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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20240807BHJP
   F27B 3/06 20060101ALI20240807BHJP
   F27B 5/10 20060101ALI20240807BHJP
   F27D 3/12 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
F27B17/00 B
F27B3/06
F27B5/10
F27D3/12 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020104294
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021196135
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000167200
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクトサーモシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅田 文雄
(72)【発明者】
【氏名】浦崎 義彦
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】池田 真一
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-077001(JP,A)
【文献】特開平08-029067(JP,A)
【文献】特開2005-127628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00
F27B 3/06
F27B 5/10
F27D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理品が配置される処理ユニットと、
上部がヒータを有する熱処理領域であり下部が前記処理ユニットの所定位置に前記処理品を配置するための準備作業領域である筐体と、
前記処理ユニットを前記筐体内の前記熱処理領域と前記準備作業領域との間で昇降させる昇降装置と、
を備え、
前記処理ユニットは、
長尺であって長手方向が上下方向となり上に前記処理品が載せられる複数の自転軸と、
前記自転軸それぞれを当該自転軸の中心線回りに回転自在として支持する軸受部を複数有し、複数の当該軸受部が上下方向の基準線を中心とする円に沿って間隔をあけて配置されている回転体と、
前記基準線を中心として前記回転体を回転させるためのモータと、
前記基準線を中心として設けられている大歯車と、
前記自転軸と一体であると共に前記大歯車と噛合う複数の小歯車と、
前記回転体の上に設けられ長尺である前記自転軸を貫通させる貫通孔が設けられている断熱材と、
を有し、
前記自転軸は、前記軸受部により支持される下側軸部と、熱伝導率が前記下側軸部よりも低い上側軸部と、前記下側軸部と前記上側軸部とを同軸状として繋ぐジョイントと、を有する、熱処理炉。
【請求項2】
前記回転体は、
前記基準線を中心として設けられていると共に、前記自転軸の下部を貫通させる孔を複数有する回転テーブルと、
前記回転テーブルを貫通する前記自転軸の下端部を支持する前記軸受部を、当該回転テーブルにその下方で取り付けるための取付部材と、を有する、
請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記上側軸部は、セラミックス製であり、中空の部材により構成されている、請求項に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記上側軸部は、ニッケル-クロム-鉄合金製であり、中空の部材により構成されている、請求項に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記筐体の上部は、上下方向に直交する前後左右の四方に前記ヒータを有していて、
