に関連してスコア付けされる。陽性および陰性の閾値は、各マーカーについて事前に定義されており、原薬中間体は表12に従ってスコア付けされる。
【表12】
【0150】
原薬中間体の最終ランク付けは、刺激ありおよび/または刺激なしで分析されたすべてのマーカーの纏めスコアに基づく(表12)。
【表13】
【0151】
原薬中間体のランク付けは、Fluorospotアッセイのランク付けスコアを生成するスコアに基づく。ランク付けスコアは、後に、実施例4に記載するドナーの全体的選択のために使用される。最高スコアの原薬中間体試料はまた、最高ランク付けスコアを得る(表13を参照)。
【表14】
【0152】
さらに、Fluorospotの結果の一部またはすべてを選択アルゴリズムの入力として、すなわち、各分析されたタンパク質からのデータを選択アルゴリズムにおける別々の要素として使用することも可能である。
【0153】
実施例4
本実施例は、本発明のプールされた同種組成物を得るためにプールするための細胞集団のサブセットをもたらす、実施例3に記載の特徴に基づくドナーに由来するMSC集団の選択プロセスについて記載する。
【0154】
材料および方法:
分析およびランク付け:原薬中間体試料を上記のアッセイ(IDO、増殖、PGE2、HLA-G、形態、およびFluorospot)を使用して分析する。試料のランク付けは以下に記載のように行う。
1.上記のIDOアッセイを2組の細胞培養試料で2回行い、各試料をELISAで3回分析する。以前のバッチでプールされた同種MSCを参照試料として使用する。IDOアッセイは対照試料を含み、各実施において分析し、対照試料の分析から生成された結果を、適切な統計的方法を使用して許容性について評価する。2つの対照の許容範囲は、製造元の仕様に従う。許容範囲の例は、キヌレニン(μmol/L)対照1:0.53~1.33および対照2:1.78~4.15;トリプトファン(μmol/L)対照1:15.0~35.0および対照2:31.2~72.8である。アッセイに使用される品質基準は、IDO対照が特定範囲内であり、およびIDO活性(参照試料)>60倍であり、すなわち、未刺激の参照試料と比較したインターフェロンγ(IFNγ)参照試料間のIDO活性の倍数誘導である。
【0155】
原薬中間体を相対的IDO発現に基づいてランク付けする。
【0156】
2.上記の増殖アッセイを2組の細胞培養試料で2回行い、各試料をFACSで3回分析する。PBMCの増殖に影響を与える試料を増殖指数PIとして示す。以前のバッチでプールされた同種MSCを参照試料として使用し、MSCの非存在下でPHAで刺激されたPBMCを陽性対照として使用する。アッセイに使用する品質基準は、増殖指数(陽性対照)>1.5および増殖指数(参照)0.9~1.3である。
【0157】
原薬中間体を相対的増殖指数に基づいてランク付けする。
【0158】
3.PGE2アッセイを2組の細胞培養試料で2回行い、各試料をELISAで3回分析する。キットは、各実験での標準曲線を確立するための標準を含む。以前のバッチでプールされた同種MSCを参照試料として使用し、PHAによって活性化されたPBMCの存在下でのPGE2発現のレベルに基づいて試料を比較する。アッセイに使用される品質基準は、PGE2発現(参照)5~15ng/mlおよび標準曲線R2>0.95である。
【0159】
原薬中間体をそれらの相対的PGE2発現に基づいてランク付けする。
【0160】
4.HLA-Gアッセイを2組の細胞培養試料で2回行い、各試料をELISAまたはFACSで3回分析する。以前のバッチでプールされた同種MSCを参照試料として使用し、PHAによって活性化されたPBMCの存在下でのHLA-G発現のレベルに基づいて試料を比較する。ELISAキットは、各実験での標準曲線を確立するための標準を含む。アッセイに使用される品質基準は、可溶性HLA-G発現(参照)>3 U/ml、標準曲線R2>0.95、および細胞内HLA-G発現(参照)>5%である。原薬中間体を、相対的な細胞内および/または可溶性HLA-G発現に基づいてランク付けする。
【0161】
5.形態評価は、MSC培養の長い経験を有する実験室の担当者によって行われる。以前のバッチでプールされた同種MSCを参照試料として使用し、試料を細胞のサイズ(正常または大きい)、核のサイズ(正常または大きい)、細胞の形状(正常または異常)、および細胞サイズと核サイズとの比(正常または異常)に基づいて評価する。アッセイに使用する品質基準は、4つすべての基準に従い、>90%正常細胞である。参照試料は、>90%正常細胞を有する。異常細胞を10%より多く有する原薬中間体は不適格となる。原薬中間体は、異常細胞の発生頻度に基づいてランク付けされる。
【0162】
外れ値および試料の不適格:ELISAおよびFACSを各細胞培養ウェルから3組で分析される。3つの3組のうちの1つだけが外れ値とみなし得る。外れ値分析は、ELISAのデルタ光学密度(ΔOD)ならびにFACSの増殖指数およびHLA-G陽性率に基づく。変動係数(CV)>10%の場合、細胞培養ウェルからの測定値は異常値について分析される。分析から除いた際に、反復(replicate)を除外することによりCVが>3%低下する場合、平均値から最も逸れている複製を外れ値とみなす。このような外れ値は、さらなる正当な理由がなければ分析から除外される。
【0163】
外れ値分析を行った後、CV>20%の場合、単一細胞培養ウェルの分析は不適格である。同じ実験で3つ以上の不適格な細胞培養ウェルは、実験を不適格とする。
【0164】
総合評価:原薬中間体の選択は、以下の表14に示すポイントシステムによるアッセイの総合評価である。各アッセイによりランク付けスコアが生成され、この最終選択では、すべてのアッセイのランク付けスコアが加算によって集約される。実施例3に記載された10のドナーから5のドナーを選択することは、各アッセイが表14における合計スコアおよび最終決定に等しく寄与することにより行われる。各アッセイについて、ランク付け値が加算され、加算合計スコアを得る。
【表15】
【0165】
あるいは、10のドナーのうち5を選択することは、アッセイに重みを割り当てることによって行われ、これにより、分析が多かれ少なかれドナーの選択に影響を与えることが可能となる。例としては、形態に因子2を適用し、HLA-Gアッセイの重要性を半分に減らすことであろう。重み付けランク付けスコアが加算され、重み付け合計スコアを得る。重み付け合計スコアに基づく実施例3の結果を表15に示す。
【表16】
【0166】
結果
本明細書に開示されるように、最高の合計スコア(加算/単純または重み付け)を有する5つの原薬中間体(DX)が、単離されプールされた同種MSC集団、すなわち薬品の製造のために選択される。したがって、単離されプールされた同種集団は、5つの異なるドナーに由来するMSCを含み、該MCSは、本明細書に開示される機能、形態、および安全性の基準を満たす。
【0167】
実施例5
本実施例は、以下に記載される賦形剤を含む単一細胞懸濁液である最終製品を製造するプロセスについて記載する。上記最終製品は、凍結保存に好適な移送バッグに充填され、以下に記載される所定の温度曲線に従って凍結される。
【表17】
【0168】
材料および方法
ドナーのプール
すべての受入規準に合格したドナー試料のみをプール対象とみなす。使用される原薬を実施例3および4に従って選択する。継代3で原薬をプールした直後に、凍結保存を行う。薬品をこのように得る。重要なことに、薬品はさらなる任意の培養および増殖に供しない。
【0169】
薬品の製剤化および包装
最終製品は、5mLの細胞懸濁液であり、クリオバッグ中に提供される。薬品を含む凍結保存された最終製品の組成を表16に示す。
【0170】
結果
このようにして、本明細書に開示される結果として得られる最終製品を得る。
【0171】
実施例6
本実施例は、凍結保存後の最終製品の安定性の評価について記載する。本実施例は、最終製品が解凍後少なくとも2時間安定していることを示す。
【0172】
材料および方法
本発明の組成物は、液体窒素またはドライアイスにて、最終製品であるバッグあたり1億個の細胞を含む5mlの細胞懸濁液を含むクライオバッグで出荷される。クライオバッグを水浴中(37℃)で解凍し、通常100mlの塩化ナトリウム溶液を含む注入バッグに直接移す。次いで、105mlの注入液が注入のために準備される。様々な時点で注入バッグから試料を採取することによって、細胞の生存率を分析する。約1x106細胞の試料を採取し、95% NutriStem(登録商標)XF(Biological Science,カタログ番号05-200-1A)、5% NutriStem(登録商標)XF Supplement Mix(Biological Science,カタログ番号05-201-1U)において解凍後、5分、1時間、および2時間培養することにより、細胞の機能をさらに分析し、NutriStemを1回だけ使用し、その後、これをアッセイ培地(DMEM、低グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸塩(ThermoFisher Scientific、カタログ番号21885025)+10%ウシ胎児血清、適格性あり、加熱不活性化(ThermoFisher Scientific,カタログ番号16140071))に交換する。細胞のプラスチック接着を視覚的に監視し、適切な時間間隔で顕微鏡写真を撮る。解凍後の細胞の生存率分析を、製造元の指示書に従って、7-アミノ-アクチノマイシンD(7-AAD,Becton,Dickson and Company,カタログ番号559925)のフローサイトメトリー(Merck,Guava easyCyte 5HT)分析によって行う。CD90(Becton,Dickson and Company,カタログ番号561557)およびHLA-DR(Exbio,カタログ番号IF-690-T100)による表現型の特徴付けを製造元の指示書に従って分析する。
