(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240807BHJP
【FI】
G05F1/56 310C
(21)【出願番号】P 2019139655
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2022-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】牧 慎一朗
(72)【発明者】
【氏名】横山 勝浩
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-075882(JP,A)
【文献】特開2017-134557(JP,A)
【文献】特開2006-260130(JP,A)
【文献】特開2018-133910(JP,A)
【文献】特開2003-005845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された電圧制御用トランジスタと、
分圧回路によって前記出力端子の出力電圧が分圧された出力のフィードバック電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを制御する制御回路と、前記電圧入力端子に入力された直流電圧に基づいて前記制御回路の動作電圧を生成するバイアス回路と、
前記出力電圧を制御するために外部から供給される出力制御信号が入力される第1外部端子及び第2外部端子と、を備えた電源制御用半導体装置であって、
前記制御回路は、
前記フィードバック電圧と所定の基準電圧との電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプと、
ロジック回路と、を備え、
前記ロジック回路は、
前記第1外部端子及び前記第2外部端子よりハイレベルまたはローレベルである第1外部入力信号及び第2外部入力信号が入力され、
前記第1外部入力信号及び第2外部入力信号によってオン、オフされる2以上のトランジスタおよびそれぞれのトランジスタと直列に接続された2以上の電流源を備え、
前記フィードバック電圧を前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号に応じて変位させるための第1制御信号、第2制御信号及び第3制御信号を生成して出力し、
前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号の4つの組み合わせのうちいずれか1つの組み合わせに応じて前記バイアス回路を非動作状態にさせる信号を生成して出力
し、前記バイアス回路が前記ロジック回路からの信号によって非動作状態にされると、前記2以上の電流源の電流が遮断されるように構成されていることを特徴とする電源制御用半導体装置。
【請求項2】
前記分圧回路は、前記出力端子と接地点との間に直列に接続された第1抵抗素子および抵抗回路からなり、
前記抵抗回路は、直列形態のスイッチング素子および抵抗素子の列を複数個有し、
複数個の前記スイッチング素子が前記第1制御信号、第2制御信号及び第3制御信号によってオンまたはオフ状態にされるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電源制御用半導体装置。
【請求項3】
前記分圧回路は、前記出力端子と接地点との間に直列に接続された第1抵抗素子および抵抗回路からなり、
前記抵抗回路は、
直列形態の複数個の抵抗素子と、
前記複数個の抵抗素子の接続ノードと接地点との間に接続された複数個のスイッチング素子と、を備え、
前記複数個の抵抗素子は、それぞれ所定の抵抗値を有する単位抵抗が直列接続された直列抵抗回路によって構成され、
前記複数個のスイッチング素子が前記第1制御信号、第2制御信号及び第3制御信号によってオンまたはオフ状態にされるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電源制御用半導体装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の電源制御用半導体装置と、
前記第1外部端子及び前記第2外部端子へ入力する前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号を出力する制御装置と、を備え、
前記制御装置から前記第1外部端子及び前記第2外部端子へ入力される前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号に応じて出力電圧が変化されるように構成されていることを特徴とする出力電圧可変電源装置。
【請求項5】
