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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】作業車両用の目標経路生成システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240807BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G05D1/43
A01B69/00 303M
A01B69/00 303Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019016874
(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公開番号】P2020126307
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-01-12
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】横山 和寿
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼田 士郎
(72)【発明者】
【氏名】岩村 圭将
【合議体】
【審判長】鈴木 貴雄
【審判官】田々井 正吾
【審判官】菊地 牧子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-128045(JP,A)
【文献】特開2017-211733(JP,A)
【文献】特開10-243708(JP,A)
【文献】特開2018-169826(JP,A)
【文献】特開2003-308121(JP,A)
【文献】特開2017-182373(JP,A)
【文献】特開2018-120491(JP,A)
【文献】国際公開第2016/009688(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
A01B 69/00 - 69/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地の所定区間ごとの地形情報を含む作業地情報を取得する作業地情報取得部と、
作業車両に揺動可能に装備された作業装置の作業幅に応じて並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路生成部と、
前記地形情報のうち前記作業車両に対する前記作業装置のオフセット量に基づいて定まる前記作業装置が通過する地点における前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を前記作業車両の実走行前に補正し、前記作業車両の実走行中に検出される前記作業装置の揺動方向の傾斜に関する検出情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を再補正する目標経路補正部と、を有している作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項2】
前記作業地情報取得部は、前記所定区間ごとの高度情報が内挿された三次元の地形情報を取得し、
前記目標経路補正部は、前記目標経路に前記所定区間ごとの高度情報を割り当てて、前記所定区間ごとの前記作業装置の揺動方向の傾斜情報を取得する請求項1に記載の作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項3】
前記目標経路補正部は、前記目標経路と前記作業装置の揺動方向の傾斜情報とに基づいて、前記作業車両を前記目標経路に従って模擬的に走行させた上で前記作業経路の配置間隔を補正する3次元シミュレータである請求項1又は2に記載の作業車両用の目標経路生成システム。
【請求項4】
前記目標経路補正部は、前記作業装置の揺動方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路における前記所定区間ごとの平面視作業幅を求め、求めた前記平面視作業幅に基づいて、隣接する前記作業経路における前記所定区間ごとの前記平面視作業幅のオーバーラップ量が設定値以上になるように前記作業経路の配置間隔を補正する請求項1~3のいずれか一項に記載の作業車両用の目標経路生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや乗用田植機などの乗用作業車両、及び、無人草刈機などの無人作業車両を作業地にて自動走行させるための目標経路を生成する作業車両用の目標経路生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両用の目標経路生成システムとしては、経路生成部が、作業情報記憶部から読み出した作業車両の作業幅や作業幅のオーバーラップ量などを含む作業情報と、領域情報記憶部から読み出した走行領域の輪郭などを含む領域情報とに基づいて、複数の直線路(作業経路)と複数の旋回路(非作業経路)とを交互に繋いだ一連の目標経路を生成するように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-182373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車両用の目標経路生成システムにおいては、走行領域の輪郭を特定するための各地点(以下、輪郭特定地点と称する)の位置情報や各輪郭特定地点での傾斜角情報などが領域情報として領域情報記憶部に記憶されている。そして、経路生成部が、目標経路を生成する場合に、各輪郭特定地点での傾斜情報を踏まえた上で走行領域を特定し、その面積を計測することにより、計測した走行領域の面積が実際の面積よりも狭くなることを防止し、これにより、実際の走行領域の面積に適した目標経路の生成を可能にしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の作業車両用の目標経路生成システムにおいては、目標経路を生成するにあたって、計測した走行領域の面積が実際の面積よりも狭くなることを防止するだけで、作業地での作業面(地面)の傾斜は考慮されていない。そのため、実際に作業車両を目標経路に従って自動走行させた場合には、作業装置が、作業地での作業面の傾斜に応じてロール方向に揺動し、このときの作業装置のロール角が大きいほど、目標経路の生成時に設定された作業装置の作業幅に対して実際の作業装置の平面視での作業幅が狭くなり、これに伴って、目標経路の生成時に設定された作業幅のオーバーラップ量が減少するだけでなく、隣接する作業経路間に未作業領域が形成されることがある。
