(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-06
(45)【発行日】2024-08-15
(54)【発明の名称】ファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
H01S 3/067 20060101AFI20240807BHJP
H01S 3/08 20230101ALI20240807BHJP
H01S 3/11 20230101ALI20240807BHJP
【FI】
H01S3/067
H01S3/08
H01S3/11
(21)【出願番号】P 2020140193
(22)【出願日】2020-08-21
【審査請求日】2023-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 方俊
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大岳
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第03300191(EP,A1)
【文献】特表2014-533428(JP,A)
【文献】特開2005-203430(JP,A)
【文献】特開2006-072029(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0157671(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0275477(US,A1)
【文献】国際公開第2019/023015(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 3/00 - 3/02
H01S 3/04 - 3/0959
H01S 3/10 - 3/102
H01S 3/105 - 3/131
H01S 3/136 - 3/213
H01S 3/23 - 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏波保持ファイバにより構成された第1光ファイバと、
偏波保持ファイバにより構成され、前記第1光ファイバの一端に接続された第2光ファイバと、
偏波保持ファイバにより構成され、前記第1光ファイバの他端に接続された第3光ファイバと、を備え、
前記第1光ファイバは、少なくとも1つの第1部分と、前記第1部分と互い違いに配置された少なくとも2つの第2部分と、を有し、
隣り合う前記第1部分と前記第2部分とは、接続箇所において前記第1部分の速軸が前記第2部分の遅軸に一致するように、互いに接続されており、
前記第1部分の総長さは、前記第2部分の総長さと等しく、
前記第1光ファイバのモードフィールド径は、前記第2光ファイバのモードフィールド径及び前記第3光ファイバのモードフィールド径の各々よりも小さい、ファイバレーザ装置。
【請求項2】
前記第2光ファイバ及び前記第3光ファイバの少なくとも一方は、融着により前記第1光ファイバに接続されている、請求項1に記載のファイバレーザ装置。
【請求項3】
前記第2光ファイバは、第1部分と、第2部分と、を有し、
前記第2光ファイバの前記第1部分は、接続箇所において前記第2光ファイバの前記第1部分の速軸が前記第1光ファイバの遅軸に一致するように、前記第1光ファイバの前記一端に接続されており、
前記第2光ファイバの前記第2部分は、接続箇所において前記第2光ファイバの前記第2部分の速軸と前記第2光ファイバの前記第1部分の速軸との間の角度が0度又は90度以外の角度となるように、前記第2光ファイバの前記第1部分に接続されている、請求項1又は2に記載のファイバレーザ装置。
【請求項4】
前記第3光ファイバは、第1部分と、第2部分と、を有し、
前記第3光ファイバの前記第1部分は、接続箇所において前記第3光ファイバの前記第1部分の速軸が前記第1光ファイバの速軸に一致するように、前記第1光ファイバの前記他端に接続されており、
前記第3光ファイバの前記第2部分は、接続箇所において前記第3光ファイバの前記第2部分の速軸と前記第3光ファイバの前記第1部分の速軸との間の角度が0度又は90度以外の角度となるように、前記第3光ファイバの前記第1部分に接続されている、請求項3に記載のファイバレーザ装置。
【請求項5】
前記第2光ファイバの前記第1部分の長さは、前記第3光ファイバの前記第1部分の長さと等しい、請求項4に記載のファイバレーザ装置。
【請求項6】
前記第2光ファイバは、第1部分を有し、
前記第2光ファイバの前記第1部分は、接続箇所において前記第2光ファイバの前記第1部分の速軸が前記第1光ファイバの遅軸に一致するように、前記第1光ファイバの前記一端に接続されており、
前記第3光ファイバは、第1部分を有し、
前記第3光ファイバの前記第1部分は、接続箇所において前記第3光ファイバの前記第1部分の速軸が前記第1光ファイバの速軸に一致するように、前記第1光ファイバの前記他端に接続されており、
前記第2光ファイバの前記第1部分の長さは、前記第3光ファイバの前記第1部分の長さと等しい、請求項1又は2に記載のファイバレーザ装置。
【請求項7】
偏波保持ファイバにより構成され、前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとの間に接続された第1ブリッジファイバを更に備え、
前記第1ブリッジファイバのモードフィールド径は、前記第1光ファイバのモードフィールド径よりも大きく、且つ前記第2光ファイバのモードフィールド径よりも小さい、請求項1に記載のファイバレーザ装置。
【請求項8】
偏波保持ファイバにより構成され、前記第1光ファイバと前記第3光ファイバとの間に接続された第2ブリッジファイバを更に備え、
前記第2ブリッジファイバのモードフィールド径は、前記第1光ファイバのモードフィールド径よりも大きく、且つ前記第3光ファイバのモードフィールド径よりも小さい、請求項7に記載のファイバレーザ装置。
【請求項9】
前記第1光ファイバは、前記第1部分及び前記第2部分を合計で偶数個有し、
接続箇所における前記第1ブリッジファイバの速軸と前記第1光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における前記第2ブリッジファイバの速軸と前記第1光ファイバの速軸との間の角度との差が90度である、請求項8に記載のファイバレーザ装置。
【請求項10】
前記第1光ファイバは、前記第1部分及び前記第2部分を合計で奇数個有し、
接続箇所における前記第1ブリッジファイバの速軸と前記第1光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における前記第2ブリッジファイバの速軸と前記第1光ファイバの速軸との間の角度との差が0度である、請求項8に記載のファイバレーザ装置。
【請求項11】
接続箇所における前記第1ブリッジファイバの速軸と前記第2光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における前記第2ブリッジファイバの速軸と前記第3光ファイバの速軸との間の角度との差が0度である、請求項9又は10に記載のファイバレーザ装置。
【請求項12】
前記第1ブリッジファイバの長さは、前記第2ブリッジファイバの長さと等しい、請求項8~11のいずれか一項に記載のファイバレーザ装置。
【請求項13】
励起光を出力する光源と、
前記励起光を吸収し、レーザ光を放出する光ファイバと、を更に備え、