前記筐体の上部は、四方の前記ヒータで囲まれる領域に、上から見た場合に円形であって複数の前記自転軸の上に載る複数の前記処理品の周りに設けられる均熱管を有する、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記断熱材は、シート状であって、複数の当該断熱材が重ねられて前記回転体の上に設けられている、請求項1~のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品の製造において、その中間品(処理品)に熱処理が施されることがある。熱処理のために用いられる装置として、炉本体と、炉本体内に設けられる回転テーブルとを備える熱処理炉が知られている。回転テーブルの上に複数の処理品が並べて置かれ、炉本体内で熱処理が行われる。特許文献1に、処理品が基板である場合の熱処理用の装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-105831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている処理品は、薄い基板である。しかし、処理品が、例えば円柱形状等の塊(金属製の塊)である場合、その処理品を回転テーブルに載せて熱処理しても、均質な処理結果が得られない場合がある。例えば、炉内の前後左右の側壁にヒータ等の熱源が設けられている場合、回転テーブル上に複数配置された処理品のうち、ヒータ側は熱の影響を受け易いが、ヒータ側とは反対となる回転テーブルの中心側は熱の影響を受けにくい。
【0005】
また、従来の熱処理炉として、回転テーブルを含む下部装置と、回転テーブルを覆う蓋を含む上部装置とを備え、処理品の出し入れのために、下部装置と上部装置とが上下分離する装置が知られている。この場合、処理を終える毎に、つまり、処理品の取り出し毎に、炉内温度が低下してしまい、効率が悪い。
【0006】
そこで、本開示は、熱効率がよく、処理品を全体にわたって熱することが可能となる熱処理炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の熱処理炉は、複数の処理品が配置される処理ユニットと、上部がヒータを有する熱処理領域であり下部が前記処理ユニットの所定位置に前記処理品を配置するための準備作業領域である筐体と、前記処理ユニットを前記筐体内の前記熱処理領域と前記準備作業領域との間で昇降させる昇降装置と、を備え、前記処理ユニットは、長尺であって長手方向が上下方向となり上に前記処理品が載せられる複数の自転軸と、前記自転軸それぞれを当該自転軸の中心線回りに回転自在として支持する軸受部を複数有し、複数の当該軸受部が上下方向の基準線を中心とする円に沿って間隔をあけて配置されている回転体と、前記基準線を中心として前記回転体を回転させるためのモータと、前記基準線を中心として設けられている大歯車と、前記自転軸と一体であると共に前記大歯車と噛合う複数の小歯車と、前記回転体の上に設けられ長尺である前記自転軸を貫通させる貫通孔が設けられている断熱材と、を有する。
【0008】
前記熱処理炉によれば、筐体の下部の準備作業領域で、処理品が処理ユニットの自転軸の上に載せられる。昇降装置によって、その処理ユニットが上部の熱処理領域に移動し、処理品に対する熱処理が行われる。筐体内で熱処理領域と準備作業領域とが上下に別れているため、熱効率がよい。
前記処理ユニットによれば、モータの回転により回転体が上下方向の基準線を中心として回転することで、その回転体が有する軸受部に支持される自転軸は、小歯車と共に基準線を中心として回転(公転)する。小歯車は、大歯車に噛み合うため、大歯車の周囲を回転(公転)しながら自転することができ、これにより自転軸が自転する。以上より、一つのモータの回転により、処理品を上に載せた自転軸は、基準線を中心として公転しながら自転する。よって、筐体の上部(熱処理領域)において、処理品は全体にわたって熱せられる。
【0009】
(2)また、好ましくは、前記回転体は、前記基準線を中心として設けられていると共に、前記自転軸の下部を貫通させる孔を複数有する回転テーブルと、前記回転テーブルを貫通する前記自転軸の下端部を支持する前記軸受部を、当該回転テーブルにその下方で取り付けるための取付部材と、を有する。
この構成によれば、自転軸の上に処理品が載せられ、その自転軸は、長尺であり、その下端部において軸受部により支持される。このため、熱せられた処理品及び自転軸の上端部の熱が軸受部に伝わり難く、軸受部に対して熱膨張等の悪影響を与え難くすることが可能となる。
