(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】新規の製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/28 20060101AFI20240807BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240807BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240807BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20240807BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240807BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240807BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240807BHJP
C07K 14/62 20060101ALN20240807BHJP
C12N 15/17 20060101ALN20240807BHJP
【FI】
A61K38/28
A61K9/08
A61K9/14
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/12
A61K47/14
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/34
A61P3/10
C07K14/62 ZNA
C12N15/17
(21)【出願番号】P 2019560362
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(86)【国際出願番号】 GB2018051178
(87)【国際公開番号】W WO2018203060
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519111280
【氏名又は名称】アレコル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジェゼク
(72)【発明者】
【氏名】デビッド ジェリング
(72)【発明者】
【氏名】サラ ハウエル
(72)【発明者】
【氏名】レオン ザクルゼウスキ
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】光本 美奈子
【審判官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0273022(US,A1)
【文献】特表2012-531431(JP,A)
【文献】特表2013-545782(JP,A)
【文献】国際公開第2013/186138(WO,A1)
【文献】Journal of Pharmaceutical Sciences,2005,Vol.94,No.2,pp.246-255
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-38/58
A61K9/00-9/72
A61K47/00-47/69
C07K1/00-19/00
C12N15/00-15/90
A61P1/00-43/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性液体医薬製剤であって、
(i)
約100 U/mlの濃度で存在する
、インスリン・リスプロ及びインスリン・アスパルトから選択されるインスリン化合物、
(ii)
該製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~0.6%の濃度で存在するイオン性亜鉛、
(iii)
50~150 mMの濃度で存在する
、ニコチンアミドであるニコチン化合物、
(iv)
10~100μg/mlの濃度で存在する、ドデシルマルトシドである非イオン性界面活性剤、及び
(v)
50~120 mMの濃度で存在する塩化ナトリウムを含
み、
該水性液体医薬製剤のpHが7.0~8.0の範囲内である、前記水性液体医薬製剤。
【請求項2】
前記製剤が、非荷電浸透圧調節剤を含み;
好ましくは、該非荷電浸透圧調節剤が、トレハロース、マンニトール、グリセロール及び1,2-プロパンジオールからなる群から選択され;
好ましくは、該製剤が、等張性である、請求項
1に記載の製剤。
【請求項3】
前記製剤が、防腐剤を含み;
好ましくは、該防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、請求項1
又は2に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤が、25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を含むか;又は
前記製剤が、25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を実質的に含まない、請求項1~
3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
真性糖尿病に罹患している対象の治療における使用のための、請求項1~
4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
注射針とともに、1用量又は複数用量の請求項1~
4のいずれか一項に記載の製剤を含有する容器を含む、1回又は複数回使用のための注射器具。
【請求項7】
複数用量の請求項1~
4のいずれか一項に記載の製剤を含むリザーバーと、自動又は遠隔操作したときに1以上の用量の前記製剤が体内に投与されるように自動又は遠隔操作に適応されたポンプとを含む、医療器具。
【請求項8】
水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、10~100μg/mlの濃度のドデシルマルトシドである非イオン性界面活性剤の使用であって、該水性液体医薬製剤が、
(i)
約100 U/mlの濃度で存在する
、インスリン・リスプロ及びインスリン・アスパルトから選択されるインスリン化合物、
(ii)
該製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~0.6%の濃度で存在するイオン性亜鉛、
(iii)
50~150 mMの濃度で存在する
、ニコチンアミドであるニコチン化合物、及び
(iv)
50~120 mMの濃度で存在する塩化ナトリウムを含
み、
該水性液体医薬製剤のpHが7.0~8.0の範囲内である、前記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、とりわけ、インスリン及びインスリン類似体の速効型水性液体製剤に関する。そのような製剤は、真性糖尿病、特に、I型真性糖尿病に罹患している対象の治療に適切である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
真性糖尿病(「糖尿病」)は、低血糖又は高血糖に至る血糖値の制御不全と関連する代謝障害である。未治療の糖尿病は、冠動脈疾患、末梢動脈疾患、卒中、糖尿病性腎症、ニューロパチー及び網膜症を含む、重篤な微小血管及び大血管合併症に至ることがある。糖尿病の二つの主要なタイプは、(i)インスリンを産生しない膵臓に起因し、それに対する通常の治療がインスリン補充療法である1型糖尿病及び(ii)患者が不十分なインスリンを産生するか又はインスリン抵抗性を有するかのいずれかであり、かつそれに対する治療がインスリン感受性増強剤(例えば、メトホルミン又はピオグリタゾン)、従来のインスリン分泌促進物質(例えば、スルホニルウレア)、腎臓におけるグルコース吸収を低下させ、それにより、グルコース排泄を促進するSGLT2阻害剤(例えば、ダパグリフロジン、カナグリフロジン及びエンパグリフロジン)、膵臓β細胞からのインスリン放出を刺激するGLP-1アゴニスト(例えば、エキセナチド及びデュラグルチド)並びにGLP-1の分解を阻害して、インスリン分泌の増加をもたらすDPPIV阻害剤(例えば、シタグリプチン又はビルダグリプチン)を含む、2型糖尿病である。2型糖尿病を有する患者は、最終的には、インスリン補充療法を必要とし得る。
【0003】
インスリン補充療法を必要とする患者のために、種々の治療選択肢があり得る。組換えヒトインスリンの使用は、近年、改変された性質を有する、例えば、通常のインスリンよりも作用が長いか又は作用が速いインスリン類似体の使用に取って代わられている。したがって、患者に対する一般的なレジメンは、食事時間の頃には速効型インスリンによって補足された、長時間作用型の基本インスリンの受け取りを伴う。
【0004】
インスリンは、ジスルフィド架橋によって連結された二つの鎖(それぞれ、長さが21アミノ酸及び30アミノ酸のA鎖及びB鎖)から形成されたペプチド・ホルモンである。インスリンは、通常、中性pHでは6量体の形態で存在し、各々の6量体は、亜鉛イオンで結び付けられた三つの2量体を含む。インスリン上のヒスチジン残基は、亜鉛イオンとの相互作用に関与することが知られている。インスリンは、体内で6量体形態で貯蔵されるが、単量体形態が活性形態である。伝統的に、インスリンの治療的組成物も、亜鉛イオンの存在下、6量体形態で製剤化されている。典型的には、一つのインスリン6量体当たりおよそ3個の亜鉛陽イオンが存在する。6量体形態は、単量体及び2量体形態よりもかなりゆっくりと注射部位から吸収されると理解されている。それゆえ、6量体形態を不安定化し、注射後の皮下空間における亜鉛結合6量体から2量体及び単量体へのより迅速な解離を可能にすれば、より速やかなインスリン作用の開始を達成することができる。この原理を考慮して、三つのインスリン類似体が遺伝子改変されている。一つ目は、B鎖の残基28及び29(それぞれ、Pro及びLys)が逆転しているインスリン・リスプロ(Humalog(登録商標))であり、二つ目は、B鎖の残基28、通常はProがAspに置き換えられているインスリン・アスパルト(NovoLog(登録商標))であり、かつ三つ目は、B鎖の残基3、通常はAsnがLysに置き換えられており、かつB鎖の残基29、通常はLysがGluに置き換えられているインスリン・グルリジン(Apidra(登録商標))である。
