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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】建具用建材
(51)【国際特許分類】
   E06B 5/16 20060101AFI20240807BHJP
   E06B 1/34 20060101ALI20240807BHJP
   E06B 3/30 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/34 Z
E06B3/30
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020017191
(22)【出願日】2020-02-04
(65)【公開番号】P2021123920
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-04-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 輝道
(72)【発明者】
【氏名】大山 雄也
(72)【発明者】
【氏名】野田 憲佑
(72)【発明者】
【氏名】藤井 猛
(72)【発明者】
【氏名】千葉 整
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/154931(WO,A1)
【文献】特開2019-206869(JP,A)
【文献】特開2019-152091(JP,A)
【文献】特開2013-092020(JP,A)
【文献】特開平09-184372(JP,A)
【文献】特開平09-053374(JP,A)
【文献】特開2000-335944(JP,A)
【文献】特開2005-351008(JP,A)
【文献】特開平08-099060(JP,A)
【文献】特表2016-520424(JP,A)
【文献】特開2001-262942(JP,A)
【文献】特開2004-169453(JP,A)
【文献】特開2004-169454(JP,A)
【文献】特開2015-098773(JP,A)
【文献】特開2017-206913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 5/00 - 5/20
E06B 1/00 - 1/70
E06B 3/04 - 3/46
E06B 3/50 - 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属または樹脂によって成形された建材本体に溝状の凹部が設けられ、
前記凹部は、両側の側面がそれぞれ開口に向けて互いに近接するように傾斜して開口縁に至り、内部の幅に比較して開口幅が狭く構成され、
前記凹部には、流動状態で塗布されて硬化した熱膨張性部材が充填されていることを特徴とする建具用建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具用建材及び建具用建材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今の建具には、高い防火性が要求されている。このため、建具には、枠や框、あるいはこれら枠や框の内部に設けられる補強材等の建具用建材として、建材本体の表面に定形の熱膨張性部材を貼り付けるようにしたものが提供されている。この種の建具では、火災時等において高温に晒されると、熱膨張性部材が加熱により膨張し、枠と框との間の隙間、あるいは枠や框の中空部が閉塞される。この結果、室内外において火炎の貫通口が生じる事態が防止され、防火性の向上を図ることができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-56664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建材本体の表面には、ネジや突起等の突出物が設けられる場合がある。また、例えばガラスが装着される溝の部分には、両側が入隅状に構成されることになる。このように、建材本体の表面に突出物が設けられた部分や入隅状に構成された部分に対しては、熱膨張性部材を隙間なく貼り付けることが難しい。このため、この種の建材にあっては、経年によって熱膨張性部材が剥がれて脱落する事態を招来するおそれがある。また、大きな突出物がなく、また入隅となっていない場合であっても、樹脂が塗布された部分等、表面が平滑でなく、微小な凹凸が現れている建材については、同様の問題を招来するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、建材本体の表面状態にかかわらず、防火性の向上を図ることのできる建具用建材及び建具用建材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具用建材は、金属または樹脂によって成形された建材本体に溝状の凹部が設けられ、前記凹部は、両側の側面がそれぞれ開口に向けて互いに近接するように傾斜して開口縁に至り、内部の幅に比較して開口幅が狭く構成され、前記凹部には、流動状態で塗布されて硬化した熱膨張性部材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、流動性の熱膨張性部材が建材本体に塗布されて硬化したものであるため、建材本体の表面にネジや突起等の突出物が設けられている場合であっても、また入隅状に構成されている部分に対しても、隙間を生じさせることなく熱膨張性部材を設けることができる。従って、経年によっても熱膨張性部材が剥がれて脱落する事態を招来するおそれがなく、防火性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態である建具用建材の製造方法を概念的に示したもので、(a)は概要を示す斜視図、(b)は断面図、(c)はノズルに整形用のプレートを取り付けた状態で熱膨張性部材を塗布する様子を示す概念図である。