前記レーザ光は、前記第1光ファイバ、前記第2光ファイバ及び前記第3光ファイバによって導光される、請求項1~12のいずれか一項に記載のファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファイバレーザ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザ装置として、光ファイバの非線形効果を用いてモードロックを生じさせることにより、超短パルスレーザを発生させるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなファイバレーザ装置では、十分な非線形効果を生じさせるために、ある程度以上の長さの光ファイバを用いる必要がある。そのため、共振器長が長くなり、出力光の周波数を高めること(高繰り返し化)が難しい。また、モードロックを自己開始させるためには共振器の内部パワー密度を十分に高める必要があるが、光ファイバが短いと、光ファイバが長い場合と比べて十分な非線形効果を得るための内部パワー密度が高くなり、高い励起パワーが必要となる。また、ファイバレーザ装置には、良好な波形の光を出力することが求められる。
【0005】
本発明は、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化や低励起パワー化を図ることができるファイバレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のファイバレーザ装置は、偏波保持ファイバにより構成された第1光ファイバと、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバの一端に接続された第2光ファイバと、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバの他端に接続された第3光ファイバと、を備え、第1光ファイバは、少なくとも1つの第1部分と、第1部分と互い違いに配置された少なくとも2つの第2部分と、を有し、隣り合う第1部分と第2部分とは、接続箇所において第1部分の速軸が第2部分の遅軸に一致するように、互いに接続されており、第1部分の長さは、第2部分の総長さと等しく、第1光ファイバのモードフィールド径は、第2光ファイバのモードフィールド径及び第3光ファイバのモードフィールド径の各々よりも小さい。
【0007】
このファイバレーザ装置では、第1光ファイバが、少なくとも1つの第1部分と、第1部分と互い違いに配置された少なくとも2つの第2部分と、を有している。隣り合う第1部分と第2部分とは、接続箇所において第1部分の速軸が第2部分の遅軸に一致するように、互いに接続されている。このような第1光ファイバに光を通すことにより、モードロックを生じさせることできる。また、第1部分の総長さが、第2部分の総長さと等しくなっている。これにより、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。また、第1光ファイバが、少なくとも1つの第1部分及び少なくとも2つの第2部分を有している。これにより、例えば第1光ファイバが2つのファイバ要素のみからなる場合と比べて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の相互作用により出力光の波形が乱れるのを抑制することができる。その結果、良好な波形の光を出力することができる。また、第1光ファイバのモードフィールド径が、第2光ファイバのモードフィールド径及び第3光ファイバのモードフィールド径の各々よりも小さくなっており、第1光ファイバの非線形効果が高められている。これにより、第1光ファイバを短くすることができ、高繰り返し化や低励起パワー化を図ることが可能となる。このように、このファイバレーザ装置によれば、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化や低励起パワー化を図ることができる。
【0008】
第2光ファイバ及び第3光ファイバの少なくとも一方は、融着により第1光ファイバに接続されていてもよい。この場合、部品点数を削減すると共に、製造を容易化することができる。
【0009】
第2光ファイバは、第1部分と、第2部分と、を有し、第2光ファイバの第1部分は、接続箇所において第2光ファイバの第1部分の速軸が第1光ファイバの遅軸に一致するように、第1光ファイバの一端に接続されており、第2光ファイバの第2部分は、接続箇所において第2光ファイバの第2部分の速軸と第2光ファイバの第1部分の速軸との間の角度が0度又は90度以外の角度となるように、第2光ファイバの第1部分に接続されていてもよい。互いに異なるモードフィールド径を有する偏波保持ファイバ同士を互いの速軸間の角度が0度又は90度以外の角度となるように接続することは難しく、歩留まりが低下するおそれがある。これに対し、この構成では、互いに異なるモードフィールド径を有する第1光ファイバと第2光ファイバとが、互いの速軸と遅軸とが一致するように(互いの速軸間の角度が90度となるように)接続される。これにより、第1光ファイバと第2光ファイバとの間の接続を容易化することができ、歩留まりを向上することができる。
【0010】
第3光ファイバは、第1部分と、第2部分と、を有し、第3光ファイバの第1部分は、接続箇所において第3光ファイバの第1部分の速軸が第1光ファイバの速軸に一致するように、第1光ファイバの他端に接続されており、第3光ファイバの第2部分は、接続箇所において第3光ファイバの第2部分の速軸と第3光ファイバの第1部分の速軸との間の角度が0度又は90度以外の角度となるように、第3光ファイバの第1部分に接続されていてもよい。この場合、第1光ファイバと第3光ファイバとの間の接続を容易化することができ、歩留まりを一層向上することができる。
【0011】
第2光ファイバの第1部分の長さは、第3光ファイバの第1部分の長さと等しくてもよい。この場合、第2光ファイバの第1部分、及び第3光ファイバの第1部分について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0012】
第2光ファイバは、第1部分を有し、第2光ファイバの第1部分は、接続箇所において第2光ファイバの第1部分の速軸が第1光ファイバの遅軸に一致するように、第1光ファイバの一端に接続されており、第3光ファイバは、第1部分を有し、第3光ファイバの第1部分は、接続箇所において第3光ファイバの第1部分の速軸が第1光ファイバの速軸に一致するように、第1光ファイバの他端に接続されており、第2光ファイバの第1部分の長さは、第3光ファイバの第1部分の長さと等しくてもよい。この場合、第1光ファイバと第2光ファイバとの間の接続、及び第1光ファイバと第3光ファイバとの間の接続を容易化することができる。また、第2光ファイバの第1部分、及び第3光ファイバの第1部分について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0013】
本発明のファイバレーザ装置は、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバと第2光ファイバとの間に接続された第1ブリッジファイバを更に備え、第1ブリッジファイバのモードフィールド径は、第1光ファイバのモードフィールド径よりも大きく、且つ第2光ファイバのモードフィールド径よりも小さくてもよい。互いに異なるモードフィールド径を有する偏波保持ファイバ同士を接続すると、接続箇所において損失が発生し易い。これに対し、この構成では、第1光ファイバと第2光ファイバとの間に、第1光ファイバのモードフィールド径よりも大きく且つ第2光ファイバのモードフィールド径よりも小さいモードフィールド径を有する第1ブリッジファイバが接続されている。これにより、接続箇所における損失を低減することができる。
【0014】
本発明のファイバレーザ装置は、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバと第3光ファイバとの間に接続された第2ブリッジファイバを更に備え、第2ブリッジファイバのモードフィールド径は、第1光ファイバのモードフィールド径よりも大きく、且つ第3光ファイバのモードフィールド径よりも小さくてもよい。この場合、接続箇所における損失を一層低減することができる。
【0015】
