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特許7534836洗浄液及びインクジェットプリンタの洗浄方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】洗浄液及びインクジェットプリンタの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/722 20060101AFI20240807BHJP
   C11D 3/20 20060101ALI20240807BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20240807BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20240807BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C11D1/722
C11D3/20
C11D3/43
C11D17/08
B41J2/165 401
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021501825
(86)(22)【出願日】2020-02-04
(86)【国際出願番号】 JP2020004131
(87)【国際公開番号】W WO2020175034
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】P 2019032213
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019126604
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博俊
(72)【発明者】
【氏名】崔 波
(72)【発明者】
【氏名】石井 竜
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-528047(JP,A)
【文献】特開2018-094851(JP,A)
【文献】特開2002-105500(JP,A)
【文献】特開2013-146952(JP,A)
【文献】特開昭63-299939(JP,A)
【文献】特開2009-144070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
B41J 2/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、水と、グリコールエーテルとを含有し、該式(2)で表される化合物の含有率が0.2質量%~2質量%であるインクジェットプリンタ用洗浄液。
【化1】
[式(1)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のC1-C30アルキル基を表す。EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意である。m及びnはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。mとnとの比であるm:nは1:2以上かつ3:2より小さい。]
【化2】
[式(2)中、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意である。m1、n1、及びL1はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。ただし、m1、n1、及びL1は{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100>27の条件を満たす。]
【請求項2】
前記式(2)で表される化合物の含有率が0.4質量%~2質量%である請求項1に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液。
【請求項3】
インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物に対して請求項1または請求項2に記載のインクジェットプリンタ用洗浄液を接触させることにより、前記固形物を溶解除去するインクジェットプリンタの洗浄方法。
【請求項4】
インクジェットヘッドに前記インクジェットプリンタ用洗浄液を充填し、インク流路内に前記洗浄液を通液することにより、前記インク流路内に付着した前記固形物を溶解除去する請求項に記載の洗浄方法。
【請求項5】
インクジエットヘッドのノズルを前記インクジェットプリンタ用洗浄液に浸漬することにより、前記ノズルに付着した前記固形物を溶解除去する請求項に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、特にインクジェットプリンタの洗浄に用いられる洗浄液、及びそれを用いたインクジェットプリンタの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタによる印刷方法(インクジェット印刷方法)は、インクの小滴を発生させ、これを紙等の記録メディアに付着させ印刷を行う方法である。
【0003】
近年、インクジェット印刷方法は、産業用途としての応用が進んでいる。インクジェットインクが含有する着色剤は、水溶性の着色剤と水不溶性の着色剤とに大別される。これらのうち、顔料等の水不溶性の着色剤は、水溶性の着色剤と比較して、一般に各種の堅牢性に優れる。このため、産業用のインクジェットインクは、水不溶性の着色剤を含有することが多い。
【0004】
