(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】土間コンクリート除去方法およびポール立設方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20240807BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20240807BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
E04G23/02 Z
E02D27/00 D
E04B1/58 511H
E04G23/02 F
(21)【出願番号】P 2020050134
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】北野 正己
(72)【発明者】
【氏名】相場 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】浄土 和輝
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-233512(JP,A)
【文献】特開平07-279444(JP,A)
【文献】特開2018-123543(JP,A)
【文献】特開平04-353168(JP,A)
【文献】登録実用新案第3081428(JP,U)
【文献】特開平03-136812(JP,A)
【文献】実開昭49-096731(JP,U)
【文献】特開平09-302613(JP,A)
【文献】特開平05-214820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0282993(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0295217(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/00-23/08
E02D 27/00
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法であって、
コンクリートカッターにより前記土間コンクリートにおける表面上で矩形の各辺の少なくとも一部を切削し、表面が前記矩形で囲われた形状のブロックを形成する切削工程と、
前記ブロックに吊り具を設置する吊り具工程と、
前記吊り具を介して吊り上げ装置によって前記ブロックを吊り上げる吊り上げ工程と、
前記ブロックにおける地中部の切り残し角部をさらに切削工具で切削する補助切削工程と、
を
有することを特徴とする土間コンクリート除去方法。
【請求項2】
既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法であって、
コンクリートカッターにより前記土間コンクリートにおける表面上で多角形の矩形角部を超えて井桁状に切削し、表面が前記多角形で囲われた形状のブロックを形成する切削工程と、
前記ブロックに吊り具を設置する吊り具工程と、
前記吊り具を介して吊り上げ装置によって前記ブロックを吊り上げる吊り上げ工程と、
前記矩形角部を超えて切削したオーバー切削部を充填剤で埋める埋め戻し工程と、
を有することを特徴とする土間コンクリート除去方法。
【請求項3】
既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法であって、
コンクリートカッターにより前記土間コンクリートにおける表面上で多角形の各辺の少なくとも一部を切削し、表面が前記多角形で囲われた形状のブロックを形成する切削工程と、
前記ブロックに吊り具を設置する吊り具工程と、
前記吊り具を介して吊り上げ装置によって前記ブロックを吊り上げる吊り上げ工程と、
を有し、
前記切削工程は、軸方向に並列する回転式の2枚刃を用い、
前記2枚刃の前記コンクリートカッターによって前記土間コンクリートを切削する第1切削工程と、
前記第1切削工程の後に、2枚刃の前記コンクリートカッターによって形成された二重の切り込み線で挟まれた領域からスリットガラを除去してスリットを形成するスリットガラ除去工程と、
前記スリットガラ除去工程の後に、第1切削工程で切削された箇所をさらに前記コンクリートカッターによって切削する第2切削工程と、
を有することを特徴とする土間コンクリート除去方法。
【請求項4】
前記切削工程では、前記土間コンクリートにおける少なくとも表面上で閉じた形状に前記ブロックを形成することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の土間コンクリート除去方法。
【請求項5】
前記土間コンクリートに配筋が設けられている場合には、前記切削工程において、前記土間コンクリートとともに前記配筋を切削することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の土間コンクリート除去方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の土間コンクリート除去方法によって前記ブロックが除去された箇所を掘って穴を形成する掘削工程と、