【0005】
既存の速効型インスリン類似体は、より迅速な作用開始を達成することができるが、亜鉛陽イオンをインスリンから完全に除去することにより、より一層迅速に作用する(「超速効型」)インスリンを達成することができると理解されている。残念なことに、6量体解離の帰結は、典型的には、物理的安定性(例えば、凝集に対する安定性)と化学的安定性(例えば、脱アミド化に対する安定性)の両者に関して、インスリン安定性の相当な障害である。例えば、作用が迅速に開始される単量体インスリン又はインスリン類似体は凝集し、極めて迅速に物理的に不安定化することが知られているが、それは、不溶性凝集体の形成がインスリンの単量体を介して進行するからである。この問題に対処するための様々なアプローチが、当技術分野において記載されている:
【0006】
US5,866,538号(Norup)は、ヒトインスリン又はその類似体もしくは誘導体、グリセロール、並びに/或いはマンニトール及び5mM~100mMのハロゲン化物(例えば、NaCl)を含む化学的安定性に優れたインスリン調製物を記載している。
【0007】
US7,205,276号(Boderke)は、インスリン並びにインスリン誘導体及び類似体の亜鉛不含製剤の調製に関連する安定性の問題に対処しており、かつ少なくとも一つのインスリン誘導体、少なくとも一つの界面活性剤、任意に少なくとも一つの防腐剤、並びに任意に、等張化剤(isotonicizing agent)、緩衝剤及び賦形剤のうちの少なくとも一つを含む水性液体製剤(ここで、該製剤は安定であり、かつ亜鉛を含まないか又は製剤のインスリン含有量に基づいて0.4重量%未満(例えば、0.2重量%未満)の亜鉛を含む)を記載している。好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタン・モノラウレート)であるように思われる。
【0008】
US2008/0194461号(Maggio)は、その成分が凝集及び免疫原性を低下させるといわれている、アルキルグリコシドを含有する、インスリンを含むペプチド及びポリペプチドの製剤を記載している。
【0009】
WO2012/006283号(Pohl)は、インスリンをエチレンジアミン四酢酸塩(EDTA)などの亜鉛キレート剤とともに含有する製剤を記載している。EDTAの種類及び量を調節することにより、インスリン吸収プロファイルが変化するといわれている。カルシウムEDTAは、注射部位での疼痛の軽減と関連しているといわれており、かつカルシウムを体内から除去する可能性が低いので、EDTAの好ましい形態である。好ましい製剤は、吸収をさらに増強させかつ製剤の化学的安定性を改善するといわれているクエン酸塩も含有する。
【0010】
US2010/0227795号(Steiner)は、インスリン、解離剤、例えば、クエン酸又はクエン酸ナトリウム、及び亜鉛キレート剤、例えば、EDTAを含む組成物(ここで、該製剤は生理的pHを有しかつ透明な水溶液である)を記載している。該製剤は、安定性が改善されておりかつ作用が迅速に開始されるといわれている。
【0011】
WO2015/120457号(Wilson)は、亜鉛キレート剤、例えば、EDTA、溶解/安定化剤、例えば、クエン酸、マグネシウム塩、亜鉛化合物、及び任意に追加の賦形剤と組み合わせたインスリンを含む、安定化された超速効型インスリン製剤を記載している。
【0012】
特定の加速添加剤の使用を通じたインスリンの吸収及び作用を加速させるためのさらなるアプローチが記載されている:
【0013】
WO91/09617号(Jorgensen)は、ニコチンアミドもしくはニコチン酸又はこれらの塩が、非経口投与された水性調製物からのインスリンの吸収速度を高めることを報告している。
【0014】
WO2010/149772号(Olsen)は、インスリン、ニコチン化合物及びアルギニンを含む製剤を記載している。アルギニンの存在は、製剤の化学的安定性を改善するといわれている。
【0015】
WO2015/171484号(Christe)は、トレプロスチニルの存在のためにインスリンの作用の開始及び/又は吸収がより速い、速効型インスリン製剤を記載している。
【0016】
US2013/0231281号(Soula)は、インスリン又はインスリン類似体及びその平均重合度が3~13でありかつその多分散指数が1.0を上回る少なくとも一つのオリゴ糖を含む水性溶液組成物であって、該オリゴ糖が部分置換カルボキシル官能基を有し、非置換カルボキシル官能基が塩形成性である水性溶液組成物を記載している。そのような製剤は速効性であるといわれている。
【0017】
超速効型であり、したがって、生理的インスリンの活性により厳密に一致するインスリンの類似体又は製剤が利用できるならば、望ましいであろう。速効型でかつ安定であるインスリン及びインスリン類似体のさらなる、そして好ましくは改善された製剤を提供することも、当技術分野で依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0018】
(発明の概要)
本発明によれば、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物(iv)非イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤(「本発明の製剤」)が提供される。
【0019】
本発明の製剤は、良好な物理的及び化学的安定性を有する速効型又は超速効型である形態のインスリンを提供する。
【0020】
本発明の製剤は、真性糖尿病、特に、1型真性糖尿病に罹患している対象の治療において、特に、食事時間での投与のために使用することができる。
【0021】
(配列表の説明)
配列番号1:ヒトインスリンのA鎖
配列番号2:ヒトインスリンのB鎖
配列番号3:インスリン・リスプロのB鎖
配列番号4:インスリン・アスパルトのB鎖
配列番号5:インスリン・グルリジンのB鎖
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本明細書で使用される場合、「インスリン化合物」は、インスリン及びインスリン類似体を指す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「インスリン」は、配列番号1及び2に示されるA鎖及びB鎖を有し、かつネイティブな分子におけると同様にジスルフィド架橋を含有しかつそれによって接続されている(Cys A6-Cys A11、Cys B7~Cys A7、及びCys-B19-Cys A20)、ネイティブなヒトインスリンを指す。インスリンは、適切には組換えインスリンである。
【0024】
「インスリン類似体」は、インスリン受容体作動薬であり、かつ、例えばA又はB鎖(特に、B鎖)の配列中に1個又は2個のアミノ酸変化を含有するというような、修飾されたアミノ酸配列を有する、インスリンの類似体を指す。望ましくは、そのようなアミノ酸修飾は、該分子の亜鉛に対する親和性を低下させ、かつそれによって作用速度を増加させることが意図されている。例示的なインスリン類似体としては、速効型の類似体、例えば、インスリン・リスプロ、インスリン・アスパルト及びインスリン・グルリジンが挙げられる。これらの形態のインスリンは、ヒトインスリンA鎖と変異体B鎖を有する-配列番号3~5を参照されたい。さらに速効型類似体は、引用によりその内容の全体が本明細書中に組み込まれる、EP0214826号、EP0375437号及びEP0678522号に記載されている。したがって、望ましくは、インスリン類似体は、インスリンの作用速度と同じであるか又は好ましくはそれを超える作用速度を有する。インスリン又はインスリン類似体の作用速度は、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的な方法を参照)で測定できる。
【0025】
一実施態様において、インスリン化合物は、組換えヒトインスリンである。別の実施態様において、それは、インスリン・リスプロである。別の実施態様において、それは、インスリン・アスパルトである。別の実施態様において、それは、インスリン・グルリジンである。
【0026】
「ニコチン化合物」という用語は、ニコチン酸及びその塩、並びにそのエステル及びアミド、例えばニコチンアミド、を包含する誘導体を指す。例として、ニコチン酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩が挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される「水性医薬製剤」という用語は、水性成分が、水、好ましくは、蒸留水、脱イオン水、注射用水、滅菌注射用水もしくは静菌性注射用水であるか、又はそれらを含む、治療的使用に適切な製剤を指す。本発明の水性医薬製剤は、全成分が水に溶解している溶液製剤である。
【0028】
「一価又は二価陰イオン」という用語は、一つ以上のイオン化できる基を有する陰イオンであって、製剤中で脱プロトン化され得て、その結果、該陰イオンがマイナス1又はマイナス2の電荷を有し、かつ該陰イオンは、製剤中で正に荷電され得る原子又は基を含まない陰イオンを指す。したがって、該用語の範囲は、全ての双性イオン及びすべてのアミノ酸を除外する。この用語の範囲から具体的に除外される他の陰イオンとして、三価陰イオン、例えば、硝酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩が挙げられる。
【0029】
製剤中のインスリン化合物の濃度は、典型的には10~1000 U/mlの範囲内、例えば50~500 U/ml、例えば50~200 U/mlである。例示的な製剤は、100 U/ml(約3.6 mg/ml)の濃度でインスリン化合物を含有する。別の興味深い範囲は、500~1000 U/ml、例えば800~1000 U/mlであり、並びに別の例示的な製剤は、1000 U/ml(約36 mg/ml)の濃度でインスリン化合物を含有する。
【0030】
本発明の製剤は、イオン性亜鉛、即ちZn2+イオンを含む。イオン性亜鉛の起源は、典型的には水溶性亜鉛塩、例えば、ZnCl2、ZnO、ZnSO4、Zn(NO3)2又はZn(アセテート)2であり、かつ最も適切にはZnCl2又はZnOであろう。