つまり、隣接する作業経路間に未作業領域が形成されないようにするためには、作業地での作業面の傾斜が考慮された適正な目標経路を生成する必要がある。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、作業地での作業面の傾斜が考慮された適正な目標経路を生成することができる作業車両用の目標経路生成システムを構築する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の目標経路生成システムにおいて、
作業地の所定区間ごとの地形情報を含む作業地情報を取得する作業地情報取得部と、
作業車両に装備された作業装置の作業幅に応じて並列に並ぶ複数の作業経路を含む自動走行用の目標経路を生成する目標経路生成部と、
前記地形情報のうちの車体ロール方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路の配置間隔を補正する目標経路補正部と、を有している点にある。
【0008】
本構成によれば、目標経路生成部が生成した目標経路に含まれている作業経路の配置間隔を、目標経路補正部が、作業地における所定区間(例えば5m四方)ごとの車体ロール方向の傾斜情報に基づいて、作業地における車体ロール方向の傾斜が考慮された適正な配置間隔に補正する。
これにより、補正後の目標経路に従って作業車両を自動走行させた場合には、隣接する作業経路間に未作業領域が形成される虞を回避することができる。
つまり、作業地における所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜が考慮された適正な目標経路を生成することができる作業車両用の目標経路生成システムを構築することができた。
【0009】
本発明の第2特徴構成は、
前記作業地情報取得部は、前記所定区間ごとの高度情報が内挿された三次元の地形情報を取得し、
前記目標経路補正部は、前記目標経路に前記所定区間ごとの高度情報を割り当てて、前記所定区間ごとの前記車体ロール方向の傾斜情報を取得する点にある。
【0010】
本構成によれば、作業地情報取得部が、例えば、国土地理院から提供されているメッシュ標高情報(5m四方又は10m四方の標高情報)、又は、ドローンなどを利用して計測した三次元地形情報、などの作業地の所定区間ごとの高度情報が内挿された三次元の地形情報を、CD-ROMなどの記録媒体やインターネットなどの通信網を介して取得すれば、目標経路補正部が、その所定区間ごとの高度情報を、目標経路生成部が生成した目標経路に割り当てることができ、高度情報が割り当てられた目標経路から作業地における所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜情報を取得することができる。
つまり、例えば、ロール角検出器が備えられた作業車両を、目標経路生成部が生成した目標経路に従って実際に走行させる手間を要することなく、作業地における所定区間ごとの傾斜情報を取得することができ、作業地における所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜が考慮された適正な目標経路を生成することができる。
【0011】
本発明の第3特徴構成は、
前記目標経路補正部は、前記目標経路と前記車体ロール方向の傾斜情報とに基づいて、前記作業車両を前記目標経路に従って模擬的に走行させた上で前記作業経路の配置間隔を補正する3次元シミュレータである点にある。
【0012】
本構成によれば、目標経路生成部が生成した目標経路に従って作業車両を走行させた状態を視認しながら、目標経路における作業経路の配置間隔を、作業地における車体ロール方向の傾斜が考慮された適正な配置間隔に補正することができる。
その結果、補正後の目標経路に従って作業車両を自動走行させた場合に、隣接する作業経路間に未作業領域が形成される虞をより確実に回避することができる。
【0013】
本発明の第4特徴構成は、
前記目標経路補正部は、前記車体ロール方向の傾斜情報に基づいて前記作業経路における前記所定区間ごとの平面視作業幅を求め、求めた前記平面視作業幅に基づいて、隣接する前記作業経路における前記所定区間ごとの前記平面視作業幅のオーバーラップ量が設定値以上になるように前記作業経路の配置間隔を補正する点にある。
【0014】
本構成によれば、作業地における所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜が大きくなるほど、作業装置の平面視作業幅が狭くなることから、目標経路補正部は、所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜情報に基づいて作業経路における所定区間ごとの平面視作業幅を求める。そして、求めた所定区間ごとの平面視作業幅に基づいて、隣接する作業経路間における平面視作業幅のオーバーラップ量が設定値以上になるように、目標経路における各作業経路の配置間隔を狭くする補正を行う。
これにより、目標経路生成部が生成した目標経路を、作業地における所定区間ごとの車体ロール方向の傾斜が考慮された適正な目標経路に補正することができ、この補正後の目標経路に従って作業車両を自動走行させた場合に、隣接する作業経路間における平面視作業幅のオーバーラップ量を設定値以上に確保することができる。