【0010】
(3)また、好ましくは、前記自転軸は、前記軸受部により支持される下側軸部と、熱伝導率が前記下側軸部よりも低い上側軸部と、前記下側軸部と前記上側軸部とを同軸状として繋ぐジョイントと、を有する。
この構成によれば、上側軸部を熱伝導率の低い材質とすることができ、処理品の熱の影響を処理ユニットの下部に伝わり難くすることが可能となる。そして、下側軸部を、軸受部による支持が可能となる例えば一般的な鋼材とすることが可能となる。上側軸部と下側軸部とが異なる材質であっても、ジョイントにより、これらが連結される。
【0011】
(4)また、前記(3)の熱処理炉において、好ましくは、前記上側軸部は、セラミックス製であり、中空の部材により構成されている。この場合、熱伝導率が低く、耐熱温度が高く、軽量である上側軸部が得られる。
(5)または、前記(3)の熱処理炉において、好ましくは、前記上側軸部は、ニッケル-クロム-鉄合金製であり、中空の部材により構成されている。この場合、高温強度が高く、熱伝導率が低い上側軸部が得られる。
【0012】
(6)また、好ましくは、前記筐体の上部は、上下方向に直交する前後左右の四方に前記ヒータを有していて、前記筐体の上部は、四方の前記ヒータで囲まれる領域に、上から見た場合に円形であって複数の前記自転軸の上に載る複数の前記処理品の周りに設けられる均熱管を有する。
この構成によれば、ヒータが前後左右の四方に設けられる。これに対して、その内側に設けられる均熱管は、円形であり、この均熱管により、複数の処理品を効率よく熱処理することが可能となる。
【0013】
(7)また、好ましくは、前記断熱材は、シート状であって、複数の当該断熱材が重ねられて前記回転体の上に設けられている。
この構成によれば、例えば、上から下に向かって段階的に断熱性能が低くなるように、断熱材の性能を変えて、シート状である複数の断熱材を配置することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、熱処理炉において、熱効率がよく、処理品を全体にわたって熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】熱処理炉の一例を側方から見た断面図である。
図2】熱処理炉の内部を示す図であり、図1に示す矢印II方向から見た熱処理炉の断面図である。
図3】処理ユニット及び内部フレームを側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔熱処理炉の全体構成について〕
図1は、熱処理炉の一例を側方から見た断面図である。図1に示す熱処理炉10は、複数の処理品Wを同時に熱処理するための装置である。処理品Wは、柱状又はブロック状である。本開示では、処理品Wは円柱形状を有し、特に直径(幅寸法)よりも高さ寸法が大きい。また、処理品Wの材質は、限定されないが、本開示では金属製である。熱処理炉10は、処理ユニット11と、筐体12と、昇降装置13とを備える。本開示の熱処理炉10において、上下方向(鉛直方向)の基準線C0が設定される。前後方向及び左右方向は、上下方向に直交する方向である。後にも説明するが、複数の処理品Wは、この基準線C0周りに回転しながら、各処理品Wは、基準線C0に平行である中心線C1周りに自転する。
【0017】
処理ユニット11に、複数の処理品Wが配置される。処理ユニット11の構成については後に説明する。
筐体12は、直方体であり、上下前後左右の六方向に、金属製の壁18a,18b,18c,18dを有する。壁18a,18b,18c,18dそれぞれは断熱性を有する。筐体12は、高さ方向に長い箱形状を有する。筐体12内の上部の空間が、ヒータ14を有する熱処理領域K1であり、筐体12内の下部の空間が、処理ユニット11の所定位置に処理品Wを配置するための準備作業領域K2である。熱処理領域K1と準備作業領域K2とは、区画床材38によって上下に区画されている。区画床材38の中央に孔が設けられていて、準備作業領域K2と熱処理領域K1との間を移動する処理ユニット11の一部が、その孔を通過する。前記基準線C0は、筐体12の中心線となる。
【0018】