【0031】
製剤中のイオン性亜鉛の濃度は、典型的には、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.05%以上、例えば0.1%以上、例えば0.2%以上、0.3%以上、又は0.4%以上であろう。したがって、製剤中のイオン性亜鉛の濃度は、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5%以上、例えば、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~1%、例えば0.5~0.75%、例えば0.5~0.6%であることができる。計算のために、亜鉛に対する対イオンの重量は除外される。
【0032】
例えば、100 U/mlのインスリン化合物を含有する製剤において、イオン性亜鉛の濃度は、典型的には0.015 mM超、例えば0.03 mM超、例えば0.06 mM超、0.09 mM超、又は0.12 mM超であろう。したがって、製剤中のイオン性亜鉛の濃度は、0.15 mM超、例えば0.15~0.60 mM、例えば0.20~0.45 mM、例えば0.25~0.35 mMであることができる。
【0033】
例えば1000 U/mlのインスリン化合物を含有する製剤において、イオン性亜鉛の濃度は、典型的には0.15 mM超、例えば0.3 mM超、例えば0.6 mM超、0.9 mM超、又は1.2 mM超であろう。したがって、製剤中のイオン性亜鉛の濃度は、1.5 mM超、例えば1.5~6.0 mM、例えば2.0~4.5 mM、例えば2.5~3.5 mMであることができる。
【0034】
本発明の製剤は、本発明の製剤中において製剤化されているインスリンの作用開始速度を高めることが期待されている、ニコチン化合物を含む。好ましい実施態様において、ニコチン化合物はニコチンアミドである。代わりに、それは、ニコチン酸又はニコチン酸の塩、例えばナトリウム塩である。適切には、ニコチン化合物の濃度は、10~150 mMの範囲内であり、好ましくは20~100 mMの範囲内であり、例えば50~100 mM、例えば約80 mMである。
【0035】
本発明の製剤は、非イオン性界面活性剤を含む。
【0036】
適切な種類の非イオン性界面活性剤は、アルキルグリコシド、特に、ドデシルマルトシドである。他のアルキルグリコシドとして、ドデシルグルコシド、オクチルグルコシド、オクチルマルトシド、デシルグルコシド、デシルマルトシド、トリデシルグルコシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルグルコシド、テトラデシルマルトシド、ヘキサデシルグルコシド、ヘキサデシルマルトシド、スクロースモノオクタノエート、スクロースモノデカノエート、スクロースモノドデカノエート、スクロースモノトリデカノエート、スクロースモノテトラデカノエート及びスクロースモノヘキサデカノエートが挙げられる。
【0037】
他の適切な種類の非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(エトキシ化ソルビタンの脂肪酸エステル)、例えば、ポリソルベート80又はポリソルベート20である。ポリソルベート80は、ポリソルベート80は、オレイン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ここで、数20は、分子中のオキシエチレン基の数を示す)から形成されたモノエステルである。ポリソルベート80は、具体的にはTween 80、及びAlkest TW 80をも包含する、様々なブランド名で知られている。ポリソルベート20は、ラウリン酸とポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ここで、数20は、分子中のオキシエチレン基の数を示す)から形成されたモノエステルである。ポリソルベート20は、具体的にはTween 20、及びAlkest TW 20をも包含する、様々なブランド名で知られている。他の適切なポリソルベートとして、ポリソルベート40及びポリソルベート60が挙げられる。
【0038】
他の適切な種類の非イオン性界面活性剤は、ポロキサマー、特に、ポロキサマー 188、ポロキサマー 407、ポリキサマー 171及びポロキサマー 185としても知られている、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体である。ポロキサマーは、Pluronic又はKoliphorのブランド名で知られてもいる。例えば、ポロキサマー 188は、Pluronic F-68として市販されている。
【0039】
他の適切な種類の非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールのアルキルエーテル、特に、Brijのブランド名で知られているものであり、例えば、ポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテル(Brij 52)、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル(Brij 93)及びポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル(Brij L4)から選択される。他の適切なBrij界面活性剤として、ポリエチレングリコール(4)ラウリルエーテル(Brij 30)、ポリエチレングリコール(10)ラウリルエーテル(Brij 35)、ポリエチレングリコール(20)ヘキサデシルエーテル(Brij 58)及びポリエチレングリコール(10)ステアリルエーテル(Brij 78)が挙げられる。
【0040】
他の適切な種類の非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテル、特に、Triton X-100のブランド名で知られてもいる、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである。
【0041】
とりわけ適切なものは、1000 g/モル未満の、特に600 g/モル未満の分子量を有する非イオン性界面活性剤、例えば、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコール(Triton X-100)(647 g/モル)、ドデシルマルトシド(511 g/モル)、オクチルグルコシド(292 g/モル)、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル(Brij L4)(362 g/モル)、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル(Brij 93)(357 g/モル)及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテル(Brij 52)(330 g/モル)である。
【0042】
製剤中の非イオン性界面活性剤の濃度は、典型的には、1~1000μg/mlの範囲内、例えば5~500 μg/ml、例えば10~200 μg/ml、例えば10~100 μg/ml、特に約50 μg/mlであろう。
【0043】
本発明の製剤は、第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む。適切な第一族金属として、ナトリウム及びカリウム、特にナトリウムが挙げられる。陰イオンは、好ましくは一価陰イオンである。陰イオンは、無機又は有機であってよいが、しかし、好ましくは無機である。例示される無機陰イオンとして、ハロゲン化物、例えば塩化物又は臭化物(好ましくは塩化物)及び硫酸塩が挙げられる。例示される有機陰イオンとして、一価又は二価カルボン酸、特に、酢酸塩及び安息香酸塩のような一価カルボン酸、及びコハク酸塩、マレイン酸塩、及びリンゴ酸塩のような二価カルボン酸、から誘導されたイオンが挙げられる。好ましい有機陰イオンは、酢酸塩である。例となる塩として、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び酢酸ナトリウムが挙げられる。好ましい塩は、塩化ナトリウムである。
【0044】
第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩は、適切には、製剤中に30~200 mM、例えば50~200 mM、例えば50~120 mM、例えば65~75 mM、例えば約70 mMの濃度で存在することができる。
【0045】
適切には、本発明の水性製剤のpHは、5.5~9.0の範囲内、特に6.5~8.0、例えば7.0~7.5である。注射痛を最小限に抑えるために、pHは、好ましくは、生理的pH(約pH 7.4)付近である。対象とする別のpH範囲は、7.6~8.0、例えば約7.8である。
【0046】
任意に、本発明の製剤は、製剤のpHを安定化するために緩衝剤を含み、これは、タンパク質の安定性を高めるように選択することもできる。一実施態様において、緩衝剤は、製剤のpHに近いpKaを有するように選択され;例えば、ヒスチジンが、製剤のpHが5.0~7.0の範囲内であるときに緩衝剤として適切に利用される。そのような緩衝剤は、0.5~20 mM、例えば、2~5 mMの濃度で利用されることができる。別の例として、リン酸塩が、製剤のpHが6.1~8.1の範囲内であるときに緩衝剤として適切に利用される。そのような緩衝剤は、0.5~20 mM、例えば2~5 mMの濃度で利用されることができる。他の可能性のある緩衝剤は、クエン酸塩である。その代わりに、別の実施態様において、本発明の製剤は、WO2008/084237号(引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる)に開示されているようにさらに安定化にされ、WO2008/084237号は、系が従来の緩衝剤、すなわち、製剤の意図される貯蔵温度範囲、例えば25℃で、製剤のpHの1単位以内のpKaを有するイオン化可能な基を有する化合物を実質的に含まないことを特徴とする、タンパク質及び一以上の添加剤を含む製剤を記載している。この実施態様において、製剤のpHは、該製剤がpHに関して最大の測定可能な安定性を有する値に設定され; 一以上の添加剤(置換された緩衝剤)は、プロトンをインスリン化合物で交換することができ、かつ製剤の意図された貯蔵温度範囲における製剤のpHよりも少なくとも1単位大きい又は小さいpKa値を有する。添加剤は、製剤の意図された貯蔵温度範囲(例えば、25℃)で、水性製剤のpHの1~5 pH単位、好ましくは1~3 pH単位、最も好ましくは1.5~2.5 pH単位のpKaを有するイオン化可能な基を有することができる。そのような添加剤は、典型的には0.5~10 mM、例えば2~5 mMの濃度で利用されることができる。