その結果、隣接する作業経路間において未作業領域が生じる虞をより確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行用の目標経路の一例を示す図
図3】作業車両用の目標経路生成システムの概略構成を示すブロック図
図4】作業車両に対する作業装置のオフセット量を最小に設定した状態での作業経路と作業幅などとの位置関係を示す平面図
図5】作業車両に対する作業装置のオフセット量を最大に設定した状態での作業経路と作業幅などとの位置関係を示す平面図
図6】作業装置の作業幅とロール角との関係を示す背面図
図7】補正前の作業経路の配置間隔と作業装置の作業幅との関係を示す概略平面図
図8】補正後の作業経路の配置間隔と作業装置の作業幅との関係を示す概略平面図
図9】補正後の作業経路の配置間隔と作業装置の作業幅との関係を示す概略背面図
図10】目標経路補正制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の目標経路生成システムを、作業車両の一例であるトラクタに適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本発明に係る作業車両用の目標経路生成システムは、トラクタ以外の、例えば乗用草刈機、コンバイン、乗用田植機、乗用播種機、除雪車、ホイールローダ、などの乗用作業車両、及び、無人草刈機などの無人作業車両に適用することができる。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に例示されたトラクタ1は、その後部に3点リンク機構2を介して、作業装置の一例であるオフセットモア3が昇降可能かつローリング可能に連結されている。これにより、このトラクタ1は草刈り仕様に構成されている。トラクタ1は、作業車両用の自動走行システムを使用することにより、図2に示す作業地Aなどにおいて自動走行することができる。
なお、トラクタ1の後部には、オフセットモア3に代えて、ロータリ耕耘装置、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、播種装置、散布装置、などの各種の作業装置を連結することができる。
【0018】
図3に示すように、自動走行システムには、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット4と、自動走行ユニット4と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末5とが含まれている。携帯通信端末5には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)50などが備えられている。
なお、携帯通信端末5には、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。又、無線通信には、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
【0019】
図1図3に示すように、トラクタ1には、駆動可能で操舵可能な左右の前輪10、駆動可能な左右の後輪11、搭乗式の運転部12を形成するキャビン13、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)14、エンジン14などを覆うボンネット15、エンジン14からの動力を変速する変速ユニット16、左右の前輪10を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット17、左右の後輪11を制動するブレーキユニット18、オフセットモア3への伝動を断続する電子油圧制御式の作業クラッチユニット19、オフセットモア3を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット20、オフセットモア3をロール方向に駆動する電子油圧制御式のローリングユニット21、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを検出する各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器22、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット23、などが備えられている。
なお、エンジン14には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。又、パワーステアリングユニット17には、操舵用の電動モータを有する電動式を採用してもよい。
【0020】
図1に示すように、運転部12には、手動操舵用のステアリングホイール25と、搭乗者用の座席26と、各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の液晶モニタ27とが備えられている。図示は省略するが、運転部12には、アクセルレバーや変速レバーなどの操作レバー類、及び、アクセルペダルやクラッチペダルなどの操作ペダル類、などが備えられている。
【0021】
図示は省略するが、変速ユニット16には、エンジン14からの動力を変速する電子制御式の無段変速装置、及び、無段変速装置による変速後の動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置、などが含まれている。無段変速装置には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。前後進切換装置には、前進動力断続用の油圧クラッチと、後進動力断続用の油圧クラッチと、それらに対するオイルの流れを制御する電磁バルブとが含まれている。
なお、無段変速装置には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などを採用してもよい。又、変速ユニット16には、無段変速装置の代わりに、複数の変速用の油圧クラッチとそれらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁バルブとを有する電子油圧制御式の有段変速装置が含まれていてもよい。