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された電圧制御用トランジスタと、
分圧回路によって前記出力端子の出力電圧が分圧された出力のフィードバック電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを制御する制御回路と、前記電圧入力端子に入力された直流電圧に基づいて前記制御回路の動作電圧を生成するバイアス回路と、
出力電圧を制御するために外部から供給される出力制御信号が入力される複数の外部端子と、を備えた電源制御用半導体装置であって、
前記制御回路は、
前記フィードバック電圧と所定の基準電圧との電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプと、
ロジック回路と、を備え、
前記ロジック回路は、前記外部端子の数がn(nは3以上の整数)である場合に、
前記外部端子よりハイレベルまたはローレベルであるn個の外部入力信号が入力され、
前記n個の外部入力信号によってオン、オフされるn個以上のトランジスタおよびそれぞれのトランジスタと直列に接続されたn個以上の電流源を備え、
前記フィードバック電圧を前記n個の外部入力信号に応じて変位させるための(2のn乗-1)個の制御信号を生成して出力し、
前記n個の外部入力信号の2のn乗個の組み合わせのうちいずれか1つの組み合わせに応じて前記バイアス回路を非動作状態にさせる信号を生成して出力し、前記バイアス回路が前記ロジック回路からの信号によって非動作状態にされると、前記n個以上の電流源の電流が遮断されるように構成されていることを特徴とする電源制御用半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置に関し、特に出力電圧を多段階に変化させることが可能なシリーズレギュレータ方式の電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置に利用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
直流電圧入力端子と出力端子との間に設けられたトランジスタを制御して所望の電位の直流電圧を出力する電源装置としてシリーズレギュレータ(以下、レギュレータと略す)がある。かかるレギュレータの用途として、例えば電子機器に実装される冷却用の送風装置(ファン)や照明装置などに直流電源を供給するための定電圧電源装置がある。近年、パソコンなどの電子機器の高速化、高機能化に伴い冷却用ファンの需要が増加している。
【0003】
送風装置(ファン)を備えた電子機器においては、ファンを回転させるモータを駆動する電圧を段階的に変化させることで、送風量すなわち冷却性能を変化させることができる機能を付加したいことがあるため、レギュレータに対して出力電圧を段階的に変化させる機能を有することが求められている。
従来、出力電圧を変化させることができるようにしたレギュレータに関する発明としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-320110号公報
【文献】特開2017-134557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているレギュレータは、3種類の異なるレベルの出力電圧をコントロール電圧の入力レベルに応じて選択して出力可能に構成したものである。
この発明のレギュレータは、出力電圧を段階的に切り替えることはできるものの、外部から任意の制御電圧を入力して出力の切替えを行う構成であるため、入力制御電圧を生成する装置として汎用のマイクロコンピュータ(以下、マイコンと称する)を用いる場合、D/A変換回路を内蔵した高機能のマイコンが必要になるためコストアップを招くという課題がある。
【0006】
ここで、D/A変換回路を内蔵しないマイコンによって出力電圧を段階的に切り替える方式として、複数ビットの制御信号を、レギュレータを構成する電源制御用半導体装置に入力して切り替えることが考えられる。ただし、この場合、電源制御用半導体装置に複数本の制御入力端子が必要となり、チップサイズの増大を招くという課題が生じる。
一方、電源装置においては、待機時における消費電流の低減またはほぼゼロにするため、レギュレータを構成する電源制御用半導体装置に、外部からの制御信号によってオン・オフさせる機能を持たせたいという要求がある。この場合、外部からオン・オフ制御信号を入力するための端子を電源制御用半導体装置に別途設ける必要がある。
【0007】
なお、オン・オフ制御信号を入力するための端子を設けたレギュレータ用半導体集積回路としては、例えば特許文献2に記載されているものがある。特許文献2のレギュレータにおいては、誤差アンプや基準電圧回路などの内部回路へ動作電圧を供給するバイアス回路を、外部からのオン・オフ制御信号によってオフさせることで、レギュレータの動作を停止させるように構成されている。