図2図1に示した方法で製造した建具用建材を切断具によって切断した状態を示す斜視図である。
図3】本発明に係る建具用建材の変形例1を示す断面図である。
図4】本発明に係る建具用建材の変形例2を示す断面図である。
図5】本発明に係る建具用建材の変形例3を示す断面図である。
図6】本発明に係る建具用建材の他の変形例を示すもので、(a)は変形例4の断面図、(b)は変形例5の断面図である。
図7】本発明に係る建具用建材の変形例6を示す断面図である。
図8】本発明に係る建具用建材の変形例7を示す断面図である。
図9】本発明に係る建具用建材の変形例8を示す断面図である。
図10】本発明に係る建具用建材の変形例9を示す斜視図である。
図11】本発明に係る建具用建材の変形例10を示す斜視図である。
図12】本発明に係る建具用建材の変形例11を示すもので、(a)は斜視図、(b)は変形例11に示す建具用建材を互いに接合した状態の図である。
図13】本発明に係る建具用建材の変形例12を示す斜視図である。
図14】本発明に係る建具用建材の変形例13を示す斜視図である。
図15】本発明に係る建具用建材の実施例1を示す要部縦断面図である。
図16】本発明に係る建具用建材の実施例2を示す要部縦断面図である。
図17】本発明に係る建具用建材の実施例3を示す要部縦断面図である。
図18】本発明に係る建具用建材の実施例4を示すもので、(a)は要部縦断面図、(b)は熱膨張性部材を塗布する様子を示す縦断面図である。
図19】本発明に係る建具用建材の実施例5を示すもので、(a)は吐出口が傾斜したノズルを適用して熱膨張性部材を塗布する様子を示す概念図、(b)は通常の吐出口を有したノズルを適用して熱膨張性部材を塗布する様子を示す概念図である。
図20】本発明に係る建具用建材の実施例6を示すもので、(a)はノズルの軸線が表面に直交するように配置した状態で熱膨張性部材を塗布する様子を示す概念図、(b)はノズルの軸線が表面に対して傾斜するように配置した状態で熱膨張性部材を塗布する様子を示す概念図である。
図21】本発明に係る建具用建材の実施例7を示す要部横断面図である。
図22】本発明に係る建具用建材の実施例8を示す要部横断面図である。
図23】本発明に係る建具用建材の実施例9を示す要部横断面図である。
図24】本発明に係る建具用建材の実施例10を示す要部縦断面図である。
図25】本発明に係る建具用建材の実施例11を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具用建材及び建具用建材の製造方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態である建具用建材の製造方法を示したものである。ここで例示する建具用建材1は、建具において枠体を構成する枠や、障子を構成する框として用いられるもので、建材本体2Aの表面2aに熱膨張性部材3を設けることによって構成してある。建材本体2Aは、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属、あるいは樹脂によって成形したものである。熱膨張性部材3は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材である。本実施の形態では、熱膨張性部材3として、流動性を有した状態で塗布することができ、その後に硬化するものを適用している。さらに実施の形態においては、接着剤を混合させて熱膨張性部材3に接着性を付加するようにしている。この種の熱膨張性部材3としては、例えば熱膨張性黒鉛を適用することができる。
【0012】
建材本体2Aに熱膨張性部材3を設ける場合には、流動性を有した状態においてノズル10から建材本体2Aの表面2aに吐出して塗布するようにしている。このとき、建材本体2Aとノズル10とを相対的に移動させれば、図1(b)に示すように、建材本体2Aの表面2aに連続して熱膨張性部材3を所望の幅、所望の厚さで塗布することができる。また、図1(c)に示すように、ノズル10に整形用のプレート11を付設すれば、建材本体2Aの表面2aに塗布した熱膨張性部材3を硬化する以前に順次平坦状に整形することも可能となる。
【0013】
建材本体2Aの表面2aに熱膨張性部材3を塗布した後においては、経時により、あるいは硬化剤を混合させて硬化反応を促進させる等の化学的な処理により、熱膨張性部材3を建材本体2Aの表面2aにおいて硬化させれば良い。熱膨張性部材3の硬化後において必要であれば、図2に示すように、建材本体2A及び熱膨張性部材3をカッター等の切断具20によって同時に切断して所望の長さに調整しても良い。
【0014】
上記のように構成した建具用建材1によれば、流動性を有した状態の熱膨張性部材3が建材本体2Aの表面2aにおいて硬化したものであるため、建材本体2Aの表面2aがネジや突起等の突出部によって多少凸凹している状態であっても、建材本体2Aの表面2aとの間に隙間を生じさせることなく熱膨張性部材3を設けることが可能となる。しかも、建材本体2Aの長さに関わらず熱膨張性部材3を連続して塗布することができるため、熱膨張性部材3の途中に継ぎ目や隙間が生じるおそれがない。従って、上述の建具用建材1を適用して建具を構成すれば、使用が長期にわたった場合にも熱膨張性部材3が脱落する事態を招来するおそれがなく、高温に晒された際に膨張して隙間を塞ぐことができるようになり、防火性の向上を図ることが可能となる。また、建材本体2Aに熱膨張性部材3を塗布・硬化させた後に切断して構成した建具用建材1においては、建材本体2Aの端部まで隙間なく熱膨張性部材3が設けられることになり、相互に連結して建具を構成した場合に、隣接する建具用建材1の熱膨張性部材3との間に隙間が生じるおそれがなくなる。
