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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ラミネート用接着剤
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240807BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240807BHJP
   C09J 193/02 20060101ALI20240807BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240807BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J11/06
C09J193/02
C08G18/10
C09J175/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020107650
(22)【出願日】2020-06-23
(65)【公開番号】P2022003111
(43)【公開日】2022-01-11
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】391047558
【氏名又は名称】ヘンケルジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100138885
【弁理士】
【氏名又は名称】福政 充睦
(72)【発明者】
【氏名】松田 健二
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-091996(JP,A)
【文献】特開2019-116009(JP,A)
【文献】特開2006-96912(JP,A)
【文献】特開2019-94411(JP,A)
【文献】特開2015-120619(JP,A)
【文献】特開2019-108482(JP,A)
【文献】特開平8-48962(JP,A)
【文献】特開2018-48274(JP,A)
【文献】特開2018-30905(JP,A)
【文献】特開2008-222773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分、(C)ロジンエステルおよび(D)ヒマシ油系化合物を配合することを含むラミネート用接着剤の製造法であり、
(A)成分を含む第1液と、(B)~(D)成分を含む第2液とを配合することを含み、
(B)成分100質量部当たり、(C)成分50~250質量部が配合されている、ラミネート用接着剤の製造方法
【請求項2】
(B)ポリオールがポリエーテルポリオールを含む、請求項1に記載のラミネート用接着剤の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート用接着剤に関し、より詳細には、安定性及び接着性に優れ、複数のフィルムを貼り合わせる際、フィルムの外観を損なわないラミネート用接着剤及びそれを用いたラミネートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医療品及び化粧品等の包装用材料、及びFPC基板及びTAB基板等の基板を製造する際に、プラスチックフィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル及びポリイミド等のフィルム)、金属蒸着フィルム、及び金属箔(例えば、アルミニウム及び銅等の箔)を貼り合わせた複合フィルムが使用されている。これらのプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、及び金属箔等を接着するための接着剤として、有機ポリオールと有機イソシアネートを組み合せたウレタン接着剤が知られている。
【0003】
近年、環境面、簡便な設備、及びコストメリット等を考慮し、ウレタン接着剤として無溶剤型接着剤の要求が高まっている。無溶剤型接着剤は、溶剤型接着剤と比較すると、溶剤を使用しないことによる利益があるが、濡れ性が悪く、複数のフィルムを貼り合わせる際、フィルム面に気泡が生じやすく、フィルム外観を低下させることがある。特に、アルミニウムが蒸着されたポリエチレンテレフタレートフィルムは、外観不良が発生することが多い。
【0004】
特許文献1~3は、ウレタン接着剤でラミネートされた積層フィルムを開示する。
特許文献1は、ポリイソシアネート及びポリオール、さらに、25℃で液状のエステルを混合して得られるウレタン接着剤組成物及びその組成物を塗工して得られる積層体を開示する([特許請求の範囲]、[表1]~[表6]参照)。
【0005】
特許文献2は、ポリイソシアネート、ポリオール、およびヒマシ油(又はヒマシ油誘導体)を有する無溶剤型ラミネート接着剤が開示する([特許請求の範囲]、[表1]、[表2]参照)。
【0006】
特許文献3は、ポリエステル系ウレタン樹脂、特定のポリオール、ポリイソシアネートを有する一液型接着剤を開示する([特許請求の範囲]参照)。その表4は、ポリエステル系ウレタン樹脂、ロジンエステル、ジフェニルメタンジイソシアネートを有する接着剤を開示する([請求項4]、[表4]参照)。
【0007】
特許文献1~3は、積層フィルムの外観が向上することを記載するが(特許文献1[0017]、特許文献2[0015]、特許文献3[0005]参照)、需要者の高い要求を十分に満たしているとは言えなかった。さらに、積層フィルムで包装袋を製造する際の作業効率を考慮すると、接着剤には、各成分の相溶性、及び養生後のフィルムへの接着強度に優れることが望まれている。更に、作業者の作業効率及びフィルムの生産効率を考えると、接着剤には粘度上昇が緩やかである(ポットライフがある程度長い)ことが要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-162420号公報