しかしながら、上記のように、複数ビットの制御信号によって出力電圧を切り替え可能にするとともに、外部からのオン・オフ制御信号によって電源制御用半導体装置に外部からオン・オフ可能にするために、それぞれの信号を入力ための端子を別々に設けると、外部端子数が多くなり、チップサイズの増大ひいてはパッケージの大型化してしまうという課題がある。
【0008】
この発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、少ない外部端子数で、外部からの制御信号によって出力電圧を段階的に変化させることができるとともにオン・オフさせることができる電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、D/A変換回路を内蔵しないマイクロコンピュータを用いて簡単に出力電圧を制御することができる電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、
直流電圧が入力される電圧入力端子と出力端子との間に接続された電圧制御用トランジスタと、
分圧回路によって前記出力端子の出力電圧が分圧された出力のフィードバック電圧に応じて前記電圧制御用トランジスタを制御する制御回路と、前記電圧入力端子に入力された直流電圧に基づいて前記制御回路の動作電圧を生成するバイアス回路と、
前記出力電圧を制御するために外部から供給される出力制御信号が入力される第1外部端子及び第2外部端子と、を備えた電源制御用半導体装置であって、
前記制御回路は、
前記フィードバック電圧と所定の基準電圧との電位差に応じた電圧を出力する誤差アンプと、
ロジック回路と、を備え、
前記ロジック回路は、
前記第1外部端子及び前記第2外部端子よりハイレベルまたはローレベルである第1外部入力信号及び第2外部入力信号が入力され、
前記第1外部入力信号及び第2外部入力信号によってオン、オフされる2以上のトランジスタおよびそれぞれのトランジスタと直列に接続された2以上の電流源を備え、
前記フィードバック電圧を前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号に応じて変位させるための第1制御信号、第2制御信号及び第3制御信号を生成して出力し、
前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号の4つの組み合わせのうちいずれか1つの組み合わせに応じて前記バイアス回路を非動作状態にさせる信号を生成して出力し、前記バイアス回路が前記ロジック回路からの信号によって非動作状態にされると、前記2以上の電流源の電流が遮断されるように構成したものである。
【0010】
上記のような構成を有する電源制御用半導体装置によれば、外部からの出力制御信号によって出力電圧を段階的に変化させることできる。また、ロジック回路が、2以上の出力制御信号のいずれか1つの組み合わせに応じて、制御回路の動作電圧を生成するバイアス回路を非動作状態にさせるため、オン、オフのための専用の外部端子(ICのパッドを含む)を設けることなく、内部回路をオン・オフさせることができる。そのため、少ない外部端子数で、出力電圧を段階的に変化させることができ、パッケージの小型化を図ることができるとともに、待機時に内部回路をオフさせて消費電力を低減させることができる。さらに、D/A変換回路を内蔵しない安価なマイコンを電源制御装置として使用し、そのマイコンのI/O機能(汎用ポート)によって出力電圧の切替えおよび電源のオン、オフ制御が可能となる。
さらに、簡単な論理機能を有するロジック回路の出力による制御によってバイアス回路をオフさせて、電源制御用半導体装置の動作を停止させるとともにロジック回路の電流源の電流を遮断させることで、低消費電力化を図ることができる。
【0011】
ここで、前記分圧回路は、前記出力端子と接地点との間に直列に接続された第1抵抗素子および抵抗回路からなり、
前記抵抗回路は、直列形態のスイッチング素子および抵抗素子を有し、
前記スイッチング素子が前記ロジック回路からの信号もしくは電圧によってオンまたはオフ状態されるように構成する。
なお、前記抵抗回路は、直列形態のスイッチング素子および抵抗素子の列を複数個有し、複数個の前記スイッチング素子が前記ロジック回路からの信号もしくは電圧によってオンまたはオフ状態されるように構成しても良い。
かかる構成によれば、外部から入力する出力制御信号が例えば2ビットであれば3段階の出力電圧を、また出力制御信号が例えば3ビットであれば7段階の出力電圧を、それぞれの電圧値を自由に設定して出力させることができる。
