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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20240807BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20240807BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 10/643 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 10/653 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 10/6551 20140101ALI20240807BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20240807BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01L23/36 D
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6551
H01M50/20
H05K7/20 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020119878
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016898
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆男
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-080302(JP,A)
【文献】国際公開第2020/090735(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/105377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/60 -10/667
H01M 50/20 -50/298
H01L 23/34 -23/46
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発熱体と、
前記複数の発熱体を配置するヒートシンクと、
複数の放熱部材をその長手方向と直交する方向に沿って並べた状態で連結部材により連結される放熱構造体であって、前記放熱部材の長手方向が前記発熱体の長手方向に沿うように複数の前記発熱体の周囲に配置される前記放熱構造体と、
を備えるデバイスであって、
前記放熱部材は、
中空若しくは中実の形状を有するクッション部材と、
前記発熱体からの熱を伝えるためのシートであって、前記クッション部材の外側面を覆う熱伝導シートと、
を備え、
前記放熱構造体は、その一部が、複数の前記発熱体のうち少なくとも隣接する2つの前記発熱体同士の間に配置され
前記ヒートシンクは、複数の前記発熱体が立設した状態で並んで配置され、
前記放熱構造体は、前記発熱体の少なくとも一部の側面に沿って、複数の前記発熱体各々と隣接する前記発熱体との間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状を有することを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記ヒートシンクは、前記複数の発熱体を配置する平板状部材であって、少なくとも前記発熱体が配置される領域に、金属、セラミックスまたは炭素の1以上を含む熱伝導性部材を備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記発熱体は、その外形を円柱形状としてなることを特徴とする請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記連結部材は、糸で構成されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記放熱部材は、前記長手方向に沿う中空部を備える筒状部材であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記クッション部材は、前記長手方向に前記中空部を備える筒状クッション部材であり、
前記熱伝導シートは、前記筒状クッション部材の外側面を前記長手方向に向かってスパイラル状に巻回していることを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記熱伝導シートと前記クッション部材は、一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有することを特徴とする請求項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記発熱体としてバッテリーセルを複数備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記発熱体としてコンデンサおよびモータの少なくとも一方を複数備えることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱体からの放熱を促進する放熱構造体を備えるデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。この結果、回路基板周辺の発熱による電子部品の故障や短寿命化を解決することが強く望まれている。
【0003】
