(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】高強度繊維シートの切断方法及び切断装置
(51)【国際特許分類】
B24C 1/00 20060101AFI20240807BHJP
B24C 1/04 20060101ALI20240807BHJP
B24C 3/12 20060101ALI20240807BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20240807BHJP
B24C 5/02 20060101ALI20240807BHJP
B24C 5/04 20060101ALI20240807BHJP
B24C 11/00 20060101ALI20240807BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
B24C1/00 Z
B24C1/04 E
B24C1/04 F
B24C3/12
B24C3/32 Z
B24C5/02 A
B24C5/04 A
B24C11/00 D
B26F3/00 S
(21)【出願番号】P 2022534915
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2021015777
(87)【国際公開番号】W WO2022009500
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2020119481
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】593145733
【氏名又は名称】今村工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(72)【発明者】
【氏名】今村 耕造
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/067536(WO,A1)
【文献】特開平08-090417(JP,A)
【文献】特開2018-089748(JP,A)
【文献】特開平01-159173(JP,A)
【文献】特開2013-107202(JP,A)
【文献】国際公開第2018/062101(WO,A1)
【文献】特開2016-049619(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0143916(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24C 1/00
B24C 1/04
B24C 3/12
B24C 3/32
B24C 5/02
B24C 5/04
B24C 11/00
B26F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維の織物又は不織布からなり、シート状に形成された
FRP用の強化材である高強度繊維シートの切断方法であって、
ノズルからベンチュリ効果により混合された砥粒を含む圧縮空気を前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、網状の基台に載置された前記高強度繊維シートを前記所定形状に切断することを特徴とする高強度繊維シートの切断方法。
【請求項2】
前記基台は、開き目が6~15mm、且つ線径が1.5~2.5mmのステンレス製金網である請求項1に記載の高強度繊維シートの切断方法。
【請求項3】
前記高強度繊維は、ホウケイ酸ガラス、炭素及びホウ素のうちの1つを含み、
前記砥粒は、ガラスパウダー及びアルミナのうちの少なくとも1つを含む請求項1又は2に記載の高強度繊維シートの切断方法。
【請求項4】
前記高強度繊維シートを複数重ねて同時に切断する請求項1乃至3のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
【請求項5】
前記高強度繊維シートは炭素繊維の平織物であり、
前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである請求項1乃至4のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
【請求項6】
前記高強度繊維シートはホウケイ酸ガラス繊維の不織布又は織物であり、
前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである請求項1乃至4のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
【請求項7】
繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維の織物又は不織布からなり、シート状に形成された
FRP用の強化材である高強度繊維シートの切断装置であって、
砥粒を貯留するタンクと、
前記タンクに連なり、前記タンクから供給される砥粒と圧縮空気をベンチュリ効果により混合する混合部と、
前記混合部に連なり、砥粒を含む圧縮空気を噴射するノズルと、
前記高強度繊維シートが載置される網状の基台と、を備え、
前記ノズルから砥粒を含む圧縮空気を前記基台に載置された前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、前記高強度繊維シートを前記所定形状に切断することを特徴とする高強度繊維シートの切断装置。
【請求項8】
前記混合部は、一端側が圧縮空気を供給するエア通路に接続され且つ他端側が前記ノズルに配管接続される混合通路と、前記タンク内の下部と前記混合通路を連絡する連絡通路と、を有し、
前記混合通路における前記連絡通路の下流側には、前記タンク内の上部まで延びる加圧用管が接続されている請求項7に記載の高強度繊維シートの切断装置。
【請求項9】
前記タンクの上部には、前記タンク内に圧縮空気を供給する加圧用エア通路が接続されており、
前記加圧用エア通路には、圧縮空気の供給を停止したときに前記タンク内を大気に開放させるパージバルブが設けられている請求項7又は8に記載の高強度繊維シートの切断装置。
【請求項10】
前記混合部に供給する圧縮空気中の水分を除去するエアードライヤーを備える請求項7乃至9のいずれか一項に記載の高強度繊維シートの切断装置。
