(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】X線後方散乱検出器
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240807BHJP
G01N 23/203 20060101ALI20240807BHJP
【FI】
G01T1/20 B
G01N23/203
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136099
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-08-08
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】サファイ, モルテザ
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02889643(EP,A1)
【文献】国際公開第2009/157071(WO,A1)
【文献】英国特許出願公開第00687231(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 - 1/16
1/167 - 7/12
G01N 23/00 - 23/2276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線後方散乱システム(102)で使用するためのシンチレータ(110)であって、
無機発光物質から作られており、かつ1つ又は複数の無機物質要素(202)を含む無機シンチレータ部分(112)を含み、前記1つ又は複数の無機物質要素(202)の各無機物質要素(202)が、
前記X線後方散乱システム(102)で走査される対象物(120)に近接するように構成されており、かつ前記対象物(120)から反射されたX線光子(122)を受け取るように構成された外面(204)、及び
前記外面(204)の反対側の内面(206)
を含む無機シンチレータ部分(112)と、
有機発光物質から作られており、かつ前面(208)を含む有機シンチレータ部分(114)であって、前記前面(208)の少なくとも一部が、前記1つ又は複数の無機物質要素(202)の少なくとも1つの前記内面(206)と当接する、有機シンチレータ部分(114)と
を備え
、
前記無機シンチレータ部分(112)が、互いに離間している複数の無機物質要素(202)を更に備え、
前記複数の無機物質要素(202)が、前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の対応する離間した第1のセクション(218)上に配置され、前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の第2のセクション(220)には前記無機物質要素(202)がない、シンチレータ。
【請求項2】
前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の前記離間した第1のセクション
(218)が、前記無機発光物質のない前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の前記第2のセクション
(220)から凹んでいる、請求項
1に記載のシンチレータ(110)。
【請求項3】
前記無機発光物質が、前記有機発光物質の屈折率とは異なる屈折率を有する、請求項1
又は2に記載のシンチレータ(110)。
【請求項4】
第2の無機発光物質から作られた第2の無機シンチレータ部分
(212)を更に備え、
前記有機シンチレータ部分(114)が、前記前面(208)と反対側の裏面(210)を更に備え、
前記第2の無機シンチレータ部分
(212)が、前記有機シンチレータ部分(114)の前記裏面(210)上に配置される、請求項1から
3のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【請求項5】
前記無機発光物質及び前記第2の無機発光物質が同一である、請求項
4に記載のシンチレータ(110)。
【請求項6】
第3の無機発光物質から作られた第3の無機シンチレータ部分
(214)を更に備え、
前記有機シンチレータ部分(114)が、前記前面(208)と前記裏面(210)との間を延びる1つ又は複数の側面(220)を更に備え、
前記第3の無機シンチレータ部分
(214)が、前記有機シンチレータ部分(114)の前記1つ又は複数の側面(220)の上に配置される、請求項
4又は
5に記載のシンチレータ(110)。
【請求項7】
シンチレータを製造する方法(500)であって、
有機発光物質の層(402)を基板(404)上に配置すること(502)であって、
有機発光物質の前記層(402)が、前記基板(404)に隣接した裏面(210)、及び前面(208)を備え、
有機発光物質の前記層(402)が、前記前面(208)に複数の空隙
(410)を画定する、有機発光物質の層(402)を基板(404)上に配置すること(502)と、
1つ又は複数の無機物質要素(408)を前記複数の空隙
(410)の1つ又は複数内に配置すること(504)と
を含む方法(500)。
【請求項8】
X線後方散乱システム(102)を操作する方法(600)であって、
前記X線後方散乱システム(102)のX線管(104)を介して、X線を対象物(120)に向かって送信すること(602)と、
前記X線後方散乱システム(102)のシンチレータ(110)を介して、前記対象物(120)によって散乱された1つ又は複数のX線(122)を検出すること(604)と
を含み、
前記シンチレータ(110)が、
無機発光物質から作られており、かつ1つ又は複数の無機物質要素(202)を含む無機シンチレータ部分(112)を含み、前記1つ又は複数の無機物質要素(202)の各無機物質要素(202)が、
前記対象物(120)に近接する外面(204)、及び前記外面(204)の反対側の内面(206)と、
有機発光物質から作られており、かつ前面(208)を含む有機シンチレータ部分(114)であって、前記前面(208)の少なくとも一部が、前記1つ又は複数の無機物質要素(202)の少なくとも1つの前記内面(206)と当接する、有機シンチレータ部分(114)と
を備え
、
前記無機シンチレータ部分(112)が、互いに離間している複数の無機物質要素(202)を更に備え、
前記複数の無機物質要素(202)が、前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の対応する離間した第1のセクション(218)上に配置され、前記有機シンチレータ部分(114)の前記前面(208)の第2のセクション(220)には前記無機物質要素(202)がない、方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、X線後方散乱システムにおいて散乱したX線の検出に関し、より具体的には、無機発光物質及び有機発光物質を含むシンチレータを使用した、散乱したX線の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
X線後方散乱システムは、対象物の見通し外(non-line-of-site)特徴を検出することを含む、対象物の非破壊的検査に使用することができる。従来のX線後方散乱システムは、X線管及び検出器を含む。検出器は、光電子増倍管(PMT)及びシンチレータを含む。X線管は、対象物に向かってX線を放出する。X線が対象物の構成要素と衝突するときに、X線が回折し、X線光子のいくつかが検出器に向かって移動する。X線光子がシンチレータの外面に当たるときに、一部のX線が外面で反射し、一部のX線は外面を透過する。外面を透過するX線のうち、一部のX線はシンチレータの裏面に当たり、シンチレータ内で再び反射するが、他のX線は裏面を透過して、シンチレータを出る。