回路基板からの速やかな放熱を実現するには、従来から、回路基板自体を放熱性に優れた材料で構成し、ヒートシンクを取り付け、あるいは冷却ファンを駆動するといった手段を単一で若しくは複数組み合わせて行われている。これらの内、回路基板自体を放熱性に優れた材料、例えばダイヤモンド、窒化アルミニウム(AlN)、立方晶窒化ホウ素(cBN)等から構成する方法は、回路基板のコストを極めて高くしてしまう。また、冷却ファンの配置は、ファンという回転機器の故障、故障防止のためのメンテナンスの必要性や設置スペースの確保が難しいという問題を生じる。これに対して、放熱フィンは、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)を用いた柱状あるいは平板状の突出部位を数多く形成することによって表面積を大きくして放熱性をより高めることのできる簡易な部材であるため、放熱部品として汎用的に用いられている(特許文献1を参照)。
【0004】
ところで、現在、世界中で、地球環境への負荷軽減を目的として、従来からのガソリン車あるいはディーゼル車を徐々に電気自動車に転換しようとする動きが活発化している。特に、フランス、オランダ、ドイツをはじめとする欧州諸国の他、中国でも、電気自動車の普及が進行してきている。電気自動車の普及には、高性能バッテリーの開発の他、多数の充電スタンドの設置などが必要となる。特に、リチウム系の自動車用バッテリーの充放電機能を高めるための技術開発が重要である。上記自動車バッテリーは、摂氏60度以上の高温下では充放電の機能を十分に発揮できないことが良く知られている。このため、先に説明した回路基板と同様、バッテリーにおいても、放熱性を高めることが重要視されている。
【0005】
また、電気自動車の普及および自動車以外のインフラ供給電力用の制御回路には、電解コンデンサが不可欠である。電解コンデンサは、インバータ、コンバータ、信号制御および演算処理に用いるコンピュータに多く用いられる。この種のコンデンサは、小型電子機器に搭載されるコンデンサとは異なり、大型でかつ発熱量の大きなものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-243999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
今後、益々、回路基板上の電子部品の密集度が高くなる状況、電解コンデンサが密集する状況、あるいはバッテリーからの放熱をより促進する必要性が高まる状況を考えると、従来のヒートシンクを用いることは難しい。このため、放熱対象たる発熱体の密集化およびより高い放熱性に対応する放熱構造体を備えるデバイスが強く望まれている。また、高い放熱性を実現するためには、多数の発熱体各々から均一に放熱させることが望ましい。このような要望に応えることは、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、発熱体の密集化に対応容易であって、複数の発熱体各々における放熱性の均一化を高め、かつ高い放熱性を発揮可能な放熱構造体を備えるデバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係るデバイスは、複数の発熱体と、前記複数の発熱体を配置するヒートシンクと、複数の放熱部材をその長手方向と直交する方向に沿って並べた状態で連結部材により連結される放熱構造体であって、前記放熱部材の長手方向が前記発熱体の長手方向に沿うように複数の前記発熱体の周囲に配置される前記放熱構造体と、を備えるデバイスであって、前記放熱部材は、中空若しくは中実の形状を有するクッション部材と、前記発熱体からの熱を伝えるためのシートであって、前記クッション部材の外側面を覆う熱伝導シートと、を備え、前記放熱構造体は、その一部が、複数の前記発熱体のうち少なくとも隣接する2つの前記発熱体同士の間に配置される。
(2)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記ヒートシンクは、複数の前記発熱体が立設した状態で並んで配置され、前記放熱構造体は、前記発熱体の少なくとも一部の側面に沿って、複数の前記発熱体各々と隣接する前記発熱体との間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状を有しても良い。
(3)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記ヒートシンクは、前記複数の発熱体を配置する平板状部材であって、少なくとも前記発熱体が配置される領域に、金属、セラミックスまたは炭素の1以上を含む熱伝導性部材を備えても良い。
(4)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記発熱体は、その外形を円柱形状としてなるものでも良い。
(5)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記連結部材は、糸で構成されても良い。
(6)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記放熱部材は、前記長手方向に沿う中空部を備える筒状部材であっても良い。
(7)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記クッション部材は、前記長手方向に前記中空部を備える筒状クッション部材であり、前記熱伝導シートは、前記筒状クッション部材の外側面を前記長手方向に向かってスパイラル状に巻回していても良い。
(8)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記熱伝導シートと前記クッション部材は、一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有しても良い。
