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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】電力管理装置、及び、電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240807BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240807BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240807BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J3/38 130
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
H02J13/00 311T
H02J3/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020129444
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026126
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】松崎 純一
(72)【発明者】
【氏名】森 伸浩
(72)【発明者】
【氏名】川上 紗野花
(72)【発明者】
【氏名】上西 章太
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-175825(JP,A)
【文献】国際公開第2018/229861(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/183337(WO,A1)
【文献】特開2019-161939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
H02J 3/38
H02J 13/00
H02J 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設における電力の需要を管理する装置であって、
前記需要家施設の過去の消費平均値を取得する消費平均値取得部と、
前記需要家施設の位置における当日の天候予測値を取得する天候予測値取得部と、
前記天候予測値に基づき、当日の前記需要家施設の発電予測値を算出する発電予測値算出部と、
前記発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように前記発電予測値を補正する発電予測値補正部と、
前記消費平均値と前記発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出するベースライン算出部と、を備え
前記消費平均値取得部は、
所定の複数のエリアごとに、当該エリアに位置する前記需要家施設の単位当たりの過去の前記消費平均値を取得し、
前記天候予測値取得部は、
前記複数のエリアごとに当日の前記天候予測値を取得し、
前記発電予測値算出部は、
前記天候予測値に基づき、前記複数のエリアごとの前記単位当たりの当日の前記発電予測値を算出し、
前記発電予測値補正部は、
前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように、前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記発電予測値を補正し、
前記ベースライン算出部は、
前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記発電予測値が、所定の発電予測値の区分範囲のいずれに該当するのかにより、前記複数のエリアが前記区分範囲に対応させた複数のグループのうちのいずれか1つに属するように分類し、前記グループごとに前記ベースラインを算出する
電力管理装置。
【請求項2】
前記発電予測値補正部は、
前記要請より前の第1期間において前記乖離量を算出し、前記第1期間の前記乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記要請より後の第2期間における前記乖離量が低減されるように、前記第2期間の前記発電予測値を補正すること、
を特徴とする請求項1に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記ベースラインを基準として、前記要請に応じて前記需要家施設における前記電力の需要を管理する電力管理部を備えること、
を特徴とする請求項1または2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
前記需要家施設の少なくとも1つは、蓄電設備を有し、
前記電力管理部は、
前記蓄電設備の充放電を指示することで、前記ベースラインを基準として前記要請に応じて前記需要家施設における前記電力の需要を管理すること、
を特徴とする請求項に記載の電力管理装置。
【請求項5】
電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設における電力の需要を管理する方法であって、
消費平均値取得部が、
前記需要家施設の過去の消費平均値を取得するステップと、
天候予測値取得部が、
前記需要家施設の位置における当日の天候予測値を取得するステップと、
発電予測値算出部が、
前記天候予測値に基づき、当日の前記需要家施設の発電予測値を算出するステップと、
発電予測値補正部が、
前記発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように前記発電予測値を補正するステップと、
ベースライン算出部が、
前記消費平均値と前記発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出するステップと、を含み
前記消費平均値を取得するステップは、
所定の複数のエリアごとに、当該エリアに位置する前記需要家施設の単位当たりの過去の前記消費平均値を取得し、
前記天候予測値を取得するステップは、
前記複数のエリアごとに当日の前記天候予測値を取得し、
前記発電予測値を算出するステップは、
前記天候予測値に基づき、前記複数のエリアごとの前記単位当たりの当日の前記発電予測値を算出し、
前記発電予測値を補正するステップは、
前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように、前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記発電予測値を補正し、
前記ベースラインを算出するステップは、
前記複数のエリアごとの前記単位当たりの前記発電予測値が、所定の発電予測値の区分範囲のいずれに該当するのかにより、前記複数のエリアが前記区分範囲に対応させた複数のグループのうちのいずれか1つに属するように分類し、前記グループごとに前記ベースラインを算出する
電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理装置、及び、電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模発電所に依存した従来型のエネルギー供給システムが見直されるとともに、需要家側のエネルギーリソースを電力システムに活用する仕組みの構築が進められている。その一つとして、バーチャルパワープラント(VPP)、またはデマンドレスポンス(DR)等の仕組みが活用されている(例えば、非特許文献1)。
ここで、VPPとは、需要家側エネルギーリソースの他、商用電源の電力系統に直接接続されている発電設備や蓄電設備を、その保有者又は第三者が制御することによって発電所と同等の機能を提供する仕組みである。DRとは、需要家側エネルギーリソースを、その保有者又は第三者が制御することによって電力の需要量(発電量及び消費量)を調整する仕組みである。
【0003】
