(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ハウジング管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 9/02 20060101AFI20240807BHJP
B22D 13/02 20060101ALI20240807BHJP
B22D 13/10 20060101ALI20240807BHJP
F16L 23/12 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F16L9/02
B22D13/02 501C
B22D13/02 501A
B22D13/10 508
F16L23/12
(21)【出願番号】P 2020051055
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田川 孝由
(74)【代理人】
【識別番号】100167380
【氏名又は名称】清水 隆
(72)【発明者】
【氏名】太田 慧
(72)【発明者】
【氏名】明渡 健吾
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚嗣
(72)【発明者】
【氏名】東 浩平
(72)【発明者】
【氏名】下之薗 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 隆史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小林 裕信
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-131443(JP,A)
【文献】登録実用新案第3162992(JP,U)
【文献】特開平05-318071(JP,A)
【文献】特開2001-269758(JP,A)
【文献】特開2001-205408(JP,A)
【文献】特開平08-332538(JP,A)
【文献】特開昭49-065322(JP,A)
【文献】特開平04-013459(JP,A)
【文献】特開昭55-119278(JP,A)
【文献】特開昭52-148426(JP,A)
【文献】特開昭52-148428(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107042294(CN,A)
【文献】特開2020-016246(JP,A)
【文献】中国実用新案第202708358(CN,U)
【文献】特開2010-286017(JP,A)
【文献】特開2004-138234(JP,A)
【文献】特開2021-095928(JP,A)
【文献】特開2021-148267(JP,A)
【文献】特開2021-148268(JP,A)
【文献】特開2021-148269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
B22D 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全長に亘って同一径の直管(11)の両端部(10a、10b)外周面にそれぞれ突条(12、12)を有し、
前記突条(12、12)のうちの一方は、前記直管(11)の一端側端面から他端側端面に向けて所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)のうちの他方は、前記直管(11)の前記他端側端面から前記一端側端面に向けて前記所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)の各々にハウジング継手(50)を係止して前記両端部(10a、10b)の各々を前記ハウジング継手(50)を介して他の管と接続するハウジング管(10
4)の製造方法であって、
一端側端部(10a)に膨出部(12c)を有する直管からなる鋳造管(10
4’)を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管(10
4’)の一端側端面(10a’’)から採寸して他端側端部(10b)を切断し、その切断した他端側端面(10b’)
から上記所要距離離間した位置において前記他端側端部(10b)の外周
面に前記他方の突条(12)を形成し、前記切断した他端側端面(10b’)から採寸して前記一端側端部(10a)を切断し、その切断した一端側端面(10a’)
から前記所要距離離間した位置において前記膨出部(12c)を切削してその一端側端部(10a)の外周面に
前記一方の突条(12)を形成するハウジング管の製造方法。
【請求項2】
全長に亘って同一径の直管(11)の両端部(10a、10b)外周面にそれぞれ突条(12、12)を有し、