第1光ファイバは、第1部分及び第2部分を合計で偶数個有し、接続箇所における第1ブリッジファイバの速軸と第1光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における第2ブリッジファイバの速軸と第1光ファイバの速軸との間の角度との差が90度であってもよい。この場合、第1ブリッジファイバ及び第2ブリッジファイバについて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0016】
第1光ファイバは、第1部分及び第2部分を合計で奇数個有し、接続箇所における第1ブリッジファイバの速軸と第1光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における第2ブリッジファイバの速軸と第1光ファイバの速軸との間の角度との差が0度であってもよい。この場合、第1ブリッジファイバ及び第2ブリッジファイバについて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0017】
接続箇所における第1ブリッジファイバの速軸と第2光ファイバの速軸との間の角度と、接続箇所における第2ブリッジファイバの速軸と第3光ファイバの速軸との間の角度との差が0度であってもよい。この場合、第2光ファイバ及び第3光ファイバについて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0018】
第1ブリッジファイバの長さは、第2ブリッジファイバの長さと等しくてもよい。この場合、第1ブリッジファイバ及び第2ブリッジファイバについて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0019】
本発明のファイバレーザ装置は、励起光を出力する光源と、励起光を吸収し、レーザ光を放出する光ファイバと、を更に備え、レーザ光は、第1光ファイバ、第2光ファイバ及び第3光ファイバによって導光されてもよい。この場合、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化や低励起パワー化を図ることができファイバレーザ装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係るファイバレーザ装置の構成図である。
【
図4】パルス波形及び瞬時波長を示すグラフである。
【
図5】スペクトル波形及び位相を示すグラフである。
【
図6】(a)及び(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。
【
図7】第1変形例のファイバレーザ装置の構成図である。
【
図8】第1変形例のモードロック部の模式図である。
【
図9】(a)及び(b)は、ブリッジファイバの接続態様を説明するための図である。
【
図10】
図7の構成により取得されたスペクトル波形を示すグラフである。
【
図11】(a)及び(b)は、
図7の構成により取得された周波数スペクトルを示すグラフである。
【
図12】比較例のファイバレーザ装置の構成図である。
【
図13】
図12の構成により取得されたスペクトル波形を示すグラフである。
【
図14】(a)及び(b)は、
図12の構成により取得された周波数スペクトルを示すグラフである。
【
図15】第2変形例のファイバレーザ装置の構成図である。
【
図16】
図15の構成により取得されたスペクトル波形を示すグラフである。
【
図17】
図15の構成により取得されたパルス波形及び瞬時波長を示すグラフである。
【
図18】
図15の構成においてモードロックが生じた角度領域を示す図である。
【
図19】第3変形例のファイバレーザ装置の構成図である。
【
図20】
図19の構成により取得されたスペクトル波形を示すグラフである。
【
図21】(a)及び(b)は、
図19の構成により取得された周波数スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[ファイバレーザ装置]
【0023】
図1に示されるように、ファイバレーザ装置1は、光源11と、WDM(Wavelength Division Multiplexing)(波長分割多重)カプラ12と、ドープファイバ13と、アイソレータ14と、モードロック部15と、偏波コントローラ16と、偏光子17と、出力カプラ18と、ASE(Amplified Spontaneous Emission)(自然放射増幅光)フィルタ19と、を備えている。また、ファイバレーザ装置1は、それらの要素同士を接続するための複数の光ファイバ21~28を更に備えている。モードロック部15は、第1光ファイバ30と、第2光ファイバ40と、第3光ファイバ50と、を有している。
【0024】
ドープファイバ13、光ファイバ21~28、第1光ファイバ30、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50の各々は、偏波保持(PM:Polarization Maintaining)ファイバにより構成されている。偏波保持ファイバは、互いに直交する速軸と遅軸との間で屈折率を異ならせることにより、伝送する光の偏波面保持特性が高められた光ファイバである。この例では、ドープファイバ13、光ファイバ21~28、第1光ファイバ30、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50の各々は、光弾性効果を用いた応力付与型の偏波保持ファイバにより構成されているが、非軸対称なコア形状を有する構造型の偏波保持ファイバにより構成されてもよい。
【0025】
図2は、第1光ファイバ30の断面図である。第1光ファイバ30は、互いに直交する速軸X1及び遅軸X2を有している。第1光ファイバ30は、コア30aと、クラッド30bと、一対の応力付与材30cと、を備えている。コア30aは、第1光ファイバの31の中心に位置している。コア30aの屈折率は、クラッド30bの屈折率よりも高い。クラッド30bは、コア30aを囲んでいる。一対の応力付与材30cは、遅軸X2上におけるコア30aの両側に位置するように、クラッド30b内に配置されている。
【0026】
第1光ファイバ30では、応力付与材30cの熱収縮率がクラッド30bの熱収縮率よりも大きいことを利用してコア30aに引張応力を作用させることにより、コア30aに複屈折率性を持たせている。この屈折率差により、第1光ファイバ30内を光が伝搬する場合、速軸X1に沿って伝搬する成分は、遅軸X2に沿って伝搬する成分よりも速く伝搬する。ドープファイバ13、光ファイバ21~28、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50についても第1光ファイバ30と同様の断面構造を有している。
【0027】
再び
図1を参照して、光源11は、励起光L1を出力する。光源11は、例えば、979nmの波長のレーザ光を出力するレーザダイオードである。WDMカプラ12は、光源11から光ファイバ21を介して入力された励起光L1を反射して光ファイバ22に出力すると共に、光ファイバ28を介して入力された信号光L2を透過させて光ファイバ22に出力する。
【0028】
ドープファイバ13は、光ファイバ22を介して入力された励起光L1を吸収し、レーザ光(信号光L2)を放出する。ドープファイバ13において放出された信号光L2は、光ファイバ23を介してアイソレータ14に入力される。ドープファイバ13は、例えば、エルビウム(Er)がコアに添加されたエルビウム添加ファイバ(EDF:Erbium-Doped Fiber)であり、1.5μm帯の波長のレーザ光を放出する。ドープファイバ13は、イッテルビウム(Yb)がコアに添加されたイッテルビウム添加ファイバであってもよい。この場合、ドープファイバ13は1.0μm帯の波長のレーザ光を放出する。
【0029】
アイソレータ14は、ドープファイバ13からモードロック部15に向かう順方向には光を伝搬させる一方、順方向とは逆の方向には光を伝搬させない。モードロック部15は、光の伝搬方向における上流側から、第2光ファイバ40、第1光ファイバ30、第3光ファイバ50をこの順に有し、これらの光ファイバによって信号光L2を導光する。モードロック部15の詳細については後述する。