【0022】
図示は省略するが、ブレーキユニット18には、左右の後輪11を個別に制動する左右のブレーキ、運転部12に備えられた左右のブレーキペダルの踏み込み操作に連動して左右のブレーキを作動させるフットブレーキ系、運転部12に備えられたパーキングレバーの操作に連動して左右のブレーキを作動させるパーキングブレーキ系、及び、左右の前輪10の設定角度以上の操舵に連動して旋回内側のブレーキを作動させる旋回ブレーキ系、などが含まれている。
【0023】
車両状態検出機器22は、トラクタ1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。車両状態検出機器22には、トラクタ1の車速を検出する車速センサ、エンジン14の出力回転数を検出する回転センサ、アクセルレバーの操作位置を検出するアクセルセンサ、変速レバーの操作位置を検出する変速用の第1位置センサ、前後進切り換え用のリバーサレバーの操作位置を検出する前後進切り換え用の第2位置センサ、及び、前輪10の操舵角を検出する舵角センサ、などが含まれている。
【0024】
図3に示すように、車載制御ユニット23には、エンジン14に関する制御を行うエンジン制御部23A、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する制御を行う車速制御部23B、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部23C、オフセットモア3などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部23D、液晶モニタ27などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部23E、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部23F、及び、作業地内に区分けされた走行領域に応じて生成された自動走行用の目標経路P(図2参照)などを記憶する不揮発性の車載記憶部23G、などが含まれている。各制御部23A~23Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部23A~23Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
なお、各制御部23A~23Fの相互通信には、CAN以外の通信規格や次世代通信規格である、例えば、車載EthernetやCAN-FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
【0025】
エンジン制御部23Aは、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーの操作位置に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御、などを実行する。
【0026】
車速制御部23Bは、第1位置センサからの検出情報と車速センサからの検出情報などに基づいて、トラクタ1の車速が変速レバーの操作位置に応じた速度に変更されるように無段変速装置の作動を制御する車速制御、及び、第2位置センサからの検出情報に基づいて前後進切換装置の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御、などを実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
【0027】
作業装置制御部23Dには、PTOスイッチの操作などに基づいて作業クラッチユニット19の作動を制御する作業クラッチ制御、昇降スイッチの操作や高さ設定ダイヤルの設定値などに基づいて昇降駆動ユニット20の作動を制御する昇降制御、及び、ロール角設定ダイヤルの設定値などに基づいてローリングユニット21の作動を制御するローリング制御、などを実行する。PTOスイッチ、昇降スイッチ、高さ設定ダイヤル、及び、ロール角設定ダイヤルは、車両状態検出機器22に含まれている。
【0028】
図3に示すように、トラクタ1には、トラクタ1の現在位置(緯度、経度)や現在方位などを測定する測位ユニット30が備えられている。測位ユニット30は、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置31、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタ1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)32、などを有している。GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GNSSが採用されている。そのため、図1に示すように、作業地周辺の既知位置には、RTK-GNSSによる測位を可能にする基準局6が設置されている。
【0029】
図1図3に示すように、トラクタ1と基準局6とのそれぞれには、測位衛星7(図1参照)から送信された電波を受信するGNSSアンテナ33,60、及び、トラクタ1と基準局6との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール34,61、などが備えられている。これにより、測位ユニット30の衛星航法装置31は、トラクタ側のGNSSアンテナ33が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側のGNSSアンテナ60が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット30は、衛星航法装置31と慣性計測装置32とを有することにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0030】