【文献】国際公開2016/152370
【文献】特開平8-048962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたもので、プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、養生後のフィルムへの接着強度に優れ、各成分の相溶性に優れ、ラミネートフィルムの外観を損なわず、適度なポットライフを有し、塗布作業及びフィルム生産を効率よく行えるラミネート用接着剤、およびそのラミネート用接着剤を用いて製造される外観に優れるラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ウレタンプレポリマーと、ポリオールと、特定の可塑剤を有するウレタン樹脂組成物は、各成分の相溶性に優れ、プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際にフィルムへの接着強度に優れ、粘度上昇が緩やかで適度なポットライフを持ち、ラミネートフィルムの外観を損なわないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
本明細書は、下記の態様を含む。
1.(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分、(C)ロジンエステルおよび(D)ヒマシ油系化合物を配合して得られ、
(B)成分100質量部当たり、(C)成分が50~250質量部配合されている、ラミネート用接着剤。
2.(B)成分100質量部当たり、(C)成分が100~150質量部配合されている1に記載のラミネート用接着剤。
3.(B)ポリオールがポリエーテルポリオールを含む、1または2に記載のラミネート用接着剤。
4.(C)ロジンエステルの軟化温度が80~120℃である、1~3のいずれか1つに記載のラミネート用接着剤。
5.1~4のいずれか1つに記載のラミネート用接着剤を介し、複数のフィルムが貼り合わされているラミネートフィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分、(C)ロジンエステルおよび(D)ヒマシ油系化合物を配合して得られ、(B)成分100質量部当たり、(C)成分が50~250質量部配合されている。
【0013】
(A)成分~(D)成分が上記組成で配合されることで、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、相溶性に優れ、適度な長さのポットライフを持ち、接着強度に優れている。本発明の実施形態のラミネート用接着剤でプラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、ラミネートフィルムの外観が損なわれることがない。
【0014】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上記ラミネート用接着剤を用いて得られるので、貼り合わせが迅速になされ、外観にも優れ、効率良く生産される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。
図2図2は、本発明の他の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー(以下、「(A)成分」ともいう)、(B)ポリオール成分(以下、「(B)成分」ともいう)、(C)ロジンエステル(以下、「(C)成分」ともいう)、(D)ヒマシ油系化合物(以下、「(D)成分」ともいう)が配合(又は混合)されて得られ、(A)成分~(D)成分を含む。
【0017】
本発明の実施形態の接着剤は、目的とする接着剤を得ることができる限り、(A)成分~(D)成分の配合順序及び配合方法等によって、特に制限されるものではない。本発明の実施形態の接着剤は、例えば、(A)ウレタンプレポリマー、(B)ポリオール成分、および(C)ロジンエステル及び(D)ヒマシ油系化合物の4成分を同時に配合して得ることができ、(A)成分、(C)成分、(D)成分のいずれかを予め(B)成分と配合し、その後、残りの成分を配合して得ることができるが、(B)成分~(D)成分を予め混合し、その混合物を(A)成分と配合して得られることがより好ましい。
【0018】
(A)成分~(D)成分を配合(又は混合)することによる接着剤の製造は、既知の方法を用いて行うことができる。溶媒中で(A)成分~(D)成分を配合して接着剤を得ることができるが、互いに溶媒を用いずに(A)成分~(D)成分を配合することもできる。
【0019】
本発明の実施形態の接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第2液を配合して得られる2液型接着剤であって良いし、(A)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第1液と、(B)成分を含む第2液を配合して得られる2液型接着剤であって良い。
【0020】
本発明の実施形態の接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第2液を含む2液型接着剤であることがより好ましい。第1液及び第2液は、各々、後述する各種添加剤などを適宜含むことができる。
【0021】
<(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー>