【0003】
PMTは、シンチレータの原子の電子がX線からエネルギーを吸収して電子を高エネルギー状態に励起し、次に電子が初期状態に戻って光電子を放出させるときに生じる光電子放出を検出する。PMTは、シンチレータ内の光電子放出の量を検出しうる。あるいは、PMTは、シンチレータ内の光電子放出の全体的な効果の明度を検出しうる。
【0004】
従来のX線後方散乱システムのいくつかの欠陥は、検出器に向かって進むX線からエネルギーを吸収できないことを含む。例えば、X線がシンチレータの外面で反射したり、裏面を透過してシンチレータを出たりするときに、X線からエネルギーを吸収する機会が失われる。これらの欠陥は、対象物の構成要素から回折されたさまざまなX線のエネルギーの大きな分布によって引き起こされる可能性がある。例えば、期待されるエネルギーの中央値を有するX線に対して(例えば、選択された材料の厚さによって)較正されたシンチレータは、外面で反射する比較的低いエネルギーのX線及び/又は裏面を透過する比較的高いエネルギーのX線をもたらす可能性がある。
【0005】
これらの欠陥のいくつかを補うために、一部のX線後方散乱システムは、比較的高いX線電源を使用して、シンチレータが較正されるのに十分な量のX線を生成する。このように、シンチレータは低いエネルギー及び高いエネルギーのX線からエネルギーを吸収しない場合でも、シンチレータは、対象物を画像化するための情報を提供するのに十分なX線をなおも検出することができる。しかしながら、これらの高出力X線後方散乱システムは、製造と操作により費用がかかり、携帯性はより低くなる。
【0006】
したがって、比較的広い範囲のエネルギーを有するX線からエネルギーを吸収するように構成されたシンチレータを有するX線後方散乱システムが必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
本出願の主題は、例示的なシンチレータ、そのようなシンチレータを実装するX線後方散乱システム、シンチレータを使用する方法、及び先行技術の上記の欠点を克服するシンチレータを製造する方法を提供する。本出願の主題は、現在の最先端技術に応じて、特に、従来のシンチレータの欠点、及びシンチレータを製造しX線後方散乱システムを操作してX線を検出するための従来の方法及びシステムに応じて、開発されてきた。
【0008】
本明細書に開示されるのは、無機発光物質から作られた無機シンチレータ部分と、有機発光物質から作られた有機シンチレータ部分から作られた有機シンチレータ部分とを備えるシンチレータである。無機シンチレータ部分は、1つ又は複数の無機物質要素を備える。無機物質要素の各々が、外面、及び外面と反対側にある内面を備える。外面は、X線後方散乱システムで走査される対象物に近接するように構成され、よって、対象物によって散乱されたX線光子を受け取るように構成される。有機シンチレータ部は前面を備え、前面の少なくとも一部は、1つ又は複数の無機物質要素の少なくとも1つの内面に当接する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例1を特徴付ける。
【0009】
無機シンチレータ部分は、互いに離間している複数の無機物質要素を更に備える。複数の無機物質要素は、有機シンチレータ部分の前面の対応する離間した第1のセクション上に配置される。有機シンチレータ部分の前面の第2のセクションには、無機物質要素がない。この段落の上述の主題は、本開示の実施例2を特徴付けており、実施例2は上記の実施例1による主題も含む。
【0010】
有機シンチレータ部分の前面の複数の離間した第1のセクションは、無機発光物質のない有機シンチレータ部分の前面の第2のセクションから凹んでいる。この段落の上述の主題は、本開示の実施例3を特徴付けており、実施例3は上記の実施例2による主題も含む。
【0011】
無機シンチレータ部分は、有機シンチレータ部分の前面の実質的にすべての上に配置された無機物質要素を備える。この段落の上述の主題は、本開示の実施例4を特徴付けており、実施例4は上記の実施例1による主題も含む。
【0012】
無機発光物質は、有機発光物質の屈折率とは異なる屈折率を有する。この段落の上述の主題は本開示の実施例5を特徴付けており、実施例5は上記の実施例1から4のいずれか1つによる主題も含む。
【0013】
シンチレータは、第2の無機発光物質から作られた第2の無機シンチレータ部分を更に備える。有機シンチレータ部分は、前面と反対側の裏面を更に備える。第2の無機シンチレータ部分は、有機シンチレータ部分の裏面上に配置される。この段落の上述の主題は、本開示の実施例6を特徴付けており、実施例6は上記の実施例1から5のいずれか1つによる主題も含む。
【0014】
無機発光物質及び第2の無機発光物質は、同一である。この段落の上述の主題は、本開示の実施例7を特徴付けており、実施例7は上記の実施例6による主題も含む。
【0015】
シンチレータは、第3の無機発光物質から作られた第3の無機シンチレータ部分を備える。有機シンチレータ部分は、前面と裏面との間を延びる1つ又は複数の側面を更に備える。第3の無機シンチレータ部分は、有機シンチレータ部分の1つ又は複数の側面に配置される。この段落の上述の主題は、本開示の実施例8を特徴付けており、実施例8は上記の実施例6又は7による主題も含む。
【0016】
有機発光物質は、プラスチック及びポリウレタンの1つ又は複数を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例9を特徴付けており、実施例9は上記の実施例1から8のいずれか1つによる主題も含む。
【0017】
無機発光物質が、ヨウ化鉛(PbI2)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)、及びヨウ化セシウム(CsI)の1つ又は複数を含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例10を特徴付けており、実施例10は上記の実施例1から9のいずれか1つによる主題も含む。
【0018】
1つ又は複数の無機物質要素の各々は、外面と内面との間に画定された厚さを有する。厚さは、X線後方散乱システムによって放出されるX線のエネルギーに対応する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例11を特徴付けており、実施例11は上記の実施例1から10のいずれか1つによる主題も含む。
【0019】
有機シンチレータ部分は、前面と反対側の裏面を更に備える。有機シンチレータ部分が、前面と裏面との間に画定される厚さで構成される。厚さは、X線後方散乱システムで使用されるX線のエネルギーに対応する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例12を特徴付けており、実施例12は上記の実施例1から11のいずれか1つによる主題も含む。
【0020】
有機シンチレータ部分が、無機シンチレータ部分112を光電子増倍管に連結する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例13を特徴付けており、実施例13は上記の実施例1から12のいずれか1つによる主題も含む。
【0021】
加えて、本明細書に開示されるのは、シンチレータを生産する方法である。この方法は、有機発光物質の層を基板上に配置することを含む。有機発光物質の層は、基板に隣接した裏面、及び前面を備える。有機発光物質の層は、前面に複数の空隙を画定する。この方法はまた、1つ又は複数の無機物質要素を複数の空隙の1つ又は複数内に配置することを含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例14を特徴付ける。