昇降装置13は、筐体12内で処理ユニット11を昇降させる。昇降装置13は、処理ユニット11を熱処理領域K1と準備作業領域K2との間を移動させる。図1において、熱処理領域K1に存在する処理ユニット11が、実線で示されていうる。準備作業領域K2に存在する処理ユニット11が、仮想線(二点鎖線)で示されている。昇降装置13は、処理ユニット11を基準線C0に沿って上下移動させる。
【0019】
筐体12の下部には、扉(シャッター)15が設けられている。仮想線(二点鎖線)で示すように処理ユニット11が準備作業領域K2に存在していて、扉15が開状態で、作業員がその処理ユニット11の所定位置(後述する自転軸21の上)に処理品Wを載せる。全ての処理品Wが処理ユニット11の所定位置に載せられると、扉15が閉じられる。昇降装置13により処理ユニット11は熱処理領域K1に移動し、複数の処理品Wに対してヒータ14の熱による熱処理が行われる。
【0020】
図2は、熱処理炉10の内部を示す図であり、図1に示す矢印II方向から見た熱処理炉10の断面図である。図1及び図2において、筐体12は、その上部(熱処理領域K1)に、内部フレーム16を有する。内部フレーム16は、上昇した処理ユニット11を前後左右から囲む構成を有する。その内部フレーム16にヒータ14及び断熱材17が取り付けられている。ヒータ14及び断熱材17それぞれは平板状である。このように、筐体12の上部は、前後左右の四方にヒータ14を有する。
【0021】
筐体12は、更に、その上部に、均熱管19を有する。均熱管19は、図2に示すように、上から見た場合に円形であり、四方のヒータ14で囲まれる領域に設けられている。処理ユニット11が熱処理領域K1に存在する状態で、均熱管19は、複数の自転軸21の上に載る複数の処理品Wの周りに設けられる。均熱管19は、例えば石英により構成される。
【0022】
図1において、昇降装置13は、処理ユニット11を搭載する移動フレーム28と、移動フレーム28を上下方向に移動可能として支持するガイド29と、移動フレーム28をガイド29に沿って移動させるアクチュエータ30とを有する。アクチュエータ30は、図示しないが、モータにより回転する駆動プーリと、その駆動プーリに掛けられ移動フレーム28と繋がるケーブルとを有する。前記モータによって駆動プーリが正逆回転することで、ケーブルの巻き送り及び巻き取りが行われ、これにより、移動フレーム28がガイド29に沿って昇降する。なお、昇降装置13は、他の構成であってもよい。
【0023】
〔処理ユニット11について〕
図3は、処理ユニット11及び内部フレーム16を側方から見た断面図である。処理ユニット11は、複数の自転軸21、一つの回転体20、一つのモータ23、一つの大歯車24、複数の小歯車25、及び、断熱材26を有する。回転体20は、一つの回転テーブル33と、自転軸21と同数である軸受部22とを有する。
【0024】
本開示では(図2参照)、10本の自転軸21が設けられている。自転軸21は、円柱形状を有していて、直径に比べて長さ寸法の大きい長尺の部材である。図3に示すように、自転軸21の長手方向が上下方向となり、各自転軸21の上に一つの処理品Wが載せられる。自転軸21の上にワークテーブル31が取り付けられていて、そのワークテーブル31の上にテーブルプレート32を介して処理品Wが載せられる。各自転軸21は、下側の下側軸部21aと、上側の上側軸部21bと、ジョイント21cとを有する。上側軸部21bの上に処理品Wが載せられる。下側軸部21aは、回転体20が有する軸受部22により支持される。ジョイント21cは、上側軸部21bと下側軸部21aとを同軸状として繋ぐ。
【0025】
ジョイント21cは、上側軸部21bと下側軸部21aとが軸方向に脱落しないように連結する。ジョイント21cは、上側軸部21bと下側軸部21aとの相対回転を不能として、これら上側軸部21bと下側軸部21aとを連結する。これにより、上側軸部21bと下側軸部21aとの間で中心線C1回りの回転トルクが伝達される。上側軸部21bは、下側軸部21aよりも長く(2倍以上長く)、ジョイント21cは、回転体20(回転テーブル33)の上方側の近傍に位置している。
【0026】
上側軸部21bは、下側軸部21aよりも熱伝導率が低い。具体的に説明すると、下側軸部21aは、鋼製(例えばステンレス鋼)であるのに対して、上側軸部21bは、セラミックス製、又は、ニッケル-クロム-鉄合金製である。上側軸部21bの材質等については後にも説明する。上側軸部21bと下側軸部21aとが異なる材質であっても、ジョイント21cにより、これらは一体回転可能となるようにして連結される。