(9)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記発熱体としてバッテリーセルを複数備えても良い。
(10)別の実施形態に係るデバイスでは、好ましくは、前記発熱体としてコンデンサおよびモータの少なくとも一方を複数備えても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、発熱体の密集化に対応容易であって、複数の発熱体各々における放熱性の均一化を高め、かつ高い放熱性を発揮可能な放熱構造体を備えるデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの一部の斜視図を示す。
図2図2は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの一部の平面図を示す。
図3図3は、放熱構造体の平面図を示す。
図4図4は、図3におけるA-A線断面図およびその一部Bの拡大図をそれぞれ示す。
図5図5は、本発明の第2実施形態に係るデバイスの一部の平面図を示す。
図6図6は、本発明の第3実施形態に係るデバイスの一部の一部分解斜視図を示す。
図7図7は、放熱構造体を構成している放熱部材の製造工程を説明するための図を示す。
図8図8は、放熱構造体を構成している放熱部材の変形例の好適な製造工程を説明するための図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の各実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する各実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、各実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0013】
1.デバイス
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの一部の斜視図を示す。図2は、本発明の第1実施形態に係るデバイスの一部の平面図を示す。図3は、放熱構造体の平面図を示す。図4は、図3におけるA-A線断面図およびその一部Bの拡大図をそれぞれ示す。なお、この実施形態において、複数の発熱体50が並んで配置される列方向をY方向、当該列方向に直交する方向をX方向、発熱体50の長手方向をZ方向とする(図1を参照)。以後の実施形態においても同様である。
【0014】
(1)概略構成
この実施形態に係るデバイス1は、複数の発熱体50と、複数の発熱体50を配置するヒートシンク40と、複数の放熱部材20をその長手方向と直交する方向(図2のX方向)に沿って並べた状態で連結部材30により連結される放熱構造体10と、を備える。放熱構造体10は、放熱部材20の長手方向が発熱体50の長手方向(図1のZ方向)に沿うように複数の発熱体50の周囲に配置される。放熱部材20は、中空若しくは中実の形状を有するクッション部材22と、発熱体50からの熱を伝えるためのシートであって、クッション部材22の外側面を覆う熱伝導シート21と、を備える(図2を参照)。また、放熱構造体10は、その一部が、複数の発熱体50のうち少なくとも隣接する2つの発熱体50同士の間に配置される。この実施形態において、デバイス1は、例えば、電気自動車用のバッテリーである。なお、本願でいう「デバイス」は、バッテリーのみならず、例えば、電子機器、家電、発電装置等も含むように広義に解釈される。また、放熱部材20は、「熱伝導部材」または「伝熱部材」と称しても良い。
【0015】
(2)発熱体
この実施形態に係る発熱体50は、例えば、電気自動車用のバッテリーに備えられるバッテリーセルである。発熱体50は、好ましくは、その外形を円柱形状としてなる充放電可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池が好適に用いられる。ただし、発熱体50は、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の他の二次電池であっても良い。発熱体50は、その長手方向(円柱の軸方向)の一端面に正極端子を有し、他端面に負極端子を有する。この実施形態において、複数の発熱体50は、それぞれの正極端子が同じ方向を向いて配置されている。なお、図1において、デバイス1は、10個の発熱体50がヒートシンク40上に立設した状態で並んで配置されている。より具体的には、図1において、デバイス1は、X方向に沿って並ぶ5個の発熱体50がY方向に2列配置されているが、発熱体50の数および配置は特に制約されず、デバイス1のサイズ、用途等に応じて適宜設定されることが好ましい。これらは以後の実施形態においても同様である。
【0016】
(3)ヒートシンク
ヒートシンク40は、好ましくは、複数の発熱体50が立設した状態で並んで配置される平板状部材である。ヒートシンク40は、発熱体50の充放電時に発生する熱を放熱する機能を有する。ヒートシンク40は、好ましくは、デバイス1の筐体の一部或いは筐体の外側に設けられ、より好ましくは、筐体の底部に設けられる。ヒートシンク40は、その構成材料を問わないが、好ましくは、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、マグネシウム、熱伝導性高分子等から構成される。熱伝導性高分子としては、熱伝導性の高いアルミナや窒化ホウ素等をシリコーンゴムや樹脂等の高分子に混合した複合高分子材料が使用できる。なお、ヒートシンク40は、発熱体50が配置される面と対向する面から突出する放熱フィンを備えるフィン型ヒートシンクであっても良い。