前記穴にポールを立てるポール立設工程と、
前記穴にコンクリートを打設して前記ポールを固定する打設工程と、
を有することを特徴とするポール立設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法および該土間コンクリート除去方法によって除去された箇所にポールを立設するポール立設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の土間コンクリートに対して後付けでカーポートなどの構造物を施工する要請がある。この場合、まず土間コンクリートにおけるカーポートのポール設置部分を除去する必要がある(特許文献1参照)。土間コンクリートには内部にメッシュ状の配筋が敷設されている場合がある。ポールを安定して設置するためには、ポールの断面積に比較してある程度広い面積の土間コンクリートを除去し、その中心部にポールを配置し、そしてその周辺部にコンクリートを打設する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
土間コンクリートの一部を除去するには次のような工法が考えられる。すなわち、まずポール設置に必要な所定の矩形領域の輪郭部をコンクリートカッターで切削する。そして切削した領域内の土間コンクリートを工具で斫つる。この斫り工程で用いる工具は、ハンマードリルおよび振動ドリルなどの自動工具またはノミなどの手動工具が挙げられる。次いで、土間コンクリートが除去されたらその内部の配筋を切断する。発生したガラを土嚢袋に収納する。土嚢袋をトラックに持ち込む。
【0005】
このような土間コンクリート除去方法では次のような問題がある。すなわち、ポールを安定して立設するためには、ある程度広い面積の土間コンクリートを除去する必要があることから、手動工具を用いて斫り工程を行うことは相当の労力を要する。また、自動工具を用いる場合でも相当の時間を要し、さらに騒音が長時間発生し得る。さらに、発生するガラは細分化されており、全てを土嚢袋に収納するのには時間と手間がかかる。さらにまた、ガラが収納された土嚢袋は主に人手によってトラックまで搬送しなければならず、労力を要する。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、短時間で効率的に土間コンクリートの一部を除去することのできる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法であって、コンクリートカッターにより前記土間コンクリートにおける表面上で多角形の各辺の少なくとも一部を切削し、表面が前記多角形で囲われた形状のブロックを形成する切削工程と、前記ブロックに吊り具を設置する吊り具工程と、前記吊り具を介して吊り上げ装置によって前記ブロックを吊り上げる吊り上げ工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様にかかるポール立設方法は、上記の土間コンクリート除去方法によって前記ブロックが除去された箇所を掘って穴を形成する掘削工程と、前記穴にポールを立てるポール立設工程と、前記穴にコンクリートを打設して前記ポールを固定する打設工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法では、切削工程によって土間コンクリートの表面上で閉じた形状のブロックを形成し、さらにブロックを吊り上げて除去することから、従来の施工方法における斫り工程が不要であり、短時間で効率的に土間コンクリートの一部を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法の適用により施工されるカーポートの斜視図である。
【
図2】ポールが立設された土間コンクリートの断面図である。
【
図3】ポールを立設するために土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法、およびその後にポールを立設するポール立設方法のフローチャートである。
【
図5】切削工程で切削される土間コンクリートの断面図である。
【
図8】吊り上げ工程における玉掛け作業を示す図である。
【
図9】吊り上げ工程における吊り上げ作業を示す図である。
【
図11】掘削工程およびポール立設工程の様子を示す図である。
【
図13】第1の変形例にかかる土間コンクリート除去方法のフローチャートである。
【
図14】第2の変形例にかかる土間コンクリート除去方法のフローチャートである。
【
図16】第1切削工程で切削される土間コンクリートを示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。
【
図17】スリットガラ除去工程における土間コンクリートを示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。
【