【0015】
熱膨張性部材3を塗布する場合には、必ずしも建材本体2Aの表面2aを平坦に調整しておく必要はなく、図3に示す変形例1の建具用建材1のように、建材本体2Bの表面2aに予め罫描き線を施す等により溝状の凹部2bを積極的に設けるようにしても良い。このように、建材本体2Bの表面2aに凹部2bを設けた状態で流動性を有した熱膨張性部材3を塗布すれば、硬化後において建材本体2Bと熱膨張性部材3との接触面積が増大することになり、両者の接合強度を向上させることができる。これにより、熱膨張性部材3が建材本体2Bから脱落する事態をより確実に防止することが可能となり、防火性の点で一層有利となる。
【0016】
また、図4に示す変形例2の建具用建材1及び図5に示す変形例3の建具用建材1のように、建材本体2C,2Dの表面2aに予め熱膨張性部材3の全幅に対応した溝状の凹部2c,2dを設け、それぞれの凹部2c,2dに熱膨張性部材3を塗布するようにしても良い。この場合においても、熱膨張性部材3の両側縁部が建材本体2C,2Dに接触することになるため、硬化後において建材本体2C,2Dとの接合強度を向上させることができる。特に、図5に示す変形例3のように、凹部2dを、いわゆる蟻溝状に構成すれば、熱膨張性部材3の内部幅が凹部2dの開口幅よりも大きくなるため、建材本体2Dから脱落する事態をより確実に防止することが可能となる。さらに、凹部2c,2dによって熱膨張性部材3を設ける位置が正確に規定されることになるため、一定の品質を有した建具用建材1を容易に量産することが可能となる。また、熱膨張性部材3の表面3aを建材本体2C,2Dの表面2a以下に設定することができ、建材本体2C,2Dの表面2aにフリクションステーやスライダー等の可動物を設けた場合にも熱膨張性部材3との干渉を招来することがなくなるため、建具用建材1の用途に関して制限が少なくなるという利点もある。
【0017】
建材本体2C,2Dの表面2aに凹部2c,2dを設ける方法としては、図4及び図5に示すものに限らず、図6(a)に示す変形例4の建具用建材1及び図6(b)に示す変形例5の建具用建材1のように、建材本体2Aの表面2aに互いの間に隙間を確保して2つのガイド部材4a,4bを設けるようにしても良い。より具体的に説明すると、図6(a)に示す変形例4は、薄板状のガイド部材4aを互いに平行となる状態で建材本体2Aの表面2aに設けることにより矩形断面の凹部2eを形成するようにしたものである。一方、図6(b)に示す変形例5は、断面が三角形状のガイド部材4bを設けることにより建材本体2Aの表面2aに台形断面の凹部2fを形成するようにしたものである。これら変形例4及び変形例5によれば、上述した作用効果に加え、建材本体2Aの形状を単純化することができ、その成形が容易となるという利点もある。建材本体2Aに設けたガイド部材4a,4bは、熱膨張性部材3が硬化した後に建材本体2Aから除去しても良いし、そのままにしても構わない。
【0018】
上述の例ではいずれも、建材本体2A,2B,2C,2Dの表面2aに対して表面3aが平行となるように熱膨張性部材3を塗布しているが、本発明は必ずしもこれに限定されない。例えば、図7に示す変形例6の建具用建材1のように、建材本体2Aの表面2aに対して一方方向に向けて傾斜した状態で熱膨張性部材3を塗布・硬化させても良いし、図8に示す変形例7の建具用建材1のように、異形の断面形状を有するように熱膨張性部材3を塗布・硬化させても良い。表面3aが傾斜するように熱膨張性部材3を塗布・硬化させたり、異形の断面形状となるように熱膨張性部材3を塗布・硬化させた場合には、図中の矢印及び2点鎖線で示すように、膨張する際の方向に指向性をもたせることができ、建具において火炎の貫通口となり得る部分をより確実に閉塞することも可能となる。より具体的に説明すると、図7の変形例6のように、右側が低くなるように表面3aが傾斜した状態で熱膨張性部材3を塗布・硬化させた場合には、傾斜していないものに比べて、右側に向けて膨張し易い傾向となることが予想される。従って、図7中の右側に火炎の貫通口となり得る隙間が生じる懸念がある場合には、この形状となるように熱膨張性部材3を塗布・硬化させることにより、実際に隙間が生じたとしてもこれをより確実に閉塞することができるようになる。また、図8の変形例7のように、断面が横に広い長円形で、表面3aの中央部に窪み3bを有するように熱膨張性部材3を塗布・硬化させた場合には、上部中央に向けて膨張しやすい傾向となることが予想される。従って、図8中の上部中央に火炎の貫通口となり得る隙間が生じる懸念がある場合には、この形状となるように熱膨張性部材3を塗布・硬化させることにより、実際に隙間が生じたとしてもこれをより確実に閉塞することができるようになる。
【0019】
熱膨張性部材3の膨張する方向に指向性をもたせる場合には、変形例6や変形例7のものに限らず、図9に示す変形例8の建具用建材1のように、板厚さが左右の幅と同等もしくはそれ以上となるような断面形状で建材本体2Aの表面2aに熱膨張性部材3を塗布・硬化させるようにしても良い。この変形例8では、図1(b)に示したものに比べて板厚を増大させるだけでなく、左右の幅寸法を小さくしている。従って、熱膨張性部材3の塗布量を大きく増大させることなく上方に向けてより多くの熱膨張性部材3を膨張させることが可能となる。
【0020】