【0047】
本発明の水性製剤は、低張、等張及び高張製剤を含んで、広範囲のオスモル濃度に及ぶ。好ましくは、本発明の製剤は、実質的に等張である。適切には、製剤のオスモル濃度は、投与経路、例えば注射による痛みを最小限に抑えるように選択される。好ましい製剤は、約200~約500 mOsm/Lの範囲内のオスモル濃度を有する。好ましくは、オスモル濃度は、約250~約350 mOsm/Lの範囲内である。より好ましくは、オスモル濃度は、約300 mOsm/Lである。
【0048】
塩の存在は、製剤の浸透圧を修飾するであろう。それにもかかわらず、製剤の浸透圧は、非荷電浸透圧調節剤によってさらに調節されることができる。非荷電浸透圧調節剤の例として、糖、糖アルコール及び他のポリオール、例えば、トレハロース、スクロース、マンニトール、グリセロール、1,2-プロパンジオール、ラフィノース、ラクトース、デキストロース、ソルビトール又はラクチトール(特に、トレハロース、マンニトール、グリセロール又は1,2-プロパンジオール、とりわけグリセロール)が挙げられる。非荷電浸透圧調節剤は、好ましくは20~200 mM、例えば50~150 mM、例えば約80 mMの濃度で使用される。
【0049】
製剤のイオン強度は、式:
【数1】
(式中、c
xは、イオンxのモル濃度(mol L
-1)であり、z
xは、イオンxの電荷の絶対値であり、かつ総和は、製剤中に存在する全てのイオン(n)をカバーする)に従って計算することができる。インスリン化合物自体の寄与は、計算のために無視されるべきである。双性イオンについては、電荷の絶対値は極性を除いた総電荷であり、例えばグリシンの場合、考えられるイオンは、0、1又は2という絶対電荷を有し、かつアスパラギン酸塩については、考えられるイオンは、0、1、2又は3という絶対電荷を有する。
【0050】
一般に、製剤のイオン強度は、適切には約30 mMから約500 mMまでの範囲内である。
【0051】
インスリン化合物がインスリン・リスプロであるとき、イオン強度のより高い製剤は、イオン強度のより低い製剤よりも安定性が低いので、製剤のイオン強度は、適切には最低レベルに維持される。適切には、亜鉛結合種及びインスリン化合物を除く、製剤中のイオンを考慮したイオン強度は、60 mM未満、例えば50 mM未満、例えば40 m未満、例えば30~40 mMである。
【0052】
インスリン化合物が、500 U/ml超(例えば、1000 U/ml)の濃度のインスリン・アスパルトであるとき、イオン強度のより高い製剤は、イオン強度のより低い製剤よりも安定性が低いので、製剤のイオン強度は、適切には最低レベルに維持される。適切には、亜鉛結合種及びインスリン化合物を除く製剤中のイオンを考慮したイオン強度は、60 mM未満、例えば50 mM未満、例えば40 mM未満、例えば30~40 mMである。
【0053】
インスリン化合物が、500 U/ml以下(例えば、100 U/ml)の濃度のインスリン・アスパルトであるとき、製剤のイオン強度は高いかもしれない。適切には、亜鉛結合種及びインスリン化合物を除く製剤中のイオンを考慮したイオン強度は、50 mM超、例えば100 mM超、例えば50~500 mM又は100~500 mM又は100~300 mM、例えば約150 mMである。
【0054】
本発明の製剤は、任意に、防腐剤、好ましくは、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム又は塩化ベンゼトニウムを含むことができる。
【0055】
本発明の製剤は、任意に、安定化剤を含む他の有益な成分を含むことができる。
【0056】
第一の実施態様において、本発明の製剤は、亜鉛結合種を含有する。亜鉛結合種は、イオン性亜鉛を錯体にすることができるべきであり、かつ25℃で測定したとき、4.5以上(例えば、4.5~12.3又は4.5~10)の亜鉛イオン結合に関する金属結合安定度定数logKを有する種から選択されるであろう。アメリカ国立標準技術研究所の参照データベース46(金属錯体の厳しく選択された安定度定数)に掲載されている金属結合安定度定数を使用することができる。このデータベースは、典型的には、25℃で測定されたlogK定数を掲載している。それゆえ、本発明の製剤に任意に含まれる亜鉛結合種の適切性は、25℃で測定された及び該データベースに引用された、亜鉛結合に関するその金属結合安定度定数logKに基づいて決定することができる。任意に含まれる、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する例示的な亜鉛結合種として、多座配位子有機陰イオンが挙げられる。任意に含まれる、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する例示的な亜鉛結合種として、亜鉛イオン結合に関して4.5~10のlogKを有するものが挙げられ、例えばクエン酸ナトリウムとして利用され得るクエン酸塩 (logK = 4.93)が挙げられる。さらなる例として、ピロリン酸塩 (logK = 8.71)、アスパラギン酸塩 (logK = 5.87)、グルタミン酸塩 (logK = 4.62)、システイン(logK = 9.11)、シスチン(logK = 6.67)及びグルタチオン(logK = 7.98)が挙げられる。他の考えられる亜鉛結合種として、イオン性亜鉛との相互作用のための孤立電子対又は電子密度に寄与し得る物質、例えば、エチレンジアミン(logK = 5.69)、ジエチレントリアミン(DETA、logK = 8.88)を含む多座アミン、並びに孤立電子対に寄与し得る芳香族又はヘテロ芳香族物質、特に、イミダゾール部分を含むもの、例えば、ヒスチジン(logK = 6.51)が挙げられる。亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する例示的な亜鉛結合種として、亜鉛イオン結合に関して10超のlogKを有するもの、例えば、トリエチレンテトラミン(TETA、logK = 11.95)及びエチレンジアミン四酢酸塩(EDTA、logK = 14.5)が挙げられる。適切には、亜鉛結合種は、亜鉛イオン結合に関して4.5~12.3の、例えば、4.5~10のlogKを有し、例えば、クエン酸塩である。
【0057】
クエン酸塩、ピロリン酸塩、グルタミン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩等への言及は、クエン酸、ピロリン酸、グルタミン酸、エチレンジアミン四酢酸等のような対応する酸又はそのイオン化された形態を指す。
【0058】
酸形態(例えば、クエン酸)を有する亜鉛イオン結合種を、本発明の水性製剤中に、酸の塩、例えば、ナトリウム塩(例えば、クエン酸ナトリウム)の形態で導入することができる。或いは、それらを酸の形態で導入し、その後、pHを必要とされたレベルに調整することができる。
【0059】
例えば25℃において、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を含む製剤は、少なくとも1 mM、例えば少なくとも2 mM又は少なくとも5 mMの濃度において、そのようにすることができる。例えば、製剤中の(製剤中の)亜鉛結合種の濃度は、特に亜鉛結合種がクエン酸塩又はヒスチジンであり、かつ特にインスリン化合物が100 U/ml-製剤であるとき、典型的には1~50 mM、より好ましくは5~50 mM、例えば10~50 mM、例えば10~30 mM、より好ましくは約20 mM(例えば、22 mM)の範囲内であることができる。適切には、製剤中の亜鉛結合種の濃度は、亜鉛結合種がクエン酸塩又はヒスチジンであり、インスリン化合物が1000 U/ml-製剤であるとき、10~50 mM、例えば30~50 mM、例えば40~50 mM、より好ましくは約44 mMである。一実施態様において、亜鉛結合種の濃度は、10 mM以上である。陰イオン性亜鉛結合種は、遊離酸又は塩の形態で、例えば、ナトリウム又はカルシウムイオン、特にナトリウムイオンを伴う塩の形態で利用することができる。単一の亜鉛結合種が好ましいけれども、亜鉛結合種の混合物を利用することができる。
【0060】
製剤中における、亜鉛結合種に対するイオン性亜鉛のモル比は、1:1~1000、例えば1:1~500、例えば1:1~1:250又は1:3~1:500、例えば1:3~1:175の範囲内であることができる。
【0061】
例えば、亜鉛結合種に対するイオン性亜鉛の適切なモル比は、特に亜鉛結合種としてのクエン酸塩又はヒスチジンについては、1:10~1:500、例えば1:20~1:500、例えば1:20~1:100又は1:40~1:250、例えば1:40~1:90又は1:60~1:200、例えば1:60~1:80である。次の範囲は、特に亜鉛結合種としてのクエン酸塩又はヒスチジンについては、とりわけ興味深い:1:10~1:500、例えば1:10~1:200、例えば1:10~1:100、例えば1:10~1:50、例えば、1:10~1:30(特にインスリン化合物1000 U/ml-製剤のために)又は1:50~1:100、例えば1:60~1:80(特にインスリン化合物100 U/ml-製剤のために)。
【0062】
例えば、100 U/mlのインスリン化合物を含有する製剤は、約0.3 mMのイオン性亜鉛(すなわち、約19.7μg/mlのイオン性亜鉛、すなわち、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で約0.54%)及び約15~30 mM、例えば20~30 mMの亜鉛結合種(特に、クエン酸塩)を含有することができる。