【請求項11】
前記タンクには、前記タンクに振動を付与する振動機が設けられている請求項7乃至10のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断装置。
【請求項12】
前記タンク、前記混合部及び前記ノズルを備えるカッターヘッドは、直動機構により前記基台の載置面に沿って移動可能とされており、
前記直動機構は、機構部と、前記機構部を支持するベースと、前記ベースとの間で前記機構部を覆う伸縮可能なカバーと、を備え、
前記ベース及び前記カバーで覆われた空間内に空気を供給する送風機を備える請求項7乃至11のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断装置。
【請求項13】
繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなり、シート状に形成された
FRP用の強化材である高強度繊維シートの切断装置であって、
砥粒を貯留するタンクと、
前記タンクに連なり、前記タンクから供給される砥粒と圧縮空気を混合する混合部と、
前記混合部に連なり、砥粒を含む圧縮空気を噴射するノズルと、
前記高強度繊維シートが載置される網状の基台と、を備え、
前記ノズルから砥粒を含む圧縮空気を前記基台に載置された前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、前記高強度繊維シートを前記所定形状に切断し、
前記タンク、前記混合部及び前記ノズルを備えるカッターヘッドは、直動機構により前記基台の載置面に沿って移動可能とされており、
前記直動機構は、機構部と、前記機構部を支持するベースと、前記ベースとの間で前記機構部を覆う伸縮可能なカバーと、を備え、
前記ベース及び前記カバーで覆われた空間内に空気を供給する送風機を備えることを特徴とする高強度繊維シートの切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度繊維シートの切断方法及び切断装置に関する。詳しくは、繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなる高強度繊維シートを噴射した砥粒により切断する高強度繊維シートの切断方法及び切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化プラスチック(FRP)は、強化材としてガラス繊維、炭素繊維等の高強度且つ高弾性の材料にプラスチックを含浸させることにより形成されており、高強度軽量であることから、航空機部品、車両部品、ボート、各種タンク、容器、防弾ベストなどの素材として広く利用されている。しかし、FRPは難削材であるため加工が容易でなく、その切断や穴あけには、特殊な機械加工、レーザ加工、ウォータージェット加工、及びブラスト加工等が用いられているが、いずれにしても加工コストが高いという問題がある(例えば、非特許文献1を参照)。
FRPは、通常、高強度な繊維を予め織ったりするなどしてシート状にした強化材を樹脂に含浸等させることにより形成される。必要な強度を得るために、数百枚以上の繊維シートが積層される場合もある。上述のようにFRPの切断等は容易でなく、加工コストも高いため、特に少数のFRPを形成するために、強化材となる繊維シートを目的の形状に加工した後、不飽和ポリエステル樹脂・エポキシ樹脂等に含浸させることにより所定の形状のFRPを形成する方法も用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】深川仁、廣垣俊樹、加藤隆雄「ブラストによるCFRPの穴あけ加工技術の開発」、砥粒加工学会誌Vol.56 No.4 2012 APR、262-267
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
FRPに用いられるガラス繊維、炭素繊維等の高強度繊維シートは、高強度且つ高弾性の材料を用いているため、目的の形状に切断することが容易でない。その切断方法として、トムソン型を用いた打抜き加工、レーザ加工、ウォータージェット加工等が挙げられる。しかし、これらの加工方法では設備が大掛りとなり、型や加工装置に要するコストが高くなる。また、レーザ加工は切断面が熱による影響を受ける点で好ましくない。更に、ウォータージェット加工は、加工に使う水が残存して、樹脂を硬化させるときに影響を及ぼす点で好ましくない。
また、超音波カッターを用いた切断方法もあるが、超音波カッターをシート面に平行に移動させる必要があるため自由度が低く、加工に要する時間も長いという問題があった。
このため、従来、特に少量のFRP用の高強度繊維シートの切断には、カッターナイフや鋏等の一般的な刃物が用いられる場合が多かった。しかし、例えば裁断刃をシート面と法線方向に上下させて高強度繊維シート1の切断を行うと(
図9を参照)、端部11に捻じれや歪が生じて繊維にほつれ18が生じる等の問題があった(
図10及び
図11を参照)。
【0005】
ここで、従来の小形ブラスト装置として、砥粒を貯留するタンクと、タンクに連なり、タンクから供給される砥粒と圧縮空気を混合する混合部と、混合部に連なり、砥粒を含む圧縮空気を噴射するノズルと、を備えるものが一般に知られている。この小形ブラスト装置は、比較的小さな模型バリ取り、ネームプレート等をブラスト処理するものであり、これを単純に利用しても、比較的大きな高強度繊維シートを効果的に切断することができない。
特に、小形ブラスト装置では、混合部に対してタンク内の砥粒を迅速に供給すること、及びその供給を迅速に停止することが困難となる。さらに、比較的短時間での使用を前提としているため、長時間使用時においてタンク内での砥粒の目詰まりの発生が懸念される。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡易な設備を用いて加工コストが安価であり、切断した端部のほつれがなく、加工精度に優れた高強度繊維シートの切断方法及び切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなり、シート状に形成された高強度繊維シートの切断方法であって、