【0030】
偏波コントローラ16は、モードロック部15から出力された信号光L2の偏光状態を調整するための機構を有している。偏波コントローラ16は、例えば、回転可能に保持されたλ/4波長板16a及びλ/2波長板16bを含んで構成されている。偏波コントローラ16から出力された信号光L2は、光ファイバ24を介して偏光子17に入力される。偏光子17は、光ファイバ24内を伝搬する信号光L2のうち、遅軸に沿って伝搬する成分を透過させる一方、速軸に沿って伝搬する成分を反射させる。
【0031】
出力カプラ18は、偏光子17から光ファイバ25を介して入力された信号光L2を所定の比率で分割し、信号光L2の一部を光ファイバ26に出力し、残りを光ファイバ27に出力する。例えば、出力カプラ18は、信号光L2の25%を光ファイバ26に出力し、残りの75%を光ファイバ27に出力する。光ファイバ26に出力された信号光L2は、例えば、出力光として外部に出力される。出力カプラ18には、光ファイバ26を介して進入した外部からの戻り光を共振器内に戻さないように、アイソレータが設けられていてもよい。この場合、戻り光に起因して共振器における発振が不安定になるのを抑制することができる。
【0032】
ASEフィルタ19は、光ファイバ27を伝搬する信号光L2のうち所定の波長範囲の成分のみを透過させて光ファイバ28に出力する。この例では、ASEフィルタ19は、1545nm以上の波長の光のみを透過させる。これにより、1530nm付近の波長領域での発振を抑制することができる。
【0033】
以上のとおり、ファイバレーザ装置1は、偏波保持ファイバにより構成されたリング状の共振器である全偏波保持ファイバ共振器(発振器)を備えている。ファイバレーザ装置1においては、モードロック部15においてモードロックを生じさせることにより、例えばパルス幅が50フェムト秒から10ピコ秒である超短パルスレーザが出力される。
[モードロック部]
【0034】
図1及び
図3に示されるように、モードロック部15は、第1光ファイバ30と、第1光ファイバ30の一端に接続された第2光ファイバ40と、第1光ファイバ30の他端に接続された第3光ファイバ50と、を有している。後述するように、
図1に示されるモードロック部15と
図3に示されるモードロック部15とでは、構成が少し異なっている。
【0035】
第1光ファイバ30は、第1部分31及び2つの第2部分32を有している。第1部分31及び2つの第2部分32の各々は、偏波保持ファイバにより構成されている。第1部分31及び2つの第2部分32は、互い違いに配置されている。2つの第2部分32は、第1部分31の両端にそれぞれ接続されている。
【0036】
各第2部分32は、接続箇所C1において第2部分32の速軸32X1が第1部分31の遅軸31X2に一致するように、第1部分31に接続されている。換言すれば、各第2部分32と第1部分31との間の接続箇所C1における第2部分32の速軸32X1と第1部分31の速軸31X1との間の角度は、90度となっている。各第2部分32は、例えば融着により、第1部分31に直接に接続されている。なお、
図3ではファイバ同士の間に隙間が空いているように描かれているが、実際にはファイバ同士は隙間無く接続されている。「速軸が遅軸(又は速軸)に一致する」とは、光の伝搬方向(ファイバの延在方向)から見た場合に速軸が遅軸に一致する(遅軸に沿う)との意味である。
【0037】
第1部分31の総長さL31は、第2部分32の総長さL32と等しい。総長さL31,L32は、第1光ファイバ30の延在方向(光の伝搬方向)に沿っての長さである。第2部分32の総長さL32は、各第2部分32の長さL32aを足し合わせた長さである。「第1部分31の総長さL31が第2部分32の総長さL32と等しい」ことには、総長さL31と総長さL32との間に許容可能な僅かな誤差が存在する場合が含まれる。許容可能な誤差の大きさは、例えばモードロックが生じるかどうかに応じて設定される。許容可能な誤差は、例えばビート長(2mm程度)以下である。ビート長とは、複屈折の大きさの指標であり、速軸を伝搬する光と遅軸を伝搬する光の位相差が2πとなる距離である。或いは、許容可能な誤差は5mm以下である。この点は、後述する第2光ファイバ40の第1部分41の長さL41及び第3光ファイバ50の第1部分51の長さL51、並びに、第1ブリッジファイバ60の長さL60及び第2ブリッジファイバ70の長さL70についても同様である。
【0038】
第2光ファイバ40は、第1部分41及び第2部分42を有している。第1部分41は、接続箇所C2において第1部分41の速軸41X1が第2部分32の遅軸32X2に一致するように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されている。換言すれば、第1部分41と第2部分32との間の接続箇所C2における第1部分41の速軸41X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度は、90度となっている。第1部分41は、例えば融着により、第2部分32に直接に接続されている。
【0039】
第2部分42は、接続箇所C3において第2部分42の速軸42X1と第1部分41の速軸41X1との間の角度が0度又は90度以外の角度θ1となるように、第1部分41の一端に接続されている。すなわち、角度θ1は0度ではなく90度でもない。角度θ1は、45度以外の角度である。角度θ1は、後述するように、モードロックが生じるように、例えば実験的に設定され得る。角度θ1は、光の伝搬方向(第1光ファイバ30及び第2光ファイバ40の延在方向)から見た場合の角度である。この点は後述する角度θ2についても同様である。第2部分42は、例えば融着により、第1部分41に直接に接続されている。第2部分42の他端は、上述したアイソレータ14に接続されている。
【0040】
図3に示されるモードロック部15では、第3光ファイバ50は、第1部分51及び第2部分52を有している。第1部分51は、接続箇所C4において第1部分51の速軸51X1が第2部分32の速軸32X1に一致するように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されている。換言すれば、第1部分51と第2部分32との間の接続箇所C4における第1部分51の速軸51X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度は、0度となっている。接続箇所C4における第1部分51の速軸51X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度は、接続箇所C2における第2光ファイバ40の第1部分41の速軸41X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度から、90度異なっている。第1部分51は、例えば融着により、第2部分32に直接に接続されている。
【0041】
第2部分52は、接続箇所C5において第2部分52の速軸52X1と第1部分51の速軸51X1との間の角度が0度又は90度以外の角度θ2となるように、第1部分51の一端に接続されている。すなわち、角度θ2は0度ではなく90度でもない。角度θ2は、45度以外の角度であり、例えば角度θ1に90度を加算した角度である。第2部分52の一端は、例えば融着により、第1部分51に直接に接続されている。第2部分52の他端は、上述した偏光子17に接続されている。
【0042】
第2光ファイバ40の第1部分41の長さL41は、第3光ファイバ50の第1部分51の長さL51と等しい。長さL41,L51は、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50の延在方向(光の伝搬方向)に沿っての長さである。
【0043】
図1に示されるモードロック部15では、第3光ファイバ50は、第1部分51のみを有している。第1部分51の一端は第2部分32に接続されており、第1部分51の他端は上述した偏波コントローラ16に接続されている。