本発明の実施形態において、(A)ウレタンプレポリマーは、(a1)ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーとが反応して得られる生成物である。(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量は1500~4000であることが好ましい。(A)ウレタンプレポリマーの数平均分子量が上記範囲である場合、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、接着性により優れる。
【0022】
尚、本明細書において、数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して測定し、ポリスチレン標準を用いて換算して得られる値である。具体的には、下記のGPC装置及び測定方法を用いて値を測定し、換算することができる。GPC装置は、東ソー社製のHCL-8220GPCを用い、検出器として、RIを用いる。GPCカラムとして、東ソー社製のTSKgel SuperMultipore HZM 2本を用いる。試料をテトラヒドロフランに溶解して、流速を0.35ml/min、カラム温度を40℃にて流して、測定値を得る。標準物質としての単分散分子量のポリスチレンを使用した検量線を用いて、測定値を換算して、目的とするMnを得る。後述する(a1)ポリオールのMn及び(a2)イソシアネートモノマーのMnについても同様である。
【0023】
本明細書において、(a1)ポリオールとは、一つの分子内に水酸基を二つ以上持つ化合物の総称であり、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。本発明の実施形態の接着剤を得ることができる限り、 (a1)ポリオールの種類は制限されない。
【0024】
本発明の実施形態において、(a1)「ポリオール」の数平均分子量は、400~1300であることが好ましい。(a1)ポリオールは、数平均分子量が上記範囲であることで鎖長が短くなり、(a2)イソシアネートモノマーと架橋しやすくなる。未反応の(a2)イソシアネートモノマーがより少なくなるので、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)ウレタンプレポリマーをより多く含有するようになり、接着性により優れる。
【0025】
本発明の実施形態における(a2)イソシアネートモノマーは、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り特に限定されないが、芳香族イソシアネートを含むことが好ましい。(a2)イソシアネートモノマーが芳香族イソシアネートを含む場合、本発明の実施形態のラミネート用接着剤の接着性がより向上する。
【0026】
本発明の実施形態の「(a2)イソシアネートモノマー」は、芳香族イソシアネートのみから構成されることを意味しない。本発明の実施形態のラミネート用接着剤の接着性及びフィルムの外観に悪影響を与えない範囲で、(a2)イソシアネートモノマーは、脂肪族イソシアネート及び/又は脂環式イソシアネートを含んでもよい。
【0027】
本明細書では、「脂肪族イソシアネート」とは、鎖状の炭化水素鎖を有し、その炭化水素鎖にイソシアネート基が直接結合している化合物であって、環状の炭化水素鎖を有さない化合物をいう。「脂肪族イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、直接その芳香環と、イソシアネート基は、結合していない。
尚、本明細書では、芳香環は環状の炭化水素鎖に含まれない。
【0028】
「脂環式イソシアネート」とは、環状の炭化水素鎖を有し、鎖状の炭化水素鎖を有してよい化合物である。イソシアネート基は、環状の炭化水素鎖と直接結合しても、有し得る鎖状の炭化水素鎖と直接結合してもよい。「脂環式イソシアネート」は、芳香環を有してもよいが、その芳香環とイソシアネート基は、直接結合していない。
【0029】
「芳香族イソシアネート」とは、芳香環を有し、かつ、イソシアネート基がその芳香環と直接結合している化合物をいう。従って、たとえ芳香環をその分子内に有していたとしても、イソシアネート基が芳香環に直接結合していない化合物は、脂肪族イソシアネートか、脂環式イソシアネートに分類される。
【0030】
従って、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(OCN-C-CH-C-NCO)は、イソシアネート基が芳香環に直接結合しているので、芳香族イソシアネートに該当する。
【0031】
一方、例えば、キシリレンジイソシアネート(OCN-CH-C-CH-NCO)は、芳香環を有するが、イソシアネート基が芳香環に直接結合せず、メチレン基と結合しているので、脂肪族イソシアネートに該当する。
尚、芳香環は、二つ以上のベンゼン環が縮環していてもよい。
【0032】
芳香族イソシアネートとして、例えば、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を例示できる。
【0033】
脂肪族イソシアネートとして、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン、1,5-ジイソシアナトペンタン、1,6-ジイソシアナトヘキサン(以下、HDI)、1,6-ジイソシアナト-2,2,4-トリメチルヘキサン、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(リジンジイソシアネート)、及び1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(キシリレンジイソシアネート)等を例示できる。
【0034】