【0027】
回転テーブル33は、円板状であり、基準線C0を中心として設けられている。回転テーブル33の外周側の縁部には、自転軸21と同数である孔34が設けられている。各孔34の下方に一つの軸受部22が設けられている。軸受部22は、回転テーブル33に取付部材35により取り付けられている。本開示では、軸受部22及び孔34は、10箇所に設けられている。軸受部22及び孔34は、基準線C0を中心とする円に沿って間隔をあけて(本開示では、等間隔となって)配置されている。
【0028】
各自転軸21は、その下部において、孔34を貫通していて、回転テーブル33とは非接触の状態にある。回転テーブル33を貫通する各自転軸21は、その下端部21eにおいて、軸受部22により支持されている。軸受部22は、自転軸21を、その自転軸21の中心線C1回りに回転自在として支持する。軸受部22は、転がり軸受を有し、ラジアル荷重及びアキシャル荷重を支持する。軸受部22は、自転軸21の自重及び自転軸21上の処理品Wの自重を負担する。
【0029】
取付部材35は、複数の軸受部22を、回転テーブル33に、その下方で取り付けるための部材である。本開示では、取付部材35は、基準線C0を中心とする短円筒状の部材である。取付部材35の内周側に、複数の小歯車25及び大歯車24が設けられる。
【0030】
回転テーブル33は、基準線C0を中心とする駆動軸36に固定されていて、回転テーブル33と駆動軸36とは一体回転する。駆動軸36は、一つのモータ23によって基準線C0を中心として回転する。モータ23の出力軸と駆動軸36との間には、プーリ及びベルト等を含む動力伝達部40が介在している。モータ23が回転すると、駆動軸36及び回転テーブル33は、基準線C0を中心として回転する。以上より、回転テーブル33、軸受部22、及び取付部材35を含む回転体20は、モータ23によって、基準線C0を中心として回転する。
【0031】
モータ23は、前記移動フレーム28(図1参照)の一部に取り付けられている。移動フレーム28は、その一部として、駆動軸36を回転可能に支持する支持フレーム37を有する。支持フレーム37は、転がり軸受を有し、この転がり軸受によって駆動軸36の回転が支持される。支持フレーム37に大歯車24が取り付けられている。大歯車24は、基準線C0を中心として設けられている。大歯車24は回転しない固定側の部材となる。大歯車24はその中央に孔が設けられていて、その孔を駆動軸36が貫通している。
【0032】
大歯車24に、小歯車25が噛み合う。小歯車25は、自転軸21と同数設けられている。一つの小歯車25が、一つの自転軸21の下部(下側軸部21a)にキー等によって取り付けられていて、小歯車25と自転軸21とは相対回転が不能である。つまり、小歯車25と自転軸21とは一体回転する。取付部材35は、前記のとおり、短円筒状の部材であり、その内周側に、小歯車25が噛み合う内歯が形成されていてもよい。
【0033】
前記構成を備える処理ユニット11によれば、モータ23の回転により、回転テーブル33、複数の軸受部22、及び取付部材35を含む回転体20が、基準線C0を中心として回転する。このため、各軸受部22に支持される自転軸21は、小歯車25と共に基準線Cを中心として回転(公転)する。各小歯車25は、大歯車24に噛み合うため、大歯車24の周囲を回転(公転)しながら自転し、これにより各自転軸21が、その中心線C1回りに回転(自転)する。以上より、一つのモータ23の回転により、処理品Wを上に載せた自転軸21は、基準線C0を中心として公転しながら自転する。
【0034】
断熱材26は、回転テーブル33の上に設けられている。本開示では、断熱材26は、シート状である。シート状の断熱材26が複数重ねられて設けられている。これにより、断熱性を高めることができる。熱処理領域K1において熱処理される処理品Wの熱が、軸受部22、小歯車25、大歯車24、動力伝達部40、及び、モータ23を含む機械ユニット39に伝わり難くするために、断熱材26は設けられている。
【0035】
断熱材26には、長尺である自転軸21を貫通させる貫通孔27が設けられている。貫通孔27と自転軸21とは非接触の状態にある。断熱材26がシート状であるため、上から下に向かって段階的に断熱性能が低くなるように、断熱材26の性能を変えて、複数の断熱材26を配置することが可能となる。