図3に示されるモードロック部15では、接続箇所C5における第1部分51の速軸51X1と第2部分52の速軸52X1との間の角度が角度θ2であることにより、光の偏光状態が調整される。これに対し、
図1に示されるモードロック部15では、回転可能な波長板を備える偏波コントローラ16により、
図3に示されるモードロック部15と同様に、光の偏光状態が調整される。このように、第3光ファイバ50の第2部分52は、波長板を用いた調整機構に置き換えられてもよい。
【0044】
第1光ファイバ30のモードフィールド径(MFD:Mode Field Diameter)は、第2光ファイバ40のMFD及び第3光ファイバ50のMFDの各々よりも小さい。モードフィールド径とは、光ファイバ内を伝搬する光がコアからクラッドへ漏れ出す程度を表す指標である。例えば、ファイバの一端に光を入射させて他端から出射する光の像を取得することで、モードフィールド径を計測することができる。第1光ファイバ30のMFDは、例えば2μm~4μmである。第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50のMFDは、例えば4μm~10μmである。第1光ファイバ30の全体にわたってMFDは一様である。この点は第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50についても同様である。偏波保持ファイバにおいては、MFDが小さいほど、非線形効果が大きくなる。すなわち、第1光ファイバ30は、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50を構成する偏波保持ファイバよりも非線形効果が高められた高非線形ファイバにより構成されている。なお、第1光ファイバ30のコア径は、第2光ファイバ40のコア径及び第3光ファイバ50のコア径の各々よりも小さくてもよいが、それら以上であってもよい。第1光ファイバ30のコア径とは、
図2に示されるように、第1光ファイバ30を構成する偏波保持ファイバのコア30aの直径Dである。第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50のコア径とは、それらを構成する偏波保持ファイバのコア30aの直径Dである。
[作用及び効果]
【0045】
以上説明したとおり、ファイバレーザ装置1では、第1光ファイバ30が、第1部分31と、第1部分31と互い違いに配置された2つの第2部分32と、を有している。隣り合う第1部分31と第2部分32とは、接続箇所C1において第1部分31の速軸31X1が第2部分32の遅軸32X2に一致するように、互いに接続されている。このような第1光ファイバ30に光を通すと共に、必要な光学要素(例えば偏光子17)を後段に設けることにより、モードロックを生じさせることできる。
【0046】
すなわち、接続箇所C3における第2光ファイバ40の第2部分42の速軸42X1と第2光ファイバ40の第1部分41の速軸41X1との間の角度は、0度又は90度以外の角度θ1となっている。これにより、第2部分42を伝搬する光は、第1部分41に入射する際に、第1部分41の速軸41X1に沿って伝搬する成分と、第1部分41の遅軸41X2に沿って伝搬する成分とに分かれる。角度θ1は45度以外の角度に設定されているため、速軸41X1に沿って伝搬する成分の強度と、遅軸41X2に沿って伝搬する成分の強度とは、互いに異なる。偏波保持ファイバ内を伝搬する光は、強度が高いほど、より大きな非線形効果を受ける。そのため、速軸41X1に沿って伝搬する成分と遅軸41X2に沿って伝搬する成分との間には、異なる大きさの非線形効果が生じる。第1部分41から出力された光は、第1光ファイバ30、及び第3光ファイバ50の第1部分51により導光され、第3光ファイバ50の第2部分52に至る。この導光の間にも、第1部分41内を伝搬する際と同様に、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分では異なる大きさの非線形効果を受ける。接続箇所C5における第1部分51の速軸51X1と第2部分52の速軸52X1との間の角度は、0度又は90度以外の角度θ2となっている。或いは、
図1に示されるモードロック部15では、偏波コントローラ16により光の偏光状態が同様に調整される。これにより、第1部分51から第2部分52に光が入射する際に、各軸を伝搬していた成分が互いに合成され、非線形効果の差により位相差が生じる。強度の高低により位相差が異なることから、高強度の光の透過率を高くすると共に低強度の光の透過率を低くすることでモードロックを生じさせることができる。
【0047】
ここで、偏波保持ファイバ内を光が伝搬する場合、屈折率差により、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間に伝搬速度の差が生じる。この点、ファイバレーザ装置1では、第1部分31の総長さL31が、第2部分32の総長さL32と等しくなっている。すなわち、速軸に沿って伝搬する距離と遅軸に沿って伝搬する長さとが等しくなるように第1部分31及び第2部分32の長さが設定されている。これにより、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0048】
また、ファイバレーザ装置1では、第1光ファイバ30が、第1部分31及び2つの第2部分32を有している。これにより、例えば第1光ファイバ30が2つのファイバ要素のみからなる場合と比べて、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の相互作用により出力光の波形が乱れるのを抑制することができる。その結果、良好な波形の光を出力することができる。
【0049】
すなわち、第1光ファイバ30が、互いの速軸間の角度が90度となるように接続された2つのファイバ要素のみからなる場合でも、モードロックを生じさせ得る。しかしながら、ファイバ要素内を先行して伝搬する成分の後側部分と、ファイバ要素内を遅れて伝搬する成分の前側部分とが互いに相互作用すること(相互位相変調)により、出力光の波形が乱れてしまうことがある。これに対し、ファイバレーザ装置1では、第1光ファイバ30が、第1部分31及び2つの第2部分32を有している。これにより、伝搬速度に差が生じる距離を短くすることができ、伝搬速度差による波形の乱れを抑制することができる。すなわち、上流側の第2部分32で生じた時間差を第1部分31の前側部分で補償し、第1部分31の後側部分で生じた時間差を下流側の第2部分32で補償する。これにより、出力光の波形が乱れるのを抑制することができ、良好な波形の光を出力することができる(クロススプライジング法)。
【0050】
また、ファイバレーザ装置1では、第1光ファイバ30のMFDが、第2光ファイバ40のMFD及び第3光ファイバ50のMFDの各々よりも小さくなっており、第1光ファイバ30の非線形効果が高められている。これにより、第1光ファイバ30を短くすることができ、高繰り返し化を図ることが可能となる。また、モードロックを自己開始させるために必要な励起パワーを低減することが可能となる。以上より、ファイバレーザ装置1によれば、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。また、半導体可飽和吸収ミラー(SESAM:Semiconductor Saturable Absorber Mirror)を用いたファイバレーザ装置では、半導体可飽和吸収ミラーが光損傷を受け易く、また寿命のばらつきが大きいため問題が生じ得るが、ファイバレーザ装置1では、半導体可飽和吸収ミラーを用いないため、そのような事態を回避することができる。
【0051】