脂環式イソシアネートとして、例えば、5-イソシアナト-1-イソシアナトメチル-1,3,3-トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート:IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水添キシリレンジイソシアネート)、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン(水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、及び1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン等を例示できる。
【0035】
本発明の実施形態において、(a1)ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーの反応方法は、本発明の実施形態の(A)ウレタンプレポリマーを得ることができる限り制限されることはなく、一般的なウレタン化反応方法を使用することができる。例えば、溶媒を使用しない塊状重合及び溶剤を使用する溶液重合を使用することができ、適宜加熱攪拌し、必要に応じて触媒を使用することができる。さらに、(a1)ポリオールと(a2)イソシアネートモノマーの反応の際に、種々の添加剤を用いても差し支えない。
尚、(A)ウレタンプレポリマーの市販品としては、ヘンケルジャパン株式会社製のLOCTITE LIOFOL LAシリーズが挙げられる。
【0036】
<(B)ポリオール成分>
本発明の実施形態において「(B)ポリオール成分」とは、ラミネート用接着剤に一般的に使用され、目的とする本発明の実施形態のラミネート用接着剤を得ることができ、接着剤の製造に悪影響を与えるものでなければ特に限定されない。(B)ポリオール成分として、例えば、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、またはこれらポリオールの変性物を例示できる。
【0037】
(B)ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、ポリエーテルポリオールを含むことによって、粘度上昇がより抑制され、ポットライフがより適度な長さになり、塗布作業により適する。
【0038】
ポリエーテルポリオールとは、通常、ポリエーテルポリオールと理解されるものをいい、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り、特に制限されるものではない。ポリエーテルポリオールとして、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)等を例示できる。ポリエーテルポリオールは、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0039】
一般的に、ポリエーテルポリオールは、一般的にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、蔗糖等の分子内に水酸基を二つ以上持った低分子化合物及び/又はポリアミン等に付加重合させて製造される。
【0040】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、ポリエーテルポリオールとして、ポリプロピレングリコールを含むことが好ましい。ポリプロピレングリコールを含むことで、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、急な粘度上昇がより抑制され、ラミネートフィルム製造時のフィルムへの塗布作業により適する。
【0041】
<(C)ロジンエステル>
本発明の実施形態において、(C)ロジンエステルとしては、一般的に接着剤に使用され得るロジンエステルをいい、本発明の実施形態のラミネート用接着剤を得られる限り特に制限されることはない。ロジンは、一般に、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン等を含み、(C)ロジンエステルは、一般に、天然ロジン、変性ロジン及び/又は水添ロジン等のエステルを含む。ロジンエステルとして、例えば、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、水添ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステルが挙げられる。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(C)成分を含むことで、各成分の相溶性が向上し、接着強度や安定性が向上する。
【0042】
本発明の実施形態としては、(C)成分は、酸価が0~50mgKOH/gのロジンエステルを含むことが好ましく、酸価が0~30mgKOH/gのロジンエステルを含むことがさらに好ましく、酸価が0~10mgKOH/gのロジンエステルを含むことが最も好ましい。ロジンエステルの酸価が該範囲内であると、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、粘度上昇がより抑えられ、安定性がより高くなる。
【0043】
本発明において、(C)ロジンエステルは、軟化点80~120℃であることが好ましく、軟化点85~110℃であることが特に好ましく、軟化点80~100℃であることが最も望ましい。(C)ロジンエステルの軟化点が上記範囲であることによって、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、より適度な硬さを保持することができ、接着強度により優れ、フィルムへ塗布された際、気泡が生じることをより防ぎ、フィルムの外観をより向上しえる。
【0044】
(C)ロジンエステルとして、市販品を使用することができる。そのような市販品として、GUANDONG KOMO株式会社製のKOMOTAC KB90H(商品名)、KOMOTAC KH100(商品名)、KOMOTAC KHR75(商品名)、KOMOTAC K107(商品名);イーストマンケミカル株式社製のForalyn 5020-F(商品名)、Foral AX-E(商品名)、Foral 85E(商品名)等が挙げられる。