【0017】
ヒートシンク40は、好ましくは、少なくとも発熱体50が配置される領域に、金属、セラミックスまたは炭素の1以上を含む熱伝導性部材42を備える。熱伝導性部材42は、好ましくは、金属、セラミックスまたは炭素の1以上からなる熱伝導性粒子をシリコーン基材に充填したシート状部材(ギャップフィラー)である。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金等の熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBN等の熱伝導性の比較的高いものを選択できる。炭素としては、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも選択できる。この実施形態において、ヒートシンク40は、発熱体50が配置される面全体に熱伝導性部材42が積層される。ただし、熱伝導性部材42は、ヒートシンク40の発熱体50が配置される面のうち、少なくとも発熱体50が配置される領域に積層されていれば、当該面全体に積層されていても良いし、当該面の一部領域にのみ積層されていても良い。熱伝導性部材42は、半固形状(半硬化状ともいう)の湿気硬化型の組成物であることが好ましい。熱伝導性部材42は、好ましくは、半固形状態でヒートシンク40上に塗布され、室温で硬化されてシート状部材を形成する。熱伝導性部材42の熱伝導率は、好ましくは1~10W/mKである。熱伝導性部材42は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシート状部材であるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.5~10mmが好ましく、3~8mmがより好ましい。ただし、熱伝導性部材42の熱伝導率は、その厚さが増加するほど厚さ方向で低下するが、熱伝送量は厚い方が多くなるため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0018】
(4)放熱構造体
放熱構造体10は、複数の放熱部材20と、放熱部材20の長手方向と直交する方向(図3の左右方向)に沿って並べた状態で連結する連結部材30と、を備える。以下、放熱構造体10を構成する各要素について説明する。なお、図3において、放熱構造体10は、22本の放熱部材20を備えているが、放熱部材20の数は特に限定されない。以後の実施形態においても同様である。
【0019】
(4-1)熱伝導シート
熱伝導シート21は、その構成材料を問わないが、好ましくは炭素を含むシートであり、さらに好ましくは90質量%以上を炭素から構成されるシートである。例えば、熱伝導シート21に、樹脂を焼成して成るグラファイト製のフィルムを用いることもできる。ただし、熱伝導シート21は、炭素と樹脂とを含むシートであっても良い。その場合、樹脂は、合成繊維でも良く、その場合には、樹脂として好適にはアラミド繊維を用いることができる。本願でいう「炭素」は、グラファイト、グラファイトより結晶性の低いカーボンブラック、ダイヤモンド、ダイヤモンドに近い構造を持つダイヤモンドライクカーボン等の炭素(元素記号:C)から成る如何なる構造のものも含むように広義に解釈される。熱伝導シート21は、この実施形態では、樹脂に、グラファイト繊維やカーボン粒子を配合分散した材料を硬化させた薄いシートとすることができる。熱伝導シート21は、メッシュ状に編んだカーボンファイバーであっても良く、さらには混紡してあっても混編みしてあっても良い。なお、グラファイト繊維、カーボン粒子あるいはカーボンファイバーといった各種フィラーも、すべて、炭素フィラーの概念に含まれる。
【0020】
熱伝導シート21を炭素と樹脂とを備えるシートとする場合には、当該樹脂が熱伝導シート21の全質量に対して50質量%を超えていても、あるいは50質量%以下であっても良い。すなわち、熱伝導シート21は、熱伝導に大きな支障が無い限り、樹脂を主材とするか否かを問わない。樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂を好適に使用できる。熱可塑性樹脂としては、熱源である発熱体50からの熱を伝導する際に溶融しない程度の高融点を備える樹脂が好ましく、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアミドイミド(PAI)、芳香族ポリアミド(アラミド繊維)等を好適に挙げることができる。樹脂は、熱伝導シート21の成形前の状態において、炭素フィラーの隙間に、例えば粒子状あるいは繊維状に分散している。熱伝導シート21は、炭素フィラー、樹脂の他、熱伝導をより高めるためのフィラーとして、AlNあるいはダイヤモンドを分散していても良い。また、樹脂に代えて、樹脂よりも柔軟なエラストマーを用いても良い。熱伝導シート21は、また、上述のような炭素に代えて若しくは炭素と共に、金属および/またはセラミックスを含むシートとすることができる。金属としては、アルミニウム、銅、それらの内の少なくとも1つを含む合金等の熱伝導性の比較的高いものを選択できる。また、セラミックスとしては、Al、AlN、cBN、hBN等の熱伝導性の比較的高いものを選択できる。
【0021】
熱伝導シート21は、導電性に優れるか否かは問わない。熱伝導シート21の熱伝導率は、好ましくは10W/mK以上である。この実施形態では、熱伝導シート21は、好ましくは、グラファイト製のフィルムであり、熱伝導性と導電性に優れる材料から成る。熱伝導シート21は、湾曲性(若しくは屈曲性)に優れるシートであるのが好ましく、その厚さに制約はないが、0.02~3mmが好ましく、0.03~0.5mmがより好ましい。ただし、熱伝導シート21の熱伝導率は、その厚さが増加するほど厚さ方向で低下するが、熱伝送量は厚い方が多くなるため、シートの強度、可撓性および熱伝導性を総合的に考慮して、その厚さを決定するのが好ましい。