図18】第2切削工程で切削される土間コンクリートを示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。
【
図19】切削工程で形成するブロックの変形例を示す図であり、(a)は表面上の矩形で各辺の角部が切削されない場合を示す図であり、(b)は表面上の矩形で各辺の途中部が切削されない場合を示す図である。
【
図20】本発明の一実施形態にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法の適用により施工される構造物の例であり、(a)はテラスの斜視図であり、(b)はポストの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法の適用により施工されるカーポート10の斜視図である。
図2は、ポール12が立設された土間コンクリート16の断面図である。
【0013】
図1に示すように、カーポート10は4本のポール12と、ルーフ(被支持体)14とを備える。4本のポール12はルーフ14の略四隅を支持しており、それぞれ土間コンクリート16に立設している。土間コンクリート16は予めコンクリートで形成されており、配筋18によって補強されている場合がある。配筋18は地下で縦横に敷設されてメッシュを形成している。ポール12は、既存の土間コンクリート16に対して後付けで立設されたものである。すなわち、このカーポート10では、土間コンクリート16に矩形の穴20を形成し、該穴20にポール12を立てた後にコンクリート22を打設することによって、ポール12を固定している。
【0014】
図2に示すように、土間コンクリート16は、地面24の上に形成されている。なお、地面24とは「地表」のことではなく、土間コンクリート16の厚みに応じて適度に掘り下げられていてもよい。上記のとおり、土間コンクリート16には配筋18が設けられている。配筋18は土間コンクリート16の直下で該土間コンクリート16を支持し、または土間コンクリート16の下方部分に含まれている。
【0015】
まずは、
図1および
図2の土間コンクリート16の一部を除去する方法、およびその後にポール12を立設する方法について
図3~
図12を参照しながら説明する。
図3は、ポール12を立設するために土間コンクリート16の一部を除去する土間コンクリート除去方法、およびその後にポール12を立設するポール立設方法のフローチャートである。この方法は、順にステップS1の切削工程と、ステップS2の補助切削工程と、ステップS3の吊り具工程と、ステップS4の吊り上げ工程と、ステップS5のブロック搬送工程と、ステップS6の掘削工程と、ステップS7のポール立設工程と、ステップS8の打設工程と、ステップS9の被支持体取付工程とを有する。このうち、ステップS1~S5までが土間コンクリート除去方法であり、それ以降がポール立設方法である。以下、各工程について説明する。
【0016】
図4は、切削工程(
図3のステップS1)の様子を示す図である。
図4では作業員の図示を省略している。切削工程では、コンクリートカッター30により土間コンクリート16を切削し、少なくとも表面上で閉じた表面領域32を形成する。コンクリートカッター30は、例えば円盤刃30aを回転させてコンクリートを切削する工具である。コンクリートカッター30は湿式または乾式のいずれでもよい。
【0017】
コンクリートカッター30は、表面領域32の大きさに応じて各種のサイズを適用することができる。例えば、エンジン式などで大型のものは、大径の円盤刃30aを用いることができ、一度に深く切り込むことができる。また、大型のものは駆動力も大きいため、切削速度が速い。電動式などで小型(ハンディ式を含む)のものは、軽量で扱いやすく、また円盤刃30aとして小径のものを用いることができ、後述する切り残し角部32cを小さくすることができる。
【0018】
図4で示す土間コンクリート除去方法における表面領域32は、土間コンクリート16の表面上で切り込み線32aによって閉じられた任意の多角形の領域であり、例えば矩形や三角形などである。また、後述するように(
図19参照)、土間コンクリート16における表面上で多角形の各辺の少なくとも一部を切削し、多角形で囲われた形状のブロック34を形成するようにしてもよい。
【0019】
表面領域32を平面視で矩形にすると、4回の切削で適度な広さを確保することができる。表面領域32は仮想線で示すポール12の断面積よりも適度に広く確保され、積雪量(つまりルーフ14に加わる負荷)などの条件にもよるが、例えば一辺の距離Lが500mm程度である。表面領域32の切り込み線32aは矩形の角部を超えたオーバー切削部32bが形成されないようにしている。オーバー切削部32bを形成しないことにより、好適な外観品質が得られる。
【0020】
表面領域32の角部の地中には後述する切り残し角部32c(
図6参照)があるが、土間コンクリート16の下面は地面24(
図5参照)との間で固着されている訳ではないことから、この時点で表面領域32を有するブロック34が実質的に形成される。
【0021】