前記突条(12、12)のうちの一方は、前記直管(11)の一端側端面から他端側端面に向けて所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)のうちの他方は、前記直管(11)の前記他端側端面から前記一端側端面に向けて前記所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)の各々にハウジング継手(50)を係止して前記両端部(10a、10b)の各々を前記ハウジング継手(50)を介して他の管と接続するハウジング管(10、10
1、10
2)の製造方法であって、
一端側端部(10a)に膨出部(10c)を有する直管からなる鋳造管(10
1’、10
2’)を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管(10
1’、10
2’)の一端側端面(10a’’)から採寸して他端側端部(10b)を切断し、その切断した他端側端面(10b’)を
から上記所要距離離間した位置において前記他端側端部(10b)の外周面に上記両端部の他方の突条(12)を形成し、前記切断した他端側端面(10b’)から採寸して前記一端側端部(10a)を前記膨出部(12
a)を含めて切断し、その切断した一端側端面(10a’)から
前記所要距離離間した位置においてその一端側端部(10a)の外周
面に上記両端部の一方の突条(12)を形成するハウジング管の製造方法。
【請求項3】
全長に亘って同一径の直管(11)の両端部(10a、10b)外周面にそれぞれ突条(12、12)を有し、
前記突条(12、12)のうちの一方は、前記直管(11)の一端側端面から他端側端面に向けて所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)のうちの他方は、前記直管(11)の前記他端側端面から前記一端側端面に向けて前記所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)の各々にハウジング継手(50)を係止して前記両端部(10a、10b)の各々を前記ハウジング継手(50)を介して他の管と接続するハウジング管(10、10
3)の製造方法であって、
一端側端部(10a)に上記両端部の一方の突条(12)を有する直管からなる鋳造管(10
3’)を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管(10
3’)の一端側端面(10a’’)から採寸して他端側端部(10b)を切断し、その切断した他端側端面(10b’)
から前記所要距離離間した位置において前記他端側端部(10b)の外周面に前記両端部の他方の突条(12)を形成するハウジング管の製造方法。
【請求項4】
全長に亘って同一径の直管(11)の両端部(10a、10b)外周面にそれぞれ突条(12、12)を有し、
前記突条(12、12)のうちの一方は、前記直管(11)の一端側端面から他端側端面に向けて所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)のうちの他方は、前記直管(11)の前記他端側端面から前記一端側端面に向けて前記所要距離離間した位置に形成され、前記突条(12、12)の各々にハウジング継手(50)を係止して前記両端部(10a、10b)の各々を前記ハウジング継手(50)を介して他の管と接続するハウジング管(10
5)の製造方法であって、
上記全長に亘って同一径の直管からなる鋳造管(10
5’)を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管(10
5’)の一端側端面(10a’’)から採寸して他端側端部(10b)を切断し、その切断した他端側端面(10b’)
から上記所要距離離間した位置において前記他端側端部(10b)の外周面に上記両端部の他方の突条(12)を形成し、前記鋳造管(10
5’)の切断した他端側端面(10b’)から採寸して一端側端部(10a)を切断し、その切断した一端側端面(10a’)
から前記所要距離離間した位置において前記一端側端部(10a)の外周面に前記両端部の一方の突条(12)を形成するハウジング管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハウジング継手によって接続するハウジング管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、
図18に示すように、自動車専用道路等のトンネルT内には、そのトンネル内部における火災に備えて初期消火設備が設置されている。このようなトンネルT内の消火設備は、トンネルの長さ方向に所定間隔で設置された消火栓装置(非常用設備)Hが送水配管Pで接続されて構成される。このため、トンネルT内で火災が生じた際、火災の発見者が即座に近傍の消火栓より火災現場に散水して初期消火を行うことができる。このような消火に用いられるトンネル消火送水配管には、ダクタイル鋳造管、鋼管、樹脂管等が使用されている(特許文献1~3参照)。
図18中、Dは電気配線保護配管である。
【0003】