ノズルから砥粒を含む圧縮空気を前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、網状の基台に載置された前記高強度繊維シートを所定の形状に切断することを特徴とする高強度繊維シートの切断方法。
2.前記基台は、開き目が6~15mm、且つ線径が1.5~2.5mmのステンレス製金網である前記1.に記載の高強度繊維シートの切断方法。
3.前記高強度繊維は、ホウケイ酸ガラス、炭素及びホウ素のうちの1つを含み、
前記砥粒は、ガラスパウダー及びアルミナのうちの少なくとも1つを含む前記1.又は2.に記載の高強度繊維シートの切断方法。
4.前記高強度繊維シートは、前記高強度繊維の織物又は不織布である前記1.乃至3.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
5.前記高強度繊維シートを複数重ねて同時に切断する前記1.乃至4.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
6.前記高強度繊維シートは炭素繊維の平織物であり、
前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである前記1.乃至5.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
7.前記高強度繊維シートはホウケイ酸ガラス繊維の不織布又は織物であり、
前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである前記1.乃至5.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断方法。
8.繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなり、シート状に形成された高強度繊維シートの切断装置であって、
砥粒を貯留するタンクと、
前記タンクに連なり、前記タンクから供給される砥粒と圧縮空気を混合する混合部と、
前記混合部に連なり、砥粒を含む圧縮空気を噴射するノズルと、
前記高強度繊維シートが載置される網状の基台と、を備え、
前記ノズルから砥粒を含む圧縮空気を前記基台に載置された前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、前記高強度繊維シートを前記所定形状に切断することを特徴とする高強度繊維シートの切断装置。
9.前記タンクの上部には、前記タンク内に圧縮空気を供給する加圧用エア通路が接続されており、前記加圧用エア通路には、圧縮空気の供給を停止したときに前記タンク内を大気に開放させるパージバルブが設けられている上記8.に記載の高強度繊維シートの切断装置。
10.前記混合部に供給する圧縮空気中の水分を除去するエアードライヤーを備える上記8.又は9.に記載の高強度繊維シートの切断装置。
11.前記タンクには、前記タンクに振動を付与する振動機が設けられている上記8.乃至10.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断装置。
12.前記タンク、前記混合部及び前記ノズルを備えるカッターヘッドは、直動機構により前記基台の載置面に沿って移動可能とされており、前記直動機構は、機構部と、前記機構部を支持するベースと、前記ベースとの間で前記機構部を覆う伸縮可能なカバーと、を備え、前記ベース及び前記カバーで覆われた空間内に空気を供給する送風機を備える上記8.乃至11.のいずれかに記載の高強度繊維シートの切断装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなり、シート状に形成された高強度繊維シートの切断方法であって、ノズルから砥粒を含む圧縮空気を前記高強度繊維シートに向けて噴射しながら、輪郭をなぞるように前記ノズルを移動させることにより、網状の基台に載置された前記高強度繊維シートを所定の形状に切断するため、高強度繊維シートの各繊維を、圧縮空気中の砥粒の吹きつけによって瞬時に切断することができ、大掛りな加工設備が不要であり、低コストで、自在な形状にFRP用強化材である高強度繊維シートを形成することができる。また、切断した端部のほつれがない。更に、小型のノズルを用いて任意の方向に向けることができるため、加工の自由度を高めることができ、NC加工装置やロボットへの組み込みも容易である。また、網状の基台に載置することにより、噴射した圧縮空気を基台の下方に逃がすことで、噴射された圧縮空気中の砥粒が強化材繊維を切断した後、後続の砥粒の流れを妨げて切断が停滞しないようにすることができる。また、前記圧縮空気の風圧で切断中の高強度繊維シートが動いて誤った部位を切断することを防止することができる。
前記基台は、幅が1300~2000mm、開き目が6~15mm、且つ線径が1.5~2.5mmである場合は、高強度繊維シートを支持しつつ、噴射した圧縮空気を容易に逃がすことができる。また、砥粒により容易に基台が破損しないため、基台ががたついて誤った部位を切断することを防止することができる。
【0009】
前記高強度繊維は、ホウケイ酸ガラス、炭素、ホウ素及び芳香族ポリアミド系繊維(ポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維)のうちの1つを含み、前記砥粒は、ガラスパウダー及びアルミナのうちの少なくとも1つを含む場合には、高強度繊維の硬さや密度に応じた砥粒を選択して切断を行うことができる。FRPに通常用いられる強化材としてガラス、炭素、ホウ素等の高強度繊維シートを切断し、所望の形状のFRP用強化材を形成することが可能になる。
また、前記高強度繊維シートは、前記高強度繊維の織物又は不織布である場合には、繊維の組成及び組織に関わらず切断を行うことができる。
また、前記高強度繊維シートを複数重ねて同時に切断する場合には、砥粒による切断は高強度繊維シートに面方向の力が加わらないため位置ずれを生じることなく、切断の効率を高めることができる。
【0010】
また、複数の高強度繊維が積層して形成されている場合であっても、平滑な基台上に載置した状態で、層間のずれを生じることなく切断することができる。