【0022】
有機発光物質の層を基板上に配置することは、前面の複数の位置である量の有機発光物質を除去することを含む。除去された有機発光物質の量が、前面に複数の空隙を画定する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例15を特徴付けており、実施例15は上記の実施例14による主題も含む。
【0023】
複数の空隙は、1ミクロンと100ミクロンとの間の厚さを有する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例16を特徴付けており、実施例16は上記の実施例14及び15のいずれかによる主題も含む。
【0024】
有機発光物質の層は、前面と裏面との間に画定される厚さを有する。有機発光物質の層の厚さは、0.5インチと10インチとの間である。この段落の上述の主題は、本開示の実施例17を特徴付けており、実施例17は上記の実施例14から16のいずれかによる主題も含む。
【0025】
更に本明細書に開示されるのは、X線後方散乱システムの操作方法である。この方法は、X線後方散乱システムのX線管を介して、X線を対象物に向かって送信することを含む。この方法はまた、X線後方散乱システムのシンチレータを介して、対象物によって散乱された1つ又は複数のX線を検出することを含む。シンチレータは、無機発光物質から作成された無機シンチレータ部分と、有機発光物質から作られた有機シンチレータ部分とを備える。無機発光物質は、1つ又は複数の無機物質要素を含む。1つ又は複数の無機物質要素の各無機物質要素は、対象物に近接する外面と、外面の反対側の内面とを含む。有機シンチレータ部は前面を備え、前面の少なくとも一部は、1つ又は複数の無機物質要素の少なくとも1つの内面に当接する。この段落の上述の主題は、本開示の実施例18を特徴付ける。
【0026】
対象物によって散乱された1つ又は複数のX線光子を検出することは、無機シンチレータ部分を介して、1つ又は複数のX線光子の少なくとも1つを受け取ることを含む。対象物によって散乱された1つ又は複数のX線光子を検出することはまた、1つ又は複数のX線光子の少なくとも1つを受け取ることに応じて、シンチレータ内で光電子放出を生成することを含む。対象物によって散乱された1つ又は複数のX線光子を検出することは、X線後方散乱システムの光電子増倍管を介して、光電子放出を検出することを更に含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例19を特徴付けており、実施例19は上記の実施例18による主題も含む。
【0027】
この方法は、送信すること及び検出することに基づき、イメージングデバイスに、対象物のX線イメージを生成するために有用な情報を提供することを更に含む。この段落の上述の主題は、本開示の実施例20を特徴付けており、実施例20は上記の実施例18又は19による主題も含む。
【0028】
記載される本開示の主題の特徴、構造、利点、及び/又は特性は、1つ又は複数の実施例及び/又は実施態様において、任意の好適な様態で組み合わされうる。後述の説明では、本開示の主題の実施例の網羅的な理解を促すために、多数の具体的な詳細事項が提示される。当業者は、特定の実施形態及び/又は実施態様の具体的な特徴、詳細事項、構成要素、材料、及び/又は方法のうちの1つ又は複数がなくとも本開示の主題が実行されうることを認識するだろう。他の事例としては、ある種の実施例、実施態様及び/又は実施態様において、全ての実施例、実施形態又は実施態様に存在するわけではない追加の特徴及び利点が認められよう。更に、場合によっては、本開示の主題の態様を不明瞭にしないよう、周知の構造、材料、又は動作は、図示されていないか、又は、詳細に説明されていない。本開示の主題の特徴及び利点は、以下の説明及び付随する特許請求の範囲から、より一層自明となるか、又は、以下に明記するように主題を実行することで理解されうる。
【0029】
本主題の利点をより容易に理解しうるように、上記で概説した本主題が、付随する図面に示される具体的な実施例を参照することによって、一層詳細に説明される。これらの図面は主題の典型的な実施例を単に示していると理解し、よって、それらがその範囲を限定していると見なすべきではない。図面を使用することにより、主題が追加的な具体性及び詳細とともに記載され説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の1つ又は複数の実施例による、部品を検査するX線後方散乱システムの概略斜視図である。
【
図2a】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2b】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2c】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2d】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2e】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2f】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2g】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図2h】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の側面図である。
【
図3a】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の上面図である。
【
図3b】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の上面図である。
【
図3c】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の上面図である。
【
図3d】
図1のX線後方散乱システムのシンチレータの実施例の上面図である。
【
図4】本開示の1つ又は複数の実施例による、シンチレータの側面図からの、シンチレータを製造するプロセスの概略フロー図である。
【
図5】本開示の1つ又は複数の実施例による、シンチレータを製造する方法のフロー図である。
【
図6】本開示の1つ又は複数の実施例による、X線後方散乱システムの操作方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
この明細書を通じての「1つの実施例(one example/an example)」又は類似の文言への言及は、実施例に関連して説明される詳細な特徴、構造、又は特性が、本開示の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。この明細書を通じての「1つの実施例では(in one example/in an example)」という表現又は類似の文言の出現は、全て同一の実施例を意味することもあるが、必ずしもそうではない。同様に、「実施態様(implementation)」という用語の使用は、本開示の1つの又は複数の実施例に関連して説明される詳細な特徴、構造、又は特性を有する1つの実施態様を意味するが、明示的な相互関係が別途示されない限り、1つの実施態様は1つの又は複数の実施例に関連付けられうる。
【0032】