このトラクタ1において、測位ユニット30の慣性計測装置32、GNSSアンテナ33、及び、通信モジュール34は、図1に示すアンテナユニット35に含まれている。アンテナユニット35は、キャビン13の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。そして、トラクタ1におけるGNSSアンテナ33の取り付け位置が、GNSSを利用してトラクタ1の現在位置などを測定するときの測位対象位置となっている。
【0031】
図3に示すように、携帯通信端末5には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット51、及び、トラクタ側の通信モジュール34との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール52、などが備えられている。端末制御ユニット51には、表示デバイス50などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部51A、オフセットモア3に関する情報を含む車体情報を取得する車体情報取得部51B、作業地Aの所定区間ごとの地形情報を含む作業地情報を取得する作業地情報取得部51C、自動走行用の目標経路Pを生成する目標経路生成部51D、及び、目標経路生成部51Dが生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部51E、などが含まれている。
【0032】
図2に示すように、目標経路Pには、並列に並ぶ複数の作業経路P1と各作業経路P1を走行順に一連に接続する複数の方向転換経路P2とが含まれている。端末記憶部51Eには、目標経路Pとともに、車体情報取得部51Bが取得した車体情報、及び、作業地情報取得部51Cが取得した作業地情報、などが記憶されている。車体情報には、トラクタ1の旋回半径、トラクタ1の左右中心に対するオフセットモア3における作業幅Wの左右中心のオフセット量D(図4~5参照)、オフセットモア3の作業幅W、及び、トラクタ1が隣接する作業経路P1を走行するときの作業幅Wのオーバーラップ量Wo(図4~5参照)、などの目標経路Pの生成に使用する各種の情報が含まれている。作業地情報には、作業地Aの形状や大きさなどを特定する上において、トラクタ1を作業地Aの外周縁に沿って手動走行させたときにGNSSを利用して取得した作業地Aにおける複数の形状特定地点(形状特定座標)となる4つの角部地点Ap1~Ap4、及び、それらの角部地点Ap1~Ap4を繋いで作業地Aの形状や大きさなどを特定する矩形状の形状特定線AL、などが含まれている。
【0033】
目標経路生成部51Dは、車体情報取得部51Bが取得した車体情報、及び、作業地情報取得部51Cが取得した作業地情報、などに基づいて目標経路Pを生成する。
例えば、図2に示すように、矩形状の作業地Aにおいて、自動走行の開始地点p1と終了地点p2とが設定され、トラクタ1の作業走行方向が作業地Aの長辺に沿う方向に設定されている場合は、目標経路生成部51Dは、先ず、作業地Aを、前述した4つの角部地点Ap1~Ap4と矩形状の形状特定線ALとに基づいて、作業地Aの外周縁に隣接するマージン領域A1と、マージン領域A1の内側に位置する走行領域A2とに区分けする。又、走行領域A2を、走行領域A2における長辺側の両端部に設定される非作業領域A2aと、それらの非作業領域A2aの間に設定される作業領域A2bとに区分けする。
次に、目標経路生成部51Dは、図4~5に示す前述したオフセット量D、作業幅W、オーバーラップ量Woなどに基づいて、作業領域A2bに、オフセットモア3の作業中心線Lが作業地Aの短辺に沿う方向に一定の配置間隔S1をあけて並列に配置されるように、所定の配置間隔S2,S3をあけて並列に配置される複数の作業経路P1を生成する。又、各非作業領域A2aに、複数の作業経路P1を走行順に接続する複数の方向転換経路P2を生成する。
これにより、目標経路生成部51Dは、作業地Aの形状や大きさ、及び、トラクタ1に装備される作業装置の作業幅Wや作業幅Wのオーバーラップ量Woなどを考慮した目標経路Pを生成する。
ちなみに、図4は、トラクタ1に対するオフセットモア3のオフセット量Dを最小に設定した状態を示し、図5は、トラクタ1に対するオフセットモア3のオフセット量Dを最大に設定した状態を示している。
【0034】
図2に示す作業地Aにおいて、マージン領域A1は、トラクタ1が走行領域A2の外周部を自動走行するときに、オフセットモア3などが作業地Aに隣接する柵などの他物に接触することを防止するために、作業地Aの外周縁と走行領域A2との間に確保された領域である。各非作業領域A2aは、トラクタ1が作業地Aの端部において現在の作業経路P1から次の作業経路P1に移動するための方向転換領域である。
【0035】
図2に示す目標経路Pにおいて、各作業経路P1の始端地点p3は、トラクタ1が草刈り作業を開始する作業開始地点であり、各作業経路P1の終端地点p4は、トラクタ1が草刈り作業を停止する作業停止地点である。各作業経路P1の終端地点p4のうちの方向転換経路P2との接続地点は、トラクタ1が次の作業経路P1に移動するための方向転換開始地点であり、各作業経路P1の始端地点p3のうちの方向転換経路P2との接続地点は、トラクタ1が次の作業経路P1への移動を終えた方向転換終了地点である。そして、方向転換経路P2は、トラクタ1が草刈り作業を停止する非作業経路である。
【0036】
なお、図2に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Dは、トラクタ1に装備される作業装置の種類や作業幅Wなどに応じて異なる車体情報、及び、作業地Aに応じて異なる作業地Aの形状や大きさなどの作業地情報、などに基づいて、それらを考慮した種々の目標経路Pを生成することができる。