【0045】
本発明の実施形態として、(B)成分100質量部当たり、(C)成分が50~250質量部配合されることが好ましく、(C)成分が100~150質量部配合されることがより好ましい。上記割合で両成分が配合されることによって、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、相溶性により優れ、粘度上昇がより抑制されてポットライフがより適度な長さになり、接着強度にもより優れ、特により適度な長さのポットライフを有するので、被着体への塗布作業性をより向上しえる。 プラスチックフィルムを積層してラミネートフィルムを製造する際、本発明の実施形態のラミネート用接着剤はフィルムへより均一に塗布されるので、ラミネートフィルムの外観がより損なわれない。
【0046】
<(D)ヒマシ油系化合物>
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(D)ヒマシ油系化合物を含む。(D)ヒマシ油系化合物を含むことによって、ラミネート用接着剤の接着強度が向上する。(D)ヒマシ油系化合物は、本発明の実施形態のラミネート用接着剤を得ることが出来る限り、特に制限されることはなく、その種類が制限されることもなく、変性されていても未変性であっても良いし、水添であっても未水添であっても差し支えない。
【0047】
ヒマシ油系化合物として、ヒマシ油及びヒマシ油誘導体を例示できる。ヒマシ油及び/又はヒマシ油誘導体が含まれることによって、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、相溶性が向上し、接着強度に優れる。
【0048】
ヒマシ油とは、トウダイグサ科のトウゴマの種子から採取する植物油の一種であり、成分は不飽和脂肪酸(例えば、リシノール酸87%、オレイン酸7%、リノール酸3%)と少量の飽和脂肪酸(例えば、パルミチン酸、ステアリン酸等が3%)とのグリセリドである。ヒマシ油系化合物として市販品を使用することができる。ヒマシ油として、市販品を使用することができる。そのような市販品として、例えば、豊国製油株式会社製の工業用1号ヒマシ油系化合物(商品名)、伊藤製油株式会社製のLAV(商品名)、が挙げられる。
【0049】
本発明において、ヒマシ油誘導体とは、植物油の一種であるヒマシ油を母体とし、官能基の導入、酸化、還元及び原子の置き換え等、母体であるヒマシ油の構造や性質を大幅に変えない程度の変性がなされた化合物をいう。
【0050】
ヒマシ油誘導体として、例えば、ヒマシ油系ポリオール、ヒマシ油系変性ポリオール、脱水ヒマシ油、ヒマシ硬化油、ヒマシ油脂肪酸、脱水ヒマシ油脂肪酸、12-ヒドロキシステアリン酸、及びヒマシ油脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0051】
ヒマシ油誘導体として、市販品を使用することができる。そのような市販品として、例えば、伊藤製油株式会社のヒマシ硬化油A(商品名)、CO-FA(商品名)、DCO-FA(商品名)、リックサイザーS4(商品名)、リックサイザーC-101(商品名)、及びリックサイザーGR-310(商品名)、URIC H52、URIC AC-006;青木油脂工業株式会社製のブラウノンBR-410(商品名)、ブラウノンBR-410(商品名)、ブラウノンBR-430(商品名)、ブラウノンBR-450(商品名)、ブラウノンCW-10(商品名)、ブラウノンRCW-20(商品名)、ブラウノンRCW-40(商品名)、ブラウノンRCW-50(商品名)、及びブラウノンRCW-60(商品名);及び日油株式会社製のカスターワックスA(商品名)、ニューサイザー510R(商品名)、ステアリン酸さくら(商品名)、ヒマシ硬化脂肪酸(商品名)、NAA-34(商品名)、NAA-160(商品名)、及びNAA-175(商品名)等が挙げられる。
ヒマシ油系化合物は、単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0052】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(C)ロジンエステルと(D)ヒマシ油系化合物との合計100質量部当たり、(C)ロジンエステルは10~90質量部含まれることが好ましく、20~90質量部含まれることがより好ましく、25~70質量部含まれることが特に好ましく、30~60質量部含まれることが最も好ましい。(C)成分と(D)成分が上記割合で配合されることで、本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、相溶性がより向上し、接着強度により優れ、粘度上昇もより抑制されるので、ラミネートフィルムを製造する際に複数のフィルムの貼り付けをより容易にし、ラミネートフィルムに気泡をより生じさせることがない。
【0053】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)成分~(D)成分の他に、必要に応じて、各種添加剤等のその他の成分を含むことができる。その他の成分は、一般的にラミネート用接着剤に含まれる成分であって、本発明の実施形態のラミネート用接着剤を得られる限り特に制限されることはない。その他の成分として、例えば、溶媒、顔料、可塑剤(上述の(C)成分、(D)成分を除く)、触媒及び接着促進剤等を例示できる。
【0054】
「顔料」として、例えば、TiO、SiO、Feまたは類似の酸化物またはオキシヒドレートに基づくナノ顔料が挙げられる。これらの顔料は、通常、500nm以下の粒度を有することが好ましく、100nm未満の粒度を有することがより好ましい。
【0055】