本明細書に開示されるのは、有機シンチレータ部分及び無機シンチレータ部分を各々が有するシンチレータである。無機シンチレータ部分は、有機シンチレータ部分の前面のすべて又は一部の上に配置された無機発光物質を含む。更に、いくつかの実施例では、無機シンチレータ部分はまた、有機シンチレータ部分の裏面及び/又は側面上に配置される。
【0033】
無機発光物質は、有機発光物質の前面に埋め込まれうる。例えば、シンチレータを製造するプロセスは、有機発光物質の層を基板上に配置することを含み、有機発光物質の層は、その前面に複数の空隙を画定する。このプロセスは、次いで、1つ又は複数の無機物質要素を複数の空隙内に配置すること、したがって、無機物質要素を、有機発光物質の層の前面に埋め込むことを含む。
【0034】
同じ電源で動作する従来のX線後方散乱システムと比較すると、本明細書に記載の1つ又は複数のシンチレータを有するX線後方散乱システムは、比較的高いエネルギー及び/又は比較的低いエネルギーを有する散乱X線からの追加のエネルギーを吸収することに基づいて、増加した量の光電子放出を検出しうる。これを使用して、解像度が向上したX線画像を生成することができる。加えて、類似の解像度のX線画像を生成する従来のX線後方散乱システムと比較すると、本明細書に記載のX線後方散乱システムは、電力消費が少なく、製造コストが低く、及び/又はシステムのサイズ及び重量に基づき、携帯性が良好でありうる。
【0035】
図1を参照すると、いくつかの実施形態によれば、本開示の1つ又は複数の実施例による、X線後方散乱システム102を実施することができる非破壊検査システム100が本明細書に開示される。X線後方散乱システム102は、X線管104などのX線源を含む。X線管104は、X線エミッタ106と、放出されたX線がX線管104を出て走査用の対象物に向かうことができる開孔108とを含みうる。
【0036】
X線後方散乱システム102はまた、1つ又は複数のシンチレータ110を含む。1つ又は複数のシンチレータ110は、ヨウ化鉛(PbI2)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)、及びヨウ化セシウム(CsI)のうちの1つ又は複数などの無機発光物質から作られた無機シンチレータ部分112を含む。1つ又は複数のシンチレータ110はまた、プラスチック、ポリウレタン、又は炭素系材料などの有機発光物質から作られた有機シンチレータ部分114を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、無機発光物質は、有機発光物質の屈折率とは異なる屈折率を有する。これにより、X線光子122は、無機シンチレータ部分112と有機シンチレータ部分114との間の界面に当たると、それらのベクトルを変化させうる。例えば、X線光子122の1つ又は複数は、無機シンチレータ部分112内で再び反射しうる。追加的に又は代替的には、X線光子122の1つ又は複数は、有機シンチレータ部分114を透過し、透過するとその軌道を変更することがある。ベクトルの変化により、シンチレータ110がX線光子122からのエネルギーを吸収し、以下に記載されるように、PMT116による検出のために光電子が放出されうる。
【0038】
X線後方散乱システム102はまた、シンチレータ110に連結された光電子増倍管(PMT)116を含む。例えば、PMT116は、有機シンチレータ部分114に連結され、シンチレータ部分114は、PMT116と共に無機シンチレータ部分112に連結される。集合的に、シンチレータ110及びPMT116は、検出器として定義されうる。
【0039】
X線後方散乱システム102の例示的工程において、X線エミッタ106は、電源から引き出され、開孔108を介して、対象物120に向かってX線118を放射する。対象物120は、使用前又は使用後の部品(例えば、構成要素、デバイス、アセンブリなど)である。更に、対象物120は、検査のためにより大きなアセンブリから取り外すことができるか、又はより大きなアセンブリ上若しくはその中のその場で検査されうる。X線118が対象物120の構成要素と衝突するときに、X線118が回折し、その結果、回折されたX線光子122の一部が1つ又は複数のシンチレータ110に向かって移動する。
【0040】
回折されたX線光子122がシンチレータ110の外面に当たると、回折されたX線光子122の少なくとも一部は、有機シンチレータ部分114に当たる前に、無機シンチレータ部分112に進入する。無機発光物質112に進入する一組の回折されたX線光子122は、有機シンチレータ部分114及び無機シンチレータ部分112の一方又は両方の粒子にエネルギーを伝達し、次に、PMT116によって検出される光電子放出を解放する。このプロセスは、回折されたX線光子122からエネルギーを吸収するシンチレータ110として説明することができる。シンチレータ110は、無機シンチレータ部分112及び有機シンチレータ部分114を含むので、シンチレータ110は、比較的高いエネルギー及び/又は比較的低いエネルギーを有する回折されたX線光子122からエネルギーを吸収する可能性が高い。
【0041】
次に、PMT116は、光電子放出の検出に基づいて、非破壊検査システム100の画像化デバイス124に情報を提供しうる。イメージングデバイス124は、対象物120のX線画像126を生成するために使用可能である。情報は、検出された光電子放出の総数又は光電子放出の検出に基づく明度の表示を含みうる。総数又は明度はまた、対象物120の位置に関連付けられてもよい。例えば、総数又は明度は、X線118が方向付けられる対象物120の位置に関連付けられてもよい。情報は、X線118が方向付けられる対象物120の複数の位置のうちのそれぞれに各々が関連付けられた複数の総数又は明度を更に含みうる。この関連付けは、PMT116が光電子放出を検出する時間、及び検出時にX線118が方向付けられる対象物120の位置の表示に基づいて決定されうる。
【0042】
図2a-2hは、シンチレータ110に類似するシンチレータの例の側面図を示しており、類似の番号は類似の要素を指している。
図2a-2hに示される様々なシンチレータは、無機シンチレータ部分112及び有機シンチレータ部分114の様々な例のいくつかを示すのに役立つ。
【0043】
図2aを参照すると、1つの実施例によれば、シンチレータ110aの無機シンチレータ部分112は、無機物質要素202を含む。無機物質要素202は、外面204及び内面206を備え、内面206は外面204の反対側にある。外面204は、X線後方散乱システム102で走査される対象物120に近接するように構成され、よって、外面204は、対象物120によって散乱されたX線光子122を受け取るように構成される。無機物質要素202は、外面204と内面206との間に画定される厚さT1を有する。厚さT1は、X線後方散乱システム102によって放出されるX線のエネルギーに対応するように選択されうる。いくつかの実施形態では、厚さT1は、1ミクロンと100ミクロンとの間である。特に、厚さT1は約10ミクロンでありうる。
【0044】
シンチレータ110aの有機シンチレータ部分114は、前面208及び裏面210を備えr、裏面210は、前面208の反対側にある。前面208の少なくとも一部は、無機物質要素202の内面206に当接する。有機シンチレータ部分114は、前面208と裏面210との間に画定される厚さT2を有する。厚さT2は、X線後方散乱システム102によって放出されるX線118のエネルギーに対応するように選択されうる。いくつかの実施形態では、厚さT2は、0.5インチと10インチとの間である。特に、厚さT1は、約1インチでありうる。
【0045】
図2bを参照すると、シンチレータ110bの別の例は、有機シンチレータ部分114の複数の表面上に配置された複数の無機シンチレータ部分を含む。