【0036】
各自転軸21の上部及び各自転軸21上の処理品Wは、熱処理領域K1に位置するが、図1に示すように、機械ユニット39は、準備作業領域K2に位置する。つまり、機械ユニット39は、前記区画床材38よりも下方に位置する。
【0037】
〔自転軸21について〕
前記のとおり、自転軸21が有する下側軸部21aと上側軸部21bとは材質が異なる。下側軸部21aは転がり軸受を有する軸受部22に支持されることから、上側軸部21bよりも靭性の高い鋼材(炭素鋼、ステンレス鋼等)が好ましい。これに対して、上側軸部21bは、上に載せる処理品Wの熱の伝達を阻害すべく、下側軸部21aよりも断熱性の高い(熱伝導率が低い)材質が好ましい。例えば、上側軸部21bは、セラミックス製である。
【0038】
具体的には、上側軸部21bとしてアルシーマL(アスザック株式会社製)が用いられる。この場合、耐熱衝撃性が高く、約500℃において優れた耐熱衝撃性を有する。また、熱伝導率が2.9[W/m・K]であり低く、また、密度が2.4[g/cm^3]であり軽量である。
【0039】
上側軸部21bがセラミックス製である場合、軽量となり、小出力のモータ23で自転軸21を回転させることができ、また、軸振れを低減することが可能となる。
セラミックス製である上側軸部21bの場合、その密度が4[g/cm^3]以下であり、好ましくは3[g/cm^3]以下であり、より好ましくは2.5[g/cm^3]以下である。また、熱伝導率は、5[W/m・K]以下であり、より好ましくは3[W/m・K]以下である。耐熱衝撃性は、450℃以上であるのが好ましい。
【0040】
または、上側軸部21bとしてニッケル-クロム-鉄合金が用いられる。具体的には、インコネル(登録商標)が用いられる。インコネル600の場合、耐熱衝撃性が高く、約700℃において優れた耐熱衝撃性を有する。また、熱伝導率が14.8(23℃)[W/m・K]であり低い。インコネルのようなニッケル-クロム-鉄合金製が用いられることで、上側軸部21bにおいて、高温強度が高く、熱伝導率が低い。
【0041】
上側軸部21bがニッケル合金製(インコネルのようなニッケル-クロム-鉄合金製)である場合、熱伝導率は、20[W/m・K]以下であり、より好ましくは15[W/m・K]以下である。上側軸部21bがニッケル合金製である場合、耐熱衝撃性が500℃以上であるのが好ましい。
【0042】
上側軸部21bに、耐熱衝撃性の高い材質が用いられることで、炉内温度(熱処理領域K1の温度)が高くても、上側軸部21bの強度が維持され、また、熱による上側軸部21bの歪を抑制できる。更に、自転軸21は、慣性モーメントが小さいのが好ましい。
【0043】
上側軸部21bは、セラミックス製であっても、ニッケル-クロム-鉄合金製であっても、中空の部材により構成されているのが好ましい。これにより、中実部材とするよりも、上側軸部21bを軽量とすることができ、また、熱伝導性を低下させることが可能となる。
【0044】
〔実施形態の熱処理炉10について〕
以上のように、本実施形態の熱処理炉10は、箱状である筐体12と、筐体12内に設けられ複数の処理品Wが配置される処理ユニット11と、筐体12内で処理ユニット11を昇降させる昇降装置13とを備える。筐体12の内部において、上部がヒータ14を有する熱処理領域K1であり、下部が処理ユニット11の所定位置に処理品Wを配置するための準備作業領域K2である。昇降装置13は、処理ユニット11を、筐体12内の熱処理領域K1と準備作業領域K2との間で昇降させる。
【0045】
この熱処理炉10によれば、筐体12の下部の準備作業領域K2で、処理品Wが処理ユニット11の自転軸21の上に載せられる。その処理ユニット11が、昇降装置13によって上部の熱処理領域K1に移動し、処理品Wに対する熱処理が行われる。熱処理が終わると、処理ユニット11が、昇降装置13によって下部の準備作業領域K2に移動し、処理済みの処理品Wが取り出される。筐体12内で熱処理領域K1と準備作業領域K2とが上下に別れているため、つまり、熱処理領域K1が大きく開放されないため、熱効率がよい。
【0046】