産業用途に用いられる記録メディアは、各種の紙、繊維、フィルムなど多様化しており、樹脂フィルム等のインク非吸収性の記録メディア、又はコート紙等のインク難吸収性の記録メディアも多い。そのようなインク非吸収性又はインク難吸収性の記録メディアの印刷に用いられるインクとしては、非水系の溶剤インク、硬化性インク等が知られている。しかし、自然環境、生体等に対する安全性の観点から、これらのインクに代わる水性インクが強く要望されている。そのような水性インクは、水不溶性の着色剤、及び分散剤を含有し、さらに、耐擦過性、耐溶剤性等を向上させる目的で、一般にポリマー、ワックス等も含有する。このため、そのような水性インクは固形分の含有量が多く、極めて乾燥しやすい。インクの乾燥は、長期の保管、高温又は低湿度環境での保管等において、インクジェットヘッドのノズル部やインク流路内での固形物の形成を生じ、目詰まりが発生しやすい。このようにインクジェットヘッド内で目詰まりが生じると、インクの吐出が安定して行えず、印刷画質の劣化、画像濃度の低下等の問題が生じる。そのため、一般に産業用インクジェットヘッドには、ノズル部にキャップ部材を装備し、インクの乾燥を防止する等の工夫がされている。しかし、インクジェットプリンタが稼働する環境が過酷な場合には、インクの乾燥を完全に回避することは難しい。
【0005】
上記のような状況から、インクが乾燥して固形物を生じることによりインクジェットヘッドが目詰まりしても、これを溶解除去できる洗浄液(クリーニング液、メンテナンス液等とも称される)が強く要望されている。特許文献1~6には、インクジェットプリンタの洗浄に用いられる洗浄液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5027444号公報
【文献】特許第4649823号公報
【文献】特許第4397220号公報
【文献】特許第5618250号公報
【文献】特許第5819206号公報
【文献】特許第5819205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を溶解除去できる洗浄液、及びそれを用いたインクジェットプリンタの洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
1)
下記式(1)で表される化合物と、下記式(2)で表される化合物と、水とを含有し、該式(2)で表される化合物の含有率が0.2質量%~2質量%である洗浄液。
【化1】
[式(1)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のC1-C30アルキル基を表す。EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意である。m及びnはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。mとnとの比であるm:nは1:2以上かつ3:2より小さい。]
【化2】
[式(2)中、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意である。m1、n1、及びL1はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。ただし、m1、n1、及びL1は{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100>27の条件を満たす。]
2)
上記式(2)で表される化合物の含有率が0.4質量%~2質量%である上記1)に記載の洗浄液。
3)
さらに、有機溶剤を含有する上記1)又は2)に記載の洗浄液。
4)
上記有機溶剤がグリコールエーテルである上記3)に記載の洗浄液。
5)
上記1)~4)のいずれか1項に記載の洗浄液の、インクジェットプリンタの洗浄における使用。
6)
インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物に対して上記1)~4)のいずれか1項に記載の洗浄液を接触させることにより、前記固形物を溶解除去するインクジェットプリンタの洗浄方法。
7)
インクジェットヘッドに上記洗浄液を充填し、インク流路内に上記洗浄液を通液することにより、上記インク流路内に付着した上記固形物を溶解除去する上記6)に記載の洗浄方法。
8)
インクジェットヘッドのノズルを上記洗浄液に浸漬することにより、上記ノズルに付着した上記固形物を溶解除去する上記6)に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、着色インクが乾燥して固形物を生じたときでも、その固形物を溶解除去できる洗浄液、及びそれを用いたインクジェットプリンタの洗浄方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書においては、特に断りの無い限り、「%」及び「部」は、いずれも質量基準で記載する。
【0011】
<洗浄液>
本実施形態に係る洗浄液は、上記式(1)で表される化合物と、上記式(2)で表される化合物と、水とを含有し、該式(2)で表される化合物の含有率が0.2質量%~2質量%である。上記式(1)及び式(2)でそれぞれ表される化合物を併用し、上記式(2)で表される化合物の含有率を適切に調整することにより、均一な溶液である洗浄液を得ることができる。また、洗浄液を均一な溶液とすることにより、高い洗浄能力を安定的に示すことが可能となる。
【0012】
以下、本実施形態に係る洗浄液が含有する成分について詳細に説明する。なお、以下に説明する各成分は、そのうちの1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0013】
[式(1)で表される化合物]
上記式(1)中、Rは直鎖状又は分岐鎖状のC1-C30アルキル基を表し、C10-C18アルキル基が好ましく、C12-C15アルキル基がより好ましい。これらの中では直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0014】
上記式(1)中、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意であり、上記式(1)に示される順序に限定されるものではないが、上記式(1)に示される順序が好ましい。
【0015】