特定の範囲でのみ熱膨張性部材3の膨張量を増やしたい場合には、図10に示す変形例9の建具用建材1のように、建材本体2Aの表面2aに一定の幅で熱膨張性部材3を塗布し、かつ当該特定範囲に対してさらに部分的に熱膨張性部材3′を設けるようにすれば良い。部分的に設ける熱膨張性部材3′としては、塗布したものを硬化させても良いし、既に固体状となった定形のものを貼り付けるようにしても良い。具体的な例としては、引き違い窓の下枠において、その全長に流動性を有した熱膨張性部材3を塗布・硬化させ、さらに障子の召し合わせ框に対応する位置に定形の熱膨張性部材3′を貼り付けるようにすること良い。上記のようにして熱膨張性部材3,3′を設けた場合には、召し合わせ框に対応する部分において膨張量が増大するため、下枠と召し合わせ框との間に隙間が生じたとしても、火炎の貫通口が生じる事態を防止することが可能となる。この場合においても、必要となる部分にのみ熱膨張性部材3′を増やすようにしているため、適用する熱膨張性部材3,3′の使用量を抑えることができ、製造コストが大きく増大する事態を防止することが可能となる。定形の熱膨張性部材3′を貼り付ける箇所としては、建材本体2Aの表面2aにおいて塗布・硬化させた熱膨張性部材3に隣接する位置であっても良いし、塗布・硬化させた熱膨張性部材3に重なる位置であっても良い。
【0021】
上述の例ではいずれも、建材本体2A,2B,2C,2Dの表面2aに連続して熱膨張性部材3を塗布しているが、必ずしも連続している必要はない。例えば、図11に示す変形例10の建具用建材1のように、必要となる部分にのみ断続的に熱膨張性部材3を塗布・硬化させるようにしても構わない。この場合、断続的に塗布した熱膨張性部材3が同一の直線上に配置されている必要もない。変形例10のように、熱膨張性部材3が途中で分断するように設けられた建具用建材1においては、熱膨張性部材3を横切るように排水経路を設定することができるため、建材本体2Aに多数の排水孔を設けることなく確実に排水を行うことが可能になる等の利点がある。
【0022】
熱膨張性部材3は、必ずしも建材本体2Aの全長に設ける必要はなく、図12(a)に示す変形例11の建具用建材1のように、建材本体2Eの端面2gから離隔するように熱膨張性部材3を塗布して硬化させるようにしても良い。変形例11のように、建材本体2Eの端面2gから離隔するように熱膨張性部材3を設けた場合には、図12(b)に示すように、建具用建材1の端部を互いに接合して建具を構成する場合に、建材本体2Eに設けられた熱膨張性部材3が互いに干渉する事態を防止することができ、建具の製造作業に影響を与えることがない。
【0023】
熱膨張性部材3は、必ずしも直線状に連続している必要はなく、また必ずしも同一の平面上に設けられている必要もない。例えば、図13に示す変形例12の建具用建材1では、第1平板部2F1と第2平板部2F2とが互いに直交するように設けられた断面がL字状を成す建材本体2Fを対象として熱膨張性部材3を3次元的に設けるようにしている。すなわち、変形例12では、第1平板部2F1の表面2aに対して長手方向に第1熱膨張性部分3-1を塗布した後、同一の表面2a上において塗布方向を90°変更して互いに屈曲状となるように第2熱膨張性部分3-2を塗布している。さらに、第2熱膨張性部分3-2から第2平板部2F2の表面2aに沿うように塗布方向を90°変更して第3熱膨張性部分3-3を塗布している。このように、塗布方向を変更することで、途中で分断することなく連続した熱膨張性部材3を2次元的や3次元的に設けることが可能となる。
【0024】
熱膨張性部材3には、膨張を開始する温度が互いに異なるものがある。そこで、図14に示す変形例13の建具用建材1では、互いに膨張を開始する温度が異なる2種類の熱膨張性部材3A,3Bを互いに積層するように建材本体2Aの表面2aに設けるようにしている。2種類の熱膨張性部材3A,3Bは、1種類目を塗布した後に2種類目を塗布しても良いが、2つの吐出口を有したノズルを適用して同時に塗布するようにしても構わない。塗布する順番としては、膨張を開始する温度が低いものが上層となるように設けることが好ましい。図示の例では、上層の熱膨張性部材3Aが、下層の熱膨張性部材3Bよりも膨張開始温度が低く設定されている。
【0025】
このように膨張開始温度が異なる2種類の熱膨張性部材3A,3Bを建材本体2Aの表面2aに設けた建具用建材1によれば、時差をもって熱膨張性部材3A,3Bが膨張することになるため、幅広い温度範囲において火炎の貫通口となり得る隙間を確実に閉塞することが可能となる。例えば、建材本体2Aが200℃程度の温度状態となった時点でまず膨張開始温度の低い第1の熱膨張性部材3Aが膨張し、その時点までに生じた隙間が閉塞されることになる。その後、建材本体2Aの温度が800℃程度まで上昇し、熱変形によって新たに隙間が生じた場合にも、膨張開始温度の高い第2の熱膨張性部材3Bが膨張することによってこれが閉塞されることになり、防火性の点できわめて有利となる。なお、2種類の熱膨張性部材3A,3Bを互いに積層するようにしているため、1種類の熱膨張性部材を設ける場合に比べて大きなスペースを要することもない。しかしながら、2種類の熱膨張性部材3A,3Bは必ずしも積層する必要はなく、左右に並設するようにしても良い。また、建材本体2Aに設ける熱膨張性部材は必ずしも2種類である必要はなく、膨張開始温度が異なる3種類以上の熱膨張性部材を互いに隣接するように設けても良い。さらに、膨張開始温度の異なる複数種の熱膨張性部材は、互いに同一量となるように塗布する必要はなく、用途に応じて互いに塗布量が異なるように設けても良い。
【0026】
以下、建具用建材として、より具体的な形状のものを用いた本発明の実施例について説明を行う。いずれの実施例においても建材本体に設けられる熱膨張性部材は、上述したように流動性を有した状態で塗布されて、その後に硬化したものである。
【0027】
