(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】麺皮片の製造装置
(51)【国際特許分類】
A21C 11/08 20060101AFI20240807BHJP
A21C 11/02 20060101ALI20240807BHJP
A21C 11/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
A21C11/08
A21C11/02 B
A21C11/00 F
(21)【出願番号】P 2023029361
(22)【出願日】2023-02-28
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】593008748
【氏名又は名称】株式会社豊製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】倉知 雅休
(72)【発明者】
【氏名】近江 英人
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-126475(JP,A)
【文献】実開昭50-095491(JP,U)
【文献】登録実用新案第3181121(JP,U)
【文献】特開2018-126100(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体であり、その外周面上に麺皮片を成形するための雌型を形成され、帯状に圧延された麺帯の表面に前記外周面を回転しながら押し当てて、麺帯表面上に麺皮片を成形する型ローラと、
麺帯表面上に成形された前記麺皮片を麺帯から切り離す切離カッタと、を備え、
前記型ローラの
前記外周面上の前記雌型は、前記麺皮片を断面山形状に形成するように中心部の深さが深く周辺部に行くほど深さが漸次浅くなり、
前記型ローラの前記外周面で前記雌型が存在しない空白部と前記雌型の外周縁部
との境界線では深さがゼロとされ、 前
記空白部の外径は、前記雌型の外周縁部における外径と同等に揃えられ
、
前記雌型は、前記麺皮片の断面山形状の斜面が、互いに平行で高さが順次変わる複数の平面の組み合わせから成る複数段の階段で形成されるように、前記雌型の周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている
麺皮片の製造装置。
【請求項2】
請求項
1において、
前記切離カッタは、中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体の
前記外周面上に前記型ローラの
前記雌型の外形に対応した形状の切刃を備えたロータリカッタであり、麺帯表面上に成形された前記麺皮片を1枚ずつ切り離す構成とされている
麺皮片の製造装置。
【請求項3】
中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体であり、その外周面上に麺皮片を成形するための雌型を形成され、帯状に圧延された麺帯の表面に前記外周面を回転しながら押し当てて、麺帯表面上に麺皮片を成形する型ローラと、
麺帯表面上に成形された前記麺皮片を麺帯から切り離す切離カッタと、を備え、
前記型ローラの前記外周面上の前記雌型は、前記麺皮片を断面山形状に形成するように中心部の深さが深く周辺部に行くほど深さが漸次浅くなり、前記型ローラの前記外周面で前記雌型が存在しない空白部と前記雌型の外周縁部との境界線では深さがゼロとされ、 前記空白部の外径は、前記雌型の外周縁部における外径と同等に揃えられ、
表面上に前記麺皮片を成形された麺帯を、麺帯の長手方向に1枚以上の前記麺皮片を含む一定の長さで切断する切断カッタと、
該切断カッタにより切断された麺帯を、搬送コンベア上に載置する伸縮コンベアと、を備え、
前記切離カッタは、前記搬送コンベアにより搬送された麺帯の前記麺皮片をその厚さ方向で打ち抜き、麺帯から切り離す打抜きカッタである