【0046】
有機シンチレータ部分114の前面208に配置された無機シンチレータ部分202に加え、シンチレータ110bは、第2の無機発光物質から作られ、有機シンチレータ部分114の裏面210に配置された第2の無機シンチレータ部分212を含みうる。追加的に又は代替的には、シンチレータ110bは、第3の無機発光物質から作られ、有機シンチレータ部分114の1つ又は複数の側面216に配置された第3の無機シンチレータ部分214を含みうる。側面216は、前面208と裏面210との間を延びるいずれか又はすべての表面を含みうる。
【0047】
第1の無機発光物質及び第2の無機発光物質は、同一であってもよい。追加的に又は代替的には、第1及び第3の無機発光物質は同一であってもよく、第2及び第3の無機発光物質は同一であってもよく、又は発光物質の各々が同一であってもよい。他の実施形態では、無機発光物質の各々は異なっていてもよい。
【0048】
図2a及び
図2bに示すシンチレータ110aの第1の例及びシンチレータ110bの第2の例では、無機シンチレータ部分112は、有機シンチレータ部分114の前面208の実質的にすべての上に配置された無機物質要素202を含む。しかしながら、下記で検討される実施形態では、無機シンチレータ部分112は、複数の無機物質要素202を備え、前面208の一部のみが複数の無機物質要素202の内面206に当接する。
【0049】
図2c-2hを参照すると、シンチレータ110b-110hの無機シンチレータ部分112は、複数の無機物質要素202を備える。無機物質要素202の各々は、対象物120に近接するように構成された外面204と、外面と反対側の内面206とを含む。図示されたように、無機物質要素202の各々は、互いに離間している。無機物質要素202は、無機物質要素202のすべて又は一部に共通しうるそれぞれの直径(D)を有している。
【0050】
有機シンチレータ部分114の前面208は、1つ又は複数の離間した第1のセクション218及び1つ又は複数の第2のセクション220を備え、これらの第2のセクション220は、連結されてもよく、離間していてもよい。無機物質要素202は、有機シンチレータ部分114の前面208の対応する離間した第1のセクション218上に配置される。有機シンチレータ部分114の前面208の第2のセクション220には、無機物質要素202がない。
【0051】
図2cを参照すると、別の実施例によれば、シンチレータ110cは、有機シンチレータ部分114に埋め込まれた複数の無機シンチレータ要素202を備える。前面208の1つ又は複数の離間した第1のセクション218は、前面208の1つ又は複数の第2のセクション220から凹んでいる。要するに、厚さT2は、裏面と1つ又は複数の離間した第1のセクション218との間の厚さよりも、裏面と1つ又は複数の第2のセクション220との間でより大きい。更に、無機シンチレータ要素202の1つ又は複数の外面204は、概して、前面208の1つ又は複数の第2のセクション220と同一平面上にありうる。いくつかの代替例では、追加の組の無機シンチレータ要素202が、破線で示されるように、有機シンチレータ部分114の裏面210に埋め込まれている。
【0052】
シンチレータ110cの無機シンチレータ要素202は、例えば、円筒形又は長方形のプリズムでありうる。
【0053】
図2dを参照すると、別の例によれば、シンチレータ110dは、前面208の概して平坦な部分に配置された複数の無機シンチレータ要素202を備える。前面208の1つ又は複数の離間した第1のセクション218は、概して、1つ又は複数の離間している第1のセクションの間の前面208の1つ又は複数の第2のセクション220と同一平面上にある。
【0054】
図2eを参照すると、さらに別の例によれば、シンチレータ110eは、有機シンチレータ部分114に部分的に埋め込まれた複数の無機シンチレータ要素202を備える。前面208の1つ又は複数の離間した第1のセクション218は、前面208の1つ又は複数の第2のセクション220から凹んでいる。しかしながら、シンチレータ110cとは対照的に、無機シンチレータ要素202の外面204は、1つ又は複数の第2のセクション220から外に向かって延びる(すなわち、1つ又は複数の第2のセクション220は、外面204から凹んでいる)。
【0055】
図2fを参照すると、更なる例によれば、シンチレータ110fは、有機シンチレータ部分114に埋め込まれた複数の無機シンチレータ要素202を備える。無機シンチレータ要素202の各々は、外面204から内面206に向かって減少する直径Dを有する。換言すれば、無機シンチレータ要素202は、外面204及び内面206の一方又は両方に直交しない角度付きの側面を有する。これらの角度付きの側面は、無機シンチレータ要素202を通過するX線光子122が、X線光子122の経路に直交しない表面で有機シンチレータ部分114に当たる可能性を高めうる。これは、X線光子122がシンチレータ114を通ってより長い距離を移動する可能性を高め、同様に、シンチレータ110がX線光子122からエネルギーを吸収し、検出可能な光電子放出を生成する可能性を高める。
【0056】
シンチレータ110fの無機シンチレータ要素202は、例えば、円錐台状又は台形のプリズムでありうる。
【0057】
図2gを参照すると、別の実施例によれば、シンチレータ110gは、有機シンチレータ部分114に埋め込まれた複数の無機シンチレータ要素202を備える。シンチレータ110fの無機シンチレータ要素202と同様に、シンチレータ110gの無機シンチレータ要素202の各々は、外面204から内面206に向かって減少する直径Dを有する。しかしながら、対照的に、シンチレータ110gの内面206は、外面204に概して平行である表面ではなく、エッジ又は点である。
【0058】
シンチレータ110gの無機物質要素202は、例えば、例えば、円錐形又は三角形のプリズムでありうる。
【0059】
図2hを参照すると、別の例によれば、シンチレータ110hは、有機シンチレータ部分114に部分的に埋め込まれた複数の無機シンチレータ要素202を備える。シンチレータ110fの無機シンチレータ要素202と同様に、シンチレータ110gの無機シンチレータ要素202の各々は、外面204から内面206に向かって減少する直径Dを有する。しかしながら、対照的に、無機シンチレータ要素202は、概して均一な直径を有する部分を含む。概して均一な直径を有する部分は、有機シンチレータ部分114に埋め込まれていない無機シンチレータ要素202の部分(すなわち、有機シンチレータ部分114の前面208の第2のセクション220から外に向かう部分)でありうる。
【0060】
図3a-3dは、X線後方散乱システム102のシンチレータでありうる様々なシンチレータ110iから110lの非限定的な例の上面図を示す。シンチレータ110i-110lの1つ又は複数の態様は、シンチレータ110a-110hの1つ又は複数の態様と組み合わせてもよい。
【0061】
図3aを参照すると、別の実施例によれば、シンチレータ110iは、外面204を有し、かつ有機シンチレータ部分114(
図2a-2hに示される)の前面208の実質的にすべての上に配置された、無機物質要素202を備える。無機物質要素202の外面204は、直径D及び幅W1を有する。
【0062】
図3bを参照すると、別の例によれば、シンチレータ110jは、外面204を有しており、かつ有機シンチレータ部分114(
図2a-2hに示される)の前面208の実質的にすべての上に配置された、無機物質要素202を含む。シンチレータ110iでのように、無機物質要素202の外面204は、直径D及び幅W1を有する。
【0063】
有機シンチレータ部分114(