「可塑剤」として、例えば、ホワイトオイル、ナフテン鉱油、パラフィン炭化水素油、ポリプロピレンオリゴマー、ポリブテンオリゴマー、ポリイソプレンオリゴマー、水素化ポリイソプレンおよび/またはポリブタジエンオリゴマー、フタレート、アジペート、ベンゾエートエステル、植物油または動物油およびこれらの誘導体等を例示できる。
植物油、動物油及びこれらの誘導体は、一般的に食品に使用され、安全性がより高いと考えられるので、本発明の実施形態のラミネート用接着剤を食品包装フィルムの製造に利用することを考慮すると、より好ましい。
【0056】
「触媒」として、金属触媒、例えば、錫触媒(トリメチルチンラウレート、トリメチルチンヒドロキサイド、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンマレエート等)、鉛系触媒(オレイン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクテン酸鉛等)、そのほかの金属触媒(ナフテン酸コバルト等のナフテン酸金属塩等)、及びアミン系触媒、例えばトリエチレンジアミン、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルへキシレンジアミン、ジアザビシクロアルケン類、ジアルキルアミノアルキルアミン類等を例示できる。
【0057】
「接着促進剤」としては、シラン化合物が挙げられる。既知の有機官能性シラン、例えば(メタ)アクリルオキシ官能性、エポキシ官能性、アミン官能性及び非反応性置換シランを、接着促進剤として用いることができる。その例は、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、3-アクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシメチルトリエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン等である。
本発明の実施態様として、接着剤の総質量100質量部(固形分)に対し、接着促進剤0.1~5質量部を含むことが好ましい。
【0058】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、上述したように、(A)成分、(B)成分、(C)成分および(D)成分を混合することによって製造することができる。本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)成分~(D)成分を含む第2液を配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤であって良いし、(A)成分、(C)成分及び(D)成分を含む第1液と、(B)成分を含む第2液を配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤であって良い。場合により、その他の成分を混合してよい。第1液及び第2液は、各々、その他の成分を適宜含むことができる。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、(A)成分を含む第1液と、(B)成分~(D)成分を含む第2液に配合し、その2液を含む2液型ラミネート用接着剤がより好ましい。
【0059】
混合方法は、本発明が目的とするラミネート用接着剤を得ることができる限り、特に限定されるものではない。成分を混合する順序等についても、特に限定されるものではない。本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、特別な混合方法及び特別な混合順序等を要することなく製造することができる。得られたラミネート用接着剤は、フィルムへの接着強度および経時による接着強度の低下が小さい。
【0060】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、通常、15~100℃でフィルムに塗布されるので、この温度領域において低粘度であるべきである。食品包装フィルム用接着剤の粘度は、塗布性を考慮すると、(Brookfield粘度計)で、40℃で300~5000mPas、50℃で200~4000mPasであることが好ましい。
【0061】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤の粘度が上記範囲である場合、ラミネート用接着剤をフィルムへより均一に塗布することができるので、接着強度及びフィルム外観をより向上し得る。
【0062】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上述のラミネート用接着剤を用いて製造された積層体である。積層体を形成するために使用されるフィルムは、本発明の実施形態の積層体を得られる限り特に制限されることはないが、例えば、プラスチック基材に金属層が形成されたフィルム、金属層が形成されていないフィルムを例示できる。
【0063】
ラミネートフィルムを作製する際には、本発明の実施形態のラミネート用接着剤をフィルムへ塗布する。塗布方法として、例えば、グラビアコート、ワイヤーバーコート、エアナイフコート、ダイコート、リップコート、コンマコートなどの様々な方法により行うことができる。
【0064】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤を使用して、複数のフィルムを貼り合わせ、ラミネートフィルムを製造することができる。フィルムへラミネート用接着剤を塗布する場合、塗布量は、0.5~10g/mであることが好ましく、1~5g/mであることがより好ましい。
【0065】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、上述の接着剤で複数のフィルムが貼合わされたものである。本発明の実施形態の一例を図1及び2に例示するが、本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【0066】