近年、VPPまたはDRなどの仕組みを活用して、需要家側エネルギーリソースを制御する方法が提供されている。例えば、特許文献1では、電力の需要変化に係る要請(DRの要請)に応じて、需要家施設の電力需要を制御することにより、需要家施設が備える蓄電池の充放電を管理する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-68512号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】『経済産業省資源エネルギー庁ホーム 政策について 省エネルギー・新エネルギー 新エネルギーシステム バーチャルパワープラント・ディマンドリスポンスについて VPP・DRに関する資料ダウンロード』、[online][令和2年6月30日検索]、インターネット<https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/files/erab_handbook.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、VPPまたはDRにおいて、需要家側エネルギーリソースを制御するためには、まず、電力制御を行わない場合に想定される需要量(以下、ベースラインと称する)を設定し、このベースラインを基準として需要家施設の需要量を調整する。例えば、DRでは、需要が負になる(発電量が消費量を上回る)場合には、需要量を増やす要請(上げDRの要請)に応じて、需要量をベースラインよりも大きくなるように制御する。需要が正になる(発電量が消費量を下回る)場合には、需要量を減らす要請(下げDRの要請)に応じて、需要量をベースラインよりも小さくなるように制御する。従って、DRの要請に応じて需要を適切に制御するためには、需要の測定値である需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定する必要がある。
【0007】
これまで、ベースラインを設定する様々な手法が提案されている。その代表的な手法の一つとして、例えば、過去5日間の中で需要量の大きい4日間の平均値をベースラインとするHigh4OF5手法がある(非特許文献1)。特許文献1では、計画値同時同量制度の下で、発電計画と需要計画からベースラインを設定している。
しかしながら、実際の発電量が予測された発電量から大きく外れる場合には、実際の実績量(需要実績値)とベースラインとのずれが大きくなるという問題があった。特に、太陽光発電設備や風力発電設備を備えた需要家施設では、天候に応じて発電量が変動しやすいため、需要実績量がベースラインから大きく外れる場合があった。このように、上述したような従来技術では、需要実績値との誤差が小さくなるように、ベースラインを適切に設置することが難しい場合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、需要実績値との誤差が小さくなるように、ベースラインを設定することができる電力管理装置、及び、電力管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設における電力の需要を管理する装置であって、前記需要家施設の過去の消費平均値を取得する消費平均値取得部と、前記需要家施設の位置における当日の天候予測値を取得する天候予測値取得部と、前記天候予測値に基づき、当日の前記需要家施設の発電予測値を算出する発電予測値算出部と、前記発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように前記発電予測値を補正する発電予測値補正部と、前記消費平均値と前記発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出するベースライン算出部と、を備えた電力管理装置である。
【0010】
本発明の一態様は、電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設における電力の需要を管理する方法であって、消費平均値取得部が、前記需要家施設の過去の消費平均値を取得するステップと、天候予測値取得部が、前記需要家施設の位置における当日の天候予測値を取得するステップと、発電予測値算出部が、前記天候予測値に基づき、当日の前記需要家施設の発電予測値を算出するステップと、発電予測値補正部が、前記発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、前記乖離量が低減されるように前記発電予測値を補正するステップと、ベースライン算出部が、前記消費平均値と前記発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出するステップと、を含む電力管理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、需要実績値との誤差が小さくなるように、ベースラインを設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電力管理システム1の構成例を示す図である。
図2図1に示す電力管理装置10と需要家施設20の構成例を示すブロック図である。
図3】関東地方における天気予報エリアの一例を示す図である。
図4】需要家施設基本情報の一例を示す図である。
図5】発電予測値の補正例を示した図である。
図6】対象時間帯における補正前後の乖離率の年間平均値を示す図である。
図7】単体構成である場合のベースライン算出処理手順を示すフローチャートである。
図8】単体構成である場合のベースラインの算出例を示す図である。
図9図8において当日が晴れである場合の需要実績値とベースラインとを示す図である。
図10図8において当日が曇りである場合の需要実績値とベースラインとを示す図である。
図11】本発明の一実施形態に係る電力管理システム2の構成例を示す図である。
図12】群構成である場合のベースライン算出処理手順を示すフローチャートである。
図13】ある時間における群構成である場合のベースラインの算出例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(電力管理システム)
本発明の実施形態において、後述する電力管理装置は、需要家施設ごとに電力管理を行う場合(単体構成である場合)と、複数の需要家施設からなるグループごとに電力管理を行う場合(群構成である場合)とに対応している。
以下では、図面を参照して、単体構成である場合の電力管理システムと、群構成である場合の電力管理システムについてそれぞれ説明する。各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0014】
(単体構成である場合の電力管理システム)
単体構成である場合の電力管理システムの詳細について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電力管理システム1の構成例を示す図である。
電力管理システム1は、単体構成である場合の電力管理システムであって、電力管理装置10と、少なくとも1つ以上の需要家施設(20a、20b)とを備える。本実施形態において、任意の需要家施設を示す場合、又は特に区別しない場合には、需要家施設20として説明する。
【0015】
電力管理装置10は、通信回線40を介して、需要家施設20と相互に通信する。電力管理装置10は、通信回線60を介して、電気事業者等の親アグリゲータ(アグリゲーションコーディネータ)が運用する上位制御システム50(サーバ等のコンピュータ)と相互に通信する。
ここで、電力管理装置10は、親アグリゲータとの間で、DR等の要請に応じて電力の需要削減または需要増加(需要変化)を取引する一般送配電事業者(リソースアグリゲータ)が運用する、1つまたは複数のサーバ等のコンピュータで構成される。
電力管理装置10は、上位制御システム50から通信回線60を介して、需要家施設20に対する電力の需要変化に係る要請(例えば、DRの要請)を受信すると、この要請に応じて需要家施設20における電力の需要を管理する。この場合、電力管理装置10は、ベースラインを基準として需要家施設20の需要量を所定量変化させる。