【0012】
あるいは、前記分圧回路は、前記出力端子と接地点との間に直列に接続された第1抵抗素子および抵抗回路からなり、
前記抵抗回路は、直列形態の複数個の抵抗素子と、
前記複数個の抵抗素子の接続ノードと接地点との間に接続されたスイッチング素子と、を備え、
前記複数個の抵抗素子は、それぞれ所定の抵抗値を有する単位抵抗が直列接続された直列抵抗回路によって構成され、
前記スイッチング素子が前記ロジック回路からの信号もしくは電圧によってオンまたはオフ状態されるように構成する。
なお、前記抵抗回路は、前記複数個の抵抗素子の接続ノードと接地点との間に接続された複数個のスイッチング素子を備え、前記複数個のスイッチング素子が前記ロジック回路からの信号もしくは電圧によってオンまたはオフ状態されるように構成しても良い。
かかる構成によれば、所定の抵抗値を有する単位抵抗が直列接続された直列抵抗回路を、分圧用の抵抗素子として使用する場合に、使用する単位抵抗の数を減らし、抵抗回路の専有面積を低減することができる。
【0014】
また、望ましくは、上記のような構成を有する電源制御用半導体装置と、前記第1外部端子及び前記第2外部端子へ入力する前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号を出力する制御装置と、を備え、
前記制御装置から前記第1外部端子及び前記第2外部端子へ入力される前記第1外部入力信号及び前記第2外部入力信号に応じて出力電圧が変化されるように出力電圧可変電源装置を構成する。
かかる構成を有する出力電圧可変電源装置によれば、外部からの複数の制御信号の入力で出力電圧を段階的に変化させるとともに、電源制御用半導体装置の動作を停止させることができ、マイコンのI/O機能による出力電圧の可変制御および電源装置の停止制御が可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置によれば、少ない外部端子数で、外部からの制御信号によって出力電圧を段階的に変化させることができるとともに外部からの制御信号によってオン・オフさせることができる。また、本発明によれば、D/A変換回路を内蔵しない安価なマイクロコンピュータを用いて簡単に出力電圧およびオン、オフを制御することができる電源制御用半導体装置および出力電圧可変電源装置を実現できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したシリーズレギュレータ方式の出力電圧可変電源装置の一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】実施形態のレギュレータにおける制御信号Va,Vbと出力電圧Voutとの関係を示す波形図である。
【
図3】(A)は実施形態のレギュレータICを構成するロジック回路の一例を示す論理構成図、(B)はロジック回路(G1を除く)の具体例を示す回路図である。
【
図4】ロジック回路を構成する論理ゲート(NORゲートG1)およびバイアス回路の具体例を示す回路図である。
【
図5】実施形態のレギュレータとこれを制御するマイコンとからなる電源システムの構成例を示すブロック図である。
【
図6】実施形態のレギュレータICの変形例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明を適用した出力電圧可変電源装置としてのシリーズレギュレータの一実施形態を示す。なお、
図1において、一点鎖線で囲まれた部分は、単結晶シリコンのような半導体チップ上に半導体集積回路(レギュレータIC)10として形成され、該レギュレータIC10の出力端子OUTにコンデンサCoが接続されることで、図示しないファンモータなどの負荷へ安定な直流電圧を出力する出力電圧可変電源装置として機能する。
【0018】
また、以下の説明では、レギュレータIC10を構成するトランジスタとしてバイポーラ・トランジスタを使用した例を示すが、MOSトランジスタを使用して構成することも可能である。
図1に示すように、本実施形態の出力電圧可変電源装置においては、レギュレータIC10の直流入力電圧Vinが印加される電圧入力端子INと出力端子OUTとの間に、電圧制御用のPNPバイポーラ・トランジスタQ1が接続され、出力端子OUTと接地電位GNDが印加されるグランドライン(接地点)との間には、出力電圧Voutを分圧する分圧回路12を構成する抵抗R1,R2が直列に接続されている。
【0019】