ダクタイル鋳造管、鋼管は、火災時の熱に対して十分な耐熱性を有するが、長尺管を作成するのが大変であるとともに重量があること等から、長いトンネル全長に亘って送水配管を設置する作業は、接続部が多く作業性に問題がある。また、鋼管は、コスト的にも問題がある。
これに対し、樹脂管は、長尺管を製造することは比較的容易であり、接続箇所も少なくなり、また、軽量であることから、作業性はよい。しかし、樹脂管は、ダクタイル鋳造管等の金属管に比べて耐熱性を有しないため、火災時に送水配管自体の強度低下等によって、内圧で送水配管が破れる等の恐れがある。特に、トンネルT内は閉空間となるため、トンネルT内が高温となって前記恐れが生じ易い。
このため、トンネルT内の消火配管として、耐熱性を高めた樹脂管が提案されている(特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-571号公報
【文献】特開2011-239851号公報
【文献】特開2018-91433号公報
【文献】特開2018-179054公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これらの耐熱性樹脂管は、ダクタイル鋳造管ほどの耐熱性はなく、またコスト的にも高価なものとなっている。
また、消火配管構造は、
図19に示す、トンネルTの内壁の高所に構築する場合、トンネルTの内壁頂部はアーチ状となっているため、管材を吊り上げるクレーンのビームC等がそのアーチ状頂部に干渉する恐れがあり、配管位置に管材を直接に吊り下ろすことが困難である。このため、同図に示すように、配管位置に対峙する仮設の支え梁Fに管材を吊り下ろしてから管材の転動等による横持ちを行って配管位置にセットする必要がある。すなわち、横方向(同図矢印)に移動させる必要があり、管接続時に管の軸方向移動が必要となる挿し込み式(インロウ形)の継手方式は採用し難い。このため、管接続時(及び管取り外し時)に管の軸方向移動が最小限となる(管端面が対向又は近接する)ハウジング形式の継手を採用する場合が多くなる。
図19中、Eは支え突出梁である。
そのハウジング継手は、接続する管端部外周面に突条を有する必要がある(
図15(b)の符号12、特許文献4参照)。
すなわち、その接続する両管端面を突合せ(対向して)突条をハウジング継手に係止しそのハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続する。
【0006】
ところで、遠心鋳造は、鋳造物内部にブローホール、引け巣等の欠陥が生じ難く、材質も微密となり、機械的性質等の良好な品質の鋳造物を安価にかつ円滑に得ることができる。このため、水道管等に広く使用される鋳造管の多くは、その遠心鋳造法によって製造されている。
その遠心鋳造機は、例えば、
図20に示すように、円筒状モールド(鋳型、金型)1をローラ2により回転させるとともに、取鍋3、4を介して鋳込用トラフ5に溶湯aを送り込み、そのトラフ5を介して溶湯aを回転して前後するモールド1内に鋳込んで(注湯して)、遠心力により、溶湯aをモールド1内面に均一に分布させることにより、管厚の均一な円筒状溶湯層(鋳造管)10’を形成する。図中、7、8はモールド1の開放端に設けたモールド(鋳型)バンドであって、その開放端からの溶湯aの漏れを防止する。
【0007】
従来、この遠心鋳造においては、同図に示すように、一端が受口10a、他端がその受口10aに挿入接続される挿し口10bを有する鋳造管10’が主に製造され、その受口10aは鋳型(モールド)1内に中子6を装填して膨出状に形成される。このため、鋳造管10’の脱型は、モールドバンド8を取り除き、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1から引き抜いて行っている。
このとき、挿し口10b側端部外周に上記突条12を形成すると、その突条12が邪魔になって引き抜くことができない。
【0008】
この発明は、以上の実情の下、遠心鋳造による直管の両端に突条12を有するハウジング管を製造することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するためのこの発明の一手段は、全長に亘って同一径の直管の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法であって、一端側端部に膨出部を有する直管からなる鋳造管を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管の一端側端面から採寸して他端側端部を切断し、その切断した他端側端面を基準にして、すなわち、その切断した他端側端面から所要距離離間した位置において前記他端側端部の外周面に前記両端部の他方の突条を形成し、前記切断した他端側端面から採寸して前記一端側端部を切断し、その切断した一端側端面を基準にして、すなわち、その切断した一端側端面から前記所要距離離間した位置において前記膨出部を切削してその一端側端部外周面に前記両端部の一方の突条を形成する構成を採用したのである。