【0016】
電力管理装置10は、例えば計画値同時同量制度に対応させて、各需要家施設20における電力の需要と発電を管理する。つまり、電力管理装置10の運用者は、各需要家施設20の需要計画と発電計画とを所定の計測時間間隔(例えば、30分ごと)ごとに策定し、策定した需要計画と発電計画を一般送配電事業者(リソースアグリゲータ)に提出する。そのうえで、各需要家施設20の実際の需要と発電とが、需要計画と発電計画に対してそれぞれ過不足を生じた場合には、電気事業者等の親アグリゲータと一般送配電事業者との間で過不足に対する清算が行われる。
【0017】
電力管理装置10は、通信回線40を介して、サーバ30と相互に通信し、サーバ30が記憶する天候予測値を取得する。ここで、サーバ30は、例えば気象庁や民間気象会社のデータサーバであり、過去および将来の天候予測値(例えば、天気、日射量等)を記憶している。
【0018】
需要家施設20は、一般家庭等の低圧需要家、または工場等の大口需要家である。本実施形態では、図1の例に示すように、需要家施設20の少なくとも一部が、蓄電池24(蓄電設備の一例)と、発電設備25とを備えている。本実施形態において、需要家施設20は、蓄電池24と発電設備25のいずれか一方を備えていてもよいし、どちらも備えていなくてもよい。
【0019】
電力管理システム1は、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)等の電力管理システムに含まれる形態で(例えば、一つの機能として)構成することができる。ここで、TEMSやCEMSは、例えば、所定の地域範囲における住宅、商業施設、産業施設等の複数の需要家施設20における電力を一括して管理するシステムである。
電力管理装置10は、TEMSやCEMS等の電力管理システムにおける管理装置(管理サーバ)に含まれる形態で(例えば、一つの機能として)構成することができる。この場合、電力管理装置10は、複数の需要家施設20が有する複数の蓄電池24の充放電電力の管理の他、例えば、発電設備25の発電電力の管理、負荷設備(後述する、電力負荷設備26)の消費電力の管理を行う装置として構成することができる。
【0020】
(電力管理装置、及び需要家施設)
ここで、図2を参照して、本発明の実施形態に係る電力管理装置10と需要家施設20の構成の詳細について説明する。
図2は、図1に示す電力管理装置10と需要家施設20の構成例を示すブロック図である。
【0021】
需要家施設20の構成について説明する。需要家施設20は、通信部21と、電力メータ22と、分電盤23と、蓄電池24と、発電設備25と、電力負荷設備26と、制御部27とを備える。本実施形態において、需要家施設20は、蓄電池24、発電設備25、及び電力負荷設備26のうち少なくとも1つの電力設備を含む。
【0022】
通信部21は、通信回線40を介して、電力管理装置10との間で所定の情報を送受信する。ここで、所定の情報は、電力の需要変化に係る要請(例えば、DRの要請)と、需要家施設20が備える電力設備に対する各種制御指示と、需要家施設20の各種電力量(例えば、発電量等)を示す情報と、を含む。
ここで、通信回線40は、インターネット等のネットワーク41と、通信回線42と、通信回線43と、通信回線44とを備える。通信回線42は、ネットワーク41と電力管理装置10(後述する、通信部11)とを接続する。通信回線43は、ネットワーク41と通信部21とを接続する。通信回線44は、ネットワーク41とサーバ30とを接続する。
【0023】
電力メータ22は、一般送配電事業者側の配電系統の構成要素である引込線70を介して、商用電源の電力系統に接続される。電力メータ22は、分電盤23を経由し配線28を介して、蓄電池24と発電設備25と電力負荷設備26とに接続されている。
電力メータ22は、需要家施設20における需要電力を所定の測定時間間隔(例えば、30分間隔)で測定する。電力メータ22は、例えばスマートメータであり、ネットワーク41等を経由して、測定した需要電力(需要実績値)を示す情報を電力管理装置10、または上位制御システム50に送信する。
【0024】
ここで、需要電力の定義について説明する。本実施形態において、需要電力は次式で表される。
【0025】
需要電力=max(消費電力-発電電力、0)-max(発電電力-消費電力、0)
【0026】
ここで、max(a、b)は、aとbのうち大きい値を返す関数であり、右辺の第1項は順潮流(買電)される順潮流電力、右辺の第2項は逆潮流(売電)される逆潮流電力に対応する。順潮流とは、発電電力が消費電力を下回る場合に、商用電源の電力系統から需要家施設20に対して電力が供給されることである。逆潮流とは、発電電力が消費電力を上回る場合に、需要家施設20から商用電源の電力系統に対して電力が供給されることである。従って、本実施形態において、需要電力は、順潮流である場合に正の値、逆潮流である場合に負の値で表される。本実施形態において、消費電力は、蓄電池24が充電する電力と電力負荷設備26が消費する電力とを含み、発電電力は、蓄電池24が放電する電力と発電設備25が発電する電力とを含む。
【0027】
分電盤23は、電力メータ22を経由して引込線70から供給された商用電源の電力を、配線28を介して蓄電池24または電力負荷設備26等に供給する(順潮流)。分電盤23は、蓄電池24の放電電力または発電設備25の発電電力を、電力メータ22を経由して引込線70に出力する(逆潮流)。
【0028】
蓄電池24は、充放電設備であり、例えば二次電池とインバータとを備える。インバータは、二次電池に充電する電力を交流から直流に変換し、二次電池から放電される電力を直流から交流に変換する機能を有する。
蓄電池24は、分電盤23を介して供給される商用電源の電力、または発電設備25の発電電力を充電する。蓄電池24は、蓄積された電力を放電して電力負荷設備26に供給する。さらに、蓄電池24は、蓄積された電力を放電して、分電盤23から電力メータ22を経由して引込線70に出力する(逆潮流)。
【0029】
発電設備25は、太陽光発電、風力発電、地熱発電等の再生可能エネルギーを利用して発電を行う発電装置、あるいは、それら発電装置の組合せである。発電設備25は、例えば、太陽光電池とPCS(Power Conditioning System)とを備え、太陽光を受けて発電した発電電力をPCSにより交流に変換して出力する。
発電設備25は、発電電力を蓄電池24または電力負荷設備26に供給する。発電設備25は、発電電力を分電盤23から電力メータ22を経由して引込線70に出力する(逆潮流)。
蓄電池24と発電設備25は、電力変換回路等の構成を一体化したものであってもよい。
【0030】
電力負荷設備26は、分電盤23から供給される商用電源の電力、発電設備25の発電電力、または蓄電池24の放電電力を入力して動作することができる機器や設備である。例えば、電力負荷設備26は、貯湯式給湯器、蓄熱型空調機、衣類乾燥機、食器乾燥機、蓄電池(充電対象としての負荷)等を含む。各需要家施設20が備える電力負荷設備26の種類、及び数等はそれぞれ異なっていてもよい。
【0031】
制御部27は、例えば、需要家施設20の制御プログラムを実行するためのCPU(Central Processing Unit)を備え、需要家施設20の各部位を包括的に制御する。
制御部27は、電力管理装置10から受信した指示に従い、需要家施設20が備える電力設備の電力を制御する。例えば、制御部27は、電力管理装置10から受信した充放電の制御指示に従い、蓄電池24の一部または全部についての充放電電力を制御する。制御部27は、電力管理装置10から受信した発電の制御指示に従い、発電設備25の一部または全部についての発電電力を制御する。制御部27は、電力管理装置10から受信した消費の制御指示に従い、電力負荷設備26の一部または全部についての消費電力を制御する。
【0032】
制御部27は、電力管理装置10から受信した指示に従い、電力メータ22が測定した需要電力を示す情報、蓄電池24の充放電電力及びの蓄電容量を示す情報、発電設備25の発電電力を示す情報、電力負荷設備26の消費電力を示す情報を取得する。制御部27は、これらの情報を電力設備毎に取得してもよいし、複数の電力設備毎にまとめて取得してもよい。