麺皮片の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、餃子、包子等の皮になる麺皮片を製造する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中央部に比べて周辺部の厚さが薄い餃子の皮、並びにその製造装置が開示されている。この場合の餃子の皮(以下、麺皮片という)の断面形状は、周辺部及び中央部の皮の厚さは互いに異なり、それぞれは均一の厚さとされている。このような麺皮片の形状により、餃子として麺皮片に具を包んだとき、周辺部の重ね合わせ部分が他に比べて肉厚が厚くなるのを防止している。
図15のように、特許文献1の製造装置では、麺皮片Mを製造するための円筒体の型ローラLの外周面に、成形される麺皮片Mの形状に合わせた凹形状の雌型Fを形成している。この製造装置では、雌型F内で成形された麺皮片Mは、打抜きカッタHによる打抜き操作により麺帯MBから切り離される。麺皮片Mが切り離された麺帯MBはクズSとなる。
【0003】
一方、専門店の手作りの餃子、包子等の皮である麺皮片は、断面形状が山形状とされており、中央部の厚さが厚く周辺部に向けて徐々に薄くなる形状とされている。そのため、皮に具を包んで皮の周辺部を指でつまんで重ね合わせても、麺皮片の周辺部の肉厚は薄くされているため、重ね合わせた部分が他に比べて厚くなることはなく、良好な食感を得ることができる。また、皮の中央部が厚肉に形成されているため、その部分でもちもちの食感を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の製造装置の場合、打抜き操作のタイミングがずれると、麺皮片Mの外周縁部にクズSとなるはずの麺帯MBの一部が切り離されずに付着して、製品としての麺皮片Mの外周縁部の厚さが部分的に不揃いとなって、製品の品質が損なわれる問題がある。
【0006】
本発明の課題は、断面山形状の手作り風の麺皮片を型ローラの雌型により成形する製造装置において、成形後で切り離し前の麺皮片の外周縁部と、その外側周辺部で雌型のない空白部の肉厚を同等にすることにより打抜き操作のタイミングがずれても製品としての麺皮片の外周縁部の厚さが部分的に不揃いとならないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1発明の麺皮片の製造装置は、中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体であり、その外周面上に麺皮片を成形するための雌型を形成され、帯状に圧延された麺帯の表面に前記外周面を回転しながら押し当てて、麺帯表面上に麺皮片を成形する型ローラと、麺帯表面上に成形された前記麺皮片を麺帯から切り離す切離カッタと、を備え、前記型ローラの外周面上の前記雌型は、前記麺皮片を断面山形状に形成するように中心部の深さが深く周辺部に行くほど深さが漸次浅くなり、外周縁部では深さがゼロとされ、前記型ローラの外周面で前記雌型が存在しない空白部の外径は、前記雌型の外周縁部における外径と同等に揃えられている。
【0008】
第1発明によれば、麺帯上に型ローラにより麺皮片が成形されると、型ローラの外周面で雌型が存在しない空白部の麺帯は、麺皮片における外周縁部と同等の厚さとされる。そのため、切離カッタによる麺皮片の切り離しタイミングがずれても麺皮片の外周縁部の厚さが部分的に不揃いになることはなく、麺皮片としての品質が損なわれることはない。
【0009】
また、麺皮片における外周縁部の厚さを麺皮片が成形される前の麺帯の厚さに比べて薄くすることにより、麺皮片が切り離された後、屑として処理される麺帯の量を削減することができる。
【0010】
本発明の第2発明の麺皮片の製造装置は、上記第1発明において、前記雌型は、前記麺皮片の断面山形状の斜面が、互いに平行で高さが順次変わる複数の平面の組み合わせから成る複数段の階段で形成されるように、前記雌型の周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている。
【0011】
型ローラの外周面上の雌型に斜面を形成するためのCAD(コンピューター支援設計)データをつくることは容易ではない。第2発明によれば、雌型がその周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている。そのため、実質的な斜面を階段形状によって製作し、製造を容易にすることができる。階段の高さと幅を小さくすることにより麺皮片の表面に階段状の跡が目立たないようにすることができる。また、製作された雌型の階段の角部を手仕上げで削り、滑らかな斜面とすることもできる。