図5は、切削工程で切削される土間コンクリート16の断面図である。切削工程では、土間コンクリート16をコンクリートカッター30の円盤刃30aを深さ方向および横方向に移動させて各切り込み線32aを形成する。横方向の移動については、表面上で切り込み線32aが規定の距離Lとなるように移動させ、オーバー切削部32b(
図4参照)が形成されないようにする。
【0022】
切削工程では土間コンクリート16とともに配筋18を切削する。配筋18が切削されていることは、金属の切り屑の発生や、切削音、切削抵抗および火花の発生等により認識することができる。なお、切削工程においてコンクリートカッター30によって配筋18を含む深さまで距離Lの切り込み線32aを形成するのは、必ずしも一度に行う必要はなく、例えば複数回往復動作させながら切削を行ってもよい。
【0023】
なお、従来の施工方法では土間コンクリート16を切削し、切削した範囲内の土間コンクリート16を斫り、その後に配筋18を切削している。これに対して本実施形態ではステップS1の切削工程で土間コンクリート16のコンクリート部分と配筋18とを同時に切削することから工程数が削減され、施工時間を短縮することができる。
【0024】
図6は、補助切削工程(
図3のステップS2)の様子を示す図である。上記の切削工程では、表面領域32における矩形角部の地中部には切り残し角部32c(
図6ではドット地で示す)が残っている。つまり、コンクリートカッター30が土間コンクリート16の表面上では規定の距離Lだけ切削するが、円盤刃30aが円形であることからその径寸法に応じて切り残し角部32cが発生する。
【0025】
補助切削工程では、この切り残し角部32cを切削工具38で切削して除去する。切削工具38は、例えばハンマードリル、自動往復式鋸、ノミ、タガネまたはチゼルなどである。切り残し角部32cは小さく、補助切削工程は比較的短時間で済む。
【0026】
補助切削工程により平面視で表面領域32の部分、つまりブロック34は地中部まで完全に他の土間コンクリート16とは切り離され、しかも下面は地面24との間で固着されている訳ではないことから独立的になる。なお、切り残し角部32cは完全に除去せずとも、後述する吊り上げ工程で破断可能な程度に除去すればよい。また、切り残し角部32cが十分に小さい場合には、ブロック34は実質的にステップS1の切削工程で形成されていることになり、補助切削工程を省略してもよい。
【0027】
図7は、吊り具工程(
図3のステップS3)の様子を示す図である。吊り具工程では、まずブロック34の表面にアンカー穴34aを設け、該アンカー穴34aにコンクリートアンカー40を打ち込んで設置する。そして、コンクリートアンカー40に吊り具であるアイナット42を設置する。具体的にはコンクリートアンカー40に対してアイナット42を螺合させればよい。コンクリートアンカー40およびアイナット42は、ブロック34の大きさにより複数組設けてもよい。吊り具はアイナット42に限らない。
【0028】
図8は、吊り上げ工程(
図3のステップS4)における玉掛け作業を示す図であり、
図9は、吊り上げ工程における吊り上げ作業を示す図である。吊り上げ工程では、吊り上げ装置44を用いる。吊り上げ装置44は、例えばクレーンであって、ワイヤ44aと、該ワイヤ44aの先端に設けられたフック44bと、ワイヤ44aを巻き上げるウインチ44cとを備える。吊り上げ装置44は、下部に複数のキャスター44dが設けられており、移動自在である。吊り上げ装置44は汎用品を利用することも可能である。吊り上げ装置44は、例えば油圧式クレーン、車載型またはチェーンブロックなどでもよい。
【0029】
図8に示すように、吊り上げ工程ではまずフック44bをアイナット42に取り付ける玉掛け作業を行う。そして、
図9に示すようにウインチ44cを操作し、アイナット42を介して吊り上げ装置44によってブロック34を吊り上げる。ブロック34は下部に配筋18が配設されていることから適度な強度があり、崩れることなく一体のまま吊り上げが可能である。また、切削工程では土間コンクリート16における少なくとも表面上で閉じた形状にブロック34を形成していることから、吊り上げ工程ではブロック34を吊り上げやすい。ブロック34が吊り上げられた土間コンクリート16には凹部46が形成される。
【0030】
図10は、ブロック搬送工程(
図3のステップS5)の様子を示す図である。ブロック搬送工程では、吊り上げ装置44でブロック34を吊り上げたまま該吊り上げ装置44をトラック48の荷台まで移動し、ウインチ44cの操作によりブロック34を降ろして荷積みする。そしてフック44bをアイナット42から取り外す。なお、ブロック搬送工程では吊り上げ装置44の位置は固定しておき、荷台がブロック34の下となる位置までトラック48を移動させてもよい。つまり、ブロック34とトラック48との移動は相対的なものでよく、吊り上げ装置44は必ずしも移動式である必要はない。
【0031】
図11は、掘削工程(
図3のステップS6)およびポール立設工程(