制御部27は、取得した需要電力、消費電力、発電電力、及び充放電電力を示す情報を、所定の時間間隔で、あるいは電力管理装置10からの要請に応じて、通信部21を介して電力管理装置10に送信する。
【0033】
次に、電力管理装置10の構成について説明する。
図2に示すように、電力管理装置10は、通信部11と、記憶部12と、制御部13とを備える。
【0034】
通信部11は、通信回線40を介して、需要家施設20の制御部27、またはサーバ30と通信する。通信部11は、通信回線60を介して、上位制御システム50と通信する。通信回線60は、通信回線40と同様にインターネット等のネットワーク41を介して構成されるものであってもよい。
【0035】
記憶部12は、制御部13が利用する各種データを記憶する。記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体など、または、これらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。記憶部12として、例えば、不揮発性メモリを用いることができる。
記憶部12は、発電計画記憶部121と、需要計画記憶部122と、施設情報記憶部123と、需要実績記憶部124と、発電実績記憶部125と、ベースライン記憶部126と、テンプレート記憶部127と、消費平均値記憶部128とを備える。
【0036】
発電計画記憶部121は、電力管理装置10の運用者が策定した発電計画による発電電力を示す発電計画情報を記憶する。発電計画情報は、例えば、発電時における各需要家施設20が備える各電力設備の需要と発電の予測値と、各電力設備の需要と発電に係る調整可能量(所定の基準値を基準として増減可能であると予測される電力量)と、蓄電池24の蓄電容量等の情報を含む。
本実施形態において、発電計画は、商用電源の電力系統に逆潮流させる電力についての需要家施設20全体としての計画値や、需要家施設20の個別の計画値があり得る。
【0037】
需要計画記憶部122は、電力管理装置10の運用者が策定した需要計画による需要電力を示す需要計画情報を記憶する。需要計画情報は、例えば、需要時における各需要家施設20が備える各電力設備の需要と発電の予測値、電力設備の電力需要に係る調節可能量とを含む。
本実施形態において、需要計画は、商用電源の電力系統から順潮流される電力についての需要家施設20全体としての計画値や、需要家施設20の個別の計画値があり得る。
【0038】
施設情報記憶部123は、各需要家施設20に係る基本的な情報である需要家施設基本情報を記憶する。例えば、需要家施設基本情報は、各需要家施設20の識別情報と、場所情報と、契約電力情報と、電力設備情報とを含む。
【0039】
識別情報は、需要家施設20の各々を識別するための識別情報(施設ID)である。本実施形態では、施設IDの付与ルールとして、頭文字に“E”を含むものとする(例えば、E0001)。場所情報は、需要家施設20が位置する緯度経度または住所等を示す位置情報(例えば、茨城県つくば市)と、需要家施設20が位置する天気予報エリアを示すエリア情報(例えば、エリア001)とを含む。
図3は、関東地方における天気予報エリアの一例を示す図である。ここで、天気予報エリア(以下、エリアと称する場合がある)とは、天候予測が行われる一定の領域であって、地図上で区分された一定の領域である。図3に示す例では、各需要家施設20は、3つの晴れ予報エリア(群馬、栃木、茨城)と、4つの曇り予報エリア(神奈川、東京、埼玉、千葉)のいずれかに属することが示されている。
契約電力情報は、需要家施設20が電気事業者等と契約している電力量を示す情報である。電力設備情報は、需要家施設20が備える各電力設備に係る情報であり、例えば、蓄電池24の定格出力値(定格充放電電力の値、定格放電電力の値、及び定格充電電力の値)および容量と、発電設備25の定格出力値(定格発電電力の値)および太陽光パネルの設置方向と、電力負荷設備26の負荷容量等に係る情報と、を含む。
【0040】
図4は、需要家施設基本情報の一例を示す図である。施設IDがE0001の需要家施設20に対して、位置情報は東京都中央区、エリア情報はエリア001、契約電力情報は契約電力値A、電力設備情報は電力設備情報Aである。施設IDがE0002の需要家施設20に対して、位置情報は茨城県つくば市、エリア情報はエリア100、契約電力情報は契約電力値B、電力設備情報は電力設備情報Bである。
【0041】
需要実績記憶部124は、各需要家施設20の需要電力の測定値である需要実績値であって、過去数年分あるいは一年分の所定の測定時間間隔(例えば、30分ごと)で測定された需要実績値を施設IDと対応付けて記憶する。
発電実績記憶部125は、各需要家施設20の発電電力の測定値である発電実績値であって、過去数年分あるいは一年分の所定の測定時間間隔(例えば、30分ごと)で測定された発電実績値を施設IDと対応付けて記憶する。
【0042】
ベースライン記憶部126は、後述するベースライン算出部が算出したベースラインを記憶する。ここで、ベースラインとは、電力の需要の変化に係る要請(例えば、DRの要請)がなかった場合に想定される電力需要量である。本実施形態において、ベースラインは、次式で定義される。
【0043】
ベースライン=max(消費平均値-発電予測値、0)-max(発電予測値-消費平均値、0)
ここで、消費平均値は、需要家施設20の過去の消費電力の平均値であり、発電予測値は、需要家施設20の当日の発電電力の予測値である。消費平均値と発電予測値とを算出する方法については、詳細を後述する。
【0044】
テンプレート記憶部127は、電力管理装置10の用者が予め作成した複数の発電予測値のテンプレートを記憶する。例えば、本実施形態において、発電予測値のテンプレートは、天気と季節に基づいて、(晴れ、雨、曇り)×(中間期、夏、冬)の9通りのパターンに分類されている。
【0045】
消費平均値記憶部128は、需要家施設20の消費平均値を記憶する。詳しくは後述するように、消費平均値記憶部128は、単体構成である場合、各需要家施設20の消費平均値を施設ID(例えば、E0001)と対応付けて記憶する。また、消費平均値記憶部128は、群構成である場合、各天気予報エリアの施設単位当たりの消費平均値をエリア情報(例えば、エリア001)と対応付けて記憶する。本実施形態において、施設単位当たりの値とは、需要家施設20一つ当たりの平均値を示す。
【0046】
制御部13は、例えば、電力管理装置10の制御ソフトウェアを実行するCPUであり、電力管理装置10の各部位を包括的に制御する。
制御部13は、電力管理部131と、消費平均値算出部132と、消費平均値取得部133と、天候予測値取得部134と、実績値処理部135と、発電予測値算出部136と、発電予測値補正部137と、ベースライン算出部138とを備える。
【0047】
電力管理部131は、発電計画記憶部121が記憶する発電計画情報と、需要計画記憶部122が記憶する需要計画情報と、需要家施設20の需要実績値及び発電実績値とに基づき、需要家施設20に備えられた電力設備を制御する。
電力管理部131は、上位制御システム50から、所定の要請時間における電力調整の要請を受信すると、この要請に応じて、ベースラインを基準に要請時間における需要家施設20の電力需要を調整する。
ここで、要請時間とは、電力調整が要請される所定の期間であり、例えば、要請の開始時刻及び終了時刻で定義してもよいし、要請の開始時刻及び継続時間で定義してもよい。電力調整の要請は、要請時間、需要削減の要請(下げDR)に係る削減量、需要増加の要請(上げDR)に係る増加量などを示す情報を含む。
【0048】
電力管理部131は、要請時間よりも短い所定の制御時間単位ごとに、発電計画記憶部121が記憶する発電計画と、需要計画記憶部122が記憶する需要計画とに基づき、需要家施設20が備える電力設備に対する各種制御指示を送信する。ここで、各種制御指示は、例えば、蓄電池24の充放電の制御指示、発電設備25の発電の制御指示、電力負荷設備26の消費の制御指示を含む。