また、砥粒によって切断された端部には、鋏や刃物を用いた従来の切断方法において端部に生じた繊維のほつれ等は生じず、繊維の方向性が安定しているため、強度を損なうことなく高品質な高強度繊維シートを形成することができる。これは、従来の切断方法においては、切断に伴う移動に伴って生じるモーメントが繊維に加わり、そのモーメントによりほつれが進行する一方、本発明は前記移動によるモーメントが無く、ほつれが生じないためである。
更に、鋭利な刃物等を使用しないで容易に切断を行うことができるため、作業者の負担が軽減されるばかりでなく、作業者の安全性を高めることができる。
【0011】
前記高強度繊維シートは炭素繊維の平織物であり、前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである場合には、炭素繊維を用いたFRPを形成するための高強度繊維シートを、効率よく且つ高品質に切断することができる。
また、前記高強度繊維シートはホウケイ酸ガラス繊維の不織布又は織物であり、前記ノズルの孔径は0.3~1.5mmであり、前記砥粒の径は30~300μmであり、前記圧縮空気の噴射圧力は0.3~1.5MPaである場合には、ガラス繊維を用いたFRPを形成するための高強度繊維シートを、効率よく且つ高品質に切断することができる。更に、切断中に高強度繊維シートに掛かる力が少ないため、高強度繊維シートを把持固定することなく載置した状態であっても、切断中に高強度繊維シートが動くことがない。このため、様々な形状の高強度繊維シートに対応した把持固定するための治具が不要であり、且つ把持するための工程を不要とするため、より短時間で切断を行うことができる。
【0012】
本発明によれば、繊維強化プラスチック形成用の高強度繊維からなり、シート状に形成された高強度繊維シートの切断装置であって、砥粒を貯留するタンクと、タンクに連なり、タンクから供給される砥粒と圧縮空気を混合する混合部と、混合部に連なり、砥粒を含む圧縮空気を噴射するノズルと、高強度繊維シートが載置される網状の基台と、を備える。そして、ノズルから砥粒を含む圧縮空気を基台に載置された高強度繊維シートに向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるようにノズルを移動させることにより、高強度繊維シートを所定形状に切断する。
これにより、高強度繊維シートの各繊維を、圧縮空気中の砥粒の吹きつけによって瞬時に切断することができ、大掛りな加工設備が不要であり、低コストで、自在な形状にFRP用強化材である高強度繊維シートを形成することができる。また、切断した端部のほつれがない。更に、小型のノズルを用いて任意の方向に向けることができるため、加工の自由度を高めることができ、NC加工装置やロボットへの組み込みも容易である。また、網状の基台に載置することにより、噴射した圧縮空気を基台の下方に逃がすことで、噴射された圧縮空気中の砥粒が強化材繊維を切断した後、後続の砥粒の流れを妨げて切断が停滞しないようにすることができる。また、圧縮空気の風圧で切断中の高強度繊維シートが動いて誤った部位を切断することを防止することができる。
【0013】
また、前記タンクの上部に、加圧用エア通路が接続されており、前記加圧用エア通路に、パージバルブが設けられている場合は、高強度繊維シートの切断開始時に、加圧用エア通路からの圧縮空気の供給によりタンク内の上部空間が加圧されることで、混合部に対してタンクから砥粒を迅速に供給できる。また、高強度繊維シートの切断停止時に、パージバルブによりタンク内の上部空間を大気に開放させることで、混合部に対するタンクからの砥粒の供給を迅速に停止できる。その結果、生産効率を向上させることができる。
【0014】
また、前記混合部に供給する圧縮空気中の水分を除去するエアードライヤーを備える場合は、長時間稼働時においてもタンク内での砥粒の目詰まりを抑制することができる。
【0015】
また、前記タンクに、前記タンクに振動を付与する振動機が設けられている場合は、長時間稼働時においてもタンク内での砥粒の目詰まりを抑制することができる。
【0016】
さらに、カッターヘッドが、直動機構により前記基台の載置面に沿って移動可能とされており、前記直動機構が、機構部と、ベースと、カバーと、を備え、前記ベース及び前記カバーで覆われた空間内に空気を供給する送風機を備える場合は、送風機による空気の供給によりベース及びカバーで覆われた空間内が加圧されることで直動機構の機構部の防塵性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態に係る切断方法により高強度繊維シートを切断する例を示す模式図である。
【
図3】実施形態に係る切断方法により曲面を備えた高強度繊維シートを切断する例を示す模式図である。
【
図4】平織りロービングクロスの高強度繊維シートの例を示す模式図である。
【
図5】金網が枠台に固定されている基台の例を示す平面図である。
【
図6】金網が枠台に固定されている基台の例を示す側面図である。
【
図7】チョップドストランドマットの高強度繊維シートを砥粒により切断した例を示す画像である。
【
図8】ロービングクロスの高強度繊維シートを砥粒により切断した例を示す画像である。
【
図9】
図4に示した高強度繊維シートを従来の方法で切断する例を示す模式図である。
【
図10】チョップドストランドマットの高強度繊維シートを従来の方法で切断した例を示す画像である。
【
図11】
図4に示した高強度繊維シートを従来の方法で切断した例を示す画像である。
【
図12】実施形態に係る高強度繊維シートの切断装置の平面図である。
【
図16】上記切断装置を構成するタンクを説明するための説明図である。
【
図17】上記切断装置を構成する直動機構を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ここで示される事項は例示的なもの及び本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0019】
<高強度繊維シートの切断方法>
本実施形態に係る高強度繊維シートの切断方法は、繊維強化プラスチック(FRP)形成用の高強度繊維(2)からなり、シート状に形成された高強度繊維シート(1)の切断方法であって、ノズル(5)から砥粒を含む圧縮空気(6)を高強度繊維シート(1)に向けて噴射しながら、輪郭をなぞるようにノズル(5)を移動させることにより、基台(4)に載置された高強度繊維シート(1)を所定の形状に切断することを特徴とする(例えば