特に、本実施形態に例示した目標経路Pおいては、トラクタ1に装備される作業装置として、トラクタ1の左右中心と作業幅Wの左右中心との間にオフセット量Dを有するオフセットモア3を例示したことにより、オフセットモア3の作業中心線Lの配置間隔S1と目標経路Pにおける作業経路P1の配置間隔S2,S3とが異なっているが、トラクタ1の左右中心と作業幅Wの左右中心とが一致する作業装置(例えばロータリ耕耘装置など)がトラクタ1に装備された場合は、トラクタ1の左右中心と作業幅Wの左右中心との間のオフセット量Dが零になることから、作業装置の作業中心線Lの配置間隔S1と目標経路Pにおける作業経路P1の配置間隔S2,S3とが同じになる。
【0037】
目標経路Pは、車体情報や作業地情報などに関連付けされた状態で端末記憶部51Eに記憶されており、携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示することができる。目標経路Pには、各並列経路P3におけるトラクタ1の目標車速、各旋回経路P2bにおけるトラクタ1の目標車速、各作業経路P1における前輪操舵角、及び、各旋回経路P2bにおける前輪操舵角、などが含まれている。
【0038】
端末制御ユニット51は、車載制御ユニット23からの送信要求指令に応じて、端末記憶部51Eに記憶されている作業地情報や目標経路Pなどを車載制御ユニット23に送信する。車載制御ユニット23は、受信した作業地情報や目標経路Pなどを車載記憶部23Gに記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット51が、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部51Eから車載制御ユニット23に一挙に送信するようにしてもよい。又、端末制御ユニット51が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階からトラクタ1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタ1の走行順位に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部51Eから車載制御ユニット23に逐次送信するようにしてもよい。
【0039】
車載制御ユニット23において、自動走行制御部23Fには、車両状態検出機器22に含まれた各種のセンサやスイッチなどからの検出情報が、車速制御部23Bやステアリング制御部23Cなどを介して入力されている。これにより、自動走行制御部23Fは、トラクタ1における各種の設定状態や各部の動作状態などを監視することができる。
【0040】
自動走行制御部23Fは、搭乗者や管理者などのユーザにより、各種の自動走行開始条件を満たすための手動操作が行われてトラクタ1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の開始が指令された場合に、測位ユニット30にてトラクタ1の現在位置や現在方位などを取得しながら目標経路Pに従ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0041】
自動走行制御部23Fは、自動走行制御の実行中に、例えば、ユーザにより携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の終了が指令された場合や、運転部12に搭乗しているユーザによってステアリングホイール25やアクセルペダルなどの手動操作具が操作された場合は、自動走行制御を終了するとともに走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。このように自動走行制御が終了された後に自動走行制御を再開させる場合は、先ず、ユーザが運転部12に乗り込んで、トラクタ1の走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。次に、各種の自動走行開始条件を満たすための手動操作を行ってから、トラクタ1の走行モードを手動走行モードから自動走行モードに切り換える。そして、この状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50を操作して自動走行の開始を指令することで、自動走行制御を再開させることができる。
【0042】
自動走行制御部23Fによる自動走行制御には、エンジン14に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部23Aに送信するエンジン用自動制御処理、トラクタ1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を車速制御部23Bに送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部23Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、オフセットモア3などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部23Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0043】
自動走行制御部23Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部23Aに送信する。エンジン制御部23Aは、自動走行制御部23Fから送信されたエンジン14に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数変更制御、などを実行する。
【0044】