図2a-2hに示される)の前面208に配置された無機シンチレータ部分202に加えて、シンチレータ110jは、有機シンチレータ部分114の1つ又は複数の側面216上に配置された、第3の無機発光物質で作られた、第3の無機シンチレータ部分214を含む。側面216は、前面208と裏面210との間を延びるいずれか又はすべての表面を含みうる。
【0064】
図3cを参照すると、別の実施例によれば、シンチレータ110kは、外面204を有しており、かつ有機シンチレータ部分114の前面208の離間した第1のセクション218(
図2a-2hに示される)上に配置された、複数の無機物質要素202を備える。前面208の第2のセクション220には、無機物質要素202がない。
【0065】
無機物質要素202は、直径D及び幅W1を有し、これは、すべての無機物質要素202について同一でありうる。代替的には、直径D及び幅W1のうちの1つ又は複数は、無機物質要素202のそれぞれのもの又はグループに対して異なっていてもよい。有機シンチレータ部分114は、無機物質要素202の幅W1よりも大きくてよい幅W2を有する。
【0066】
シンチレータ110kの無機物質要素202は、例えば、円筒形又は円錐形でありうる。追加的又は代替的には、無機物質要素202は、有機シンチレータ部分114に埋め込まれるか、又は部分的に埋め込まれてもよい。
【0067】
無機物質要素202は、有機シンチレータ部分114の前面208全体に均一に、ランダムに、又は異なる所定の密度で分布されうる。例えば、無機物質要素202は、X線源に最も近いシンチレータ110kの位置に比較的高密度で、かつX線源から最も遠いシンチレータ110の位置に比較的低密度で分布されうる。
【0068】
図3dを参照すると、別の実施例によれば、シンチレータ110lは、外面204を有しており、かつ有機シンチレータ部分114の前面208の離間した第1のセクション218(
図2a-2hに示される)上に配置された、複数の無機物質要素202を備える。前面208の第2のセクション220には、無機物質要素202がない。
【0069】
シンチレータ110kの無機物質要素202と同様に、シンチレータ110lの無機物質要素202は、すべての無機物質要素202について同一でありうる直径D及び幅W1を有する。代替的には、直径D及び幅W1のうちの1つ又は複数は、無機物質要素202のそれぞれのもの又はグループに対して異なっていてもよい。有機シンチレータ部分114は、無機物質要素202の幅W1よりも大きくてよい幅W2を有する。
【0070】
シンチレータ110kの無機物質要素202は、例えば、長方形又は台形のプリズムでありうる。追加的又は代替的には、無機物質要素202は、有機シンチレータ部分114に埋め込まれるか、又は部分的に埋め込まれてもよい。更に、無機物質要素202は、有機シンチレータ部分114の前面208全体に均一に、ランダムに、又は異なる所定の密度で分布されうる。
【0071】
ここで、
図4を参照すると、特定の実施例によれば、シンチレータ110を生産するプロセス400が示される。本明細書に開示されるシンチレータ110の実施例の任意の1つ又は複数を生産するために、プロセス400が使用されうる。プロセス400は、オプションで、基板404上に有機発光物質の層402を配置することを含む。層402は、前面406と裏面408との間に画定された厚さ(T2)を有し、これは一般に均一である。いくつかの実施態様では、有機発光物質の層402の厚さT2は、0.5インチと10インチとの間である。特に、厚さT2は、約1インチでありうる。
【0072】
次に、プロセス400は、有機発光物質の層402の前面406内に複数の空隙410を形成することを含む。複数の空隙を形成するために、有機発光物質のいくつかは、層402の前面406の複数のセクションから(例えば、エッチングを介して)除去されうる。代替的には、層402の前面406の残りのセクションに空隙が形成されるように、追加の有機発光物質が、層402の前面406の複数のセクションに配置されてもよい。空隙410は、有機発光物質の層402の厚さT2よりも薄い厚さT3を有する。いくつかの実施態様では、空隙410の各々は、実質的に同じ厚さT3を有し、他の実施形態では、空隙は、異なる厚さT3を有する。空隙410は、1ミクロンと100ミクロンとの間の厚さを有しうる。より具体的には、空隙410は、約10ミクロンの厚さを有しうる。
【0073】
プロセス400は、複数の空隙412のうちの1つ又は複数の中に、厚さT1を有する1つ又は複数の無機物質要素412を配置することを含む。いくつかの実施態様では、このステップは、有機発光物質の層402の前面406全体に無機発光物質の層を配置し、次に無機発光物質の一部を除去して、離間している無機物質要素412が有機発光物質の層402に埋め込まれたままにすることを含む。
【0074】
図5は、ある実施例による、シンチレータ110を生産するための方法500を示す。方法500は、本明細書に開示されるシンチレータ110の実施例のうちの任意の1つ又は複数を生産する際に実行される。方法500は、基板404上に有機発光物質の層402を配置すること(ブロック502)を含み、層402は、層402の前面406に複数の空隙410を画定する。いくつかの実施態様では、有機発光物質の層402は、基板404に隣接する裏面210、408、及び前面208、406を含む。この工程(ブロック502)は、オプションで、複数の空隙410を提供するために、前面208、406の複数の位置である量の有機発光物質を除去すること(ブロック502a)を含む。
【0075】
方法500は、複数の空隙410のうちの1つ又は複数の中に1つ又は複数の無機シンチレータ要素202、412を配置すること(ブロック504)を更に含む。
【0076】
図6は、X線後方散乱システム102の工程の、ある例による、方法600を示す。方法600は、本明細書に開示されるシンチレータ110の例のうちの任意の1つ又は複数を使用して実行される。方法600は、X線118を対象物120に向かって送信すること(ブロック602)を含む。例えば、方法は、X線後方散乱システム102のX線管104を介して、X線118を対象物120に向かって送信することを含みうる。
【0077】
方法はまた、X線後方散乱システム102のシンチレータ110を介して、対象物120によって散乱された1つ又は複数のX線光子122を検出すること(ブロック604)を含む。シンチレータ110は、本明細書に開示されるシンチレータ110のいずれか1つでありうる。例えば、シンチレータ110は、無機発光物質で作られており、かつ1つ又は複数の無機物質要素202を含む無機シンチレータ部分112を備える。1つ又は複数の無機物質要素202の各無機物質要素202は、対象物120に近接する外面204と、外面204の反対側の内面206とを備える。シンチレータ110はまた、有機発光物質で作られており、かつ前面208を含む有機シンチレータ部分114を備える。前面208の少なくとも一部は、1つ又は複数の無機物質要素202のうちの少なくとも1つの内面206に当接する。
【0078】
検出すること(ブロック604)は、オプションで、無機シンチレータ部分112を介して1つ又は複数のX線光子122のうちの少なくとも1つを受け取ること(ブロック604a)ことを含みうる。検出すること(ブロック604)はまた、1つ又は複数のX線光子122の少なくとも1つを受け取ること(ブロック604)ことに応じて、シンチレータ110内の光電子放出を生成すること604bを含みうる。検出すること(ブロック604)は、X線後方散乱システム102の光電子増倍管116を介して光電子放出を検出すること(604c)をさらに含みうる。
【0079】