図1及び
図2を参照)。ここで、切断には穴あけ加工を含む。
【0020】
一般にFRPは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を、強化材として高強度繊維に含浸させて形成されている。本高強度繊維シートの切断方法は、FRPの強化材として、高強度繊維を用いてシート状に形成された高強度繊維シート(1)を対象としている。高強度繊維(2)の素材は特に限定されず、例えば、ホウケイ酸ガラス、ホウ素(ボロン)、炭化ケイ素、アルミナ、炭素及びアラミド等を用いた繊維が挙げられる。
【0021】
高強度繊維シート(1)は、高強度繊維(2)を用いてシート状に形成されており、FRP用の強化材となる。具体的には、ホウケイ酸ガラス繊維、炭素繊維、ボロン繊維等を用いてシート状に加工された高強度繊維シートを挙げることができる。高強度繊維シート(1)の形状やサイズ、厚さ等は特に問わず、目的とするFRPに応じて適宜選択されればよい。この例として厚さが0.1~1mmの高強度繊維シートを挙げることができる。
高強度繊維シート(1)は、曲面を含む形状に加工されていてもよい。また、高強度繊維シート(1)は、複数の高強度繊維の層を積層して形成することができる。
また、高強度繊維シート(1)の組織や構造は特に問わず、高強度繊維又はそれを撚り合わせた糸の織物であってもよいし、それらを織ったり編んだりせずに接着又は絡み合わせた不織布であってもよい。具体的には、例えば、ロービングクロス等の織物、チョップドストランドマット等の不織布を挙げることができる。また、織物の織り方は特に問わず、例えば、複数本を並べた経糸、及び複数本を並べた緯糸が平織りによって織られた織物(
図4参照)を挙げることができる。
【0022】
高強度繊維シート(1)は、下方が開放されている網状の基台(4)に載置した状態で切断される。前記基台(4)は、網状として多数の空隙を設けることにより圧縮空気(6)を基台表面から排出することができる。前記基台(4)の材質及び目付は適宜選択することができ、例えば、ステンレス製金網とすることができる。ステンレス製とすることで硬質とすることができ、高強度繊維シート(1)を載置したときに沈みにくく、切断精度を維持することができる。また、金網の例として形状が菱目の網であり、開き目が6~15mm、且つ線径が1.5~2.5mmであることを挙げることができる。このような大きさの金網(45)とすることで、切り代が1~3mmとなる圧縮空気の噴射において、噴射した圧縮空気が金網の線に吹き掛かっても反対側に逃がすことができ、噴射した圧縮空気が線により跳ね返って高強度繊維シート(1)に吹きかかり、高強度繊維シート(1)が動いて切断位置がずれることを防止することができる。尚、金網の形状は菱目に限られず角目であってもよい。
更に、金網(45)は枠台(42)に固定される。枠台(42)は、縦横が1000~2500mm(例えば縦横が1200mm、2000mm)の長方形状であって、枠内に幅30mm、高さ60mmの金属製支持材(44)を縦横に配置した構成であり、金網を枠及び支持材にネジ止めしている(例えば、
図5及び
図6を参照。)。また、金網(45)の下方に吸塵機(47)を設けることができる。吸塵機(47)は上方に向けて開放されているホッパー(48)を具備し、切断に用いた圧縮空気中の砥粒を吸引及び回収することで、砥粒が作業中に散乱することを防止することができる。また、高強度繊維シート(1)に吹き付けられた後の砥粒を吸引により下方に移動させることができ、砥粒が高強度繊維シート付近に滞留することにより後続する砥粒の吹きつけを阻害したり、高強度繊維シートの視認性が低下して作業性が低下したりすることを防止することができる。
【0023】
前記砥粒は、切断対象とする高強度繊維(2)に応じて選択される。砥粒の材料は特に問わないが、硬度が切断対象とする高強度繊維(2)の硬度以上である材料を好例とすることができる。砥粒として、例えば、ガラスパウダー(例えばソーダ石灰ガラスとすることができる。)、アルミナ等が挙げられる。また、砥粒の粒径も限定されず、例えば30~300μm程度とすることができる。
【0024】
砥粒を含む圧縮空気(6)を高強度繊維シート(1)に向けて噴射するためのノズル(5)の材料、形状等は特に限定されず、切り代が1~3mmとなる範囲が好ましい。このような切り代となる砥粒及び噴射圧力に応じて、ノズルの孔径を適宜選択すればよい。例えば、ノズル(5)の孔径は、0.3~1.5mm程度とすることが好ましい。ノズル(5)は、NC機器やロボットのアーム等に取り付けることも容易であり、ノズル(5)を精度よく移動させることが可能である。さらに、高強度繊維シート(1)上を自走可能な走行体にノズル5を設けるようにしてもよい。また、作業者がノズル(5)を手持ちすることによって、簡易に加工することも可能である。
圧縮空気(6)の噴射圧力は、砥粒や高強度繊維シート(1)の硬さ、厚さ等に応じて設定されればよい。例えば、噴射圧力を0.3~1.5MPa程度とすることができる。ただし、作業者がノズル(5)を手持ちする場合には、噴射圧力は0.3~0.8MPa程度とすることが好ましい。0.8MPa程度を越えると、噴出に伴う反発力によりノズル(5)の位置・方向がずれる恐れがある。
【0025】
図1及び
図2は、本切断方法により高強度繊維シート(1)を切断する例を示している。本例においては、高強度繊維2の層が複数積層された高強度繊維シート1が基台4上に載置されており、ノズル5から砥粒を含む圧縮空気6が高強度繊維シート1に向けて噴射される。
そして、高強度繊維シート1を切断する形状の輪郭をなぞるように、高強度繊維シート1面から一定の速度でノズル5を移動させることによって所定の形状に切断することができる。噴射された圧縮空気6は、高強度繊維シート1を構成する各高強度繊維2を切断し、開口部46から放出される。
切断のためにノズルを移動させるに限られず、ノズルを一定の位置に保持し、高強度繊維シート1を移動させるようにしてもよいし、ノズル5及び高強度繊維シート1を同時に移動させるようにしてもよい。尚、ノズル5及び高強度繊維シート1の移動方向は特に問わず、任意の方向とすることができる。