なお、以下、「・・端面を基準にして」は「‥端面から所要距離離間した位置において」の意味であり、また、「外周面」を適宜に「外周」という。
【0010】
この発明の他の手段は、同様に、全長に亘って同一径の直管の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法であって、一端側端部に膨出部を有する直管からなる鋳造管を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管の前記一端側端面から採寸して他端側端部を切断し、その切断した他端側端面を基準にして前記他端側端部の外周面に前記両端部の他方の突条を形成し、前記切断した他端側端面から採寸して前記一端側端部を前記膨出部を含めて切断し、その切断した一端側端面を基準にしてその一端側端部の外周面に前記両端部の一方の突条を形成する構成を採用したのである。
【0011】
この発明のさらに他の手段も、同様に、全長に亘って同一径の直管の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法であって、一端側端部に両端部の一方の突条を有する直管からなる鋳造管を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管の前記一端側端面から採寸して他端側端部を切断し、その切断した他端側端面を基準にして前記他端側端部の外周面に両端部の他方の突条を形成する構成を採用したのである。
【0012】
この発明のさらに他の手段も、同様に、全長に亘って同一径の直管の両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続するハウジング管の製造方法であって、前記全長に亘って同一径の直管からなる鋳造管を遠心鋳造によって製作し、その鋳造管の前記一端側端面から採寸して他端側端部を切断し、その切断した他端側端面を基準にして前記他端側端部の外周に両端部の他方の突条を形成し、前記鋳造管の切断した他端側端面から採寸して一端側端部を切断し、その切断した一端側端面を基準にして前記一端側端部の外周面に両端部の一方の突条を形成する構成を採用したのである。
この構成において、遠心鋳造した鋳造管の長さ方向の長さを採寸して両端側端部を切断し、その切断した両端面を基準にして両端部の外周面に両突条をそれぞれ形成することもできる。
【0013】
上記各構成の製造方法において、採寸するのは所要長さのハウジング管とするためであり、また、その切断端面を基準として突条を形成するのは、接続管の端面を対向した際、その対向面から突条が所要位置にあってハウジング継手によって円滑に接続し得るようにするためである。
なお、鋳込んだ直管(鋳造管)の両端部の鋳出し端面が綺麗でハウジング継手の接続に支障がないのであれば、その端部の切断は省略することができる。このとき、鋳造管(直管)の両端部の切断を省略したり、どちらか一方の切断を省略したりしても良い。端部の切断を省略した場合、その端部を基準にして突条を形成したり、採寸して端部を切断した後その切断端面を基準にして突条を形成したりすることができる。この場合、鋳出し精度を高めてハウジング管の長さや突条の位置を正確にする必要がある。
上記突条の形成は、後述の
図7~
図9に示す各手段等を適宜に採用する。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、以上のように構成したので、両端部外周面にそれぞれ突条を有し、その各端部をハウジング継手によって前記突条を介して他の管と接続し得るハウジング管を安価かつ円滑に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】この発明に係るハウジング管の一実施形態を示し、(a)は正面図、(b)は一部切断部分拡大正面図
【
図2】同実施形態のハウジング管の一製造工程を示す作用図
【
図3】同実施形態のハウジング管の他の製造工程を示す作用図
【
図4】同実施形態のハウジング管のさらに他の製造工程を示す作用図
【
図5】同実施形態のハウジング管のさらに他の製造工程を示す作用図
【
図6】同実施形態のハウジング管のさらに他の製造工程を示す作用図
【
図7】同実施形態の突条の一製作説明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図8】同実施形態の突条の他の製作説明明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図9】同実施形態の突条のさらに他の製作説明明図であり、(a)は一部断面図、(b)は一部斜視図
【
図10】同実施形態の両端に突条を有する直管(ハウジング管)の一製作説明図
【
図11】同実施形態の両端に突条を有する直管(ハウジング管)の一製作説明図
【
図12】同実施形態の両端に突条を有する直管(ハウジング管)の一製作説明図
【
図13】同実施形態の両端に突条を有する直管(ハウジング管)の一製作説明図
【