この方法は、オプションで、送信すること(ブロック602)及び検出すること(ブロック604)に基づき、対象物120のX線画像(126)を生成するために使用可能な情報を画像化デバイス124に提供すること(ブロック606)を含む。
【0080】
上記の説明において、「上(up)」、「下(down)」、「上側(upper)」、「下側(lower)」、「水平(horizontal)」、「垂直(vertical)」、「左(left)」、「右(right)」、「上方(over)」、「下方(under)」などといった、特定の語が使用されることがある。これらの語は、相互関係について触れている場合、必要に応じて、説明に何らかの明確性をもたらすために使用されている。しかし、これらの語は、絶対的な関係性、位置、及び/又は配向を含意することは意図されていない。例えば、ある対象物に関して、この対象物の上下を逆にするだけのことで、「上側」表面が「下側」表面になりうる。それでも、これは依然として同じ対象物である。更に、「含む(including)」、「備える(comprising)」、「有する(having)」という語、及びこれらの変化形は、「~を含むが、それらに限定されるわけではない(including but not limited to)」ことを(そうではないことが明示的に記載されない限り)意味する。列挙されているアイテムは、これらのアイテムのいずれか又は全てが相互排他的及び/又は相互包括的であることを(そうであることが明示的に記載されない限り)含意しない。「1つの(a/an)」、及び「その/この(前記)」という語も、「1つ又は複数の(one or more)」という意味を(そうではないことが明示的に記載されない限り)表わす。更に、「複数(plurality)」という語は、「少なくとも2つ(at least two)」のことであると定義されうる。
【0081】
加えて、この明細書における、1つの要素が別の要素に「連結される(coupled)」事例は、直接的及び間接的な連結を含みうる。直接的な連結は、1つの要素が別の要素に連結されること、及び、別の要素と何らかの接触を有することであると、定義されうる。間接的な連結は、2つの要素間の連結であって、互いに直接的に接触してはいないが、連結された要素同士の間に1つ又は複数の追加要素を有する連結のことであると、定義されうる。更に、本明細書において、1つの要素を別の要素に固定することは、直接的に固定することと、間接的に固定することとを含みうる。加えて、本明細書で使用されるように、「隣接する(adjacent)」は、必ずしも接触を意味するものではない。例えば、1つの要素は、別の要素に接触することなく隣接しうる。
【0082】
本明細書において、列挙されたアイテムと共に使用される「~のうちの少なくとも1つ(at least one of)」という表現は、列挙されたアイテムのうちの1つ又は複数の種々の組み合わせが使用可能であり、必要とされうるのは列挙されたアイテムのうちの1つだけであることを、意味している。アイテムとは、特定の対象物、物品、又はカテゴリのことでありうる。換言すると、「~のうちの少なくとも1つ」は、アイテムの任意の組み合わせ、又は任意の数のアイテムが列挙された中から使用されうることを意味するが、列挙されたアイテムの全てが必要とされるわけではない。例えば、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、「アイテムA」、「アイテムAとアイテムB」、「アイテムB」、「アイテムAとアイテムBとアイテムC」、又は「アイテムBとアイテムC」を意味しうる。いくつかの場合には、「アイテムA、アイテムB、及びアイテムCのうちの少なくとも1つ」は、例えば、限定するものではないが、「2個のアイテムAと1個のアイテムBと10個のアイテムC」、「4個のアイテムBと7個のアイテムC」、又は他の何らかの好適な組み合わせを意味しうる。
【0083】
別途指示されない限り、「第1」、「第2」などの語は、本明細書では単に符号として使用されており、これらの語が表わすアイテムに、順序的、位置的、又は序列的な要件を課すことを意図するものではない。更に、例えば「第2」のアイテムへの言及は、例えば「第1」の、又はより小さい数がふられたアイテム、及び/又は、例えば「第3」の、又はより大きな数がふられたアイテムの存在を、必要とすることも、排除することもない。
【0084】
本明細書において、特定の機能を実施する「ように構成/設定された(configured to)」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、実際には、いかなる変更も伴わずにその特定の機能を実施することが可能であり、更なる改変の後にその特定の機能を実施する可能性があるにすぎないというものではない。換言すると、特定の機能を実施する「ように構成/設定された」システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、その特定の機能を実施するという目的のために、特に選択され、作り出され、実装され、利用され、プログラムされ、かつ/又は設計される。本明細書で使用される、「ように構成/設定された」という表現は、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアが更なる改変なしで特定の機能を実行することを可能にする、システム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアの特性が存在することを意味する。この開示において、特定の機能を実施する「ように構成/設定され」ていると説明されているシステム、装置、構造、物品、要素、構成要素、又はハードウェアは、追加的又は代替的には、その機能を実施するよう「適合している(adapted to)」、及び/又は、実施するよう「動作可能である(operative to)」とも説明されうる。
【0085】
本明細書に含まれる概略フローチャートは概して、論理フローチャートとして記載されている。そのため、記載の順序及び標識されたステップは、提示されている方法の1つ実施例を示している。図示されている方法の機能、論理、又は、かかる方法の1つ又は複数のステップ若しくはそれらの部分に対する効果において同等である、他のステップ及び方法も想起されうる。加えて、用いられている形式及び記号は、本方法の論理ステップを説明するために提供されており、本方法の範囲を限定するものではないと理解される。フロー図には様々な種類の矢印及び線が用いられうるが、これらは、対応する方法の範囲を限定するものではないと理解される。実際、いくつかの矢印又はその他の接続部は、本方法の論理フローを示すためにのみ使用されうる。例えば、矢印は、図示されている方法の列挙されたステップ同士の間の、不特定の長さの待機時間又はモニタリング時間を示しうる。加えて、特定の方法が発生する順序は、図示されている対応するステップの順序に厳密に従うことも、従わないこともある。
【0086】
本出願の主題は、その本質及び実質的な特性から逸脱することなく、他の具体的な形態において具現化されうる。上述の実施例は、あらゆる観点において、単なる例示であって、限定的なものではないとみなすべきである。特許請求の範囲の目的及び均等範囲に含まれるあらゆる変更は、特許請求の範囲に包含されるものとする。
【0087】
更に、本開示は、以下の条項による実施形態を含む。
【0088】
条項1. X線後方散乱システム(102)で使用するためのシンチレータ(110)であって、
無機発光物質から作られており、かつ1つ又は複数の無機物質要素(202)を含む無機シンチレータ部分(112)であって、1つ又は複数の無機物質要素(202)の各無機物質要素(202)が、
X線後方散乱システム(102)で走査される対象物(120)に近接するように構成されており、かつ対象物(120)から反射されたX線光子(122)を受け取るように構成された外面(204)、及び