図示されているように、ノズル5は、高強度繊維シート1の表面の法線方向から圧縮空気6を噴射することが好ましい。ノズル5と高強度繊維シート1との距離やノズル5の相対的な移動速度は、対象とする高強度繊維2の材料、密度等、高強度繊維シート1の構造、層数、厚さ等、砥粒の噴射圧力等に応じて、適宜設定することができる。
また、ノズル(5)から高強度繊維シート(1)表面までの距離は、例えば5mm~15mmとすることができる。5mm未満の場合はノズル(5)に高強度繊維シート(1)から跳ね返った砥粒等が接触しやすくなりノズル(5)が劣化しやすくなるためである。また、15mmを越える場合は、切り代が拡がったりして適切な切断が難しくなるためである。
ノズル(5)の移動速度は特に問わないが例えば60mm/秒以下(好ましくは50mm/秒以下)とすることができる。60mm/秒を越える場合は、切断残りが生じる場合があるため好ましくない。
【0026】
更に、
図3に示すように、高強度繊維シート1の全体又は一部が曲面で構成されている場合、高強度繊維シート1の切断位置に対して法線方向となる向きとなるようにノズル5を維持することが好ましい。ノズル5からの噴射の向きは、必ずしも高強度繊維シート1に対して法線方向でなくてもよい。ノズル5が高強度繊維シート1の法線方向でなくても、ノズル5の方向、移動速度、噴射圧力等を適宜設定することによって切断が可能である。
【0027】
本繊維強化プラスチック用高強度繊維シートの切断方法により、高強度繊維シートを切断する具体例を説明する。
単位重量が450g/m
2のチョップドストランドマットであるガラスマット(製品名 EMC450)からなる高強度繊維2を4枚重ねた高強度繊維シート1(厚さ2.8mm)を基台4に固定されることなく設置した。基台4は、
図5及び
図6に示すように、縦横が1200mm、2000mmのアルミ合金製の枠台42と、枠台42にネジ止めされている開き目が10mm、線径が2mmであり菱目のステンレス製金網45とを備える。また、金網45の下方は枠台42及び支持材44に支えられている部分を除いて線間の開口部46が開放されている。更に、基台4には、縦横方向に設けられているレールによって縦横方向に移動するノズル口径が1.2mmのノズル5が設けられている。このノズル5は、シーケンサ等により任意の方向に移動させたり、ノズルの開口を制御したりすることができる。また、金網45の下方には吸塵機47を備える。吸塵機47は上方に向けて開放されているホッパー48を具備する。
【0028】
そして、
図1及び
図2に示すようにノズル5から、平均粒径50μmのガラスビーズを砥粒として含めた圧縮空気を噴射圧力0.6MPaで噴出し、45mm/秒の移動速度で高強度繊維シート1の切断を行った。また、砥粒は、吸塵機47により吸引及び回収された。切断された高強度繊維シート1は、
図7に示すように端部11のほつれが無く切断することができた。
【0029】
更に、高強度繊維シート1として単位重量が570g/m
2のロービングクロス(製品名 WR570)を用いた場合であっても
図8に示すように切断した端部11のほつれが無く切断することができた。
【0030】
一方、
図9に示すように市販のカッターナイフである切断刃8を用いて高強度繊維シート1の切断を行ったところ、
図10及び
図11に示すように切断した端部11におおきなほつれ18が生じて、他の部位より端部11の厚みが増した。
【0031】
<高強度繊維シートの切断装置>
本実施形態に係る高強度繊維シートの切断装置は、例えば、
図12~
図14に示すように、繊維強化プラスチック(FRP)形成用の高強度繊維(2)からなり、シート状に形成された高強度繊維シート(1)の切断装置(10)であって、砥粒(7)を貯留するタンク(12)と、タンク(12)に連なり、タンク(12)から供給される砥粒(7)と圧縮空気(6)を混合する混合部(13)と、混合部(13)に連なり、砥粒(7)を含む圧縮空気(6)を噴射するノズル(5)と、高強度繊維シート(1)が載置される網状の基台(4)と、を備える。そして、例えば、
図1及び
図2に示すように、ノズル(5)から砥粒(7)を含む圧縮空気(6)を基台(4)に載置された高強度繊維シート(1)に向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるようにノズル(5)を移動させることにより、高強度繊維シート(1)を所定形状に切断する。ここで、切断には穴あけ加工を含む。
【0032】
本切断装置(10)は、例えば、上記の実施形態に係る高強度繊維シートの切断方法に好適に用いられる。
なお、本切断装置(10)においては、上記の切断方法で説明した各構成(例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、高強度繊維(2)、高強度繊維シート(1)、砥粒(7)、圧縮空気(6)等)を適用することができる。
【0033】
タンク(12)の形状、大きさ、材質等は特に問わない。タンク(12)の上部には、例えば、
図15及び
図16に示すように、タンク(12)内を加圧するために圧縮空気(6)を供給する加圧用エア通路(21)が接続されており、加圧用エア通路(21)には、圧縮空気(6)の供給を停止したときにタンク(12)内を大気に開放させるパージバルブ(22)が設けられていることができる。
この場合、例えば、混合部(13)には圧縮空気(6)を供給するエア通路(23)が接続されており、エア通路(23)には該通路を開閉する開閉バルブ(24)が設けられており、加圧用エア通路(21)は、エア通路(23)の開閉バルブ(24)の下流側から分岐しており、高強度繊維シート(1)の切断時にエア通路(23)を開放し且つタンク(12)内を大気に対して閉鎖するとともに、高強度繊維シート(1)の切断停止時にエア通路(23)を閉鎖し且つタンク(12)内を大気に対して開放するように、開閉バルブ(24)及びパージバルブ(22)を制御する制御部(9)を備えることができる。
【0034】
タンク(12)には、例えば、該タンク(12)に振動を付与する振動機(29)が設けられていることができる。振動機(29)としては、例えば、リニア式、ロータリー式等が挙げられる。これらのうち、タンクの振動性等の観点から、リニア式振動機であることが好ましい。さらに、振動機(29)は、例えば、高強度繊維シート(1)の切断時に常時作動されてもよいし、間欠的に作動されてもよい。