【0012】
本発明の第3発明の麺皮片の製造装置は、上記第1又は第2発明において、前記切離カッタは、中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体の外周面上に前記型ローラの雌型の外形に対応した形状の切刃を備えたロータリカッタであり、麺帯表面上に成形された前記麺皮片を1枚ずつ切り離す構成とされている。
【0013】
第3発明によれば、切離カッタとして型ローラの雌型に対応した切刃を備えたロータリカッタを持つのみの構成で済み、少量生産向けの製造装置として装置を小型化することができる。
【0014】
本発明の第4発明の麺皮片の製造装置は、上記第1又は第2発明において、表面上に前記麺皮片を成形された麺帯を、麺帯の長手方向に1枚以上の前記麺皮片を含む一定の長さで切断する切断カッタと、該切断カッタにより切断された麺帯を、搬送コンベア上に載置する伸縮コンベアと、を備え、前記切離カッタは、前記搬送コンベアにより搬送された麺帯の前記麺皮片をその厚さ方向で打ち抜き、麺帯から切り離す打抜きカッタである。
【0015】
第4発明によれば、ロータリカッタを使用せずに打抜きカッタにより麺帯から麺皮片を切り離すことができる。
【0016】
本発明の第5発明の麺皮片の製造装置は、中心線を回転軸として回転可能な円筒体又は円柱体であり、その外周面上に麺皮片を成形するための雌型を形成され、帯状に圧延された麺帯の表面に前記外周面を回転しながら押し当てて、麺帯表面上に麺皮片を成形する型ローラと、麺帯表面上に成形された前記麺皮片を麺帯から切り離す切離カッタと、を備え、前記型ローラの外周面上の前記雌型は、前記麺皮片を断面山形状に形成するように中心部の深さが深く周辺部に行くほど深さが漸次浅くなり、外周縁部では深さがゼロとされ、前記雌型は、前記麺皮片の断面山形状の斜面が、互いに平行で高さが順次変わる複数の平面の組み合わせから成る複数段の階段で形成されるように、前記雌型の周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている。
【0017】
第5発明によれば、上記第2発明と同様の作用、効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態としての麺皮片の製造装置の側面図である。
【
図2】第1実施形態における型ロールの側面の拡大模式図である。
【
図4】上記型ロールにおける型形状の展開図である。
【
図6】第1実施形態により製造される麺皮片の断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態としての型ロールの
図5に対応する断面図である。
【
図8】第2実施形態により製造される麺皮片の正面図である。
【
図10】本発明の第3実施形態としての麺皮片の製造装置の側面図である。
【
図11】第3実施形態により製造される麺皮片の側面図である。
【
図12】本発明の第4実施形態としての麺皮片の製造装置の側面図である。
【
図13】本発明の第5実施形態としての麺皮片の製造装置の側面図である。
【
図14】第5実施形態の型ロールにおける型形状の展開図である。
【
図15】従来例としての麺皮片の製造装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態の構成>
図1は、第1実施形態としての麺皮片の製造装置を示す。第1実施形態では、搬送コンベア61により前工程から搬送された麺帯(図示略)が型ローラ11と押圧ローラ21との間を通って麺皮片Mが成形され、ロータリカッタ31によりカットされて麺皮片Mが連続的に生産される。麺帯は、前工程で薄力粉、強力粉、その他を混合した後、水を加えて練ったダマを圧延して帯状に成形されている。
【0020】
図2~4のように型ローラ11は、円筒体であり、その外周面上に麺皮片Mを成形するための雌型11Aが複数個(第1実施形態では9個)形成されている。具体的には、雌型11Aは、円筒体の軸方向に3列、周方向に3列、全体で9個形成されている。型ローラ11の外周面で雌型11Aが存在しない空白部11Dは、各雌型11A相互間に少しの隙間を持つように配置されている。このため、後述のようにロータリカッタ(上記解決手段における切離カッタに相当)31により麺帯から麺皮片Mが切り離されたとき、残った麺帯の屑は、ばらけることなく、ひとつながりになった状態で回収可能となる。