【0173】
結果
生存率:生存率>80%である場合、細胞は安定しているとみなし、したがって、表17に示すように、CB1は、解凍後24時間において、室温で保存した場合に安定している。
【表18】
【0174】
表現型の特徴付け:MSC Nutristem基礎培地およびDMEM中で増殖したCB1細胞は、培養開始前の室温時間に関係なく、高い割合のCD90表面マーカー>99%を示した。HLA-DRは陰性であることが見出された(表18を参照)。
【表19】
【0175】
表面接着:MSC Nutristem基礎培地で増殖させた場合、1時間の培養後に、細胞はT-75フラスコの表面に既に接着していた。DMEM+10%FBS中で増殖した細胞は24時間の培養後に接着した。
【0176】
結論:本発明の組成物の分析されたバッチは、品質基準を満たし、室温で3時間後に細胞生存率>97%であり、室温で24時間後に細胞生存率>92%である。また、解凍後5分間、1時間、および2時間培養した細胞では、CD90表面マーカーが陽性であり、HLA-DR染色が陰性である。MSC特有の培地(MSC Nutristem基礎培地)で培養された細胞では、従来の細胞増殖培地で培養した場合よりも表面接着が速かった。24時間後、すべての「解凍後」の細胞が接着した。インハウスで試験したすべての基準は良好であり、許容範囲内の結果であるので、このバッチの高品質が実証される。
【0177】
実施例7
本実施例は、1型糖尿病と診断された患者への本発明のプールされた同種MSC組成物の注入の臨床研究デザインの要約を提供する。安全性および耐性、ならびにβ細胞機能の変化、代謝制御および糖尿病処置の満足度を調べる。任意の有害事象を報告し、最終製品との潜在的な因果関係を調査する。
【0178】
研究デザイン:フェーズIおよびフェーズIIを組み合わせた研究が行われる。第1パートは、18~40歳の9人の男性患者からなる非盲検の用量漸増研究である。第2パートは、本明細書で開示されるプールされた同種MSC組成物による処置を1型糖尿病と診断された成人患者のプラセボと比較する、並行デザインでの無作為化二重盲検プラセボ対照第I/II相試験である。安全性、内因性インスリン産生の維持(Cペプチド濃度として測定)、ならびに代謝制御、糖尿病処置の満足度、および免疫学的プロファイルが評価される。
【0179】
合計数24人の患者が研究に登録され(第1パートでは9人の患者、第2パートでは15人の患者)、最終製品/プラセボ処置後1年間追跡する。組み入れ基準および除外基準は実施例8に記載される。
【0180】
研究の第1パートでは、患者1~3は2,500万個の細胞の単回投与を受け、患者4~6は1億個の細胞を受け、患者7~9人は2億個の細胞を受ける。研究の第2パートの15人の患者に、3つの群:A.WJMSCによる同種注入(バッチ1)、すなわち、最終製品バッチ1)、B.WJMSCによる同種注入(バッチ2)、すなわち、最終製品バッチ2)、およびC.プラセボ注入のうちの1つを1:1:1の比で割り当てる。統計分析では、A群およびB群をプールし、C群と比較される。
【0181】
研究の第2パートでは、すべての患者が最終製品の固定単回投与を受ける。予備提案用量は1億個のMSCであるが、パート1のデータを評価して予備提案用量を確認する前に、パート2では投与を行わない。
【0182】
研究は、インフォームドコンセントを得るためのスクリーニング期間、スクリーニング、および研究への組み入れにより始まる。研究への組み入れは、1型糖尿病の診断から2年以内でなければならない。研究全体を通じて、すべての患者はインスリン処置を継続し、インスリンの用量は、臨床診療に従って最適な血糖コントロールを維持するように調整される。1~24人のすべての患者は、設定訪問スケジュールに従い、各訪問中に、試験および手順のセットが表19に従って行われる。
【表20】
【0183】
研究の終了は、最後の参加者の最後のフォローアップとして定義される。
【0184】
研究全体を通して、患者の安全は重要である。最終製品に少なくとも関連している可能性のある重大な悪影響(SAE)はそれぞれ、調査員によって予期されるまたは予期しないものとして分類され、プロトコルに従ってフォローアップされる。
【0185】
結果
24人の含まれる患者の医学的状況に対する明確な洞察。これには安全性および有害事象のパラメーターが含まれ、設定された有効性評価項目に対する洞察を得ることが可能となる。
【0186】
移植片対宿主病、心筋梗塞もしくは肝硬変後の組織再生、または骨形成不全症などの多くの疾患の臨床研究では、MSC処置の副作用は以前には全く観察されなかったか、または軽微である。患者における腫瘍発生リスクの増加は知られておらず、異所性組織の形成も観察されていない(von Bahr et al.,(2012)Biol Blood Marrow Transplant;18:557-564,von Bahr L et al.,(2012).Stem Cells;30:1575-1578)。同様に、1型糖尿病について新たに診断された成人患者での最初の研究では、副作用は観察されなかった(Hu J et al.,(2013).Endocr J;60:347-357,Carlsson PO et al.,(2015)Diabetes.2015;64(2):587-92)。
【0187】
本研究で使用した製造元からのWJMSCは、様々な条件についての病院免除規定(hospital exemption)の手順で以前から使用されており、細胞の安全性プロファイルは一貫しており、製品に関連する軽度かつ一時的な副作用のみが許容される。しかしながら、基礎疾患により引き起こされた重篤な有害事象および死亡が、死期が迫った(instant)末期ALS患者および治療を受けているグレード4のGVHDに罹患している患者について報告されている。本研究では、予想される有害事象は、軽度な一過性のインフルエンザ様症状である。
【0188】
薬品を含む最終製品による本発明の処置は、複数のドナー由来の細胞の同種移植であり、HLA不適合が保証される。高齢期のT1DM患者が腎移植を必要としている場合、深刻なものになり得る患者のHLA免疫付与の理論的リスクがある。
【0189】
臨床的に重要ではない外来HLAに対する抗体は、患者の最大20%におけると予想される。
【0190】
介入の成功は、対象患者にとって非常に有益であり、より低いHbA1c、変動が少ない血中グルコース、およびケトアシドーシスのリスク低下を提供する可能性が高いであろう。また、重度の低血糖事象および晩期合併症のリスクも大幅に減少するであろう。処置前および処置後12ヶ月のC-ペプチド濃度の低下は、プラセボ(対照)を受けた患者と比較して、本発明の最終製品を受けた患者の方が少ないと予想される。
【0191】
実施例8
本実施例は、研究集団の選択基準につて記載する。研究に登録された各患者は、すべての組み入れ基準を満たさなければならず、除外基準を満たす必要はない。
【0192】
組み入れ基準および除外基準:対象は、新たに診断された1型糖尿病患者の集団から動員される。
【0193】
この研究に組み入れられる資格のある患者は、以下の基準を満たさなければならない:1.研究への参加について書面によるインフォームドコンセントが与えられた場合;2.登録前2年未満に診断された1型糖尿病に適合する病歴;3.試験の第1パートでは、患者1~9には、18~40歳の男性患者のみが含まれる。研究の第2パートでは、18歳~40歳(両端を含む)の男性および女性の両方の患者である10~24人の患者が含まれる;4.空腹時血漿C-ペプチド濃度>0.12nmol/L;および5.妊娠していない女性、および承認された避妊/禁欲方法を使用していること。
【0194】
スクリーニングで以下の基準のいずれかを満たす患者は、本研究における組み入れに適格ではない:1.インフォームドコンセントを提供できない;2.ボディマスインデックス(BMI)>30または体重>100kgの患者;3.体重<50kgの患者;4.NYHAクラスIII/IVもしくは狭心症の症状を含む不安定な心血管状態、管理不良高血圧(≧160/105mmHg)、進行中の活動性感染症、結核、または結核もしくは真菌症のリスクがある、HIV、梅毒トレポネーマ、B型肝炎抗原もしくはC型肝炎、脱髄疾患、増殖性網膜症、および以前もしくは既知の悪性腫瘍を有する患者;5.免疫抑制処置を受けている患者;6.妊娠中または授乳中の女性;7.経口抗糖尿病療法またはインスリン以外のグルコース調節を妨害し得る任意の他の併用薬の服用;8.GFR<80ml/min/1.73m2体表面を有する患者;9.任意の賦形剤、すなわちジメチルスルホキシド(DMSO)に対する過敏性が既知である患者。
【0195】
結果
上記の基準に基づいて、24人の研究集団を選択する。