上記式(1)中、m及びnはそれぞれ独立に1~5の整数を表す。m:nの比は1:2以上かつ3:2より小さい範囲である。mとnとの組み合わせ(m:n)としては、1:2、2:3、3:4、4:5、5:5、4:4、3:3、2:2、1:1、5:4、及び4:3が好ましく、4:4がより好ましい。
【0016】
なお、m及びnはいずれも平均値である。このため、本明細書においてm及びnが小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入して整数とした数値をm及びnの値とする。
【0017】
上記式(1)で表される化合物は、公知の方法により合成することができる。また、市販品としても入手できる。市販品の具体例としては、例えば、クラリアント社製のGENAPOL EP2424、EP2544等が挙げられる。
【0018】
洗浄液の総質量中における上記式(1)で表される化合物の総含有率は、通常0.1%~2%であり、好ましくは0.5%~1%である。
【0019】
[式(2)で表される化合物]
上記式(2)中、EOはエチレンオキシ基を表し、POはプロピレンオキシ基を表す。EOとPOとが結合する順序は任意であり、上記式(2)に示される順序に限定されるものではないが、上記式(2)に示される順序が好ましい。
【0020】
上記式(2)中、m1、n1、及びL1はそれぞれ独立に1以上の整数を表す。m1、n1、及びL1の範囲は特に制限されない。通常、m1が11以上40以下、n1が25以上58以下、L1が11以上40以下であり、好ましくは、m1が11以上39以下、n1が27以上58以下、L1が11以上39以下であり、より好ましくは、m1が13以上37以下、n1が29以上56以下、L1が13以上37以下である。
【0021】
ただし、m1、n1、及びL1は{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100>27の条件を満たす。{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100の値の下限は28以上であることが好ましい。また、{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100の値の上限は、通常76以下であり、好ましくは71以下、より好ましくは62以下である。{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100の値の範囲は、通常27より大きく76以下、好ましくは28以上71以下、より好ましくは35以上62以下、さらに好ましくは40以上60以下、特に好ましくは45以上60以下、極めて好ましくは47以上57以下である。
【0022】
なお、m1、n1、及びL1はいずれも平均値である。このため、本明細書においてm1、n1、及びL1が小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入して整数とした数値をm1、n1、及びL1の値とする。
【0023】
また、本明細書において{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100の算出結果が小数点以下の数値を有するときは、小数点以下1桁目を四捨五入した数値を算出結果とする。
【0024】
上記式(2)で表される化合物は、公知の方法により合成することができる。また、市販品としても入手できる。市販品の具体例としては、例えば、クラリアント社製のGENAPOL PF40、第一工業製薬社製のエパン U―105等が挙げられる。
【0025】
洗浄液の総質量中における上記式(2)で表される化合物の総含有率は、0.2%~2%であり、好ましくは0.4%~2%である。
【0026】
[水]
本実施形態に係る洗浄液は、溶媒として水を含有する。水は、イオン性の不純物を極力低減することを目的として、イオン交換水、蒸留水等を用いることが好ましい。
【0027】
洗浄液の総質量中における水の含有率は、通常60%~80%であり、好ましくは65%~80%である。
【0028】
[有機溶剤]
本実施形態に係る洗浄液は、さらに有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノール、第三ブタノール等の、ヒドロキシ基を1つ有するC1-C6アルカノール;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルピロリジン-2-オン等のラクタム;1,3-ジメチルイミダゾリジン-2-オン、1,3-ジメチルヘキサヒドロピリミド-2-オン等の環式尿素;アセトン、2-メチル-2-ヒドロキシペンタン-4-オン、エチレンカーボネート等の、ケトン又はケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,6-へキシレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ペンタンジオール、4-メチル-1,2-ペンタンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、1,2-オクタンジオール、5-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4-メチル-1,2-ヘキサンジオール、4,4-ジメチル-1,2-ペンタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、分子量が400以上のポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール等の、C2-C8アルキレン単位を有するモノ、オリゴ、若しくはポリアルキレングリコール又はチオグリコール;グリセリン、ジグリセリン、ヘキサン-1,2,6-トリオール、トリメチロールプロパン等のポリオール(トリオール);γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド;グリコールエーテル;などが挙げられる。これらの中ではグリコールエーテルが好ましい。