【0022】
(4-2)クッション部材
クッション部材22の重要な機能は変形容易性と、回復力である。回復力は、弾性変形性による。変形容易性は、熱源である発熱体50の形状に追従するために必要な特性であり、特にリチウムイオンバッテリーなどの半固形物、液体的性状も持つ内容物などを変形しやすいパッケージに収めてあるようなバッテリーセルの場合には、設計寸法的にも不定形または寸法精度があげられない場合が多い。このため、クッション部材22の変形容易性や追従力を保持するための回復力の保持は重要である。
【0023】
クッション部材22は、この実施形態では中空部23を備える筒状クッション部材である。クッション部材22は、例えば、円柱形状の発熱体50のように、熱伝導シート21に接触する発熱体50が平坦でない場合でも、熱伝導シート21と発熱体50との接触を良好にする。さらに、中空部23は、クッション部材22の変形を容易にし、加えて放熱構造体10の軽量化に寄与し、また、熱伝導シート21と発熱体50との接触を高める機能を有する。クッション部材22は、熱伝導シート21に加わる荷重によって熱伝導シート21が破損等しないようにする保護部材としての機能も有する。この実施形態では、クッション部材22は、熱伝導シート21に比べて低熱伝導性の部材である。なお、この実施形態では、中空部23は、断面円形状に形成されているが、中空部23の断面形状は円に限定されず、例えば、多角形、楕円形、半円形、頂点が丸みを帯びた略多角形等であっても良い。また、中空部23は、例えば、断面円形状が上下または左右に2つに分割された2つの断面半円形状の中空部等、複数の中空部から構成されていても良い。
【0024】
クッション部材22は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。クッション部材22は、熱伝導シート21を伝わる熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、クッション部材22は、より好ましくは、ウレタン系エラストマー中にシリコーンを含浸したもの、あるいはシリコーンゴムにより構成される。クッション部材22は、その熱伝導性を少しでも高めるために、ゴム中にAl、AlN、cBN、hBN、ダイヤモンドの粒子等に代表されるフィラーを分散して構成されていても良い。クッション部材22は、その内部に気泡を含むものの他、気泡を含まないものでも良い。また、「クッション部材」は、柔軟性に富み、発熱体50の表面に密着可能に弾性変形可能な部材を意味し、かかる意味では「ゴム状弾性体」と読み替えることもできる。さらに、クッション部材22の変形例としては、上記ゴム状弾性体ではなく、金属を用いて構成することもできる。例えば、クッション部材22は、バネ鋼で構成することも可能である。さらに、クッション部材22として、コイルバネを配置することも可能である。また、スパイラル状に巻いた金属をバネ鋼にしてクッション部材として熱伝導シート21の環状裏面に配置しても良い。また、クッション部材22は、樹脂やゴム等から形成されたスポンジあるいはソリッド(スポンジのような多孔質ではない構造のもの)で構成することも可能である。
【0025】
(4-3)連結部材
連結部材30は、例えば、糸やゴム等、少なくとも複数の放熱部材20の間に位置する部分が変形自在な材料で構成された部材である。この実施形態において、連結部材30は、糸で構成されることが好ましく、発熱体50からの放熱による温度上昇に耐え得る糸であることがより好ましい。より具体的には、連結部材30は、120℃程度の高温に耐え得る糸であって、天然繊維、合成繊維、カーボン繊維、金属繊維等の繊維からなる撚糸で構成されることが好ましい。連結部材30は、ミシン等を用いて複数の放熱部材20を縫い付ける部材である。連結部材30の縫い方は、特に限定されず、手縫い、本縫い、千鳥縫い、単環縫い、二重環縫い、縁かがり縫い、扁平縫い、安全縫い、オーバーロック等の如何なる縫い方でも良い。また、JIS L 0120の規定する表示記号によれば、好適な縫い方として、「101」、「209」、「301」、「304」、「401」、「406」、「407」、「410」、「501」、「502」、「503」、「504」、「505」、「509」、「512」、「514」、「602」および「605」の各種縫い目を構成する縫い方を例示できる。この実施形態において、連結部材30は、放熱部材20の長手方向(図3の上下方向)の両端側にそれぞれ備えられる。ただし、連結部材30は、その数や位置に特に制約はなく、例えば、放熱部材20の長手方向の中央部等、当該両端側以外の1以上の位置に備えられていても良い。放熱構造体10は、放熱部材20が発熱体50の膨張により圧縮され扁平した形態となっても、放熱部材20の変形に追従して連結部材30が撓むため、発熱体50の表面に追従・密着することができる。なお、連結部材30は、複数の放熱部材20の間に、撚りが加えられた撚り部を備えていても良い。
【0026】
この実施形態において、デバイス1は、好ましくは、発熱体50の一例であるバッテリーセルを備えたバッテリーである。バッテリーセルの底部には、好ましくは、ヒートシンク40が備えられている。複数の発熱体50は、好ましくは、ヒートシンク40に立設した状態で並んで配置される。放熱構造体10は、その一部が、複数の発熱体50のうち少なくとも隣接する2つの発熱体50同士の間に配置される。放熱構造体10は、好ましくは、発熱体50の少なくとも一部の側面に沿って、複数の発熱体50の各々と隣接する発熱体50との間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状を有する(図1および図2を参照)。この実施形態において、放熱構造体10は、10個の発熱体50のうち、X方向に沿って並ぶ5個の発熱体50ごとに、隣接する発熱体50同士の間を通るようにX方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状を有する(図1および図2を参照)。