第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50が、融着により第1光ファイバ30に接続されている。これにより、空間上で光学素子(レンズ等)を用いて結合する場合と比較して、部品点数を削減できると共に、製造を容易化することができる。通常、互いに異なるMFDを有する偏波保持ファイバ同士を融着により接続すると、MFDの違い及び加熱時の変形し易さの違いに起因して、接続箇所において損失が発生し易い。このような損失は、共振器内を周回する光にノイズ、歪みが生じる等の不安定性に繋がり得る。ファイバレーザ装置1では、そのような点を考慮した上で、第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50を融着により第1光ファイバ30に接続し、部品点数の削減及び製造の容易化を図っている。
【0052】
また、ファイバレーザ装置1では、第2光ファイバ40の第1部分41が、接続箇所C2において第1部分41の速軸41X1が第2部分32の遅軸32X2に一致するように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されており、第2光ファイバ40の第2部分42が、接続箇所C3において第2部分42の速軸42X1と第1部分41の速軸41X1との間の角度θ1が0度又は90度以外の角度となるように、第1部分41に接続されている。互いに異なるMFDを有する偏波保持ファイバ同士を互いの速軸間の角度が0度又は90度以外の角度となるように接続することは難しく、歩留まりが低下するおそれがある。この点は、互いに異なるMFDを有する偏波保持ファイバ同士を融着により接続する場合に特に顕著となる。これは、速軸間の角度が0度又は90度以外の角度である場合、応力の対称性が取れない状態で融着する必要があると共に、ドーパント及び構造が異なるため加熱時の変形の仕方が異なるためである。例えば、速軸間の角度が0度又は90度以外の角度である場合、速軸間の角度が0度又は90度である場合と比べて成功確率が低く、歩留まりが50%以下となる。これに対し、ファイバレーザ装置1では、互いに異なるMFDを有する第1光ファイバ30と第2光ファイバ40とが、互いの速軸と遅軸とが一致するように(互いの速軸間の角度が90度となるように)接続される。これにより、第1光ファイバ30と第2光ファイバ40との間の接続を容易化することができ、歩留まりを向上することができる。この歩留まりを向上できるとの作用効果は、本実施形態のように第1光ファイバ30と第2光ファイバ40とが融着により接続される場合に、特に顕著となる。なお、接続箇所C3,C5のように同一のMFDを有する偏波保持ファイバ同士を接続する場合には、速軸間の角度が0度又は90度以外の角度であっても成功確率は高く、歩留まりはほぼ100%となる。
【0053】
第3光ファイバ50の第1部分51が、接続箇所C4において第1部分51の速軸51X1が第2部分32の速軸32X1に一致するように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されており、第3光ファイバ50の第2部分52が、接続箇所C5において第2部分52の速軸52X1と第1部分51の速軸51X1との間の角度θ2が0度又は90度以外の角度となるように、第1部分51に接続されている。これにより、第1光ファイバ30と第3光ファイバ50との間の接続を容易化することができ、歩留まりを一層向上することができる。この歩留まりを向上できるとの作用効果は、本実施形態のように第1光ファイバ30と第3光ファイバ50とが融着により接続される場合に、特に顕著となる。
【0054】
第2光ファイバ40の第1部分41の長さL41が、第3光ファイバ50の第1部分51の長さL51と等しい。これにより、第1部分41及び第1部分51について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
[実施例]
【0055】
図1に示されるファイバレーザ装置1によりモードロック発振を行った。1.5μm帯の波長のレーザ光が出力されるようにファイバレーザ装置1を構成した。第1光ファイバ30のMFDは4.9μm程度とした。第1光ファイバ30の長さは2m程度とした。第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50のMFDは10.1μm程度とした。共振器全体の分散値は、-0.014ps
2であった。モードロックの自己開始時の励起パワー(光源11の出力パワー)は、105mW程度であった。
【0056】
周波数分解光ゲート法(FROG:Frequency-Resolved Optical Gating)により出力光のパルス幅を測定した。
図4は、パルス波形及び瞬時波長を示すグラフである。
図5は、スペクトル波形及び位相を示すグラフである。
図4に示されるように、良好な波形を有する超短パルス波が出力された。パルス幅は127fsであった。
図5に示されるように、スペクトル幅は32nmであり、十分なスペクトル幅が得られた。スペクトルの山が形成されている波長領域において位相が低くなっていることから、パルス幅が良好に圧縮されていることが分かる。
【0057】
高周波スペクトルアナライザを用いて出力光の周波数スペクトルを測定した。
図6(a)及び
図6(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。
図6(a)では、横軸の目盛り間隔が100kHzであり、
図6(b)では、横軸の目盛り間隔が100MHzである。両方のグラフにおいて、縦軸の目盛り間隔は10dBである。
図6(a)及び
図6(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。出力光の繰り返し周波数は40.6MHzであった。
図6(a)に示されるように、出力光の周波数スペクトルのS/N比は70dB以上となっていた。
図6(b)に示されるように、1GHzまで帯域を広げてもピークの高さが揃っており、十分な周波数安定性が得られていた。
[第1変形例]
【0058】
図7及び
図8に示される第1変形例のファイバレーザ装置1Aでは、モードロック部15が、第1ブリッジファイバ60と、第2ブリッジファイバ70と、を更に備えている。
【0059】
第1ブリッジファイバ60は、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバ30の第2部分32と第2光ファイバ40の第1部分41との間に接続されている。第1ブリッジファイバ60の一端は、接続箇所C6において第1ブリッジファイバ60の速軸60X1が第2部分32の遅軸32X2に一致するように、第2部分32に接続されている。第1ブリッジファイバ60の他端は、接続箇所C7において第1ブリッジファイバ60の速軸60X1が第1部分41の速軸41X1に一致するように、第1部分41に接続されている。第1ブリッジファイバ60は、例えば融着により、第2部分32及び第1部分41に直接に接続されている。
【0060】
第2ブリッジファイバ70は、偏波保持ファイバにより構成され、第1光ファイバ30の第2部分32と第3光ファイバ50の第1部分51との間に接続されている。第2ブリッジファイバ70の一端は、接続箇所C8において第2ブリッジファイバ70の速軸70X1が第2部分32の速軸32X1に一致するように、第2部分32に接続されている。第2ブリッジファイバ70の他端は、接続箇所C9において第2ブリッジファイバ70の速軸70X1が第1部分51の速軸51X1に一致するように、第1部分51に接続されている。第2ブリッジファイバ70は、例えば融着により、第2部分32及び第1部分51に直接に接続されている。
【0061】
第1ブリッジファイバ60の長さL60は、第2ブリッジファイバ70の長さL70と等しい。長さL60,L70は、第1ブリッジファイバ60及び第2ブリッジファイバ70の延在方向(光の伝搬方向)に沿っての長さである。
【0062】
第1ブリッジファイバ60のMFDは、第1光ファイバ30のMFDよりも大きく、且つ第2光ファイバ40のMFDよりも小さい。第2ブリッジファイバ70のMFDは、第1光ファイバ30のMFDよりも大きく、且つ第3光ファイバ50のMFDよりも小さい。第1ブリッジファイバ60のMFDは、例えば第2ブリッジファイバ70のMFDと等しい。第1ブリッジファイバ60及び第2ブリッジファイバ70のMFDは、例えば4μm~5μmである。