処理ユニット11は、複数の自転軸21と、複数の自転軸21それぞれを支持する軸受部22を複数有する回転体20と、基準線C0を中心として回転体20を回転させるためのモータ23と、基準線C0を中心として設けられている大歯車24と、大歯車24と噛合う複数の小歯車25と、回転体20の上に設けられている断熱材26とを有する。各自転軸21は、長尺であってその長手方向が上下方向となり、自転軸21の上に処理品Wが載せられる。回転体20では、複数の軸受部22が基準線C0を中心とする円に沿って間隔をあけて配置されている。各軸受部22は、自転軸21それぞれを、その中心線C1回りに回転自在として支持する。一つの小歯車25は、一つの自転軸21と一体である。断熱材26には、長尺である自転軸21を貫通させる貫通孔27が設けられている。
【0047】
このような処理ユニット11を備える熱処理炉10によれば、一つのモータ23の回転により、処理品Wを上に載せた自転軸21は、基準線C0を中心として公転しながら、中心線C1を中心として自転することができる。よって、筐体12の上部(熱処理領域K1)において、処理品Wは全体にわたって熱せられる。
【0048】
また、本実施形態の熱処理炉10では、回転体20は、自転軸21の下部を貫通させる孔34を複数有する回転テーブル33と、軸受部22を回転テーブル33にその下方で取り付けるための取付部材35とを有する。この構成により、自転軸21の上に処理品Wが載せられ、その自転軸21は、長尺であり、その下端部21eにおいて軸受部22により支持される。このため、熱せられた処理品W及び自転軸21の上端部の熱が軸受部22に伝わり難く、軸受部22に対して熱膨張等の悪影響を与え難くすることが可能となる。
【0049】
また、小歯車25、大歯車24、動力伝達部40、及びモータ23についても回転テーブル33の下方に設けられている。このため、熱せられた処理品W及び自転軸21の上端部の熱が、小歯車25、大歯車24、動力伝達部40、及びモータ23等に伝わり難く、熱による悪影響を与え難くすることが可能となる。
【0050】
また、自転軸21は、軸受部22により支持される下側軸部21aと、上側軸部21bと、これら下側軸部21aと上側軸部21bとを同軸状として繋ぐジョイント21cとを有する。この構成により、上側軸部21bを、下側軸部21aよりも熱伝導率の低い材質とすることができる。例えば、上側軸部21bは、セラミックス製、ニッケル-クロム-鉄合金製である。なお、その他の材質であってもよい。これにより、処理品Wの熱の影響を処理ユニット11の下部、つまり、前記機械ユニット39に伝わり難くすることが可能となる。これに対して、下側軸部21aを、軸受部22による支持が可能となる例えば一般的な鋼材(ステンレス鋼)とすることが可能となる。このような構成により、自転軸21が軸受部22によって安定して支持される構成と、自転軸21を通じた熱伝達をできるだけ抑えるための構成とが得られる。
【0051】
図2に示すように、筐体12の上部は、前後左右の四方にヒータ14を有する。これに対して、筐体12の上部は、四方のヒータ14で囲まれる領域に、上から見た場合に円形である均熱管19を有する。均熱管19は、複数の自転軸21の上に載る複数の処理品Wの周りに設けられる。四方のヒータ14の内側に設けられる均熱管19は、円形であり、この均熱管19により、基準線C0を中心とする円に沿って移動する複数の処理品Wを、効率よく、均等に熱処理することが可能となる。
【0052】
以上、本実施形態の熱処理炉10によれば、熱効率がよく、処理品Wを全体にわたって熱することが可能となる。その結果、均質である熱処理品が得られる。
【0053】
〔その他〕
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲に記載された構成と均等の範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0054】
10:熱処理炉 11:処理ユニット 12:筐体
13:昇降装置 14:ヒータ 19:均熱管
20:回転体 21:自転軸 21a:下側軸部
21b:上側軸部 21c:ジョイント 21e:下端部
22:軸受部 23:モータ 24:大歯車
25:小歯車 26:断熱材 27:貫通孔
33:回転テーブル 34:孔 35:取付部材
C0:基準線 C1:中心線 K1:熱処理領域
K2:準備作業領域 W:処理品
図1
図2
図3