この分圧回路12を構成する抵抗R1とR2との接続ノードN1の電圧が、上記電圧制御用のトランジスタQ1のゲート端子を制御する誤差増幅回路としての誤差アンプ11の非反転入力端子にフィードバック電圧VFBとして入力されている。また、誤差アンプ11の反転入力端子には、入力電圧Vinに基づいて所定の基準電圧Vrefを生成する基準電圧回路13からの基準電圧Vrefが印加されており、誤差アンプ11は、出力のフィードバック電圧VFBと基準電圧Vrefとの電位差に応じた電圧を生成して電圧制御用のトランジスタQ1のゲート端子に供給してQ1を制御し、出力電圧Voutが所望の電位になるように制御する。
【0020】
また、本実施形態のレギュレータIC10においては、上記抵抗R1とR2との接続ノードN1と接地点との間に、抵抗R3とスイッチ素子SW1とが接続された直列回路である抵抗R3-スイッチ素子SW1、抵抗R4とスイッチ素子SW2とが接続された直列回路である抵抗R4-スイッチ素子SW2、抵抗R5とスイッチ素子SW3とが接続された直列回路である抵抗R5-スイッチ素子SW3が並列に接続されている。ここで、抵抗R3,R4,R5の抵抗値はそれぞれ異なる値に設定されている。さらに、レギュレータIC10には、図示しないマイコン等から供給される制御信号Va,Vbが入力される外部端子としての制御入力端子Pa,Pbが設けられているとともに、該制御入力端子Pa,Pbの入力制御信号Va,Vbに基づいて上記スイッチ素子SW1~SW3を制御する信号OCS1~OCS3を生成するロジック回路14が設けられている。なお、抵抗R2は省略しても良い。
【0021】
さらに、本実施形態のレギュレータIC10には、誤差アンプ11と基準電圧回路13の動作電流を生成するバイアス回路15が設けられている。ロジック回路14は、制御入力端子Pa,Pbの入力制御信号Va,Vbの論理和をとった信号で上記バイアス回路15をオン、オフ制御するための信号ON/OFFを生成する機能を備えており、入力制御信号VaとVbが共にローレベルのときに出力信号ON/OFFがハイレベルとなって、バイアス回路15をオフさせるように動作する。なお、ここでは、VaまたはVbのいずれかがハイレベルのときにロジック回路14の出力信号ON/OFFがローレベルとなり、バイアス回路15はオンとなるように構成されていることとする。
そして、ロジック回路14の出力信号ON/OFFによってバイアス回路15がオフされると、誤差アンプ11や基準電圧回路13、ロジック回路14への動作電流の供給を停止し、これらの内部回路の動作を停止させるように構成されている。
【0022】
また、本実施形態のレギュレータIC10においては、ロジック回路14から出力される制御信号OCS1~OCS3によって、スイッチ素子SW1~SW3のいずれかが選択的にオンされると、分圧回路12を構成する抵抗R2と並列に抵抗R3またはR4、R5のいずれかが接続され、抵抗R2に流れていた電流の一部が抵抗R3またはR4、R5が流れる。そのため、分圧回路12による出力電圧Voutの分圧比が変化する。それにより、電圧制御用トランジスタQ1のベース電圧を制御し、出力電流を変化させる。
【0023】
その結果、レギュレータIC10の出力端子OUTから出力される出力電圧Voutは、制御入力端子Pa,Pbの入力制御信号Va,Vbに応じて3段階に変化されることとなる。なお、スイッチ素子SW1~SW3のオン、オフで上記分圧回路12の分圧比が変化して、誤差アンプ11のイマジナリーショートの作用で速やかにノードN1の電位が基準電圧Vrefと同一の電位となるように電圧制御用トランジスタQ1が制御される。
【0024】
次の表1に入力制御信号Va,Vbと出力電圧Voutのレベルおよびバイアス回路15のオフモードとの関係を表す真理値表が、
図2にはその波形図の例が示されている。
【表1】
図2に示すように、本実施形態のレギュレータにおいては、入力制御信号Va,Vbのレベルの組み合わせに応じて、出力電圧VoutがV1,V2,V3(V1<V2<V3)の3段階のレベルに変化する。
【0025】
なお、
図1の回路においては、抵抗R2と並列に接続された3組の抵抗R3-スイッチ素子SW1列、抵抗R4-スイッチ素子SW2列、抵抗R5-スイッチ素子SW3列を設けているが、2組の抵抗-スイッチ素子列を設けて、ロジック回路14から出力される制御信号OCS1~OCS3によって、SW1のみオン、SW2のみオン、SW1及びSW2オン、の3つの状態に制御することによっても出力電圧Voutを3段階に変化させることができる。ただし、そのようにした場合、SW1及びSW2がオンのときの出力電圧Voutは、2つの抵抗R2とR3の抵抗値に依存し、自由に設定することができないが、上記実施例のように、3組の抵抗-スイッチ素子列を設けることで、3段階の電圧をすべて自由に設定することができるという利点がある。
【0026】
図3(A)には、表1に従ってスイッチ素子SW1~SW3の制御信号OCS1~OCS3を生成するロジック回路14の論理構成図、
図3(B)にはロジック回路14のうちNORゲートG1を除く部分の具体的な回路例が示されている。