例えば、充放電指示は、蓄電池24の制御時間単位を指示する情報と、当該制御時間単位における平均の放電電力の目標値または平均の充電電力の目標値を示す情報、あるいは当該制御時間単位における放電電力量の目標値または充電電力量の目標値を示す情報等を含む。
【0049】
消費平均値算出部132は、需要家施設20の過去の消費電力の平均値である消費平均値を算出する。消費平均値算出部132は、単体構成である場合、需要家施設20ごとに消費平均値を算出する。消費平均値算出部132は、群構成である場合、所定の天気予報エリアごとに、当該エリアに位置する施設単位当たりの消費平均値を算出する。
具体的には、消費平均値算出部132は、需要実績記憶部124が記憶する各需要家施設20の需要実績値と、発電実績記憶部125が記憶部する各需要家施設20の発電実績値とに基づき、需要家施設20ごとに消費電力を求め、以下の3つの方法のいずれかによって消費平均値を算出する。本実施形態において、各需要家施設20の消費電力は、需要実績値と発電実績値の和として求められる(需要電力=消費電力-発電電力)。
第1の平均値算出方法では、過去5日間の同一時刻の消費電力の平均値を消費平均値とする。第2の平均値算出方法では、過去5日間の同一時刻のうち4番目までに消費電力が多い4日間の平均値を消費平均値とする。第3の平均値算出方法では、過去4週間の同一曜日の同一時刻の消費電力の平均値を消費平均値とする。
消費平均値算出部132は、群構成である場合、上述の手順に従って各需要家施設20の消費平均値を算出し、所定の天気予報エリアごとに、当該エリアに位置する施設単位当たりの消費平均値を算出する。
消費平均値算出部132は、需要家施設20ごとの消費平均値、又はエリアごとの施設単位当たりの消費平均値を算出すると、消費平均値記憶部128に更新して記憶させる。
【0050】
消費平均値取得部133は、消費平均値記憶部128が記憶する需要家施設20の消費平均値を取得する。具体的には、消費平均値取得部133は、単体構成である場合、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれる施設IDを参照して、各需要家施設20の消費平均値を消費平均値記憶部128から取得する。消費平均値取得部133は、群構成である場合、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれるエリア情報を参照して、各天気予報エリアの施設単位当たりの消費平均値を消費平均値記憶部128から取得する。
【0051】
天候予測値取得部134は、需要家施設20が位置する天気予報エリアの当日の天候予測値をサーバ30から取得する。ここで、天候予測値は、所定のエリアごとの天候情報であり、例えば、天気(晴れ、雨、雪、曇り等)、日射量、気温、湿度等の予測値を含んでいる。
具体的には、天候予測値取得部134は、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれる施設IDとエリア情報とを参照して、需要家施設20が位置する天気予報エリアを判定し、当該エリアの当日の天候予測値を取得する。例えば、天候予測値取得部134は、図4に示すように需要家施設20の施設IDがE0001である場合、当該需要家施設20が位置するエリアをエリアAであると判定し、エリアAの天気予測値を取得する。
【0052】
実績値処理部135は、各需要家施設20の当日の発電実績値と需要実績値とを取得する。実績値処理部135は、所定の天気予報エリアごとに、当該エリアに位置する各需要家施設20の当日の発電実績値と需要実績値とを当該エリアごとにまとめて取得してもよい。
実績値処理部135は、取得した発電実績値を施設IDと対応付けて発電実績記憶部125に記憶させるとともに、取得した需要実績値を施設IDと対応付けて需要実績記憶部124に記憶させる。
【0053】
発電予測値算出部136は、天候予測値取得部134が取得した天候予測値に基づいて、当日の需要家施設20の発電電力の予測値である発電予測値を算出する。発電予測値算出部136は、単体構成である場合に、需要家施設20ごとに発電予測値を算出する。発電予測値算出部136は、群構成である場合に、各天気予報エリアの施設単位当たりの発電予測値を算出する。
【0054】
本実施形態において、発電予測値算出部136は、以下の2つの方法のいずれかを用いて発電予測値を算出する。
第1の予測値算出方法では、発電予測値算出部136は、当日の天候予測値、さらに、発電設備25の設置緯度経度、太陽光パネルの設置方位、傾斜角、及び容量等の情報に基づき、一般的な高精度の発電予測技術(例えば、ニューラルネットワークによる推定技術等)を用いて、発電予測値を算出する。
第2の予測値算出方法では、発電予測値算出部136は、当日の天候予測値に基づき、テンプレート記憶部127が記憶する発電予測値のテンプレートを参照して、発電予測値を算出する。例えば、(晴れ、雨、曇り)×(中間期、夏、冬)の9通りのテンプレートがある場合、発電予測値算出部136は、当日の天気と季節に対応している発電予測値のテンプレートを発電予測値として算出する。
【0055】
発電予測値補正部137は、実績値処理部135が取得した発電実績値と、発電予測値算出部136が算出した発電予測値とに基づき、当日の所定の第1の時間帯(第1期間の一例)における発電実績値と発電予測値の乖離率(乖離量の一例)を算出する。
ここで、第1の時間帯(以下、補正時間帯と称する)とは、電力の需要の変化に係る要請(例えば、DRの要請)を受信する前の時間帯である。例えば、本実施形態では、この要請が当日12時直前にあるとして、この要請に先立つ当日9時から10時までの時間帯を補正時間帯とする。本実施形態において、乖離率は次式で表される。
【0056】
乖離率=|(発電予測値-発電実績値)/発電実績値|
【0057】
乖離率とは、発電予測値の発電実績値に対する差分を発電実績値で規格化した量である。発電実績値の発電予測値に対する差分を発電予測値で規格化した量を乖離率として定義してもよい。
【0058】
発電予測値補正部137は、補正時間帯の乖離率が所定の閾値(例えば、100パーセント)以上である場合に、当日の所定の第2の時間帯(第2期間の一例)における乖離率が低減されるように発電予測値を補正する。
ここで、第2の時間帯(以下、対象時間帯と称する)とは、電力の需要の変化に係る要請を受信した後の時間帯である。例えば、本実施形態では、この要請が当日12時直前にあるとして、当日12時から15時までの時間帯を対象時間帯とする。
本実施形態において、発電予測値補正部137は、まず、補正時間帯の発電実績値と発電予測値とに基づいて、補正時間帯の乖離率を算出する。次に、発電予測値補正部137は、対象時間帯の発電予測値を補正時間帯の乖離率で割ることによって、補正後の発電予測値を算出する。ここで、図5を参照して、発電予測値の補正例について説明する。
【0059】
図5は、発電予測値の補正例を示した図である。横軸は時間を示し、縦軸は発電電力量(Kw)を示す。曲線Cmeas1は、7時から10時までの30分ごとの発電実績値を示す。曲線Cmeas2は、10時から16時までの30分ごとの発電実績値を示す。曲線Cexp_orgは、7時から17時までの30分ごとの発電予測値を示す。曲線Cexp_corは、12時から15時までの30分ごとの補正後の発電予測値を示す。補正時間帯TR1は9時から10時までの時間帯であり、対象時間帯TR2は12時から15時までの時間帯である。電力の需要の変化に係る要請は、補正時間帯TR1と対象時間帯TR2の間に行われる。
補正時間帯TR1において、発電予測値の発電実績値に対する乖離率は、9時では222.6パーセント(発電予測値が37.4732、発電実績値が11.61669)、9時30分では194.1パーセント(発電予測値が45.39034、発電実績値が15.43272)である。発電予測値補正部137は、対象時間帯TR2の発電予測値(曲線Cexp_org)を9時の乖離率で割ることによって、補正後の発電予測値(曲線Cexp_cor)を算出する。この補正により、図5に示すように、発電実績値(曲線Cmeas2)と補正後の発電予測値(曲線Cexp_cor)の乖離が低減される。