【0027】
このように構成されたデバイス1において、発熱体50は、ヒートシンク40と接触する端面および放熱構造体10を通じてヒートシンク40に伝熱して、ヒートシンク40により効果的に除熱される。デバイス1は、放熱構造体10の一部が複数の発熱体50のうち少なくとも隣接する2つの発熱体50同士の間に配置される。また、デバイス1は、1枚のシート状の放熱構造体10が、複数の発熱体50各々と隣接する発熱体50との間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状で配置される。このため、複数の発熱体50各々の温度差を小さくすることができ、複数の発熱体50各々における放熱性の均一化を高めることができる。また、デバイス1は、放熱部材20の長手方向が発熱体50の長手方向(図1のZ方向)に沿うように放熱構造体10が配置される。このため、発熱体50の熱は、放熱構造体10を通じてヒートシンク40に効果的に伝熱する。その結果、デバイス1は、発熱体50の密集化に対応容易であって、高い放熱性を発揮することができる。また、放熱構造体10は、各放熱部材20がクッション部材22の外側面に熱伝導シート21をスパイラル状に巻いた構造を有している。このため、熱伝導シート21は、発熱体50の表面の凹凸に対応して密着しやすい。これは、発熱体50と熱伝導シート21との熱抵抗を下げ、両者50,21の熱伝導性を高めることにつながる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るデバイスについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0029】
図5は、本発明の第2実施形態に係るデバイスの一部の平面図を示す。
【0030】
第2実施形態に係るデバイス1aは、第1実施形態に係るデバイス1と類似の構造を有するが、複数の発熱体50に対する放熱構造体10の配置方法において、第1実施形態に係るデバイス1と異なる。
【0031】
デバイス1aは、第1実施形態に係るデバイス1と同様に、X方向に沿って並ぶ5個の発熱体50がY方向に2列配置された10個の発熱体50を備える。放熱構造体10は、10個の発熱体50のうちY方向に沿う2個の発熱体50と当該2個の発熱体50と隣接する2個の発熱体50との間を通るように、X方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状を有する(図5を参照)。第1実施形態に係るデバイス1では、10個の発熱体50のうちX方向に沿って並ぶ5個の発熱体50ごとに1つの放熱構造体10が配置されていたのに対し、第2実施形態に係るデバイス1aでは、10個の発熱体50に対して1つの放熱構造体10が配置されている。このように構成されたデバイス1aにおいても、先述の実施形態と同様の効果を奏する。なお、デバイス1aにおいて、複数の発熱体50に対する放熱構造体10の配置方法以外の構成は、第1実施形態に係るデバイス1と同様であるため、詳細な説明を省略する。また、発熱体50の数および配置は特に制約されず、デバイス1aのサイズ、用途等に応じて適宜設定されることが好ましい。
【0032】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るデバイスについて説明する。先の実施形態と共通する部分については同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0033】
図6は、本発明の第3実施形態に係るデバイスの一部の一部分解斜視図を示す。
【0034】
第3実施形態に係るデバイス1bは、第1実施形態に係るデバイス1と類似の構造を有するが、発熱体50に代えて発熱体50aを備える点において、第1実施形態に係るデバイス1と異なる。
【0035】
デバイス1bは、例えば、自動車に積載される一部の制御装置等の電子機器である。デバイス1bは、好ましくは、厚さ方向に分離可能な筐体(不図示)を備える。デバイス1bは、好ましくは、筐体内に、ヒートシンク40と、ヒートシンク40と所定距離を隔てて設けられるプリント回路基板(以後、単に「回路基板」という)60と、回路基板60に接続される複数の発熱体50aと、放熱構造体10と、を備える。発熱体50aは、例えば、電解コンデンサである。発熱体50aは、コンデンサ素子を収容する円筒若しくは円柱形状のケースと、ケースの長手方向(図6のZ方向)の一端面から延びる2本のリードとを備え、リードを回路基板60に挿通して接続される。発熱体50aは、好ましくは、ケースの長手方向の他端面がヒートシンク40に積層された熱伝導性部材42に接するように配置される。なお、デバイス1bにおいて、ヒートシンク40、発熱体50a、および回路基板60の配置は、少なくともヒートシンク40上に複数の発熱体50aが立設した状態で並んで配置され、かつ複数の発熱体50aが回路基板60に接続されていれば、特に制約されない。
【0036】