【0021】
各雌型11Aは、
図3~5のように周辺部から中心部に行くほど漸次深さが深くなるように形成されている。
図5のように、空白部11Dの外径は、雌型11Aにおける外周縁部と同等の外径Dに揃えられている。そのため、
図3、4には、各雌型11Aにおける外周縁部と空白部11Dとの境界線が明確に示されているが、各雌型11Aにおける外周縁部の外径と空白部11Dの外径が等しい場合、上記境界線は殆ど見えなくなる。
図5において、仮想線は麺皮片M及び麺帯の表面を示し、Cは雌型11Aにおける外周縁部と空白部11Dとの境界線を示す。なお、
図5は、本来円弧形状となる型ローラ11の表面を平面上に展開した状態で示している。
【0022】
麺帯は、成形時に雌型11A内に馴染み易くするため加水率が高く(50%程度)されており、成形後に比較的収縮率が高くなる。しかも、収縮率は、圧延方向の影響を受けて麺帯の長手方向で大きい。そのため、雌型11Aの外形は、
図4のように麺帯の長手方向に延びた楕円形状とされている。
【0023】
図3のように、型ローラ11は、円筒体の中心線上に設けられた回転軸11Cを中心として回転可能とされている。ここでは、型ローラ11の回転駆動機構の説明は省略する。
図1のように、型ローラ11には、その外周面に押圧ローラ21が圧接されている。そのため、搬送コンベア61から供給される麺帯は、型ローラ11の外周面と押圧ローラ21の外周面との間に挟まれて圧延状態とされる。つまり、型ローラ11の外周面が麺帯の表面に回転しながら押し当てられる。その結果、型ローラ11に接する麺帯の表面の一部が雌型11A内に圧入されて麺皮片Mが成形される。麺帯の表面の一部が雌型11A内に圧入された分だけ麺帯の厚さは薄くなる。
図1のように、表面に麺皮片Mが成形された麺帯は、搬送コンベア62に載せられて搬送され、搬送コンベア62の下流側の上側に設置されたロータリカッタ31により麺帯から麺皮片Mが切り離される。ロータリカッタ31は、円筒体であり、中心線上の回転軸を中心に回転可能とされており、外周面上に麺皮片Mを切り離すための切刃を備える。切刃は麺皮片Mの外形形状に対応する形状とされている。ロータリカッタ31は、型ローラ11との間で回転が同期されており、型ローラ11により成形された麺皮片Mが位置ずれなしにロータリカッタ31により切り離される。
【0024】
このようにして切り離された麺皮片Mは、搬送コンベア62の下流側で製品として包装され出荷される。
図6は、製品としての麺皮片Mの断面形状を示す。この麺皮片Mは、中心部M1が厚肉で、周辺部M2に行くほど漸次薄肉となる断面山形状の手作り風の麺皮片Mとされる。例えば、麺皮片Mは直径が106mm程度であり、中心部M1の肉厚T1が2.5mm程度、周辺部M2の外周側の肉厚T2が0.7mm程度である。
【0025】
図1のように、ロータリカッタ31の外周面に隣接して屑コンベア71が配設されている。屑コンベア71は、麺皮片Mを切り離した後の麺帯の屑を、ロータリカッタ31から受け取って搬送し、屑コンベア71の下流側に設置したシュート72により屑の集積場に移動させる。この後、屑は麺帯としてリサイクルされる。
図1において、型ローラ11等の回転体、及び搬送コンベア61等のコンベアには、それぞれの回転方向、移動方向を矢印により図示している。
【0026】
図1のように、型ローラ11の上方、及び搬送コンベア62の上流側上方には、粉体散布機51及び52が配設されている。各粉体散布機51、52は、片栗粉等から成る粉体を型ローラ11の外周面、及び搬送コンベア62のベルト上面に散布する。この粉体散布により型ローラ11の外周面、及び搬送コンベア62のベルト上面に麺帯が接着してしまうことを防止している。
【0027】
<第1実施形態の作用、効果>
型ローラ11の外周面に圧接された麺帯の表面には、麺皮片Mが成形される。この状態では、麺皮片Mは、麺帯から切り離されず麺帯につながった状態に維持されている。麺皮片Mは、型ローラ11の外周面の雌型11Aの外形形状に応じて楕円形状とされている。