図15に示す実施例1及び図16に示す実施例2は、それぞれ障子の下框となる建具用建材30の建材本体31において複層ガラス等の面材32が装着されるガラス収容溝31aの内部に熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。図からも明らかなように、流動性を有した熱膨張性部材3を塗布するようにしているため、入隅部31bに対しても隙間なく熱膨張性部材3を設けることが可能となるという利点がある。また、流動性を有した状態の熱膨張性部材3には接着性があるため、硬化する以前にセッティングブロックSBを配置することで、図15の実施例1に示すように、別途接着剤を要することなくセッティングブロックSBを建材本体31に固定することが可能となる。さらに、熱膨張性部材3として、硬化した場合に所望の強度を呈するものを適用することで、図16の実施例2に示すように、別途セッティングブロックを設けることなく熱膨張性部材3にセッティングブロックとしての機能を兼用させることも可能である。これら実施例1及び実施例2では、建具用建材30が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することでガラス収容溝31aが閉塞された状態となり、建具用建材30において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。
【0028】
図17に示す実施例3は、実施例1と同様、障子の下框30′において面材32を収容するガラス収容溝31a′よりも外周側の中空部30a′に熱膨張性部材3が設けられたものである。図からも明らかなように、下框30′の中空部30a′に対しては、周囲が閉じられているため直接熱膨張性部材3を塗布して設けることはできない。しかしながら、中空部30a′に配設する補強材33に対して予め熱膨張性部材3を塗布して設けておけば、図示のように、下框30′の中空部30a′に対しても熱膨張性部材3を設けることが可能となる。この実施例3においては、補強材33が建材本体に相当する構成であり、熱膨張性部材3が塗布して設けられた補強材33が建具用建材に相当する構成となる。なお、補強材を建材本体として熱膨張性部材を設ける場合には、必ずしも中空部30a′に配設される補強材33に限らない。
【0029】
図18に示す実施例4は、実施例1と同様、障子の下框となる建具用建材30の建材本体31においてガラス収容溝31aの内部に熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。但し、実施例4では、図18(a)に示すように、排水孔31cを避けた両側にのみ熱膨張性部材3を塗布するようにしている。より具体的に説明すると、実施例4では、それぞれ排水孔31cに向けて漸次板厚が小さくなるように熱膨張性部材3が塗布してある。入隅部31bに熱膨張性部材3を塗布する場合には、図18(b)に示すように、吐出口10aが入隅部31bの谷筋に対向するようにノズル10を配置し、この状態から建材本体31に熱膨張性部材3を塗布すれば良い。上記のようにして熱膨張性部材3を塗布した場合には、入隅部31bとの間に隙間が生じる事態を防止することができるばかりか、熱膨張性部材3の表面3aが排水孔31cに対して漸次低くなるため、熱膨張性部材3の塗布作業を容易に行うことができる。この実施例4においても、建具用建材30が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することでガラス収容溝31aが閉塞され、さらには排水孔31cが塞がれた状態となり、建具用建材30において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。通常の建具の使用時においては、ガラス収容溝31aに浸入した水が、傾斜する熱膨張性部材3の表面3aによって排水孔31cに案内され、排水孔31c及び下方の排水孔31dを通じて外部に排出されるため、排水性の点で有利となり、ガラス収容溝31aに長期にわたって水が滞留する事態を防止することができる。なお、排水孔31cに対して熱膨張性部材3の塗布を避けるようにしているが、建具を構成する場合に他の建具用建材に接合される部分や部品が取り付けられる部分、加工が必要になる部分等についても熱膨張性部材3を塗布しないことが好ましい。また、実施例1、実施例2及び実施例4は、建具用建材30として障子の下框について例示しているが、上框や縦框、あるいは枠体を構成する上枠、下枠、縦枠についても同様に適用することは可能である。さらに、補強材33が設けられる対象としては、上框や縦框であっても良いし、枠体を構成する上枠、下枠、縦枠であっても構わない。
【0030】
図19に示す実施例5は、障子の戸先框となる建具用建材40の建材本体41において互いに対向する壁部材41aの間に構成された凹溝41bの内表面41cに対して熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。凹溝41bの内表面41cに熱膨張性部材3を塗布する場合には、ノズル10を傾斜した状態で壁部材41aの間に挿入すれば良い。この場合、図19(a)に示すように、先端が傾斜したノズル10を適用すれば、一定の板厚を有するように熱膨張性部材3を塗布することができる。また、図19(b)に示すように、先端が軸線に対して直交するように設けられたノズル10を適用すれば、板厚が異なるように熱膨張性部材3を塗布することが可能である。実施例5においては、建具用建材40が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することにより、図示せぬ枠との間の隙間が塞がれるため、建具用建材40において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。
【0031】