図14】同実施形態のハウジング管を使用した消火配管の部分正面図
【
図15】同消火配管のハウジング継手部を示し、(a)は縦断面図、(b)は(a)のI-I線断面図
【
図17】同消火配管の片フランジ継手部の要部切断正面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明に係る一実施形態のハウジング管10(以下、10
1、10
2・・の総称符号を「10」とする)は、
図1に示すように、全長同一径の直管11の両端部外周面にそれぞれ突条12、12を有するものである。このハウジング管10は、
図18に示した、トンネルT内の消火配管構造の送水配管(以下、単に「配管」と言う。)Pの大部分を構成する。その配管Pは、同様に、トンネルTの側壁上部全長にその長さ方向に設けられ、前記ハウジング管10、そのハウジング管10等を一定長さに切断した、一端側端部に突条12を有する乙切短管20、一端側端部がK形の受口31、他端側端部が挿し口32となってその挿し口32に突条12を有する甲切短管(K受けH挿し短管)30、両端部に突条12を有するT字形分岐管40及び一端部に突条12を有する片フランジ短管70からなる。ハウジング管10はダクタイル鋳鉄による遠心鋳造(遠心力鋳造)によって製造し、乙切短管20、甲切短管30、T字形分岐管40及び片フランジ短管70はダクタイル鋳鉄による砂型鋳造による。乙切短管20及び甲切短管30は遠心鋳造によって製作することもできる。このとき、少なくとも一方の突条12は、後述のリングの嵌め込み等によって設ける。
この実施形態のハウジング管10は、例えば、全長:5200mm、外径:271.6mmφとし、内周面には全長に亘ってモルタルライニング13’を形成した。このモルタルライニング13’は、突条12を形成した後に行う。
【0017】
そのハウジング管10の製造方法の一実施形態は、
図20で示した遠心鋳造機によって鋳造した
図2(a)に示す直管からなる鋳造管10
1’(以下、10’
1、10’
2・・の総称符号を「10’」とする)を、モールドバンド8を取り除き、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1から引き抜いて脱型し(同図(b))、その鋳造管10
1’の受口端面(一端側端面)10a’’から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部10bの外周に他方の突条12を形成し、前記切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部を前記受口10aを含めて切断し(鎖線c
2部分)て所要長さの直管11
1(以下、11
1、11
2・・の総称符号を「11」とする)とする(同図(c))。その切断した直管11
1の一端側端面10a’を基準にしてその一端側端部10aの外周に一方の突条12を形成し、前記直管11
1の両端のそれぞれの突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10
1を製作する。このとき、直管11
1の両端を所要長さに切断した後、その両端部に切断端面を基準としてそれぞれ突条12を形成することができる。
この構成において、切断端面10a’、10b’を基準にして突条12を形成するのは、ハウジング管10をハウジング継手50で接続する際、接続対向管端面から、ハウジング継手50に対応する位置に突条12があるようにするためである。以下同様。
【0018】
この実施形態は、
図20で示す、従来の鋳型1を使用することができてコスト的に有利であり、
図3に示すように、中子6を使用しないで直管からなる鋳造管10
2’を鋳造することもできる。この場合、受口10aに相当する部分が肉厚となって、溶湯aの無駄が多くなる。この鋳造管10
2’からハウジング管10
2を製造するには、同図(b)~(d)に示すように、上記実施形態と同じ作用でもって行う。このときも同様に、直管11
2の両端を所要長さ(鎖線c
1部分、鎖線c
2部分)に切断した後、その両端部に切断端面を基準にして突条12をそれぞれ形成することができる。
【0019】
ハウジング管10の製造方法の他の実施形態を
図4に示し、この実施形態は、一端側の突条12を鋳出しによって形成したものである。このハウジング管10の遠心鋳造には、
図20で示した鋳型1を採用しても良いが、
図4(a)に示すように、受口部分を変形した鋳型1aとし、中子6も変形させたもの6aとすることができる。その中子6aは、有鍔円筒状をしてその内面全周に突条用の溝6bを有しており、回転する鋳型1aへの溶湯aの送り込みによって、直管からなる鋳造管10
3’を形成するとともに、前記溝6bに溶湯aを入り込ませて突条12を形成する(鋳出しによって突条12を形成する)。
【0020】