【0028】
表面に麺皮片Mを成形された麺帯は、搬送コンベア62で搬送されてロータリカッタ31により麺皮片Mが切り離される。切り離された麺皮片Mは、製品として出荷されるが、時間経過と共に収縮して外形形状が楕円から略真円に変化する。製品としての麺皮片Mは、中心部M1が厚肉で周辺部M2に行くほど漸次薄肉となる手作り風のものとなる。
【0029】
麺帯上に型ローラ11により麺皮片Mが成形されると、各麺皮片M間をつなぐ空白部11Dの麺帯は、各麺皮片Mにおける周辺部M2の外周縁部と同等の厚さとされる。各麺皮片Mにおける周辺部M2の外周縁部の厚さT2は、麺皮片が成形される前の麺帯の厚さに比べて薄くなるため、麺皮片Mが切り離された後、屑として処理される麺帯の量を削減することができる。また、各麺皮片Mをつなぐ空白部11Dの麺帯の厚さが各麺皮片Mにおける周辺部M2の外周縁部の厚さと同等とされているため、ロータリカッタ31により麺帯から麺皮片Mを切り離す際の切り離し位置がずれても、麺皮片Mの外周縁部の厚さが部分的に不揃いとならず、上記位置ずれが目立つことはなく麺皮片Mの商品性に殆ど影響を与えない。
【0030】
<第2実施形態>
図7は第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、型ローラの外周面上の雌型の形状を変更した点である。第1実施形態では、
図6のように中心部M1が厚肉で周辺部M2が薄肉の麺皮片Mを傾斜面が滑らかな山形状に成形する雌型11Aとしたのに対し、第2実施形態では、
図8、9のように麺皮片Mの中心部M1と周辺部M2の肉厚の変化を階段状に成形する雌型11Bとしている。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0031】
第2実施形態の雌型11Bによって成形される麺皮片Mは、
図8、9に示すように麺皮片Mの中心部M1と周辺部M2の肉厚の変化が階段状にされている。即ち、麺皮片Mは、互いに平行で高さが順次変わる複数の平面M3の組み合わせから成る複数段の階段により形成されている。そのため、階段状の麺皮片Mを成形する雌型11Bは、
図7のように周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている。麺皮片Mの平面M3を成形する雌型11Bの成形面は、型ローラ11の外周面に沿った円弧面11Eにより形成されている。第2実施形態においても第1実施形態の場合と同様、雌型11Bにおける周辺部の外周縁部と空白部11Dとの境界線Cより空白部11D側でも、雌型11Aの外周縁部と同等の外径Dに揃えられている。なお、
図7は、本来円弧形状となる型ローラ11の表面を平面上に展開した状態で示している。
【0032】
第2実施形態の雌型11Bでは、雌型11Bの周辺部から中心部に向けて深さが順次階段状に深くなる形状とされている。そのため、実質的な斜面を階段形状によって製作することによりCADデータを容易に制作することができ、製造を容易にすることができる。階段の高さと幅を小さくすることにより麺皮片Mの表面に階段状の跡が目立たないようにすることができる。また、製作された雌型11Bの階段の角部を手仕上げで削り、滑らかな斜面とすることもできる。
【0033】
<第3実施形態>
図10は第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、麺帯から麺皮片Mを切り離す作業を、複数枚の麺帯を重ねた状態で複数枚の麺皮片Mを一気に切り離すようにした点である。第1実施形態では、麺皮片Mを1枚ずつ切り離したのに対し、第3実施形態では、1回の作業で複数枚の麺皮片Mを同時に切り離すものとされている。その他の構成は、第3実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0034】