【0196】
実施例9
本実施例は、臨床研究がどのように行われるかについて記載する。本明細書では、本発明のプールされた同種MSC組成物を薬品と称し、医薬組成物を最終製品と称する。
【0197】
材料および方法
最終製品は、寄付された臍帯組織由来ウォートンゼリーから生成され、実施例1~5に記載されるように約4~5週間(最大3継代)にわたって接着培養で増殖した、MSCを含む細胞懸濁液であった。処置は、同種であり、5~10人の異なるドナー由来のプールされた増殖MSCからなる。注入の最低72時間前に、調査員は最終製品の配達のために製造元に要求書を送った。注入日に、該当する最終製品が製造元によって調査サイトに輸送された。最終製品は、液体窒素輸送キャニスターにおけるクライオバッグ中に保管された。最終製品を滅菌生理食塩水を含む水浴中のベッドサイドで解凍し、100ml生理食塩水で希釈して、注入量を105mlとした。最終製品を、調製後30分以内に患者に投与した。
【0198】
対象および研究担当者の両方が対象の処置について盲検であった。プラセボを、最終製品と同じ組織バッグ(tissue bags)に提供した。対象、調査員、研究現場担当者、ならびにデータのレビューおよび分析に関与するスポンサー担当者は、データベースがクリーンかつロックされるまで研究全体を通して盲検のまま研究した。
【0199】
すべての患者は、皮下に標準的なインスリン処置を受けた。インスリン処置を処方し、臨床日常的診療ごとに薬局から患者によって採取した。インスリン処置または他の免疫抑制処置以外のグルコース調節を妨げ得る併用薬を受けた研究患者は、研究、例えば経口抗糖尿病療法GLP-1 RAを中止した。対象は、グルコース調節を妨げない他の薬を服用することは許された。患者が試験薬による処置を開始した後に投与されたすべての薬物療法および重要な非薬物療法(理学療法および輸血を含む)が報告された。
【0200】
研究のパートIでは、男性患者1~3は25×106個の細胞受け、患者4~6は100×106個の細胞受け、患者7~10は200×106個の細胞を受けた。各用量コホート間で安全性評価を行い、試験を継続、修正、または中止することを勧告した。
【0201】
研究のパートIIでは、男性および女性の患者に、以下の3つの処置群のうちの1つを1:1:1の比で割り当てる;最終製品バッチ1、バッチ2、またはプラセボ注入による注入のいずれか。主要評価項目を1:2の比率で評価し、最終製品(バッチ1および2)で処置した患者をプラセボで処置した患者と比較する。患者は、最終製品を、実施例5で定義されている5%HSAおよび10%DMSOを含む等張塩化ナトリウム(NaCl)溶液に20x106細胞/mlの濃度で1回の注入として受ける。プラセボ注入は、5%HSAおよび10%DMSOを含むが細胞を含まない等張NaCl溶液からなり、容量は対応している(5ml)。すべての注入は約20分にわたって行われる。注入後3時間の任意の急性反応について、患者を観察する。研究の第2部において、200x106個の細胞の固定用量は2~4x106個の細胞/kgに相当し、これは確立された用量の範囲内である。したがって、用量調整を行わない。
【0202】
研究は、最終製品またはプラセボの注入後、1年のフォローアップで完了する。その後、患者は標準的なインスリン処置を継続する。
【0203】
最終製品バッチ1を受けた患者のサブグループ分析は、最終製品バッチ2を受けた患者と比較される。安全性および有効性の両方がバッチ間で比較する。
【0204】
結果
上記の手法により、製品の適切な適用が保証され、製品の安全性および有効性を研究することが可能となる。
【0205】
Protrans研究パート1(9人の処置患者)では、試験薬に関連する主要な有害事象は観察されていない(表14)。
【表21】
【表22】
【表23】
【0206】
実施例10
本実施例は、臨床研究で調査されたパラメーターについて記載する。
【0207】
材料および方法
以下の試験を本臨床試験の評価に使用する。
【0208】
混合食事耐性試験:混合食事負荷試験に応答したC-ペプチド濃度としての内因性インスリン産生の測定を行う。一晩の絶食期間の後、患者は標準化されたMMTTを行う。患者は、供給源タンパク質の溶液(Novartis Nestle,6ml/kg,最大用量360ml)を飲む。血液試料を0、15、30、60、90、および120分の時点で分析のために採取する。各時点で採取された末梢静脈血漿中のC-ペプチド値を測定し、AUC C-ペプチド濃度を試験用に測定する。
【0209】
糖尿病治療の最適化:患者の盲検システムを使用して、持続グルコースモニタリング(CGM)を72時間行う。研究対象は、グルコース試薬ストリップによる血漿グルコースの自身での測定により、研究における訪問前の連続した3日間の7点プロファイルとして血漿グルコース濃度を記録する。
【0210】
インスリン投与量および測定された血漿グルコース値は、対象自身が、毎日、対象の日記に書き留める。インスリンの量、記録された血漿グルコース値、および日時を含むであろう。これは、以下の計算に使用される。
・187日目および372日目におけるインスリン非依存患者数(ADA基準)。
・187日目および372日目におけるインスリン<0.25U/kgを毎日必要とする患者の数。
・187日目および372日目におけるインスリン必要量/kg体重。
【0211】
処置満足度および生活の質:研究における糖尿病処置満足度の変化は、糖尿病処置満足度アンケートを使用して測定される。生活の質および処置満足度は、注入後372日目における標準化された糖尿病処置満足度アンケートで分析される。処置の有効性は、処置開始前と比較した場合のこのパラメーターのデルタ変化として測定される。
【0212】
臨床安全性評価:試験中および処置前に数回行われる身体検査。身体検査には、一般的な外観、心臓および肺の聴診の試験が含まれる。バイタルサインには、血圧および脈拍測定が含まれる。心電図試験は、研究中のすべての通院で行われる。網膜検査を伴う眼科検査は、訪問1、4、および8で専門の眼科医によって行われる。
【0213】
血液学:ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球数、白血球数、好中球数、リンパ球数、単球数、および血小板数を測定する。
【0214】
臨床化学、血清学:C反応性タンパク質(CRP)、クレアチニン、シスタチンC、GFR、総ビリルビン、AST、ALT、アルカリホスファターゼ(ALP)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、アルブミン、尿酸を研究前に測定する。慢性感染症のスクリーニングは、HIV、トレポネーマパリダム(梅毒)、B型およびC型肝炎についての試験によって行われる。CRP、AST、ALT、ALP、総ビリルビン、脂質(総コレステロール、LDL、HDL、トリグリセリド)、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、アルブミン、クレアチニン、シスタチンC、GFR、および尿酸は、処置前に分析され、その後は通院時に繰り返し分析される。研究前および研究中に繰り返し、P-グルコース、HbA1c、C-ペプチド、HLAクラスI ab、GAD ab、およびIA2 abについて測定が行われる。
【0215】
異なるサイトカイン(IL-2、IL-6、IL-10、IL-17、IL-21、IL-33、IL-35、IFN-γ、およびTGF-β)の循環レベルの測定のために、個別の血液試料が採取され、市販のELISA技法(RnD Systems,アビンドン,英国)またはMesoscale技法を使用して血漿試料中で分析される。PBMCは、フローサイトメトリーを使用することにより、抗原提示細胞、T細胞、制御性T細胞、制御性B細胞、および他の自然免疫細胞などの異なる免疫細胞の比率を決定するためにさらに研究される。PBMCは、免疫調節遺伝子の発現およびインビトロアッセイの測定にも使用される。患者由来の末梢血は、進行中のβ細胞死の非メチル化INS DNA測定の循環レベルを測定するために使用される。
【0216】
結果
本実施例は、本明細書に開示される選択アルゴリズムを使用して製剤化された最終製品および本明細書に開示される複数の個体ドナーに由来するプールされたMSCによる処置が、以下の結果のうちの1つ以上を示すと予想される:12ヶ月にわたるプラセボと比較してC-ペプチドのより低い減少;最終製品で処置された集団における持続的なC-ペプチド;12ヶ月にわたるC-ペプチドの増加;対照と比較してより低いインスリン依存性およびより低いインスリン必要量。本開示に従って処置される患者は、対照群と比較して、より高い処置満足度および患者の生活の質を示すと予想される。
【0217】