【0063】
例えば、1000 U/mlのインスリン化合物を含有する製剤は、約3 mMのイオン性亜鉛(すなわち、約197μg/mlのイオン性亜鉛、すなわち、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で約0.54%)及び約30~60 mM、例えば40~60 mMの亜鉛結合種(特に、クエン酸塩)を含有することができる。
【0064】
代わりの実施態様において、本発明の製剤は、25℃において、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を含まないか、又は、25℃において、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を、1 mM未満、例えば0.5 mM未満の濃度で含む。例えば、製剤は、25℃において、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を実質的に含まないか又は含まない。この文脈において、「実質的に含まない」とは、25℃において、亜鉛イオン結合に関して4.5以上のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種の濃度が、0.1 mM未満、例えば0.05 mM未満又は0.04 mM未満又は0.01 mM未満であることを意味する。
【0065】
本発明の製剤は、25℃において、亜鉛イオン結合に関して10超の、例えば12.3超のlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を実質的に含まないかもしれず、例えば、実質的にEDTAを含まない。この文脈において、「実質的に含まない」とは、言及された亜鉛結合種の濃度が、0.1 mM未満、例えば0.05 mM未満又は0.04 mM未満又は0.01 mM未満であることを意味する。
【0066】
本発明の一の実施態様において、製剤は、アミノ酸、例えばグルタミン酸を含まず、かつこれらの酸の対応するイオン形態も含まない。
【0067】
本発明の一の実施態様において、製剤は、アルギニンを含まない。
【0068】
本発明の一の実施態様において、製剤は、プロタミン及びプロタミン塩を含まない。
【0069】
本発明の一の実施態様において、製剤は、マグネシウムイオンを含まない。
【0070】
本発明の一の実施態様において、製剤は、カルシウムイオンを含まない。
【0071】
本発明の一の実施態様において、製剤は、マンニトールを含まない。
【0072】
本発明の一の実施態様において、製剤は、グリセロールを含まない。
【0073】
適切には、本発明の製剤は、長期間貯蔵したときに高分子量種の濃度が低いままであるというように、十分に安定である。本明細書で使用される「高分子量種」という用語は、サイズ排除クロマトグラフィーのような適切な分析法によって検出したとき、親インスリン化合物の分子量の少なくとも約2倍の見掛けの分子量を有するタンパク質内容物の任意の不可逆的に形成された成分を指す。すなわち、高分子量種は、親インスリン化合物の多量体凝集物である。多量体凝集物は、かなり変化した立体構造を有する親タンパク質分子を含むことができ、又はそれらは、ネイティブなもしくはネイティブに近い立体構造の親タンパク質ユニットの集合体であることができる。高分子量種の測定は、サイズ排除クロマトグラフィー、電気泳動、分析的超遠心分離、光散乱、動的光散乱、静的光散乱及びフィールド・フロー・フラクショネーションを含む、当技術分野で公知の方法を用いて行うことができる。
【0074】
適切には、本発明の製剤は、30℃で少なくとも1、2又は3カ月間貯蔵した後に、それらが可視粒子を実質的に含まないままであるというように、十分に安定である。可視粒子を、2.9.20.欧州薬局方承認基準(European Pharmacepoeia Monograph)(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて適切に測定する。
【0075】
適切には、本発明の製剤は、長期間貯蔵したときに関連種の濃度が低いままであるというように、十分に安定である。本明細書で使用される「関連種」という用語は、親インスリン化合物の化学修飾によって形成されたタンパク質内容物の任意の成分、特に、インスリンのデスアミド又は環状イミド形態を指す。関連種は、RP-HPLCによって適切に検出される。
【0076】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、30℃で1、2又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の親インスリン化合物を保持している。(全タンパク質の重量による)インスリン化合物の百分率は、サイズ排除クロマトグラフィー又はRP-HPLCによって決定することができる。
【0077】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、30℃で1、2又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)4%以下、好ましくは2%以下の高分子量種を含む。
【0078】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、30℃で1、2又は3カ月間貯蔵した後に、(全タンパク質の重量で)4%以下、好ましくは2%以下、好ましくは1%以下のA-21デスアミド形態のインスリン化合物を含む。
【0079】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、同じ条件(例えば、30℃)及び時間の長さ(例えば、1、2又は3カ月)の下で貯蔵した後に、非イオン性界面活性剤を欠くが、その他の点では同一である製剤よりも、少なくとも10%低い、好ましくは少なくとも25%低い、より好ましくは少なくとも50%低い、貯蔵時の高分子量種の増加を示すべきである。
【0080】
好ましい実施態様において、本発明の製剤は、同じ条件(例えば、30℃)及び時間の長さ(例えば、1、2又は3カ月)の下で貯蔵した後に、非イオン性界面活性剤を欠くが、その他の点では同一である製剤よりも少なくとも10%低い、好ましくは少なくとも25%低い、より好ましくは少なくとも50%低い、貯蔵時の関連種の増加を示すべきである。
【0081】
本発明の製剤の作用速度は、糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル(実施例の一般的方法)を参照のこと)で測定することができる。好ましい実施態様において、本発明の製剤は、このモデルを用いて、ニコチン化合物を欠くが、その他の点では同一である製剤よりも少なくとも10%短い、好ましくは少なくとも20%短い、より好ましくは少なくとも30%短いTmax(すなわち、最大インスリン濃度までの時間)を示すべきである。好ましい実施態様において、本発明の製剤は、このモデルを用いて、ニコチン化合物を欠くが、その他の点では同一である製剤よりも少なくとも10%大きい、好ましくは少なくとも20%大きい、より好ましくは少なくとも30%大きい、注射後の最初の45分以内の薬力学プロファイルでの曲線下面積を示すべきである。
【0082】
本発明のさらなる態様によれば、真性糖尿病に罹患している対象の治療において使用するための本発明の製剤が提供される。有効量の本発明の製剤を、それを必要としている対象に投与することを含む、真性糖尿病の治療方法も提供される。
【0083】
本発明の製剤の典型的な用量は、2~30U、例えば5~15Uである。投与は、食事の15分前(すなわち、食事の開始前)と食事の15分後(すなわち、食事の終了後)との間の時間帯において、適切に行われるべきである。
【0084】
本発明の一態様は、例えば、1用量又は複数用量の本発明の製剤を含有するプラスチック又はガラスでできた容器である。容器は、例えば、注射器具とともに使用するための交換可能アイテムとなるように設計されたカートリッジであることができる。
【0085】
本発明の製剤は、注射用、特に、皮下又は筋肉内注射用に適切にパッケージングすることができる。皮下注射が好ましい。注射は、従来のシリンジによるもの、又はより好ましくは、糖尿病対象による使用に適したペン型装置を用いてのものであることができる。例示的なペン型装置としては、Kwikpen(登録商標)装置及びFlexpen(登録商標)装置が挙げられる。
【0086】
本発明の一態様は、注射針とともに1用量又は複数用量の本発明の製剤を含有する容器を含む単回又は複数回使用のための注射器具、特に、皮下又は筋肉内注射に適した器具である。一実施態様において、容器は、複数用量を含有する交換可能カートリッジである。一実施態様において、針は、例えば、各々の使用機会の後に、交換可能である。
【0087】
本発明の別の態様は、複数用量の本発明の製剤を含むリザーバー及び自動又は遠隔操作したときに、1以上の用量の本発明の製剤が、体内に、例えば、皮下又は筋肉内に投与されるように自動又は遠隔操作に適応しているポンプを含む医療器具である。そのような器具は、体の外側に着用するか又は体内に移植することができる。
【0088】
本発明の製剤は、原料を混合することにより調製することができる。例えば、インスリン化合物を、他の成分を含む水性製剤に溶解させることができる。或いは、インスリン化合物を、強酸(典型的には、HCl)に溶解させ、溶解後、他の成分を含む水性製剤で希釈し、その後、アルカリ(例えば、NaOH)を添加して、pHを所望のpHに調整することができる。この方法のバリエーションとして、酸溶液を中和する工程を希釈工程の前に実施してもよく、その時は、希釈工程の後にpHを調整する必要がない(又はわずかな調整のみか必要とされ得る)場合がある。
【0089】
本発明の別の態様において、(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物、(iv)陰イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む、水性媒体を用いた再構成に適する、乾燥した固体の医薬組成物が提供される。したがって、本発明の製剤は、そのような乾燥した固体の医薬組成物を、水性媒体、例えば、水又は生理食塩水に溶解することによって調製することができる。そのような乾燥した固体の医薬組成物は、本発明の製剤を乾燥させる(例えば、凍結乾燥する)ことによって調製することができる。本発明は、1用量又は複数用量のそのような乾燥した固体の医薬組成物を含有する容器も提供する。