【0063】
第1変形例では、アイソレータ14とモードロック部15との間に偏波コントローラ90が設けられている。偏波コントローラ90は、モードロック部15に入力される信号光L2の偏光状態を調整するための機構を有している。偏波コントローラ90は、例えば、回転可能に保持されたλ/4波長板90a及びλ/2波長板90bを含んで構成されている。
図7に示される例では、偏波コントローラ16と偏光子17とが1つの要素として一体的に構成されている。偏波コントローラ16は、λ/2波長板16bのみを含んでいる。
【0064】
第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。また、第1変形例では、第1光ファイバ30のMFDよりも大きく且つ第2光ファイバ40のMFDよりも小さいMFDを有する第1ブリッジファイバ60が、第1光ファイバ30と第2光ファイバ40との間に接続されている。これにより、第1光ファイバ30と第2光ファイバ40との間の接続箇所における損失を低減することができる。
【0065】
第1光ファイバ30のMFDよりも大きく且つ第3光ファイバ50のMFDよりも小さいMFDを有する第2ブリッジファイバ70が、第1光ファイバ30と第3光ファイバ50との間に接続されている。これにより、接続箇所における損失を一層低減することができる。
【0066】
第1ブリッジファイバ60が、接続箇所C6において第1ブリッジファイバ60の速軸60X1が第2部分32の遅軸32X2に一致するように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されており、第2ブリッジファイバ70が、接続箇所C8において第2ブリッジファイバ70の速軸70X1が第2部分32の速軸32X1に一致するように、第2部分32に接続されている。第1ブリッジファイバ60の長さL60が、第2ブリッジファイバ70の長さL70と等しい。これにより、第1ブリッジファイバ60及び第2ブリッジファイバ70について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0067】
第1変形例は、
図9に示されるように構成されてもよい。この例では、接続箇所C6において第1ブリッジファイバ60の速軸60X1が第2部分32の速軸32X1に一致し、接続箇所C7において第1ブリッジファイバ60の速軸60X1が第1部分41の遅軸41X2に一致している。接続箇所C8において第2ブリッジファイバ70の速軸70X1が第2部分32の遅軸32X2に一致し、接続箇所C9において第2ブリッジファイバ70の速軸70X1が第1部分51の遅軸51X2に一致している。この場合でも、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。すなわち、
図9のように第1光ファイバ30が第1部分31及び第2部分32を合計で奇数個有する場合(例えば、1つの第1部分31及び2つの第2部分32を有する場合)、接続箇所C6における第1ブリッジファイバ60の速軸60X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度と、接続箇所C8における第2ブリッジファイバ70の速軸70X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度との間の差が90度であれば、第1ブリッジファイバ60及び第2ブリッジファイバ70について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。また、その場合、接続箇所C7における第1ブリッジファイバ60の速軸60X1と第1部分41の速軸41X1との間の角度と、接続箇所C9における第2ブリッジファイバ70の速軸70X1と第1部分51の速軸51X1との間の角度の間の差が0度であれば、第1部分41及び第1部分51について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。一方、
図9とは異なり、第1光ファイバ30が第1部分31及び第2部分32を合計で偶数個有する場合(例えば、2つの第1部分31及び2つの第2部分32を有する場合)、接続箇所C6における第1ブリッジファイバ60の速軸60X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度と、接続箇所C8における第2ブリッジファイバ70の速軸70X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度との間の差が0度であれば、第1ブリッジファイバ60及び第2ブリッジファイバ70について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。その場合にも、接続箇所C7における第1ブリッジファイバ60の速軸60X1と第1部分41の速軸41X1との間の角度と、接続箇所C9における第2ブリッジファイバ70の速軸70X1と第1部分51の速軸51X1との間の角度の間の差が0度であれば、第1部分41及び第1部分51について、速軸に沿って伝搬する成分と遅軸に沿って伝搬する成分との間の伝搬速度の差を補償することができる。
【0068】
第1変形例の実施例について説明する。
図7に示されるファイバレーザ装置1Aによりモードロック発振を行った。1.5μm帯の波長のレーザ光が出力されるようにファイバレーザ装置1Aを構成した。第1光ファイバ30のMFDは4μm程度とした。第1光ファイバ30の長さは1.5m程度とした。第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50のMFDは10.1μm程度とした。共振器全体の分散値は、-0.081ps
2であった。第1光ファイバ30と第2光ファイバ40とを融着により直接に接続した場合、接続箇所における損失は0.8dBであった。第1光ファイバ30と第2光ファイバ40との間に第1ブリッジファイバ60を接続した場合、損失は0.4dBであった。このことから、第1ブリッジファイバ60を設けることによって接続箇所における損失を低減できることが分かる。
【0069】
図10は、スペクトル形状を示すグラフであり、
図11(a)及び
図11(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。
図11(a)では、横軸の目盛り間隔が200kHzであり、
図11(b)では、横軸の目盛り間隔が100MHzである。両方のグラフにおいて、縦軸の目盛り間隔は10dBである。
図10に示されるように、スペクトル幅は6.9nmであり、十分なスペクトル幅が得られた。
図11(a)において、出力光の繰り返し周波数は36.1MHzであった。出力光の周波数スペクトルのS/N比は70dB以上となっていた。
図11(b)に示されるように、1GHzまで帯域を広げてもピークの高さが揃っており、十分な周波数安定性が得られていた。
[比較例]
【0070】
図12に示される比較例のファイバレーザ装置100では、モードロック部115が、同一のMFDを有する偏波保持ファイバにより構成された3つのファイバ要素115aからなる。モードロック部115の一端には偏波コントローラ116が接続され、モードロック部115の他端には偏波コントローラ117が接続されている。このような比較例のファイバレーザ装置100を、実施形態のファイバレーザ装置1と同様に、1.5μm帯の波長のレーザ光が40MHz程度の繰り返し周波数で出力されるように構成した。ファイバ要素115aのMFDは10.1μm程度とした。モードロック部115の総長さは2m程度とした。共振器全体の分散値は、-0.110ps
2であった。
【0071】
図13は、スペクトル形状を示すグラフであり、
図14(a)及び
図14(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。