図1は、本発明の一の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に示す。ラミネートフィルム10は、2枚のフィルムとその間のラミネートフィルム用接着剤13から形成されており、2枚のフィルム11及び12は、ラミネートフィルム用接着剤13によって貼り合わされている。フィルム11及び12は、同一の材料であっても、異なる材料であってもよい。
【0067】
図1では、2枚のフィルム11及び12は、貼り合わされているが、3枚以上のフィルムが貼り合わされていてもよい。
【0068】
本発明の他の実施形態のラミネートフィルムの断面を模式的に図2に示す。図2では、フィルム11とラミネートフィルム用接着剤13との間に、薄膜11aが形成されている。例えば、フィルム11が、プラスチックフィルムである場合、フィルム11の表面に、金属薄膜11aが形成されている形態を示す。金属薄膜11aは、プラスチックフィルム11の表面に、例えば蒸着によって形成することができ、この金属薄膜11aが形成されたフィルム11とフィルム12を、ラミネートフィルム用接着剤13を介して貼り付けて、図2に係るラミネートフィルムを得ることができる。
【0069】
プラスチックフィルムに蒸着する金属として、例えば、アルミニウム、鋼及び銅等を例示できる。プラスチックフィルムに蒸着加工を施すことで、フィルムにバリア性を付与することができる。蒸着材料としては、酸化珪素及び酸化アルミニウム等が用いられる。基材のプラスチックフィルム11は、透明でも、白及び黒等に着色されていてもよい。
【0070】
フィルム12として、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、フッ素樹脂、アクリル樹脂等から成るプラスチックフィルムが用いられるが、耐熱性、耐候性、剛性及び絶縁性等を付与するためにポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルム等を用いることが特に好ましい。フィルム11及び12は、透明でも、着色されても良い。
【0071】
フィルム11の蒸着薄膜11aとフィルム12とは、本発明の実施形態のラミネートフィルム用接着剤13を用いて貼り付けられるが、フィルム11及び12は、ドライラミネート法によって積層されることが多い。従ってラミネートフィルム用接着剤13には、ラミネート時におけるフィルムへの初期密着性に優れ、フィルムへの養生後の接着性に優れていることが要求される。
【0072】
本発明の実施形態のラミネートフィルムは、様々な包装袋や屋外材料を製造するために用いられる。
包装袋とは、食品、洗剤、シャンプー及びリンス等を内包するために、ラミネートフィルムを加工して得られた袋状の物品をいう。屋外材料としては、防壁材、屋根材、太陽電池モジュール、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、及び看板等の屋外で使用される物品が挙げられる。
これらの包装袋や屋外材料は、複数のフィルムが貼り合わされたラミネートフィルムを含む形態をとる。
【実施例
【0073】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、質量部及び質量%の基準としている。
【0074】
<ラミネート用接着剤の製造>
接着剤を製造するための成分を、以下に示す。
(A)イソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマー
(A1)LOCTITE LIOFOL LA7735(構成成分:ポリプロピレングリコールおよびジエチレングリコールとイソシアネートモノマーとの重合体 NCO質量%:11.5 ヘンケルジャパン株式会社)
(A2)LOCTITE LIOFOL LA7715(構成成分:ポリプロピレングリコールおよびポリエステルポリオールとイソシアネートモノマーとの重合体 NCO質量%:13.8% ヘンケルジャパン株式会社)
【0075】
(B)ポリオール成分
(B1)EXCENOL1020(ポリプロピレングリコール、Mn:1000、水酸基価111mgKOH/g AGC株式会社)
(B2)サンニックスGP1500(ポリプロピレングリコール3官能、Mn:1500、水酸基価111mgKOH/g 三洋化成工業株式会社)
(B3)プラクセル220EB(ポリカプロラクトンポリオール、Mn:2000、水酸基価56mgKOH/g 三菱ケミカル株式会社製)
(B4)サンニックスGP400(ポリプロピレングリコール3官能、Mn:400、水酸基価365mgKOH/g 三洋化成工業株式会社)
(B5)PEG1000(ポリエチレングリコール、Mn:1000、水酸基価111mgKOH/g 日油株式会社)
【0076】
(C)ロジンエステル
(C1)KOMOTAC KB90H(未水添ロジンエステル、軟化点90℃、酸価0~10mgKOH/g、 GUANDONG KOMO株式会社)
(C2)KOMOTAC KH100(水添ロジンエステル、軟化点100℃、酸価0~15mgKOH/g 、GUANDONG KOMO株式会社)
(C3)Foralyn 5020-F(液状水添ロジンエステル、イーストマンケミカル株式会社)
(C’4)Quintone B170(未水添C5樹脂、軟化点70℃、日本ゼオン株式会社)
(C’5)ARKON P90(水添C9樹脂、荒川化学工業株式会社)
【0077】
(D)ひまし油
(D1)工業用1号ヒマシ油系化合物(ヒマシ油系化合物、豊国製油株式会社)
(D2)URIC H52(ヒマシ油系ポリオール、伊藤製油株式会社)
(D’3)ダイアナフレシアS32(パラフィンオイル、出光興産株式会社)
(D’4)こめサラダ油(米油、ボーソー油脂株式会社)