図5に示す例では、発電予測値を補正するために9時の乖離率を使用したが、9時30分の乖離率を使用してもよいし、9時の乖離率と9時30分の乖離率の平均値を使用してもよい。
【0060】
ここで、図6を参照して、発電予測値の補正前と補正後とで乖離率がどの程度低減されているのかについて説明する。
図6は、対象時間帯における補正前後の乖離率の年間平均値を示す図である。ここで、年間平均値とは、一年間のうち天候予測が大幅に外れた41日間についての平均値のことである。補正後の発電予測値は、図5と同様に、補正時間帯(9時)の乖離率を用いて算出されたものである。対象時間帯(12時から15時まで)において、補正前の乖離率は175~412パーセントであるが、補正後の乖離率は44~127パーセントに低減されている。
【0061】
ベースライン算出部138は、発電予測値補正部137が補正を行わなかった場合に、消費平均値取得部133が取得した消費平均値と、発電予測値算出部136が算出した発電予測値とに基づき、電力の需要の変化に係る基準となるベースラインを算出して、ベースライン記憶部126に記憶させる。
ベースライン算出部138は、発電予測値補正部137が補正を行った場合に、消費平均値取得部133が取得した消費平均値と、発電予測値補正部137が算出した補正後の発電予測値とに基づき、電力の需要の変化に係る基準となるベースラインを算出して、ベースライン記憶部126に記憶させる。
【0062】
ベースライン算出部138は、単体構成である場合、需要家施設20ごとにベースラインを算出する。ベースライン算出部138は、群構成である場合、各天気予報エリアの施設単位当たりの発電予測値に基づいて、各々のエリアを複数のグループに分類し、グループごとにベースラインを算出する。ベースライン算出処理については、単体構成である場合と群構成である場合それぞれについて詳細を後述する。
【0063】
(単体構成である場合のベースライン算出処理)
ここで、図7を参照して、単体構成におけるベースライン算出処理の詳細を説明する。
図7は、単体構成におけるベースライン算出処理手順を示すフローチャートである。
【0064】
消費平均値取得部133は、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれる施設IDを参照して、消費平均値記憶部128が記憶する消費平均値を需要家施設20ごとに取得する(ステップS101)。
【0065】
天候予測値取得部134は、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれる施設IDとエリア情報とを参照して、各需要家施設20が位置する天気予報エリアの当日の天候予測値をサーバ30から取得する(ステップS102)。
【0066】
発電予測値算出部136は、天候予測値取得部134が取得した天候予測値に基づいて、各需要家施設20の当日の発電予測値を算出する(ステップS103)。
例えば、発電予測値算出部136は、一般的に使用される高精度の発電予測技術を使用して、日射量、気温等の天候予測値、または、発電設備25の設置緯度経度、設置方位、景射角、及び容量等の情報から、発電予測値を算出する(第1の予測値算出方法)。
【0067】
実績値処理部135は、各需要家施設20の当日の発電実績値を当該需要家施設20から取得する(ステップS104)。
【0068】
発電予測値補正部137は、発電予測値算出部136が算出した発電予測値と、実績値処理部135が取得した発電実績値とに基づいて、発電予測値と発電実績値の乖離率を算出し、算出した乖離率が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS105)。本実施形態では、発電予測値補正部137は、補正時間帯(例えば、9時)における発電予測値と発電実績値とに基づき、発電予測値の発電実績値に対する乖離率を算出する。
発電予測値補正部137は、乖離率が所定の閾値(例えば、100パーセント)以上であると判定した場合に(ステップS105-YES)、処理をステップS106へ進め、乖離率が所定の閾値未満であると判定した場合に(ステップS105-NO)、処理をステップS107へ進める。
【0069】
ステップS106において、発電予測値補正部137は、対象時間帯(例えば、12時から15時までの時間帯)の乖離率が低減されるように発電予測値を補正する。本実施形態では、対象時間帯の発電予測値を補正時間帯の乖離率で割ることにより、補正後の発電予測値を算出する。
【0070】
ステップS107において、ベースライン算出部138は、発電予測値補正部137が補正を行わなかった場合に、消費平均値取得部133が取得した消費平均値と、発電予測値算出部136が算出した発電予測値とに基づき、電力の需要の変化に係る基準となるベースラインを算出し、施設IDと対応付けてベースライン記憶部126に記憶させる。
ベースライン算出部138は、発電予測値補正部137が補正を行った場合に、消費平均値取得部133が取得した消費平均値と、発電予測値補正部137が算出した補正後の発電予測値とに基づき、電力の需要の変化に係る基準となるベースラインを算出し、施設IDと対応付けてベースライン記憶部126に記憶させる。
【0071】
ここで、図8を参照して、単体構成である場合のベースラインの算出例について説明する。
図8は、単体構成である場合のベースラインの算出例を示す図である。ここで、図8は、ある需要家施設20を対象としたシミュレーションにおいて算出された需要実績値とベースラインとを示している。過去の需要実績値は、いの30分ごとの需要実績値である。ここで、当該需要家施設20が位置する天気予報エリアの天気は、前日が晴れ、2日前が雨、3日前が雨、4日前が晴れ、5日前が晴れである。ベースライン(従来型)は、代表的な従来のベースラインの算出方法に従って、前日から5日前までの需要実績値のうちで値の大きい4日間の平均値として算出したベースラインである。需要実績値(晴れ)は、当日が晴れである場合の需要実績値である。ベースライン(晴れ)は、当日が晴れである場合に予測される発電予測値(不図示)と消費平均値(不図示)とに基づいて算出されたベースラインである。需要実績値(曇り)は、当日が曇りである場合の需要実績値である。ベースライン(曇り)は、当日が曇りである場合に予測される発電予測値(不図示)と消費平均値(不図示)とに基づいて算出されたベースラインである。
【0072】
図9は、図8において当日が晴れである場合の需要実績値とベースラインとを示す図である。図9は、需要実績値(晴れ)C_act_sunnyと、ベースライン(晴れ)C_base_sunnyと、ベースライン(従来型)C_base_orgとを示している。図10は、図8において当日が曇りである場合の需要実績値とベースラインとを示す図である。図10は、需要実績値(曇り)C_act_cloudyと、ベースライン(曇り)C_base_cloudyと、ベースライン(従来型)C_base_orgとを示している。図9図10において、横軸は時間を示し、縦軸は需要電力(W)を示す。
晴れである場合(図9参照)と曇りである場合(図10参照)の両方で、天候予測値を加味したベースラインと需要実績値の誤差は、天候予測値を加味しない従来型のベースラインと需要実績値の誤差よりも小さくなる。ベースラインの需要実績値に対する日平均誤差は、晴れである場合(図9参照)に、本実施形態のベースラインでは-1パーセント、従来型のベースラインでは14パーセントである。ベースラインの需要実績値に対する日平均誤差は、曇りである場合(図10参照)に、本実施形態のベースラインでは4パーセント、従来型のベースラインでは-81パーセントである。
【0073】
(群構成である場合の電力管理システム)
次に、群構成である場合の電力管理システムの詳細について説明する。
図11は、本発明の一実施形態に係る電力管理システム2の構成例を示す図である。
電力管理システム2は、群構成である場合の電力管理システムであって、電力管理装置10と、複数の需要家施設20とを備える。複数の需要家施設20は、複数のグループ(グループ1~グループ3)に分類されている。グループの分類の詳細については後述する。