その鋳造管103’の脱型は、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1aから引き抜いて行う(同図(b))。その脱型した鋳造管103’の一端側端面10a’’から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断して(鎖線c1部分)直管113とし(同図(c))、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部の外周に直管113の両端部の他方の突条12を形成し、その両端部10a、10bの両突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管103を製作する(同図(d))。このとき、鋳造管103’の一端側端部10aも他端側端面10b’から採寸して切断した所要の長さの直管113とし得る。
【0021】
ハウジング管10の製造方法のさらに他の実施形態を
図5に示し、この実施形態は、同様に、突条12を鋳出しによって形成するものである。このハウジング管10の遠心鋳造には、
図20で示した鋳型1を採用しても良いが、同図(a)に示すように、
図4で示したものと同様に、受口部分を変形させた鋳型1aとするとともに、変形させた中子6aとするが、その中子6aは、有鍔円筒状をしてその内面全周に凹溝6bを有しており、回転する鋳型1aへの溶湯aの送り込みによって、直管からなる鋳造管10
4’を形成するとともに、前記凹溝6bに溶湯aを入り込ませて膨出部12cを形成する。
その鋳造管10
4’の脱型も、受口10aの内面に引き出し具の爪を引っかけてモールド1aから引き抜いて行う(同図(b))。その脱型した鋳造管10
4’の一端側端部10a’’側から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部の外周に直管11
4の両端部の他方の突条12を形成する(同図(c))。
【0022】
つづいて、その切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部10aを切断して(鎖線c
2部分)所要長さの直管11
4とし、その切断した直管11
4の一端側端面10a’を基準にしてその一端側端部の外周面に一方の突条12を形成し(同図(c))、直管11
4の両端のそれぞれの突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10
4を製作する(同図(d))。その一方の突条12は、膨出部12cを切削して形成する(
図9参照)。
この製造方法において、鋳造管10
4’(直管11
4)の一端側端部10aを先に切断し(c
2)、その切断端面から採寸して他端(挿し口)側端部10bを切断するようにし得る(c
1)。また、鋳造管10
4’(直管11
4)の両端部を切断して所要長さにした後、両突条12を形成することもできる。これらの場合、突条12は切断端面(10a’,10b’)を基準にして所要位置に形成することは勿論である。
なお、
図3の実施形態において、膨出受口(一端側端部)10aを膨出部12cと考えれば、同様な作用によって、ハウジング管10
4を製作し得る。
【0023】
ハウジング管10の製造方法のさらに他の実施形態を
図6に示し、この実施形態は、両端に膨出部12cを有しない全長に亘って同一径の鋳造管10
5’であり、
図6(a)に示すように、膨出受口部分の無い全長に亘って円筒状のキャビティを有する鋳型(モールド)1bとする。
この鋳型1bによって、
図6(a)に示す、遠心鋳造機によって鋳造した直管からなる鋳造管10
5’を脱型し(同図(b))、その鋳造管10
5’の他端(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部を切断して(鎖線c
2部分)直管11
5を形成する(同図(c))。鋳造管10
5’の脱型は、爪を有する引き金具によってその鋳造管10
5’内面に爪を引っかけて鋳造管10
5’を鋳型1bから引き抜く。
その直管11
5の両端部の外周に切断端面10a’、10b’を基準にしてそれぞれ突条12、12を形成し、その直管11
5の両端のそれぞれの外周突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10
5を製作する。このとき、鋳造管10
5’の他端側端部10bを切断した後、その切断した他端側端面10b’を基準にして他端側端部外周面に突条12を形成し、その後、他端側端面10b’から採寸して一端側端部10aを切断し、その切断端面を基準にして一端側端部10aの外周面に突条12を形成しても良い。
【0024】
上記各実施形態のハウジング管103、104、105の製作において、鋳造管10’の両端部10a、10bの鋳出し端面が綺麗で切断しなくても良ければ、上記切断c1、c2を行わずに所要長さの直管11とすることができる。このとき、どちらか一方のみの切断でも良い。
【0025】
上記直管11(鋳造管10’)に新たに形成する突条12は、
図7~
図9に示す各手段によって形成する。
図7に示す手段は、直管11端部全周に亘って溝13を形成し、円周の一部が欠如されたリング12aを前記溝13に嵌め、その前後全周を溶接14したものである。