放熱構造体10は、第1実施形態に係るデバイス1が備える放熱構造体10と同様に、好ましくは、発熱体50aの少なくとも一部の側面に沿って、複数の発熱体50a各々と隣接する発熱体50aとの間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状を有する(図6を参照)。この実施形態において、放熱構造体10は、デバイス1が備える放熱構造体10と同様に、10個の発熱体50aのうち、X方向に沿って並ぶ5個の発熱体50aごとに、隣接する発熱体50a同士の間を通るようにX方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状を有する(図6を参照)。ただし、放熱構造体10は、第2実施形態に係るデバイス1aが備える放熱構造体10(図5を参照)と同様に、10個の発熱体50aのうちY方向に沿う2個の発熱体50aと当該2個の発熱体50aと隣接する2個の発熱体50aとの間を通るように、X方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状を有していても良い。このように構成されたデバイス1bにおいても、先述の実施形態と同様の効果を奏する。なお、発熱体50aは、電解コンデンサに限定されることなく、他の種類のコンデンサ、モータ等の電子部品であっても良い。また、デバイス1bは、上述の電子機器に限定されることなく、少なくとも発熱体50aとしてコンデンサおよびモータの少なくとも一方を複数備えていれば、例えば、PC、発電用制御装置、工業用ロボットの制御装置等の各種電子機器であっても良い。
【0037】
2.デバイスの製造方法
次に、本発明に係るデバイスの好適な製造方法の一例を説明する。まず、デバイス1,1a,1bに備えられる放熱構造体10の好適な製造方法の一例を説明する。
【0038】
図7は、放熱構造体を構成している放熱部材の製造工程を説明するための図を示す。
【0039】
放熱構造体10を構成している放熱部材20の好適な製造方法の一例を説明する。まず、中空部23を有するクッション部材22を成形する。次に、クッション部材22の外側面に接着剤を塗布する。次に、帯状の熱伝導シート21を、クッション部材22の外側面上にスパイラル状に巻いた後、熱伝導シート21がクッション部材22の両端からはみ出した部分があれば、そのはみ出した部分をカット若しくはクッション部材22ごとカットする。クッション部材22と熱伝導シート21との間に接着剤を介在させないで固定することも可能である。その場合には、完全硬化する前の状態のクッション部材22を用意して、その外側面に帯状の熱伝導シート21を巻く。その後、クッション部材22を加温して完全硬化させて、クッション部材22の外側面に熱伝導シート21を固定する。
【0040】
放熱構造体10は、上述の製造方法により製造された複数の放熱部材20をその長手方向に直交する方向に沿って並べた状態で、複数の放熱部材20の長手方向両端側をそれぞれ連結部材30により縫って製造される。
【0041】
第1実施形態に係るデバイス1は、まず、ヒートシンク40のうち発熱体50を配置する面に半固形状の熱伝導性部材42が塗布される。そして、デバイス1は、複数の発熱体50が、硬化した熱伝導性部材42を介してヒートシンク40上に立設するように筐体の内部に並んで配置され、上述の製造方法により製造された放熱構造体10が複数の発熱体50の周囲に配置されることにより製造される。この場合、放熱構造体10は、X方向に沿って並ぶ複数の発熱体50ごとに、隣接する発熱体50同士の間を通るようにX方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状となるよう配置されることが好ましい(図1および図2を参照)。
【0042】
第2実施形態に係るデバイス1aは、まず、ヒートシンク40のうち発熱体50を配置する面に半固形状の熱伝導性部材42が塗布される。そして、デバイス1は、複数の発熱体50が、硬化した熱伝導性部材42を介してヒートシンク40上に立設するように筐体の内部に並んで配置され、上述の製造方法により製造された放熱構造体10が複数の発熱体50の周囲に配置されることにより製造される。この場合、放熱構造体10は、Y方向に沿う複数の発熱体50と当該発熱体50と隣接する複数の発熱体50との間を通るように、X方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状となるよう配置されることが好ましい(図5を参照)。
【0043】
第3実施形態に係るデバイス1bは、まず、ヒートシンク40のうち発熱体50aを配置する面に半固形状の熱伝導性部材42が塗布される。また、デバイス1bは、複数の発熱体50aの長手方向一端側に延びるリードと回路基板60とが接続される。そして、デバイス1bは、複数の発熱体50aの長手方向他端側の面が熱伝導性部材42と接するようにヒートシンク40が配置され、上述の製造方法により製造された放熱構造体10が複数の発熱体50aの周囲に配置されることにより製造される。この場合、放熱構造体10は、X方向に沿って並ぶ複数の発熱体50aごとに、隣接する発熱体50a同士の間を通るようにX方向に沿って連続した凹凸を繰り返す形状となるよう配置されることが好ましい(図6を参照)。
【0044】
放熱構造体10の変形例の好適な製造方法の一例を説明する。この変形例において、上述の放熱構造体10を構成している放熱部材20を放熱部材20aに代える点以外は、上述の放熱構造体10と同様の製造方法により製造されているため、詳細な説明を省略する。以下、放熱部材20aの好適な製造方法について説明する。
【0045】
図8は、放熱構造体を構成している放熱部材の変形例の好適な製造工程を説明するための図を示す。
【0046】