【0090】
さらなる本発明の態様は、以下のものを包含する:
・ (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤を添加することを含む、方法;
・ (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤の使用;
・ (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を添加することを含む、方法;並びに
・ (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩の使用。
【0091】
本発明の製剤は、次の有利な性質の一つ以上を有することが期待されている:
・ 対象への投与における、典型的には通常のヒトインスリンよりも早い作用の速効性;
・ 特に、HMWSの量又は粒子の視覚的検出によって測定した場合の、貯蔵における良好な物理的安定性;
・ 特に、関連する生成物、例えば、アミド分解生成物の量によって測定した場合の、貯蔵における良好な化学的安定性。
【0092】
本発明のさらなる態様は、次の節によって説明される:
【0093】
節1. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物(iv)非イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤。
【0094】
節2. 前記インスリン化合物がインスリン・リスプロである、節1に記載の製剤。
【0095】
節3. 前記インスリン化合物がインスリン・アスパルトである、節1に記載の製剤。
【0096】
節4. 前記インスリン化合物がインスリン・グルリジンである、節1に記載の製剤。
【0097】
節5. 前記インスリン化合物が組換えヒトインスリンである、節1に記載の製剤。
【0098】
節6. 前記インスリン化合物が10~1000 U/mlの濃度で存在する、節1乃至5のいずれか一つに記載の製剤。
【0099】
節7. 前記ニコチン化合物がニコチンアミドである、節1乃至6のいずれか一つに記載の製剤。
【0100】
節8. 前記ニコチン化合物がニコチン酸又はその塩である、節1乃至6のいずれか一つに記載の製剤。
【0101】
節9. 前記ニコチン化合物が10~150 mMの濃度で存在する、節1乃至8のいずれか一つに記載の製剤。
【0102】
節10. 前記非イオン性界面活性剤がアルキルグリコシドである、節1乃至9のいずれか一つに記載の製剤。
【0103】
節11. 前記アルキルグリコシドがドデシルマルトシドである、節10に記載の製剤。
【0104】
節12. 前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート界面活性剤である、節1乃至9のいずれか一つに記載の製剤。
【0105】
節13. 前記ポリソルベート界面活性剤がポリソルベート20又はポリソルベート80である、節12に記載の製剤。
【0106】
節14. 前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルエーテルである、節1乃至9のいずれか一つに記載の製剤。
【0107】
節15. 前記ポリエチレングリコールのアルキルエーテルが、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択される、節14に記載の製剤。
【0108】
節16. 前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体である、節1乃至9のいずれか一つに記載の製剤。
【0109】
節17. 前記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロック共重合体が、ポロキサマー 188、ポロキサマー 407、ポロキサマー 171又はポロキサマー 185である、節16に記載の製剤。
【0110】
節18. 前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルである、節1乃至9のいずれか一つに記載の製剤。
【0111】
節19. 前記ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルが4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである、節18に記載の製剤。
【0112】
節20. 前記界面活性剤が1~1000 μg/mlの濃度で存在する、節1乃至19のいずれか一つに記載の製剤。
【0113】
節21. 前記界面活性剤が10~100 μg/mlの濃度で存在する、任意の節20に記載の製剤。
【0114】
節22. 前記第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩が一価又は二価陰イオンのナトリウム塩である、節1乃至21のいずれか一つに記載の製剤。
【0115】
節23. 前記陰イオンが一価陰イオンである、節1乃至22のいずれか一つに記載の製剤。
【0116】
節24. 前記陰イオンが無機陰イオンである、節1乃至23のいずれか一つに記載の製剤。
【0117】
節25. 前記陰イオンが有機陰イオンである、節1乃至23のいずれか一つに記載の製剤。
【0118】
節26. 前記陰イオンが塩化物である、節24に記載の製剤。
【0119】
節27. 前記陰イオンが酢酸塩である、節25に記載の製剤。
【0120】
節28. 前記第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩が、製剤中に30~200 mMの濃度で存在する、節1乃至27のいずれか一つに記載の製剤。
【0121】
節29. 前記イオン性亜鉛が、製剤中に、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.05%以上の濃度で存在する、節1乃至28のいずれか一つに記載の製剤。
【0122】
節30. 前記イオン性亜鉛が、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~1%の濃度で存在する、節29に記載の製剤。
【0123】
節31. 非荷電浸透圧調節剤を含む、節1乃至30のいずれか一つに記載の製剤。
【0124】
節32. 前記非荷電浸透圧調節剤が、トレハロース、マンニトール、グリセロール又は1,2-プロパンジオールからなる群から選択される、節31に記載の製剤。
【0125】
節33. 前記非荷電浸透圧調節剤がグリセロールである、節32に記載の製剤。
【0126】
節34. 前記製剤が等張性である、節1乃至33のいずれか一つに記載の製剤。
【0127】
節35. pHが5.5~9.0の範囲内である、節1乃至34のいずれか一つに記載の製剤。
【0128】
節36. 防腐剤を含む、節1乃至35のいずれか一つに記載の製剤。
【0129】
節37. 前記防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、節36に記載の製剤。
【0130】
節38. 25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を含む、節1乃至37のいずれか一つに記載の製剤。
【0131】
節39. 25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を実質的に含まない、節1乃至37のいずれか一つに記載の製剤。
【0132】
節40. 真性糖尿病に罹患している対象の治療における使用のための、節1乃至39のいずれか一つに記載の製剤。
【0133】
節41. 有効量の節1乃至39のいずれか一つに記載の製剤を、それが必要な対象に投与することを含む、真性糖尿病の治療方法。
【0134】
節42. 1用量又は複数用量の節1乃至39のいずれか一つに記載の製剤を含有する容器。
【0135】
節43. 注射針とともに、1用量又は複数用量の節1~39のいずれか一つに記載の製剤を含有する容器を含む、1回又は複数回使用のための注射器具。
【0136】
節44. 複数用量の節1~39のいずれか一つに記載の製剤を含むリザーバーと自動又は遠隔操作したときに1以上の用量の前記製剤が体内に投与されるように自動又は遠隔操作に適応されたポンプとを含む、医療器具。
【0137】
節45. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物(iv)非イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む、水性媒体による再構成に適切な乾燥固体医薬組成物。
【0138】
節46. 水性媒体中に節44に記載の乾燥固体医薬組成物を溶解させることを含む、節1乃至39のいずれか一つに記載の製剤の調製方法。
【0139】
節47. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤を添加することを含む、方法。
【0140】
;
節48. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤の使用。
【0141】
節49. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を添加することを含む、方法。
【0142】
節50. (i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩の使用。
【0143】
【実施例】
【0144】
(実施例)
(一般的方法)
(a) 糖尿病ブタ薬物動態/薬力学モデル:作用速度を測定する方法:
10匹のオスの糖尿病ユカタン・ミニブタを使用する。ブタに、試験製剤の試料を皮下注射し、血液を、注射に関して次の時点(分): -30(又は-15)、0、5、10、15、20、30、40、50、60、75、90、105、120、150、180、210及び240、で採取(1又は2 ml)する。薬力学プロファイルのために、血清を(市販の血糖値測定器を用いて)グルコースについて分析する。薬物動態プロファイルのために、インスリン濃度を、イムノアッセイを用いて、血清中で測定する。
【0145】
(b) 視覚的評価
可視粒子を、2.9.20.欧州薬局方承認基準(European Pharmacepoeia Monograph)(微粒子汚染:可視粒子(Particulate Contamination: Visible Particles))を用いて適切に測定する。必要とされる装置は、以下のものを含む観察場(viewing station)からなる:
・ 垂直位置に保持された適当な大きさの艶消し黒色パネル
・ 黒色パネルの隣に垂直位置に保持された適当な大きさの反射防止白色パネル
・ 適切な笠付白色光源及び適切な散光器が装着された調整可能なランプホルダー(各々長さ525 mmの2本の13 W蛍光管を含む観察用照明(viewing illuminator)が適切である)。観察点(viewing point)における照明の強度は、2000ルクス~3750ルクスに維持される。
【0146】
いかなる接着ラベルも容器から除去し、及び外側を洗浄しかつ乾燥させる。気泡が入らないことを確実にしながら、容器を穏やかに旋回又は反転させ、かつ白色パネルの前で約5秒間観察する。この手順を黒色パネルの前で繰り返す。いかなる粒子の存在をも記録する。
【0147】
視覚的スコアを次のように順位付けする:
視覚的スコア1: 実質的に粒子を含まない透明な溶液
視覚的スコア2: 約5個の非常に小さい粒子
視覚的スコア3: 約10~20個の非常に小さい粒子
視覚的スコア4: より大きい粒子を含む20~50個の粒子
視覚的スコア5: より大きい粒子を含む50個超の粒子
【0148】
視覚的スコア4及び5を有する試料中の粒子は、普通光下での随時の視覚的評価で明らかに検出可能であるが、視覚的スコア1~3を有する試料は、通常、同じ評価で透明な溶液に見える。視覚的スコア1~3を有する試料は「合格」であるとみなされ;視覚的スコア4~5を有する試料は「不合格」であるとみなされる。
【0149】
(c) サイズ排除クロマトグラフィー
インスリン調製物の超高性能サイズ排除クロマトグラフィーを、300 mm×4.6 mmのカラム中で、1.7 μmエチレン架橋ハイブリッド125オングストローム孔充填材料を伴うWaters ACQUITY H-class Bio UPLC(登録商標)システムを用いて実施した。カラムを、0.65 mg/ml L-アルギニン、20%v/vアセトニトリル、15%v/v氷酢酸移動相及び0.01M HClで酸性化した10μlの試料中で平衡化し、276 nmでのUV検出により、0.4 mL/分で分析した。分析は全て、周囲温度で実施した。結果は、総蛋白質含有量に関して、高分子量種(HMWS)の百分率として表す。
【0150】
(d) 逆相クロマトグラフィー
超高速逆相クロマトグラフィーを、50 mm×2.1 mmのカラム中で、三つの官能基を介してC18リガンドで固定された1.7 μmエチレン架橋ハイブリッド粒子の130オングストローム孔樹脂を含むWaters ACQUITY H-class Bio UPLC(登録商標)システムを用いて実施した。インスリン試料を、82%w/v Na2SO4、18%v/vアセトニトリル、pH 2.3の移動相中で結合させ、かつ50%w/v Na2SO4、50%v/v アセトニトリル勾配流中で溶出させた。2 μlの試料を0.01M HClで酸性化し、かつ214 nmでのUV検出により、0.61 mL/分で分析した。分析は全て、40℃で実施した。
【0151】
実施例1 - 実例となる製剤
以下の実例となる製剤を調製することができる:
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
実施例A~I: *インスリン化合物=インスリン・アスパルト又はインスリン・リスプロ又はインスリン・グルリジン又は組換えヒトインスリン
【0162】
上記の製剤の調製方法:
インスリン粉末を水に添加し、かつ該粉末が完全に溶解するまでHClを添加する(完全溶解を達成するために、pHは3未満でなければならない)。ZnCl2を所要のレベルまで添加する。溶解したら、pHをおよそ7に調整し、かつインスリン濃度が所要の濃度の2倍となるように、容量を水で調整する。その後、組成物を、追加の賦形剤の混合物(全て所要の濃度の2倍)と1:1(v/v)で混合する。
【0163】
実施例2 - ニコチンアミド及び追加の賦形剤の存在下におけるインスリン・アスパルトの安定性
現在市販されている、速効型製品であるNovoRapid(登録商標)の製剤(表1の中の製剤F1)中におけるインスリン・アスパルトの安定性を、37℃における貯蔵の後に、多くのニコチンアミド含有製剤(表1中の製剤F2~F17)中のインスリン・アスパルトの安定性と比較した。製剤F2は、アルギニンを含有しており、かつWO2010/149772の表1中の製剤K(これは、超速効性薬力学/薬物動態プロファイルを有していることが示されていた。)に基づいていた。製剤F2とWO2010/149772の製剤Kとの間の唯一の相違は、現在市販されているNovoRapid(登録商標)との比較において、緩衝剤の影響を取り除くための、TRISの代わりのリン酸塩緩衝剤の使用である。製剤F3~F17は、インスリン・アスパルトの安定性に対する(1)塩類(2)ポリオール類及び(3)非イオン性界面活性剤の影響を研究するために設計された。
【0164】
表1: 試験を行ったインスリン・アスパルト製剤F1~F17の組成。すべての製剤は、インスリン・アスパルト(100 U/ml)、ZnCl
2としてイオン性亜鉛(0.3 mM)、フェノール(16 mM)及びm-クレゾール(16 mM)を含んでおり、かつpH 7.4に調整された。他の成分は、表中に挙げられている。
【表11】
【0165】
製剤F1~F17の視覚的評価の結果を、表2に示す。驚くべきことに、アルギニン含有製剤F2は、製剤F1(即ち、NovoRapid(登録商標)の製剤)と比べて、著しくより大きな粒子形成速度をもたらしたことが示された。製剤F2は、37℃で1週間の貯蔵後に「不合格」限界に到達した。一方、製剤F1は、同温度で3週間の貯蔵の後に、該限界に到達したのみであった。製剤F2からの10 mM NaClの除去は、粒子形成速度(F3対F2)に著しい影響を与えないことも示された。製剤F3からのアルギニンの除去は、粒子形成速度において、著しい低下を導き(F4対F3)、かつ、アルギニン不含製剤中におけるグリセロールの濃度の上昇(F5対F4)またはそれのマンニトール、代替ポリオールでの置換(F6対F5)は、粒子形成速度に最小の影響を与えるのみであったことも示された。塩化ナトリウム(F7~F9)、塩化カリウム(F10)及び酢酸ナトリウム(F11)を包含する塩類の使用は、アルギニンの存在におけるものと類似の粒子形成速度をもたらした。最低濃度の塩化ナトリウムを含む製剤(F7)のみが、1週間において「合格」の視覚的スコアをもたらしたように見えた。しかし、2週間の際には、塩を含む他の製剤全てと一緒に、「不合格」スコア5に到達した。70 mMの塩化ナトリウム(F13、F15及びF17)又は141 mMのグリセロール(F12、F14及びF16)を含む製剤への陰イオン界面活性剤の添加は、粒子形成速度の著しい低下をもたらした。すべてのケースにおいて、粒子形成速度は、製剤F1(即ち、NovoRapid(登録商標)の製剤)の粒子形成速度よりも低いか又は同等であった。ドデシルマルトシドを含む製剤(F16及びF17)が、最もよい成績を与えた。
【0166】
表2: インスリン・アスパルト製剤F1~F17の37℃での貯蔵後の視覚的スコア。
視覚的スコア1:実質的に粒子を含まない透明な溶液;視覚的スコア2:約5個の非常に小さい粒子;視覚的スコア3:約10~20個の非常に小さい粒子;視覚的スコア4:より大きい粒子を含む20~50個の粒子;視覚的スコア5:より大きい粒子を含む50個超の粒子。
【表12】
【0167】
製剤F1~F17中におけるHMWSの形成は、表3に示されており、かつ化学的に関連した種の形成は、表4に示されている。アルギニン含有製剤F2は、製剤F1(即ち、NovoRapid(登録商標)の製剤)と比べて、HMWS及び化学的に関連した種のより遅い速度をもたらした。製剤F3からのアルギニンの除去は、HMWSと化学的に関連した種の両者において、安定性の低下を導いた(F4対F3)。アルギニン不含製剤中におけるグリセロールの濃度の上昇(F5対F4)、又は、そのマンニトール、代替ポリオールでの置換(F6対F5)は、安定性に最小の影響を与えたのみであった。塩化ナトリウム(F7~F9)、塩化カリウム(F10)及び酢酸ナトリウム(F11)を含む塩の使用は、HMWSと化学的に関連した種の両者において、塩を含有しない製剤と比べて、より良い安定性をもたらした。塩の有益な効果は、濃度依存的であるように見え(F7~F9)、かつすべてのケースにおいて、それは、製剤F1(即ち、NovoRapid(登録商標)の製剤)の安定性よりも良好であった。70 mMの塩化ナトリウム(F13、F15及びF17)又は141 mMのグリセロール(F12、F14及びF16)を含む製剤への非イオン性界面活性剤の添加は、HMWSと化学的に関連した種の両者において、安定性に最小限度の影響をもたらしたのみであった。
【0168】
総合的に、非イオン性界面活性剤及び塩を含む製剤のみが、すべての態様において、市販されている製剤であるNovoRapid(登録商標)において達成されたものよりも、著しくよりよい安定性をもたらした。
【0169】
表3: 37℃での貯蔵後にSECで評価した、インスリン・アス
パルト製剤F1~F17中のHMWS (対開始時)の増加
【表13】
【0170】
表4: 37℃での貯蔵後に逆相クロマトグラフィーで評価した、
インスリン・アスパルト製剤F1~F17中の化学的に関連した種 (対開始時)の増加
【表14】
【0171】