図20に示す実施例6は、下枠となる建具用建材50の建材本体51において傾斜する表面51aに熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。傾斜する表面51aに熱膨張性部材3を塗布する場合には、図20(a)に示すように、ノズル10の軸線が表面51aに直交するように配置すれば、一定の板厚を有するように熱膨張性部材3を塗布することができる。また、図20(b)に示すように、ノズル10の軸線が表面51aに対して傾斜するように配置すれば、板厚が異なるように熱膨張性部材3を塗布することが可能である。実施例6においては、建具用建材50が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することにより、図示せぬ障子との間の隙間が塞がれるため、建具用建材50において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。なお、実施例6は建具用建材50として下枠を例示しているが、上枠や縦枠に適用してももちろん良い。
【0032】
図21に示す実施例7、図22に示す実施例8、図23に示す実施例9は、いずれもドアの戸先枠となる建具用建材60の建材本体61に熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。実施例7においては、建材本体61においてドアパネル62の端面62aに対向する内周側の表面61aに熱膨張性部材3を設けるようにしている。熱膨張性部材3は、一定の板厚を有した平板状を成すもので、建材本体61の全長にわたって設けてある。実施例8においては、建材本体61から内周側に突出する戸当たり部61bの凹部61cに熱膨張性部材3を設けるようにしている。戸当たり部61bの凹部61cは、ドアパネル62との間のシールを行うシール部材63が装着されるもので、内部の幅に比較して開口幅が狭く構成されている。シール部材63が装着された状態においては、熱膨張性部材3が外部に露出することはない。すなわち、実施例8では、凹部61cに設けられた熱膨張性部材3を覆い隠すようにシール部材63が装着されることになる。実施例9は、実施例7と同様、建材本体61の内周側表面61aに熱膨張性部材3を設けたものである。但し、実施例9では、内周側の表面61aから突出する突条61dと、内周側表面61aとの間の入隅部61eを覆うように熱膨張性部材3が塗布してある。熱膨張性部材3の板厚は、一方側(例えば室外側)に向けて漸次小さくなるように構成してある。熱膨張性部材3の表面3aは、ドアパネル62に対向している。これら実施例7~実施例9においては、建具用建材60が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することにより、ドアパネル62との間の隙間が塞がれるため、建具用建材60において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。なお、実施例7~実施例9は、建具用建材60として戸先枠を例示しているが、吊り元側の枠や上枠、下枠に適用してももちろん良い。
【0033】
図24に示す実施例10は、ドアの下枠となる建具用建材70の建材本体71に熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。実施例10においては、建材本体71の内周側表面71aと、建材本体71の内周側表面71aから内周側に突出する戸当たり部71bとの間の隙間(凹部)71cに熱膨張性部材3を塗布するようにしている。より具体的に説明すると、実施例10の戸当たり部71bは、建材本体71の内周側表面71aにおいて一方側(例えば室内側)の縁部から突出したもので、突出縁部において他方側(例えば室外側)に向けて突出する突出部71dを有している。突出部71dは、ドアパネル72との間のシールを行うシール部材73を装着するための凹部71eを構成するためのものである。突出部71dと建材本体71の内周側表面71aとの間には、溝状の隙間71cが確保してある。上述した熱膨張性部材3は、建材本体71の内周側表面71aと突出部71dとの間に確保された隙間71cに塗布するようにしている。実施例10においても、凹部71eにシール部材73が装着された状態においては、熱膨張性部材3が外部に露出することはない。この実施例10においては、建具用建材70が高温状態となると、熱膨張性部材3が膨張することにより、ドアパネル72との間の隙間が塞がれるため、建具用建材70において室内外方向に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができるようになる。なお、実施例10では、建具用建材としてドアの下枠を例示しているが、ドアの上枠や縦枠に適用してももちろん良い。
【0034】
図25に示す実施例11は、障子の面材となる建具用建材80の建材本体81に対して四周の外周面に熱膨張性部材3が塗布して設けられたものである。建材本体81は、スペーサ81Aを介して2枚のガラス板81Bを積層した複層ガラスである。スペーサ81Aは、例えばアルミニウム製の筒体81A1の内部に乾燥剤81A2を充填したもので、筒体81A1を介してそれぞれのガラス板81Bに接着されている。さらに、スペーサ81Aよりも外周側となる部分には、封止材81Cが充填してある。封止材81Cは、樹脂製のものであり、スペーサ81A及び2枚のガラス板81Bに接着されている。熱膨張性部材3は、この封止材81Cと2枚のガラス板81Bの外周面81aとを覆うように塗布してある。建材本体81には、四周に框が装着されて障子となる。框を装着する際には、上述したように、熱膨張性部材3をセッティングブロックとして機能させるようにしても良い。なお、複層ガラスを建材本体81として熱膨張性部材3を設ける場合には、必ずしも建材本体81の外周面81aを覆うように設ける必要はなく、例えば上述した封止材81Cに換えて熱膨張性部材3をスペーサ81Aと2枚のガラス板81Bの表面とに接触するように塗布しても良い。