【0035】
混合部(13)の混合形態、配置場所等は特に問わない。混合部(13)には、例えば、
図16に示すように、一端側が圧縮空気(6)を供給するエア通路(23)に接続され且つ他端側がノズル(5)に配管接続される混合通路(25)が設けられているとともに、タンク(12)内の下部と混合通路(25)を連絡する連絡通路(26)が設けられていることができる。さらに、混合通路(25)には、例えば、タンク(12)内の上部まで延びる加圧用管(27)が接続されていることができる。
混合部(13)は、例えば、タンク(12)の底部に配管接続されてもよいが、混合性及び小型性等の観点から、タンク12の底部に一体的に設けられることが好ましい。
【0036】
ノズル(5)の構造、大きさ等は特に問わない。ノズル(5)としては、例えば、上記の実施形態に係る高強度繊維シートの切断方法で説明したノズル(5)の構成を適用できる。
【0037】
基台(4)の構造、大きさ等は特に問わない。基台(4)としては、例えば、上記の実施形態に係る高強度繊維シートの切断方法で説明した基台(4)の構成を適用できる。
【0038】
本切断装置(10)としては、例えば、
図13及び
図16に示すように、混合部(13)に供給する圧縮空気(6)中の水分を除去するエアードライヤー(32)を備える形態が挙げられる。エアードライヤー(32)としては、例えば、吸着式、メンブレン式、冷凍式等が挙げられる。
【0039】
本切断装置(10)としては、例えば、
図17に示すように、タンク(12)、混合部(13)及びノズル(5)を備えるカッターヘッド(15)は、直動機構(51、52)により基台(4)の載置面に沿って移動可能とされており、直動機構(51、52)は、機構部(54)と、機構部(54)を支持するベース(56)と、ベース(56)との間で機構部(54)を覆う伸縮可能なカバー(59)と、を備え、ベース(56)及びカバー(59)で覆われた空間内に空気を供給する送風機(61)を備える形態が挙げられる。直動機構(51、52)の機構部(54)としては、例えば、ボールネジ機構、ラックピニオン機構、ベルト機構、シリンダ機構等が挙げられる。
【0040】
以下、本高強度繊維シートの切断装置10をより具体的に説明する。
本切断装置10は、
図12~
図14に示すように、砥粒7を貯留するタンク12と、タンク12に連なり、タンク12から供給される砥粒7と圧縮空気6を混合する混合部13と、混合部13に連なり、砥粒7を含む圧縮空気6を噴射するノズル5と、高強度繊維シート1が載置される網状の基台4と、を備えている。これらタンク12、混合部13及びノズル4を備えてカッターヘッド15が構成されている。このカッターヘッド15は、タンク12及び混合部13を覆うカバー16を備えている(
図15参照)。
【0041】
タンク12は、
図16に示すように、上方を開口した容器状の本体12aと、本体12aの開口を閉塞するように本体12aに着脱可能に取り付けられる蓋体12bと、を備えている。この本体12aは、内部を視認可能なように透明又は半透明の材料(具体的に樹脂)により形成されている。また、タンク12の上部(具体的に蓋体12b)には、タンク12内に圧縮空気6を供給する加圧用エア通路21が接続されている。この加圧用エア通路21には、圧縮空気6の供給を停止したときにタンク12内を大気に開放させるパージバルブ22が設けられている。
【0042】
混合部13には、一端側が圧縮空気6を供給するエア通路23に接続され且つ他端側がノズル5に配管接続される混合通路25が設けられているとともに、タンク12内の下部と混合通路25を連絡する連絡通路26が設けられている。この混合通路25において連絡通路26の接続部(又はその近傍)には縮径部25aが設けられている。これにより、ベンチュリ効果によってタンク12内の砥粒7と混合通路25を流れる圧縮空気6が効果的に混合される。さらに、混合通路25には、連絡通路26との接続部の下流側に、タンク12内の上部まで延びる加圧用管27が接続されている。この加圧用管27は、エア通路23から混合部13への圧縮空気6の供給時にタンク12内の上部に圧縮空気を供給してタンク12内の上部を加圧する機能を発揮する。さらに、タンク12には、該タンク12に振動を付与するリニア式振動機29が設けられている(
図15参照)。
【0043】
エア通路23には、該通路を開閉する開閉バルブ24が設けられている。上記の加圧用通路21は、エア通路23の開閉バルブ24の下流側から分岐している。また、エア通路23の開閉バルブ24の上流側には、周知のエアーブースター31が設けられている。また、エア通路23のエアーブースター31の上流側には、吸着式のエアードライヤー32が設けられている。このエアードライヤー32は複数備えられ、所定順で各エアードライヤー32に圧縮空気が送られる。さらに、エア通路23の上流端側は、コンプレッサ(即ち工場エア)33に接続されている。
【0044】
ノズル5は、砥粒7を含む圧縮空気6が基台4上の高強度繊維シート1に向けて噴射されるようにカッターヘッド15に設けられている(
図13参照)。このノズル5の孔径は0.3~1.5mmとされている。さらに、ノズル5の先端と高強度繊維シート1の表面との間の距離は5mm~15mmとされている。
【0045】
基台4は、網状として多数の空隙を設けることにより圧縮空気6を基台4表面から排出することができる(
図1、
図2及び
図5参照)。この基台4は、ステンレス製の金網45と、金網45が取り付けられる枠台42と、を備えている。この金網45は、開き目が6~15mm、且つ線径が1.5~2.5mmとされている。また、枠台42には、金網45を支持する金属製の支持材44が配置されている。また、金網45の下方には、砥粒7を吸引回収するための吸塵機47が設けられている。この吸塵機47は、金網45に向かって開口するホッパー48を備えている。
【0046】
カッターヘッド15は、