図14(a)では、横軸の目盛り間隔が200kHzであり、
図14(b)では、横軸の目盛り間隔が100MHzである。両方のグラフにおいて、縦軸の目盛り間隔は10dBである。
図13に示されるように、スペクトル幅は5.8nmであった。
図14(a)において、出力光の繰り返し周波数は40.9MHzであった。出力光の周波数スペクトルのS/N比は70dB以上となっていた。
図14(b)に示されるように、1GHzまで帯域を広げてもピークの高さが揃っており、十分な周波数安定性が得られていた。
【0072】
上述したように、
図1に示されるファイバレーザ装置1では、モードロックの自己開始時の励起パワーは105mW程度であった。一方、
図12に示される比較例のファイバレーザ装置100では、モードロックの自己開始時の励起パワーは225mW程度であった。このように、両者の条件を揃え、ファイバ長さを2mとし、繰り返し周波数を40MHz程度とした場合、
図1に示されるファイバレーザ装置1では、
図12に示される比較例のファイバレーザ装置100の約半分の励起パワーで超短パルスレーザを発振させることができた。
[第2変形例]
【0073】
図15に示される第2変形例のファイバレーザ装置1Bでは、第1変形例と同様に、アイソレータ14とモードロック部15との間に偏波コントローラ90が設けられている。偏波コントローラ16と偏光子17とが1つの要素として一体的に構成されている。第2光ファイバ40は、第1部分41のみを有している。第1部分41の一端は第1光ファイバ30の第2部分32に接続されており、第1部分41の他端は偏波コントローラ90に接続されている。このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。
[モードロック条件]
【0074】
図15に示される構成を用いてモードロックが生じる条件を確認した。偏波コントローラ90を用いて最も上流側に位置する第2光ファイバ40(以下、「入口側ファイバ」ともいう)に入力される光の偏光状態を調整すると共に、偏波コントローラ16を用いて最も下流側に位置する第3光ファイバ50(以下、「出口側ファイバ」ともいう)の出力端における光の偏光状態を調整しつつ、モードロックが生じる角度領域を確認した。なお、角度領域を分かり易くするために励起パワーを高めて確認しており、実際の動作時には角度がずれる可能性がある。
【0075】
図16は、スペクトル形状を示すグラフであり、
図17は、パルス波形及び瞬時波長を示すグラフである。
図16及び
図17では、入口側ファイバの回転角度(速軸と遅軸との間の角度)を12度(192度)とし、出口側ファイバの回転角度を100度とした場合の結果が示されている。
図16に示されるように、スペクトル幅は50nmであった。
図17に示されるように、パルス幅は635fsであった。
図17では、横軸の目盛り間隔は200fsである。
【0076】
図18は、モードロックが生じた角度領域を示す図である。
図18において、縦軸の目盛り間隔は10度であり、横軸の目盛り間隔は2度である。着色された領域は、当該領域に対応する角度の組み合わせにおいてモードロックが生じたことを示している。
図18から、入口側ファイバの回転角度に90度を加算した角度と出口側ファイバの回転角度とが等しくなる角度領域の近傍に、モードロックが生じる領域が存在していることが分かる。このような実験結果に基づいて、入口側ファイバ及び出口側ファイバの回転角度を設定することができる。また、当該実験結果を用いることで、上述した接続箇所C3,C4における角度θ1,θ2をモードロックが生じるように設定することができる。
[第3変形例]
【0077】
図19に示される第3変形例のファイバレーザ装置1Cは、1.0μm帯の波長のレーザ光が出力されるように構成されている。第1光ファイバ30のMFDは3.5μm程度とした。第1光ファイバ30の長さは6m程度とした。第2光ファイバ40及び第3光ファイバ50のMFDは6.9μm程度とした。共振器全体の分散値は、0.304ps
2であった。ファイバレーザ装置1Cでは、ASEフィルタ19に代えて、バンドパスフィルタBFが設けられている。1.0μm帯のレーザ光を出力する場合、分散値が正常分散となりパルスが広がり続けてしまうため、バンドパスフィルタBFによりパルスの広がりを制限する必要がある。このような第3変形例によっても、上記実施形態と同様に、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。
【0078】
図20は、スペクトル形状を示すグラフであり、
図21(a)及び
図21(b)は、周波数スペクトルを示すグラフである。
図20に示されるように、スペクトル幅は10.9nmであり、十分なスペクトル幅が得られた。
図21(a)において、出力光の繰り返し周波数は19.9MHzであった。出力光の周波数スペクトルのS/N比は70dB以上となっていた。
図21(b)に示されるように、1GHzまで帯域を広げてもピークの高さが揃っており、十分な周波数安定性が得られていた。
【0079】
本発明は、上述した実施形態及び変形例に限られない。上記実施形態において、第2光ファイバ40が第2部分42のみを有し、第2部分42が、第2部分42の速軸42X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度が0度又は90度以外の角度θ1となるように、第1光ファイバ30の第2部分32に接続されていてもよい。同様に、第3光ファイバ50が第2部分52のみを有し、第2部分52が、第2部分52の速軸52X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度が0度又は90度以外の角度θ2となるように、第2部分32に接続されていてもよい。
【0080】
上記実施形態では、接続箇所C2における第1部分41の速軸41X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度(第1角度)が90度であり、接続箇所C4における第1部分51の速軸51X1と第2部分32の速軸32X1との間の角度(第2角度)が0度であったが、これとは逆に、第1角度が0度であり、第2角度が90度であってもよい。すなわち、第1角度と第2角度とが90度異なっていればよい。この場合でも、上記実施形態と同様に、良好な波形の光を出力することができると共に、高繰り返し化及び低励起パワー化を図ることができる。換言すれば、上記実施形態では、第2光ファイバ40を第3光ファイバとみなし、第3光ファイバ50を第2光ファイバとみなすこともできる。同様に、第1変形例では、第2光ファイバ40を第3光ファイバとみなし、第3光ファイバ50を第2光ファイバとみなし、第1ブリッジファイバ60を第2ブリッジファイバとみなし、第2ブリッジファイバ70を第1ブリッジファイバとみなすこともできる。
【0081】
第1光ファイバ30は、2つ以上の第1部分31を有していてもよい。この場合、複数の第1部分31及び複数の第2部分32が互い違いに(交互に)配置される。この場合にも、隣り合う第1部分31と第2部分32とは、接続箇所において第2部分32の速軸32X1が第1部分31の遅軸31X2に一致するように、互いに接続される。第1光ファイバ30が2つ以上の第1部分31を有する場合、第1部分31の総長さL31は、各第1部分31の長さを足し合わせた長さである。第1光ファイバ30は、3つ以上の第2部分32を有していてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A,1B,1C…ファイバレーザ装置、11…光源、30…第1光ファイバ、31…第1部分、32…第2部分、40…第2光ファイバ、41…第1部分、42…第2部分、50…第3光ファイバ、51…第1部分、52…第2部分、60…第1ブリッジファイバ、70…第2ブリッジファイバ、L1…励起光、31X1,32X1,41X1,42X1,51X1,52X1,60X1,70X1,X1…速軸,32X2,X2…遅軸、C1,C2,C4,C6,C8…接続箇所、θ1,θ2…角度。