自動走行制御部23Fは、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて無段変速装置の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタ1の進行方向などに基づいて前後進切換装置の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを車速制御部23Bに送信する。車速制御部23Bは、自動走行制御部23Fから送信された無段変速装置や前後進切換装置などに関する各種の制御指令に応じて、無段変速装置の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、無段変速装置を零速状態まで減速制御してトラクタ1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
【0045】
自動走行制御部23Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪10の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部23Cに送信する。ステアリング制御部23Cは、自動走行制御部23Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット17の作動を制御して左右の前輪10を操舵する自動操舵制御、及び、左右の前輪10が設定角度以上に操舵された場合に、ブレーキユニット18を作動させて旋回内側のブレーキを作動させる自動ブレーキ旋回制御、などを実行する。
【0046】
自動走行制御部23Fは、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた作業開始地点p3に基づいてオフセットモア3の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止地点p4に基づいてオフセットモア3の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部23Dに送信する。作業装置制御部23Dは、自動走行制御部23Fから送信されたオフセットモア3に関する各種の制御指令に応じて、作業クラッチユニット19と昇降駆動ユニット20の作動を制御して、オフセットモア3を作業高さまで下降させて作動させる自動作業開始制御、及び、オフセットモア3を停止させて非作業高さまで上昇させる自動作業停止制御、などを実行する。
【0047】
つまり、前述した自動走行ユニット4には、パワーステアリングユニット17、ブレーキユニット18、作業クラッチユニット19、昇降駆動ユニット20、ローリングユニット21、車両状態検出機器22、車載制御ユニット23、測位ユニット30、及び、通信モジュール34、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタ1を目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができる。
【0048】
ところで、目標経路生成部51Dが生成する目標経路Pは、前述したように、作業地Aの形状や大きさ、及び、トラクタ1に装備される作業装置の作業幅Wや作業幅Wのオーバーラップ量Woなどが考慮されている。そのため、目標経路Pが形成された段階においては、図4~5に示すように、隣接する作業経路P1の間に一定のオーバーラップ量Woが確保されるように、オフセットモア3の作業中心線Lの配置間隔S1と目標経路Pにおける作業経路P1の配置間隔S2,S3(図2参照)とが設定されている。
【0049】
しかしながら、目標経路生成部51Dが生成する目標経路Pは、衛星測位システムを利用して測定したトラクタ1の現在位置(緯度、経度)に基づいて二次元で生成されたものであり、作業地Aにおける作業面(地面)の傾斜は考慮されていない。そのため、実際にトラクタ1を目標経路Pに従って自動走行させた場合には、オフセットモア3が作業地Aにおける作業面の傾斜に応じてロール方向に揺動することにより、図6~7に示すように、そのときのオフセットモア3のロール角θが大きいほど、目標経路Pの生成時には一定とされていたオフセットモア3の作業幅Wに対して、オフセットモア3の平面視作業幅Wpが狭くなる。その結果、図4~5に示す目標経路Pの生成時に設定されていたオーバーラップ量Woを、実走行時には図7に示すように殆ど確保することができない不具合が生じることになる。
【0050】
そこで、作業地情報取得部51Cは、国土地理院から提供されているメッシュ標高情報(5m四方又は10m四方の標高情報)、又は、ドローンなどを利用して計測した三次元地形情報、などの作業地Aの所定区間(例えば5m四方)ごとの高度情報が内挿された三次元の地形情報を、CD-ROMなどの記録媒体やインターネットなどの通信網を介して取得するように構成されている。そして、図3に示すように、端末制御ユニット51には、作業地情報取得部51Cが取得した三次元の地形情報に基づいて目標経路Pを補正する目標経路補正制御を実行する目標経路補正部51Fが備えられている。
【0051】
以下、図10に示すフローチャートに基づいて、目標経路補正制御における目標経路補正部51Fの制御作動について説明する。
目標経路補正部51Fは、先ず、目標経路生成部51Dが生成した目標経路Pを取得する目標経路取得処理を行い(ステップ#1)、作業地情報取得部51Cが取得した三次元の地形情報を取得する三次元地形情報取得処理を行う(ステップ#2)。
次に、取得した三次元の地形情報に内挿されている作業地Aの所定区間ごとの高度情報を二次元の目標経路Pに割り当てる高度情報割り当て処理を行い(ステップ#3)、所定区間ごとの高度情報が割り当てられた目標経路Pから所定区間ごとの作業面における車体ロール方向の勾配(傾斜情報)を求める勾配算出処理を行う(ステップ#4)。
そして、求めた所定区間ごとの作業面における車体ロール方向の勾配に基づいて、所定区間ごとのオフセットモア3の平面視作業幅Wpを求める作業幅算出処理を行い(ステップ#5)、求めた所定区間ごとの平面視作業幅Wpに基づいて、前述したオーバーラップ量Woが設定値(例えば10cm)以上になるように、オフセットモア3の作業中心線Lの配置間隔S1(図2図4~5、図7~9参照)とともに目標経路Pにおける各作業経路P1の配置間隔S2,S3(図2図7~9参照)を狭くする経路間隔補正処理を行う(ステップ#6)。