【0078】
表1~2に示すように、(A)成分~(D)成分を混合し、実施例1~9及び比較例1~6のラミネート用接着剤を製造した。具体的には、表1~2に示す組成(質量部)で、(B)成分~(D)成分を混合し、120℃で1時間攪拌した。混合物を冷却後、混合物に成分(A)を、表1~2に示す量で添加した。混合物を40℃で5分間攪拌し、ラミネート用接着剤を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
<ラミネートフィルムの製造>
実施例のラミネート用接着剤を、白ベタ印刷部位と無地部位のある印刷面を有するPETフィルムに、固形分質量が2g/mとなるように、その印刷面側へ塗布した。そのPETフィルムの接着剤を塗布した面(印刷面)に、アルミニウムが蒸着された面を有する別のPETフィルムを、その蒸着面側から積層した。ハンドローラーを用いて接着剤と蒸着面との間から気泡ができるだけ抜けるように圧着した。その後、40℃雰囲気下にて24時間養生させ、ラミネートフィルムを得た。
【0082】
<評価>
1.初期粘度測定
JAI7-1991、B法に基づき、ブルックフィールド粘度計でラミネート用接着剤の初期粘度を測定した。具体的には、27番ローター、回転速度1rpmで、40℃の粘度を測定した。
ラミネート用接着剤を調製した後、直ちに上記装置をセッティングし、測定開始(ローター回転開始)から1分後の粘度を初期粘度(「η1」ともいう)とした。
【0083】
2.相溶性
表1~2に示す割合で(B)成分、(C)成分、(D)成分を混合し、この混合物50gを140mlの透明の瓶に添加し、瓶内で3時間(40℃)静置し、分離の有無を目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:分離を認めず、均一である。
×:分離を認めた。
【0084】
3.接着強度の測定
上述の24時間養生後のラミネートフィルムをTD方向に15mm幅に切り出し、引張強度試験機(オリエンテック社製のテンシロンRTM-250(商品名))を用いて剥離試験を行い、接着強度を測定した。
剥離試験は、ラミネートフィルムを室温環境下(23℃)で24時間以上静置した後、引張速度300mm/min、T型剥離の条件で行われた。評価基準は以下のとおりである。なお、剥離箇所は白ベタ印刷部位、無地部位ともに測定し、その測定値の低い方の値で評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:1.5N/15mm以上
△:0.8N/15mm以上、1.5N/15mm未満
×:0.8N/15mm未満
-:相溶性が悪いので、接着強度の測定が困難
【0085】
4.安定性(ポットライフ)
接着剤調製後、40℃の粘度を測定し、安定性を評価した。測定条件(方法)は、上述の初期粘度測定で記載した条件(方法)と同様である。
測定開始から1分後の粘度(η1)およびη1測定から30分後の粘度(「η2」ともいう)を測定した。尚、30分後の粘度は、η1測定後、40℃で30分間静置後に、ローターの回転開始から1分後の粘度を測定した。粘度上昇率を計算して、接着剤の安定性を評価した。ここで粘度上昇率とは、(η2/η1)×100をいう。評価基準は以下のとおりである。
○:粘度上昇率が300%未満
△:粘度上昇率が300%以上、400%以下
×:粘度上昇率が400%より高い
-:相溶性が悪いので、安定性の測定が困難
【0086】
5.外観評価
上述の24時間養生後のラミネートフィルムの外観を目視にて評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:ドット(気泡)が少ない
△:ドット(気泡)の存在はわかるが、目立たない
×:ドット(気泡)がかなり目立つ、若しくは接着剤にならない
-:相溶性が悪いので、外観評価が困難
【0087】
表1に示すように、実施例1~9のラミネート用接着剤は、(A)成分~(D)成分の相溶性に優れ、非常に高いレベルの外観をフィルムに与え、かつ印刷部位のあるフィルムに対する接着性にも優れている。さらに、実施例1~9のラミネート用接着剤は、初期粘度からの粘度上昇率が低くて安定しており、フィルムへ均一に塗布される。
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、非常に高いレベルで外観が要求される食品包装袋のラミネート用接着剤等として十分利用できる。
【0088】
これに対し、比較例1、2のラミネート接着剤は、表2に示すように、ロジンエステルを含まないので、相溶性が低くなり、接着剤として機能しない。
比較例3、4のラミネート接着剤は、ヒマシ油系化合物を含まない。比較例3のラミネート用接着剤は相溶性が低く、接着剤として機能しない。比較例4のラミネート用接着剤は、相溶性に問題ないが、接着強度が低すぎる。
【0089】
比較例5、6のラミネート接着剤は、ポリオールとロジンエステルの配合比が適切ではない。比較例5のラミネート用接着剤は安定性に劣る。比較例6のラミネート用接着剤はラミネートフィルムに気泡が目立ち、フィルム外観に劣る。
【0090】
このように、本発明の実施形態のラミネート用接着剤が、相溶性に優れ、フィルムの外観を低下させず、接着強度に優れ、安定性が良好で作業性を向上させることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の実施形態のラミネート用接着剤は、複数のフィルムを貼り合わせる際、フィルムの外観を低下させず、養生後の接着強度に優れ、均一性及び濁り防止に優れており、様々な用途に利用することができる。
特に、食品、洗剤、シャンプー及びリンス等を包装するラミネートフィルム用接着剤として適する。
【符号の説明】
【0092】
10 ラミネートフィルム
11 フィルム
11a 蒸着薄膜
12 フィルム
13 接着剤層
図1
図2