図3のステップS7)の様子を示す図である。掘削工程では、ブロック34が除去された凹部46をさらに掘って所定深さの穴20を形成する。穴20には必要に応じて基礎材50を敷設する。
ポール立設工程では、穴20にポール12を立てて、治具52によってポール12の位置決めおよび仮固定を行う。
【0032】
図12は、打設工程(
図3のステップS8)の様子を示す図である。打設工程では穴20にコンクリート22を打設してポール12を固定する。養生を行ってコンクリート22が十分に固化した後に治具52を取り外す。この後、被支持体取付工程(
図3のステップS9)としてポール12に対してルーフ14(
図1参照)を取り付ける。これによりカーポート10の施工が終了する。
【0033】
このような土間コンクリート除去方法によれば、切削工程によって土間コンクリート16の表面上で閉じた形状のブロック34を形成し、さらにブロック34を吊り上げて除去することから、従来の施工方法におけるコンクリートの斫り工程が不要であり、短時間で土間コンクリート16の一部を除去することができる。また、除去された土間コンクリート16はまとまったブロック34となっているため、細かいガラが発生することがなく土嚢への収納工程が不要であって、一層の作業時間短縮化が図られる。
【0034】
さらに、吊り上げ装置44で吊り上げたブロック34はそのままトラック48に荷積みすることができることから、人手による運搬労力が軽減されて効率的である。さらにまた、斫り工程が不要であることから騒音の発生が少ない。なお、上記の補助切削工程では自動工具を使用する場合もあるが、該補助切削工程は、従来の斫り工程と比較して十分に短時間であり、騒音の発生時間も短くて済む。
【0035】
次に、土間コンクリート除去方法の変形例について説明する。第1の変形例にかかる土間コンクリート除去方法では、ブロック34を形成する際にオーバー切削部32b(
図4の仮想線参照)が形成される井桁形状に土間コンクリート16を切削する。
【0036】
図13は、第1の変形例にかかる土間コンクリート除去方法のフローチャートである。第1の変形例にかかる土間コンクリート除去方法は、順にステップS101の切削工程と、ステップS102の埋め戻し工程と、ステップS103の吊り具工程と、ステップS104の吊り上げ工程と、ステップS105のブロック搬送工程と、ステップS106の掘削工程と、ステップS107のポール立設工程と、ステップS108の打設工程と、ステップS109の被支持体取付工程とを有する。
【0037】
ステップS101の切削工程は、上記のステップS1と同様に表面領域32を形成(
図4参照)するが、上記のステップS1では切り込み線32aをオーバー切削部32bが形成されないように制限しているのに対して、ステップS101ではブロック34の矩形角部を超えて井桁状に切削し、オーバー切削部32b(
図4の仮想線参照)が形成されるように切削する。適度な長さのオーバー切削部32bを設けることにより、切り残し角部32c(
図6参照)がなくなり、上記の補助切削工程が不要となる。
【0038】
ステップS102の埋め戻し工程は、矩形角部を超えて切削したオーバー切削部32bを充填剤で埋める。充填剤は、例えばモルタルである。これにより、良好な外観品質が得られる。これ以降のステップS103~S109は、上記のステップS3~S9と同じである。なお、ステップS102の埋め戻し工程を実行するのは、ステップS101の直後に限らず例えば吊り上げ工程の後でもよい。
【0039】
次に、第2の変形例にかかる土間コンクリート除去方法について説明する。第2の変形例にかかる土間コンクリート除去方法では、軸方向に並列する回転式2枚刃の円盤刃30b(
図17(a)参照)を用いて土間コンクリート16を切削する。
【0040】
図14は、第2の変形例にかかる土間コンクリート除去方法のフローチャートである。第2の変形例にかかる土間コンクリート除去方法は、順にステップS201の第1切削工程と、ステップS202のスリットガラ除去工程と、ステップS203の第2切削工程と、ステップS204の補助切削工程と、ステップS205の吊り具工程と、ステップS206の吊り上げ工程と、ステップS207のブロック搬送工程と、ステップS208の掘削工程と、ステップS209のポール立設工程と、ステップS210の打設工程と、ステップS211の被支持体取付工程とを有する。ステップS201~S202は、概念的には上記の切削工程であるステップS1を3つの段階に分けたものである。
【0041】
図15は、第1切削工程(
図14のステップS201)の様子を示す図である。
図15では作業員の図示を省略している。第1切削工程は、上記のステップS1と同様に表面領域32を形成するが、上記のステップS1では一枚の円盤刃30aを用いているのに対して、ステップS201では軸方向に並列する2枚刃である円盤刃30bを用いる。したがって、切り込み線32dは二重に形成される。
【0042】