本明細書及び以下に続く特許請求の範囲の全体を通して、文脈上、別段の解釈を要する場合を除き、「含む(comprise)」という用語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」のようなその変化形は、記載された整数、工程、整数の群又は工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数、工程、整数の群又は工程の群の除外を意味するものではないと理解されるであろう。
【0172】
本明細書において、「A及び/又はB」のように語句の中で使用される「及び/又は」という用語は、AとBの両者; A又はB; A(のみ);及びB(のみ)を含むことが意図されている。同様に、「A、B、及び/又はC」のように語句の中で使用される「及び/又は」という用語は、以下の実施態様の各々を包含することが意図されている:A、B、及びC;A、B、又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(のみ);B(のみ);並びにC(のみ)。
【0173】
引用された刊行物、特許、特許出願、インターネット・サイト、及びアクセッション番号/データベース配列(ポリヌクレオチド配列とポリペプチド配列の両者を含む)は全て、あたかも各々の個々の刊行物、特許、特許出願、インターネット・サイト、及びアクセッション番号/データベース配列が引用によりそのように組み込まれることが具体的かつ個別的に示されたと同じ程度まで、あらゆる目的のために、引用によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0174】
(配列表)
【化1】
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物(iv)非イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤。
(態様2)
前記インスリン化合物がインスリン・リスプロである、態様1に記載の製剤。
(態様3)
前記インスリン化合物がインスリン・アスパルトである、態様1に記載の製剤。
(態様4)
前記インスリン化合物がインスリン・グルリジンである、態様1に記載の製剤。
(態様5)
前記インスリン化合物が組換えヒトインスリンである、態様1に記載の製剤。
(態様6)
前記インスリン化合物が10~1000 U/mlの濃度で存在する、態様1乃至5のいずれか一項に記載の製剤。
(態様7)
前記ニコチン化合物がニコチンアミドである、態様1乃至6のいずれか一項に記載の製剤。
(態様8)
前記ニコチン化合物がニコチン酸又はその塩である、態様1乃至6のいずれか一項に記載の製剤。
(態様9)
前記ニコチン化合物が10~150 mMの濃度で存在する、態様1乃至8のいずれか一項に記載の製剤。
(態様10)
前記非イオン性界面活性剤がアルキルグリコシドである、態様1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
(態様11)
前記アルキルグリコシドがドデシルマルトシドである、態様10に記載の製剤。
(態様12)
前記非イオン性界面活性剤がポリソルベート界面活性剤である、態様1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
(態様13)
前記ポリソルベート界面活性剤がポリソルベート20又はポリソルベート80である、態様12に記載の製剤。
(態様14)
前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルエーテルである、態様1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
(態様15)
前記ポリエチレングリコールのアルキルエーテルが、ポリエチレングリコール(2)ドデシルエーテル、ポリエチレングリコール(2)オレイルエーテル及びポリエチレングリコール(2)ヘキサデシルエーテルから選択される、態様14に記載の製剤。
(態様16)
前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体である、態様1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
(態様17)
前記ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとのブロック共重合体が、ポロキサマー 188、ポロキサマー 407、ポロキサマー 171又はポロキサマー 185である、態様16に記載の製剤。
(態様18)
前記非イオン性界面活性剤がポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルである、態様1乃至9のいずれか一項に記載の製剤。
(態様19)
前記ポリエチレングリコールのアルキルフェニルエーテルが4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニル-ポリエチレングリコールである、態様18に記載の製剤。
(態様20)
前記界面活性剤が1~1000 μg/mlの濃度で存在する、態様1乃至19のいずれか一項に記載の製剤。
(態様21)
前記界面活性剤が10~100 μg/mlの濃度で存在する、態様20に記載の製剤。
(態様22)
前記第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩が一価又は二価陰イオンのナトリウム塩である、態様1乃至21のいずれか一項に記載の製剤。
(態様23)
前記陰イオンが一価陰イオンである、態様1乃至22のいずれか一項に記載の製剤。
(態様24)
前記陰イオンが無機陰イオンである、態様1乃至23のいずれか一項に記載の製剤。
(態様25)
前記陰イオンが有機陰イオンである、態様1乃至23のいずれか一項に記載の製剤。
(態様26)
前記陰イオンが塩化物である、態様24に記載の製剤。
(態様27)
前記陰イオンが酢酸塩である、態様25に記載の製剤。
(態様28)
前記第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩が、製剤中に30~200 mMの濃度で存在する、態様1乃至27のいずれか一項に記載の製剤。
(態様29)
前記イオン性亜鉛が、製剤中に、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.05%以上の濃度で存在する、態様1乃至28のいずれか一項に記載の製剤。
(態様30)
前記イオン性亜鉛が、製剤中のインスリン化合物の重量に基づく亜鉛の重量で0.5~1%の濃度で存在する、態様29に記載の製剤。
(態様31)
非荷電浸透圧調節剤を含む、態様1乃至30のいずれか一項に記載の製剤。
(態様32)
前記非荷電浸透圧調節剤が、トレハロース、マンニトール、グリセロール又は1,2-プロパンジオールからなる群から選択される、態様31に記載の製剤。
(態様33)
前記非荷電浸透圧調節剤がグリセロールである、態様32に記載の製剤。
(態様34)
前記製剤が等張性である、態様1乃至33のいずれか一項に記載の製剤。
(態様35)
pHが5.5~9.0の範囲内である、態様1乃至34のいずれか一項に記載の製剤。
(態様36)
防腐剤を含む、態様1乃至35のいずれか一項に記載の製剤。
(態様37)
前記防腐剤が、フェノール、m-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、プロピルパラベン、メチルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び塩化ベンゼトニウムからなる群から選択される、態様36に記載の製剤。
(態様38)
25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を含む、態様1乃至37のいずれか一項に記載の製剤。
(態様39)
25℃において4.5以上の亜鉛イオン結合に関するlogKを有する種から選択された亜鉛結合種を実質的に含まない、態様1乃至37のいずれか一項に記載の製剤。
(態様40)
真性糖尿病に罹患している対象の治療における使用のための、態様1乃至39のいずれか一項に記載の製剤。
(態様41)
有効量の態様1乃至39のいずれか一項に記載の製剤を、それが必要な対象に投与することを含む、真性糖尿病の治療方法。
(態様42)
1用量又は複数用量の態様1乃至39のいずれか一項に記載の製剤を含有する容器。
(態様43)
注射針とともに、1用量又は複数用量の態様1~39のいずれか一項に記載の製剤を含有する容器を含む、1回又は複数回使用のための注射器具。
(態様44)
複数用量の態様1~39のいずれか一項に記載の製剤を含むリザーバーと自動又は遠隔操作したときに1以上の用量の前記製剤が体内に投与されるように自動又は遠隔操作に適応されたポンプとを含む、医療器具。
(態様45)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物(iv)非イオン性界面活性剤;及び(v)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む、水性媒体による再構成に適切な乾燥固体医薬組成物。
(態様46)
水性媒体中に態様44に記載の乾燥固体医薬組成物を溶解させることを含む、態様1乃至39のいずれか一項に記載の製剤の調製方法。
(態様47)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤を添加することを含む、方法。
(態様48)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛、(iii)ニコチン化合物及び(iv)第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤の使用。
(態様49)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良する方法であって、該製剤に非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩を添加することを含む、方法。
(態様50)
(i)インスリン化合物、(ii)イオン性亜鉛及び(iii)ニコチン化合物を含む水性液体医薬製剤の貯蔵安定性を改良するための、非イオン性界面活性剤及び第一族金属と一価又は二価陰イオンとの間で形成された塩類から選択された塩の使用。
【配列表】