【0029】
グリコールエーテルとしては、ジ又はトリC2-C4アルキレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。C2-C4アルキレングリコール部分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールが挙げられる。これらの中では、エチレングリコール及びプロピレングリコールが好ましく、エチレングリコールがより好ましい。モノアルキルエーテル部分のアルキルの炭素数の範囲は、通常C1-C6、好ましくはC1-C5、より好ましくはC2-C4、さらに好ましくはC3-C4、特に好ましくはC4である。
【0030】
グリコールエーテルの具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中ではブチルジグリコールが好ましい。
【0031】
洗浄液の総質量中における有機溶剤の総含有率は、通常0~60%、好ましくは0.1~50%、より好ましくは0.2~40%、さらに好ましくは0.5~30%である。また、有機溶剤として少なくともグリコールエーテルを含有するとき、グリコールエーテルの総含有率は、通常0~15%、好ましくは0.1~15%、より好ましくは0.2~13%、さらに好ましくは0.5~10%である。
【0032】
なお、グリコールエーテルとそれ以外の有機溶剤とを併用するときは、それぞれの含有率の和が、洗浄液の総質量中における有機溶剤の総含有率となる。このときも、グリコールエーテルの総含有率は上記のとおりである。
【0033】
[調製剤]
本実施形態に係る洗浄液は、上記した成分以外に、必要に応じて各種の調製剤をさらに含有していてもよい。そのような調製剤としては、例えば、界面活性剤(ただし、上記式(1)で表される化合物及び上記式(2)で表される化合物を除く)、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、キレート試薬、防錆剤、水溶性紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0034】
洗浄液の総質量中における調製剤の総含有率は、通常0%~30%、好ましくは0%~20%、より好ましくは0%~10%程度である。
【0035】
本実施形態に係る洗浄液は、実質的に着色剤を含有しない。本明細書において「実質的に」とは、洗浄液中に、意図的に着色剤を加えないことを意味する。
【0036】
界面活性剤としては、アニオン、カチオン、ノニオン、両性、シリコーン系、及びフッ素系の各界面活性剤が挙げられる。これらの中ではノニオン界面活性剤が好ましい。
【0037】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、N-アシルアミノ酸又はその塩、N-アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリールスルホン酸塩、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸塩、ジオクチルスルホ琥珀酸塩等が挙げられる。
【0038】
カチオン界面活性剤としては、例えば、2-ビニルピリジン誘導体、ポリ4-ビニルピリジン誘導体等が挙げられる。
【0039】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル等のエーテル系;ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系;2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール等のアセチレングリコール(アルコール)系;などが挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、イミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0041】
シリコーン系界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0042】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸系化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物等が挙げられる。
【0043】
防腐剤としては、例えば、有機硫黄系、有機窒素硫黄系、有機ハロゲン系、ハロアリールスルホン系、ヨードプロパギル系、ハロアルキルチオ系、ニトリル系、ピリジン系、8-オキシキノリン系、ベンゾチアゾール系、イソチアゾリン系、ジチオール系、ピリジンオキシド系、ニトロプロパン系、有機スズ系、フェノール系、第4アンモニウム塩系、トリアジン系、チアジン系、アニリド系、アダマンタン系、ジチオカーバメイト系、ブロム化インダノン系、ベンジルブロムアセテート系、無機塩系等の化合物が挙げられる。
【0044】
防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン-1-オキシド、p-ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン及びその塩等が挙げられる。
【0045】
pH調整剤としては、調製される洗浄剤に悪影響を及ぼさずに、そのpHを5~11に調整できるものであれば、任意の物質を使用することができる。その具体例としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン等のアルカノールアミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化アンモニウム(アンモニア水);炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩;ケイ酸ナトリウム、酢酸カリウム等の有機酸のアルカリ金属塩;リン酸二ナトリウム等の無機塩基;などが挙げられる。