図16は、第1切削工程で切削される土間コンクリート16を示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。第1切削工程におけるコンクリートカッター30による切削深さは、土間コンクリート16の全深さよりは浅く、例えばその半分程度である。したがって、第1切削工程では配筋18は切削されない。第1切削工程および第2切削工程では、第1変形例のようなオーバー切削部32b(
図4参照)は設けないものとする。
【0043】
図17は、スリットガラ除去工程(
図14のステップS202)における土間コンクリート16を示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。スリットガラ除去工程では、第1切削工程で形成された二重の切り込み線32dで挟まれた狭い領域のスリットガラ54を工具によって除去する。スリットガラ54が除去された箇所にはスリット56が形成される。スリットガラ54は体積が小さいことから、スリットガラ除去工程は比較的短時間で済む。なお、第1切削工程とスリットガラ除去工程とは複数回繰り返して行い、スリット56が次第に深くなるようにしてもよい。
【0044】
図18は、第2切削工程(
図14のステップS203)で切削される土間コンクリート16を示す図であり、(a)は断面正面図であり、(b)は断面側面図である。第2切削工程では、土間コンクリート16とともに配筋18を切削する。このとき、スリットガラ54は予め除去されていることから、円盤刃30bの側面に当接する土間コンクリート16の面積は小さくて抵抗が小さく、スムーズな切削が可能である。また、第1切削工程と第2切削工程とに分けて切削を行うと1回当たりの切削負荷が小さく、コンクリートカッター30に小型のものを用いることができる。
【0045】
この後、補助切削工程(
図14のステップS204)では、上記のステップS2と同様に切り残し角部32cを切削工具38(
図6参照)で切削して除去する。このとき、表面領域32の周囲にはスリット56が形成されていることから、切削工具38を該スリット56に挿入することができ、切り残し角部32cを除去しやすい。そして、ステップS205の吊り具工程を上記のステップS3と同様に行う。
【0046】
吊り上げ工程(
図14のステップS206)では、上記のステップS4と同様にブロック34を吊り上げ装置44によって吊り上げる。このとき、ブロック34と周囲の土間コンクリート16との間にはスリット56が形成されていることから、該ブロック34を吊り上げやすい。例えば、アイナット42が重心位置からずれていた場合で、ブロック34が多少傾斜しても該ブロック34は周囲の土間コンクリート16に当たることがなく、スムーズな吊り上げが可能である。これ以降のステップS207~S211は、上記のステップS5~S9と同様である。
【0047】
なお、上記の切削工程では、表面領域32を表面上で閉じた形状に切削したが、施工条件によっては、次に説明するように必ずしも閉じていなくともよい。
図19は、切削工程で形成するブロック34の変形例を示す図であり、(a)は表面上の矩形で各辺の角部が切削されない場合を示す図であり、(b)は表面上の矩形で各辺の途中部が切削されない場合を示す図である。
【0048】
図19(a)に示すように、切削工程では土間コンクリート16の表面上を切削する際、表面領域32を形成する矩形で各辺の角部近傍は切削されなくてもよい。すなわち、角部の近傍は仮想線で示すように切り残し部32eとしてもよい。このように、角部までは多少余裕をみて切削することにより、オーバー切削部32b(
図4参照)が形成されないようにすることができる。
【0049】
図19(b)に示すように、切削工程では土間コンクリート16の表面上を切削する際、表面領域32を形成する矩形で各辺の途中部は切削されなくてもよい。施工現場の状況により各辺の途中部の切削が困難となる可能性もあるためである。
図19(a),(b)いずれの場合もブロック34の表面は実質的に多角形で囲われている。また、いずれの場合も切り残し部32eが過度に長くなければ、その後の吊り上げ工程でブロック34の吊り上げが可能である。さらに、切り残し部32eの近傍は補助切削工程で切り残し角部32cとともに削除してもよい。
【0050】
すなわち広義の切削工程では、コンクリートカッター30により土間コンクリート16における表面上で多角形の各辺の少なくとも一部を切削し、表面が多角形で囲われた形状のブロック34を形成すればよい。
【0051】
図20は、本発明の一実施形態にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法の適用により施工される構造物の例であり、(a)はテラス60の斜視図であり、(b)はポスト62の斜視図である。
上記のとおり本発明の一実施形態にかかる土間コンクリート除去方法およびポール立設方法は、土間コンクリート16の一部を除去して穴20を形成し、さらにポール12を立設する方法であるが、適用されるカーポート10のポール12の数は、
図1に示すような4本型に限らず、例えば片側2本型でもよいし、1本型でもよい。さらに、この土間コンクリート除去方法が適用されるのはカーポート10に限らず、例えば
図20(a)に示すようなテラス60や、