図10のように、第3実施形態では、型ローラ11の下方にロータリカッタ(上記解決手段における切断カッタに相当)32が設けられている。ロータリカッタ32は、対に組み合わされた押圧ローラ23との間に、型ローラ11と押圧ローラ21との間を通過した麺帯が通ることにより麺帯が長手方向の所定長さで幅方向に切断される。切断される麺帯には、複数の麺皮片Mが表面上に成形されている。例えば、麺帯が1メートルの長さに切断され、その中には5枚の麺皮片Mが含まれている。ロータリカッタ32で切断された麺帯は、伸縮コンベア(シャトルコンベアと呼ばれることもある)41上に載置される。伸縮コンベア41は、公知のもので、コンベアローラ42が上下することにより伸縮コンベア41の前端部がAの位置とBの位置との間で伸縮する。伸縮コンベア41の下方には搬送コンベア63が設けられている。伸縮コンベア41は、Aの位置からBの位置へ移動する間、同じ速度で載置した麺帯を前端部方向に搬送する。そのため、伸縮コンベア41は、Aの位置からBの位置へ移動する毎に、所定長さに切断された麺帯を、伸縮コンベア41の移動方向に動かすことなく搬送コンベア63の上に移送させる。従って、切断された麺帯は、各麺皮片Mの表面を一定方向(ここでは上方向)に揃えた状態で搬送コンベア63上に重ねられることになる。
【0035】
搬送コンベア63は、その上に載置される麺帯の枚数が予め設定した枚数(例えば、10枚)に達する毎に載置された麺帯を隣接する搬送コンベア64に搬送するように構成されている。その結果、伸縮コンベア41が伸縮動作する毎に搬送コンベア63の上に所定長さに切断された麺帯が重ねられ、設定枚数に達したときに設定枚数の麺帯が一塊となって搬送コンベア64に移送される。
図11は、切断された麺帯が複数枚数重ねられた状態を示す。このとき、各麺帯の麺皮片Mは、搬送方向で互いに位相を揃えて上下方向に重なった状態とされている。即ち、各麺帯の麺皮片Mが前後、左右方向で位置を合わせて重なった状態とされる。
【0036】
搬送コンベア64の搬送ルートの途中には打抜きカッタ33が設けられている。打抜きカッタ33は、搬送コンベア64が停止した状態で設定枚数重ねられた各麺帯の表面に成形されている麺皮片Mを重畳方向に設定枚数分同時に打抜いて各麺皮片Mを切り離す。このとき、打抜きカッタ33は、麺帯の幅方向に並ぶ3個の麺皮片Mを一度に打ち抜く。従って、打抜きカッタ33で打抜かれた麺皮片Mは、設定枚数が重なったものが3列並んで搬送コンベア64により下流に搬送される。搬送コンベア64の下流では、麺皮片Mが製品として包装され出荷される。
【0037】
第3実施形態では、ロータリカッタ32により切断される麺帯には複数の麺皮片Mが形成されるものとされたが、1以上の麺皮片Mが形成されていればよい。また、搬送コンベア63では、複数枚の麺帯が重ねられて搬送コンベア64に移送されたが、麺帯が1枚ずつ搬送コンベア63から搬送コンベア64に移送され、打抜きカッタ33により麺帯が1枚ずつ打抜かれるようにされてもよい。
【0038】
<第4実施形態>
図12は第4実施形態を示す。第4実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、型ローラ11の外周面に麺帯を圧接させるための構造を変更した点である。その他の構成は、第4実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0039】
図12のように、第4実施形態では、型ローラ11が搬送コンベア65の上に配設されている。そして、搬送コンベア65の上側ベルトの下部で型ローラ11に相対する位置には支持テーブル22が配設されている。型ローラ11は、その回転軸が搬送コンベア65のベルトを横切る方向に配置され、外周面が搬送コンベア65の上側ベルト上面との間に麺帯を挟む位置に配置されている。支持テーブル22は、搬送コンベア65の上側ベルトの下面に沿った平面を上面に備え、支持テーブル22の上面は、搬送コンベア65のベルトの幅方向では、型ローラ11の外周面の回転軸方向寸法よりも僅かに大きく、搬送コンベア65のベルトの長手方向では、型ローラ11の外周面の直径よりも充分大きく設定されている。また、支持テーブル22は、その上面が搬送コンベア65の上側ベルト下面と接したときの接触摩擦を可及的に小さくするように設計されている。
【0040】
前工程からの麺帯が型ローラ11の外周面と搬送コンベア65の上側ベルト上面との間に通されると、麺帯は、搬送コンベア65の上側ベルト上面により型ローラ11の外周面に圧接される。その圧接により麺帯の表面には麺皮片Mが成形される。搬送コンベア65の上側ベルト上面が型ローラ11の外周面に麺帯を圧接する際の反力は、支持テーブル22が受けて支持している。