【0035】
なお、上述した実施の形態では、建具用建材として枠や框となるものや障子の面材となるものを例示しているが、本発明はこれに限定されず、建具を構成するものであれば、その他のものであっても良い。例えば、枠に対して障子を開閉可能に支持するフリクションステーや蝶番、さらには枠や框に付設される補強材を、それぞれ建具用建材として熱膨張性部材を塗布する対象としても良い。また、建具用建材としては、必ずしも障子やドアパネルを開閉可能に支持するものに限らず、例えばシャッターを支持するシャッター枠を構成するためのものであっても構わない。
【0036】
以上のように、本発明に係る建具用建材は、金属または樹脂によって成形された建材本体に、流動状態で塗布されて硬化した熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、流動性の熱膨張性部材が建材本体に塗布されて硬化したものであるため、建材本体の表面にネジや突起等の突出物が設けられている場合であっても、また入隅状に構成されている部分に対しても、隙間を生じさせることなく熱膨張性部材を設けることができる。従って、経年によっても熱膨張性部材が剥がれて脱落する事態を招来するおそれがなく、防火性の向上を図ることが可能となる。
【0037】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体に設けられた溝状の凹部に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、凹部に対して熱膨張性部材を設ければ、熱膨張性部材の位置が常に同一となり、一定の品質を有した建具用建材を容易に製造することができる。
【0038】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記凹部は、内部の幅に比較して開口幅が狭く構成されていることを特徴としている。
この発明によれば、凹部の開口幅に対して内部の寸法が大きくなるため、熱膨張性部材が建材本体から脱落する事態をより確実に防止することができるようになる。
【0039】
また本発明は、上述した建具用建材において、シール部材が装着される凹部に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、熱膨張性部材を設ける凹部を専用に形成する必要がないため、建材本体の形状が複雑化する事態を防止し、その成形を容易化することができるようになる。
【0040】
また本発明は、上述した建具用建材において、面材が装着される凹部に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、熱膨張性部材を設ける凹部を専用に形成する必要がないため、建材本体の形状が複雑化する事態を防止し、その成形を容易化することができるようになる。
【0041】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体に2つのガイド部材が設けられ、これら2つのガイド部材の間に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、熱膨張性部材がガイド部材との間においても接合された状態となるため、建材本体から脱落する事態を防止することができる。
【0042】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体の表面からの板厚が異なる状態で前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、熱膨張性部材が膨張する際に指向性をもたせることができ、例えば火炎の貫通口となり得る隙間をより確実に閉塞することが可能となる等の利点がある。
【0043】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体に設けられた排水孔に向けて板厚が漸次小さくなるように前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、熱膨張性部材の傾斜によって水を排水孔に誘導することができ、排水性の向上を図ることができるようになる。
【0044】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体に設けられた入隅部に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、熱膨張性部材が入隅部を構成する建材本体の2つの面に接触するため、熱膨張性部材と建材本体との接合強度を向上させることができる。
【0045】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記熱膨張性部材が塗布された建材本体に、定形の熱膨張性部材が貼り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、所望の部分において熱膨張性部材の膨張量を増やすことができ、隙間の閉塞をより確実に行うことが可能となる。
【0046】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記熱膨張性部材は、互いに異なる温度で膨張する第1の熱膨張性部材と第2の熱膨張性部材とを有し、これら第1の熱膨張性部材及び前記第2の熱膨張性部材が相互に隣接して設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、時差をもって熱膨張性部材が膨張することになるため、例えば、建材本体の熱変形が小さい状態からその後に拡大した状態までの間において隙間を塞ぐことが可能となり、防火性の点できわめて有利となる。