電力管理装置10は、単体構成である場合とは異なり、グループごとにベースラインを算出する。電力管理装置10は、電力の需要の変化に係る要請(DRの要請等)に応じて、各グループのベースラインを基準として、当該グループに属する需要家施設20の電力管理を実行する。
【0074】
(群構成である場合のベースライン算出処理)
ここで、群構成におけるベースライン算出処理の詳細について説明する。
図12は、群構成におけるベースライン算出処理手順を示すフローチャートである。
【0075】
消費平均値取得部133は、施設情報記憶部123が記憶する需要家施設基本情報に含まれるエリア情報を参照して、所定の天気予報エリアごとに、各エリアの施設単位当たりの消費平均値を消費平均値記憶部128から取得する(ステップS201)。
【0076】
天候予測値取得部134は、通信部11を介して、サーバ30から当日の各天気予報エリアの天候予測値を取得する(ステップS202)。
【0077】
発電予測値算出部136は、天候予測値取得部134が取得した天候予測値に基づき、上述したステップS103と同様の方法を用いて、当日の各天気予報エリアの施設単位当たりの発電予測値を算出する(ステップS203)。
【0078】
実績値処理部135は、所定の天気予報エリアごとに、各エリアの施設単位当たりの消費実績値を算出する(ステップS204)。具体的には、実績値処理部135は、通信部11を介して、所定の天気予報エリアに位置する各需要家施設20の当日の発電実績値をまとめて取得し、各エリアの施設単位当たりの発電実績値を算出する。
【0079】
発電予測値補正部137は、発電予測値算出部136が算出した発電予測値と、発電実績値処理部が算出した発電実績値とに基づき、ステップS105と同様の手法で、発電予測値と発電実績値の乖離率を算出し、乖離率が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS205)。
発電予測値補正部137は、乖離率が所定の閾値以上であると判定した場合に(ステップS205-YES)、処理をステップS206へ進め、乖離率が所定の閾値未満であると判定した場合に(ステップS205-NO)、処理をステップS207へ進める。
【0080】
ステップS206において、発電予測値補正部137は、ステップS106と同様の手法で、対象時間帯の乖離率が低減されるように発電予測値を補正する。
【0081】
ステップS207において、ベースライン算出部138は、発電予測値算出部136または発電予測値補正部137が算出した、各天気予報エリアの施設単位当たりの発電予測値に基づいて、各々のエリアを複数のグループに分類する。
例えば、ベースライン算出部138は、各エリアの施設単位当たり発電予測値が、第1閾値以上である場合をグループ1、第1閾値未満かつ第2閾値以上である場合をグループ2、第2閾値未満である場合をグループ3に分類する。
【0082】
ベースライン算出部138は、消費平均値取得部133が取得した各天気予報エリアの施設単位当たりの消費平均値と、発電予測値算出部136が算出した発電予測値とに基づき、ステップS107と同様の手法で、グループごとにベースラインを算出し、各々のグループを識別するためのグループ名(例えば、グループ1等)と対応付けてベースライン記憶部126に記憶させる(ステップS208)。
【0083】
ここで、図13を参照して、群構成である場合のベースラインの算出例について説明する。
図13は、ある時間における群構成である場合のベースラインの算出例を示す図である。ここで、図13は、16個の異なる天気予報エリアと、各エリアの天気と、各エリアが属するベースライン用グループと、消費平均値と、発電予測値と、買電予測値(max(消費平均値-発電予測値、0))と、売電予測値(max(発電予測値-消費平均値、0))と、需要予測値(買電予測値-売電予測値)と、ベースラインとを対応付けて示す。ベースライン用グループとは、発電予測値に基づいてベースライン算出用に分類されたグループのことである。消費平均値と、発電予測値と、買電予測値と、売電予測値と、需要予測値とは、各エリアの施設単位当たりの値であり、ベースラインは、グループごとに算出された値である。
【0084】
図13に示すように、ベースラインの値は、グループ1において-95W、グループ2において-1383Wである。具体的には、ベースライン算出部138は、ベースラインを次のようにして算出する。
まず、ベースライン算出部138は、各グループの施設単位当たりの消費予測値と発電予測値とを算出する。グループ1の場合、施設単位当たりの消費予測値と発電予測値はそれぞれ300Wと1683Wである。グループ2の場合、施設単位当たりの消費予測値と発電予測値はそれぞれ340Wと435Wである。
次に、各グループの施設単位当たりの消費予測値と発電予測値とに基づいて、ベースラインを算出する。グループ1の場合、買電予測値(max(消費予測値-発電予測値、0))は0W、売電予測値(max(発電予測値-消費予測値、0))は1383Wであるから、ベースラインは-1383Wとなる。グループ2の場合、買電予測値(max(消費予測値-発電予測値、0))は0W、売電予測値(max(発電予測値-消費予測値、0))は95Wであるから、ベースラインは-95Wとなる。
【0085】
以上説明したように、本実施形態による電力管理装置10は、電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設20における電力の需要を管理する装置であって、消費平均値取得部133と、天候予測値取得部134と、発電予測値算出部136と、発電予測値補正部137と、ベースライン算出部138とを備える。消費平均値取得部133は、需要家施設の過去の消費平均値を取得する。天候予測値取得部134は、需要家施設の位置における当日の天候予測値を取得する。発電予測値算出部136は、天候予測値に基づき、当日の需要家施設の発電予測値を算出する。発電予測値補正部137は、発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、乖離量が低減されるように発電予測値を補正する。ベースライン算出部138は、消費平均値と発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出する。
【0086】
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、当日の天候予測値に基づいて当日の発電予測値を算出し、天候予測が外れて当日の発電予測値が当日の発電実績値から大幅にずれた場合には、発電実績値とのずれが低減されるように発電予測値を補正するため、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することができる。
電力管理装置10は、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することによって、電力の需要の変化に係る要請(例えば、DRの要請)を受けた場合に、ベースラインを基準として需要家施設20の電力需要を適切に制御することができる。
【0087】
本実施形態において、消費平均値取得部133は、所定のエリア(天気予報エリア)ごとに、当該エリアに位置する需要家施設20の単位当たりの過去の消費平均値を取得する。天候予測値取得部134は、エリアごとに当日の天候予測値を取得する。発電予測値算出部136は、天候予測値に基づき、エリアごとに需要家施設20の単位当たりの当日の発電予測値を算出する。発電予測値補正部137は、エリアごとの単位当たりの乖離量が所定の閾値以上である場合に、乖離量が低減されるように、エリアごとの単位当たりの発電予測値を補正する。ベースライン算出部138は、エリアごとの単位当たりの発電予測値に基づき、各々のエリアを複数のグループに分類し、グループごとにベースラインを算出する。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、需要家施設20ごとにベースラインを設定する(単体構成である場合)だけでなく、複数の需要家施設20からなるグループごとにベースラインを設定する(群構成である場合)ことにより、需要家施設20ごと、又は複数の需要家施設20からなるグループごとに、電力管理を行うことができる。