【0046】
キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラシル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
【0048】
水溶性紫外線吸収剤としては、例えば、スルホ化されたベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾ-ル系化合物、サリチル酸系化合物、桂皮酸系化合物、トリアジン系化合物等が挙げられる。
【0049】
酸化防止剤としては、例えば、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機系の褪色防止剤としては、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、複素環類等が挙げられる。
【0050】
[洗浄液の調製方法等]
本実施形態に係る洗浄液は、上記式(1)で表される化合物、上記式(2)で表される化合物、水、並びに必要に応じて有機溶剤及び/又は調製剤を加え、十分に混合することにより得ることができる。得られた洗浄液は、狭雑物を除くために精密濾過を行ってもよい。特に、洗浄液をインクジェットヘッドに充填する場合には、洗浄液を精密濾過するのが好ましい。精密濾過には、メンブランフィルター、ガラス濾紙等を用いることができる。精密濾過を行うときのフィルター等の孔径は、通常0.5μm~20μmであり、好ましくは0.5μm~10μmである。
【0051】
本実施形態に係る洗浄液の25℃におけるpHは、インクジェットプリンタの部材を腐食させないため、通常pH5~11であり、好ましくはpH7~10.5である。
本実施形態に係る洗浄液の25℃における表面張力は、通常10mN/m~50mN/mであり、好ましくは20mN/m~40mN/mである。
本実施形態に係る洗浄液の25℃における粘度は、通常30mPa・s以下であり、好ましくは20mPa・s以下、下限は0.1mPa・s程度である。
【0052】
[洗浄液の用途]
本実施形態に係る洗浄液は、各種の着色剤を含有する水系インクが固化した固形物を溶解除去する際に使用することができる。水系インクとしては、酸性染料、直接染料、反応染料等の水溶性染料を含有する水系インク;分散染料、顔料等の水不溶性着色剤を含有する水系インク;などが挙げられる。本実施形態に係る洗浄液は洗浄力が高いため、水不溶性着色剤、特に顔料を含有する水系インクが固化した固形物を溶解除去する際に使用することが好ましい。また、本実施形態に係る洗浄液は、その洗浄力の高さから、顔料とともに各種の樹脂を含有する水系インクが固化した固形物を溶解除去する際の洗浄液として、極めて高い能力を発揮する。
【0053】
<インクジェットプリンタの洗浄方法>
本実施形態に係るインクジェットプリンタの洗浄方法は、インクジェットプリンタに付着したインクジェットインクの固形物に対して上述した本実施形態に係る洗浄液を接触させることにより、固形物を溶解除去するものである。
【0054】
インクジェットインクとしては、酸性染料、直接染料、反応染料等の水溶性染料を含有する水系インク;分散染料、顔料等の水不溶性着色剤を含有する水系インク;などが挙げられる。特に、本実施形態に係る洗浄液は洗浄力が高いため、水不溶性着色剤、特に顔料を含有する水系インクが固化した固形物を溶解除去することが可能である。
【0055】
インクジェットインクの固形物に対して本実施形態に係る洗浄液を接触させる方法は特に限定されない。例えば、洗浄液をスポンジ、布等に吸収させて、着色インクの固形物が付着した部分の汚れをふき取ってもよい。また、着色インクがインクジェットヘッド上で乾燥し、インクジェットヘッドの汚れが激しいときは、着色インクの代わりに洗浄液をインクジェットヘッドに充填し、インク流路内に洗浄液を通液してもよい。このように洗浄液を通液することにより、インクジェットヘッド内、インク流路内、ノズル等に付着した着色インクの固形物を溶解除去することができる。あるいは、着色インクの固形物によってインクジェットヘッドのノズルが閉塞したような場合には、ノズルを洗浄液に浸漬してもよい。このように洗浄液に浸漬することにより、ノズルに付着した着色インクの固形物を溶解除去することができる。
【0056】
上述した全ての事項について、好ましいもの同士の組み合わせはより好ましく、より好ましいもの同士の組み合わせはさらに好ましい。好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ、より好ましいものとさらに好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
【実施例
【0057】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。洗浄液及び着色インクの調製は、特に断りのない限り、いずれも撹拌下に行った。また、実施例中で使用した「水」は、イオン交換水である。
【0058】
[実施例1~3:洗浄液の調製]
下記表1に記載の各成分を混合して、それぞれ総量100部の洗浄液を得た。得られた液を孔径3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、実施例1~3の洗浄液を得た。
【0059】
[比較例1~11:比較用の洗浄液の調製]
下記表1に記載の各成分を使用する以外は実施例1~3と同様にして、比較例1~11の比較用の洗浄液を得た。
【0060】
下記表1中の略号等は、以下の意味を有する。また、表1中の数値は「部」である。
Gly:グリセリン
2Py:2-ピロリドン
BDG:ブチルジグリコール
EP2424:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL EP2424
EP2544:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL EP2544