【0047】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記第1の熱膨張性部材は、前記第2の熱膨張性部材よりも膨張開始温度が低く設定されたものであり、前記第2の熱膨張性部材の表面に重なるように設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、大きなスペースを要することなく2種類の熱膨張性部材を設けることが可能となる。
【0048】
また本発明は、上述した建具用建材において、途中で分断するように前記熱膨張性部材が断続的に設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、熱膨張性部材を横断するように排水経路を設定することができるようになる。
【0049】
また本発明は、上述した建具用建材において、端部が前記建材本体の端面から離隔した状態で前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、複数の建材本体を接合する際に熱膨張性部材が相互に干渉する事態を防止することができる。
【0050】
また本発明に係る建具用建材は、板状に構成された建材本体の外周部分に、流動状態で塗布されて硬化した熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、板状を成す建材本体の外周域に隙間が生じる事態を防止することができるようになる。
【0051】
また本発明は、上述した建具用建材において、前記建材本体は、スペーサを介して複数のガラス板を積層した複層ガラスであり、前記ガラス板の間において前記スペーサの外周部に充填される封止材に前記熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明よれば、框側に熱膨張性部材を設けることなく複層ガラスと框との間の隙間を塞ぐことが可能となる。
【0052】
また、本発明に係る建具用建材の製造方法は、金属または樹脂によって成形された建材本体に流動性を有した状態の熱膨張性部材を塗布した後、前記熱膨張性部材を硬化させることを特徴としている。
この発明によれば、流動性の熱膨張性部材が建材本体に塗布されて硬化したものであるため、建材本体の表面にネジや突起等の突出物が設けられている場合であっても、また入隅状に構成されている部分に対しても、隙間を生じさせることなく熱膨張性部材を設けることができる。従って、経年によっても熱膨張性部材が剥がれて脱落する事態を招来するおそれがなく、防火性の向上を図ることが可能となる。
【0053】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、前記建材本体の表面からの板厚が異なる状態で前記熱膨張性部材を塗布することを特徴としている。
この発明によれば、熱膨張性部材が膨張する際の方向に指向性をもたせることができ、火炎の貫通口となり得る隙間をより確実に閉塞することが可能となる。
【0054】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、前記建材本体の表面に対してノズルを傾けて設置し、前記ノズルから前記熱膨張性部材を塗布することを特徴としている。
この発明よれば、建材本体の表面からの板厚が異なる状態で熱膨張性部材を容易に塗布することが可能となる。
【0055】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、先端が傾斜したノズルから前記熱膨張性部材を塗布することを特徴としている。
この発明によれば、建材本体の表面からの板厚が異なる状態で熱膨張性部材を容易に塗布することが可能となる。
【0056】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、塗布した熱膨張性部材が硬化する以前に前記熱膨張性部材の整形を行うことを特徴としている。
この発明よれば、塗布した熱膨張性部材が硬化する以前であれば形状に整えることができるため、用途に応じた任意形状の熱膨張性部材を設けることが可能となる。
【0057】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、前記建材本体に設けられた入隅部の谷筋に吐出口が対向するようにノズルを配置し、前記ノズルから前記入隅部に前記熱膨張性部材を塗布することを特徴としている。
この発明よれば、吐出口が入隅部に対向した状態で熱膨張性部材を塗布するようにしているため、建材本体との間に隙間ができる事態をより確実に防止することができる。
【0058】
また本発明は、上述した建具用建材の製造方法において、前記熱膨張性部材が塗布された状態で所望の長さに切断することを特徴としている。
この発明よれば、熱膨張性部材の長手に沿った寸法を建材本体の寸法に合致させることなく、建材本体の両端にわって隙間なく熱膨張性部材を設けることが可能となる。
【符号の説明】
【0059】
1,30,40,50,60,70,80 建具用建材、2A,2B,2C,2D,2E,2F,31,41,51,61,71,81 建材本体、2a,51a,61a 表面、2b,2c,2d,2e,2f,61c,71e 凹部、2g 端面、3,3′,3A,3B 熱膨張性部材、4a,4b ガイド部材、10 ノズル、10a 吐出口、31a ガラス収容溝、31b,61e 入隅部、31c 排水孔、32 面材、41c 内表面、63,73 シール部材、71c 隙間、81A スペーサ、81B ガラス板、81C 封止材
図1
図2
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