さらに、本処置は、任意の新規同種免疫を生成しないことが示されている。4回目の訪問、すなわち処置後1ヶ月で9人の対象から分析された血液試料は、与えられた用量に関係なく、同種免疫を生じなかった。2人の対象は、処置前にHLA抗体のHLA力価が低かった。処置後の力価は維持され、さらに重要なことに、プールされたMSCによって誘発されなかった。したがって、処置は、患者において抗HLA抗体力価を誘発しないか、またはたとえあっても低い抗HLA抗体力価を誘発しただけである。したがって、抗HLA抗体の臨床的に関連する誘導は発生しなかった。HLA抗体の発生は用量依存的であることが既知である。複数のドナーを有することにより、単一のドナー由来の細胞が使用された場合よりも任意の同種HLAの濃度が低くなり、HLA免疫に関して臨床的に重要ではない抗体力価などの低い同種免疫がもたらされる。HLA免疫化に関して臨床的に関連する抗体力価とみなされるものについての普遍的な閾値はない。しかしながら、固相多重技術による抗体分析により、HLA抗体の幅および強さをより正確に定義できるようになった。これらの結果を実際の細胞に基づく交差適合によって得られる結果および最終的な移植結果と相関させることにより、臨床的に関連する抗体を中心特異的な方法で定義することができる(Zachary et al.Using real data for a virtual crossmatch.Hum Immunol 2009;70:574-579)。さらに、本開示による単離されプールされた同種MSC集団は、統計的に有意ではないバッチ間の変動および高い許容レベルを示すと予想される。望ましい機能および特徴を有する細胞を選択するため、深刻な有害事象は予想されない。
【0218】
実施例11
本実施例は、第2の臨床研究がどのように行われるかについて記載する。本明細書では、本発明のプールされた同種MSC組成物を薬品と称し、医薬組成物を最終製品と称する。薬品で以前に処置した対象には、実施例9に記載の臨床試験完了後に参加を求められる。試験の目的は、薬品による繰り返し処置の安全性および有効性を調査することである。
【0219】
材料および方法
最終製品は、寄付された臍帯組織由来ウォートンゼリーから生成され、実施例1~5に記載されるように約4~5週間(最大3継代)にわたって接着培養で増殖した、MSCを含む細胞懸濁液である。処置は、同種であり、5~10人のドナー由来のプールされた増殖MSCからなる。注入の最低72時間前に、調査員は最終製品の配達のために製造元に要求を送る。注入日に、該当する最終製品が製造元によって調査サイトに輸送される。最終製品を、液体窒素輸送キャニスターにおけるクライオバッグ中に保管する。最終製品を滅菌生理食塩水を含む水浴中のベッドサイドで解凍し、100mlの生理食塩水で希釈し、注入量は105mlとする。最終製品を、調製後30分以内に患者に投与する。
【0220】
対象および研究担当者の両方が対象の処置について盲検である。プラセボは、最終製品と同じ組織バッグで提供される。対象、調査員、研究現場担当者、ならびにデータのレビューおよび分析に関与するスポンサー担当者は、データベースがクリーンかつロックされるまで研究全体を通して盲検のまま研究する。SAEなどの緊急の場合にのみ、研究が完了する前に盲検を解除してもよい。
【0221】
すべての患者は、皮下に標準的なインスリン処置を受ける。インスリン処置を処方し、臨床日常的診療ごとに薬局から患者によって採取した。インスリン処置または他の免疫抑制処置以外のグルコース調節を妨げ得る併用薬を受けた研究患者は、研究、例えば経口抗糖尿病療法GLP-1 RAを中止する。対象は、グルコース調節を妨げない他の薬を服用することは許される。患者が試験薬による処置を開始した後に投与されたすべての薬物療法および重要な非薬物療法(理学療法および輸血を含む)が報告される。
【0222】
第1の臨床試験の第1パート(用量増加)を完了した患者のみが、以前に受けたのと同じ用量の第2の用量による薬品の処置のために登録され、患者1~3は25x106個の細胞を受け、患者4~6は100x106個の細胞を受け、患者7~10は200x106個の細胞を受ける。さらに、ベースラインデータが一致する9人の患者は、任意の介入なく対照群として追跡される。
【0223】
実施例12
本実施例は、バッチ内変動の分析について記載する。本明細書に開示される選択アルゴリズムによってプールのために選択された個体ドナー由来のMSC集団と、すべての個体ドナー由来のMSC集団(選択されていない集団を含む)と、のアッセイ結果の間で比較を行う。
【0224】
方法および結果
個体ドナー由来のMSC集団を、実施例3に記載するIDOアッセイ、増殖アッセイ、およびPGE2アッセイにより分析した。評価の変動は次式で計算される。
【数3】
式中、最大値および最小値は、得られた最大および最小アッセイ結果である。
【0225】
個体ドナー由来細胞からのIDO倍数誘導の合計範囲は50~200倍であり、ドナーは130~200倍の範囲の選択アルゴリズムで最終的に選択された。個体ドナー由来細胞からの増殖指数の合計範囲は1.14~1.07であり、ドナーは1.13~1.07の範囲の選択アルゴリズムで最終的に選択された。個体ドナー由来細胞によって誘導されたPGE2発現の合計範囲は0.29~1.76であり、ドナーは0.61~1.42の範囲の選択アルゴリズムで最終的に選択される。
【0226】
ドナー由来MSC集団間の変動を上記の式に従って定量化した。結果は、IDOアッセイの変動については53%低下し、増殖アッセイの変動については14%低下し、PGE2アッセイの変動については45%低下することを示している(
図4を参照)。
【0227】
選択アルゴリズムで計算された総合評価の変動は、分析されたすべての細胞のスコアおよび選択された細胞のスコアと比較して、変動を40%低下させた(
図4を参照)。
【0228】
実施例13
本実施例は、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団間のバッチ間変動の分析について記載する。
【0229】
方法および結果
本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団(薬品)を、実施例3に記載されるIDOアッセイ、増殖アッセイ、およびPGE2アッセイによって分析した。別々のバッチからの薬品のアッセイ結果を比較した。選択アルゴリズムによって選択されたプールされたドナー由来の細胞を用いて、本明細書に開示される方法に従って3つのバッチの薬品を製造した。薬品バッチの命名は、TB1(技術バッチ番号1、非臨床使用を意図)、CB1およびCB2(それぞれ、実施例9および11に記載される臨床試験で使用される臨床バッチ1および2)である。3つのバッチTB1、CB1、およびCB2からの薬品を分析に供した。
【0230】
各実験を2回行い、すべてのバッチを2つの反復で各実験で分析した。
【0231】
アッセイ内の標準偏差および変動係数は、同じアッセイで、すなわち、2つの反復間の標準偏差に基づき計算され、変動係数は、平均値によって除算した標準偏差として計算された。
【0232】
アッセイ間の標準偏差および変動係数は、2つの実験の平均値間の標準偏差および変動係数として計算された。
【0233】
バッチ間の標準偏差および変動係数は、IDO、PGE2、およびPIについて両方の実験におけるすべての反復の平均値に基づいてそれぞれ計算された。
【0234】
結果を表15a~cに示す。
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【0235】
纏めると、本実施例は、反復間のアッセイ内標準偏差およびアッセイ間標準偏差(別々の分析からの平均値間)が、異なるバッチ間の標準偏差よりも高いことを示している。したがって、バッチ間に差がないこと、したがって、本明細書に開示される単離されプールされた同種MSC集団の異なるバッチ間で統計的に有意なバッチ間の変動がないことが示される。
【0236】
実施形態の項目別リスト
1.少なくとも3の個体ドナーに由来する間葉系幹細胞(MSC)を含む、単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法であって、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の50%を超えず、前記MSCは最大8つの継代に供されており、
-少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSCを培養して、少なくとも3より多い個体ドナー由来のMSC集団を得る工程と、
-少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイし、上記各個体ドナー由来のMSC集団についての少なくとも3つのアッセイ結果を得る工程であって、上記少なくとも3つのアッセイは、各個体ドナー由来のMSC集団の免疫抑制能力を測定する少なくとも1つのアッセイを含む、工程と、
-各アッセイについて、アッセイ結果に基づいて個体のランク付けスコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当て、したがって、各個体ドナー由来のMSC集団について少なくとも3つの個体ランク付けスコア値を得る工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示すか、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す、工程と、
-少なくとも3つの個体ランク付けスコア値に基づいて、合計スコア値を各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てる工程であって、より高いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示し、またはより低いランク付けスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す、工程と、