まず、帯状の積層シート28を製造する。帯状の積層シート28の製造において、熱伝導シート21とクッション部材22とは、好ましくは接着剤にて固定されている。次に、帯状の積層シート28を、スパイラル状に巻回しながら一方向に進行させて、長尺状の放熱部材20aを製造する。熱伝導シート21とクッション部材22との間に接着剤を介在させない製造方法としては、以下のような方法を例示できる。例えば、クッション部材22が完全には硬化していない未硬化状態で、熱伝導シート21をクッション部材22の上に貼る。その後、加温により、クッション部材22を完全に硬化させる。
【0047】
帯状の積層シート28をスパイラル状に巻回した後、積層シート28の両端をカットして形状を整えても良い。放熱部材20aは、その長手方向に貫通する中空部23aを備えている。中空部23aは、上述の実施形態における放熱部材20と異なり、放熱部材20aの外側面方向にも貫通している。このように、クッション部材22は、熱伝導シート21の内側に配置され、熱伝導シート21とクッション部材22は、一体にてスパイラル状に一方向に進行する形態を有する。放熱部材20aは、その全体がスパイラル状であるため、上述の放熱部材20に比べて、放熱部材20aの長手方向に伸縮容易である。
【0048】
なお、デバイス1,1a,1bは、放熱部材20に代えて放熱部材20aを備える放熱構造体10を備えることができる。この場合、デバイス1,1a,1bは、放熱部材20を放熱部材20aに代える点以外は、上述のデバイス1,1a,1bと同様の製造方法により製造することができる。
【0049】
3.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な各実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0050】
先述の各実施形態において、放熱構造体10は、発熱体50,50aの少なくとも一部の側面に沿って、複数の発熱体50,50a各々と隣接する発熱体50,50aとの間を通るように連続した凹凸を繰り返す形状を有するよう配置されていたが、少なくとも放熱構造体10の一部が複数の発熱体50,50aのうち少なくとも隣接する2つの発熱体50,50a同士の間に配置されれば、デバイス1,1a,1bにおける放熱構造体10の配置形態は特に制約されない。
【0051】
また、放熱構造体10は、複数の放熱部材20をその長手方向と直交する方向に並べた状態で当該複数の放熱部材20を支持する枠体を備えていても良い。この場合、枠体は、放熱構造体10が連続した凹凸を繰り返す形状を形成可能な程度の湾曲性(若しくは屈曲性)を有する材料で形成されることが好ましい。また、放熱構造体10は、複数の放熱部材20各々が枠体と接着剤等を介して固定されていても良いし、連結部材30により複数の放熱部材20と枠体とが固定されていても良い。また、枠体の形態は、少なくとも複数の放熱部材20を囲む4辺のうち2辺以上から構成される形態であれば、例えば、複数の放熱部材20を囲むように内側が開口された矩形状部材であっても良いし、複数の放熱部材20を囲む4辺のうち隣接する2辺から構成される略L字状部材であっても良い。
【0052】
また、放熱部材20は、クッション部材22に中空部23が形成されていなくても良い。その場合、放熱部材20は、スパイラル状の熱伝導シート21の中空部内にクッション部材22を充填した構成を有する。中空部は、熱伝導シート21およびクッション部材22のうち、熱伝導シート21の巻回構造によって形成されていても良いし、熱伝導シート21およびクッション部材22ともに形成されていなくても良い。
【0053】
また、放熱部材20は、クッション部材22の外側面をスパイラル状に巻回することなく、例えば、クッション部材22の外側面を1枚の熱伝導シート21で覆って形成されていても良い。
【0054】
また、放熱部材20aにおけるスパイラル状のクッション部材22は、熱伝導シート21の幅と同一に限定されず、熱伝導シート21の幅に対して大きくても、あるいは小さくても良い。
【0055】
また、ヒートシンク40は、熱伝導性部材42を備えていなくても良い。この場合、デバイス1,1a,1bは、熱伝導性部材42を介さず、ヒートシンク40と発熱体50,50aの長手方向の一端面とが接触するよう配置される。
【0056】
また、発熱体50,50aは、バッテリーセル、コンデンサ、モータのみならず、デバイス1,1a,1b本体等の熱を発する対象物を全て含む。例えば、熱源は、キャパシタおよびICチップ等の電子部品であっても良い。また、発熱体50,50aは、円柱形状を有することが好ましいが、円柱形状以外の形状(角柱、円錐、角錐、円筒、角筒など)を有していても良い。また、デバイス1,1a,1bは、バッテリー、電子機器以外の構造物、例えば、家電、発電装置等であっても良い。
【0057】
また、上述の各実施形態の複数の構成要素は、互いに組み合わせ不可能な場合を除いて、自由に組み合わせ可能である。例えば、放熱構造体10は、デバイス1aにおける放熱構造体10の形態と同様の形態でデバイス1bに備えられていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、放熱性に優れたデバイスとして利用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,1a,1b・・・デバイス、10・・・放熱構造体、20・・・放熱部材(一例として、筒状部材),20a・・・放熱部材(一例として、筒状部材)、21・・・熱伝導シート、22・・・クッション部材(一例として、筒状クッション部材)、23,23a・・・中空部、30・・・連結部材(一例として、糸)、40・・・ヒートシンク、42・・・熱伝導性部材、50,50a・・・発熱体(一例として、バッテリーセル、コンデンサ、モータ)。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8