【0041】
麺皮片Mを表面に成形された麺帯は、搬送コンベア65により搬送されてロータリカッタ31により一枚ずつの麺皮片Mに切り離されて、更に下流へ搬送され、製品として出荷される。
【0042】
<第5実施形態>
図13は第5実施形態を示す。第5実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態における押圧ローラ21とロータリカッタ31を一つに合体した点である。押圧ローラ21がカッタの機能を備えることにより、型ローラ12で成形された麺皮片Mは、型ローラ12から離れる段階で1枚ずつの麺皮片Mに切り離される。そのため、型ローラ12の外周面とロータリカッタ31の外周面との境界付近には、シュート74の先端部が配設されている。また、型ローラ12の外周面は、
図14のように雌型12Aが形成されている。型ローラ12外周面の雌型12Aは、回転軸方向に4列(各列に3個ずつ)、周方向に3列(各列に4個ずつ)形成され、全体で12個の各雌型12Aは互いに接した状態で配列されている。その他の構成は、第5実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0043】
型ローラ12の外周面とロータリカッタ31の外周面との間に前工程からの麺帯が通されると、型ローラ12の外周面の雌型12Aにより麺帯表面に麺皮片Mが成形される。同時に麺皮片Mは、ロータリカッタ31により1枚ずつ麺帯から切り離される。麺帯から切り離された麺皮片Mは、遠心力と重力を受けて雌型12Aから離れ、シュート74の先端部で搬送コンベア66側に振り分けられる。一方、麺皮片Mを切り離された麺帯は、シュート74の先端部で屑コンベア73側に振り分けられる。搬送コンベア66の下流に搬送された麺皮片Mは製品として出荷される。また、屑コンベア73の下流に搬送された麺帯の屑は、下流側で麺帯としてリサイクルされる。この場合の麺帯の屑は、互いにつながっておらず、切り離されて分離されたものとされる。
【0044】
<他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、上記実施形態では、型ローラ及びロータリカッタを円筒体により構成したが、円柱体により構成してもよい。また、上記実施形態では、雌型の外形形状を楕円としたが、麺帯から切り離された麺皮片の収縮率が麺帯の長手方向及び幅方向で同程度の場合は、雌型の外形形状が略真円形状とされる。更に、上記実施形態では、型ローラの外周面上に形成される雌型を複数個としたが、一つだけにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
11、12 型ローラ
11A、11B、12A 雌型
11C 回転軸
11D 空白部
11E 円弧面
21、23 押圧ローラ
22 支持テーブル
31 ロータリカッタ(切離カッタ)
32 ロータリカッタ(切断カッタ)
33 打抜きカッタ
41 伸縮コンベア
42 コンベアローラ
51、52 粉体散布機
61、62、63、64、65、66 搬送コンベア
71、73 屑コンベア
72、74 シュート
M 麺皮片
【要約】
【課題】断面山形状の手作り風の麺皮片を型ローラの雌型により成形する製造装置において、成形後で切り離し前の麺皮片の外周縁部と、その外側周辺部で雌型のない空白部の肉厚を同等にすることにより打抜き操作のタイミングがずれても製品としての麺皮片の外周縁部の厚さが部分的に不揃いとならないようにする。
【解決手段】外周面上に麺皮片を成形するための雌型11Aを形成され、麺帯の表面に外周面を回転しながら押し当てて、麺帯表面上に麺皮片を成形する型ローラ11と、成形された麺皮片を麺帯から切り離す切離カッタ(31)と、を備え、型ローラ11の外周面上の雌型11Aは、麺皮片を断面山形状に形成するように中心部の深さが深く周辺部に行くほど深さが漸次浅くなり、外周縁部では深さがゼロとされ、型ローラ11の外周面で雌型11Aが存在しない空白部11Dの外径は、雌型11Aの外周縁部における外径と同等に揃えられている。
【選択図】
図3