【0088】
本実施形態において、発電予測値補正部137は、電力の需要変化に係る要請より前の補正時間帯(第1期間)において乖離量を算出し、補正時間帯の乖離量が所定の閾値以上である場合に、要請より後の対象時間帯(第2期間)における乖離量が低減されるように、対象時間帯の発電予測値を補正する。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、電力の需要変化に係る要請に応じて電力の需要を管理する前に、管理の基準値(ベースライン)の算出に必要な発電予測値を補正するため、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することができる。
【0089】
本実施形態において、電力管理部131は、ベースライン算出部138が算出したベースラインを基準として、電力の需要変化に係る要請に応じて需要家施設20における電力の需要を管理する。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、需要実績値との誤差が小さくなるように設定されたベースラインを用いて、需要家施設20の電力の需要を適切に管理することができる。
【0090】
本実施形態において、需要家施設20の少なくとも1つは、蓄電池24(蓄電設備)を有し、電力管理部131は、蓄電池24の充放電を指示することで、ベースラインを基準として、電力の需要変化に係る要請に応じて需要家施設20における電力の需要を管理する。電力管理部131は、ベースラインを基準として、需要増加の要請を受けた場合には、蓄電池24の充電により需要家施設20の消費電力を増加させ、需要削減の要請を受けた場合には、蓄電池24の放電により需要家施設20の発電電力を増加させる。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、ベースラインを基準として、電力の需要の変化に係る要請に応じて、需要家施設20における電力の需要を適切に管理することができる。
【0091】
本実施形態による電力管理方法は、電力の需要の変化に係る要請に応じて少なくとも1つ以上の需要家施設20における電力の需要を管理する方法であって、消費平均値取得部133が、需要家施設20の過去の消費平均値を取得するステップと、天候予測値取得部134が、需要家施設20の位置における当日の天候予測値を取得するステップと、発電予測値算出部136が、天候予測値に基づき、当日の需要家施設20の発電予測値を算出するステップと、発電予測値補正部137が、発電予測値と当日の発電実績値との乖離量が所定の閾値以上である場合に、乖離量が低減されるように発電予測値を補正するステップと、ベースライン算出部138が、消費平均値と発電予測値に基づき、電力の需要の変化に係る基準となる値であるベースラインを算出するステップと、を含む。
これにより、本実施形態による電力管理方法は、上述した電力管理装置10と同様の効果を奏し、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することができる。
【0092】
本実施形態において、消費平均値算出部132が消費平均値を算出して消費平均値記憶部128に記憶させ、消費平均値取得部133が消費平均値記憶部128から消費平均値を取得する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、消費平均値取得部133は、電力管理装置10と通信可能な外部の計算サーバが算出した消費平均値を取得してもよいし、電力管理装置10と通信可能な外部のデータサーバが記憶する消費平均値を取得してもよい。また、消費平均値記憶部128は、消費平均値算出部132が算出した消費平均値ではなく、外部の計算サーバが算出した消費平均値、又は外部のデータサーバが管理する消費平均値を記憶してもよい。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、消費平均値の記憶に必要な記憶容量を削減できるだけでなく、消費平均値の算出に必要な計算量及び計算時間を削減できるため、計算資源等を節約すると同時に、ベースラインをより迅速に設定することができる。
【0093】
本実施形態において、発電予測値補正部137が、電力の需要変化に係る要請よりも前の補正時間帯の乖離率を用いて、この要請よりも後の対象時間帯の発電予測値を補正する例を説明したが、補正方法はこれに限定されるものではない。例えば、発電予測値補正部137は、実績値処理部135によって発電実績値が取得される度に、その時刻における乖離率を算出し、乖離率が所定の閾値以上である場合に、次の時刻からの発電予測値を乖離率で割って補正してもよい。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、発電予測値をほぼリアルタイムで補正することができると同時に、補正時間帯の乖離率を用いる場合に比べて、発電実績値とのずれがより小さくなるように発電予測値を補正することができる。
【0094】
本実施形態において、発電予測値補正部137が、対象時間帯の発電予測値を補正時間帯の乖離率で割って補正する例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、発電予測値補正部137は、補正時間帯における発電予測値と発電実測値との差分を求め、対象時間帯の発電予測値からこの差分を引くことにより発電予測値を補正してもよい。発電予測値補正部137は、機械学習等により作成された、発電予測値を補正するための補正関数を用いて発電予測値を補正してもよい。この場合、電力管理装置10が補正関数を作成してもよいし、電力管理装置10とは別に設置された機械学習装置が補正関数を作成してもよい。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、補正時間帯の選び方、乖離率の定義、及び乖離率の閾値の選び方などに依らずに発電予測値を補正することができるため、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することができる。
【0095】
本実施形態において、発電予測値補正部137が、発電予測値と当日の発電実績値との差分を用いて乖離率を算出する例を説明したが、発電実績値の選び方はこれに限定されるものではない。例えば、過去の発電実績値の平均値(例えば、過去5日間の平均)を用いてもよい。テンプレート記憶部127が記憶する発電予測値のテンプレートと同様に天気と季節に基づいて作成された、発電実績値のテンプレート(例えば、(晴れ、雨、曇り)×(中間期、夏、冬)の9通りのパターン)を用いてもよい。
これにより、本実施形態による電力管理装置10は、過去履歴、天気、及び季節に応じて設定された発電実績値に基づいて乖離率を算出することができるため、需要実績値との誤差が小さくなるようにベースラインを設定することができる。
【0096】
上述した実施形態における電力管理処理をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1…電力管理システム、2…電力管理システム、10…電力管理装置、11…通信部、12…記憶部、13…制御部、20…需要家施設、21…通信部、22…電力メータ、23…分電盤、24…蓄電池、25…発電設備、26…電力負荷設備、27…制御部、30…サーバ、50…上位制御システム、121…発電計画記憶部、122…需要計画記憶部、123…施設情報記憶部、124…需要実績記憶部、125…発電実績記憶部、126…ベースライン記憶部、127…テンプレート記憶部、128…消費平均値記憶部、131…電力管理部、132…消費平均値算出部、133…消費平均値取得部、134…天候予測値取得部、135…実績値処理部、136…発電予測値算出部、137…発電予測値補正部、138…ベースライン算出部
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