-それらの合計スコア値に基づいて、望ましい集団特性を有する個体ドナー由来のMSC集団のサブセットを選択する工程と、
-上記選択された個体ドナー由来のMSC集団をプールして、単離されプールされた同種間葉系幹細胞(MSC)集団を得る工程と、を含み、
上記プールされた同種MSC集団は、上記プール工程後にさらに培養されず、
前記少なくとも3つのアッセイは、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性を測定する1つのアッセイ、上記MSCによって分泌されたプロスタグランジンE2を測定する1つのアッセイ、および末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対する上記MSCの効果を測定する1つのアッセイを含む、方法。
【0237】
2.少なくとも1つのアッセイについての個体ランク付けスコア値が、上記各個体ドナー由来のMSC集団についてのアッセイ結果と、残りの個体ドナー由来のMSC集団についての結果と、の比較に基づいて、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられる、項目1に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0238】
3.少なくとも1つのアッセイについての個体ランク付けスコア値が、上記個体ドナー由来のMSC集団について得られた絶対アッセイ結果に基づいて、上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられる、項目1または2に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0239】
4.上記絶対結果が少なくとも所定の値または多くても所定の値に対応する場合に、アッセイ結果が望ましいとみなされ、得られた望ましいアッセイ結果を反映する個体ランク付けスコア値が割り当てられる、項目3に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0240】
5.望ましい集団特性を有する個体ドナー由来MSC集団のサブセットを選択する工程が、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、少なくとも所定の値に対応する合計スコア値、またはより低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、多くても所定の値低い合計スコア値に対応する合計スコア値を有する個体ドナー由来のMSC集団を選択することを含む、項目1~4のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0241】
6.望ましい集団特性を有する個体ドナー由来MSC集団のサブセットを選択する工程が、所定の数の個体ドナー由来のMSC集団を選択することを含み、より高い合計スコア値がより望ましい集団を示す場合、上記集団が、残りの個体ドナー由来のMSC集団と比較してより高い合計スコア値を示すか、またはより低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す場合、上記集団が、残りの個体ドナー由来のMSC集団と比較してより低い合計スコア値を示す、項目1~4のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0242】
7.上記MSCが、最大7つの継代、例えば最大6つの継代、例えば最大5つの継代、例えば最大4つの継代、例えば最大3つの継代、例えば最大1つ、2つ、または3つの継代、例えば2つまたは3つの継代に供されている、項目1~6のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0243】
8.上記MSCが、骨髄由来MSC、末梢血由来MSC、脂肪組織由来MSC、歯組織由来MSC、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、脱落膜由来MSC、軟骨膜由来MSC、および羊膜由来MSCからなる群、例えば、胎盤由来MSC、臍帯由来MSC、羊水由来MSC、臍帯血由来MSC、ウォートンゼリー由来MSC、脱落膜由来MSC、軟骨膜由来MSC、歯髄由来MSC、および羊膜由来MSCからなる群から選択される、項目1~7のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0244】
9.上記MSCが、臍帯由来MSCおよびウォートンゼリー由来MSCからなる群から選択され、例えば、上記MSCが、ウォートンゼリー由来MSCである、項目8に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0245】
10.上記集団が、少なくとも4の個体ドナー、例えば少なくとも5の個体ドナー、例えば少なくとも6の個体ドナー、例えば少なくとも7の個体ドナー、例えば少なくとも8の個体ドナー、例えば少なくとも9の個体ドナー、例えば少なくとも10の個体ドナー由来のMSCを含む、項目1~9のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0246】
11.上記集団が、3~20の個体ドナー、例えば3~15の個体ドナー、例えば3~10の個体ドナー、例えば4~8の個体ドナー、例えば5~7の個体ドナー、例えば5、6、または7の個体ドナーに由来するMSCを含む、項目1~9のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0247】
12.各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程が、プール工程でプールされた個体ドナー由来のMSC集団の少なくとも1~4倍、例えば2~4倍、例えば2~3倍または3~4倍の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む、項目1~11のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0248】
13.各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程が、少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5、例えば少なくとも6、例えば少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば少なくとも9、例えば少なくとも10、例えば少なくとも11、例えば少なくとも12、例えば少なくとも13、例えば少なくとも14、例えば少なくとも15、例えば少なくとも16、例えば少なくとも17、例えば少なくとも18、例えば少なくとも19、例えば少なくとも20の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む、項目1~12のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0249】
14.各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程が、3~50の個体ドナー由来のMSC集団、例えば4~50、例えば5~50、例えば6~50、例えば6~30、例えば6~20、例えば6~15、例えば8~12の個体ドナー由来のMSC集団をアッセイすることを含む、項目1~12のいずれか1つに記載のプールされた同種MSC集団を得る方法。
【0250】
15.少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程が、例えば少なくとも1つの機能的アッセイ、例えば少なくとも2つの機能的アッセイ、例えば少なくとも3つの機能的アッセイ、例えば少なくとも4つの機能的アッセイ、例えば少なくとも5つの機能的アッセイを使用することを含む、項目1~14のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0251】
16.上記のPBMC増殖が、Tリンパ球の増殖、例えば、フィトヘマグルチニン(PHA)刺激Tリンパ球の増殖である、項目1~15のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0252】
17.上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定する上記少なくとも1つのアッセイが、PBMC、例えばPHA刺激PBMC、例えばPHA刺激Tリンパ球と共培養したときに上記MSCによって分泌されるプロスタグランジンE2を測定することを含む、項目1~16のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0253】