図3(A)に示すように、ロジック回路14は、入力制御信号Va,Vbの論理和をとってバイアス回路15をオン、オフする信号ON/OFFを生成するNORゲートG1と、入力制御信号Va,Vbを反転して信号制御信号OCS1とOCS2を生成する2個のインバータ回路INV1,INV2と、インバータ回路INV1,INV2の出力を反転するインバータ回路INV3,INV4と、INV3,INV4の出力を入力とするANDゲートG2とから構成されている。
【0027】
図3(B)に示すように、インバータ回路INV1,INV2は、入力制御信号Va,Vbを分圧する2個の直列抵抗と、分圧された電圧をベース端子に受けるバイポーラ・トランジスタQ11,Q12と、該トランジスタQ11,Q12と直列に接続された定電流源CC1,CC2とから構成されている。また、インバータ回路INV3,INV4は、上記トランジスタQ11,Q12のコレクタ電圧をベース端子に受けるバイポーラ・トランジスタQ13,Q14と、該トランジスタQ11,Q12と直列に接続された定電流源CC3,CC4とから構成されている。
【0028】
また、ANDゲートG2は、上記トランジスタQ13,Q14のコレクタ電圧をベース端子に受ける直列形態のバイポーラ・トランジスタQ15,Q16と、該トランジスタQ16のコレクタ電圧をベース端子に受けるバイポーラ・トランジスタQ17と、トランジスタQ16,Q17と直列に接続された定電流源CC5,CC6とから構成されている。定電流源CC1~CC6は、バイアス回路15により一次側に電流が流されるカレントミラー回路の二次側トランジスタにより構成することかできる。
【0029】
図4には、本実施形態のレギュレータIC10におけるバイアス回路15と論理ゲート(NORゲート)G1の具体的な回路例が示されている。
図4に示されているように、論理ゲートG1は、制御入力端子Paとグランド端子GNDとの間に直列に接続された抵抗R11,R12と、抵抗R11,R12の接続ノードにベース端子が接続されたNPNバイポーラ・トランジスタQ2と、制御入力端子Pbとグランド端子GNDとの間に直列に接続された抵抗R13,R14と、抵抗R13,R14の接続ノードにベース端子が接続されたNPNバイポーラ・トランジスタQ3とから構成されており、トランジスタQ2とQ3のコレクタ端子同士が結合され、その結合点が出力ノードN2とされている。
【0030】
一方、バイアス回路15は、電圧入力端子INと論理ゲートG1の出力ノードN2との間に、直列に接続された抵抗R15及びNPNバイポーラ・トランジスタQ4と、トランジスタQ4のベース端子とエミッタ端子間に接続された抵抗R16と、トランジスタQ4のコレクタ端子にベース端子が接続されQ4のベース端子にエミッタ端子が接続されたNPNバイポーラ・トランジスタQ5とから構成されている。
【0031】
トランジスタQ5のコレクタ端子には、図示しないカレントミラー回路のような電流源に接続されており、Q4のベース・エミッタ間電圧をVF、抵抗R15の抵抗値をRとおくと、論理ゲートG1のトランジスタQ2またはQ3のいずれかがオンされると、論理ゲートG1の出力であるノードN2の電位はローレベルとなり、Q4にコレクタ電流が流され、Q5のコレクタ端子に接続されている電流源(カレントミラー回路の一次側トランジスタ)から、I=VF/Rで表わされる大きさの電流Iを引くことで、内部回路を動作状態にすることができる。そして、論理ゲートG1のトランジスタQ2とQ3が共にオフにされると、論理ゲートG1の出力であるノードN2の電位はハイレベルとなり、トランジスタQ4に電流が流れなくなって、Q5のコレクタ端子に接続されている電流源から引く電流Iが0となって、内部回路の動作が停止される。
【0032】
次に、制御入力端子Pa,Pbを備えた上述のレギュレータIC10と汎用のマイコンとを使用した出力電圧可変電源装置の構成例について、
図5を用いて説明する。
上記実施形態のレギュレータIC10と汎用のマイコンとを使用して出力電圧可変電源装置を構成する場合、
図5に示すように、マイコン20が備えているI/Oポートから制御信号Va,Vbを出力して、レギュレータIC10の端子Pa,Pbへ入力させるように接続を行う。このような接続を有する電源装置を構成することで、
図2に示すように、制御入力端子Pa,Pbへ入力される制御信号Va,Vbに応じて出力電圧Voutを3段階に変化させることができるとともに、レギュレータIC10の動作を停止させることができる出力電圧可変電源装置を実現することができる。
【0033】