図17に示すように、互いに直交して配置される第1直動機構51及び第2直動機構52により基台4の載置面に沿って水平方向に移動可能とされている。これら各直動機構51、52は、モータ55により駆動される機構部(具体的にボールネジ機構)54と、機構部54を支持するベース56と、ベース56との間で機構部54を覆う伸縮可能なカバー(具体的に蛇腹カバー)59と、を備えている。このベース55には、機構部54によりスライドされるスライダ57を案内するレール58が設けられている。また、第1直動機構51のスライダ57にはカッターヘッド15が取り付けられている。また、第2直動機構52のスライダ57には、第1直動機構51のベース56の一端側が取り付けられている。さらに、カバー59は、スライダ57を挟んでスライド方向の両側にそれぞれ備えられている。
【0047】
本切断装置10は、ベース56及びカバー59で覆われた空間内に空気を供給する送風機61を備えている(
図14参照)。この送風機61は、ガイド機構53を構成するベース53aと伸縮可能なカバー(具体的に蛇腹カバー)53bとで覆われた空間内にも空気を供給する。さらに、ガイド機構53を構成するスライダ53cには、第1直動機構51のベース56の他端側が取り付けられている。
【0048】
本切断装置10は、図示しないCPU、メモリ(例えば、ROM、RAM等)、入出力回路等を有する制御部9を備えている。この制御部9は、上記の開閉バルブ24、パージバルブ22、各直動機構51、52のモータ54、振動機29、吸塵機47及び送風機61等に電気的に接続されており、各機器の駆動を制御する。
【0049】
次に、上記構成の本切断装置10の作用効果について説明する。
本切断装置10における高強度繊維シート1の切断開始時には、開閉バルブ24及びパージバルブ22の開閉制御によって、エア通路23が開放され且つタンク12内が大気に対して閉鎖される。すると、
図16中に実線矢印で示すように、加圧用エア通路21及び加圧用管27からの圧縮空気6の供給によりタンク12内の上部空間が加圧される。この状態で、混合部13においてタンク12内から供給される砥粒7とエア通路23から供給される圧縮空気6とが混合されてノズル5に送られるとともに、第1及び第2直動機構51、55の駆動制御によって、カッターヘッド15が基台4の載置面に沿って水平方向に移動される。
これにより、ノズル4から砥粒7を含む圧縮空気6を基台4に載置された高強度繊維シート1に向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるようにノズル5が移動され、高強度繊維シート1が所定形状に切断される。
なお、高強度繊維シート1の切断中には、吸塵機47、送風機61及び振動機29等が作動される。
【0050】
一方、本切断装置10における高強度繊維シート1の切断停止時には、開閉バルブ24及びパージバルブ22の開閉制御によって、エア通路23が閉鎖され且つタンク12内が大気に対して開放される。すると、
図16中に破線矢印で示すように、タンク12の上部空間内の空気が排気され、ノズル5への砥粒7を含む圧縮空気6の供給が停止される。
【0051】
以上より、本高強度繊維シートの切断装置10によると、砥粒7を貯留するタンク12と、タンク12に連なり、タンク12から供給される砥粒7と圧縮空気6を混合する混合部13と、混合部13に連なり、砥粒7を含む圧縮空気6を噴射するノズル5と、高強度繊維シート1が載置される網状の基台4と、を備える。そして、ノズル5から砥粒7を含む圧縮空気6を基台4に載置された高強度繊維シート1に向けて噴射しながら、作製するシートの所定形状の輪郭をなぞるようにノズル5を移動させることにより、高強度繊維シート1を所定形状に切断する。
これにより、高強度繊維シート1の各繊維を、圧縮空気6中の砥粒7の吹きつけによって瞬時に切断することができ、大掛りな加工設備が不要であり、低コストで、自在な形状にFRP用強化材である高強度繊維シート1を形成することができる。また、切断した端部のほつれがない。更に、小型のノズル5を用いて任意の方向に向けることができるため、加工の自由度を高めることができ、NC加工装置やロボットへの組み込みも容易である。また、網状の基台4に載置することにより、噴射した圧縮空気6を基台4の下方に逃がすことで、噴射された圧縮空気6中の砥粒7が強化材繊維を切断した後、後続の砥粒7の流れを妨げて切断が停滞しないようにすることができる。また、圧縮空気6の風圧で切断中の高強度繊維シート1が動いて誤った部位を切断することを防止することができる。
【0052】
また、本切断装置10では、タンク12の上部には、加圧用エア通路21が接続されており、加圧用エア通路21には、パージバルブ22が設けられている。これにより、高強度繊維シート1の切断開始時に、加圧用エア通路21からの圧縮空気の供給によりタンク12内の上部空間が加圧されることで、混合部13に対してタンク12から砥粒7を迅速に供給できる。また、高強度繊維シート1の切断停止時に、パージバルブ22によりタンク12内の上部空間を大気に開放させることで、混合部13に対するタンク12からの砥粒7の供給を迅速に停止できる。その結果、生産効率を向上させることができる。
【0053】
また、本切断装置10では、混合部13に供給する圧縮空気6中の水分を除去するエアードライヤー32を備える。これにより、長時間稼働時においてもタンク12内での砥粒7の目詰まりを抑制することができる。
また、本切断装置10では、タンク12には、該タンク12に振動を付与する振動機29が設けられている。これにより、長時間稼働時においてもタンク12内での砥粒7の目詰まりを抑制することができる。
【0054】
さらに、本切断装置10では、カッターヘッド15は、直動機構51、52により基台4の載置面に沿って移動可能とされており、直動機構51、52は、機構部54と、ベース56と、カバー59と、を備え、ベース56及びカバー59で覆われた空間内に空気を供給する送風機61を備える。これにより、送風機61による空気の供給によりベース55及びカバー59で覆われた空間内が加圧されることで直動機構51、52の機構部54の防塵性が高められる。
【0055】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。
【符号の説明】
【0056】
1;高強度繊維シート、11;端部、2;高強度繊維、4;基台、42;枠台、44;支持材、45;金網、46;開口部、47;吸塵機、48;ホッパー、5;ノズル、6;圧縮空気、8;切断刃。