18.上記少なくとも3つのアッセイが、IFNγ、IL-10、PHA、および/またはGABAに応答して、例えば、IFNγ、IL-10、および/またはPHAに応答して、上記MSCにおけるHLA-G発現を測定する少なくとも1つのアッセイをさらに含む、項目1~17のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0254】
19.上記少なくとも3つのアッセイが、タンパク質発現および/またはサイトカイン発現を測定する少なくとも1つのアッセイをさらに含む、項目1~18のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0255】
20.タンパク質発現および/またはサイトカイン発現を測定する上記少なくとも1つのアッセイが、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-12、IL-12/13、IL17A、IL-21、IL-22、IL-29、IL-31、TGFβ、VEGF、FGF、GM-CFS、IFNα、IFNγ、アポE、およびTNFαからなる群、例えば、IL-6、IL-8、GM-CSF、およびTGFβからなる群、例えば、少なくともIL-6からなる群から選択される1つまたはいくつかのタンパク質またはサイトカインの発現を測定する、項目19に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0256】
21.上記タンパク質および/またはサイトカインのうちの少なくとも2つ、例えば少なくとも3つ、例えば少なくとも4つ、例えば少なくとも5つ、例えば少なくとも6つ、例えば少なくとも7つ、例えば少なくとも8つ、例えば少なくとも9つ、例えば少なくとも10個、例えば少なくとも11個、例えば少なくとも12個、例えば少なくとも13個、例えば少なくとも14個、例えば少なくとも15個、例えば少なくとも16個、例えば少なくとも17個、例えば少なくとも18個、例えば19個すべてが測定される、項目20に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0257】
22.上記発現が、少なくとも1つの刺激の非存在下および/または存在下で測定される、項目19~21のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0258】
23.上記刺激が、免疫応答修飾刺激である、項目22に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0259】
24.上記免疫応答修飾刺激が、PBMC、刺激されたPBMC、例えばPHAで刺激されたPBMC、IL10、γ-アミノ酪酸(GABA)、およびインターフェロンγ(IFNγ)からなる群から選択される、項目23に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0260】
25.上記免疫応答修飾刺激が、γ-アミノ酪酸(GABA)である、項目24に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0261】
26.上記刺激が、サイトカイン、例えば、インターフェロンγ(IFNγ)である、項目24に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0262】
27.刺激が、ポリイノシン酸:ポリシチジル酸(ポリI:C)、レシキモド(r848)、γ-アミノ酪酸(GABA)、およびIFNγからなる群、例えば、ポリI:CおよびIFNγからなる群から選択される、項目22~26のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0263】
28.刺激が、PBMC、例えば刺激または非刺激PBMC、例えばPHA刺激PBMC、例えばPHA刺激Tリンパ球である、項目22または23に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0264】
29.上記少なくとも3つのアッセイが、少なくとも1つの形態学的アッセイを含む、項目1~28のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0265】
30.上記形態学的アッセイが、細胞および/または細胞核の形態学的特徴をアッセイする、項目29に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0266】
31.細胞および/または細胞核の上記形態学的特徴が、細胞のサイズ、核のサイズ、細胞の形状、および細胞サイズと核サイズとの比からなる群から選択される1つ以上の特徴である、項目30に記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0267】
32.個体ドナー由来のMSC集団が、少なくとも90%以上、例えば少なくとも91%、例えば少なくとも92%、例えば少なくとも93%、例えば少なくとも94%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の正常な細胞および/または核を示す場合にのみ、プールに適格である、項目29~31のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0268】
33.少なくとも3つのアッセイを使用して各個体ドナー由来のMSC集団をアッセイする工程が、MSC集団が継代0(p0)~継代8(p8)、例えばp1~p5、例えばp1~p4、例えばp2~p4、またはp1~p4、例えばp1、p2、および/またはp3、例えばp2、および/またはp3である場合に行われる、項目1~32のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0269】
34.細胞が、プールされるときと同じ継代にある場合に、少なくとも1つのアッセイ、例えば少なくとも2つのアッセイ、例えば少なくとも3つのアッセイ、例えばすべてのアッセイが行われる、項目1~33のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0270】
35.少なくとも2つのアッセイが、異なる継代で行われる、項目1~33のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0271】
36.上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられた上記合計スコア値は、各個体ドナー由来のMSC集団についてのランク付けスコア値の加算によって得られる加算合計スコア値である、項目1~35のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0272】
37.上記各個体ドナー由来のMSC集団に割り当てられた上記合計スコア値が、1)各アッセイについてのランク付けスコア値に重みを割り当てること、および2)個体ドナー由来のMSC集団について重み付けされたランク付けスコア値を加算することによって得られる重み付け合計スコア値である、項目1~35のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0273】
38.望ましい集団特性を有する個体ドナー由来MSC集団のサブセットを選択する工程が、少なくとも3、例えば少なくとも4、例えば少なくとも4、例えば少なくとも5、例えば少なくとも6、例えば少なくとも7、例えば少なくとも8、例えば少なくとも9、例えば少なくとも10の個体ドナー由来のMSC集団を選択することを含む、項目1~37のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0274】
39.個体1~38のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法であって、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の45%を超えず、例えば40%を超えず、例えば35%を超えず、上記集団が少なくとも3のドナーに由来するMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の40%を超えず、例えば35%を超えず、例えば30%を超えず、上記集団が少なくとも4のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の35%を超えず、例えば30%を超えず、例えば25%を超えず、上記集団が少なくとも5のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の30%を超えず、例えば25%を超えず、例えば20%を超えず、上記集団が少なくとも6のドナー由来のMCSを含み、例えば、上記集団において、いずれか1のドナー由来の細胞の数が、総細胞数の25%を超えず、例えば22%を超えず、例えば20%を超えず、上記集団が少なくとも7のドナー由来のMCSを含む、方法。
【0275】
40.項目1~39のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法であって、上記集団において、いずれか1のドナー由来のMSCの数が、他のドナーに由来の細胞の数の4倍、例えば3倍、例えば2倍を超えない、方法。
【0276】