上記のように、本実施形態のレギュレータIC10によれば、特許文献2に記載されているレギュレータICのように、ICにその動作を停止させるための外部端子を設けることなく、ICの動作を停止させることができる。また、出力電圧Voutをリニアに変化させることができるレギュレータICは、外部から出力制御端子へ制御電圧を入力する必要があり、そのような制御電圧を生成するには汎用のマイコンとしてD/A変換回路を内蔵しているものを使用しなくてはならないが、上記実施形態のレギュレータIC10のように出力電圧Voutを3段階に変化させる場合には、汎用ポートを用いて制御信号を出力できるため、汎用のマイコンとしてD/A変換回路を内蔵していない安価なマイコンを使用することができる。
【0034】
なお、上記実施例のレギュレータIC10においては、2個の制御入力端子Pa,Pbを設けて出力電圧Voutを3段階に変化させることができるように構成しているが、制御入力端子の数は2個に限定されず、3個あるいは4個以上設けるようにしてもよい。そして、例えば3個の制御入力端子を設けた場合、それらの入力端子に入力される3ビットの制御信号がすべてローレベルのときにレギュレータICの動作が停止するモードへ移行し、それ以外の組み合わせに応じて出力電圧Voutを7段階に変化させるように、ロジック回路14と出力電圧Voutの分圧回路12を構成することで、D/A変換回路を内蔵していないマイコンを用いて制御可能な出力電圧可変電源装置を実現することができる。
【0035】
(変形例)
次に、前記実施形態のレギュレータIC10の変形例について、
図6を用いて説明する。
図6に示す変形例は、前記実施形態のレギュレータIC10の出力端子OUTと接地点との間に接続されている分圧回路12を構成する抵抗R1と直列に抵抗R6,R7,R8を設けるとともに、抵抗R6とR7との接続ノードN3と接地点との間にスイッチ素子SW1を、また抵抗R7とR8との接続ノードN4と接地点との間にスイッチ素子SW2を設けている。また、制御入力端子PaとPbへ入力された制御信号VaとVbを反転するインバータINV1,INV2の出力信号OCS1,OCS2によってスイッチ素子SW1とSW2をオン、オフ制御するように構成したものである。
【0036】
従って、制御信号Va,Vbにより、SW1のみをオン、SW2のみをオン、またはSW1およびSW2をオフの状態に制御することによって、出力電圧Voutを3段階(V1,V2,V3)に変化させることができる。具体的には、SW1のみをオンさせたときの出力電圧V1は、V1=(R1+R6)*Vref/R6で、SW2のみをオンさせたときの出力電圧V2は、V2=(R1+(R6+R7))*Vref/(R6+R7)で、SW1およびSW2をオフさせたときの出力電圧V3は、V3=(R1+(R6+R7+R8))*Vref/(R6+R7+R8)でそれぞれ表わされる。
【0037】
さらに、
図6の変形例のレギュレータICにおいては、抵抗R6,R7,R8はそれぞれ、例えば10kΩのような抵抗値を有する単位抵抗を複数個直列に接続した直列抵抗回路によって構成されている。具体的には、例えば抵抗R6とR37の抵抗値を50kΩに設定したい場合にはそれぞれ5個の単位抵抗を直列に接続し、抵抗R8の抵抗値を100kΩに設定したい場合には10個の単位抵抗を直列に接続する。つまり、合計で20個の単位抵抗が必要である。
【0038】
これに対し、
図1の実施形態の分圧回路12における抵抗R2を省略したものにおいて、抵抗R3,R4,R5の抵抗値として50kΩ,100kΩ、200kΩを選択して、出力電圧Voutを上記変形例と同様に3段階(V1,V2,V3)に変化させるとともに、10kΩのような抵抗値を有する単位抵抗を使用して抵抗R3,R4,R5を構成した場合、R3に5個、R4に10個、R5に20個の計35個の単位抵抗が必要である。
従って、本変形例は、分圧回路12を構成する抵抗として単位抵抗を複数個直列に接続した直列抵抗回路を使用する場合に、直列抵抗回路を構成する単位抵抗の数すなわち抵抗の専有面積を大幅(約半分)に減らすことができるという利点がある。
【0039】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態においては、バイアス回路15として
図4に示されているような回路を使用しているが、特許文献2に開示されているような他の構成の回路を使用するようにしても良い。
また、前記実施形態においては、本発明をシリーズレギュレータ方式の出力電圧可変電源装置に適用した場合について説明したが、本発明はシャントレギュレータ方式の電源装置にも利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10……レギュレータIC、11……誤差アンプ、12……分圧回路、13……基準電圧回路、14……ロジック回路、15……バイアス回路、G1……論理ゲート、Q1……電圧制御用トランジスタ、Pa,Pb……制御入力端子