図20(b)に示すようなポスト62でもよい。テラス60は、カーポート10と同様に1以上のポール12と、ルーフ14とを有する。ポスト62は、2本のポール12と、該ポール12に支持されるボックス(被支持体)62aとを有する。
図20(b)に示すように、1つの穴20に立設するポール12は複数本であってもよい。ポール12の断面形状は、例えば矩形や円形である。ポール12の高さは穴20の深さに応じて任意に設定可能である。
【0052】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、既存の土間コンクリートの一部を除去する土間コンクリート除去方法であって、コンクリートカッターにより前記土間コンクリートにおける表面上で多角形の各辺の少なくとも一部を切削し、表面が前記多角形で囲われた形状のブロックを形成する切削工程と、前記ブロックに吊り具を設置する吊り具工程と、前記吊り具を介して吊り上げ装置によって前記ブロックを吊り上げる吊り上げ工程と、を有することを特徴とする。
この土間コンクリート除去方法ではコンクリートの斫り工程がないことから、短時間で効率的に土間コンクリートの一部を除去することができる。
【0053】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記切削工程では、前記土間コンクリートにおける少なくとも表面上で閉じた形状に前記ブロックを形成することを特徴とする。
これにより、吊り上げ工程でブロックを吊り上げやすくなる。
【0054】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記土間コンクリートに配筋が設けられている場合には、前記切削工程において、前記土間コンクリートとともに前記配筋を切削することを特徴とする。
このように土間コンクリートとともに前記配筋を切削することにより、ブロックが崩れることなく一体のまま吊り上げが可能である。また、切削工程で土間コンクリートのコンクリート部分と配筋とを同時に切削することから工程数が削減され。施工時間を短縮することができる。
【0055】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記切削工程では前記ブロックを平面視で矩形となるように切削し、前記ブロックにおける地中部の切り残し角部をさらに切削工具で切削する補助切削工程を有することを特徴とする。
ブロックを平面視で矩形となるように切削すると、オーバー切削部がなく好適な外観が得られる。また、補助切削工程により一固まりのブロックが形成される。
【0056】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記切削工程では前記ブロックの矩形角部を超えて井桁状に切削し、前記矩形角部を超えて切削したオーバー切削部を充填剤で埋める埋め戻し工程を有することを特徴とする。
オーバー切削部を形成するとブロックを形成しやすい。また埋め戻し工程により良好な外観品質が得られる。
【0057】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記切削工程は、軸方向に並列する回転式の2枚刃を用いて切削することを特徴とする。
2枚刃を用いることによりスリットが形成され、切り残し角部を除去しやすくなる。
【0058】
本発明の一態様にかかる土間コンクリート除去方法は、前記切削工程は、前記2枚刃の前記コンクリートカッターによって前記土間コンクリートを切削する第1切削工程と、前記第1切削工程の後に、2枚刃の前記コンクリートカッターによって形成された二重の切り込み線で挟まれた領域からスリットガラを除去してスリットを形成するスリットガラ除去工程と、前記スリットガラ除去工程の後に、第1切削工程で切削された箇所をさらに前記コンクリートカッターによって切削する第2切削工程と、を有することを特徴とする。
このように複数回に分けて切削を行うと1回当たりの切削負荷が小さく、小型のコンクリートカッターを用いることができる。
【0059】
本発明の一態様にかかるポール立設方法は、上記の土間コンクリート除去方法によって前記ブロックが除去された箇所を掘って穴を形成する掘削工程と、前記穴にポールを立てるポール立設工程と、前記穴にコンクリートを打設して前記ポールを固定する打設工程と、を有することを特徴とする。
これによりポールを安定して固定することができる。
【0060】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 カーポート、12 ポール、14 ルーフ(被支持体)、16 土間コンクリート、18 配筋、20 穴、22 コンクリート、24 地面、30 コンクリートカッター、30a,30b 円盤刃、32 表面領域、32a,32d 切り込み線、32b オーバー切削部、32c 切り残し角部、34 ブロック、34a アンカー穴、38 切削工具、40 コンクリートアンカー、42 アイナット(吊り具)、44 吊り上げ装置、54 スリットガラ、56 スリット