外面(204)の反対側の内面(206)
を含む無機シンチレータ部分(112)と、
有機発光物質から作られており、かつ前面(208)を含む有機シンチレータ部分(114)であって、前面(208)の少なくとも一部が、1つ又は複数の無機物質要素(202)の少なくとも1つの内面(206)と当接する、有機シンチレータ部分(114)と
を備えるシンチレータ。
【0089】
条項2. 無機シンチレータ部分(112)が、互いに離間している複数の無機物質要素(202)を更に備え、
複数の無機物質要素(202)が、有機シンチレータ部分(114)の前面(208)の対応する離間した第1のセクション(212)上に配置され、有機シンチレータ部分(114)の前面(208)の第2のセクション(214)には無機物質要素(202)がない、条項1に記載のシンチレータ(110)。
【0090】
条項3. 有機シンチレータ部分(114)の前面(208)の離間した第1のセクション(212)が、無機発光物質のない有機シンチレータ部分(114)の前面(208)の第2のセクション(214)から凹んでいる、条項2に記載のシンチレータ(110)。
【0091】
条項4. 無機シンチレータ部分(114)が、有機シンチレータ部分(114)の前面(208)の実質的にすべての上に配置された無機物質要素(202)を備える、条項1から3のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0092】
条項5. 無機発光物質が、有機発光物質の屈折率とは異なる屈折率を有する、条項1から4のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0093】
条項6. 第2の無機発光物質から作られた第2の無機シンチレータ部分(216)を更に備え、
有機シンチレータ部分(114)が、前面(208)と反対側の裏面(210)を更に備え、
第2の無機シンチレータ部分(216)が、有機シンチレータ部分(114)の裏面(210)上に配置される、条項1から5のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0094】
条項7. 無機発光物質及び第2の無機発光物質が同一である、条項6に記載のシンチレータ(110)。
【0095】
条項8. 第3の無機発光物質から作られた第3の無機シンチレータ部分(218)を更に備え、
有機シンチレータ部分(114)が、前面(208)と裏面(210)との間を延びる1つ又は複数の側面(220)を更に備え、
第3の無機シンチレータ部分(218)が、有機シンチレータ部分(114)の1つ又は複数の側面(220)の上に配置される、条項6又は7に記載のシンチレータ(110)。
【0096】
条項9. 有機発光物質が、プラスチック及びポリウレタンの1つ又は複数を含む、条項1から8のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0097】
条項10. 無機発光物質が、ヨウ化鉛(PbI2)、タングステン酸カルシウム(CaWO4)、及びヨウ化セシウム(CsI)の1つ又は複数を含む、条項1から9のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0098】
条項11. 1つ又は複数の無機物質要素(202)の各々が、外面(204)と内面(206)との間に画定された厚さ(T1)を有し、
厚さ(T1)が、X線後方散乱システム(102)によって放出されるX線のエネルギーに対応する、条項1から10のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0099】
条項12. 有機シンチレータ部分(114)が、前面(208)と反対側の裏面(210)を更に備え、
有機シンチレータ部分(114)が、前面(208)と裏面(210)との間に画定される厚さ(T2)で構成され、
厚さ(T2)が、X線後方散乱システム(102)で使用されるX線のエネルギーに対応する、条項1から11のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0100】
条項13. 有機シンチレータ部分(114)が、無機シンチレータ部分(112)を光電子増倍管(116)に連結する、条項1から12のいずれか一項に記載のシンチレータ(110)。
【0101】
条項14. シンチレータを製造する方法(500)であって、
有機発光物質の層(402)を基板(404)上に配置すること(502)であって、
有機発光物質の層(402)が、基板(404)に隣接した裏面(210)、及び前面(208)を備え、
有機発光物質の層(402)が、前面(208)に複数の空隙(406)を画定する、有機発光物質の層(402)を基板(404)上に配置すること(502)と、
1つ又は複数の無機物質要素(408)を複数の空隙(406)の1つ又は複数内に配置すること(504)と
を含む方法(500)。
【0102】
条項15. 有機発光物質の層(402)を基板(404)上に配置すること(502)が、前面(208)の複数の位置である量の有機発光物質を除去すること(502a)を含み、除去された有機発光物質の量が、前面(208)で複数の空隙(406)を画定する、条項14に記載の方法(500)。
【0103】
条項16. 複数の空隙(406)が、1ミクロンと100ミクロンとの間の厚さ(T3)を有する、条項14又は15に記載の方法(500)。
【0104】
条項17. 有機発光物質の層(402)が、前面(208)と裏面(210)との間に画定される厚さ(T2)を有し、
有機発光物質の層(402)の厚さ(T2)が、1インチと10インチとの間である、条項14から16のいずれか一項に記載の方法(500)。
【0105】
条項18. X線後方散乱システム(102)を操作する方法(600)であって、
X線後方散乱システム(102)のX線管(104)を介して、X線を対象物(120)に向かって送信すること(602)と、
X線後方散乱システム(102)のシンチレータ(110)を介して、対象物(120)によって散乱された1つ又は複数のX線(122)を検出すること(604)と
を含み、
シンチレータ(110)が、
無機発光物質から作られており、かつ1つ又は複数の無機物質要素(202)を含む無機シンチレータ部分(112)を含み、
1つ又は複数の無機物質要素(202)の各無機物質要素(202)が、
対象物(120)に近接する外面(204)、及び外面(204)の反対側の内面(206)と、
有機発光物質から作られており、かつ前面(208)を含む有機シンチレータ部分(114)であって、前面(208)の少なくとも一部が、1つ又は複数の無機物質要素(202)の少なくとも1つの内面(206)と当接する、有機シンチレータ部分(114)と
を備える方法(600)。
【0106】
条項19. 対象物(120)によって散乱された1つ又は複数のX線(122)を検出することが、
無機シンチレータ部分(112)を介して、1つ又は複数のX線(122)の少なくとも1つを受け取ること(604a)と、
1つ又は複数のX線(122)の少なくとも1つを受け取ることに応じて、シンチレータ(110)内で光電子放出を生成すること(604b)と、
X線後方散乱システム(102)の光電子増倍管(116)を介して、光電子放出を検出すること(604c)と
を含む、条項18に記載の方法。
【0107】
条項20. 送信すること(602)及び検出すること(604)に基づき、イメージングデバイス(124)に、対象物(120)のX線イメージ(126)を生成するために有用な情報を提供すること(606)を更に含む、条項18又は19に記載の方法。