【0026】
図8に示す手段は、溝13を形成することなく、同リング12aを直管11端部に嵌め込んで同溶接14したものである。このとき、リング12aは、
図7(b)に示す一部切欠きリング12aでも良いが、
図8(b)に示す、切欠きの無い全周連続した円状の物12bでも良く(同図(b)参照)、この場合は、リング12bの直管11端部への装着は圧入による。これらの場合も、リング12a、12bの前後全周には溶接14を行う。
【0027】
図9に示す手段は、鋳造管10’の製作と同時に、一方の端部に突条12又は膨出部12cを遠心鋳造によって形成した場合であって、他方の端部の突条12は、
図7、
図8に示す手段によって形成する。膨出部12cの場合は旋盤等による切削によって、同図(a)に示す突条12を形成し、鋳出しのままの突条12の場合も必要に応じ切削して形を整えることができる。
【0028】
いずれにおいても、リング12a、12bは一般構造用圧延鋼(SS材)を使用し得るが、ダクタイル鋳鉄等の突条12として使用し得る材であれば、いずれでも良く、その突条12には亜鉛溶射などを施して防食対策を行うことができる。
【0029】
直管11(鋳造管10’)の突条12の形成順序は、適宜に考えられるが、
図10~
図13に示す態様が考えられる。
図11~
図13は直管11(鋳造管10’)の軸心に沿う切断面の上部を示し、
図10に示す態様は、
図6によって直管11(11
5)を鋳造した場合等の、
図10(a)に示す、全長に亘って膨出部の無い直管11の場合であり、上記
図7、
図8の手段によって突条12を直管11の両端部に設ける。
【0030】
図11に示す態様は、
図2、
図3、
図5に示す方法で鋳造管10’を製造し、その膨出部12c(10a)を切除する場合であって(
図11(a))、同図(b)に示すように、その直管からなる鋳造管10’の一端側端部(受口)10a側端面10a’’から採寸して他端側端部(挿し口)側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断した他端側端面10b’を基準にして前記他端側端部の外周に
図7に示す手段によって他方の突条12を形成する(同図(c)から(d))。つぎに、前記切断した他端側端面10b’から採寸して前記一端側端部10aを膨出部12cを含めて切断して(鎖線c
2部分)所要長さの直管11とし(同図(e)から(f))、その切断した直管11の一端側端面10a’を基準にしてその一端側端部の外周に
図7に示す手段によって一方の突条12を形成し、前記直管11の両端のそれぞれの突条12、12を管軸の中央部cに対して対称に仕上げて、ハウジング管10を製作する(同図(g))。
【0031】
この突条12の形成において、
図12に示すように、
図8の手段によって突条12を設けることができる。また、鋳造管10’の両端部10a、10bを切断して所要の長さの直管11を製作した後、その切断端面を基準として突条12を形成することもできる。
【0032】
図4に示す方法で鋳造管10
3’を製造した場合は、例えば、
図13に示すように、その鋳造した
図4(a)に示す、鋳造管10’(10
3’)を脱型し(
図13(a))、鋳出した突条12から採寸して一端側端部10aを切断し(鎖線c
2部分)、その切断した一端側端面10a’を基準にして他端側端部10bを切断し(鎖線c
1部分)、その切断端面10b’から採寸して溝13を形成し(同図(c))、その溝13にリング12aを嵌め(同図(d))、溶接14して突条12を設けて、その両端部10a、10bの両突条12、12を管軸の中央部(中心線c)に対して対称に仕上げて、ハウジング管10を製作する(同図(e))。
この場合、他端の突条12は、
図8に示す手段によって形成することができる。また、鋳出し突起12(一端側突起12)は、旋盤などによる切削によって形を整えることができる。
【0033】
以上の各手段によって
図1に示すハウジング管10を製作し、つぎに、このハウジング管10によって、
図18に示す、トンネルTの内壁の高所に配管Pを構築する場合の作業手順について説明する。
まず、
図19に示すように、配管位置の横にハウジング管10を吊り下ろしてからハウジング管10の転動等による横持ちを行って配管位置にセットする。セットした直管10同士は芯出しした後、ハウジング継手50でもって、
図14、
図15に示すように水密に接続する。
【0034】
そのハウジング継手50は、
図15に示すように、半割の円環状カップリング51、51と、その対の半割カップリング51をその両端で締結するボルト・ナット52と、ゴムリング53とからなる。対の半割カップリング51の対向する端部にはL字状締結金具54が設けられており、同図に示すように、その対の半割カップリング51を対向する直管10、10の端部に、その両突条12を挟むようにゴムリング53を介在して宛がい、締結金具54をボルト・ナット52によって締結して、両ハウジング管10、10を水密に接続する。このとき、管端部のゴムリング53との当たり面(接触面)には潤滑油を塗布し、その潤滑油にはシリコーングリース又は高粘度のシリコーンオイルを使用する。