41.上記個体ドナー由来MSC集団のアッセイ結果が、項目1~40のいずれか1つに記載の方法によって以前に得られたプールされた同種MSC集団についての対応するアッセイ結果よりも望まくない場合、個体ドナー由来のMSC集団をプール工程から廃棄する工程をさらに含む、項目1~40のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団を得るための方法。
【0277】
42.項目1~41のいずれか1つに記載の方法により得られ、上記集団がプール後にさらに培養されない、単離されプールされた同種MSC集団。
【0278】
43.上記集団が、統計的に有意なバッチ間の変動を示さない、項目42に記載の単離されプールされた同種MSC集団。
【0279】
44.薬剤として使用するための、項目43に記載の単離されプールされた同種MSC集団。
【0280】
45.炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防に使用するための、項目44に記載の単離されプールされた同種MSC集団。
【0281】
46.上記使用が、それを必要とする患者への注入として上記MSC集団の投与を含む、項目44または45に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0282】
47.上記注入が、静脈内、腹腔内、リンパ内、静脈内、髄腔内、脳内、動脈内、皮下、またはオンマヤリザーバーにより投与され、例えば、静脈内、腹腔内、リンパ内に投与される、項目46に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0283】
48.上記注入が繰り返し行われる、項目44~47のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0284】
49.上記注入が1回のみ行われる、項目44~47のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0285】
50.上記投与が、患者において抗HLA抗体力価を誘発しないかまたは低い抗HLA抗体力価を誘発する、項目44~49のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0286】
51.上記炎症性疾患または状態が、自己免疫疾患からなる群から選択される、項目44~50のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0287】
52.上記自己免疫疾患が、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、および関節炎からなる群から選択される、項目51に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0288】
53.上記自己免疫疾患が、1型糖尿病または成人潜在性自己免疫糖尿病(LADA)である、項目52に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0289】
54.上記1型糖尿病またはLADAが、1型糖尿病またはLADAであると最近診断された、例えば上記注入を投与する前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内に1型糖尿病またはLADAであると診断された、項目53に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0290】
55.上記患者が、C-ペプチドを発現する、項目52~54のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0291】
56.上記患者が、空腹時血漿C-ペプチド濃度≧0.01nmol/L、例えば≧0.04nmol/L、例えば≧0.08nmol/L、例えば≧0.12nmol/Lを示す、項目55に記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0292】
57.処置および/または予防が、未処置の患者と比較して、注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度のより低い減少率をもたらす、項目52~56のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0293】
58.注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度の上記減少率が、未処置の患者よりも少なくとも10%より低く、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%より低い、項目52~57のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0294】
59.処置および/または予防が、上記処置前の空腹時血漿C-ペプチド濃度と比較して、患者における空腹時血漿C-ペプチド濃度の増加をもたらす、項目52~58のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0295】
60.上記疾患または状態が、移植拒絶である、項目44~50のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0296】
61.上記使用が、上記患者に、少なくとも3x106個の細胞、例えば少なくとも5x106個の細胞、例えば少なくとも10x106細胞、例えば少なくとも15x106細胞、例えば少なくとも20x106個の細胞、少なくとも25x106個の細胞、例えば少なくとも約50x106個の細胞、例えば少なくとも約75x106個の細胞、例えば少なくとも約100x106個の細胞、例えば少なくとも約125x106個の細胞、例えば少なくとも約150x106個の細胞、例えば少なくとも約175x106個の細胞、例えば少なくとも約200x106個の細胞の用量を投与することを含む、項目44~60のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0297】
62.上記使用が、上記患者に、少なくとも0,1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも0.5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも10x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む、項目44~60のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0298】
63.上記使用が、上記患者に、約0.1x106個の細胞/kg体重~10x106個の細胞/kg体重、例えば0.25x106個の細胞/kg体重~5x106個の細胞/kg体重、例えば0.25x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば0.5x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば1x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば1x106個の細胞/kg体重~3x106個の細胞/kg体重、例えば2x106個の細胞/kg体重~3x106個の細胞/kg体重、または1x106個の細胞/kg体重~2x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む、項目44~62のいずれか1つに記載の使用のための単離されプールされた同種MSC集団。
【0299】
64.項目44~63のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団、および少なくとも1つの医薬的に許容される賦形剤または担体を含む、医薬組成物。
【0300】
65.約少なくとも3x106個の細胞、例えば少なくとも5x106個の細胞、例えば少なくとも10x106個の細胞、例えば少なくとも15x106個の細胞、例えば少なくとも20x106個の細胞、少なくとも25x106個の細胞、例えば約少なくとも50x106個の細胞、例えば約少なくとも75x106個の細胞、例えば約少なくとも100x106個の細胞、例えば約少なくとも125x106個の細胞、例えば約少なくとも150x106個の細胞、例えば約少なくとも175x106個の細胞、例えば約少なくとも200x106個の細胞を含む、項目64に記載の単離されプールされた同種MSC集団を含む医薬組成物。
【0301】
66.注入、例えば、静脈内注入、腹腔内注入、リンパ内注入、静脈内注入、髄腔内注入、脳内注入、動脈内注入、皮下注入、またはオンマヤリザーバーを介した注入、例えば、静脈内注入、腹腔内注入、またはリンパ内注入用に製剤化された、項目64または65に記載の単離されプールされた同種MSC集団を含む医薬組成物。
【0302】