EP2564:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL EP2564
EP2584:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL EP2584
PF20:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL PF20
PF40:クラリアント社製ノニオン界面活性剤、GENAPOL PF40
U105:第一工業製薬株式会社製ノニオン界面活性剤、エパン U-105
TEA:トリエタノールアミン
GXL(S):ロンザ社製、プロキセルGXL(S)。
【0061】
なお、EP2424は、上記式(1)中、RがC12-C14アルキル基、mが2、nが4、m:nが1:2の化合物である。
EP2544は、上記式(1)中、RがC12-C15アルキル基、mが4、nが4、m:nが1:1の化合物である。
EP2564は、上記式(1)中、RがC12-C15アルキル基、mが6、nが4、m:nが3:2の化合物であり、上記式(1)には含まれない化合物である。
EP2584は、上記式(1)中、RがC12-C15アルキル基、mが8、nが4、m:nが2:1の化合物であり、上記式(1)には含まれない化合物である。
PF20は、上記式(2)中、m1が5、n1が30、L1が5、{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100=25の化合物であり、上記式(2)には含まれない化合物である。
PF40は、上記式(2)中、m1が13、n1が29、L1が13、{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100=47の化合物である。
U105は、上記式(2)中、m1が37、n1が56、L1が37、{(m1+L1)/(m1+n1+L1)}×100=57の化合物である。
【0062】
【表1】
【0063】
[調製例1:樹脂Aの調製]
ジョンクリル678(質量平均分子量:8500)(25部)及びトリエタノールアミン(14.3部)をイオン交換水(60.7部)に溶解し、1時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を「樹脂A」とする。
【0064】
[調製例2:着色分散液の調製]
国際公開第2013/115071号の合成例3に記載のブロック共重合体を調製し、得られた高分子分散剤(5部)を2-ブタノン(20部)に溶解し、均一な溶液とした。この溶液に、水酸化ナトリウム(0.4部)を水(50.6部)に溶解した液を加え、さらに樹脂A(4部)を添加した後、1時間撹拌して乳化液を得た。この乳化液にC.I.Pigment Yellow 74(20部、クラリアント社製HANSA YELLOW 5GX 01-JP)を加え、1500rpmの条件下で15時間、サンドグラインダー中で分散処理を行って液を得た。得られた液に水(100部)を滴下した後、この液を濾過して濾液を得た。得られた濾液から、エバポレータで2-ブタノン及び水の一部を減圧留去することにより、顔料含有率が12.4%の着色分散液を得た。
着色分散液中の顔料含有率は、株式会社エイ・アンド・デイ製、MS-70を用いて、乾燥重量法により、液中の全固形分から顔料のみの換算値として求めた。
【0065】
[調製例3:樹脂Bの調製]
国際公開第2015/147192号の調製例4を追試することにより、酸価が6KOHmg/g、ガラス転移温度が0℃、固形分が25%の樹脂エマルションを調製した。この樹脂エマルションを「樹脂B」とする。
【0066】
[調製例4:着色インクの調製]
下記表2に記載の各成分を混合して総量100部の液を得た後、得られた液を孔径3μmのメンブランフィルターで濾過することにより、洗浄液の評価に用いる着色インクを得た。
【0067】
下記表2中の略号等は、以下の意味を有する。また、下記表2中の数値は「部」である。なお、樹脂B及びAQ515の表2中の部数は固形分換算値である。
Dp1:調製例2で得た着色分散液
TEG:トリエチレングリコール
1,2HD:1,2-ヘキサンジオール
SN465:日信化学株式会社製ノニオン界面活性剤、サーフィノール 465
AQ515:ビックケミー社製ポリエチレンワックス、AQUACER 515(固形分35.0%)
【0068】
【表2】
【0069】
[安定性試験]
実施例1~3及び比較例1~11で得た各洗浄液を室温で12時間静置した後、洗浄液の状態を目視で観察し、その安定性を評価した。評価基準は以下の2段階とした。評価結果を下記表3に示す。
-評価基準-
A:洗浄液の状態に変化はなかった。
C:洗浄液から分離した液状成分が、洗浄液の表面に浮いているのが観察された。
【0070】
なお、安定性試験において「A」評価の洗浄液のみを使用して、後述する洗浄性試験を行った。
【0071】
[洗浄性試験]
調製例4で得た着色インクをガラスシャーレ上に20μL滴下し、60℃の恒温槽に1時間静置して乾燥させることにより、着色インクが固化した固形物を得た。得られた固形物に実施例1~3及び比較例2~4、7、8、11の各洗浄液を10mL滴下し、固形物を溶解できるか否かを目視で評価した。評価基準は以下の4段階とした。評価結果を下記表3に示す。表3において「-」は、洗浄性試験を行わなかったことを表す。
-評価基準-
A:固形物の残存が認められず、均一な液となった。
B:ほぼ均一な液となったが、わずかに固形物の残存が認められる。
C:明らかに固形物が残存し、均一な液とは認められなかった。
D:固形物の形状が全く変化しなかったか、又はほとんど変化しなかった。
【0072】
なお、少量であっても固形物が残存することは、インクジェットヘッドの目詰まり等を解消できない可能性があることを意味する。このため、洗浄性が「A」評価以外の洗浄液は実用的ではない。
【0073】
【表3】
【0074】
上記の結果から明らかなように、実施例1~3の洗浄液は、安定性及び洗浄性に優れることが確認された。