【0052】
これにより、目標経路生成部51Dが生成した目標経路Pを、作業地Aにおける所定区間ごとの作業面の傾斜が考慮されて、図8~9に示すように、実走行時に設定値以上のオーバーラップ量Woを確保することができる適正な目標経路Pに補正することができる。その結果、図9に示すように、隣接する作業経路P1の間において未刈り領域が生じる虞を回避することができる。
【0053】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
なお、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0054】
(1)作業車両1の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両1は、左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、左右の前輪10及び左右の後輪11に代えて左右のクローラを備えるフルクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、左右の後輪11が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14の代わりに走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両1は、エンジン14と走行用の電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
【0055】
(2)車体情報取得部51B、作業地情報取得部51C、目標経路生成部51D、及び、目標経路補正部51Fは、車載制御ユニット23に備えられていてもよい。
【0056】
(3)目標経路補正部51Fは、トラクタ1の自動走行ユニット4及び携帯通信端末5とインターネットなどの通信網を介して通信可能に接続された例えば管理センタの管理用コンピュータなどに備えられていてもよい。
この場合、携帯通信端末5の目標経路生成部51Dが生成した目標経路P、及び、目標経路Pの生成に使用した車体情報や作業地情報などを管理用コンピュータなどにバックアップしたときに、処理能力の高い管理用コンピュータなどにおいて、目標経路生成部51Dが生成した目標経路Pを目標経路補正部51Fによって補正することができる。
【0057】
(4)車体情報取得部51B、作業地情報取得部51C、目標経路生成部51D、及び、目標経路補正部51Fは、トラクタ1の自動走行ユニット4及び携帯通信端末5とインターネットなどの通信網を介して通信可能に接続された管理センタの管理用コンピュータなどに備えられていてもよい。
この場合、処理能力の高い管理用コンピュータなどにおいて、目標経路Pの生成から目標経路Pの補正までを一連で行うことができる。
【0058】
(5)目標経路補正部51Fは、例えば、前述した車体情報と目標経路Pと車体ロール方向の傾斜情報とに基づいて、作業車両1を目標経路Pに従って模擬的に走行させた上で、実走行時に設定値以上のオーバーラップ量Woを確保することができるように、目標経路Pにおける作業経路P1の配置間隔S2,S3を補正する3次元シミュレータであってもよい。
このように、目標経路補正部51Fとして3次元シミュレータを採用すれば、補正後の目標経路に従って作業車両を自動走行させた場合に、隣接する作業経路間に未作業領域が形成される虞をより確実に回避することができる。
又、この3次元シミュレータに、車体情報取得部51B、作業地情報取得部51C、及び、目標経路生成部51Dが備えられて、3次元シミュレータが、目標経路Pの生成から目標経路Pの補正までを一連で行うように構成されてもよい。
【0059】
(6)目標経路補正部51Fは、例えば、実走行時に、作業装置3のロール角を検出するロール角検出器からの検出情報を取得し、取得した作業装置3のロール角に基づいて、補正後の目標経路Pを更に補正するように構成されていてもよい。
その一例として、目標経路補正部51Fは、先ず、作業経路P1での実走行中に所定区間ごとの作業装置3のロール角を取得する。次に、取得した所定区間ごとの作業装置3のロール角と、実走行前の目標経路Pの補正段階で求めた同じ作業経路P1での所定区間ごとの作業面における車体ロール方向の勾配(傾斜情報)とを比較する。そして、その差が、実走行前の目標経路Pの補正段階で求めた次の作業経路P1での所定区間ごとの作業面における車体ロール方向の勾配(傾斜情報)との関係から、実走行中の作業経路P1と次の作業経路P1との間に設定値以上のオーバーラップ量Woを確保することが可能な値か否かを判定する。この判定において、設定値以上のオーバーラップ量Woを確保することが不可能と判定した場合に、実走行中の作業経路P1と次の作業経路P1との間隔を、設定値以上のオーバーラップ量Woを確保することが可能な狭い間隔に補正する。
このような補正を行うことにより、実走行前に補正した目標経路Pを、実際の作業地Aにおける所定区間ごとの作業面の傾斜が考慮されたより適正な目標経路Pに補正することができる。その結果、隣接する作業経路P1の間において未作業領域が生じる虞を回避することができる。
【0060】
(7)作業地情報取得部51Cが取得する作業地Aの所定区間ごとの地形情報(車体ロール方向の傾斜情報)は、例えば、作業車両1が以前に同じ作業地Aにおいて同じ目標経路Pに従って走行したときに、作業装置3に備えられたロール角検出器が検出した作業装置3のロール角に基づくものであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 作業車両
3 作業装置
51C 作業地情報取得部
51D 目標経路生成部
51F 目標経路補正部
A 作業地
P 目標経路
P1 作業経路
S2 作業経路の配置間隔
S3 作業経路の配置間隔
W 作業幅
Wo オーバーラップ量
Wp 平面視作業幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10