【0035】
そのハウジング管10の複数を連続して接続し、非常用設備Hの位置に至れば、
図14に示すように、その位置にT字状分岐管(T字管)40をセットして、その一端をハウジング継手50によってハウジング管10に接続し、そのT字状分岐管40と今まで接続したハウジング管10との間に、乙切短管20、甲切短管30を接続して一体とした管材を位置してハウジング管10とT字状分岐管40の間に接続する。
【0036】
乙切短管20は、ダクタイル鋳鉄の遠心鋳造によって製造され、例えば、一端に突条12が形成され、他端に突条12が形成されていない直管11から形成する。
甲切短管30は、
図16に示すように、ダクタイル鋳鉄の砂型によって製造するが、遠心鋳造による場合、一端が受口31、他端が挿し口32となったK形継手管を製造し、その挿し口32側に突条12を
図7~
図9の手段で形成する。このK形継手の甲切短管30は、同図に示すように、突条12を有してハウジング継手(H継手)50による接続ができるため、「K-H形受挿短管」ということができる。
このK形継手の甲切短管30の受口31は、乙切短管20の突条12を有しない挿し口21を支障なく挿し込むことができる(
図16参照)。また、この甲切短管30は、規格品のK形継手管の直部を切断して形成することができる。
【0037】
そのK型継手は、
図16に示すように、乙切短管20の切断端(挿し口)21を防錆処理したのち、その挿し口21に押し輪61及び止水丸ゴム部を有するゴム輪62を嵌め込んで(外装して)、甲切短管30の受口31に挿し込む。その挿し込む際には、挿し口21の外周面には潤滑材を塗布する。挿し込めば、その受口31のフランジ33と押し輪61の間にTボルト63を通してナット64によって締結する。その締結によって押し輪61が受口31側に押されてゴム輪62が受口31内面と挿し口(切断端)21の外面とに密着する。
【0038】
なお、仮に、乙切短管20と甲切短管30の一体管材が管10とT字状分岐管40の間にぴったり嵌らなくても、乙切短管20と甲切短管30とのK形継手60及びハウジング継手50は、軸方向の移動許容値:ハウジング継手8mm+K形継手20mmで、施工上の精度に余裕があるため、乙切短管20の挿し口21の甲切短管30への受口31への挿し込み度合いを調整して乙切短管20と甲切短管30の一体管材を直管10とT字状分岐管40の間に確実に嵌めて接続する(
図16参照)。
【0039】
T字状分岐管40以降は、上記と同様にしてハウジング管10を接続し、非常用設備Hの位置ではT字状分岐管40を位置するとともに、乙切短管20、甲切短管30を接続した管材を位置してハウジング管10とT字状分岐管40の間に接続する。
この消火配管において、その配管Pが、
図17に示すように、鋼管の工区とダクタイル鋳造管の工区に分かれた場合、片フランジ短管70を使用する。この片フランジ短管70はダクタイル鋳鉄による砂型鋳造によって製造すれば、フランジ71及び突条72は鋳出しによって形成することができる。遠心鋳造によって製造すれば、突条72は、
図7、
図8の手段による。この片フランジ短管70は、例えば、
図17に示すように、フランジ付鋼管10’’にこのハウジング管10を接続する際、その両管10、10’’の間に片フランジ短管70を介設し、両フランジ71、71’をパッキン73を介在してボルト・ナット74によって締結する。
【0040】
なお、この実施形態においては、T字状分岐管40が配置された後に、乙切短管20、甲切短管30を接続したが、乙切短管20、甲切短管30、T字状分岐管40、ハウジング管10・・の順で接続することもできる。このとき、配管長さ調整は、乙切短管20と甲切短管30のK形継手における挿し口21の挿し込み調整によって行うことができる。
また、上記各実施形態において、一端側を「受口」、他端側を「挿し口」としているが、切断や突起形成に支障がない限り、一端側を「挿し口」、他端側を「受口」とし得ることは勿論である。
【0041】
上記実施形態は、ハウジング管10等の管材をダクタイル鋳造管としたが、ネズミ鋳鉄等の遠心鋳造し得る材料であれば、この発明を採用し得ることは言うまでもない。
このように、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
P 送水配管
1、1a,1b 鋳型(金型、モールド)
10、101、102、103、104、105 ハウジング管
10’、101’、102’、103’、104’、105’ 鋳造管
10a ハウジング管の一端側端部(受口)
10b 同他端側端部(挿し口)
11、111、112、113、114、115 直管(直部)
12 突条
12a、12b 突条用リング
13 溝
14 溶接
20 乙切短管
30 甲切短管
40 T字状分岐管(T字管)
50 ハウジング継手
60 K形継手
70 片フランジ短管