67.炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置および/または予防のための方法であって、治療有効量の、項目44~63のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団または項目64~66のいずれか1つに記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に、投与することを含む、方法。
【0303】
68.上記MSC集団の上記投与が、注入、例えば、静脈内注入、腹腔内注入、リンパ内注入、静脈内注入、髄腔内注入、脳内注入、動脈内注入、皮下注入、またはオンマヤリザーバーを介した注入、例えば、静脈内注入、腹腔内注入、またはリンパ内注入よる、項目67に記載の処置および/または予防のための方法。
【0304】
69.上記注入が繰り返し行われる、項目67または68に記載の処置および/または予防のための方法。
【0305】
70.上記注入が1回のみ行われる、項目67または68に記載の処置および/または予防のための方法。
【0306】
71.上記投与が、患者において抗HLA抗体力価を誘発しないかまたは低い抗HLA抗体力価を誘発する、項目67~70のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0307】
72.上記炎症性疾患または状態が、自己免疫疾患からなる群から選択される、項目67~71のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0308】
73.上記自己免疫疾患が、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、糖尿病、クローン病、潰瘍性大腸炎、および関節炎からなる群から選択される、項目67~72のいずれか1つに記載の処置のための方法。
【0309】
74.上記自己免疫疾患が、1型糖尿病またはLADAである、項目73に記載の処置および/または予防のための方法。
【0310】
75.上記1型糖尿病またはLADAが、1型糖尿病またはLADAであると最近診断された、例えば上記注入を投与する前の3年以内、例えば2年以内、例えば1年以内に1型糖尿病またはLADAであると診断された、項目74に記載の処置および/または予防のための方法。
【0311】
76.上記患者が、C-ペプチドを発現する、項目74~76のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0312】
77.上記患者が、空腹時血漿C-ペプチド濃度≧0.01nmol/L、例えば、≧0.04nmol/L、例えば、≧0.08nmol/L、例えば、≧0.12nmol/Lを示す、項目76に記載の処置および/または予防のための方法。
【0313】
78.処置および/または予防が、未処置の患者と比較して、注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度のより低い減少率をもたらす、項目73~77のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0314】
79.注入を受けた患者における血漿C-ペプチド濃度の上記減少率が、未処置の患者よりも少なくとも10%より低く、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%より低い、項目73~78のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0315】
80.処置および/または予防が、上記注入前の空腹時血漿C-ペプチド濃度と比較して、患者における空腹時血漿C-ペプチド濃度の増加をもたらす、項目73~79のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0316】
81.上記疾患または状態が、移植拒絶である、項目71~76のいずれか1つに記載の処置のための方法。
【0317】
82.上記方法が、上記患者に、少なくとも3x106個の細胞、例えば少なくとも5x106個の細胞、例えば少なくとも10x106個の細胞、例えば少なくとも15x106個の細胞、例えば少なくとも20x106の細胞、少なくとも25x106個の細胞、例えば少なくとも約50x106個の細胞、例えば少なくとも約75x106個の細胞、例えば少なくとも約100x106個の細胞、例えば少なくとも約125x106個の細胞、例えば少なくとも約150x106個の細胞、例えば少なくとも約175x106個の細胞、例えば少なくとも約200x106個の細胞の用量を投与することを含む、項目67~81のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0318】
83.上記方法が、上記患者に、少なくとも0,1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも0,5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも1x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも5x106個の細胞/kg体重、例えば少なくとも10x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む、項目67~82のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0319】
84.上記方法が、上記患者に、約0.1x106個の細胞/kg体重~10x106個の細胞/kg体重、例えば0.25x106個の細胞/kg体重~5x106個の細胞/kg体重、例えば0.25x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば0.5x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば1x106個の細胞/kg体重~4x106個の細胞/kg体重、例えば1x106個の細胞/kg体重~3x106個の細胞/kg体重、例えば2x106個の細胞/kg体重~3x106個の細胞/kg体重、または1x106個の細胞/kg体重~2x106個の細胞/kg体重の用量を投与することを含む、項目67~83のいずれか1つに記載の処置および/または予防のための方法。
【0320】
85.炎症性疾患または状態、自己免疫疾患、および移植拒絶からなる群から選択される疾患または状態の処置のための薬剤の製造における、項目44~63のいずれか1つに記載の単離されプールされた同種MSC集団の使用。
【0321】
86.MSC集団の効力を評価するための方法であって、MSC集団を培養または提供する工程と、
少なくとも3つのアッセイを使用して上記MSC集団をアッセイして、少なくとも3つのアッセイ結果を得る工程であって、上記少なくとも3つのアッセイが、各個体ドナー由来のMSC集団の免疫抑制能力を測定する少なくとも1つのアッセイを含む、工程と、
各アッセイについて、アッセイ結果に基づいてスコア値を上記MSC集団に割り当てる工程であって、より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示すか、または低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す、工程と、
各アッセイに割り当てられたスコア値に基づいて、合計スコア値を上記MSC集団に割り当てる工程であって、より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より高い合計スコア値がより望ましい集団特性を示し、またはより低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合、より低い合計スコア値がより望ましい集団特性を示す、工程と、
より高いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合において、上記合計スコア値が所定の閾値を超える場合にMSC集団を効力があるとして適格とするか、またはより低いスコア値がより望ましいアッセイ結果を示す場合において、上記合計スコア値が所定の閾値を下回る場合にMSC集団を効力があるとして適格とする、工程と、を含む、方法。
【0322】
87.上記少なくとも3つのアッセイが、インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)活性を測定する1つのアッセイ、上記MSCによって分泌されたプロスタグランジンE2を測定する1つのアッセイ、および末梢血単核細胞(PBMC)の増殖に対する上記MSCの効果を測定する1つのアッセイを含む、項目86に記載の方法。
【0323】
88.上記少なくとも3つのアッセイが、項目15~32のいずれか1つに従って定義される、項目86または87に記載の方法。
【0324】
89.免疫細胞の共培養のための、項目42または43に記載の単離されプールされた同種MSC集団の使用。
【0325】
90.上記単離されプールされた同種MSC集団が、免疫細胞の共培養のためのフィーダー細胞として使用される、項目89に記載の使用。
【0326】
91.上記単離されプールされた同種MSC集団が、上記集団と共培養された免疫細胞の刺激に使用される、項目89に記載の使用。